説明

エアゾール容器内の酸素濃度測定用治具

【課題】
エアゾール容器の破壊を伴わない「非破壊検査」により、エアゾール容器内の酸素濃度を迅速、正確且つ簡易に測定することを可能とする。
【解決手段】
エアゾール容器4のステム5を接続可能な台座部6を設けるとともにこの台座部6と連通する連通路7を軸方向に設けた治具本体1と、この治具本体1の連通路7に挿入し台座部6から挿入するエアゾール容器4内の測定気体を導入可能とするとともにこの導入した測定気体を酸素濃度分析装置15に移送可能な測定気体採取針10とを備える。治具本体1に測定気体を排出する排出口18を形成し、この排出口18からの測定気体の排出に伴って連通路7内の大気を同時に排出口18から排出し、少なくとも先端導入部11には測定気体のみ存在させた状態で測定気体を先端導入部11に導入可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤その他の頭髪用品、医薬品・医薬部外品、制汗剤、化粧品、消臭剤、傷薬、その他のエアゾール内容物をエアゾール容器に充填する前に、エアゾール容器内の酸素濃度を測定するために使用する、エアゾール容器内の酸素濃度測定用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアゾール製品の内容物の中には、例えば酸素との接触により変色してしまう染毛剤のように、酸素と接触させることが好ましくないものが存在する。このような物質を内容物とするエアゾール製品については、エアゾール容器内に於いてエアゾール内容物が酸素と接触するのを避けるため、エアゾール内容物の充填前に、エアゾール容器内をバキュームし気体を抜いた後に窒素ガスを充填することにより、エアゾール容器内の酸素を除去する方法が用いられている。そして、このようにエアゾール容器内の気体を抜いて窒素ガスを充填した後に、エアゾール容器内の残存酸素濃度を測定して、上述の酸素の除去が確実に行われているかを検査することが、品質管理上必要となる。
【0003】
上述の如きエアゾール容器内の酸素濃度の測定には、ガスクロマトグラフィーによる分析方法が従来一般的に行われている。この場合、まず上述の酸素の除去を行ったエアゾール容器に穴を開け、採取針等を用いて上記の穴からエアゾール容器内の測定気体を採取し、この採取した測定気体をシリンジに注入し、更にこのシリンジに注入した測定気体をガスクロマトグラフィー分析装置に注入して、測定気体の酸素濃度を分析するのが一般的である。また、エアゾール容器に用いるものではないが、特許文献1に示す如く、中空針の先端を密閉容器の上端に突き刺すとともに、酸素濃度計のプローブを上記中空針の内部空間を介して密閉容器内に導入して、密閉容器内の酸素濃度を測定する方法が公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−198735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のガスクロマトグラフィーによる分析方法及び特許文献1に示す方法は、いずれも容器に穴を開けて行う破壊検査であるため、測定気体を取り出した容器の再利用を図ることが不可能なものとなっていた。
【0006】
また、上記のガスクロマトグラフィーによる方法は、エアゾール容器に穴を開け、採取針等を用いて上記の穴からエアゾール容器内の測定気体を採取し、この採取した測定気体をシリンジに注入し、更にこのシリンジに注入した測定気体をガスクロマトグラフィー分析装置に注入するという複雑な分析工程を必要とするため、これに伴って分析結果を得るまでの所要時間が長いものとなっていた。また、特許文献1に記載の方法は、中空針の先端を密閉容器の上端に突き刺すものであるため、金属等の強固な硬質素材を用いるエアゾール容器には適用困難なものであった。そのため、例えば生産ライン上に於いて定期的に品質管理を行う場合等、測定結果を簡易且つ迅速に知りたい場合に対応することが困難なものとなっていた。
【0007】
