説明

エアゾール発生器及びエアゾール生成方法

【課題】改善されたエアゾール発生器を提供する。
【解決手段】エアゾール発生器10が備える流路20は、入側端部と、出側端部29と、流路内の出側端部に設けた狭窄部とを有する。流路内の液体を加熱して、流路の出側端部から排出される蒸気を生ずるためにヒーターが動作可能である。流路は複数の部品から構成され、それら複数部品の対向面が界面に沿って接合されて、それら部品間に流れ部分が画成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概論すると、エアゾール発生器及びエアゾールの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール(エーロゾル、煙霧)は、多様な用途に使用することができる。例えば、患者の肺に吸入される液体及び/又は固体、例えば、粉末、薬剤等の微粒子を含むエアゾール噴霧剤により薬物を投与するなどの方法で、呼吸器症状の治療を含む医療用途にエアゾールを使用することは公知である。エアゾールは、室内への香りの導入、殺虫剤の散布、車両エンジンへの燃料噴射、並びに塗料、潤滑剤その他の物質の塗工といった、他の用途に使用することもできる。
【0003】
エアゾール発生器及びそのエアゾール発生器を用いたエアゾールの生成方法は、例えば、本出願人が所有する米国特許第5,743,251;6,234,167及び6,491,233に開示されており、これら各文献の全体をここに援用する。
【0004】
多くの用途にとって、エアゾール発生器の有効性は、それから作られるエアゾールの粒度分布に少なくとも部分的には関係しうる。エアゾール粒度分布は、エアゾール粒子が付着する部位、並びにその粒子が付着してから如何にうまく利用されるかに影響しうる。例えば、医療症状の治療においては、エアゾール剤を用いて患者の肺の内部に流体状の処方組成物(製剤)を付着させることが望ましいことがある。そのような場合、エアゾール粒度分布は、処方組成物のかなりの量が、その処方組成物がより効果を発揮すると思われる患者の肺ではなく、患者の咽喉部や口腔内で付着してしまうかどうかに影響しうる。また、より不利な粒度分布であると、処方組成物が付着した後、吸収されるまでにより長時間かかることがある。
【0005】
用途によっては、例えば、水、エタノール及び両者の混合物といった賦形剤を各種の医薬と混合して作製されうる処方組成物を送給するようにエアゾール発生器を設計することがある。一部のエアゾール発生器の操作は、この処方組成物をチューブに通してエアゾールを生成することにより行われる。このような処方組成物送給チューブが閉塞してしまうと、エアゾール発生器が適正量の処方組成物を正確に反復して計量する能力や、所望粒度分布のエアゾールを発生させる能力に影響することがあり、それ以外にもエアゾール発生器の有効性が阻害されうる。従って、公知のエアゾール発生器における欠陥に取り組む必要性が本技術分野には存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、改善されたエアゾール発生器並びにエアゾール発生器の改善された製造及び使用方法を提供する。本発明のエアゾール発生器の1態様は、入側端部と、出側端部と、第1流れ部分と、第1流れ部分より下流側で流路の第2流れ部分を画成する、出側端部に設けた狭窄部とを備えた流路から構成される。前記流路に沿ってヒーターが配置され、これは第1流れ部分内の流体を加熱して蒸気を発生させるように動作可能である。加熱された流体は出側端部から排出されて、エアゾールを形成する。前記流路は複数の部品から構成され、それら複数部品の対向面が界面に沿って接合されて、それら部品間に前記第1及び第2の流れ部分が画成されている。
【0007】
別の態様のエアゾール発生器は手持ち型の装置であって、これは、入側端部と、出側端部と、第1流れ部分と、第1流れ部分より下流側で流路の第2流れ部分を画成する、出側端部に設けた狭窄部とを備えた流路から構成される。前記流路に沿ってヒーターが配置され、これは第1流れ部分内の液体を加熱して蒸気を発生するように構成されている。加熱された流体は出側端部から排出される。使用者がエアゾール発生器からエアゾールを吸い込める通り道となる吸い口(マウスピース)が、エアゾールを形成するように流路の出側端部と流体連通して配置される。
【0008】
さらに別の態様のエアゾール発生器は、入側端部、出側端部、第1流れ部分、及び第1流れ部分より下流側で流路の第2流れ部分を画成する、前記流路の出側端部に設けた狭窄部を備えた流路から構成される。液体供給源が、流路の入側端部と流体連通して設けられ、これは薬剤を含有する液体処方組成物を収容している。前記流路に沿ってヒーターが配置され、これは第1流れ部分内の液体処方組成物を加熱して蒸気を発生するように構成されている。この流体はエアゾールを形成するように出側端部から排出される。
【0009】
さらなる態様のエアゾール発生器は、入側端部、出側端部、第1流れ部分、及び第1流れ部分より下流側で流路の第2流れ部分を画成する、出側端部に設けた狭窄部を備えた流路から構成される。このエアゾール発生器は、流路に沿って配置されたヒーターに電力を供給するように構成された電源、及び第1流れ部分内の液体を加熱して所望量の蒸気を発生させるのに有効な量の電力をヒーターに供給するように電源の動作を制御するように構成されたコントローラを備える。蒸気とあれば同伴液体がエアゾールを形成するように出側端部から排出される。
【0010】
別の態様において、エアゾール発生器は、入側端部、出側端部、第1流れ部分、及び第1流れ部分より下流側で流路の第2流れ部分を画成する、出側端部に設けた狭窄部を備える流路から構成される。前記流路に沿ってヒーターが配置され、これは第1流れ部分内の液体を加熱して蒸気を発生させるように動作可能であり、その蒸気が、あれば同伴液体と一緒に出側端部から排出されて、エアゾールを形成するようになっている。このエアゾール発生器は、ヒーターに取付けられた第1電極と、第1電極より下流側でヒーターに取付けられた第2電極とを備える。第2電極は、ヒーターの材料より低抵抗の材料から作製される。
【0011】
上記態様のいずれも、場合により、加熱された流体、すなわち、あれば同伴流体と一緒の蒸気、をそれが流路の出側端部付近を流れる時に冷却するための装置をさらに備えていてもよい。
【0012】
狭窄部は、流路に挿入されたインサート部材、または流路の一端の造形端部といった各種の形態を取りうる。流路は各種の材料から作製することができ、モノリシック(一体)または多部品からなる構造物とすることができる。
【0013】
本エアゾール発生器は、担体と各種薬剤とを含有する液体処方組成物からエアゾールを生成させることができる。例えば、担体は水、エタノール若しくはそれらの混合物のような揮発性担体、又は不揮発性担体とすることができる。例えば、鎮痛薬、狭心症製剤、抗アレルギー薬、抗生物質、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、気管支拡張薬、利尿薬、抗コリン作用薬、ホルモン及び抗炎症薬を含む、各種の薬剤を使用することができる。
【0014】
エアゾール生成方法の態様は、出側端部と、第1流れ部分と、第1流れ部分より下流側で流路の第2流れ部分を画成する、出側端部に設けた狭窄部とを備える流路の入側端部に液体を供給し;そして第1流れ部分内の液体を加熱して、エアゾールを形成するように該出側端部から周囲大気中に排出される蒸気を生成させることを含む。
【0015】
上記方法の別の態様において、流体は流路の第3流れ部分を通過し、そこで、流路を通過して排出された流体が冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】エアゾール発生器の典型的態様例を示す。
【図2】典型的態様例に係る加熱された毛管流路の概要図。
【図3】エアゾール発生器の好適態様を示す。
【図4】出側端部に断面積が減少したインサート部材の形態の狭窄部を備える、流路の好適態様の断面図。
【図5】出側端部に断面積が減少した造形先端部の形態の狭窄部を備える、流路の別の好適態様の断面図。
【図6】図5の流路の正面図。
【図7】図5に示した流路を備えた加熱された流路を示す。
【図8】出側端部に断面積が減少した二部材型狭窄部を備える、流路の別の好適態様の断面図。
【図9】図8の流路の正面図。
