説明

エアゾール式噴射器

【課題】新たに部品を追加することなく、また強度的にも不安の少ないガス抜き手段を有する新規なエアゾール式噴射器を提案する。
【解決手段】容器10から突出するバルブステム20にトリガーレバー(操作ボタン)13を取り付けて、容器に取り付ける化粧カバー12で被ってなり、トリガーレバーの噴口24に樹脂製等のジョイント部材16を取り付けセットして、トリガーレバーを操作することによりバルブステムを押し込んで、容器の内容物を、バルブステムからトリガーレバー内を通してジョイント部材へと導き、そのジョイント部材の噴射部材18から噴射する。そのようなエアゾール式噴射器において、化粧カバー12に、例えば溝状に切り欠いて、ジョイント嵌合部12aを形成する。ジョイント嵌合部には、ジョイント部材17をトリガーレバーに押し当てて、そのトリガーレバーを操作した作動状態としたままはめ付け固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器から突出するバルブステムに操作ボタンを取り付けて、容器に取り付ける化粧カバーで被ってなり、操作ボタンの噴口にジョイント部材を取り付けセットして操作ボタンを操作することによりバルブステムを押し込んで、容器の内容物を、バルブステムから操作ボタン内を通してジョイント部材へと導き、そのジョイント部材の噴射部材から噴射する、脱臭用、殺虫用等のエアゾール式噴射器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のエアゾール式噴射器では、容器内に内容物として、脱臭剤や殺虫剤などを収容するとともに、噴射圧力を高める噴射剤を充填してなる。そして、操作ボタンを操作したとき、噴射剤の噴射圧力で、噴射剤とともに、脱臭剤や殺虫剤などをバルブステムから吐出していた。
【0003】
エアゾール式噴射装置の中には、使用時に操作ボタンの噴口にジョイント部材を取り付けセットし、そのジョイント部材で保持する細長い噴射パイプを、例えば脱臭剤であればエアコンの奥などに差し込み、殺虫剤であれば畳の奥などに差し込んで、バルブステムから吐出した内容物を操作ボタン内からジョイント部材へと導き、そのジョイント部材の噴射部材から噴射するものがあった。
【0004】
このようなエアゾール式噴射装置では、廃棄時になお容器内に噴射剤が残っていることが多く、そのまま廃棄すると、予期しないときに思わぬ爆発を生ずるおそれがあった。このため、残留噴射剤を完全に排出して、いわゆるガス抜きを行ってから廃棄することが望ましい。ガス抜きを行うために操作ボタンを操作し続けることは、手間と時間を要することから、従来このガス抜きを行うための方法が、例えば特許文献1に記載されるものを含めて種々提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−347628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載されるものなど従来のものには、揺動規制手段を設けなければならないなど、新たに部品を追加しなければならず、部品点数が多くなってコスト高となり、また揺動規制手段が細かったり薄かったりして十分な強度が得られず、強度的に不安があるなどの問題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、新たに部品を追加することなく、また強度的にも不安の少ないガス抜き手段を有する新規なエアゾール式噴射器を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成すべく、この発明は、
容器から突出するバルブステムに操作ボタンを取り付けて、容器に取り付ける化粧カバーで被ってなり、操作ボタンの噴口に樹脂製等のジョイント部材を取り付けセットして、操作ボタンを操作することによりバルブステムを押し込んで、容器の内容物を、バルブステムから操作ボタン内を通してジョイント部材へと導き、そのジョイント部材の噴射部材から噴射するエアゾール式噴射器において、
化粧カバーに、例えば溝状に切り欠いて、ジョイント嵌合部を形成してなることを特徴とする。ジョイント嵌合部には、ジョイント部材を操作ボタンに押し当てて、その操作ボタンを操作した作動状態としたままはめ付け固定する。
【0009】
そして、ガス抜き時には、ジョイント部材を操作ボタンに押し当ててその操作ボタンを作動状態とし、その作動状態としたままジョイント部材を化粧カバーのジョイント嵌合部にはめ付けて固定する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエアゾール式噴射器において、ジョイント部材に係合部を形成するとともに、化粧カバーに被係合部を形成してなることを特徴とする。被係合部には、ジョイント部材の不使用時に、係合部をはめ付けてそのジョイント部材を掛け止める。
【0011】
そして、ジョイント部材の不使用時には、ジョイント部材の係合部を化粧カバーの被係合部にはめ付けてジョイント部材を化粧カバーに掛け止める。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のエアゾール式噴射器において、操作ボタンがトリガーレバーであることを特徴とする。トリガーレバーは、バルブステムに取り付け、化粧カバーに係止してその係止位置を支点として回動操作する。
【0013】
そして、使用時には、化粧カバーに対する係止位置を支点としてトリガーレバーを回動操作して作動状態とし、容器の内容物を、バルブステムからトリガーレバー内を通してジョイント部材へと導き、そのジョイント部材の噴射部材から噴射する。ガス抜き時には、ジョイント部材をトリガーレバーに押し当ててそのトリガーレバーを作動状態とし、その作動状態でジョイント部材を化粧カバーのジョイント嵌合部にはめ付けて固定する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3いずれか1に記載のエアゾール式噴射器において、ジョイント嵌合部にはめ付けるジョイント部材の嵌合態様を、1つだけでなく複数設けてなることを特徴とする。
