説明

エアゾール容器用マウンティンカップ及びエアゾール容器

【課題】 エアゾール容器の破裂を防止するエアゾール容器用マウンティンカップを提供
【解決手段】 マウンティンカップ29は、開口部3aを被覆する上面部29aと、上面部29aの周端縁から連設された筒状の裾部29bとから構成されている。また、裾部29bは、裾部29bの周端縁部分が首部7の外周面に当接するとともに、周端縁部分以外が口元部9の外周面9a全体に当接する。そして、首部7の外周面と当接している部分で裾部29bが圧着されることにより、マウンティンカップ29は開口部3aに冠着される。更にマウンティンカップ29の裾部29bには、図(a)に示すように、切込部29cが、裾部29bの周方向に沿って180°間隔に計2個形成されている。或いは、切込部29cの代わりに、図(b)に示すように、切欠部29dを形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器用マウンティンカップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液状内容物を噴射剤ともに容器内に収容し、容器の開口部に取り付けられた噴出装置から液状内容物を噴出させるようにしたエアゾール容器が広く利用されている。
そして、このようなエアゾール容器において噴出装置を容器の開口部に一体的に取り付けるために、一般にマウンティンカップが、エアゾール容器の開口部に冠着される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−193083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、直射日光が照射される自動車内等のような高温状態にエアゾール容器が長時間曝されると、容器内の内圧が上昇する。これにより、エアゾール容器の開口部に冠着されているマウンティンカップが開口部から外れて、噴出装置とともに容器から飛び出す、即ちエアゾール容器が破裂するという問題があった。
【0004】
本発明はこうした問題に鑑みなされたものであり、エアゾール容器の破裂を防止するエアゾール容器用マウンティンカップ及びエアゾール容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた第1発明のエアゾール容器用マウンティンカップは、 液状内容物を収容する容器本体と、液状内容物を外部に排出するための開口部を一端に備え、他端が容器本体に連結されている筒状の首部とを備えるエアゾール容器の開口部に冠着されるエアゾール容器用マウンティンカップであって、開口部を被覆する上面部と、上面部の周端縁から連設され、首部の外周面と圧着される筒状の裾部とを備え、裾部には、この裾部の周端縁まで延びる切込部が設けられていることを特徴とする。
【0006】
尚、切込部とは、裾部に切り目が入れられている部分を示す。
つまり第1発明のエアゾール容器用マウンティンカップでは、裾部において切込部が設けられている部位(以降、切込部位と称す)の方が、切込部が設けられていない部位よりも、裾部が首部の外周面と圧着される強さ(以降、圧着強度と称す)が小さくなる。
【0007】
このため、第1発明のエアゾール容器用マウンティンカップでは、エアゾール容器が高温状態に長時間曝されて容器内の内圧が上昇した場合に、切込部位において、裾部と首部の外周面との間から液状内容物が外部に漏洩する通路(以降、リーク通路と称す)が形成される。
【0008】
従って、この切込部位のリーク通路から液状内容物が外部に漏洩することにより容器の内圧上昇が抑制され、この結果、エアゾール容器の破裂が防止される。
また第1発明のエアゾール容器用マウンティンカップにおいては、裾部に設けられる切込部は、裾部の周方向に沿って、略等間隔に配置されるようにしてもよい。
【0009】
このように構成されたエアゾール容器用マウンティンカップでは、リーク通路を裾部の周方向に沿って均等に配置することができる。
また第2発明のエアゾール容器用マウンティンカップは、液状内容物を収容する容器本体と、液状内容物を外部に排出するための開口部を一端に備え、他端が容器本体に連結されている筒状の首部とを備えるエアゾール容器に冠着されるエアゾール容器用マウンティンカップであって、開口部を被覆する上面部と、上面部の周端縁から連設され、首部の外周面と圧着する筒状の裾部とを備え、裾部には、この裾部の周端縁に開口し上面部に向かう方向に沿って延びる切欠部が設けられることを特徴とする。
【0010】
尚、切欠部とは、上記の切込部と異なり、切り取られている部分を示す。即ち、切欠部は、裾部の周端縁の周方向に沿って幅を有しているのに対し、切込部は、裾部の周端縁の周方向に沿って幅を有していない。
【0011】
つまり第2発明のエアゾール容器用マウンティンカップでは、裾部において切欠部が設けられている部位(以降、切欠部位と称す)の方が、切欠部が設けられていない部位よりも、圧着強度が小さくなる。
