説明

エアゾール組成物および該エアゾール組成物を用いたエアゾール製品

【課題】火気に対する安全性が極めて高く、噴射物の少なくとも一部が凍結し、噴射物の残留物がないエアゾール組成物および該エアゾール組成物を用いたエアゾール製品を提供すること。
【解決手段】水とハイドロフルオロオレフィンを含み、前記水をエアゾール組成物中に0.1〜10質量%含有し、水とハイドロフルオロオレフィンが分離しているエアゾール組成物、ならびに該エアゾール組成物と、エアゾール組成物の液相のみを噴射するエアゾールバルブを備えたエアゾール装置とからなり、エアゾール組成物の噴射量が2.8〜10g/秒であるエアゾール製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物および該エアゾール組成物を用いたエアゾール製品に関する。さらに詳しくは、火気に対する安全性が極めて高く、噴射物の少なくとも一部が凍結し、噴射物の残留物がないエアゾール組成物と、該エアゾール組成物を用いたエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃焼性の低い代替フロンを含有した害虫駆除用エアゾールが開示されている。代替フロンとしてHFC−152a(1,1−ジフルオロエタン)、HFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)、HFO−1234ze(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)を例示しており、特にHFO−1234zeは引火性がなく、不燃性であることが記載されている。また、特許文献2には、テトラフルオロプロペン、水および界面活性剤を含むエアゾール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−227662号公報
【特許文献2】特開2010−77036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、HFO−1234zeは30℃においては燃焼範囲があり、その下限値は7容量%である。害虫駆除用エアゾールが実際に使用されるのは気温の高い環境であり、不燃性という表示から消費者が多量に使用してしまい、条件が重なることで事故が起こる可能性がある。また、特許文献2は、界面活性剤を組成物中に0.05〜12質量%含めることが記載されているが、実施例においては5質量%含有しており、噴射物の残留物が多くなるという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、火気に対する安全性が極めて高く、噴射物の少なくとも一部が凍結し、噴射物の残留物がないエアゾール組成物および該エアゾール組成物を用いたエアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエアゾール組成物は、水とハイドロフルオロオレフィンを含み、前記水をエアゾール組成物中に0.1〜10質量%含有し、水とハイドロフルオロオレフィンが分離していることを特徴とする。
【0007】
前記水とハイドロフルオロオレフィンの含有比(質量比)が0.1/99.9〜10/90であることが好ましい。
【0008】
さらに第三成分を含有するエアゾール組成物であり、前記第三成分の含有量がエアゾール組成物中に0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0009】
また、本発明のエアゾール製品は、前記エアゾール組成物と、エアゾール組成物の液相のみを噴射するエアゾールバルブを備えたエアゾール装置とからなり、エアゾール組成物の噴射量が2.8〜10g/秒であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエアゾール組成物およびエアゾール製品によれば、火気に対する安全性が極めて高く、噴射物の少なくとも一部が凍結し、噴射物の残留物がないエアゾール組成物およびエアゾール製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエアゾール組成物は、水とハイドロフルオロオレフィンを含み、前記水をエアゾール組成物中に0.1〜10質量%含有し、水とハイドロフルオロオレフィンが分離していることを特徴とする。
【0012】
本発明のエアゾール組成物に含まれる水とハイドロフルオロオレフィンは分離しており、該エアゾール組成物を振とうし、ハイドロフルオロオレフィンと水とを分散させ、均一な組成で噴射することで本発明の効果を得ることができる。
【0013】
前記水はハイドロフルオロオレフィンの燃焼性を抑制し、火気に対する安全性を高くする、ハイドロフルオロオレフィンの気化熱により冷却されて対象物上で凍結し冷却時間を長くするなどの目的で用いられる。
【0014】
前記水の含有量は、エアゾール組成物中に0.1〜10質量%であり、好ましくは0.3〜8質量%である。水の含有量が0.1質量%よりも少ない場合は爆発濃度が低くなって火気に対する安全性が低下する傾向がある。10質量%よりも多い場合は、エアゾール組成物中の水とハイドロフルオロオレフィンの分離が速く、噴射中に分離して均一な組成で噴射しにくくなり、噴射物が飛び散りやすく狙った箇所に付着しにくくなる傾向がある。