【図10】エタノール80%/水20%中に硫酸アルブテロール1%を含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、エアゾール発生器のヒーターに印加された電力と硫酸アルブテロール・エアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図11】エタノール80%/水20%中に硫酸アルブテロール1%を含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、出側端部にインサート部材を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力と硫酸アルブテロール・エアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図12】エタノール80%/水20%中にクロモリンナトリウム1%を含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、エアゾール発生器のヒーターに印加された電力とクロモリンナトリウム・エアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図13】エタノール80%/水20%中にクロモリンナトリウム1%を含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、出側端部にインサート部材の形態の狭窄部を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とクロモリンナトリウム・エアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図14】エタノール/水混合物中にブプレノルフィン塩酸塩(HCl)1.5%を含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、エアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィン塩酸塩エアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図15】エタノール/水混合物中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、出側端部にインサート型狭窄部を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図16】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、毛管チューブ長さ25mm、30mm及び35mmの場合に、出側端部にインサート型狭窄部を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図17】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、インサート型狭窄部を出側端部に有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を、インサート部材の長さが3mm、4mm、5mm及び6mmと異なる場合について示す。
【図18】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、造形先端部の形態の狭窄部を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を、造形先端部の開口断面積が894μm2、2013μm2、3257μm2、4967μm2及び6798μm2と異なる場合について示す。
【図19】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、液体流量が10μL/secである場合に、開口断面積が6798μm2の先端造形型の狭窄部を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図20】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、液体流量が20μL/secである場合に、開口断面積が6798μm2の先端造形型の狭窄部を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図21】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、液体流量が10μL/secである場合に、開口断面積が4968μm2の先端造形型の狭窄部を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図22】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、液体流量が20μL/secである場合に、開口断面積が4968μm2の先端造形型の狭窄部を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図23】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、液体流量が10μL/secである場合に、開口断面積が3257μm2の先端造形型の狭窄部を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図24】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、液体流量が20μL/secである場合に、開口断面積が3257μm2の先端造形型の狭窄部を有する流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図25】水100%中にクロモリンナトリウム3%を含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、狭窄部を持たない流路、開口断面積が903μm2の先端造形型の狭窄部を持つ流路、及び開口断面積が3280μm2の先端造形型の狭窄部を持つ流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とクロモリンナトリウム・エアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図26】ヒューマリンR処方組成物から生成させたエアゾール化インスリン粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真(7,000×)。
【図27】ヒューマリンR処方組成物から生成させたエアゾール化インスリン粒子のSEM顕微鏡写真(15,000×)。
【図28】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、造形先端部を有する長さ25mmの流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図29】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から生成させたエアゾールについて、造形先端部を有する長さ35mmの流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【図30】エタノール95%/水5%中に1.5%のブプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物から流量20μL/secで生成させたエアゾールについて、造形先端部を有する長さ25mmの流路を備えたエアゾール発生器のヒーターに印加された電力とブプレノルフィンHClエアゾール粒子の回収率との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
液体からエアゾールを生成させるのに有用なエアゾール発生器が提供される。エアゾール発生器は流路を備え、その流路に液体が導入される。エアゾールの発生は、流路内の液体を加熱して、液体の一部を蒸気に変換し、生じた流体を流路から排出することにより行われうる。排出された流体を空気と混合してエアゾールを生成することもできる。
【0018】
本エアゾール発生器の好適態様は、高強揮発性液体とエアゾール化される第2の成分とを含有する液体からエアゾールを生成するように動作させることができる。例えば、高揮発性液体は薬剤を送り込むための高揮発性液体賦形剤とすることができる。この賦形剤は最小エネルギー入力で容易に揮発するものが有利である。制限ではない例示として、高揮発性液体としては、水、並びに沸点が水に似ている他の液体を挙げることができる。別の好ましい高揮発性担体はエチルアルコール(エタノール)であり、その沸点は1気圧の圧力で約78℃である。エタノールは連邦医薬品局(FDA)で許可された経吸入投与医薬品用賦形剤である。エタノールは、他の液体と組み合わせて、例えば、エタノール/水の溶液として使用することもできる。典型的な態様では、賦形剤は約20〜80体積%の水と約80〜20体積%のエタノールとから構成することができる。別の典型的な態様では、賦形剤は、約80〜100体積%までの水と約20体積%までのエタノールとから構成することができる。処方組成物は、界面活性剤、低揮発性液体その他の薬剤に許容される薬剤に許容される成分、例えば、グリセリン、プロピレングリコール(PG)といった添加成分を80体積%までの量で含有しうる。
