説明

エアゾール噴射側外装機構,エアゾール用操作ボタンおよび、このエアゾール噴射側外装機構を備えたエアゾール式製品

【課題】取外し用治具(コイン)が差し込まれる軟性状プラスチック肩カバーの周方向スリットの対向部分まで操作ボタンが配設されている場合の、マウンティングキャップと肩カバーとを確実に分別する。
【解決手段】周方向スリット7gと対向する押しボタン2の周面下端部分に周方向切欠状部2aを設けてコイン1がこの切欠状部まで進入できるようにした。コイン1の押上げ操作時の支点A(マウンティングキャップ5との当接部)は、周方向切欠状部2aを設けない従前よりもこの進入分だけ初期作用点C(周方向スリット上側端面との当接部)から離れる。そのため初期作用点Cに作用するコイン1の押上力方向は従前の内側斜上よりも直上に近くなり、周方向スリット7gの直上部分には従前のような内方への変形が生じにくく、コイン1の押上げ操作により下筒部7aも確実に上動して凸状部分7bがアンダーカット5aから離脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物噴射時もエアゾール容器のマウンティングキャップに強めの係合状態で保持されたままの筒状,プラスチック製の肩カバー(以下の記載では必要に応じて単に「肩カバー」という)および、当該肩カバーの内側に配設された操作ボタンを備えるとともに、肩カバー分別用の円板状治具を差し込むための周方向スリットが当該肩カバーの当該マウンティングキャップより上方の周面部分に形成されたエアゾール噴射側外装機構などに関する。
【0002】
特に、周方向スリットに対向する肩カバー内部空間域まで非操作状態の操作ボタンが入り込み、かつ、肩カバーとしてHDPE(高密度ポリエチレン),LDPE(低密度ポリエチレン),LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)などからなる軟性状のプラスチック製カバー体を用いる場合を対象とする。
【0003】
本発明は、利用者が、軟性状(軟材質)の肩カバーに対しても、その周方向スリットにコインやチップなどの円板状治具を差し込んでからその露出側部分を押し上げることにより、当該肩カバーがマウンティングキャップから簡単,確実に取り外される、すなわちエアゾール容器と肩カバーとの分別を容易に行えるようにしたものである。
【0004】
なお、エアゾール容器および肩カバーの分別を行うのは、内容物消尽後の金属製などのエアゾール容器とプラスチック製の肩カバーとを個々に廃棄するためや、当該エアゾール容器の再利用を図るためである。
【0005】
本明細書では必要に応じて、操作ボタンが押圧などの操作を受けずにステム孔部(=内容物噴射用の弁作用部)が閉じた状態を「静止モード」と記し、操作ボタンが押圧などの操作を受けてステム孔部が開いた状態を「作動モード」と記す。
【背景技術】
【0006】
従来、エアゾール容器のマウンティングキャップとプラスチック製の肩カバーとの強い係合状態を解除して個々のパーツに分別するため、マウンティングキャップより上方の肩カバー周面部分に治具(コイン,へら状)差し込み用の周方向スリットを形成した、エアゾール噴射側の外装機構が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
ここで、マウンティングキャップと肩カバーとの強い係合状態を解除するには、利用者が、肩カバーの周方向スリットにコインなどの一部を差し込んでから残りの露出部分を押し上げればよい。
【0008】
この押上げ操作ともない、コインなどの治具はマウンティングキャップとの当接箇所をいわば支点としたテコ作用を呈する。
【0009】
このテコ作用により、肩カバーの周方向スリットの上側端面部分が治具上面側と当接して上方への回動作用を受けて、この当接側からマウンティングキャップと肩カバーとの係合状態が解除される。すなわちプラスチック製の肩カバーがマウンティングキャップ(エアゾール容器)から離脱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−315470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような従来の、コインなどの治具を肩カバーの周方向スリットに差し込んでから当該治具の露出部分を押し上げ、これにより肩カバーの当該治具側をテコ作用に基づいてマウンティングキャップから持ち上げるといった手法は、一定の効果が期待できる。
【0012】
ただ、ここではプラスチック製の肩カバー自体の硬さ,軟らかさや、肩カバーの周方向スリットと操作ボタンとの上下方向の位置関係(=周方向スリットに略水平状態で差し込んだ治具が操作ボタンの外周面にあたってしまうかどうか)などの考察が一切されていない。
【0013】
そのため、肩カバー自体の性状や、肩カバーの周方向スリットへの治具の挿込み長などに基づく特定態様のカバー体および操作ボタンの組み合わせの場合には、単に肩カバーに周方向スリットを形成してそこに治具を差し込んでその露出部分を押し上げても、肩カバーとマウンティングキャップとの強い係合状態を解除できないという問題点があった。
