説明

エアゾール型皮膚洗浄料

【課題】キメ細かくクリーミィな泡質で、肌をマッサージしやすく、洗いあがり後にはしっとりとした感触であるだけでなく、刺激感の少ないエアゾール型皮膚洗浄料を提供することにある。
【解決手段】下記(A)〜(E)を含有することを特徴とするエアゾール型皮膚洗浄料。
(A)N−アシルグルタミン酸型界面活性剤
(B)アルキルアミノジカルボン酸型界面活性剤
(C)多価アルコール
(D)液化石油ガス
(E)炭酸ガス

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール型皮膚洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
洗顔料、ボディシャンプー、ハンドソープに代表される皮膚洗浄料には、クリーミィな泡質が求められている。一般的に皮膚洗浄料は固形や液状であり、使用時に水を加え手やスポンジ等で泡立てて使用する必要があった。そのため簡便に泡立てるため、フォーマー容器に充填した皮膚洗浄料やエアゾール型の皮膚洗浄料の開発が進んでいる。例えば炭酸ガス、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンとを組み合わせたエアゾール型水性洗顔化粧料が報告されている(特許文献1参照)。
【0003】
エアゾール型皮膚洗浄料においては、噴射剤としてプロパン、ブタン、ペンタン等の低級炭化水素の混合物である液化石油ガスが汎用されている。低分子の炭化水素を用いたエアゾール型皮膚洗浄料は、クリーミィな泡質の実現に適している一方、分子量が小さいため皮膚透過性の懸念があり、使用する人の肌タイプによっては刺激を感じることがあった。また、液化石油ガス以外の噴射剤として炭酸ガスの使用が知られているが、炭酸ガスには血行促進効果があり、多量の炭酸ガスを使用する場合に人によっては赤み、ほてり等の刺激に似た感触を受けることがあった。
【0004】
また、エアゾール型皮膚洗浄料には、洗浄の行為によるマッサージ効果が期待されている。それは単に物理的なマッサージ効果のみならず、泡状に吐出された皮膚洗浄料が肌と外気とを遮断し、皮膚温を上昇させ、皮膚の新陳代謝を促進したり、組成物中の有効成分の浸透を促すといった効果をも含む。泡が粗く保持性が不十分であると、肌に塗布しにくく、外気との遮断性が不十分となるため、エアゾール型皮膚洗浄料においては、泡の質・物性は重要視されている。このような問題に鑑み、従来様々な検討が行われている。例えばアシルアミノ酸塩と糖アルコールと水溶性多糖類を組み合わせるエアゾール型泡状マッサージ化粧料(特許文献2参照)、キサンタンガムとマルメロ種子抽出物を含有する泡沫形成化粧料(特許文献3参照)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−131585号公報
【特許文献2】特開2002−161022号公報
【特許文献3】特開2005−15405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらエアゾール型皮膚洗浄剤において泡質、マッサージのしやすさ、感触を損なわずに刺激感を低減しようとする試みはほとんどなされていない。
従って、本発明の課題は、キメ細かくクリーミィな泡質で、肌をマッサージしやすく、洗いあがり後にはしっとりとした感触であるだけでなく、刺激感の少ないエアゾール型皮膚洗浄料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、特定のアミノ酸系界面活性剤とアルキルアミノジカルボン酸型界面活性剤と多価アルコールに加えて、噴射剤として液化石油ガスと炭酸ガスを組み合せてエアゾール型皮膚洗浄料とすることにより、キメ細かくクリーミィな泡質で、肌をマッサージしやすく、洗いあがり後にはしっとりとした感触であり、さらに刺激感の少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)N−アシルグルタミン酸型界面活性剤、(B)アルキルアミノジカルボン酸型界面活性剤、(C)多価アルコール、(D)液化石油ガス及び(E)炭酸ガスを含有するエアゾール型皮膚洗浄料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエアゾール型皮膚洗浄料は、キメ細かくクリーミィな泡質で、肌をマッサージしやすく、洗いあがり後にはしっとりとした感触であり、刺激感が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の構成を詳述する。
【0011】
本発明において成分(A)として用いられるN−アシルグルタミン酸型界面活性剤としては、下記式(1)で表されものが好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中R1は、炭素数8〜22の脂肪族アシル基を示し、M1及びM2はそれぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミン又は塩基性アミノ酸を示す。)
【0014】
式(1)におけるR1で示されるアシル基としては、炭素数8〜20の脂肪族アシル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数10〜18の脂肪族アシル基である。これらの脂肪族アシル基としては、飽和でも不飽和でもよく、例えばカプリロイル、カプリノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、ヤシ油脂肪酸アシル等が挙げられる。M1及びM2としては、水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム、1/2カルシウム、1/2マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。M1及びM2は同じであっても異なっていても良い。