【0019】
液体処方組成物(液体製剤)の所望の用途に応じてエアゾールを生成させるための液体処方組成物には各種の物質を含有させることができる。例えば、液体処方組成物はエアゾール剤により患者に投与されうる薬剤を含有しうる。使用できる薬剤の例としては、それらに制限されないが、米国特許第6,153,173(ここにその全体を援用する)に記載されたもののような、鎮痛薬、狭心症製剤、抗アレルギー薬、抗生物質、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、気管支拡張薬、利尿薬、抗コリン作用薬、ホルモン及び抗炎症薬が挙げられる。液体処方組成物はエアゾール吸入を介して所望用量の薬剤を与えるように選択することができる。処方組成物は溶液、懸濁液、分散液又は乳濁液の形態とすることができる。
【0020】
使用できる代表的な薬剤としては、これらに限られないが、インスリン、塩酸ブプレノルフィン、クロモリンナトリウム、硫酸アルブテロール、硫酸イソプロテレノール、硫酸メタプロテレノール、硫酸テルブタリン、酢酸ピルブテロール、キシナホ酸サルメテロール、フォルモテロール、二プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニゾリド、フルチカゾン、ブデゾニド、トリアムシノロンアセトニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルニゾリド及びフルチカゾンが挙げられる。
【0021】
しかし、態様によっては、液体処方組成物は薬剤を含有しないこともある。例えば、液体処方組成物は、塗料、芳香又は燃料(研究用、商業用又は工業用)といった別の種類の物質を含有するものでもよい。当業者であれば、多くの処方組成物にとって、エアゾール粒子形成の過程の後、それらの化学的、物理的及び活性の完全性を保持することが重要となりうることを認識するであろう。例えば、インスリン処方組成物のようなポリペプチド処方組成物の化学的、物理的及び活性の完全性を保持することは、多くの用途において重要となりうる。従って、処方組成物のこのような特性を劣化させうる条件は、当てはまる場合には避けるべきである。
【0022】
図1は、手持ち型エアゾール発生器10の好適態様を示し、この発生器は、ハウジング11と、このハウジング内に設けた流路20及び各種任意要素を含む構成要素とを含んでいる。任意要素は、液体供給源12、供給路80に沿って配置され、液体供給源12及び流路20と流体連通するバルブ14、圧力センサー15、並びにコントローラ16を含んでいる。液体供給源12は、液体供給源12を同一又は異なる液体処方組成物を収容した別の液体供給源と交換できるように、エアゾール発生器10に着脱自在に取付けることができる。吸い口18を流路20と流体連通して配置することができる。コントローラ16は、バルブ14及びセンサー15を動作させ、毛管流路20の加熱を行うための電気を供給するようにコントローラ16と協働する適当な電気接続(結線)及び補助装置、例えば、電源(例、再充電若しくは交換可能なバッテリー)を含むことができる。
【0023】
エアゾール発生器10を動作させるには、液体を液体供給源12から流路20に供給することができるようにバルブ14を開く。例えば、1好適態様では、使用者がエアゾール発生器10からエアゾールを吸入しようとすることにより吸い口18に所定の減圧が負荷されたことをセンサー15が検出した時に、液体を流路20に供給することができる。薬剤又は他の物質を含有する懸濁液、溶液又は乳濁液(エマルジョン)からなる液体が液体供給源12から流路20に供給されると、コントローラ16は流路20内の液体に印加される電力量を、液体の少なくとも一部を蒸発させる、すなわち、蒸気を発生させるのに十分な高温に液体を加熱するように制御する。例えば、液体の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上を、流路内にある間にヒーターによって蒸気状態に加熱することができる。別の好適態様では、エアゾール発生器10は、センサー15を使用せず、使用者が機械スイッチ、電気スイッチなどを作動させることによって手動で操作することができる。液体を加熱することにより発生した蒸気と同伴液体は、流路20の出側端部29から排出される。排出された蒸気は周囲大気と混ざり合って、使用者が吸い口から引き出すことにより吸入されるエアゾールを形成する。
【0024】
図1に示したエアゾール発生器を変更して異なる液体供給源の配置を利用することができる。1好適態様においては、液体供給源12は所定量の液体を流路20に送り込んでエアゾールを生成するように動作可能なバルブを備える。別の好適態様では、液体供給源12のサイズを、所望量の液体、例えば、所定の1回量の液体又は多数回量の液体を収容するようにする。この量(用量)は、流路20に供給されて1回の吸入サイクル中にエアゾールに変換される液体の量である。別の態様では、バルブを省略し、液体供給源12は液体を流路20に供給するシリンジポンプ等を備えることができる。
【0025】
エアゾール発生器10のヒーターは、流路20の蒸発部分を加熱するために配置される。ヒーターは、例えば、流路20の1または2以上の壁面を備えることができる。このような壁面は、印加電圧が流路20及びこの流路に収容された液体を加熱するように導電性材料から製作することができる。別の好適態様では、流路はガラス又はシリコンのような非導電性又は半導性材料を、流路に沿った材料層の内部又は表面に設けた白金などの抵抗性材料から作製されたヒーターと共に備えることができる。ヒーターの構成とヒーター設備の製造方法の例については、2004年3月9日発行の米国特許第6,701,922及び2003年8月27日出願の米国特許出願第10/648,282(各文献の内容をここに援用する)に見ることができる。
【0026】
流路20は、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ポリマー及びそれらの組み合わせを包含する各種材料から製作することができる。好適態様においては、流路20は、例えば、ステンレス鋼などの導電性金属製の毛管径サイズのチューブ(毛管径チューブ)により画成される。或いは、流路20は、非導電性材料(例えば、アルミナのようなセラミック、ガラス、若しくはデュポン社(米国デラウェア州ウィルミントン所在)から市販のポリイミド材料であるカプトン(KAPTON)のようなポリマー)又は半導性材料(例えば、シリコン)製のものとすることができ、さらに流路内の液体を加熱するために白金などの導電性材料のヒーターを備えている。セラミック材料は、例えばスリップキャスティングにより成形することができる。ガラス材料は型成形により成形することができる。ポリマー材料については、レーザーアブレーションのような任意の適当な方法により流路を形作ることができる。
【0027】
図2は、液体が流路に供給される口である入側端部21と蒸気及び液体が排出される口である出側端部29とを有する流路20を画成する毛管径チューブ25を備えた毛管エアゾール発生器30の1態様を示す。この態様では、流路20は狭窄部を有していない。毛管エアゾール発生器30は、それぞれ長手方向に離間した位置23及び26で毛管チューブ25に接続されている第1電極32及び第2電極34を有するヒーターを備える。電極32、34により、流路20は、入側端部21と第1電極32との間の上流側供給部22と、第1電極32と第2電極34との間の加熱部24と、第2電極34と毛管チューブ25の出側端部29との間の下流側先端部28とに区画される。場合により、第1電極32と第2電極34との間の加熱部は毛管チューブ25に取り付けられた冷却装置31を備えることができる。好ましくは、冷却装置31は、加熱部の第2電極34に隣接した部分又はその付近に配置される。
【0028】
この毛管エアゾール発生器30では、液体は液体供給源50から入側端部21を経て毛管チューブ25の流路20内に供給される。液体が供給部22から毛管チューブ25を通って加熱部24に流入すると、第1電極32と第2電極34との間に電圧が印加され電流が流れることによって熱が発生する。加えられた熱は加熱部24内の液体に伝えられる。液体の少なくとも一部は蒸気への変換に十分な高温に達し、蒸気は加熱部24から先端部28に流れて、毛管チューブ25の出側端部29から出る。
【0029】