【0014】
本件出願人は、肩カバーの周方向スリットに水平状態で差し込まれた円板状治具が操作ボタンと対向し、かつ、肩カバーとして、HDPE(高密度ポリエチレン),LDPE(低密度ポリエチレン),LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)などの軟性状のカバー体を用いる場合について、上述の特定態様のカバー体および操作ボタンからなるエアゾール噴射側外装機構に相当することを認識した。
【0015】
すなわち、このような円板状治具が当接する操作ボタンおよび軟性状の肩カバーの組み合わせの場合、上述のごとく、肩カバーに周方向スリットを形成してそこに円板状治具を差し込んで押し上げるだけでは肩カバーとマウンティングキャップとの強い係合状態が解除されないことを確認した。
【0016】
そして、この組み合わせにおける、円板状治具を周方向スリットに差し込んで押し上げるときの肩カバーの状態変化に関する検討,実験,考察の結果、
(11)円板状治具の、操作ボタン外周面に当接したときの周方向スリットへの差込み長(=周方向スリットからその対向する操作ボタン外周面までの間隔)が短く、
(12)これに応じ、利用者が円板状治具を押し上げるときのテコ作用で肩カバーをマウンティングキャップから取り外そうとするとき、当該円板状治具の支点(マウンティングキャップとの接触ポイント:図3のB点)から初期作用点(≒周方向スリットの上側端面部分との初期接触部分:図3のC点)までのいわゆる腕の長さも短くなり、
(13)この短さのため、円板状治具が押し上げられる初期段階で周方向スリットの上側端面と当接したときの当該円板状治具の水平状態からの傾きが比較的大きくなり、
(14)その結果、円板状治具の押上げ操作の際に、周方向スリットの上端面部分が(上方向というよりは)内方への斜め上方向の力を受けやすく、肩カバーの周方向スリットの直上垂下部分がもっぱら内方へと移動するローカルな変形作用を呈し(図3(b)参照)、
(15)肩カバーに対するこの円板状治具の押上げ力によって当該肩カバーとマウンティングキャップとの係合状態が解除されるまでの作用は生じない、
ことを知見するにいたった。
【0017】
そこで本発明では、
(21)上記(12)の「腕の長さ」を少しでも長くして上記(13)の「円板状治具の傾き」を比較的小さくし、
(22)これにともない、円板状治具への押上げ操作力が周方向スリットの上端面部分に作用する方向をできるだけ上方向に、すなわち斜め上方向となる程度が小さくなるように設定して、上記(14)の「ローカルな変形作用」の程度を極力小さくする、
ようにしている。
【0018】
本発明はこれにより、上述した「円板状治具が対向する形の操作ボタンおよび軟性状の肩カバーの組み合わせ」における肩カバーとマウンティングキャップとの係合状態解除の確実化を図ることを目的とする。
【0019】
また、肩カバーの周方向スリットに差し込まれる円板状治具が操作ボタンの一部(後述の周方向切欠状部)や周方向スリットの各周方向端部にあたって止まり、利用者はこの停止位置の当該円板状治具を押し上げるといった肩カバー取外し操作態様を設定し、これにより利用者にとっての肩カバー取外し用円板状治具の差込み操作の簡単化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)内容物噴射の作動モードのときもエアゾール容器(例えば後述の容器本体4)のマウンティングキャップ(例えば後述のマウンティングキャップ5)との係合状態に保持されたままの筒状でプラスチック製の肩カバー(例えば後述の肩カバー7)および、当該肩カバーの内側に配設された操作ボタン(例えば後述の押しボタン2)を備え、かつ、肩カバー分別用の円板状治具(例えば後述のコイン1)を差し込むための周方向スリット(例えば後述の周方向スリット7g)が当該マウンティングキャップより上方の肩カバー周面部分に形成されたエアゾール噴射側外装機構において、
前記肩カバーは、
軟性状のプラスチック製カバー体であり、
前記操作ボタンは、
その静止モード位置の、前記周方向スリットと対向する周面下端部分に、前記円板状治具の進入を許容するための周方向切欠状部(例えば後述の周方向切欠状部2a)が形成されている。
(2)上記(1)において、
前記周方向スリットおよび前記周方向切欠状部の少なくとも一方は、
当該周方向スリットから当該周方向切欠状部へと差し込まれる前記円板状治具の周面を当該一方の端部(例えば後述の周方向切欠状部2aの両端部分2b)で保持できる形の周方向長さからなる。
(3)内容物噴射の作動モードのときもエアゾール容器(例えば後述の容器本体4)のマウンティングキャップ(例えば後述のマウンティングキャップ5)と係合し、かつ、肩カバー分別用の円板状治具(例えば後述のコイン1)を差し込むための周方向スリット(例えば後述の周方向スリット7g)を当該マウンティングキャップより上方の周面部分に形成した、プラスチック製で軟性状の筒状肩カバー(例えば後述の肩カバー7)の、内側に配設されるエアゾール用操作ボタン(例えば後述の押しボタン2)において、