【0012】
このため、第2発明のエアゾール容器用マウンティンカップでは、エアゾール容器が高温状態に長時間曝されて容器内の内圧が上昇した場合に、切欠部位においてリーク通路が形成される。
【0013】
従って、この切欠部位のリーク通路から液状内容物が外部に漏洩することにより容器の内圧上昇が抑制され、この結果、エアゾール容器の破裂が防止される。
また第2発明のエアゾール容器用マウンティンカップにおいては、裾部に設けられる切欠部は、裾部の周方向に沿って、略等間隔に配置されるようにしてもよい。
【0014】
このように構成されたエアゾール容器用マウンティンカップでは、リーク通路を裾部の周方向に沿って均等に配置することができる。
また、第1発明または第2発明のエアゾール容器用マウンティンカップにより開口部が冠着されたことを特徴とするエアゾール容器はそれぞれ、第1発明または第2発明のエアゾール容器用マウンティンカップと同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態について図面をもとに説明する。
図1は本発明が適用されたエアゾール装置1の側面図であり、図1(a)はレフィールキャップ60が装着された状態、図1(b)は櫛部70が装着された状態を示す。但し、肩カバー40,レフィールキャップ60及び櫛部70は断面図で示している。
【0016】
図1(a)に示すように、エアゾール装置1は、上部に開口部3a(図2参照)を有し、液状内容物(例えば、毛髪化粧剤の一種である酸性染毛料および噴射剤(例えばLPG,DME))を収容するエアゾール容器3と、開口部3aを閉塞するようにエアゾール容器3に取り付けられるバルブユニット20と、バルブユニット20の側面を覆う肩カバー40とから構成される。
【0017】
これらのうちエアゾール容器3は、有底円筒状の容器本体部5と、容器本体部5と開口部3aとを接続し、容器本体部5から開口部3aに向けて径が徐々に小さくなる首部7と、開口部3aの外周側に首部7に対して突出して形成される口元部9とからなる。尚、本実施形態では、エアゾール容器3はポリエチレンテレフタレート(PET)を材料として形成されている。
【0018】
図2はエアゾール装置1の要部断面図である。バルブユニット20は、図2に示すように、ガスケット21を介して配置されるバルブハウジング23と、バルブハウジング23中にて上下動可能となるように挿入され、側壁に横穴25aを有する公知のステム25と、ステム25を開閉すると共に、横穴25aを塞ぐためのステムラバー27と、ステム25の上部側を突出させた状態でガスケット21,バルブハウジング23及びステムラバー27をエアゾール容器3の開口部3aに一体的に取り付けるマウンティンカップ29とから構成される。
【0019】
そしてバルブハウジング23は、開口部3aの内面に嵌入される有底筒状のバルブ本体部23aと、その上部外側に広がるフランジ部23bと、バルブ本体部23aの下方に延びる筒部23cとからなる。またバルブ本体部23aの内部には、ステム25を上下動自在に収容する筒状の空所23dが設けられ、その内面にはステム25をガイドするリブ23eが放射状に設けられている。尚、空所23dと筒部23cの筒内とは孔23fで連通している。尚、フランジ部23bはバルブハウジング23をエアゾール容器3に固定するための部分である。また、エアゾール装置1が正立使用の場合、筒部23cにはディップチューブ(図示せず)が勘着されエアゾール容器3の底部まで延びている。一方、エアゾール装置1が倒立使用の場合、孔23fはバルブハウジング23の横に設けられる(図示せず)。
【0020】
また、バルブハウジング23において、バルブ本体部23aの空所23dの底面と、ステム25との間には弾性部材としてコイルスプリング31が配置され、ステム25はこのコイルスプリング31によって常に上方に付勢された状態となっている。
【0021】
またマウンティンカップ29は、開口部3aを被覆する上面部29aと、上面部29aの周端縁から連設された筒状の裾部29bとから構成されている。また裾部29bは、裾部29bの周端縁部分が首部7の外周面に当接するとともに、周端縁部分以外が口元部9の外周面全体に当接する。そして、首部7の外周面と当接している部分で裾部29bが圧着されることにより、マウンティンカップ29は開口部3aに冠着される。
【0022】
更にマウンティンカップ29の裾部29bには、図3(a)に示すように、裾部29bの周端縁まで延びる切り目である切込部29cが形成されている。尚、図3(a)に示されていないが、図示されている切込部29cから裾部29bの周方向に沿って180°離れた位置にも切込部29cが形成されている。即ち、切込部29cは、裾部29bの周方向に沿って180°間隔に計2個形成されている。
【0023】