そこで、本願発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、エアゾール容器の破壊を伴わない非破壊検査により、エアゾール容器内の酸素濃度を迅速、正確且つ簡易に測定することを可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、上述の如き課題を解決するため、エアゾール容器のステムを接続可能な台座部を設けるとともにこの台座部と連通する連通路を軸方向に設けた治具本体と、この治具本体の連通路に挿入し、台座部から導入するエアゾール容器内の測定気体を先端導入部から導入可能とするとともに、この導入した測定気体を酸素濃度分析装置に移送可能な測定気体採取針とを備えている。そして、この測定気体採取針の先端導入部よりも測定気体の流出側の治具本体に測定気体を排出する排出口を形成し、この排出口からの測定気体の排出に伴って連通路内の大気を同時に排出口から排出し、少なくとも先端導入部には測定気体のみ存在させた状態で測定気体を先端導入部から導入可能としたものである。
【0009】
また、前記治具本体は、台座部及び連通路を設けた連通管と、この連通管を接続し、排出口を設けるとともに測定気体採取針を接続するための接続体を収納するケーシングとからなるものであっても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如く構成したものであって、エアゾール容器のステムを台座部に接続して押圧することによりステムを開弁し、台座部と連通する連通路にエアゾール容器内の窒素を主体とした測定気体を導入し、連通路に挿入している測定気体採取針の先端導入部から測定気体を酸素濃度分析装置に移送可能としている。そのため、エアゾール容器のステムを台座部に接続しエアゾール容器を押圧するのみで、エアゾール容器内の測定気体を台座部、連通路及び測定気体採取針を介して酸素濃度分析装置に導入し、エアゾール容器内の酸素濃度を、エアゾール容器の破壊を行うことなく簡易且つ迅速に測定することが可能となる。従って、例えば生産ライン上に於いて定期的に品質管理を行う場合等、測定結果を簡易且つ迅速に知りたい場合にも対応することが可能となる。
【0011】
また、測定気体採取針の先端導入部よりも測定気体の流出側の治具本体に測定気体を排出する排出口を形成し、この排出口からの測定気体の排出に伴って連通路内の大気を同時に排出口から排出可能としているため、少なくとも先端導入部には、測定気体のみ存在させた状態で測定気体を先端導入部に導入することが可能となる。そのため、連通路内の大気が測定気体とともに測定気体採取針内に導入されるのを防止し、測定気体のみを測定気体採取針内に導入することが可能となるため、測定気体中の酸素濃度の測定を正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の治具本体を示す断面図。
【図2】図1の部分拡大断面図。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図面において説明すると、(1)は治具本体で、図1に示す如く、連通管(2)と、この連通管(2)の下端に接続するケーシング(3)により構成している。なお、本明細書中に於いては説明の便のため、上端、下端等の用語は、図1、図2を基準として用いるものとする。
【0014】
また、上記治具本体(1)の連通管(2)の上端には、エアゾール容器(4)のステム(5)を気密的に接続可能な凹状の台座部(6)を設けている。また、図1、図2に示す如く、上記連通管(2)の軸方向には直径2.0mmの連通路(7)を貫通して設け、この連通路(7)と前記台座部(6)の底部を、上記連通路(7)より小径な直径0.3mmの小径流路(8)を介して接続している。そして、図1に示す如く、倒立させたエアゾール容器(4)のステム(5)を上記台座部(6)に気密的に接続して押圧することにより、エアゾール容器(4)内の測定気体を噴射し、上記小径流路(8)で噴出量を抑制しながら測定気体を前記連通路(7)内に導入可能としている。
【0015】