【0015】
そして、ガス抜き時、ジョイント部材の複数の嵌合態様の中の任意の嵌合態様を選択してジョイント部材を化粧カバーのジョイント嵌合部にはめ付けて作動状態としたまま固定する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4いずれか1に記載のエアゾール式噴射器において、未使用時、化粧カバーに設けるジョイント嵌合部にバージンシールを取り付けてなることを特徴とする。バージンシールは、当該エアゾール式噴射器が未だ未使用であることを示すものである。
【0017】
そして、使用開始時、化粧カバーに設けるジョイント嵌合部からバージンシールを取り外す。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ガス抜き時には、ジョイント部材を操作ボタンに押し当てて、その操作ボタンを操作した作動状態とし、その作動状態としたままジョイント部材を化粧カバーのジョイント嵌合部にはめ付けて固定するので、新たに部品を追加してコスト高を招くことなく、また十分強固につくることができるジョイント部材を用いて強度的にも不安の少ないガス抜き手段を有する新規なエアゾール式噴射器を提案することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、ジョイント部材の不使用時には、ジョイント部材の係合部を化粧カバーの被係合部にはめ付けてジョイント部材を化粧カバーに掛け止めるので、別に保管するジョイント部材を使用時に用意したり、別々に備えるジョイント部材を紛失したりするおそれをなくすことができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、ガス抜き時には、ジョイント部材をトリガーレバーに押し当ててそのトリガーレバーを作動状態とし、その作動状態としたままカバー嵌合部を化粧カバーのジョイント嵌合部にはめ付けて固定するので、新たに部品を追加してコスト高を招くことなく、また十分強固につくることができるジョイント部材を用いて強度的にも不安の少ないガス抜き手段を有する新規なエアゾール式噴射器を提案することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、ガス抜き時に、ジョイント部材の複数の嵌合態様の中の任意の嵌合態様を選択してジョイント部材を化粧カバーのジョイント嵌合部にはめ付けて作動状態としたまま固定するので、適宜選択したガス抜き態様を用いてガス抜きを行うことを可能とし、ガス抜き時の操作性を向上することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、未使用時、化粧カバーに設けるジョイント嵌合部にバージンシールを取り付けるので、そのバージンシールを取り付ける部分をガス抜き時に利用してそこにジョイント部材を取り付けるようにし、バージンシールを取り付ける部分とジョイント部材を取り付ける部分とをそれぞれ別個に形成する手間をなくして製作を容易とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1(A)には、この発明によるエアゾール式噴射器を、内容物の噴射方向とは反対の側から見て示し、(B)には、上から見て示す。
【0024】
図示例のエアゾール式噴射器は、脱臭用のものであり、図中符号10は、内容物として脱臭剤を噴射剤とともに収容する容器である。容器10の上には、巻き締め部11を形成し、その巻き締め部11に化粧カバー12を取り付ける。化粧カバー12は、操作ボタンであるトリガーレバー13を被ってなり、(B)に示すように一部を溝状に切り欠いてジョイント嵌合部12aを形成してなる。トリガーレバー13には、噴口部材14を取り付けている。また、化粧カバー12には、掛止孔をあけて被係合部15を形成する。
【0025】
図中符号16は、ジョイント部17で、まっすぐで細長いパイプ状の噴射部材18を保持するジョイント部材である。ジョイント部材16のジョイント部17には、係合部19を形成する。そして、ジョイント部材16の不使用時には、そのジョイント部17の係合部19を、化粧カバー12の被係合部15にはめ付け、噴射部材18を容器10の側面に沿わせて、ジョイント部材16を化粧カバー12に掛け止めてなる。
【0026】
図2には、化粧カバー12で被われている部分を断面にして示す。
図示するように、容器10からは上向きにバルブステム20が突出している。そのバルブステム20の先端には、トリガーレバー13を取り付ける。トリガーレバー13は、くの字型に曲がるパイプ状の本体部21と、その先端下から下向きにのびるレバー部22と、下端から後方に向けてのびる尾部23とからなり、本体部21の先端には、噴口24を有する噴口部材14をはめ付けてなる。そして、尾部23を化粧カバー12のリブ25に係止して、その係止位置26を支点として回動操作することによりバルブステム20の押し込みを可能とする。また、未使用時、化粧カバー12のジョイント嵌合部12aには、バージンシール27を取り付けてなる。
【0027】
図3(A)ないし(C)には、ジョイント部材16のジョイント部17のそれぞれ平面、正面、底面を示す。
図示例では、ジョイント部17は、樹脂材料を用いて一体成形でつくり、片側に、上向きに突出してトリガーレバー13の噴口24に取り付ける小筒状の取付部30を設ける。その取付部30の中心には、連通孔31をあける。その連通孔31に直線的に連通して噴射部材取付穴32をあける。
【0028】
