説明

エアゾール缶のキャップ取外し器

【課題】 使用済みのエアゾール缶の頭部に取着されている合成樹脂製のキャップを、簡易迅速にかつ安全な状態で効率良くエアゾール缶本体から取外すことができるエアゾール缶のキャップ取外し器の提供。
【解決手段】 左右一対の脚体と、該脚体の上端部に横設した天板と、該天板の裏面に略垂直に固着され、その中央部に略楔形のキャップ取外し孔が穿設された幅広の矩形板材からなるキャップ取外し板と、該キャップ取外し板を覆うようにして前記天板の上方に取付けられる透明樹脂製の保護板とからなるエアゾール缶のキャップ取外し器であって、前記キャップ取外し板に穿設される略楔形のキャップ取外し孔の上辺部に、波形、山形、角形、半円状等の凹凸が略全体にわたり連続して形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのエアゾール缶(スプレー缶)本体の金属部分と、本体頭部のノズルとキャップとを兼ねる樹脂部分とを分別回収して再生処理手段に供するためのエアゾール缶の樹脂部分の取外し器に係り、より詳しくは使用済みのエアゾール缶の頭部に取着されている合成樹脂製キャップを、簡易迅速にかつ安全な状態で効率良くエアゾール缶本体から取外すことができるエアゾール缶のキャップ取外し器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐圧性の金属製缶容器に殺虫剤、消臭剤並びに制汗剤等各種化粧品等の内容物と噴射剤とを充填し、噴射剤の噴出力を利用して充填された内容物を吐出させるエアゾール缶(スプレー缶)が、幅広い用途に応じて一般家庭用や業務用を問わず広範囲に用いられている。
【0003】
このエアゾール缶から内容物を吐出させるために充填される噴射剤としては、不燃性のフロンガスが従来から広く用いられていたが、地球環境保護の高まりと共にその使用が禁止され、その代替として可燃性のLPガスが広く採用されているのが実情である。ところで近時、上記地球環境保護に併せて省資源化、省エネルギー化を求める機運も高まり、使用済み製品の再資源化すなわちリサイクル運動が地球規模での広がりをみせているが、通常用いられるエアゾール缶は金属製の耐圧容器と、内容物を噴出させるためのノズルを兼ねた合成樹脂製キャップとによって構成されており、使用済みのエアゾール缶を再資源化のために回収する場合には、充填されている内容物を除去した後に缶本体部分(金属部分)とキャップ部分(合成樹脂部分)とを分別して回収する。
【0004】
前記使用済みエアゾール缶の本体金属部分と合成樹脂製キャップ部分とを分別して回収するために行われる合成樹脂製キャップの取外しは、従来、手作業により行われるのが一般的である。すなわち、従来は、使用済みエアゾール缶の本体部分を把持あるいは挟持して、ドライバーやハンマー等の工具を用いて合成樹脂製キャップを缶本体より取外しているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来の手作業によるキャップ取外し方法は、作業が煩雑で多くの手間及び時間を要し非能率的であるのみならず、エアゾール缶の種類によってはそのキャップ取外し時にはずみで缶内の残留ガスや残留液状物が吹き出して周辺環境を悪化させたり、その飛散したガスの着火・爆発の危険性があった。さらにその作業環境は、飛散したガスや液状物のみならず、周辺に散らばった使用済みキャップ等により劣悪で健康被害を惹起するおそれがある上、使用済みキャップの回収作業にも多くの労力と時間を要する等の問題があった。
【0006】
本発明は、従来の前記した問題に鑑みなされたもので、使用済みのエアゾール缶の頭部に取着されている合成樹脂製のキャップを、簡易迅速にかつ安全な状態で効率良くエアゾール缶本体から取外すことができるのみならず、異なるサイズの樹脂製キャップにも容易に対応できるエアゾール缶のキャップ取外し器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアゾール缶のキャップ取外し器は、左右一対の脚体と、該脚体の上端部に横設した天板と、該天板の裏面に略垂直に固着され、その中央部に略楔形のキャップ取外し孔が穿設された幅広の矩形板材からなるキャップ取外し板と、該キャップ取外し板を覆うようにして前記天板の上方に取付けられる透明樹脂製の保護板とからなるエアゾール缶のキャップ取外し器であって、前記キャップ取外し板に穿設される略楔形のキャップ取外し孔の上辺部に、波形、山形、角形、半円状等の凹凸が略全体にわたり連続して形成されていることを特徴とするものである。
また、前記左右一対の脚体は略台形状の板材でつくり、前記キャップ取外し板と脚体との固着部には補強板が取付けられ、脚体下部には当該脚体下端部を内側に略L字状に折り曲げて形成した接地板を有することを好ましい態様とするものである。さらに、前記透明樹脂製の保護板には、アクリル樹脂製の板部材を用いるのが好ましい。このアクリル樹脂製の板部材の厚さは、特に限定するものでは内が1〜2mm程度が好ましい。
本発明の上記エアゾール缶のキャップ取外し器はまた、前記脚体の下部にエアゾール缶本体から取外されたキャップを受ける出し入れ式のキャップ回収箱を設けることを好ましい態様とするものである。