なお、上記連通路(7)の直径は、1.0mm〜3.0mmとするのが好ましい。連通路(7)の直径を1.0mm未満とすると、後述の測定気体採取針(10)を連通路(7)内に挿入することが困難なものとなる虞れがある。また、連通路(7)の直径が3.0mmを超えると、連通路(7)の容積が過大なものとなり、後述の如く測定気体の排出に伴って連通路(7)内の外気を排出する際に、この排出作業に時間がかかるものとなる。また、上記小径流路(8)は、0.1mm〜0.5mmとするのが好ましい。小径流路(8)の直径が0.1mm未満となると、小径流路(8)が狭すぎて、十分な量の測定気体を連通路(7)内に導入できないおそれがある。また、小径流路(8)の直径が0.5mmを超えると、測定気体の連通路(7)への導入量が過大なものとなり、測定気体採取針(10)の先端導入部(11)に過剰な圧力がかかるおそれがある。
【0016】
また、上記連通路(7)には、図2に示す如く、測定気体採取針(10)をその先端導入部(11)から挿入している。この測定気体採取針(10)は、軸方向に測定気体の導入路(12)を設けて管状に形成している。また、図1に示す如く、上記測定気体採取針(10)の下端に接続体(13)を接続するとともに、この接続体(13)の下端を、接続ケーブル(14)を介して酸素濃度分析装置(15)と接続している。そして、上記測定気体採取針(10)の先端導入部(11)から導入した測定気体を、測定気体採取針(10)の導入路(12)、接続体(13)及び接続ケーブル(14)を介して酸素濃度分析装置(15)に導入可能としている。
【0017】
また、上記連通管(2)の連通路(7)の下端には、上記連通路(7)よりも径大な大径流路(16)を形成している。そのため、連通管(2)の成形時に小径の連通路(7)の長さを短くし、成形作業を容易としている。
【0018】
また、上記治具本体(1)の連通管(2)の下端には、図1に示す如く、ケーシング(3)の上端を着脱自在に嵌合固定している。このように連通管(2)とケーシング(3)とを着脱自在に接続することにより、治具本体(1)の洗浄時にはこれらを分解して洗浄することが可能となり、連通管(2)とケーシング(3)とを一体に形成する場合と比較して、上記洗浄作業を容易としたり、製造工程を簡略化したりすることが可能となる。
【0019】
また、上記ケーシング(3)は、貫通路(17)を軸方向に貫通形成して筒状に形成しており、この貫通路(17)の上端を、前記連通管(2)の大径流路(16)の下端と接続している。また、上記ケーシング(3)の上部には、上記貫通路(17)と外部とを連通する排出口(18)を設けており、前記台座部(6)から小径流路(8)を介して連通路(7)に導入した測定気体を、連通路(7)内に存在する外気とともに大径流路(16)及び貫通路(17)を介して、上記排出口(18)から外部に排出可能としている。
【0020】
また、上記ケーシング(3)の貫通路(17)には、図1に示す如く、前記測定気体採取針(10)の接続体(13)を収納している。また、上記貫通路(17)の下端には、この貫通路(17)よりも径大な嵌合溝(20)を設け、この嵌合溝(20)に、前記接続体(13)に設けた嵌合鍔(21)を嵌合可能としている。そして、前記測定気体採取針(10)を前記連通管(2)の連通路(7)内に挿入するとともに、前記接続体(13)の上部を上記貫通路(17)内に挿入した状態で、上記接続体(13)の嵌合鍔(21)を前記嵌合溝(20)に嵌合することにより、上記接続体(13)をケーシング(3)内に収納固定可能としている。
【0021】
また、図1に示す如く、上記嵌合溝(20)の下方には、この嵌合溝(20)よりも径大に形成した挿入部(22)を設けている。そして、上述の如く接続体(13)をケーシング(3)内に装着固定した状態で、図1に示す如く、上記挿入部(22)に挿入筒(23)を下端側から挿入固定し、この挿入筒(23)の上端内周を接続体(13)の嵌合鍔(21)の下端外周に当接させることにより、接続体(13)がケーシング(3)から脱落するのを防止可能としている。
【0022】
また上記挿入筒(23)は、その上下幅を前記挿入部(22)の上下幅よりも小さく形成することにより、挿入筒(23)の上端内周を接続体(13)の嵌合鍔(21)に当接させた状態で、挿入筒(23)の下端と載置面(24)との間に挿通間隔(25)を形成可能としている。また、上記ケーシングの挿入部(22)の下端一側には挿通穴(26)を設けている。そして、測定気体採取針(10)の接続体(13)と酸素濃度分析装置(15)とを前記接続ケーブル(14)を介して接続する際には、この接続ケーブル(14)を、図1に示す如く上記挿通間隔(25)及び挿通穴(26)に挿通することにより、上記ケーシング(3)を載置面(24)に安定して載置可能としている。