このように構成されたエアゾール装置1では、ステム25が押下されると、ステムラバー27にて塞がれていたステム25の横穴25aが開放され、横穴25a,バルブ本体部23aの空所23dにおける各リブ23e間の空間,孔23f,筒部23cの筒内が互いに連通する。そして、収容された酸性染毛料が、噴射剤の圧力によって各空間(即ち、各リブ23e間,孔23f,筒部23cの筒内等、それぞれが有する空間)及びステム25内を通って外部に排出される。
【0024】
尚、エアゾール装置1の未使用時には、肩カバー40の上部に、レフィールキャップ60が装着される(図1(a)参照)。これにより、バルブユニット20が不用意に操作されることを防止する。
【0025】
一方、エアゾール装置1の使用時には、肩カバー40の上部に、ノズルとしての機能を有する櫛部70が装着される(図1(b)参照)。
この櫛部70は、肩カバー40と嵌合するためのネジ山71aが内周面に形成された円筒形状の櫛装着部71と、櫛装着部71の上部から突出し、上端が閉塞し下端が開口した有底筒状の支持体73と、支持体73の長手方向に対して直交する方向に植設された複数の櫛歯75と、ステム25を押下するために操作される操作レバー77とから構成される。尚、支持体73は櫛歯75を支持するための部分である。
【0026】
そして支持体73の内部には、ステム25から排出された酸性染毛料を導入する充填室73aが形成されている。また支持体73には、櫛歯75を植設するための植設口73bが形成され、この植設口73bそれぞれに対応して櫛歯75が植設されている。
【0027】
また櫛歯75は、その側壁途中において、各櫛歯75が向かい合う側にはノズル75aが形成され、櫛歯75の内部には櫛歯75の基部からノズル75aに向けて酸性染毛料を排出する誘導路としての誘導路75bが形成されている。つまり、充填室73aはノズル75aを通じて外部と連通される。
【0028】
尚、列設された櫛歯75の両端には、支持体73と一体に形成された両端櫛歯79が設けられている。この二本の両端櫛歯79には充填室73aと連通した誘導路が形成されていない。従ってノズルも形成されていない。
【0029】
このように、エアゾール容器3とバルブユニット20と肩カバー40と櫛部70とを備えたエアゾール装置1では、操作レバー77が操作されると、ステム25が押下される。この結果、酸性染毛料が、充填室73aに導入されて更に櫛歯75に達し、ノズル75aから吐出される。また、ノズル75aから吐出した酸性染毛料は、各櫛歯75のノズル75aの周囲付近で保持された状態となる。
【0030】
即ち、使用者は、櫛歯75に酸性染毛料が保持された状態の櫛部70にて毛髪を梳くことにより、酸性染毛料を簡便に毛髪に塗布することができる。
このように構成された第1実施形態のエアゾール装置1では、裾部29bにおいて切込部29cが設けられている部位(切込部位)の方が、切込部29cが設けられていない部位よりも、裾部29bが首部7の外周面と圧着される強さ(圧着強度)が小さくなる。
【0031】
このため、エアゾール装置1が高温状態に長時間曝されてエアゾール容器3内の内圧が上昇した場合に、切込部位において、裾部29bと首部7の外周面との間から液状内容物が外部に漏洩する通路(リーク通路)が形成される。
【0032】
従って、この切込部位のリーク通路から液状内容物が外部に漏洩することによりエアゾール容器3の内圧上昇が抑制され、この結果、エアゾール装置1の破裂が防止される。
またエアゾール装置1では、切込部29cは、裾部29bの周方向に沿って、略等間隔に配置されているため、リーク通路を裾部29bの周方向に沿って均等に配置することができる。
【0033】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態について図面をもとに説明する。尚、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0034】
第2実施形態におけるエアゾール装置1は、図3(b)に示すように、切込部29cの代わりに切欠部29dが形成されていること以外は、第1実施形態におけるエアゾール装置1と同じである。
【0035】
即ち、マウンティンカップ29の裾部29bには、裾部29bの周端縁に開口し上面部29aに向かう方向に沿って延びる切欠部29dが、裾部29bの周方向に沿って180°間隔に計2個形成されている。
【0036】
このように構成された第2実施形態のエアゾール装置1では、裾部29bにおいて切欠部29dが設けられている部位(切欠部位)の方が、切欠部29dが設けられていない部位よりも、圧着強度が小さくなる。
【0037】
このため、エアゾール装置1が高温状態に長時間曝されてエアゾール容器3内の内圧が上昇した場合に、切欠部位において、裾部29bと首部7の外周面との間から液状内容物が外部に漏洩する通路(リーク通路)が形成される。
【0038】
