説明

エアゾール容器用噴射機構及びエアゾール噴射装置

【課題】 単純な構成でボタン部を斜めに押し下げることによってステムを押下し、ステムを押し下げ位置に固定することが可能なエアゾール容器用噴射機構及びエアゾール噴射装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 エアゾール容器50に嵌合させる嵌合手段25を備えたキャップ部10と、内容物を噴射する噴射口4のほぼ反対側に突設した被係合部3を備えたボタン部5と、被係合部3の係合面3aと係合するキャップ部10の一部に設けられた係合片6と、係合面3aの一端から突起したストッパー部3bと、を有し、係合片6を係合面3aに摺動させながらストッパー部3bまで回動させることによってボタン部5を斜めに押し下げ、ステム7を押下しステム7を押下位置に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器内に残留するガス成分を除去するためのエアゾール容器の噴射機構及びエアゾール噴射装置に関し、特に、エアゾール容器に装着された状態でステムの押し下げを維持して残留ガス成分の除去を可能にするエアゾール容器用噴射機構及びエアゾール噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール缶の頂部に備えた押圧部を押圧することにより、エアゾール式缶内のガスを噴射するエアゾール容器が使用されている。
このエアゾール容器は、一般に、使い切った場合でも、使用済みエアゾール容器に内容物放出用のガスが残っていることが多い。このため、使用済みのエアゾール容器を廃棄する際に、残留ガスを簡単な操作で放出できる残ガス廃棄機構が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記特許文献の残ガス廃棄機構によれば、押ボタンと一体に形成したガス抜きモード設定用レバーをキャップの外周面に露出させ、このガス抜きモード設定用レバーを少し押し下げてから反時計回り方向に回動することにより、ガス抜きモード設定用レバーの梁状片部がテーパ面に案内されてガス抜きモード設定用レバーが容器本体に向けて移動する。これにより、ガス抜きモード設定用レバーとともに、押ボタンが容器本体に向けて移動し、押ボタンでステムを容器本体内に押し下げて容器本体内の残留ガスを放出する。
【特許文献1】特開2004−168356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のエアゾール容器用残留ガス廃棄機構は、構成部品点数が多く且つ操作に迅速性を欠く欠点があった。
また、上記特許文献の残ガス廃棄機構では、ガス抜きモード設定用レバーがキャップの外周面に露出している。このため、通常の使用時に、ガス抜きモード設定用レバーが邪魔になる場合や、誤操作を起こす場合があり、取扱い性の観点から改良の余地が残されていた。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解消し、比較的単純な構成でボタン部を斜めに押し下げることによってステムを押下し、ステムを押し下げ位置に固定することが可能なエアゾール容器用噴射機構及びエアゾール噴射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、以下の手段により達成される。
(1) ボタン部を押下することによってステムを押下させ内容物を噴射するエアゾール容器に嵌合される噴射機構であって、
前記エアゾール容器に嵌合させる嵌合手段を備えたキャップ部と、
前記内容物を噴射する噴射口のほぼ反対側に突設した被係合部を備えたボタン部と、
前記被係合部の係合面と係合する前記キャップ部の一部に設けられた係合片と、
前記係合面の一端から突起したストッパー部と、を有し、
前記係合片を前記係合面に摺動させながら前記ストッパー部まで回動させることによって前記ボタン部を斜めに押し下げ、前記ステムを押下し前記ステムを押下位置に保持することを特徴とする噴射機構。
(2) 前記係合片は、板状であることを特徴とする(1)に記載の噴射機構。
(3) 前記係合片は、通常の噴射状態における前記ボタン部の押圧面よりも下部に設けられていることを特徴とする(1)に記載の噴射機構。
(4) 前記係合片は前記噴射機構の略中央から前記キャップ部の周縁部に向かって傾斜するように形成されていることを特徴とする(1)に記載の噴射機構。
(5) 前記係合片と近接する前記キャップ部には切欠部が形成されていることを特徴とする(1)に記載の噴射機構。