液体は毛管チューブ25内を流れる際に、液体と毛管チューブ25の壁面との間の伝熱係数は比較的高く、液体への熱伝達は高い。蒸気に変換された加熱液体は加熱部24に沿って下流側に移動し続ける。液体が蒸気に変換されると毛管チューブ25内で相転移沸騰が起こり、流路内に圧力振動が発生する。高揮発性賦形剤(例えば、水、エタノール、及びそれらの混合物)のような高揮発性液体並びに別の物質(例、薬剤)を含有するある種の液体処方組成物は、流路内で加熱されて蒸気を生じた時に、薬剤を含有するエアゾールの再現性ある送給を達成することが困難となる場合があることが認められた。特に、高揮発性液体を含むこのような液体処方組成物を蒸発させる時に著しい圧力振動が流路内に起こることがあり、その結果、エアゾールにとって必要な質量メジアン空気動力学的直径(MMAD)が得られなくなる。エアゾールのMMADは、エアゾール粒子の幾何学平均空気動力学的直径である。エアゾール中では粒子の50重量%がMMADより小さく、残り50%がそれより大きい。
【0030】
高揮発性液体を蒸発させる時に毛管チューブ25内で起こる大きな圧力振動は、毛管チューブ25内の液体メニスカスの位置の移動に関係することが認められた。「メニスカス」の位置は、本書では、液体が毛管チューブ25を画成する壁面の内面と接触している最も下流側の位置であると定義される。流路の壁面と蒸気との間の伝熱係数は低いので、メニスカス位置より下流側の壁面の温度は所望の最大温度より高くなり、良質のエアゾールを発生させることができる。高揮発性賦形剤のような高揮発性液体を用いてエアゾールを生成させる場合、このような液体を蒸発させる時に起こる圧力変化に感応して流路内のメニスカス位置が常時変化することが判明した。
【0031】
高揮発性液体の蒸発中にエアゾール発生器の流路内で起こることが判明した著しい圧力変化は、エアゾール発生器の性能に望ましくない不安定性をもたらす可能性がある。すなわち、このような圧力変動は流路内の高揮発性液体の沸点を変化を引き起こす。また、メニスカスが流路内で移動するにつれて、最初は流路の出側端部に向かって移動していた流体が、圧力変動のせいで、向きを反転させて流路の入側端部に向かって移動し、それにより流路内で2回目の加熱を受けることがある。メニスカスが逆方向に移動すると、流路内に大きな蒸気部分が生成することがある。その結果、流路内の固形分の蓄積とそれに伴う閉塞がより起こり易くなる。
【0032】
流路の出側端部に狭窄部を設けることにより、高揮発性液体を含有する液体処方組成物から良質のエアゾールを発生させることができることが予想外にも判明した。狭窄部は、流路の出側端部を部分的に塞いで、出側端部の流路の断面積を減少させるように形づくられる。狭窄部は流路の下流側流れ部分を画成し、その横断方向断面積は、狭窄部より上流側の流路の加熱部24、すなわち「蒸発部」の横断方向断面積より小さい。
【0033】
何らかの特定の理論に拘束されることを望むわけではないが、狭められた流路は流体せん断機構によりエアゾールを生ずると考えられる。具体的には、エアゾール発生器の動作中に、蒸気は加熱部24内で発生する。蒸気は高圧を作り出し、液体を流路から追い出す駆動力を付与する。流路の出側端部で断面積が減少すると、先端部を通過する蒸気の速度が増大し、粗大な液滴をより小さな液滴に分割するのに十分高いせん断力を生ずると考えられる。より小さな液滴は液体処方組成物の呼吸吸引可能なエアゾールへの転化効率を高める。高い蒸気速度は、流路内の液体流量又はヒーターにより流路に印加される電力量のいずれかを増大させることにより達成することができる。それにより、処方組成物の蒸気分率が増大する。流路の内面で液膜から引きちぎられた液滴は、高速の蒸気に突然曝され、それにより液滴と蒸気との間に高い相対速度が生ずる。この速度差により生じたせん断が、液滴の分割を引き起こすケルビン−ヘルムホルツ不安定を作り出すという仮説が考えられる。それ以上になるとこのような分割が起こると予想されうる液滴の大きさは、動圧力、表面張力及び粘性力の関数である。水100%の処方組成物のような低粘度の液体の場合、液滴の変形は、表面張力に対する空気力学的力(動的空気力)の比により主に決まる。この比は、無次元のウェーバー数=(ρvap2R,vapD)/σ により与えられる。ここで、ρvapは蒸気密度、U2R,vapは液滴と蒸気との間の相対速度、Dは液滴直径、そしてσは液体の表面張力である。高速空気流に突然曝された低粘度液滴については、ウェーバー数の臨界値は約13であることが一般に認められている。この値を用いて、高速の圧縮性ガス流中で分割されうる最小又は臨界液滴直径を計算することができる。
【0034】
図3に示すように、エアゾール発生器120の1好適態様は、入側端部21、出側端部29、及び出側端部29に設けた狭窄部60を有する毛管チューブのような、毛管径の毛管チューブ25を備える。このエアゾール発生器120はまた、毛管チューブ25と電源33とに接続された第1電極32及び第2電極34を有するヒーターも備えている。電極32、34は、第1電極32と第2電極34との間の加熱部24、及び第2電極34と毛管チューブ25の出側端部29との間の下流側先端部を区画する。1好適態様では、毛管チューブ25は内径が約0.025mm〜約0.5mm、より好ましくは約0.025mm〜約0.25mm、又は約0.1mm〜約0.2mmであり、加熱部24は好ましくは長さが約5mm〜約40mm、より好ましくは約15mm〜約25mm(約5μL/sec〜約30μL/secの好ましい液体流量の場合)である。
【0035】
エアゾール発生器120は、毛管チューブ25との熱伝達を制御するために設けた毛管チューブを包囲するスリーブ70と、流路から排出された材料が毛管チューブ25の周囲の空間内に逆流するのを防止するために出側端部29に設けた末端キャップ72を、場合よりさらに備えることができる。
【0036】
1好適態様において、狭窄部は、図4に示すように、出側端部29で流路内に挿入されたインサート部材160である。毛管チューブ25及びインサート部材160は同一材料又は異なる材料のものとすることができる。材質は、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ポリマー及びそれらの組み合わせから選択できる。インサート部材160の長さは、例えば、約1mm〜約10mm、より好ましくは約3mm〜約6mmとすることができる。開口断面が円形のインサート部材160の態様では、インサート部材160の内径は好ましくは約0.001インチ(約25μm)〜約0.01インチ(約250μm)、より好ましくは約0.001インチ(約25μm)〜約0.003インチ(約75μm)である。狭窄部の開口断面に対する流路の断面の比は、例えば、約2:1から約30:1までとすることができる。この比は、後述するような他の形態の狭窄部にも当てはめることができる。円形又は非円形の開口断面を有するインサート部材160について、インサート部材160の開口断面積は、好ましくは約500μm2〜約51,000μm2、より好ましくは約500μm2〜約8,000μm2、さらにより好ましくは約500μm2〜約3,000μm2又は約500μm2〜約1,000μm2である。これらのインサート部材の寸法は好ましくは液体流量が約5μL/sec〜約30μL/secの場合である。より高流量では、インサート部材の内径の断面積は増大させることができる。
【0037】
図4に示すように、インサート部材160は、毛管チューブ25及びインサート部材160の材質に応じて任意の適当な手法により形成した継手63により流路20に接合することができる。1好適態様では、流路20とインサート部材160は同一又は異なる金属素材のものであって、両者は、例えば、溶接、はんだ付け又はろう付けにより接合されうる。
【0038】
図5〜7に示すように、本エアゾール発生器の別の好ましい態様では、毛管チューブ225は流路20の出側端部における造形先端部260の形態の狭窄部を備えることができる。造形先端部260は流れ部分66を備える。造形先端部260は任意の適当な手法で形成することができる。例えば、造形先端部260は、円形断面ワイヤーのような心棒(マンドレル)を流路20内に所望の距離まで挿入した後、縮径(クリンプ)加工等により毛管チューブ225を心棒の周囲で変形することにより形成することができる。心棒は、流れ部分66の所望の寸法及び形状を画成する所望の断面形状及び断面積を有することができる。1好適態様では、心棒は中実の円形断面ワイヤーであり、流れ部分66は断面が円形又は実質的に円形である。図5に示すように、毛管チューブ225の内面は加熱部24を画成する内面と造形先端部260との間にテーパー面65を備える。テーパー面65は任意の適当な輪郭を有することができる。
【0039】
