説明

エアゾール容器用吐出装置

【課題】 エアゾール容器用吐出装置において、容器体に組付く装着体に対するヘッドの、後方からの挿入組付けを可能とすることにより、装着体の構造を簡単化すると共に、ノズルに対する長さ制限の制約を無くすことを目的とする。
【解決手段】 装着体7のカバー筒10に、前後に開口11、12を設け、後部開口12からヘッド19を挿入可能とし、ヘッド19の前後に載置リブ22、23を設けて、ヘッド19を両開口11、12間に、落下することなく掛け渡し状に支持し、これにより装着体7に対するヘッド19の仮組付きを安定したものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のエアゾール式容器から同時に内容物を噴出させると共に、この両噴出内容物を、一つのノズルから一緒に吐出するエアゾール容器用吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ある種の染毛剤のように、2種の薬液を使用時に一緒に吐出するタイプのもので、薬液を個々にエアゾール式の容器体に収納し、この一対の容器体から内容物である薬液を同時に噴出させると共に、この噴出させた薬液を一緒に一ヶ所から吐出するものとして、特開2000−109150号公報に開示された技術がある。
【特許文献1】特開2000−109150号公報
【0003】
この従来技術は、ステムが設けられた2つの容器体と、両容器体に着脱自在に組付くカバーと、このカバー内に収納されるノズルおよび操作部を具備し、ノズルは、容器体のステムに係合し、カバーに設けたノズル摺動片および摺動限定帯体により規制された状態で、ステムと共に上下可能にカバーに収納され、操作部は、両側に設けた一対の第1突設片を、カバーのスリットに嵌合させて固定される。
【0004】
この操作部には、ヒンジ部を残して切り抜いた形で操作レバーの基板部が形成されており、その切欠部嵌合部に第2突設片を一対設け、これをカバー側に設けた小孔に嵌合させ、さらに接着剤で操作部全体をカバーに固定している。
【0005】
そして、操作レバーを指で押下げると、その基板部の裏面に形成されている半円状の2つの突起がノズルの上面を押し、それに伴って両容器体のステムが押下げられ、両容器体から薬剤が、導入部を経てノズル内に入り、ノズル基部およびノーズ部に形成された誘導路を通って同時に吐出される。
【0006】
このように、上記した従来技術にあっては、例えばブラシ上に両薬剤を同時に吐出させて、速やかに染毛処理等を行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、ノズルを一定姿勢を維持した状態で、昇降変位可能に組付け保持するために、カバーは、ノズル摺動片や摺動限定帯体等を設ける必要があり、このため内部構造が複雑化して、カバーを成形する金型の構造が複雑になると共に、高い成形性を得ることができない、と云う問題があった。
【0008】
また、この種の吐出装置にあっては、構造を簡単にするため、操作レバーは、一般にはヒンジ部を介してカバーに一体設されているので、カバーに対してノズルを上方から挿入状にセットすることになり、このためノズル口の長さが制限されてしまう、と云う問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、カバー相当部分に対するノズル相当部分の、後方からの挿入組付けを可能とすることを技術的課題とし、もってカバー相当部分の構造を簡単化すると共に、ノズル口相当部分に対する長さ制限の制約を無くすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液状内容物吐出容器の主たる構成は、並列に固定された一対のエアゾール式容器体のステムを一つの吐出筒に連通させる通路体と、この通路体の吐出筒に連結するノズルを有するヘッドと、通路体とヘッドを覆って両容器体の上端部に外嵌組付きし、上端の頂壁にヘッドを押下げる押圧板を設けた装着体とを有したものとなっている。
【0011】
ヘッドが位置する装着体のカバー筒には、ヘッドのノズルが突出可能な前部開口と、ヘッドが通過可能な後部開口を、前後に対向して開設しており、ヘッドには、前部開口の開口縁下端に載置可能な前載置リブと、この前載置リブが前部開口の開口縁下端に載置した状態で、後部開口の開口縁下端に載置可能な後載置リブを設けている。
【0012】
ヘッドを、装着体のカバー筒に、後部開口から挿入して、その前載置リブおよび後載置リブを、前部開口および後部開口の開口縁下端に載置させた仮組付け状態では、ヘッドは、カバー筒の前部開口の開口縁下端と後部開口の開口縁下端との間に、落下することなく掛け渡し状に組付けられ、その状態を、仮組付き状態として維持する。