(6) 前記(1)〜(5)の何れかに記載の噴射機構を備えたことを特徴とするエアゾール噴射装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、係合片を係合面に摺動させながらストッパー部まで回動させることによってボタン部を斜めに押し下げ、ステムを押下し、ステムを押下位置に保持することが可能である。従って、比較的単純な構成でかつ取扱い性に優れた噴射機構を提供することが可能である。また、ストッパー部を設けることによって、所定の位置で係合片の回動が制限されるので使用者が必要以上に係合片を回動させることがない。
【0008】
また、本発明によれば、係合片は、板状であることを特徴としている。従って、複雑な形状の係合片を用いずとも簡易な構成の噴射機構を提供することが可能である。
【0009】
また、本発明によれば、係合片はボタン部の押圧面よりも下部に設けられている。
このように形成することによって、使用者がボタン部の押圧面を押下する際にも係合片が邪魔になることなく、スムーズに押下することが可能である。
【0010】
また、本発明によれば、係合片は噴射装置の略中央からキャップ部の周縁部に向かって傾斜するように形成されている。従って、使用者がボタン部の押圧面を押圧する際に押圧面に指を添えやすく操作性に優れた噴射機構を提供することが可能である。
【0011】
また、本発明によれば、係合片の先端部の下部近傍付近に位置するキャップ部の周縁部には切欠部が形成されている。切欠部を設けることによって係合片を起こし上げる際、使用者の指を誘導する部位となり、容易に係合片の先端部に指を引っ掛けることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず本発明に係る噴射機構の構造について図1〜図3を用いて説明する。
図1は、本発明に係る噴射機構の背面図、図2は本発明に係る噴射機構の上面図、図3は図1のA−A´線断面図である。
【0013】
図1〜図3に示すように、本発明に係る噴射機構30の要部構造は、エアゾール容器50の肩部50aに冠着したキャップ部10と、キャップ部10の天板部12に設けられた噴射ガス案内凹部12aと指先案内凹部12bとの間に設けられたボタン部5と、ボタン部5の噴射口4の反対側すなわちキャップ部10の指先案内凹部12b側に設けられた係合片6とから構成される。
なお、キャップ部10、ボタン部5及び係合片6は夫々プラスチック成形部材から成るが、このプラスチック成形部材に限らず金属部材等の他の材料であっても良い。
【0014】
本実施形態において、噴射機構30はキャップ部10が備える嵌合手段25によってエアゾール容器50の肩部50aに嵌合され、噴射機構30とエアゾール容器50とによってエアゾール噴射装置40を構成している。
【0015】
まず、キャップ部10の構造について説明する。
図1及び図2に示すようにキャップ部10は、上面視円形形状を有し、ガス噴射方向Bに位置する天板部12にボタン部5の噴射口4からの噴射を許容するように噴射ガス案内凹部12aが形成されている。一方その反対側に位置する天板部12には指先案内凹部12bが形成されている。このように、通常の噴射状態において、指先案内凹部12bはボタン部5を押下する際、使用者の指を誘導する部位となっており、指先案内凹部12bに指を添えれば容易にボタン部5を押下することが可能である。
【0016】
なお本実施形態において指先案内凹部12bは噴射ガス案内凹部12aよりも幅広の凹部を形成している。この様に形成することによって、幅狭の噴射ガス案内凹部12aには指を添えにくいので、誤って使用者が噴射ガス案内凹部12a側から指を添えてボタン部5を押下し、エアゾール容器50内部のガスを使用者自身に噴射してしまうという虞がなくなる。
【0017】
また、図1及び図3に示すようにキャップ部10の指先案内凹部12b側には、非噴射状態において係合片6の先端部6aの下部近傍付近に切欠部14が設けられている。切欠部14を設けることによって係合片6を起こし上げる際、使用者の指を誘導する部位となり、容易に先端部6aに指を引っ掛けることが可能である。
【0018】
次にボタン部5の構造について説明する。
ボタン部5は、略円柱形状を有し、略中央部にはエアゾール容器50のステム7と嵌合する円筒形状のステム嵌合筒16が垂設されており、さらにボタン部5の前方に位置する噴射口4とステム嵌合筒16とを結ぶ噴射経路17がステム嵌合筒16と垂直に接続されている。また、噴射口4の更に前方にはノズル11が挿着され、エアゾール容器50の内容物はステム嵌合筒16から噴射経路17を通り、噴射口4を経てノズル11から外部へ噴射される。