【0015】
本発明の成分(A)としては、具体的にはN−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸、N−ラウロイル−L−グルタミン酸、N−ミリストイルグルタミン酸、N−パーム油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸、N−ステアロイル−L−グルタミン酸等の塩が挙げられ、塩としてはアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。本発明では、しっとりとした肌感触に優れることから、特にトリエタノールアミン塩を用いるのが好ましい。
【0016】
本発明のエアゾール型皮膚洗浄料における、(A)N−アシルグルタミン酸型界面活性剤の含有量は、エアゾール型皮膚洗浄料の総量を基準として、0.01〜10質量%(以下、単に%と略す)が好ましく、さらに好ましくは0.1〜7%であり、さらに好ましくは、0.5〜5%である。N−アシルグルタミン酸型界面活性剤の含有量が当該範囲内であれば、泡のクリーミィさ、洗いあがり後のしっとり感が良好となる。
【0017】
本発明における成分(B)アルキルアミノジカルボン酸型界面活性剤としては、下記式(2)で表される界面活性剤が好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R2は炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基を、R3及びR4は炭素数1〜3のアルキレン基を、M3及びM4は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミン又は塩基性アミノ酸を示す)
【0020】
式(2)におけるR2で示されるアルキル基又はアルケニル基としては、皮膚への刺激性と、起泡性、経時安定性の点から炭素数10〜22のものが良好であり、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、オレイル、ヤシ油アルキル等が挙げられる。またR3及びR4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。R3、R4は同じであっても異なっていても良い。M3、M4としては、水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム、1/2カルシウム、1/2マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。M3、M4は同じであっても異なっていても良い。
【0021】
このようなアルキルアミノジカルボン酸型界面活性剤として、例えば、ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム、ミリスチルアミノジ酢酸カリウム等が挙げられ、日本油脂社製の「ニッサンアノンLA」等が市販されている。
【0022】
本発明のエアゾール型皮膚洗浄料における、(B)アルキルアミノジカルボン酸型界面活性剤の含有量は、エアゾール型皮膚洗浄料の総量を基準として、0.1〜10%が好ましく、さらに好ましくは0.3〜5%であり、さらに好ましくは、0.5〜3%である。アルキルアミノジカルボン酸型界面活性剤の含有量が当該範囲内であれば、泡のクリーミィさ、洗いあがり後のしっとり感が良好となる。
【0023】
本発明における(C)多価アルコールとしては、2価〜8価の多価アルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン、1,3−ブチレングリコール、トリメチルプロパノール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グルコース、マンノース、ガラクトース、ショ糖、フルクトース、マルトース、マルチトール、キシリトール、イノシトール、ソルビタン、ソルビトールなどが挙げられる。より好ましい例としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトールなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明のエアゾール型皮膚洗浄料における、(C)多価アルコールの含有量は、エアゾール型皮膚洗浄料の総量を基準として、5〜50%が好ましく、さらに好ましくは5〜40%であり、さらに好ましくは、10〜30%である。多価アルコールの含有量が当該範囲内であれば、マッサージのしやすさ、洗いあがり後のしっとり感が良好となる。
【0025】
本発明のエアゾール型皮膚洗浄料は、上記成分(A)〜(C)を含有する皮膚洗浄料の原液を、噴射剤成分と共に容器に充填することにより製造される。本発明では、噴射剤成分として、(D)液化石油ガスと(E)炭酸ガスを組合わせて使用する。
【0026】
本発明における(D)液化石油ガスとしては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタンが挙げられ、通常これらを混合して圧力を調整して用いる。
【0027】
本発明のエアゾール型皮膚洗浄料における、(D)液化石油ガスの含有量は、エアゾール型皮膚洗浄料の総量を基準として、1〜10%が好ましく、さらに好ましくは2〜7%であり、特に好ましくは3〜6%である。液化石油ガスの含有量が当該範囲内にあれば、泡のクリーミーさ、刺激感の無さの面で好ましい。
【0028】