【0013】
この仮組付き状態は、そのままで通路体との結合可能姿勢となっているので、装着体にヘッドを仮組付けした状態のまま、このヘッドに対する通路体の結合組付けを実施することができる。
【0014】
また、装着体に対するヘッドの仮組付きは、ヘッドに設けた前後の載置リブにより達成され、ヘッドを仮組付けするための装着体における構成は、前後の開口であるので、装着体の内部構造が簡単なものとなっている。
【0015】
カバー筒の前部開口と後部開口は、前後に対向して設けられており、このカバー筒に対するヘッドの組付けは、後部開口からの挿入組付けであるので、ヘッドのノズルの長さが、このヘッドのカバー筒に対する挿入組付けに支障を生じさせることは全くない。
【0016】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、装着体のカバー筒に、挿入組付けされたヘッドのヘッド本体の側面に対向して一対のガイド板片を設け、このガイド板片に縦割り溝状のガイド溝を形成すると共に、ヘッド本体の両側面に、ガイド溝にスライド自在に係合する突片を設けた、ものである。
【0017】
装着体のガイド板片にガイド溝を設け、ヘッド本体にガイド溝にスライド自在に係合する突片を設けたものにあっては、装着体のカバー筒に仮組付きしたヘッドの組付き姿勢を、正規の組付き姿勢を同じに規制保持することになる。
【0018】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、前載置リブおよび後載置リブを、ヘッド本体の下端部よりも上位に位置させ、ヘッド本体の下端部の前後幅を、前部開口と後部開口との間隔よりもわずかに小さい値に設定した、ものである。
【0019】
前載置リブおよび後載置リブを、ヘッド本体の下端部よりも上位に位置させ、ヘッド本体の下端部の前後幅を、前部開口と後部開口との間隔よりもわずかに小さい値に設定したものにあっては、前部開口の開口縁および後部開口の開口縁に対する、ヘッド本体の下端部の突き当たりにより、仮組付けされたヘッドのカバー筒に対する前後方向への変位が規制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明のエアゾール容器用吐出装置は、装着体に対してヘッドを、前部開口の開口縁下端と後部開口の開口縁下端との間に、落下することなく掛け渡し状に組付けられ、その状態を、仮組付き状態として維持し、この仮組付き状態は、そのままで通路体との結合可能姿勢となっているので、装着体にヘッドを仮組付けした状態のまま、このヘッドに対する通路体の結合組付けを実施することができ、これにより吐出装置の組立て作業を、簡単にかつ安全に行うことができる。
【0021】
また、装着体の内部構造が簡素となるので、成形用の金型構造が簡単となって成形性の向上が図れる。
【0022】
装着体に対するヘッドの組付けは、後部開口からの挿入組付けであるので、ヘッドのノズルの長さが、このヘッドのカバー筒に対する挿入組付けに支障を生じさせることは全くなく、これにより必要とする長さのノズルを、自由に設けることができる。
【0023】
装着体のガイド板片にガイド溝を設け、ヘッド本体にガイド溝にスライド自在に係合する突片を設けたものにあっては、装着体のカバー筒に仮組付きしたヘッドの組付き姿勢を、正規の組付き姿勢を同じに規制保持することになるので、そのままヘッドに対して通路体を組付けることができ、吐出装置の組立作業が、より一層簡単化する。
【0024】
前載置リブおよび後載置リブを、ヘッド本体の下端部よりも上位に位置させ、ヘッド本体の下端部の前後幅を、前部開口と後部開口との間隔よりもわずかに小さい値に設定したものにあっては、仮組付けされたヘッドのカバー筒に対する前後方向への変位が規制されるので、装着体に対するヘッドの仮組付き姿勢が安定して保持され、これにより吐出装置の組立作業が安定したものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照して説明する。
【0026】
図1から図4は、本発明の一実施形態を示すもので、エアゾール容器である容器体1は、細長有底円筒状をした金属製本体の縮径した口部に、弁による開閉機能部を備えたステム3を有する金属製のキャップをカシメ固定して頭部2を形成し、ステム3は、この頭部2上面に起立状に位置している。
【0027】
この容器体1は、一対並列に隣接された状態で、頭部2にきつく外嵌する、締結体4の長円筒状をした結合筒5により締結されている。