【0015】
前記ハイドロフルオロオレフィンはエアゾール容器内では蒸気圧を有する液体であり、噴射剤として作用し、噴射後は気化熱により水や噴射対象物を冷却する効果を有する。ハイドロフルオロオレフィン単独による火炎長試験においては火炎の伸びは認められず、液化石油ガスやジメチルエーテルと比較すると火気に対して安全であるが、30℃においては爆発下限濃度が7.0容量%であり、可燃性ガスになる。本発明では、ハイドロフルオロオレフィンに対して水を少量加えることで、ハイドロフルオロオレフィンを含有するエアゾール組成物の火気に対する安全性が高くなり、さらに噴射物の少なくとも一部が凍結することを見出した。
【0016】
前記ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えばHFO−1234ze(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)、HFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)、およびこれらの混合物などが挙げられる。特に燃焼性が低い点からHFO−1234zeとすることが好ましい。
【0017】
前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、エアゾール組成物中に87〜99.9質量%であることが好ましく、さらには90〜99.7質量%であることが好ましい。ハイドロフルオロオレフィンの含有量が80質量%よりも少ない場合は噴射物の残量が多くなる傾向がある。99.9質量%よりも多い場合は水を所定量含有できなくなり、爆発濃度が低くなる傾向がある。
【0018】
前記水とハイドロフルオロオレフィンの含有割合(水/ハイドロフルオロオレフィン)は0.1/99.9〜10/90(質量比)であることが好ましく、さらには0.3/99.7〜7/93であることが好ましい。含有割合が0.1/99.9よりも小さい場合は爆発濃度が低くなる傾向がある。10/90よりも大きい場合は噴射中に分離して均一な組成で噴射しにくくなる傾向がある。
【0019】
なお、ハイドロフルオロオレフィン以外の噴射剤として、例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、これらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテルなどの液化ガス、窒素、二酸化炭素、酸素、空気などの圧縮ガスが挙げられるが、液化石油ガスやジメチルエーテルは高い燃焼性を有するのでエアゾール組成物中に10質量%含有するとエアゾール組成物の爆発濃度が低くなる傾向がある。なお、圧縮ガスはエアゾール組成物の圧力調整などの目的で含有することができる。
【0020】
前記エアゾール組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、用途や目的に応じて第三成分を含有することができる。前記第三成分としては、例えば、有効成分、水溶性高分子、界面活性剤、水溶性溶剤、油剤などが挙げられる。
【0021】
前記有効成分は、対象物に付着あるいは揮発して効果を発揮するものであり、例えばクロタミトン、d−カンフルなどの鎮痒剤;サリチル酸メチル、インドメタシン、ピロキシカム、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤;オキシコナゾール、クロトリマゾール、スルコナゾール、ビフォナゾール、ミコナゾール、イソコナゾール、エコナゾール、チオコナゾール、ブテナフィン、およびこれらの塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩などの抗真菌剤;アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤;アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤;塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、リドカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤;ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジンなどの殺菌・消毒剤;l−メントール、カンフルなどの清涼剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、レシチン、尿素などの保湿剤;ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどの消臭剤;パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾンなどの紫外線吸収剤;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロールおよびこれらの混合物などのビタミン類;アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤;シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液;アルブチン、コウジ酸などの美白剤;N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミド、ハーブエキスなどの害虫忌避剤;フタルスリン、アレスリン、ペルメトリン、シスメスリン、プロパルスリン、レスメトリン、d−フェノトリン、テフルスリン、ベンフルスリンなどの殺虫成分;サイネピリン、ピペロニルブトキサイト、オクタクロロジプロピルエーテルなどの効力増強剤;天然香料、合成香料などの各種香料などが挙げられる。
