説明

エアゾール容器入り発泡性害虫防除剤

【課題】4.0mを超える可及的に遠い飛距離で噴射でき、かつ噴射対象物に付着後に充分に発泡するエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤を得ることであり、さらに付着した泡が経時的に安定し、泡の付着力も充分なものとすることである。
【解決手段】害虫防除用有効成分とその溶媒、界面活性剤、炭素数12〜14の直鎖構造の高級アルコールおよび分岐鎖構造を有する炭素数16〜24の高級アルコールを必須成分とし、25℃における粘度70mPa・s以下の起泡性液剤を調製し、この起泡性液剤を噴射バルブ1付きのエアゾール容器Xに充填すると共に、噴射用液化ガスおよび気相の噴射用圧縮ガスからなる噴射剤を充填し、噴射対象物に付着後に発泡するエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアゾール容器入り発泡性害虫防除剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒトの生活環境や農作物に害を及ぼす害虫や不快な昆虫類を、捕獲または殺虫するために、エアゾール容器入り殺虫剤が知られている。
【0003】
例えば、殺虫成分を添加した水溶性樹脂などを噴射距離0.5〜1.5m程度で発泡させ、昆虫類をすばやく覆うことにより、駆除対象虫を捕獲する虫類捕獲用エアゾール製品が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、噴射距離0.05〜3mで噴出物が虫類に付着した後においても発泡することにより、繭状になって捕獲性を強化した虫類捕獲用組成物も知られている(特許文献2)。
【0005】
さらにまた、ゴキブリなどの害虫に界面活性剤を発泡剤とし、昆虫の体表面を濡らして気門を閉塞するために、消泡剤として炭素数15〜30の脂肪酸エステルや炭素数8、10、12のアルコールを用いた害虫捕獲剤組成物が知られている(特許文献3)。
【0006】
また、ハチは、常に害虫や不快害虫とはいえない場合もあるが、日本では約4500種が知られ、そのうち刺咬性の強いハチは約20種と言われ、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなどは時として人に危害を及ぼす害虫になる。近年、元はハチの生息地であった丘陵地帯等の宅地化が進み、刺咬性が強いハチによる人的被害が増大しており、エアゾール剤等のハチ防除用製品が多く製品化されている。
【0007】
多くの害虫に対し有効で汎用性のある殺虫有効成分は周知であるが、特にハチの防除用の有効成分としては、例えばシクロヘキシ−1−エン−1,2−ジカルボキシイミドメチル=2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート等のピレスロイド系殺虫成分が速効性等の観点から実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−245034号公報
【特許文献2】特開2003−146819号公報
【特許文献3】特開平 5−221804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した従来技術では、遠くにいる不快な害虫を人との接触から防除することは容易ではなかった。例えば、蜘蛛類やゲジその他のムカデ類などを防除したい場合には、家屋の屋根や天井、壁、庭木のような手の届かない距離まで防除剤の効果を及ぼしたい場合があるが、例えば4mを超えるような離れた位置に防除剤を施用することは甚だ困難である。
【0010】
特に、ハチの巣に生息する群れ全体を一挙に絶滅させるには通常の噴射剤では不十分であり、殺虫剤に接触しないハチには全く有効成分の効果がなかった。
【0011】
また、噴射剤が発泡剤を含む場合には、噴射距離が3mを超えるような遠くの噴射対象物に対しては、充分にその発泡性を発揮させることは困難であり、遠くへ液剤を飛ばし、かつ充分に発泡させることのできるエアゾール容器入り発泡性防虫剤を得ることは困難であった。
【0012】
そして、安全性を考慮したハチ類専用のエアゾール容器入り駆除剤としては、3mを超えて4m程度まで噴射距離が必要であり、さらに蜂の巣を短時間に覆うためには充分な発泡性と泡の経時的な安定性が必要であるが、それに対応できる性能のエアゾール容器入り発泡性防虫剤は得られていなかった。
【0013】
また、発泡性害虫防除剤であって付着した泡が経時的に安定し、さらに泡の付着力も充分に得られるものは容易に得られるものではない。
【0014】
そこで、この発明の課題は、上記した問題を解決して、4.0mを超える可及的に遠い飛距離で噴射でき、かつ噴射対象物に付着後に充分に発泡するエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤を得ることであり、さらに付着した泡が経時的に安定し、泡の付着力も充分なものとすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明では、害虫防除用有効成分とその溶媒、界面活性剤、炭素数12〜14の直鎖構造の高級アルコールおよび分岐鎖構造を有する炭素数16〜24の高級アルコールを必須成分とし、25℃における粘度70mPa・s以下の起泡性液剤を調製し、この起泡性液剤を噴射バルブ付きのエアゾール容器に充填すると共に、噴射用液化ガスおよび気相の噴射用圧縮ガスからなる噴射剤を充填し、噴射対象物に付着後に発泡するエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤としたのである。
【0016】
このような構成の発泡性害虫防除剤は、所定炭素数の直鎖構造の高級アルコールおよび分岐鎖構造を有する所定炭素数の高級アルコールを併有することにより、低粘性の状態で噴射されて4m程度という長い飛距離であっても発泡性害虫防除剤の液滴または泡粒を対象に付着させることができ、しかも付着直後に気化熱を放熱された噴射用液化ガスが気化して発泡が急速にかつ充分に起こり、所定の高級アルコールの組成によって付着した泡は経時的に安定し、泡の付着力も充分に得られるという作用が奏される。
【0017】
このような作用を充分に奏するように、上記所定の高級アルコールの組成は、炭素数12〜14の直鎖構造の高級アルコールおよび分岐鎖構造を有する炭素数16〜24の高級アルコールを必須成分とし、好ましくは分岐鎖構造を有する高級アルコールが、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノールおよび2−デシルテトラデカノールからなる1種以上の高級アルコールである。
【0018】
また、前記作用を充分に奏するように、上記直鎖構造の高級アルコールを1.0質量%以上配合し、かつ上記分岐鎖構造を有する高級アルコールを0.5〜3.0質量%配合したエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤であることが好ましい。
【0019】
そして、所定粘度以下の低粘性の状態で噴射されて4m程度という長い飛距離を充分に達するように、上記噴射用液化ガスは液状プロパンガスであることが好ましく、かつ噴射剤中の気相の噴射用圧縮ガスの割合が、30〜70容量%であるエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤であることが好ましい。
【0020】
さらに、発泡性害虫防除剤が好ましくはその全体を覆うようにハチ(蜂)の巣に付着した際に、ハチの巣の内部にも害虫防除用有効成分が充分に作用するように、常温で揮散性を有する害虫防除用有効成分が、プロフルトリンまたはエムペントリンであることが好ましい。
【0021】
そして、このような発泡性害虫防除剤をできるだけ長い噴射距離かつ効率よく多量に噴霧するためには、上記噴射バルブは、ステムハウジングの下孔から起泡性液剤をステム孔およびオリフィス経由で噴口から噴出させるものであり、ステムハウジングの下穴径1.0〜2.2mm、ステム孔径0.6〜1.2mm、噴口径0.8〜2.0mmに調整されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明のエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤は、ハチなどの害虫防除用有効成分およびその溶剤や界面活性剤と共に、所定炭素数の直鎖構造の高級アルコールおよび分岐鎖構造を有する所定炭素数の高級アルコールを必須成分とし、25℃における粘度70mPa・s以下の起泡性液剤を調製し、この起泡性液剤を噴射剤の充填されたエアゾール容器に充填した発泡性害虫防除剤としたので、4.0mを超える可及的に遠い飛距離で噴射でき、かつ噴射対象物に付着後に発泡可能であり、さらに付着した泡が経時的に安定し、泡の付着力も充分なエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態の発泡性害虫防除剤に用いるエアゾール容器の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施形態であるエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤は、後述する図1に示すような噴射バルブ付きのエアゾール容器に、起泡性液剤を充填すると共に噴射用液化ガスおよび気相の噴射用圧縮ガスを充填し、噴射され対象物に付着して充分に発泡するものである。
【0025】
この発明に用いる起泡性液剤は、害虫防除用有効成分とその溶媒、界面活性剤、炭素数12〜14の直鎖構造の高級アルコールおよび分岐鎖構造を有する炭素数16〜24の高級アルコールを必須成分とし、25℃における粘度70mPa・s以下に調製されている。
【0026】
この発明における害虫防除のための有効成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤等を挙げることができ、これらにより少なくともアリ類、ハチ類、クモ類またはカメムシ類の駆除が可能である。
【0027】
ピレスロイド系殺虫剤としては、フラメトリン、シフェノトリン、フェノトリン、ペルメトリン、レスメトリン、アレスリン、フタルスリン、トラロメトリン、エムペントリン、テフルスリン、プラレトリン、イミプロトリン、トランスフルスリン(ベンフルスリン)等が挙げられる。
【0028】
有機リン系殺虫剤としては、フェニトロチオン、クロルピリホス、マラソン、ジクロルボス、ピリダフェンチオン、トリクロルホン等が挙げられる。
カーバメイト系殺虫剤としては、カルバリル、ベンフラカルブ、プロポキスル等を挙げることができる。
【0029】