【0023】
上述の如く構成したものにおいて、エアゾール容器(4)内に収納した測定気体の酸素濃度を測定するには、倒立させたエアゾール容器(4)のステム(5)を、図1、図2に示す如く前記台座部(6)に接続して押圧する。これにより、エアゾール容器(4)内から測定気体を噴出させ、前記小径流路(8)で噴出量を抑制しながら連通路(7)内に導入する。この導入された測定気体は、連通路(7)内の外気を押圧し、大径流路(16)及び貫通路(17)を介して排出口(18)から外部に排出するため、少なくとも先端導入部(11)の近辺には測定気体のみが存在するものとなる。そして、このように測定気体のみを先端導入部(11)の近辺に存在させた状態で、前記酸素濃度分析装置(15)への測定気体の導入を行うことにより、測定気体のみを上記酸素濃度分析装置(15)に導入することが可能となり、測定気体中の酸素濃度の測定を正確に行うことが可能となる。
【0024】
本発明に於いてはこのように、エアゾール容器(4)のステム(5)を台座部(6)に押圧するのみで、測定気体を連通路(7)及び測定気体採取針(10)を介して酸素濃度分析装置(15)に導入し、酸素濃度を測定することが可能となる。そのため、前記従来技術の方法と比較して、エアゾール容器(4)内の酸素濃度の測定を、簡易且つ迅速に行うことが可能となる。その結果、例えば生産ライン上に於いて定期的に品質管理を行う場合等、測定結果を簡易且つ迅速に知りたい場合にも対応することが可能となる。
【0025】
また、本願発明に於いて使用する酸素濃度分析装置(15)は、酸素濃度分析計であってジルコニア式のもの(飯島電子工業株式会社製 食品微量酸素分析計 ジルコニア式IS−300)を用いているが、他の異なる実施例に於いては、磁気式、ガルバニ電池式の酸素濃度分析計を用いることができる。また、他の異なる実施例においては、酸素濃度分析装置(15)としてガスクロマトグラフィー分析装置を用いることも可能であるが、この場合には、上記の酸素濃度分析計を使用する場合と比較して、分析の所要時間が長くなる虞れがある。また、本実施例の測定気体採取針(10)は、上記酸素濃度分析装置(15)に予め附属のものを用いても良いし、上記酸素濃度分析装置(15)に接続可能なものを、別個に形成して使用しても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 治具本体
2 連通管
3 ケーシング
4 エアゾール容器
5 ステム
6 台座部
7 連通路
10 測定気体採取針
11 先端導入部
13 接続体
15 酸素濃度分析装置
18 排出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のステムを接続可能な台座部を設けるとともにこの台座部と連通する連通路を軸方向に設けた治具本体と、この治具本体の連通路に挿入し台座部から挿入するエアゾール容器内の測定気体を先端導入部から導入可能とするとともに、この導入した測定気体を酸素濃度分析装置に移送可能な測定気体採取針とを備え、この測定気体採取針の先端導入部よりも測定気体の流出側の治具本体に測定気体を排出する排出口を形成し、この排出口からの測定気体の排出に伴って連通路内の大気を同時に排出口から排出し、少なくとも先端導入部には測定気体のみ存在させた状態で測定気体を先端導入部から導入可能としたことを特徴とするエアゾール容器内の酸素濃度測定用治具。
【請求項2】
治具本体は、台座部及び連通路を設けた連通管と、この連通管を接続し、排出口を設けるとともに測定気体採取針を接続するための接続体を収納するケーシングとからなることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器内の酸素濃度測定用治具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−53100(P2011−53100A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202619(P2009−202619)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】