1態様において、先端造形毛管チューブ225は、長さ35mmのK32EGチューブ(内径約0.0075インチ、外径約0.0009インチの304ステンレス鋼チューブ、米国カリフォルニア州ポーウェイのKチューブ社から市販)から作製することができる。この態様では、電極34は長さ約9mmの0.012インチ又は0.013インチステンレス鋼ワイヤーである。電極34の材質及び幾何学形状を変更することにより、毛管の温度を変化させることができる。先端部260は、0.002インチ径のタングステンワイヤーを心棒にして毛管チューブ225を成形することにより製作され、この加工で仕上げ開口断面積は約2600μm2となる。
【0040】
別の態様では、毛管チューブ225の先端部260の形成は、ドーム状の閉鎖部を形成するように毛管チューブの一端を溶接により閉鎖することによって行うことができる。その後、ドーム状閉鎖部にドリル加工又はレーザー切断により所望の小径の穴をあける。別の方法として、先端造形毛管は、金属キャップを毛管の一端に、キャップの毛管へのプレス嵌め、又は所定位置へのキャップの溶接により取付けることによって形成することもできる。毛管へのキャップの取付けの前か後に、レーザーを使用して毛管の内径より小径のオリフィスを金属キャップ内に穿孔することができる。オリフィスの寸法はレーザースポットの直径、レーザーマスク径、及びレーザーエネルギー密度の調節により制御できる。この製造方法の利点は、排出される蒸気及び液体の通り道となる得られた先端造形毛管の出口寸法を正確に制御できることである。この寸法は生成したエアゾールの粒子寸法、速度及び噴霧角度に影響することがある。この方法はまた信頼性が高く、商業規模で実施可能である。
【0041】
先端造形毛管の別の形成方法は、毛管チューブ内に金属層を電着させることによる。好ましくは、毛管チューブはステンレス鋼製である。この方法は、毛管チューブを所望長さだけ適当な電解液中に浸漬し、浸漬長さ部に金属を電気めっきすることを含む。場合により、毛管チューブの外面の浸漬部分は、チューブの外面への電着を防止するように被覆又はマスクすることができる。あるいは、外面を研磨又は機械加工して望ましくない電着金属を除去してもよい。
【0042】
流路20の造形先端部260の長さは、例えば約0.5mm〜約3mmとすることができる。造形先端部260が円形の開口断面を有する流れ部分66を備える毛管チューブ225の態様では、流れ部分66の直径は好ましくは約0.001インチ〜約0.01インチ、より好ましくは約0.001インチ〜約0.003インチである。円形又は非円形断面を有する流れ部分66について、流れ部分66の断面積は、好ましくは約500μm2〜約51,000μm2、より好ましくは約500μm2〜約8,000μm2である。これらの造形先端部の寸法は好ましくは液体流量が約5μL/sec〜約30μL/secの場合である。
【0043】
図8及び9は、本エアゾール発生器の別の好適態様を示す。この態様では、毛管流路は、流路20の出側端部29に流れ部分366を画成する狭窄部360を備えた1個構成の一体構造体325とすることができる。かかる態様では一体構造体は例えば型成形法により形成することができる。流れ部分366の形状は円形又は非円形とすることができる。
【0044】
別の好ましい態様では、毛管流路は積層構造物とすることができる。例えば、積層構造物は、ミゾ又はチャネルが形成された表面を有する部材と、このミゾ又はチャネルを覆って流路を画成するように構成された別部材とを備えることができる。この積層構造物内に形成された流路は出側端部に狭窄部を備える。この狭窄部は、出側端部におけるミゾ又はチャネルの深さを、出側端部より上流側のミゾ又はチャネルの部分に比べて浅くすることにより形成することができる。
【0045】
エアゾール発生器120の動作中に、液体が液体供給源から毛管チューブ25の入側端部21に供給される。電流をチューブ25に通電して、液体の少なくとも一部が蒸気に変換されるように流路20の加熱部24内の液体を加熱するようにヒーターを動作させる。発生した蒸気、並びに加熱部24内で蒸発しない液体は、狭窄部60により画成された流路を経て流路から排出される。
【0046】
エアゾール発生器により作られるエアゾールは、いくつかの指標で特性表示することができる。特に、エアゾール品質はエアゾールの粒度分布、及び/又はエアゾールの1または2以上の成分の回収率により特性表示することができる。粒度分布に関しては、ある選択した特定粒度より寸法が小さいエアゾール粒子の量がエアゾールの特性表示の基本となりうる。特定の粒度は、例えば、深部肺浸透を容易にするある粒度とすることができる。例えば、エアゾールのMMADは10μm以下、好ましくは約0.0μm1〜約1μm、又は約1μm〜約3μm、又は約1μm〜約5μmとすることができる。
【0047】
別の指標として、エアゾールの1または2以上の成分の放出用量及び/又は可呼吸用量によってエアゾールの送給を特性表示することができる。成分は、例えば1または2以上の薬剤とすることができる。放出用量とは、毛管流路に供給された成分の計量用量に対する、流体蒸発装置により放出された成分の質量の比(即ち、放出用量=〔放出された成分の質量/計量用量〕×100)である。可呼吸用量は、特定の粒度Xより小さいエアゾール粒子の質量の放出用量に対する比(即ち、可呼吸用量=〔Xより小径のエアゾール粒子の質量/放出用量〕×100)である。
【0048】
典型的な毛管径流路ヒーターについて、毛管エアゾール発生器ヒーター(CAGヒーター)性能特性を求める比較試験を行った。CAGヒーターを用いて液体をエアゾール化した。
【0049】
毛管エアゾール発生器は操作中に閉塞を生ずることがある。毛管エアゾール発生器に使用した或る種の処方組成物、例えば、インスリン処方組成物は、特に閉塞を起こし易いことがある。予想外にも、図2に示した毛管エアゾール発生器30のようなエアゾール発生器の出口付近の毛管チューブの冷却領域が閉塞を軽減できることが判明した。冷却は、加熱された処方組成物の過熱又は過大な乾燥を回避するように、毛管チューブ25の出口29又はその付近に、多様な冷却装置31から選んだ1または2以上の装置を設置することにより達成することができる。処方組成物の過熱又は過大な乾燥が起こると、加熱部24の下流側端部と先端部28付近の毛管チューブの部分で固体の付着を生ずることがある。冷却装置は、加熱部24及び電極34より下流側に配置することもできるが、図2に示すように、有利には冷却装置31を電極34より上流側に配置することができる。特に、冷却装置31は、加熱部24の下流側半分に沿っているが、電極34より上流側でこの電極の近傍又はそれに隣接して配置することが好ましい。冷却装置は、好ましくはそれが取付けられている毛管チューブ25の部分の温度を、冷却装置なしで動作する毛管エアゾール発生器30に比べて、約10℃〜約100℃だけ温度低下させる。より好ましくは、冷却装置による冷却部の温度低下は約30〜約85℃であり、より一層好ましくは約50〜約70℃である。
【0050】
1変更例によると、冷却は、電極34に隣接した加熱部24の下流側部分内で毛管チューブ25の先端部28又はその近傍にヒートシンクを取付けて配置することにより達成される。適当なヒートシンクは、毛管チューブ25と接触した伝導性材料の塊状体の形態をとることができ、その形状と大きさは、加熱流体が排出されるのに伴って毛管チューブ25の接触部から所望の熱放散速度を達成するようなものとする。ヒートシンクの塊状体と形状、即ち、実際は一般に冷却装置の所望の性能、に影響しうる因子としては、流路20から排出される流体内に蓄えられている熱量と温度、流路20を通る流体の流量、流体が噴射されていない状態となる毛管エアゾール発生器の使用間隔の長さ、及び周囲温度が挙げられる。
【0051】
例示となる毛管エアゾール発生器30では、冷却装置は、電極34の上流側でこれに隣接する毛管チューブ25部分に取付けられたヒートシンクである。この態様では、ヒートシンクは、外径約0.4インチ、厚さ約0.009インチの真鍮ディスクと、外径0.25インチ、内径約0.1インチ、厚さ約0.035インチの金属ワッシャーとから作製される。金属ワッシャーは鋼から作製することができる。これら2つのディスクは互いに好ましくはロウ付けにより接合される。この場合、電極34を真鍮ディスクの下流側の面にロウ付けすることができ、毛管チューブ25が貫通する穴が電極と真鍮ディスクとに穿孔されている。
【実施例1】
【0052】
高揮発性担体、即ち、エタノール/水を含有する各種の液体処方組成物からのエアゾールの発生について、CAGヒーターの流路内でのインサート部材の設置によるエアゾール発生への影響を評価するために試験を行った。評価は、狭窄部を有しないCAGヒーター(非先端造形CAG)の性能を、狭窄部を有するCAGヒーター(先端造形CAG)の性能と比較することによって行った。CAGヒーターは、内径約0.006インチ(約150μm)、断面流れ面積約18,000μm2、長さ35mmのK32EGチューブの流路を備えていた。このCAGヒーターはスリーブ又はキャップを備えていなかった。