そして、上記ピレスロイド系化合物の殺虫効力を増強する化合物(共力剤)としては、例えばピペロニルブトキサイド、オクタクロロジプロピルエーテル、N−(2− エチルヘキシル)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ〔2,2,2〕オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、イソボルニルチオシアノアセテートおよびN−(2−エチニル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどが挙げられる。
例えば、防除対象のハチ類としては、例えばオオスズメバチ、キイロスズメバチ、クロスズメバチ、ケブカスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、ヒメスズメバチ等のスズメバチ;セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、コアシナガバチ、キボシアシナガバチ、ヤマトアシナガバチ、フタモンアシナガバチ等のアシナガバチ;ニホンミツバチ、セイヨウミツバチ、マルハナバチ等のハナバチ等が挙げられる。
【0030】
害虫防除用有効成分は、上記の害虫防除に優れている周知の薬剤を選択的に採用すればよいが、下記の化1の式で示される2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル(EZ)−(1RS,3RS;1RS,3RS)-2,2−ジメチル−3−(プロプ−1−エニル)シクロ−プロパンカルボキシレートは、一般名はプロフルトリンと称されるものであり、ハチの防除にも有効である。
【0031】
【化1】

【0032】
〔式中、Rは水素原子、メチル基、メトキシ基又はメトキシメチル基を表す。〕
【0033】
また、害虫防除用有効成分の他の例は、下記の化2の式で示される(EZ)−(±)−1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル(+)−シス/トランス−クリサンテマートが挙げられ、一般名はエムペントリンと称され、これもハチの防除に有効である。
【0034】
【化2】

【0035】
このような害虫防除用有効成分には、プラレトリンなどを配合して速効性を向上させてもよく、その他周知な殺虫成分を適宜に配合しても良い。
【0036】
害虫防除用有効成分の発泡性害虫防除剤中の含有量は、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜2.0質量%、さらには0.1〜2.0質量%である。
【0037】
害虫防除用有効成分の配合を調整するには、周知な材料を選択的に使用可能であり、その例としては、水、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エーテル類、エステル類等を挙げることができる。具体的には、ヘキサン、ケロシン(灯油)、n−ペンタン、iso−ペンタン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素類:ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類:エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール等のアルコール類:アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル等のエーテル類:酢酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類を挙げることができる。なお、後述の実施例などにおいて他の成分との相溶性もよく好ましい例としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、プロピレングリコール(PG)などが挙げられる。
【0038】
この発明に用いる界面活性剤は、起泡剤として作用するものであれば、特にその種類を限定することなく、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤またはこれらの混合物を選択的に採用することができる。また、これらの一種または混合物に陽イオン界面活性剤を添加してもよい。
【0039】
上記の陰イオン界面活性剤は、例えばステアリン酸塩(ステアリン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム等)、カルボン酸塩、硫酸エステル塩(高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩)、スルホン酸塩(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、リン酸エステル塩、ジチオリン酸エステル塩、パルミチン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、アルキルスルフォネートなどが挙げられる。
【0040】
非イオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型と多価アルコール型に大別され、ポリエチレングリコール型としては、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられ、多価アルコール型としては、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0041】