【0022】
前記水溶性高分子は水の粘度を調整して噴射物の凍りやすさや冷却効果の持続時間を調整する、対象物に付着しやすくするなどの目的で用いられる。前記水溶性高分子としては、例えば、キサンタンガム、カラギーナン、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガムなどのガム質;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子;デキストリン、ペクチン、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどが挙げられる。
【0023】
前記界面活性剤は、水とハイドロフルオロオレフィンの分離速度を遅くして均一な組成で噴射しやすくする、噴射物が人体や害虫の表面などの親油性の対象物に付着しやすくするなどの目的で用いられる。前記界面活性剤としては、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノラウレート、デカグリセリルモノオレエート、ジグリセリルモノオレエート、ヘキサグリセリルモノラウレート、ヘキサグリセリルモノミリステートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエートなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノオレエートなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンモノラウレートなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられ、噴射物の残留物が残りにくい点から液状の界面活性剤を用いることが好ましい。
【0024】
前記水溶性溶剤は、水に溶解しにくい有効成分の溶剤、皮膚の保湿などの目的で用いられる。前記水溶性溶剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0025】
前記油剤は、噴射物が人体や害虫の表面などの親油性の対象物に付着しやすくするなどの目的で用いられる。前記油剤としては、例えばスクワレン、スクワラン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィンなどの炭化水素油;アジピン酸ジオクチル、マロン酸ジエチル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジオクチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、ステアリン酸イソセチル、セトステアリルアルコール、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステル油;メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;オレイン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸;ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール;アボガド油、マカダミアナッツ油、シア脂、オリーブ油、ツバキ油などの油脂などが挙げられる。
【0026】
前記第三成分の含有量は、エアゾール組成物中0.1〜3質量%であることが好ましく、さらには0.2〜2質量%であることが好ましい。含有量が0.1質量%よりも少ない場合は第三成分の効果が得られにくくなる傾向がある。3質量%よりも多い場合は噴射物の残留物が残りやすく、ベタツキやしみになりやすくなる傾向がある。
【0027】
本発明のエアゾール組成物は、特定量の水とハイドロフルオロオレフィンを含有することにより、火気に対する安全性が極めて高いエアゾール組成物およびエアゾール製品とすることができ、さらに、該エアゾール組成物の噴射物は、その少なくとも一部が凍結し、その後、経時的に揮発して対象面に残留物が残らないエアゾール組成物とすることができる。
【0028】
前記エアゾール組成物は、例えば、水と第三成分を予め混合して原液を調製し、原液およびハイドロフルオロオレフィンを、耐圧容器、エアゾールバルブ、アクチエーターを備えたエアゾール装置に充填することにより、エアゾール製品とすることができる。なお、水と第三成分は別々に充填してもよい。
【0029】