【0053】
試験では、エタノール80%/水20%中に硫酸アルブテロール1%を含有する液体処方組成物を5μL/secの流量で流路に供給した。CAGヒーターに印加した電力に対して、実際に計量された用量のうち回収された硫酸アルブテロールの%(計量用量の%)を求めた。流路の出側端部と流体連通するL字管(ベント管)とこのベント管の出側端部に設けたフィルターとを備えた粒子コレクターを使用して、エアゾール粒子を捕集した。「合計回収率」は、流路の先端部、ベント管及びフィルターに付着した材料の合計量を意味する。先端部回収とは、流路先端部に残留する、エアゾール化しなかった液体材料のことである。ベント管回収とは、おそらく使用者の喉部で捕捉されてしまうと思われる粒子寸法(粒度)に対応する比較的大きい粒子に由来する。フィルター回収とは、使用者の肺に達すると考えられるエアゾールである。従って、先端部及び/又はベント管ではなく、フィルターでのエアゾール回収率が高いことが望ましい。図10に示すように、フィルターでの回収率は最大で約30%に達し、合計回収率は印加電力範囲の全体で約88〜約95%の範囲内であった。
【0054】
比較試験では、狭窄部を備えるようにCAGヒーターを変更した。変更は、内径0.002インチ(約51μm)、断面流れ面積2027μm2の35ゲージのインサート管を出側端部で流路内に配置することによって行った。図11に示すように、フィルターでの回収率は約71〜約83%の範囲内、合計回収率は印加電力範囲の全体でほぼ100%であったので、図10に比べて、インサート部材により回収が改善された。
【0055】
別の比較試験では、狭窄部を持たないCAGヒーターを使用して、喘息治療に使用されるクロモリンナトリウムをエアゾール化した。エタノール40%/水60%中にクロモリンナトリウム1%を含有する液体処方組成物を、5μL/secの流量で流路に供給した。図12に示すように、フィルターでの最大回収率は印加電力範囲全体で約35%であった。
【0056】
別の試験では、同じクロモリンナトリウム処方組成物を、35ゲージのインサート管を設けたCAGヒーターの流路に5μL/secの流量で供給した。試験結果を図13に示す。フィルターでの回収率が約44〜約54%の範囲内、合計回収率は印加電力範囲全体で約99%であったので、図12に示した結果と比べて、インサート部材がエアゾール回収を改善したことがわかる。
【0057】
さらなる比較試験を、疼痛治療に使用される薬剤で実施した。エタノール/水混合物中にブプレノルフィン塩酸塩(HCl)1.5%を含有する液体処方組成物を,狭窄部を持たないCAGヒーターを用いてエアゾール化した。図14に示すように、フィルターでの最大回収率は70%付近であり、少なくとも100%の合計回収率が得られた。
【0058】
別の試験では、同じブプレノルフィンHCl液体処方組成物を、35ゲージのインサート管の形態の狭窄部を設けたCAGヒーターで使用した。試験結果を図15に示す。これらの結果を図14に示した結果と比べると、フィルターでの回収率は少なくとも95%で、合計回収率は印加電力範囲全体で約100%であったので、狭窄部がエアゾール回収を改善したことがわかる。
【実施例2】
【0059】
CAGヒーターの流路の長さの変動がエアゾール回収率に及ぼす影響を評価するために試験を行った。CAGヒーターは出側端部に35ゲージインサート管の形態の狭窄部を有する流路を備えていた。CAGヒーターは遮蔽部又はキャップを備えていなかった。エタノール95%/水5%中に1.5%のプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物を10μL/secの流量で流路に供給した。
【0060】
第1シリーズの試験では、流路は内径約0.006インチ、断面流れ面積約18,000μm2の30ゲージ毛管チューブであった。25、30及び35mmの異なる毛管チューブ長さを試験した。第2の試験では、流路は長さ25mmのK32EGチューブであった。異なる毛管流路長さについて、CAGヒーターへの印加電力に対する、実際に計量された用量のうち回収されたブプレノルフィンHClの%として試験結果を図16に示す。フィルターでのブプレノルフィンHCl回収率は80%すぎから90%すぎまでの範囲であり、合計回収率は印加電力範囲全体にわたって約100%までであった。これらの試験結果は、狭められた毛管流路を備えるCAGヒーターについて、流路長さのある範囲にわたって、かつ印加電力レベルのある範囲にわたって、高いエアゾール回収率を得ることができることを実証している。
【実施例3】
【0061】
CAGヒーターの狭窄部の長さの変動がエアゾール発生に及ぼす影響を評価するために試験を行った。CAGヒーターは長さ35mmのK32EGチューブからなる流路を備えていた。長さ3mm、4mm、5mm及び6mmの35ゲージインサート管の形態の狭窄部を、流路の出側端部に別々に装着した。CAGヒーターはスリーブ又はキャップを備えていなかった。エタノール95%/水5%中に1.5%のプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物を10μL/secの流量で流路に供給した。
【0062】
図17は、CAGヒーターへの印加電力に対する、フィルターで回収されたブプレノルフィンHClの実際に計量された用量に対する%として試験結果を示す。フィルターでの回収率は異なるインサート部材長さについて少なくとも約78%であった。狭窄部の長さを増大させても、この回収率はあまり変化しなかった。これらの試験結果は、毛管流路内に狭窄部を設けたCAGヒーターについて、狭窄部長さが変動しても、印加電力レベルのある範囲にわたって高いエアゾール回収率を得ることができることを実証している。
【0063】
毛管流路内部の「低温(cold)圧力」、即ち、CAGヒーターのスイッチを入れていない状態での流路内の液体圧力を、エタノール95%/水5%を含む液体を用いて各インサート部材長さについて測定した。低温圧力の最高値は6mm長さのインサート部材の場合に測定され、低温圧力の最低値は3mm長さのインサート部材の場合に測定された。
【実施例4】
【0064】
CAGヒーターの先端造形型狭窄部の開口面積の変動がエアゾール発生に及ぼす影響を評価するために試験を実施した。CAGヒーターは長さ35mmのK32EGチューブからなる流路を備えていた。エタノール95%/水5%中に1.5%のプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物を10μL/secの流量で流路に供給した。それぞれ開口断面積が894μm2、2013μm2、3257μm2、4967μm2及び6798μm2の先端造形型の狭窄部を有する毛管流路を試験した。図18に示すように、フィルターでのブプレノルフィンHClの回収率が最高となったのは、開口断面積が最小の狭窄部の場合であり、最低となったのは開口断面積が最大の場合であった。
【0065】
毛管流路内部の低温圧力を、エタノール95%/水5%を含む液体を用いて、先端造形型の狭窄部を有する各毛管流路について測定した。狭窄部の開口断面積が増大するにつれて低温圧力が低下することが認められた。最高の低温圧力は狭窄部の開口断面積が最小の場合に、最低の低温圧力は狭窄部の開口断面積が最大の場合に測定された。
【0066】
毛管流路内部の「高温(hot)圧力」、即ち、流路を加熱するためにCAGヒーターのスイッチを入れた場合の流路内の流体圧力を、先端造形型の狭窄部を有する各毛管流路について測定した。使用した液体はエタノール95%/水5%を含んでいた。試験結果は、開口断面積が増大するにつれて高温圧力が低下し、印加電力が7〜9ワットの範囲内で増大するにつれて高温圧力が増大することを示した。
【実施例5】
【0067】
CAGヒーターの流路内の液体処方組成物の流量の変動がエアゾール発生に及ぼす影響を評価するために試験を行った。CAGヒーターは先端造形型の狭窄部を有する流路を備えていた。異なる狭窄部の開口断面積について試験した。最初の試験では、使用したCAGヒーターは、開口断面積が6798μm2の先端造形型の狭窄部を有する、長さが35mmの、K32EGチューブからなる流路を備えていた。エタノール95%/水5%中に1.5%のプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物を10μL/sec及び20μL/secの流量で流路に供給した。観測された動作圧力は、流量の増大につれて、平均約55psiから約120psiまで流量の増大と共に増大した。図19に示すように、液体流量が10μL/secの場合、フィルターでのブプレノルフィンHCl回収率は約70%であり、合計回収率は約100%であった。図20に示すように、液体流量が20μL/secの場合、フィルターでのブプレノルフィンHCl回収率は約80%に増大し、合計回収率は約100%であった。