両性界面活性剤としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型、リン酸エステル塩型などの両性界面活性剤を挙げることができる。
また、陽イオン界面活性剤としては、四級アンモニウム塩、アミン塩などを挙げることができる。
【0042】
以上のような界面活性剤の好ましい配合割合(2種以上を併用する場合には総量)は、0.1〜5質量%、より好ましくは、0.4〜1質量%である。
【0043】
この発明に用いる炭素数12〜14の直鎖構造の高級アルコールとしては、ドデシルアルコール(炭素数12)やテトラデシルアルコール(炭素数14)などが挙げられる。
また、この発明に用いる分岐鎖構造を有する炭素数16〜24の高級アルコールとしては、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノールおよび2−デシルテトラデカノールなどが挙げられ、これら1種以上の高級アルコールを混合して用いることもできる。
【0044】
このような所定炭素数の直鎖構造の高級アルコールの配合は、気泡性を安定的に奏するように1.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0質量%の範囲内である。直鎖構造の高級アルコールが1.0質量%未満の少量では泡が経時的に安定させることが困難になり、例えば他の成分を適量に配合しても約20分程度の経過時間で消泡する場合があって好ましくない。また、3.0質量%を超えて配合できることも可能であるが、高粘度になりすぎると噴射時の飛距離も短くなって好ましくない。
【0045】
また、分岐構造の高級アルコールの配合割合は、0.5〜3.0質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0質量%の範囲内である。
分岐構造の高級アルコールは、粘度を下げる作用があるが消泡作用もあるため、分岐構造の高級アルコールが上記所定範囲未満では、泡の付着性の改善や噴射時の飛距離の改善を図り難くて好ましくなく、また3.0質量%を超えて多量を配合すると、泡が経時的に安定せず、例えば常温常湿でも約1時間未満で消泡してしまい、斜面や垂直面に対する付着力も小さくて流下しやすいものになって好ましくないからである。
【0046】
また、上記直鎖構造の高級アルコールを1.0質量%以上配合し、かつ上記分岐鎖構造を有する高級アルコールを0.5〜3.0質量%配合することは、後述の実施例およびその評価結果からもこの発明の飛距離、付着した泡の安定性、泡の付着力についても好ましいものであるといえる。
【0047】
上記したようなエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤には、上記材料以外にもエアゾール入り噴霧剤において周知な成分を添加してもよく、例えば増粘剤、糊剤、油剤、粉剤、pH調整剤、イオン封鎖剤、防腐剤、着色料(色素)、保存剤、香料、水などを添加することもできるのは勿論のことである。
【0048】
発泡性害虫防除剤は、前記の有効成分を溶剤に溶解又は分散させてエアゾール原液である起泡性液剤を調整して耐圧容器中に注入し、更に噴射剤を充填することにより、製造することができる。
【0049】
この発明のエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤に用いるエアゾール容器を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、実施形態の発泡性害虫防除剤に用いるエアゾール容器Xは、起泡性液剤を噴射バルブ付きのエアゾール容器に充填すると共に、噴射用液化ガスおよび気相の噴射用圧縮ガスからなる噴射剤を充填してなるものであり、噴射バルブ1は、ステムハウジング2の下孔から起泡性液剤を3個程度の複数のステム孔3およびオリフィス4経由で導いて噴射用圧縮ガスによって、噴口5から噴出させるものである。
【0050】
そして、ステムハウジング2の下穴径は、1.0〜2.2mm、ステム孔3の径は0.6〜1.2mm、噴口径aは、0.8〜2.0mmに調整されている。これらの所定範囲に調整された結果、噴出する起泡性液剤は、適切な噴射パターンを有して適度に拡散しつつ噴射され、4m以上の噴射距離で20〜100cm程度の直径で被付着物に到達するようになる。
【0051】
上記した穴径が、いずれも上記所定範囲未満の小径では、起泡性液剤の噴出量が少なくなり、到達距離も短くなって好ましくなく、また上記所定範囲未満の大径では、起泡性液剤の噴出量が多くなるが、適切な噴射パターンが得られず、効率のよい噴射ができなくなって好ましくない。
【0052】
噴射用液化ガスとしては、例えば、液化石油ガス(LPG)、プロパン、イソブタン、n−ブタン、ジメチルエーテル(DME)などが挙げられる。また、噴射用圧縮ガスとしては、炭酸ガス、窒素ガスなどが挙げられる。噴射用液化ガスは、0.1〜0.2MPa、
噴射用圧縮ガスは、0.2〜0.3MPa程度で充填されることが、噴射距離および発泡状態の点で好ましい。
【0053】
エアゾール剤の使用方法としては、耐圧容器に設けられているノズルから、エアゾール剤をハチに直接もしくはハチの巣に向けて噴霧するか、またはハチの巣の周囲に散布し、巣を泡で直接または間接的に覆うように噴霧すればよい。