前記エアゾール装置としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、充填する本発明のエアゾール組成物は火気に対する安全性が極めて高いために、エアゾール組成物(内容物)の気相を噴射物中に導入するベーパータップ孔(気相導入孔)付きのバルブを用いなくても火気に対する安全性が高い噴射物を噴射できる。よって、エアゾール組成物の液相のみを噴射するエアゾールバルブを備えたエアゾール装置とすることが、液相部分を多量に直接噴射することができ、離れた距離から噴射しても冷却効果の高い噴射物を噴射できる点から好ましい。
【0030】
前記バルブはステム孔の断面積が0.15〜3.0mm2であることが好ましく、0.18〜0.8mm2であることがより好ましい。ステム孔の断面積が0.15mm2より小さい場合は噴射量が少ないために噴射面で凍り難い傾向がある。3.0mm2よりも大きい場合は噴射量が多くなりすぎ、噴射時の半作用力が大きくなり噴射方向が定まらない傾向がある。
【0031】
特に前記バルブはステム孔を複数個設けることが好ましく、2〜4個設けることがより好ましい。ステム孔を複数個設けることで、水が大きな粒子で分散している本発明のエアゾール組成物がバルブの通路内でスムーズに流れ、ステム孔で水の凍結物が付着することなく安定な噴射が可能となる。
【0032】
前記アクチエーターは噴射孔の断面積が0.5〜25mm2であることが好ましく、さらには0.7〜23mm2であることが好ましい。噴射孔の断面積が0.5mm2より小さい場合は噴射孔で氷の粒が付着し噴射方向がバラつく傾向にあり、25mm2より大きい場合は噴射量が多くなりすぎ、噴射時の半作用力が大きくなり噴射方向が定まらない傾向がある。
【0033】
前記エアゾール製品のエアゾール組成物の噴射量は2.8〜10g/秒であることが好ましく、3.5〜8g/秒であることがより好ましい。噴射量が2.8g/秒よりも少ない場合は噴射物を一定方向に噴射できず、噴射物が凍り難くなる傾向がある。10g/秒よりも多い場合は噴射量が多くなりすぎ、噴射時の半作用力が大きくなり噴射方向が定まらない傾向がある。
【0034】
特に、前記エアゾール製品のエアゾール組成物の噴射量は、離れた距離から噴射しても冷却効果が高いエアゾール製品とすることができる傾向がある点から、5〜10g/秒であることが好ましい。
【0035】
前記アクチエーターの噴射孔の断面積当たりの噴射量は0.15〜6g/秒・mm2であることが好ましく、0.2〜1g/秒・mm2であることがより好ましい。噴射孔の断面積当たりの噴射量が0.15g/秒・mm2よりも少ない場合は噴射量に対して噴射孔の断面積が大きくなりすぎ、噴射物が広範囲に拡散し、噴射物が凍り難くなる傾向がある。6g/秒・mm2よりも多い場合は噴射量に対して噴射孔の断面積が小さくなりすぎ、噴射孔で噴射物の流れが絞られ、噴射孔近辺で凍結しやすく、噴射方向が定まらない傾向がある。
【0036】
特に、前記アクチエーターの噴射孔の断面積当たりの噴射量は、離れた距離から噴射しても冷却効果が高いエアゾール製品とすることができる傾向がある点から、0.2〜1g/秒・mm2であることが好ましい。
【0037】
また、本発明のエアゾール製品は、前記エアゾール組成物を特定のエアゾール装置に充填することで、液相部分を多量に直接噴射することができ、離れた距離から噴射しても冷却効果が高いエアゾール製品とすることができる。そのため、本発明のエアゾール組成物およびエアゾール製品の冷却効果で害虫の動きを鈍くさせる、あるいは死滅させる害虫駆除剤、襟や袖口から衣類の中に噴射することでこもっている熱を排出する衣類の冷却剤、ブーツや靴の中に噴射することで中にこもっている熱や臭いを排出する靴用冷却/消臭/芳香剤、トイレや車などの狭い空間の冷却/消臭/芳香剤などに好適に用いることができる。
【0038】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
評価方法を下記に示す。
【0040】
(1)噴射物の状態の評価
エアゾール組成物を充填したエアゾール容器を、25℃の恒温水槽中に1時間保持し、ろ紙に向けて所定の距離から噴射し、噴射物の状態を評価した。
◎ :1m離れた位置から噴射すると水および周囲の水が凍り、溶解後、完全に乾燥して残留物はなかった。
○:15cm離れた位置から噴射すると噴射物中の水および周囲の水が凍り、溶解後、完全に乾燥して残留物はなかった。
△ :15cm離れた位置から噴射すると噴射物は凍ったが少しだけ飛び散った。
×1:15cm離れた位置から噴射すると噴射物はほとんど付着しなかった。
×2:15cm離れた位置から噴射すると噴射物は凍ったがほとんどが飛び散った。
×3:15cm離れた位置から噴射すると噴射物は凍らなかった。
×4:15cm離れた位置から噴射すると噴射物は凍ったが、溶解後、乾燥せずに残留物が残った。
【0041】
(2)火炎長試験
エアゾール組成物を充填したエアゾール容器を、25℃の恒温水槽中に1時間保持し、炎までの距離が15cmの位置から、高さ5cmの炎に向けて噴射したときの火炎の伸び(長さ)を測定した。
○:火炎の伸びが認められなかった
×:火炎の伸びが認められた
【0042】
(3)爆発性試験