噴射部材取付穴32には、噴射部材18を挿入してその噴射部材取付穴32を有する大筒部33で保持する。ジョイント部17の他側には、下向きに、上述した化粧カバー12の被係合部15にはめ付ける丸棒状の係合部19を設ける。また、ジョイント部17には、鍔部34を設けて、その鍔部の一部を切欠き、カバー嵌合部35を形成してなる。
【0029】
図4には、図1に示すエアゾール式噴射器の使用状態を示す。
使用時には、ジョイント嵌合部12aからバージンシール27を取り外す。その後、化粧カバー12の被係合部15から係合部19を外して、図示するように、ジョイント部材16のジョイント部17の取付部30を噴口部材14の噴口24に取り付けセットし、噴射部材18をまっすぐにのばす。
【0030】
そして、噴射部材18の先をエアコンの奥などに差し込み、トリガーレバー13のレバー部22に指を掛けて係止位置26を支点として回動操作することによりバルブステム20を押し込み、容器10の内容物を、バルブステム20からトリガーレバー13内を通してジョイント部材16へと導き、そのジョイント部材16の噴射部材18の先から噴射する。
【0031】
図5には、図1に示すエアゾール噴射器のガス抜き状態を示す。
廃棄時、残留噴射剤を完全に排出して、いわゆるガス抜きを行うときには、ジョイント部17の取付部30を噴口部材14の噴口24から取り外して、ジョイント部17をトリガーレバー13の本体部21に押し当ててそのトリガーレバー13を回動操作して作動状態とし、その作動状態のままジョイント部材16のカバー嵌合部35を化粧カバー12のジョイント嵌合部12aにはめ付けて固定し、作動状態で保持する。
【0032】
図6には、ガス抜き状態の別の態様を示す。
この図6に示す例では、ジョイント嵌合部12aにはめ付けるジョイント部材16の嵌合態様を異ならしめ、ジョイント部材16のカバー嵌合部35を反対方向から化粧カバー12のジョイント嵌合部12aにはめ付け、噴射部材18を逆方向にのばすものである。すなわち、図5に示す例では、噴射部材18を、噴口からの内容物の噴射方向にのばし、図6に示す例では、内容物の噴射方向と逆方向にのばす。
【0033】
これにより、ガス抜き時には、ジョイント部材16を操作ボタンであるトリガーレバー13に押し当てて、そのトリガーレバー13を操作した作動状態とし、その作動状態としたままジョイント部材16を化粧カバー12のジョイント嵌合部12aにはめ付けて固定するので、新たに部品を追加してコスト高を招くことなく、また十分強固につくることができるジョイント部材16を用いて強度的にも不安の少ないガス抜き手段を有する新規なエアゾール式噴射器を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)は、この発明によるエアゾール式噴射器を、内容物の噴射方向とは反対の側から見て示す背面図であり、(B)は、上から見て示す平面図である。
【図2】そのエアゾール式噴射器の化粧カバーで被われている部分を断面にして示す部分断面図である。
【図3】そのエアゾール式噴射器に備えるジョイント部材のジョイント部で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
【図4】そのエアゾール式噴射器の使用状態図である。
【図5】そのエアゾール式噴射器のガス抜き状態を示す図である。
【図6】ガス抜き状態の他の態様を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 容器
12 化粧カバー
12a ジョイント嵌合部
13 トリガーレバー(操作ボタン)
15 被係合部
16 ジョイント部材
18 噴射部材
19 係合部
20 バルブステム
24 噴口
26 係止位置
27 バージンシール




【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器から突出するバルブステムに操作ボタンを取り付けて、前記容器に取り付ける化粧カバーで被ってなり、前記操作ボタンの噴口にジョイント部材を取り付けセットして前記操作ボタンを操作することにより前記バルブステムを押し込んで、前記容器の内容物を、前記バルブステムから前記操作ボタン内を通して前記ジョイント部材へと導き、そのジョイント部材の噴射部材から噴射するエアゾール式噴射器において、
前記化粧カバーに、前記ジョイント部材を前記操作ボタンに押し当ててその操作ボタンを操作した作動状態としたままはめ付け固定するジョイント嵌合部を形成してなることを特徴とするエアゾール式噴射器。
【請求項2】
前記ジョイント部材に係合部を形成するとともに、前記ジョイント部材の不使用時に前記係合部をはめ付けてそのジョイント部材を掛け止める被係合部を、前記化粧カバーに形成してなることを特徴とする、請求項1に記載のエアゾール式噴射器。
【請求項3】
前記操作ボタンが、前記バルブステムに取り付け、前記化粧カバーに係止してその係止位置を支点として回動操作するトリガーレバーであることを特徴とする、請求項1または2に記載のエアゾール式噴射器。
【請求項4】
前記ジョイント嵌合部にはめ付ける前記ジョイント部材の嵌合態様を複数設けてなることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1に記載のエアゾール式噴射器。
【請求項5】
未使用時、前記ジョイント嵌合部にバージンシールを取り付けてなることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1に記載のエアゾール式噴射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−254753(P2008−254753A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97029(P2007−97029)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】