【0019】
また、ボタン部5の上面には押圧面15が形成され、押圧面15は噴射口4側からボタン部5の被係合部3側に向かって緩やかな下り傾斜の斜面となっている。
【0020】
さらに、ボタン部5の噴射口4の反対側からは後に説明する係合片6と係合する被係合部3が突設されている。被係合部3は、断面略三角形状を有し、係合片6と係合する係合面3aと、ボタン部5の底面5aと鈍角を形成する斜面3cと、係合面3aの一端と斜面3cの一端とを結ぶストッパー部3bと、から形成されている。ストッパー部3bは、略三角形状の頂点部分を構成し、係合面3aから突起している。このように、ストッパー部3bを設けることによって、所定の位置で係合片6の回動が制限されるので使用者が必要以上に係合片6を回動させることがない。
【0021】
次に、係合片6の構造について説明する。
図1及び図3に示すように係合片6は、略長方形状の板状であり、その幅方向には図示せぬ軸穴が設けられている。また図2に示すように係合片6は、軸穴に軸20を挿通させ軸20の両端をキャップ部10側に設けられた図示せぬ挿入孔に挿入することによって、軸20を支軸として回動可能に装着されている。
【0022】
ここで、本実施形態においてキャップ部10に係合片6を装着させるために、軸20と図示せぬ軸穴及び挿入孔とを用いたがこれらの手段に限られるものではない。例えば、係合片6の幅方向両端にピンを設け、キャップ部10側にピン穴を設ければピンをピン穴に挿入するだけでキャップ部10に係合片6を装着させることも可能である。
【0023】
また、係合片6はボタン部5の押圧面15よりも下に位置するように設けられている。このように形成することによって、使用者がボタン部5の押圧面15を押下する際にも係合片6が邪魔になることなく、スムーズに押下することが可能である。さらに、図3に示すように、係合片6は噴射装置30の略中央からキャップ部10の後方の周縁部に向かって傾斜するように形成されている。従って、使用者がボタン部の押圧面を押圧する際に押圧面に指を添えやすく操作性に優れた噴射機構を提供することが可能である。
【0024】
なお、図3に示すように係合片6の非噴射状態において、係合片6と被係合部3は互いにその一部分が重ね合うように形成されている。このように形成することによって、被係合部3は係合片6の下部に位置するので、使用者が押圧面15を押下することによってエアゾール容器50の内容物を噴射する状態(以下、通常噴射状態という。)においては、凹凸部を有する被係合部3が邪魔になることがなく、平板な係合片6に指を添えやすくなっている。
【0025】
以上、上述したように構成される本発明に係るエアゾール噴射装置40の作用効果を図3〜図5に基づいて説明する。図4は本発明に係るエアゾール噴射装置40の通常噴射状態を示す断面図である。図5は係合片6を回動することによって噴射状態を維持した状態(以下、噴射維持状態という。)を示した断面図である。
【0026】
まず、図3の非噴射状態から図4の通常噴射状態に移行する場合を説明する。
使用者がキャップ部10の指先案内凹部12b側から指を挿入し、指先をボタン部5の押圧部15に添える。次に、押圧部15を押圧し、ボタン部5を矢印C方向に押し下げる。ボタン部5を押し下げることによってエアゾール容器50のステム7が押下されステム嵌合筒16→噴射経路17→噴射口4を経由してノズル11からエアゾール容器50の内容物が矢印D方向へ噴射する。
【0027】
次に、図3の非噴射状態から係合片6を回動させて噴射維持状態に移行する場合を説明する。
【0028】
まず、使用者はキャップ部10の切欠部14に指先を誘導されながら係合片6の先端部6aに指先を引っ掛ける。係合片6を矢印E方向に回動させつつ起こし始めると、係合片6の後端部6bがボタン部5の被係合部3の係合面3aに当接する。係合片6の後端部6bが係合面3aに当接した後、さらに係合片6を矢印E方向に回動するとボタン部5の斜面3cの他端部3dを支点としてボタン部5が矢印G方向に押し下げられる。ボタン部5の押し下げとともにステム7も斜め方向から押し下げられ、エアゾール容器50内の内容物が矢印F方向に噴射される。
【0029】
係合片6を係合面3aに摺動させながらストッパー部3bまで回動させると係合片6は係合位置で停止し、ボタン部5を傾斜した状態に維持することができる。すなわち、ステム7を押下した状態で維持するので噴射口4からの噴射状態を維持することが可能となる。
【0030】
