説明

エアゾール容器

【課題】 高温下で、容器本体の内容物を外部へスムースに排出する経路を確実に形成することにより、バルブ機構の飛び出しや容器本体の破裂を確実に防止し、安全性の高いエアゾール容器を提供すること。
【解決手段】 容器本体11とバルブ機構13とを有するエアゾール容器10であって、容器本体11は、開口部14と開口部14に連設する首部15を有し、上記開口部14を覆うように配された上記バルブ機構13が、上記容器本体11の上記開口部14外周より上記首部15の外周までを覆うように延びた取付プレート12によって上記容器本体11に取付けられ、上記容器本体11の上記取付プレート12に覆われた上記開口部14の外周面から、上記首部15の外周面の上記取付プレート12に覆われない部分に至る溝26が形成されたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温下におかれても容器本体の破裂等を防止できるエアゾール容器に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器は、容器本体の首部に開口部が連設され、この開口部にバルブ機構が配設され、このバルブ機構が、上記容器本体の上記開口部及び上記首部のそれぞれの外周まで延びた取付プレートによって上記容器本体に取付けられている。
【0003】
特許文献1には、高圧下にあっても、バルブ機構の飛び出しや容器本体の破裂を防止できるエアゾール容器として、容器本体の取付プレートに覆われた開口部の外周面に、容器本体の軸方向へ延びる溝を形成するものが開示されている。
【0004】
特許文献1のエアゾール容器を高圧下におくと、容器本体の開口部及び首部が熱変形し、取付プレートの保持力が弱くなるとともに、容器本体の内部圧力が上昇し、首部の変形により取付プレートの裾部が押し広げられる。この結果、取付プレートが、バルブ機構と共に容器本体の軸方向へ若干移動し、バルブ機構と容器本体との間にリーク通路が形成される。このとき、容器本体の開口部の外周面に容器本体の軸方向へ延びる溝が形成され、かつ押し広げられた取付プレートの裾部が首部の外周面に対して隙間を形成するから、上記リーク通路がこの溝、隙間に連通し、容器本体の内容物がこれらのリーク通路、溝、隙間を経て外部へ排出される。これにより、バルブ機構の飛び出しや容器本体の破裂の防止を図るものである。
【特許文献1】特許2757277
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のエアゾール容器では、容器本体の開口部の外周面であって、取付プレートに覆われた範囲内にだけ溝を形成しており、取付プレートの裾部(下縁部)を容器本体の首部に全周隙間なく取付けている。このため、エアゾール容器が高圧下におかれて、容器本体の熱変形した首部が取付プレートの裾部を押し広げても、取付プレートの裾部は首部の外周面に対して必ずしも大きな隙間を拡開できず、容器本体の内容物の種類によってはこの隙間経由で外部へスムースに排出するのが困難になることがある。また、容器によっては首元が大きく変形することでマウンテンカップの端面に食い込むようになり、ミゾ部を覆ってしまうこともある。
【0006】
本発明の課題は、高温下で、容器本体の内容物を外部へスムースに排出するための経路の形成をより確実にしたエアゾール容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、容器本体とバルブ機構とを有するエアゾール容器であって、容器本体は、開口部と開口部に連設する首部を有し、上記開口部を覆うように配された上記バルブ機構が、上記容器本体の上記開口部外周より上記首部の外周までを覆うように延びた取付プレートによって上記容器本体に取付けられ、上記容器本体の上記取付プレートに覆われた上記開口部の外周面から、上記首部の外周面の上記取付プレートに覆われない部分に至る溝が形成されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
エアゾール容器10は、図1に示す如く、容器本体11の開口部14に、取付プレートとしてのマウンティングカップ12を介してバルブ機構13が取付けられて構成される。容器本体11内に液体や気体の内容物が充填され、この内容物がバルブ機構13の操作により外部へ吐出される。
【0009】
容器本体11は、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック樹脂にて、上記開口部14、首部15、胴部及び底部(不図示)が順次連続して成形されたものである。この容器本体11は通常、約70℃以上の高温下で熱変形する。また、この容器本体11の開口部14は、首部15に対し外方へ膨出して形成される。
【0010】
バルブ機構13は、フランジ部18Aを有するバルブハウジング18に、ステム19が軸方向に移動自在に内蔵され、容器本体11の底部まで延びるディップチューブ20が嵌合されたものである。バルブハウジング18のフランジ18Aが、容器本体11の開口部14の上面14Aにパッキン21を介して載置される。前記マウンティングカップ12は、このフランジ部18Aから容器本体11の開口部14の外周を覆い、その裾部(下縁部)12Aが首部15の開口部14側外周まで延びて該首部15の全周に隙間なく被着し、バルブハウジング18を容器本体11に取付ける。このマウンティングカップ12は、例えばアルミニウム合金等にて構成される。
【0011】