【0028】
装着体7は、締結体4の結合筒5に外嵌する長円筒状の外嵌筒8の上端に、縮径した段部を介して、有頂長円筒状のカバー筒10を連設し、外嵌筒8の左右部分に、締結体4に対する外嵌筒8の係止保持する係止片6の、装着体7に対する係止を解除する押圧片9が設けられており、またカバー筒10の前後には、前部開口11と後部開口12が、その開口縁の下端を、同じ高さレベルにして、対向して開設されている。
【0029】
また、カバー筒10の前部開口11と後部開口12の、それぞれの開口縁両側端間には、左右に対向して一対のガイド板片17(図3参照)が、起立姿勢で設けられているが、このガイド板片17には割り溝状に垂直に延びるガイド溝18が設けられている。
【0030】
さらに、カバー筒10の頂壁13の中央部分には、前端をヒンジ16により連結された状態で、押圧板14が切欠き状に形成されており、この押圧板14の下面には、一対の当接片15(図3参照)が垂下状に設けられている。
【0031】
ヘッド19は、基本的には有頂筒状となったヘッド本体20と、このヘッド本体20の前側上端部から前方に延出設されたノズル21と、ヘッド本体20の頂壁から垂下設された状態で、ノズル21に連通された組付き筒24と、ヘッド本体20の前側とノズル21の下側とにかけて垂下状に設けられた前載置リブ22と、ヘッド本体20の、上側が下降傾斜した後側に突出状に設けられた後載置リブ23と、そしてヘッド本体20の側面に突設されて、装着体7のガイド溝18に摺動自在に係合する突片25(図3参照)とから構成されている。
【0032】
容器体1とヘッド19を連結する通路体26は、ヘッド19の組付き筒24に密嵌入する吐出筒28を、上面中央に起立設した上蓋部27と、下面の左右端部に、容器体1のステム3に密嵌合する嵌合筒30を垂下設した下蓋部29とを、ヒンジ部33により一体結合して構成され、ロック片31で上蓋部27と下蓋部29を閉じた状態では、内部に両嵌合筒30と吐出筒28を連通する通路を形成する。
【0033】
なお、下蓋部29の下面中央に垂下設された摘み片32は、通路体26をヘッド19に組付ける際における、指先による支持部を形成するものである。
【0034】
次に、図5と図6を参照しながら、吐出装置の組立て手順を説明する。
図5に示すように、装着体7に対して、ヘッド19を後部開口12から挿入組付けする。
【0035】
この際、挿入したヘッド19を、ヘッド本体20の下端部が、前部開口11の開口縁下端に後方から突き当たる位置で、下降変位させ、これにより前載置リブ22および後載置リブ23を、それぞれ前部開口11の下端開口縁および後部開口12の下端開口縁に載置させると共に、ヘッド本体20の下端部を、前部開口11の開口縁下端部と後部開口12の開口縁下端部との間に位置させる。
【0036】
この状態(図6参照)では、ヘッド本体20の下端部の装着体7に対する突き当たりにより、ヘッド19は、装着体7に対して殆ど前後方向に変位することができない状態となっており、ヘッド19は、この状態で、前部開口11の下端開口縁と後部開口12の下端開口縁の間に、掛け渡し状に組付き保持されることになるので、その仮組付き姿勢が安定して保持される。
【0037】
なお、ヘッド19を装着体7に挿入組付けする際に、ヘッド19の突片25もガイド板片17のガイド溝18に係合するが、この突片25のガイド溝18に対する係合を円滑に達成させるために、ヘッド本体20の側壁に、突片25に隣接して縦割り溝を設けておき、この縦割り溝によりヘッド本体20の側壁を弾性変形し易くしておくのがよい。
【0038】
装着体7に対するヘッド19の仮組付け(図6参照)を達成したならば、通路体26を下方から装着体7内に挿入しながら、ヘッド19に組付け、ノズル21と両嵌合筒30を連通させ、これにより装着体7とヘッド19と通路体26との組立てが完了する。
【0039】
この組立てられた装着体7とヘッド19と通路体26の組合せ物を、一対の容器体1を並列に隣接締結している締結体4に、通路体26の嵌合筒30をステム3に嵌合させながら、上方から被せるようにして装着体7の外嵌筒8により組付け、吐出装置の容器体1への組付けを達成する。
【0040】
なお、装着体7とヘッド19と通路体26の組合せ物を容器体1に組付けた際に、ヘッド19と通路体26との組合せ物は、ステム3により上方に押上げられて、前載置リブ22および後載置リブ23を、前部開口11の開口縁下端および後部開口12の開口縁下端から浮き上げ、ヘッド本体20の上面を、押圧板14の当接片15に接触、もしくは近接して位置させ(図2および図3参照)て、内容物吐出のための、押圧板14によるヘッド19の押下げを可能としている。