エアゾール組成物を充填したエアゾール容器を、30℃の恒温水槽中に1時間保持し、30℃環境下で爆発性試験を行い、爆発濃度を測定した。なお、爆発性試験は、一方の端にちょうつがいで止めた内圧により自由に開くふたを、他方の端にエアゾール製品を吹き込む吹込口を、内部にモーターによって動く攪拌用のはねと点火用プラグを備えた内容積50リットルの円筒状の容器を用い、羽根を回転させて点火用プラグのスイッチを入れ、エアゾール製品を吹込口から1秒間噴射、2秒間停止を繰り返して、爆発によりふたが開いたときの噴射量を測定して行った。
○ :3g/L以上
×1:1g/L以上、3g/L未満
×2:0.25g/L以上、1g/L未満
【0043】
(4)噴射量
エアゾール組成物を充填したエアゾール容器を、25℃の恒温水槽中に1時間保持し、5秒間噴射して噴射量を測定し、1秒間当りの噴射量を算出した。
【0044】
実施例1〜5
表1に示すエアゾール組成物を下記の耐圧容器、エアゾールバルブ、アクチエーターを備えたエアゾール装置に充填し、エアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について噴射物の状態、火炎長試験、爆発性試験および噴射量の評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、実施例1〜5のエアゾール組成物は、水とハイドロフルオロオレフィンが分離していることを、ポリエチレンテレフタレート製の透明な耐圧容器に充填し目視により確認した。
耐圧容器:アルミニウム製
エアゾールバルブ:ステム孔φ0.5mmが2個(断面積0.39mm2)、ハウジング導入孔φ2.0mm、気相導入孔なし
アクチエーター:楕円状の噴射孔(長辺4.5mm、短辺3.0mm、断面積10.6mm2
【0045】
【表1】

【0046】
比較例1〜6
表2に示すエアゾール組成物を実施例1と同じエアゾール容器に充填しエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について火炎長試験、爆発性試験および噴射物の状態の評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、比較例2および3のエアゾール組成物では、水とハイドロフルオロオレフィンが分離しているが、比較例1、4および6のエアゾール組成物では、水とハイドロフルオロオレフィンが相溶しており分離していないことを、また比較例5は水とハイドロフルオロオレフィンが乳化していることを、ポリエチレンテレフタレート製の透明な耐圧容器に充填し目視により確認した。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例6
噴射孔が矩形状(長辺7.0mm、短辺3.0mm、断面積21.0mm2)であるアクチエーターを用いたこと以外は実施例3と同様にしてエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について噴射物の状態、火炎長試験、爆発性試験および噴射量の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0049】
実施例7
噴射孔がφ1.2mm(断面積:1.13mm2)であるアクチエーターを用いたこと以外は実施例3と同様にしてエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について噴射物の状態、火炎長試験、爆発性試験および噴射量の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0050】
実施例8
噴射孔がφ0.9mm(断面積:0.64mm2)であるアクチエーターを用いたこと以外は実施例3と同様にしてエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について噴射物の状態、火炎長試験、爆発性試験および噴射量の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0051】
実施例9
ステム孔がφ0.5mm(断面積0.20mm2)1個であるバルブを用いたこと以外は実施例3と同様にしてエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について噴射物の状態、火炎長試験、爆発性試験および噴射量の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0052】
実施例10
ステム孔がφ0.45mm(断面積0.16mm2)1個であるバルブを用いたこと以外は実施例6と同様にしてエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について噴射物の状態、火炎長試験、爆発性試験および噴射量の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0053】
なお、実施例1〜5のエアゾール組成物は、火炎長試験において火炎の伸びが認められず、さらに爆発性試験において3g/L以上であったことから不燃性に分類される。また実施例6〜10のエアゾール組成物は、前記実施例3のエアゾール組成物であり、水とハイドロフルオロオレフィンが分離している。
【0054】
【表3】

【0055】
製品例1(冷却殺虫剤)