なお、図5に示した噴射維持状態は、係合片6の先端部6aを摘んで矢印Eと反対方向に回動させることによって、解除することが可能である。すなわち、エアゾール噴射装置40の噴射維持状態と非噴射維持状態との切替えを複数回にわたって行うことが可能である。
【0031】
以上、説明したように、本実施形態の噴射機構30によれば、係合片6を係合面3aに摺動させながらストッパー部3bまで回動させてボタン部5を斜めに押し下げることによってステム7を押下位置に保持するように構成されている。従って、比較的容易に噴射維持状態に切り替えることが可能である。さらに、係合片6の先端部6aを摘んで矢印Eと反対方向に回動させることによって、比較的容易に噴射維持状態を解除することが可能である。すなわち、噴射機構30の噴射維持状態と非噴射状態との切替えを複数回にわたって行うことが可能である。
【0032】
また、本実施形態の噴射機構30によれば、通常噴射状態において、指先案内凹部12bはボタン部5を押下する際、使用者の指を誘導する部位となっているので、指先案内凹部12bに1本の指を添えれば容易にボタン部5を押下することが可能である。
【0033】
また、本実施形態の噴射機構30によれば、指先案内凹部12bは噴射ガス案内凹部12aよりも幅広の凹部を形成している。この様に形成することによって、幅狭の噴射ガス案内凹部12aには指を添えにくいので、誤って使用者が噴射ガス案内凹部12a側から指を添えてボタン部5を押下し、エアゾール容器50内部のガスを使用者自身に噴射してしまうという虞がなくなる。
【0034】
また、本実施形態の噴射機構30によれば、キャップ部10に切欠部14を設けることによって係合片6を起こし上げる際の誘導部位となり、先端部6aに容易に指を引っ掛けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態における噴射機構の背面図である。
【図2】本実施形態における噴射機構の上面図である。
【図3】本実施形態における噴射機構のA−A´線断面図である。
【図4】本実施形態における噴射機構の通常噴射状態を示す図である。
【図5】本実施形態における噴射機構の噴射維持状態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
3 被係合部
3b ストッパー部
4 噴射口
5 ボタン部
6 係合片
6a 先端部
7 ステム
10 キャップ部
15 押圧面
16 ステム嵌合筒
20 軸
30 噴射機構
40 エアゾール噴射装置
50 エアゾール容器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタン部を押下することによってステムを押下させ内容物を噴射するエアゾール容器に嵌合される噴射機構であって、
前記エアゾール容器に嵌合させる嵌合手段を備えたキャップ部と、
前記内容物を噴射する噴射口のほぼ反対側に突設した被係合部を備えたボタン部と、
前記被係合部の係合面と係合する前記キャップ部の一部に設けられた係合片と、
前記係合面の一端から突起したストッパー部と、を有し、
前記係合片を前記係合面に摺動させながら前記ストッパー部まで回動させることによって前記ボタン部を斜めに押し下げ、前記ステムを押下し前記ステムを押下位置に保持することを特徴とする噴射機構。
【請求項2】
前記係合片は、板状であることを特徴とする請求項1に記載の噴射機構。
【請求項3】
前記係合片は、通常の噴射状態における前記ボタン部の押圧面よりも下部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の噴射機構。
【請求項4】
前記係合片は前記噴射機構の略中央から前記キャップ部の周縁部に向かって傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の噴射機構。
【請求項5】
前記係合片と近接する前記キャップ部には切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の噴射機構。
【請求項6】
前記請求項1〜請求項5の何れかに記載の噴射機構を備えたことを特徴とするエアゾール噴射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−62750(P2007−62750A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248106(P2005−248106)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】