本発明のエアゾール型皮膚洗浄料における、(E)炭酸ガスの含有量は、エアゾール型皮膚洗浄料の総量を基準として、0.1〜2%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.2%である。炭酸ガスの含有量が当該範囲内にあれば、泡のクリーミーさ、刺激感の無さの面で好ましい。
【0029】
本発明では、吐出圧や吐出される洗浄料の泡質を調整する目的で、噴射剤として上記成分(D)、(E)以外に、通常使用されるエーテル系噴射剤(ジメチルエーテル等)や圧縮ガス(窒素ガス、空気等)、その他の噴射剤を適宜併用することができる。本発明のエアゾール型皮膚洗浄料では、25℃における圧力が0.4〜0.7MPaとなるように噴射剤を配合することが好ましい。
【0030】
さらに、本発明では、(D)液化石油ガスの成分であるプロパンの含有量を、噴射剤の総量を基準として、10%未満とするのが好ましく、さらに好ましくは1%未満とする。プロパンの含有量をこれらの範囲に抑えることにより、刺激感の無さにおいてより好ましいものとなる。
【0031】
本発明のエアゾール型皮膚洗浄料は、上記成分(A)〜(C)を含有する皮膚洗浄料の原液を上記(D)、(E)の噴射剤と共にスチール、アルミ等の耐圧性のエアゾール容器に充填することにより製造される。その噴射の形態としては泡状にして吐出するフォームタイプとするのが好ましい。
【0032】
本発明のエアゾール型皮膚洗浄料は、洗顔料、クレンジング化粧料、ボディシャンプー、ハンドソープとして好適に利用できる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を説明する。本発明は、これらにより限定されるものではない。
【0034】
実施例、比較例にて行った官能試験の試験方法は下記の通りである。尚、以下の実施例、比較例の組成物の配合量は、全て質量%(単に%と略記)である。
【0035】
・官能試験
10名の被験者によってエアゾール型皮膚洗浄料の試料を頬の部位に塗布した。塗布後30秒間マッサージを続け、ぬるま湯にて洗い流した。その後被験者本人が、泡のクリーミィさ、マッサージのしやすさ、洗いあがりのしっとり感、刺激感の無さについて、下記の評価基準に基いて官能評価し、評点の平均点により評価した。
【0036】
(評価基準)
4:非常に良好
3:良好
2:やや悪い
1:悪い
【0037】
実施例1〜3、比較例1〜5
表1に示した処方において、噴射剤以外の成分を加熱混合し、冷却後、耐圧容器に充填した。その後、噴射剤を加圧充填することによりエアゾール型皮膚洗浄料を調製した。次いで前記の官能試験を実施し、エアゾール型皮膚洗浄料を評価した。試験結果を表1に併せて示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1より明らかなように本発明の成分(A)〜(E)を用いた実施例のエアゾール型皮膚洗浄料はいずれも優れた性能を有していた。一方、成分(A)〜(E)のうちのいずれかを欠いた比較例では、泡のクリーミィさ、マッサージのしやすさ、しっとり感、刺激感の無さのいずれかの面で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
【0040】
実施例4
配合成分 配合量
(原液)
N−ヤシ油脂肪酸−L−グルタミン酸トリエタノールアミン 3.0
ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム 1.4
グリセリン 10.0
ソルビトール 5.0
ココアンホ酢酸ナトリウム 1.0
キサンタンガム 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.3
ポリオキシエチレンセチルエーテル(15E.O.) 0.2
エデト酸2ナトリウム 0.02
チンピエキス 0.1
オレンジ油 0.01
ユズエキス 0.05
キラヤエキス 0.05
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
フェノキシエタノール 0.2
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
クエン酸 0.01
乳酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.01
香料 0.2
精製水 残 部
(噴射剤)
液化石油ガス(0.15MPa、25℃) 5.0
炭酸ガス 1.0
【0041】
上記組成のエアゾール型皮膚洗浄料を作製し評価したところ、泡のクリーミィさ、マッサージのしやすさ、しっとり感、刺激感の無さのいずれにおいても、優れた性能を有していた。尚、上記エアゾール型化粧料の圧力(25℃)は0.6MPaであった。
【0042】
尚、上記の実施例4において使用した香料の組成を表2に示す。
【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、キメ細かくクリーミィな泡で、肌のマッサージがしやすく、洗いあがり後にはしっとりとした感触であり、刺激感の少ないエアゾール型皮膚洗浄料を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)を含有することを特徴とするエアゾール型皮膚洗浄料。
(A)N−アシルグルタミン酸型界面活性剤
(B)アルキルアミノジカルボン酸型界面活性剤
(C)多価アルコール
(D)液化石油ガス
(E)炭酸ガス
【請求項2】
成分(D)であるプロパンの含有量が、噴射剤成分の総量を基準として10質量%未満である、請求項1に記載のエアゾール型皮膚洗浄料。

【公開番号】特開2012−240986(P2012−240986A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114761(P2011−114761)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】