【0041】
吐出装置の内部を洗浄するために、装着体7とヘッド19と通路体26の組合せ物を、容器体1側から分離するには、容器体1のステム3と通路体26の嵌合筒30の間の結合力に比べて、ヘッド19の組付き筒24と通路体26の吐出筒28の間の結合力の方が強いので、装着体7の押圧片9を押し込んで、締結体4の係止片6との係止を解除した状態で、容器体1側に対して装着体7とヘッド19と通路体26の組合せ物を引上げればよい。
【0042】
装着体7とヘッド19と通路体26の組合せ物の分解は、通路体26の摘み片32を指先で摘んで下方に引き、ヘッド19の組付き筒24と通路体26の吐出筒28の組付きを解除することにより達成される。
【0043】
通路体26の洗浄は、ヒンジ部33で連結されている上蓋部27と下蓋部29を、ロック片31を解除して開放して、水等の洗浄液により達成し、またヘッド19の洗浄は、ノズル21もしくは組付き筒24から水等で洗い流す等して達成する。
【0044】
洗浄後の装着体7とヘッド19と通路体26との組立ては、前述した手順で行えばよいので、簡単に行うことができる。このように、装着体7とヘッド19と通路体26との組立てを、簡単にそして正確に達成することができるので、吐出装置の洗浄をきわめて容易に実施することでき、これにより好ましい使用状況を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明のエアゾール容器用吐出装置は、ノズルの延出長さが制限されることなく、装着体に対するヘッドの仮組付け姿勢を、安定して一定させることができ、エアゾール容器に組付けられる吐出装置として、幅広い利用展開が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例示す、側面図である。
【図2】図1に示した実施例の、拡大縦断側面図である。
【図3】図1に示した実施例の、拡大半縦断正面図である。
【図4】図1に示した実施例の、拡大平面図である。
【図5】装着体に対するヘッドの組立て状態を示す、動作説明図である。
【図6】装着体とヘッドの組合せ物に対する通路体の組立て状態を示す、動作説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ;容器体
2 ;頭部
3 ;ステム
4 ;締結体
5 ;結合筒
6 ;係止片
7 ;装着体
8 ;外嵌筒
9 ;押圧片
10;カバー筒
11;前部開口
12;後部開口
13;頂壁
14;押圧板
15;当接片
16;ヒンジ
17;ガイド板片
18;ガイド溝
19;ヘッド
20;ヘッド本体
21;ノズル
22;前載置リブ
23;後載置リブ
24;組付き筒
25;突片
26;通路体
27;上蓋部
28;吐出筒
29;下蓋部
30;嵌合筒
31;ロック片
32;摘み片
33;ヒンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に固定された一対のエアゾール式容器体のステムを一つの吐出筒に連通させる通路体と、該通路体の吐出筒に連結するノズルを有するヘッドと、前記通路体とヘッドを覆って両容器体の上端部に外嵌組付きし、上端の頂壁に前記ヘッドを押下げる押圧板を設けた装着体とを有し、前記ヘッドが位置する装着体のカバー筒に、前記ヘッドのノズルが突出可能な前部開口と、前記ヘッドが通過可能な後部開口を開設し、前記ヘッドに、前記前部開口の開口縁下端に載置可能な前載置リブと、該前載置リブが前部開口の開口縁下端に載置した状態で、前記後部開口の開口縁下端に載置可能な後載置リブを設けたエアゾール容器用吐出装置。
【請求項2】
装着体のカバー筒に、挿入組付けされたヘッドのヘッド本体の側面に対向して一対のガイド板片を設け、該ガイド板片に縦割り溝状のガイド溝を形成すると共に、前記ヘッド本体の両側面に、前記ガイド溝にスライド自在に係合する突片を設けた請求項1に記載のエアゾール容器用吐出装置。
【請求項3】
前載置リブおよび後載置リブを、ヘッド本体の下端部よりも上位に位置させ、前記ヘッド本体の下端部の前後幅を、前部開口と後部開口との間隔よりもわずかに小さい値に設定した請求項1または2に記載のエアゾール容器用吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−52812(P2010−52812A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222303(P2008−222303)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】