前記内側に配設された場合の静止モード位置の前記周方向スリットと対向する周面下端部分に、前記円板状治具の進入を許容するための周方向切欠状部(例えば後述の周方向切欠状部2a)が形成されている。
【0021】
このような構成からなるエアゾール噴射側外装機構,エアゾール用操作ボタンおよび、当該エアゾール噴射側外装機構を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明は以上の課題解決手段により、
(31)「肩カバーの周方向スリットに水平方向に差し込まれた円板状治具が操作ボタンと対向する形の操作ボタンおよび、軟性状の肩カバーの組み合わせ」における、肩カバーとマウンティングキャップとの係合状態解除の確実化を図ることができ、
(32)利用者にとっての肩カバー取外し用円板状治具の差込み操作の簡単化を図ることができる、
といった効果を奏している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】円板状治具としてのコインを肩カバーの周方向スリットに水平状態で差し込んだ最終状態を示す説明図であり、(a)は平面図(一部断面)を示し、(b)は上下方向の断面図を示している。なお、(a)では比較のために従来例(図3)のコイン差込みの最終状態も示している。
【図2】図1のコインを利用者が矢印の斜め方向に押し上げるときの途中段階を示す説明図であり、(a),(b)はそれぞれ図1の(a),(b)と同様の平面図,断面図を示している。
【図3】本発明との比較のため、後述の周方向切欠状部を形成していない操作ボタンを用いた場合における周方向スリットの上方部分のローカルな変形を示す説明図であり、(a),(b)はそれぞれ図2の(a),(b)と同様の平面図,断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜図3を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0025】
各図で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば周方向切欠状部2a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば押しボタン2)の一部であることを示している。
【0026】
図1〜図3において、
1は円板状治具としてのコイン,
2は外部空間への通路部が形成された上下動タイプ,鞘状であって、その横断面が略小判形状(陸上トラック形状)からなる押しボタン,
2aは周面下端部分に形成されて、その中にコイン1が進入する周方向切欠状部,
2bは当該周方向切欠状部の(周方向)両端部分,
2cは内容物や噴射剤の通路部,
2dは内容物噴射用の孔部,
2'は周方向切欠状部2aが形成されていない上下動タイプで鞘状の押しボタン(図3のみで使用),
3は押しボタン2の通路部側と嵌合して周知の弁作用を呈するステム,
4は後述の内容物および噴射剤を収納したエアゾール式製品の周知の容器本体,
5は容器本体4の開口端部側に取り付けられた周知のマウンティングキャップ,
5aはマウンティングキャップの外側端部分と容器本体4の上端部分との間に設定される環凹状のアンダーカット,
6はマウンティングキャップ5の中央開口部側に取り付けられて、その内部空間域にステム3の下側部分が配設される周知のハウジング,
7はマウンティングキャップ5のアンダーカット5aに係合し、作動モードにおいてもこの係合状態が保持される筒状の肩カバー,
7aは当該肩カバーの一番下側に形成された大径の下筒部,
7bは下筒部7aの内周面周方向に形成されてアンダーカット5aと係合する環状または飛び飛びの凸状部分,
7cは下筒部7aの上端部分から内方に水平状態で続いてマウンティングキャップ5と当接する外環部,
7dは外環部7cの内端部分から上方に続く中間筒部,
7eは中間筒部7dの上端部分から内方に水平状態で続く内環部,
7fは内環部7eの内端部分から上方および下方に続く上筒部,
7gは外環部7cおよび中間筒部7dそれぞれに連続する態様で形成されてコイン1が差し込まれる周方向スリット,
7hは押しボタン2の略小判形状の横断面に対応した開口部,
をそれぞれ示している。
【0027】
なお、図3の肩カバーの形状は図1,図2のそれと同一であり、図3の押しボタン2'と図1,図2の押しボタン2との主たる形状の違いは周方向切欠状部2aの有無のみである。
【0028】
また、図2,図3において、
Aは図2のコイン1のテコ作用における計二個の支点(マウンティングキャップ5の上端縁の内側直下部分との接触ポイント),
Bは図3のコイン1のテコ作用における計二個の支点(マウンティングキャップ5の上端縁の内側直下部分との接触ポイント),
Cは図2,図3のコイン1のテコ作用における初期作用点(≒周方向スリット7gの上側端面部分との当接開始段階における接触部分),
をそれぞれ示している。
【0029】
ここで、肩カバー7はHDPE(高密度ポリエチレン),LDPE(低密度ポリエチレン),LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)などの軟材質からなるプラスチック製のものである。
【0030】