【0068】
別の試験では、使用したCAGヒーターは、長さが35mmで、開口断面積が4968μm2の先端造形型の狭窄部を有する、K32EGチューブからなる流路を備えていた。エタノール95%/水5%中に1.5%のプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物を10μL/sec及び20μL/secの流量で流路に供給した。観測された動作圧力は、流量の増大につれて、平均約80psiから約180psiまで増大した。図21に示すように、液体流量が10μL/secの場合、フィルターでのブプレノルフィンHCl回収率は約86%であり、合計回収率は約100%であった。図22に示すように、液体流量が20μL/secの場合、フィルターでのブプレノルフィンHCl回収率は約91%に増大し、合計回収率は100%に近かった。
【0069】
さらなる試験では、使用したCAGヒーターは、長さが35mmで、開口断面積が3257μm2の先端造形型の狭窄部を有する、K32EGチューブからなる流路を備えていた。エタノール95%/水5%中に1.5%のプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物を10μL/sec及び20μL/secの流量で流路に供給した。観測された動作圧力は、流量の増大につれて、平均約130psiから約250psiまで増大した。図23に示すように、液体流量が10μL/secの場合、フィルターでのブプレノルフィンHCl回収率は約87%であり、合計回収率は約100%であった。図24に示すように、液体流量が20μL/secの場合、フィルターでのブプレノルフィンHCl回収率は約91%に増大し、合計回収率は約100%であった。
【実施例6】
【0070】
担体として含有するのが水100%であり、クロモリンナトリウム3%を含有する液体処方組成物により、CAGヒーターを用いたエアゾール発生を評価するために試験を行った。液体流量は20μL/secであった。CAGヒーターは長さ35mmのK32EGチューブからなる流路を備えていた。狭窄部を持たない毛管流路(即ち、その全長に沿って内径が同一)を備える先端造形のないCAGヒーターの構成と、それぞれ開口断面積が903μm2及び3280μm2の先端造形型の狭窄部を有する造形先端つき毛管流路を試験した。図25に示すように、狭窄部を持たない毛管流路の場合、クロモリンナトリウムの回収率は約10%であった。出口に狭窄部を設けたCAGヒーターを使用することにより、クロモリンナトリウムの回収率は著しく増大した。最高のエアゾール回収は開口断面積が小さい方の狭窄部の場合に測定された。試験結果は、水100%の担体を用いて、広範囲の印加電力レベルにわたって高いエアゾール回収を達成できることを実証している。
【0071】
別の比較試験では、35ゲージ・チューブからなる狭窄部を持たない流路を備えたCAGヒーターを使用し、同じ液体処方組成物を流量20μL/secで供給してエアゾールを発生させた。クロモリンナトリウムエアゾール粒子の平均質量メジアン空気動力学的直径(MMAD)は約1.6μmであった。比較試験において、内径約0.002インチの先端造形型の狭窄部を有する35ゲージ・チューブからなる狭窄部つき流路を備えたCAGヒーターを使用し、同じ液体処方組成物を同じ流量で供給してエアゾールを発生させた。クロモリンナトリウムエアゾール粒子の平均MMADは約0.8μmであり、狭窄部の寸法が小さくなるにつれて粒子寸法(粒度)も小さくなることを示している。この結果は、毛管の先端内径が小さいほど内部の蒸気速度が高くなり、先端部の内部に同伴されている液滴のせん断がより大きくなって、より小さい液滴の生成を引き起こすことに起因すると考えられる。
【0072】
さらに別の比較試験では、液体処方組成物への低揮発性物質の添加がクロモリンナトリウム・エアゾール粒度に及ぼす影響を評価した。液体処方組成物は、担体として水100%、クロモリンナトリウム3%、及び低揮発性化合物としてそれぞれ0%、5%及び10%のグリセロールを含有していた。液体流量は10μL/secであった。先端狭窄部を有する35ゲージ・チューブの流路を備えた、先端造形CAGヒーターを用いてエアゾールを発生させた。測定されたクロモリンナトリウム・エアゾール粒子のMMAD寸法は、グリセロール濃度が0%、5%及び10%でそれぞれ1.6μm、2.2μm及び3.0μmであった。
【実施例7】
【0073】
狭窄部付き毛管流路を備える先端造形CAGヒーターの態様を用いて望ましいエアゾール粒度のインスリンエアゾールを発生できることを実証するために試験を行った。使用した先端造形CAGヒーターは、長さ約0.02インチ、開口径約0.002インチの先端造形型の狭窄部を有する、長さが35mmの流路を備えていた。2種類の異なる液体インスリン処方組成物を試験した。一方の処方組成物は、米国インディアナ州インディアナポリス所在のイーライ・リリー社から市販のヒューマリンRを含有していた。ヒューマリンR処方組成物のインスリン濃度は500単位/mlであった。他方のインスリン組成物は、90%水/10%0.1N HClの水溶液中に2%のヒトインスリン(シグマ、製品番号10259、米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマアルドリッチ社から市販)を含有する即席の処方組成物であった。両方の液体処方組成物の流量は10μL/secであった。これらの処方組成物のいずれも、先端造形CAGヒーターによりエアゾールを発生させるには高揮発性の液体であると考えられることに留意されたい。
【0074】
表1は、印加電力レベルを変化させた時のヒューマリンR処方組成物を用いたエアゾール発生の結果を示す。インスリンエアゾール粒子のMMADと、微粒子分率%、即ち、粒子寸法が約5μm未満であると解析されたインスリン粒子の全粒子に対する%を示す。粒子寸法は、米国ミネソタ州ショアビュー所在のMSP社から市販の多段MOUDIカスケード・インパクターを用いて測定した。カスケード・インパクターは、流路の出側端部と流体連通するL字管(ベント管)の下流に配置した。インスリンエアゾール粒子の最大MMADは2.0μm、最小微粒子分率は約81%であった。図26及び27は、生成したエアゾール化インスリン粒子を示す、それぞれ倍率7000倍及び15000倍での走査式電子顕微鏡写真である。
【0075】
【表1】

【0076】
表2は、即席のインスリン組成物を使用したエアゾール発生の試験結果を示す。インスリンエアゾール粒子の最大MMADは、ヒーターに印加した3つの電力レベル(11.4、11.8及び12.4ワット)については2.1μmであった。エアゾール粒子の微粒子分率は全ての印加電力レベルで50%を超えた。
【0077】
【表2】

【0078】
本願と同じ譲受人にかかる米国特許出願第10/648,282に説明されているように、造形先端部を持たないCAGヒーターの加熱部の下流又は出側端部に設置した電極に、電圧を印加した時にその電極の昇温を生ずる所定の電気抵抗を設けることによって、加熱部の下流側端部の毛管壁面と下流側電極との間の温度勾配は最小限になる。加熱部の下流側端部に設けた電極の電気抵抗、断面積、及び長さは、そのような温度勾配を最小限又は解消し、下流側電極がヒートシンクとして働くのを防止し、それにより加熱部の下流端部からの熱損失を最小限にするように選択することができる。毛管チューブに沿った熱伝達の最適バランスを達成する下流側電極の電気抵抗は、チューブを通る流体及び/又は蒸気の所望流量の関数として熱プロファイルの変化を適応させるように選択することができる。予想外にも、先端造形のCAGヒーターは、下流側電極を特別に設計することを必要とせずに、望ましい放出及び可呼吸分率を有するエアゾールを発生させることができる。
【実施例8】
【0079】
高抵抗の下流側電極を持たないCAGヒーターを用いたエアゾール発生を評価するために試験を行った。試験は、長さ25mmのK32EGチューブからなり、開口断面積が2582μm2の先端造形型の狭窄部を持つ流路に直接取付けた金めっきCu−Be下流側電極を用いて実施した。エタノール95%/水5%中に1.5%のプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物を10μL/secの流量で流路に供給した。図28に示すように、約5ワットから約9.7ワットまでの広い印加電力範囲にわたって、フィルターでのブプレノルフィンHCl回収率は約87%から約94%までの範囲であり、合計回収率は約100%であった。第2の試験では、毛管流路長さが35mmであった。図29に示すように、約7ワットから約9ワットまでの印加電力範囲にわたって、フィルターでのブプレノルフィンHCl回収率は約85%から約94%までの範囲であり、合計回収率は約100%であった。