下記のエアゾール組成物(冷却殺虫剤)をアルミニウム製のエアゾール容器に充填し、エアゾール製品を調製した。なお、エアゾールバルブはステム孔φ0.5mmが2個(断面積0.39mm2)、ハウジングの導入孔がφ2.0mm、気相導入孔がないものを用い、楕円状の噴射孔(長辺4.5mm、短辺3.0mm、断面積10.6mm2)を備えたアクチエーターを用いた。得られたエアゾール製品は、火炎長試験による火炎の伸びは認められず、爆発性試験の評価は「○」であったため不燃性に分類され、また噴射物の状態の評価も「◎」であり、噴射量は6.3g/秒であった。
【0056】
水 1.0
HFO−1234ze 99.0
合計 100.0(質量%)
【0057】
製品例2(収斂化粧水)
下記のエアゾール組成物(収斂化粧水)をアルミニウム製のエアゾール容器に充填し、エアゾール製品を調製した。なお、エアゾールバルブはステム孔φ0.5mmが2個(断面積0.39mm2)、ハウジングの導入孔がφ2.0mm、気相導入孔がないものを用い、楕円状の噴射孔(長辺4.5mm、短辺3.0mm、断面積10.6mm2)を備えたアクチエーターを用いた。得られたエアゾール製品は、火炎長試験による火炎の伸びは認められず、爆発性試験の評価は「○」であったため不燃性に分類され、また噴射物の状態の評価も「◎」であり、噴射量は6.2g/秒であった。
【0058】
水 0.8
香料 0.1
l−メントール 0.1
HFO−1234ze 99.0
合計 100.0(質量%)
【0059】
製品例3(害虫忌避剤)
下記のエアゾール組成物(害虫忌避剤)をアルミニウム製のエアゾール容器に充填し、エアゾール製品を調製した。なお、エアゾールバルブはステム孔φ0.5mmが2個(断面積0.39mm2)、ハウジングの導入孔がφ2.0mm、気相導入孔がないものを用い、楕円状の噴射孔(長辺4.5mm、短辺3.0mm、断面積10.6mm2)を備えたアクチエーターを用いた。得られたエアゾール製品は、火炎長試験による火炎の伸びは認められず、爆発性試験の評価は「○」であったため不燃性に分類され、また噴射物の状態の評価も「◎」であり、噴射量は6.0g/秒であった。
【0060】
水 1.0
ハーブエキス 0.1
l−メントール 0.1
HFO−1234ze 98.8
合計 100.0(質量%)
【0061】
製品例4(消炎鎮痛剤)
下記のエアゾール組成物(消炎鎮痛剤)をアルミニウム製のエアゾール容器に充填し、エアゾール製品を調製した。なお、エアゾールバルブはステム孔φ0.5mmが2個(断面積0.39mm2)、ハウジングの導入孔がφ2.0mm、気相導入孔がないものを用い、楕円状の噴射孔(長辺4.5mm、短辺3.0mm、断面積10.6mm2)を備えたアクチエーターを用いた。得られたエアゾール製品は、火炎長試験による火炎の伸びは認められず、爆発性試験の評価は「○」であったため不燃性に分類され、また噴射物の状態の評価も「◎」であり、噴射量は6.1g/秒であった。
【0062】
水 0.8
サリチル酸メチル 0.1
l−メントール 0.1
HFO−1234ze 99.0
合計 100.0(質量%)
【0063】
製品例5(殺虫剤)
下記のエアゾール組成物(殺虫剤)をアルミニウム製のエアゾール容器に充填し、エアゾール製品を調製した。なお、エアゾールバルブはステム孔φ0.5mmが2個(断面積0.39mm2)、ハウジングの導入孔がφ2.0mm、気相導入孔がないものを用い、楕円状の噴射孔(長辺4.5mm、短辺3.0mm、断面積10.6mm2)を備えたアクチエーターを用いた。得られたエアゾール製品は、火炎長試験による火炎の伸びは認められず、爆発性試験の評価は「○」であったため不燃性に分類され、また噴射物の状態の評価も「◎」であり、噴射量は6.4g/秒であった。
【0064】
水 0.5
フタルスリン 0.1
HFO−1234ze 99.4
合計 100.0(質量%)
【0065】
なお、製品例1〜5のエアゾール組成物は、水とハイドロフルオロオレフィンが分離していることを、ポリエチレンテレフタレート製の透明な耐圧容器に充填し目視により確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とハイドロフルオロオレフィンを含み、前記水をエアゾール組成物中に0.1〜10質量%含有し、水とハイドロフルオロオレフィンが分離しているエアゾール組成物。
【請求項2】
前記水とハイドロフルオロオレフィンの含有比(質量比)が0.1/99.9〜10/90である、請求項1記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
さらに第三成分を含有するエアゾール組成物であり、
前記第三成分の含有量がエアゾール組成物中に0.1〜3質量%である、請求項1記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載のエアゾール組成物と、
エアゾール組成物の液相のみを噴射するエアゾールバルブを備えたエアゾール装置とからなり、エアゾール組成物の噴射量が2.8〜10g/秒であるエアゾール製品。

【公開番号】特開2012−219034(P2012−219034A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83964(P2011−83964)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】