従って、この切欠部位のリーク通路から液状内容物が外部に漏洩することによりエアゾール容器3の内圧上昇が抑制され、この結果、エアゾール装置1の破裂が防止される。
またエアゾール装置1では、切欠部29dは、裾部29bの周方向に沿って、略等間隔に配置されているため、リーク通路を裾部29bの周方向に沿って均等に配置することができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態にて実施することが可能である。
【0040】
例えば、上記第1実施形態では、裾部29bの周端縁に対して垂直に直線状の切込部が形成されたものを示した。しかし、切込部は直線状に限定されず、任意の形の線で形成されればよい。例えば、裾部29bの周端縁に対して垂直でない方向に切込部が形成されてもよいし、曲線状の切込部が形成されてもよい。また図3(c)に示すように、V字の切込部29eが形成されてもよい。
【0041】
また上記第2実施形態では、裾部29bに四角形状の切欠部が形成されたものを示した。しかし、切欠部の形状は四角に限定されず、任意の形状で形成されればよい。例えば、三角形や五角形等の多角形状でもよいし、円形状であってもよい。
【0042】
また上記実施形態では、マウンティンカップ29の裾部29bに切込部または切欠部が2個形成されたものを示したが、切込部,切欠部が1個または3個以上形成されたものであってもよい。また、切込部と切欠部の両方が形成されたものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】エアゾール装置1の側面図。
【図2】エアゾール装置1の要部断面図。
【図3】マウンティンカップ29の側面図。
【符号の説明】
【0044】
1…エアゾール装置、3…エアゾール容器、3a…開口部、5…容器本体部、7…首部、9…口元部、20…バルブユニット、21…ガスケット、23…バルブハウジング、23a…バルブ本体部、23b…フランジ部、23c…筒部、23d…空所、23e…リブ、23f…孔、25…ステム、25a…横穴、27…ステムラバー、29…マウンティンカップ、29a…上面部、29b…裾部、29c,29e…切込部、29d…切欠部、31…コイルスプリング、40…肩カバー、60…レフィールキャップ、70…櫛部、71…櫛装着部、71a…ネジ山、73…支持体、73a…充填室、73b…植設口、75…櫛歯、75a…ノズル、75b…誘導路、77…操作レバー、79…両端櫛歯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状内容物を収容する容器本体と、前記液状内容物を外部に排出するための開口部を一端に備え、他端が前記容器本体に連結されている筒状の首部とを備えるエアゾール容器の前記開口部に冠着されるエアゾール容器用マウンティンカップであって、
前記開口部を被覆する上面部と、
前記上面部の周端縁から連設され、前記首部の外周面と圧着される筒状の裾部と、を備え、
前記裾部には、該裾部の周端縁まで延びる切込部が設けられている、
ことを特徴とするエアゾール容器用マウンティンカップ。
【請求項2】
前記裾部に設けられる切込部は、
前記裾部の周方向に沿って、略等間隔に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用マウンティンカップ。
【請求項3】
液状内容物を収容する容器本体と、前記液状内容物を外部に排出するための開口部を一端に備え、他端が前記容器本体に連結されている筒状の首部とを備えるエアゾール容器に冠着されるエアゾール容器用マウンティンカップであって、
前記開口部を被覆する上面部と、
前記上面部の周端縁から連設され、前記首部の外周面と圧着する筒状の裾部と、を備え、
前記裾部には、該裾部の周端縁に開口し前記上面部に向かう方向に沿って延びる切欠部が設けられる、
ことを特徴とするエアゾール容器用マウンティンカップ。
【請求項4】
前記裾部に設けられる切欠部は、
前記裾部の周方向に沿って、略等間隔に配置される、
ことを特徴とする請求項3に記載のエアゾール容器用マウンティンカップ。
【請求項5】
液状内容物を収容する容器本体と、前記液状内容物を外部に排出するための開口部を一端に備え、他端が前記容器本体に連結されている筒状の首部とを備えるエアゾール容器であって、
前記開口部が、請求項1〜請求項4に記載のエアゾール容器用マウンティンカップにより冠着された、
ことを特徴とするエアゾール容器。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2006−89108(P2006−89108A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279558(P2004−279558)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】