【0080】
Cu−Beといった良導体の電極を、この電極より高抵抗のステンレス鋼といった材料の流路に直接取付けることにより、先端造形CAGヒーターの製造の単純化及び/又は製造コストの低減が可能となる。
【実施例9】
【0081】
先端造形CAGヒーターが広範囲のヒーター電力レベルにわたって各種薬剤含有処方組成物に対して望ましいエアゾール発生を与えることができることが判明した。印加電力レベルを低減してエアゾール回収率を評価するために試験を行った。使用したCAGヒーターは、開口断面積が2400μm2の先端造形型の狭窄部を有する、長さ25mmのK32EGチューブからなる流路を備えていた。このCAGヒーターは高抵抗の下流側電極を備えていなかった。エタノール95%/水5%中に1.5%のプレノルフィンHClを含有する液体処方組成物を20μL/secの流量で流路に供給した。この処方組成物の完全な蒸発に要する最小送給電力量は約16ワットであると算出することができる。しかし、図30に示すように、約6ワットから17ワットまでの広い印加電力範囲にわたって、フィルターでのブプレノルフィンHCl回収率は約70%から約90%までの範囲であり、合計回収率は約100%であった。従って、この試験結果は、狭窄部つき流路を備えるCAGヒーターが100%蒸発を起こすための計算値の約35%という低い電力レベルで望ましいエアゾール回収率を与えたことを実証している。
【0082】
予測される電力レベルより低いレベルで望ましいエアゾール回収率を生ずる能力を示すことにより、この狭窄部つき流路を備えるCAGヒーターはまた、例えば、狭窄部なしの流路では20μLであったのに対して40μLというように、より多量の薬剤用量といった、液体処方組成物の用量増大を生ずる能力も示す。例えば、より低レベルの電力で所望のエアゾール回収率を生ずることができるため、予め設定された送給時間内に液体処方組成物をより高い流量で蒸発させることができる。また、CAGヒーターは、より小さな電源、例えば、より小型又は軽量のバッテリーを用いて、所定の用量の液体処方組成物、例えば、20μL量の薬剤のエアゾールを生ずることができる。
【0083】
実施例8及び9に説明し、図28〜30に示した試験結果は、先端造形CAGヒーターの予想外の利点を実証する。これらのいずれの実施例でも、広い印加電力範囲にわたって非常に高いフィルター部での回収率が得られた。それらは、図28に示すように、5〜約9.75アンペアの電力範囲及び図30に示すように6〜17アンペアの範囲を含んでいた。図29では、より小さいものの、なお有意に拡張された電力範囲が示されている。
【0084】
先端造形CAGヒーターの予想外の利点は、CAGヒーター内で液体を蒸発させるのに必要な電力量が理論に基づいて予測されたものより小さかったことである。例えば、図28では、その特定の液体処方組成物を蒸発させるのに必要な電力の理論的計算量は約8ワットであった。意外にも、100%蒸発を得るための計算電力レベルより30%も少ない電力レベルである5ワットという低さの印加電力で高い回収率が認められた。同様の結果は、図29及び30に示した実施ずみ実験でも得られた。先端造形CAGヒーターを手持ち型エアゾール発生器に組み込むと、動作電力要求量、従って、バッテリー能力が低減できる可能性が出てくる。低減したが、なお許容されるバッテリー能力は、よりコンパクトな手持ち型吸入器の設計につながるであろう。別の利点は、先端造形CAGヒーターを組み込んだエアゾール発生器に使用される制御システムが単純化できることである。これは、ヒーターに送給される電力を極めて狭い範囲内に維持する能力が不要となるためである。これは、付随する制御回路及びプロセスの複雑さが低減し、先端造形CAGヒーターを組み込んだ吸入器の設計及び製造コストを削減できる可能性があることにつながる。
【0085】
図25は、狭窄部を持たないCAGヒーターを用いると、非常に広い電力範囲にわたって比較的低いフィルター収率が得られたことを示している。他方、先端造形CAGヒーターは、広範囲の電力範囲にわたってだけでなく、液体処方組成物の完全蒸発のための計算電力量である16ワットよりずっと低い約5ワットといった低い電力範囲でも、約40%から約80%までの範囲の実質的により高いフィルター収率を与えることができた。先端造形CAGヒーターが液体処方組成物をエアゾール形態で送給するのに使用する吸入器の設計及び製造に相当のフレキシビリティーを与えることは容易に理解されよう。
【0086】
以上に本発明を好適態様に従って例示及び説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明から逸脱せずに変形及び変更をなしうることは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入側端部、出側端部及び第1流れ部分を備える流路;
該流路の出側端部に位置し、第1流れ部分より下流側で流路の第2流れ部分を画成する狭窄部;並びに
第1流れ部分内の液体を加熱して、出側端部から周囲大気中に排出される蒸気を生成するように構成され、該流路に沿って配置されたヒーター、
から構成されるエアゾール発生器であって、前記流路は複数の部品から構成され、それら複数部品の対向面が界面に沿って接合されて、それら部品間に前記第1及び第2の流れ部分が画成されているエアゾール発生器。
【請求項2】
前記流路の第1流れ部分の横断方向断面積である第1の横断方向断面積が、該流路の出側端部に位置する第2流れ部分の横断方向断面積である第2の横断方向断面積より大きく、第1横断方向断面積:第2横断方向断面積の比が2:1〜30:1である、請求項1に記載のエアゾール発生器。
【請求項3】
前記流路が第1毛管径のチューブであり、狭窄部が第1毛管径チューブの内部に嵌合する寸法の第2毛管径のチューブである、請求項1に記載のエアゾール発生器。
【請求項4】
前記流路が、この流路の出側端部付近に第3の流れ部分を備え、蒸気が排出される際にそこで冷却される、請求項1に記載のエアゾール発生器。
【請求項5】
第3の流れ部分が流路と接触した冷却装置を備えていて、第3流れ部分の温度を10℃〜100℃だけ低下させる、請求項4に記載のエアゾール発生器。
【請求項6】
使用者がエアゾール発生器からエアゾールを吸い込むのを可能にする、該流路の出側端部と流体連通している吸い口をさらに備える、請求項1に記載のエアゾール発生器。
【請求項7】
前記流路の入側端部と流体連通し、薬剤を含有する液体処方組成物を収容している液体供給源をさらに備える、請求項1記載のエアゾール発生器。
【請求項8】
さらに下記を含む、請求項7に記載のエアゾール発生器:
電源;
前記液体供給源と前記流路との間に配置されたバルブ;及び
該液体供給源から該流路の入側端部への液体の流れを制御するようにバルブを動作させ、かつヒーターを流路内の液体を蒸発させるのに有効な温度範囲に保持するように電源からヒーターへの電力送給を制御するように操作可能なコントローラ。
【請求項9】
さらに下記を含む、請求項1に記載のエアゾール発生器:
ヒーターに電力を供給するように構成された電源、及び
前記第1流れ部分内の液体を加熱して、その出側端部から排出される蒸気を生成するのに有効な量の電力をヒーターに供給するように電源の動作を制御するように構成されたコントローラ。
【請求項10】
前記ヒーターに取付けられた第1電極、及び第1電極より下流側で該ヒーターに取付けられた、ヒーターの材料より低抵抗の材料製の第2電極をさらに備える、請求項1に記載のエアゾール発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−135629(P2012−135629A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−44996(P2012−44996)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2007−509716(P2007−509716)の分割
【原出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(506355589)フィリップ・モリス・ユーエスエー・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】PHILLIP MORRIS USA INC.