【実施例】
【0054】
[実施例1〜6、比較例1〜11]
表1、2中に示す配合割合で原材料のうち、害虫防除用有効成分をその溶剤に溶解し、その他の成分を一括混合して、25℃における粘度70mPa・s以下の起泡性液剤を調製し、この起泡性液剤を噴射バルブ付きのエアゾール容器に充填し、噴射用液化ガスおよび気相の噴射用圧縮ガスからなる噴射剤を充填してエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤を製造した。
【0055】
上記のエアゾール用原液280重量部と噴射剤として液化プロパンガス10重量部、窒素ガス0.5重量部を混合して、以下のバルブシステムを使用した。
【0056】
上記のエアゾール用原液280重量部と噴射剤として液化プロパンガス10重量部、窒素ガス0.5重量部を混合して起泡性液剤を調製し、これを(株)丸一製のバルブシステム(ステム穴径1.2mm×3、ハウジング下穴径φ1.2mm、噴口径の内径0.4mmのノズル)に充填してエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤を得た。
【0057】
[起泡性液剤の粘度測定]
起泡性液剤の25℃における粘度mP・sを測定し、結果を表1、2中に併記した。
【0058】
[発泡性害虫防除剤の飛距離測定]
エアゾール容器入り発泡性害虫防除剤をこのエアゾール容器から噴射し、泡の飛距離(水平方向)を測定し、4m以上の良好な評価が得られるかどうかを調べた。
【0059】
[泡の持続性]
エアゾール容器から噴霧されてスズメバチの巣の表面に付着した泡の経時変化を観察し、その状態を表1、2中に示した。
[起泡性液剤の状態]
起泡性液剤の分散、溶解などの均質性についての評価を必要に応じて表中に併記した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表1、2の結果からも明らかなように、比較例1〜10は、分岐型高級アルコールまたは直鎖型高級アルコールのいずれかを配合しているために、泡の持続時間が20分以下と短くて安定性が満足できず、または飛距離が4m未満と短いか、または適当に噴出できる粘度ではないという不良な結果であった。
また、分岐型高級アルコールおよび直鎖型高級アルコールを併用しているが、粘度が所定値以下に調整されていない比較例11も上記同様に不良な結果となった。
【0063】
これに対して、分岐型高級アルコールおよび直鎖型高級アルコールを併用し、粘度を所定値以下に調整されている実施例1〜6は、防除剤の飛距離が4.5m以上であり、しかも起泡性に優れ、泡の持続時間も60分以上という優れた結果であった。
【符号の説明】
【0064】
1 噴射バルブ
2 ステムハウジング
3 ステム孔
4 オリフィス
5 噴口
X エアゾール容器
a 噴口径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫防除用有効成分とその溶媒、界面活性剤、炭素数12〜14の直鎖構造の高級アルコールおよび分岐鎖構造を有する炭素数16〜24の高級アルコールを必須成分とし、25℃における粘度70mPa・s以下の起泡性液剤を調製し、この起泡性液剤を噴射バルブ付きのエアゾール容器に充填すると共に、噴射用液化ガスおよび気相の噴射用圧縮ガスからなる噴射剤を充填してなるエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤。
【請求項2】
上記分岐鎖構造を有する高級アルコールが、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノールおよび2−デシルテトラデカノールからなる1種以上の高級アルコールである請求項1に記載のエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤。
【請求項3】
上記直鎖構造の高級アルコールを1.0質量%以上配合し、かつ上記分岐鎖構造を有する高級アルコールを0.5〜3.0質量%配合した請求項1または2に記載のエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤。
【請求項4】
上記噴射用液化ガスが液状プロパンガスであり、かつ噴射剤中の気相の噴射用圧縮ガスの割合が、30〜70容量%である請求項1〜3のいずれかに記載のエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤。
【請求項5】
防除対象害虫が、ハチである請求項1〜4のいずれかに記載のエアゾール容器入り発泡性害虫防除剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−70686(P2012−70686A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218862(P2010−218862)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000250018)住化エンビロサイエンス株式会社 (69)
【出願人】(501496175)環境機器株式会社 (5)
【出願人】(592007612)横浜油脂工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】