ステム19とバルブハウジング18との間にコイルスプリング22が介在される。また、ステム19には、軸方向に延びる吐出通路23が穿設されるとともに、この吐出通路23に連通し、外周面に対向する連通路24が半径方向に形成される。更に、バルブハウジング18の天面とマウンティングカップ12との間に、連通路24の開口を閉止可能とするステムラバー25が介装される。従って、通常時には、コイルスプリング22の付勢力によって連通路24がステムラバー25により閉止され、ステム19をコイルスプリング22の付勢力に抗して押圧することにより連通路24が開かれて、容器本体11の内容物がディップチューブ20を経て、バルブハウジング18内及び連通路24を通り、吐出通路23から外部へ吐出される。
【0012】
容器本体11は開口部14の外周面の下端部(首部15側端部)をテーパ面14Bとし、このテーパ面14Bに首部15の外周面を連続し、開口部14及び首部15の外周面を覆うマウンティングカップ12の裾部12Aを首部15の全周に被着させるに際し、マウンティングカップ12に覆われた開口部14及び首部15のそれぞれの外周面から、マウンティングカップ12に覆われない首部15の外周面に至る溝26を形成してある。溝26は、開口部14及び首部15の外周に1個以上形成される。溝26は、開口部14の外周面であって、テーパ面14Bを一部に含む下側部に設けられる溝部26Aと、溝部26Aの溝底中間部〜首部15の外周面におけるマウンティングカップ12の裾部12Aが被着していない部分に渡って設けられる溝部26Bとからなる。溝26は、マウンティングカップ12の内部から裾部12Aの下を外部に向けてくぐり抜けるものになる。
【0013】
従って、エアゾール容器10は、開口部14及び首部15の外周面に溝26を備えたから、以下の作用効果を奏する。即ち、エアゾール容器10を高温下におくと、図2に示す如く、容器本体11の開口部14及び首部15が熱変形し、マウンティングカップ12の保持力が弱くなるとともに、容器本体の内部圧力が上昇し、首部15の変形によりマウンティングカップ12の裾部12Aが押し広げられる。この結果、マウンティングカップ12が、バルブ機構13とともに容器本体11の軸方向へ若干移動し、バルブ機構13のフランジ部18Aと容器本体11の開口部14の上面14Aとの間にリーク通路27が形成される。このとき、容器本体11のマウンティングカップ12に覆われた開口部14及び首部15のそれぞれの外周面から、マウンティングカップ12に覆われない首部15の外周面に至る溝26が形成されているから、上記リーク通路27がマウンティングカップ12の周方向の一部においてその下をくぐり抜けるこの溝26を介して外部に連通し、容器本体11の内容物がこれらのリーク通路27、溝26を経てスムースに外部へ排出される。
【0014】
尚、エアゾール容器10は、容器本体11の内周面を中子により、容器本体11の外周面を割型により金型成形して構成する。このとき、容器本体11の開口部14及び首部15の外周面に設ける溝26は、その全面を割型の型抜き方向Aに臨ませる。
【0015】
図3の容器本体11は、開口部14及び首部15の外周面であって、2個の割型の分割ラインPLに直交する直径上の2位置に各1個(従って全2個)の溝26を設けた例である。各溝26は全面を型抜き方向Aに向けて拡開する状態で臨ませている。
【0016】
図4の容器本体11は、開口部14及び首部15の外周面であって、2個の割型の分割ラインPLによって分割された各半周部分のそれぞれに各2個(従って全4個)の溝26を設けた例である。各溝26は一面を型抜き方向Aに平行に臨ませ、残りの面を型抜き方向Aに向けて拡開する状態で臨ませている。
【0017】
図3、図4の容器本体11にあっては、開口部14及び首部15の外周面に形成される溝26の全面を割型の型抜き方向Aに臨ませた。従って、容器本体11の金型成形により、開口部14及び首部15の外周面の周方向の複数位置に溝26を形成するに際し、溝26を損傷させることなく割型を型抜きできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1はエアゾール容器の要部を示す断面図である。
【図2】図2は高圧下におかれたエアゾール容器の要部を示す断面図である。
【図3】図3は2個の溝を形成した容器本体を示し、(A)は開口部の平面図、(B)は開口部の側面図、(C)は溝の縦断面図である。
【図4】図4は4個の溝を形成した容器本体を示し、(A)は開口部の平面図、(B)は開口部の側面図、(C)は溝の縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 エアゾール容器
11 容器本体
12 マウンティングカップ(取付プレート)
13 バルブ機構
14 開口部
15 首部
26 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体とバルブ機構とを有するエアゾール容器であって、容器本体は、開口部と開口部に連設する首部を有し、上記開口部を覆うように配された上記バルブ機構が、上記容器本体の上記開口部外周より上記首部の外周までを覆うように延びた取付プレートによって上記容器本体に取付けられ、
上記容器本体の上記取付プレートに覆われた上記開口部の外周面から、上記首部の外周面の上記取付プレートに覆われない部分に至る溝が形成されたエアゾール容器。
【請求項2】
前記容器本体の外周面が割型を用いて金型成形されるものであり、前記溝の全面を該割型の型抜き方向に臨ませてなる請求項1に記載のエアゾール容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−176131(P2006−176131A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368307(P2004−368307)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】