押しボタン2,ステム3およびハウジング6などはポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。また、容器本体4およびマウンティングキャップ5は金属製のものである。
【0031】
図示のエアゾール噴射側外装機構の基本的特徴は、
(41)コイン差し込み用の周方向スリット7gに対向する肩カバー内部空間域まで静止モードの押しボタン2が入り込み、かつ、肩カバー7としてHDPE(高密度ポリエチレン)などの軟材質からなるカバー体を用いる場合において、
(42)静止モード位置の押しボタン2の周方向スリット7gと対向する周面下端部分に、コイン1の一部が進入できる周方向切欠状部2aを形成した、
ことである。
【0032】
さらには、
(43)肩カバー7の周方向スリット7gに略水平状態で差し込まれたコイン1は押しボタン2の周方向切欠状部2aまで進入して、最終的には当該コインが当該切欠状部の周方向両端部にいわばぶつかって停止し、
(34)利用者がこの停止状態のコイン1の露出部分を図2に示すように図示反時計方向に持ち上げれば肩カバー7の取外しモードに移行できる、
ことである。
【0033】
図1に示すように、利用者がコイン1を、肩カバー7の周方向スリット7gに略水平状態で入れていくと、当該コインの肩カバー内部側の先端部分が押しボタン2の周方向切欠状部2aまで進入する。
【0034】
そして上述したようにコイン1は、その側面部分が周方向切欠状部2aの両端部分2bに当接することにより停止する。このとき、コイン1の側面部分は周方向スリット7gの両端部分から僅かながら離間している。
【0035】
利用者がこの停止状態のコイン1の露出部分を図2(b)に示すように図示反時計方向に押し上げていくと、周方向スリット7gの上端面部分がコイン1の上面からの力を受けて、アンダーカット5aと凸状部分7bとの係合状態が当該コインの側から解除されていく。
【0036】
このコイン1の押上げ操作にともない、それまで周方向切欠状部2aの両端部分2bに当接していたコイン側面部分が当該周方向切欠状部の下方に移動し、当該コインと当該周方向切欠状部との当接状態が解除される。
【0037】
この当接状態の解除により、押上げ操作中のコイン1は図示左方向に少しだけスライドする。すなわち、コイン1の側面部分が肩カバー7の周方向スリット7gの両端部分に当接してスライド動作を終える。
【0038】
ここで、周方向スリット7gの上端面部分が図2のコイン1の上面からの力を受けたとき、当該上端面部分から上方に続く中間筒部7dおよびその先の内環部7eで図3のようなローカル変形が生じにくいのは、次のような理由かと考えられる。
【0039】
すなわち、
(51)押しボタン2の周方向切欠状部2aの存在によってコイン1が肩カバー7のいわば深い位置まで入っていき、
(52)コイン1を押し上げるときのテコ作用の支点Aが、周方向スリット7gの上端面部分への初期作用点Cからみて図3の場合の支点Bの位置より遠くなり、
(53)この支点Aの内方遠位置への移動により、コイン1が押し上げられる初期段階で周方向スリットの上側端面と当接したときの当該コインの水平状態からの傾きが、図3の場合よりも小さくなり、
(54)その結果、コイン1の押上げ操作の際に、周方向スリット7gの上端面部分が当該コインから(図3の場合のような内方への斜め上方向ではなく)略直上方向への力を受けやすく、
(55)そのため、図3で示すような周方向スリット7gの直上垂下部分(=中間筒部7dの一部)の内方へのローカルな変形作用が生じにくく、これによりコイン1の下方の下筒部7aが中間筒部7dとともに上方に移動して、当該下筒部の凸状部分7bとマウンティングキャップ5のアンダーカット5aとの係合状態が解除される。
【0040】
なお、本件出願人は、周方向切欠状部2aを形成した試作品による実験の結果、コイン1を周方向スリット7gから図1の深い位置まで差し込んでからの当該コインに対する利用者の押上げ操作により、上記HDPE(高密度ポリエチレン)などからなる肩カバー7と金属製のマウンティングキャップ5との係合状態が確実に、簡単に解除されることを検証済みである。
【0041】
また、押しボタン2は上述のように小判状の平面形状からなり、また、肩カバー7の開口部7hもこれに対応した形状からなっている。
【0042】
そのため、この開口部7hに押しボタン2が単に入れ込まれるだけで、押しボタン2の周方向切欠状部2aおよび肩カバー7の周方向スリット7gが対向する。
【0043】
静止モードの押しボタン2を利用者が下方に押圧すると、当該押しボタンと一体のステム3が下動する。
【0044】
このステム3の下動により、周知の弁作用部が開いて容器本体4,ハウジング6の内容物が噴射剤の作用により「弁作用部−ステム3−通路部2c−孔部2d」を経て外部空間域に噴射される。
【0045】
また、利用者が押しボタン2の押圧操作を止めると、押しボタンは、周知のコイルスプリング(図示省略)の弾性力により図示上方向に移動して静止モード位置に復帰する。
【0046】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり例えば、
(61)コイン1を、肩カバー7の周方向スリット7gおよびその対向側の押しボタン2の周方向切欠状部2aに差し込むときに、
当該コインは、その側面部分が当該周方向スリットの周方向両端部分に当接し、または当該側面部分が当該周方向切欠状部および当該周方向スリットそれぞれの周方向両端部分に当接して停止する、
(62)中間筒部7dを下筒部7aと同一径(外径,内径)からなる筒部として当該筒部に周方向スリットを形成する、
(63)上下動タイプの押しボタン2に代えて回動タイプの操作ボタンを用いる、
(64)ガラス製の容器本体4を用いる、
ようにしてもよい。
【0047】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、消臭剤,洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0048】
容器本体に収納する内容物は、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0049】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0050】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0051】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0052】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0053】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0054】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0055】
さらに、上記内容液以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0056】
内容物噴射用ガス(噴射剤)としては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0057】
1:円板状治具としてのコイン
2:押しボタン
2a:周方向切欠状部
2b:周方向両端部分
2c:通路部
2d:内容物噴射用の孔部
2':周方向切欠状部が形成されていない従来の押しボタン(図3のみで使用)
3:ステム
4:容器本体
5:マウンティングキャップ
5a:アンダーカット
6:ハウジング
7:肩カバー
7a:下筒部
7b:凸状部分
7c:外環部
7d:中間筒部
7e:内環部
7f:上筒部
7g:周方向スリット,
7h:開口部
A:コイン1のテコ作用における支点(図2で使用)
B:コイン1のテコ作用における支点(図3で使用)
C:コイン1のテコ作用における初期作用点(図2,図3で使用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物噴射の作動モードのときもエアゾール容器のマウンティングキャップとの係合状態に保持されたままの筒状でプラスチック製の肩カバーおよび、当該肩カバーの内側に配設された操作ボタンを備え、かつ、肩カバー分別用の円板状治具を差し込むための周方向スリットが当該マウンティングキャップより上方の肩カバー周面部分に形成されたエアゾール噴射側外装機構において、
前記肩カバーは、
軟性状のプラスチック製カバー体であり、
前記操作ボタンは、
その静止モード位置の、前記周方向スリットと対向する周面下端部分に、前記円板状治具の進入を許容するための周方向切欠状部が形成されている、
ことを特徴とするエアゾール噴射側外装機構。
【請求項2】
前記周方向スリットおよび前記周方向切欠状部の少なくとも一方は、
当該周方向スリットから当該周方向切欠状部へと差し込まれる前記円板状治具の周面を当該一方の端部で保持できる形の周方向長さからなる、
ことを特徴とする請求項1記載のエアゾール噴射側外装機構。
【請求項3】
内容物噴射の作動モードのときもエアゾール容器のマウンティングキャップと係合し、かつ、肩カバー分別用の円板状治具を差し込むための周方向スリットを当該マウンティングキャップより上方の周面部分に形成した、プラスチック製で軟性状の筒状肩カバーの、内側に配設されるエアゾール用操作ボタンにおいて、
前記内側に配設された場合の静止モード位置の前記周方向スリットと対向する周面下端部分に、前記円板状治具の進入を許容するための周方向切欠状部が形成されている、
ことを特徴とするエアゾール用操作ボタン。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のエアゾール噴射側外装機構を備え、かつ、噴射剤および内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−35846(P2012−35846A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174532(P2010−174532)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】