なお、前記エアゾール缶のキャップ取外し器において、保護板を除く左右一対の脚体、天板、キャップ取外し板および補強板は通常金属製であり、その締結手段としてはビスやボルト、溶接等を用いる。
【発明の効果】
【0008】
本発明による使用済みエアゾール缶のキャップ取外し器は、キャップ取外し板の中央部に略楔形のキャップ取外し孔が形成されるが、該キャップ取外し孔はその下辺部はほぼ水平であって、その上辺部が一端から他端にかけてテーパー状に傾斜して設けられると共に、該傾斜面には波形、山形、角形、半円状等の凹凸が略全体にわたり連続して形成されていることを特徴的構成要件とするものであり、該キャップ取外し孔の上辺部に設けられる波形、山形、角形、半円状等の凹凸面とほぼ水平の下辺部との間にエアゾール缶頭部の樹脂製キャップの下端部をクランプした後、当該エアゾール缶を下方に押し下げる動作で、樹脂製キャップを缶本体から容易にかつ安全に取り外すことができるのみならず、缶本体から分離したキャップが器具の外へ飛散することもない。さらに、キャップ取外し孔の上辺部に設けられる波形、山形、角形、半円状等の凹凸面の作用により、樹脂製キャップ取外し時におけるエアゾール缶頭部のキャップ部のクランプがより確実に行われるとともに、当該クランプ部の位置ずれが防止され、簡易迅速にかつ的確にキャップを缶本体より取り外すことができる。さらにまた、キャップ取外し孔は略楔形状を有しているので、異なる形態のエアゾール缶、すなわち大小さまざまな大きさ、形状の樹脂製キャップに対しても容易に対応することが可能となる。
【0009】
また、本発明によるエアゾール缶のキャップ取外し器は、前記キャップ取外し板が取付けられる天板の上方に、アクリル板等からなる透明樹脂製の保護板が取付けられていることにより、キャップ取外し作業中に、誤ってエアゾール缶内部に残留していたガスや液状物等が飛散した場合であってもこの保護板により作業者の安全が確保され、さらに該保護板が透明樹脂製であることによって作業者の手元が容易に確認可能であるので、使用済みエアゾール缶のキャップ部をキャップ取外し板のキャップ取外し孔に簡易迅速にかつ的確にクランプすることができる上、そのクランプ状況を確認しながら能率よく的確にキャップ取外し作業を行うことができる。
【0010】
また、本発明によるエアゾール缶のキャップ取外し器は、前記左右一対の脚体を略台形状の板材で構成し、前記キャップ取外し板と脚体との固着部に補強板を取付け、脚体下部に当該脚体下端部を内側に略L字状に折り曲げて形成した接地板を有する構造とすることにより、構造を簡単にして強度的にも安定しかつ耐久性にも富み、製造コストも安価につく。さらに、構造的に軽量かつコンパクトであるところから持ち運びにも便利で、かつ狭隘な場所に設置して簡易迅速に作業を行うことができる。またさらに、本発明によるエアゾール缶のキャップ取外し器によれば、脚体の下部に出し入れ式のキャップ回収箱を設けることにより、缶本体から分離した使用済みキャップを該キャップ回収箱に能率よく回収することができるので、使用済みキャップの回収作業に多くの労力と時間を要することもない上、取外した使用済みキャップが散乱することもないため作業環境の改善もはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のエアゾール缶のキャップ取外し器の一実施例を示す正面図である。
【図2】同キャップ取外し器の平面図である。
【図3】同キャップ取外し器の側面図である。
【図4】同キャップ取外し器の斜視図である。
【図5】同キャップ取外し器におけるキャップ取外し板のキャップ取外し孔の上辺部の凹凸形状を例示したもので、(A)は波形、(B)は山形、(C)は角形、(D)は半円状をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図5に示す本発明のエアゾール缶のキャップ取外し器1は、略台形の板材からなる左右一対の脚体5と、該脚体5の上端部に横設した矩形帯状の天板6と、該天板6の裏面におけるほぼ中央部分に略垂直に固着された矩形幅広の板材からなるキャップ取外し板2と、脚体5の下部に設ける出し入れ式のキャップ回収箱7とから構成され、前記キャップ取外し板2は、その中央部に略楔形のキャップ取外し孔3が穿設されている。このキャップ取外し孔3の下辺部は図1に示すようにほぼ水平に穿設されているが、該嵌入孔3の上辺部は一端から他端にかけてテーパー状に傾斜して穿設される共に、その傾斜面には図5(A)に示すように例えば波形の凹凸面3−1が略全体にわたり連続して形成されている。ここで、キャップ取外し孔3の上辺部を凹凸面3−1とするのは、エアゾール缶8の樹脂製キャップ9を取外す際に、使用済みエアゾール缶8の樹脂製キャップ部のクランプをより確実にすることと、該エアゾール缶8を下方に押し下げる動作時にそのクランプ部の位置ずれが生じないようにするためである。なお、前記凹凸面としては、波形に限らず、図5(B)〜(D)に示すように山形(B)、角形(C)、半円状(D)等でもよいことはいうまでもない。
【0014】
また、前記天板6の上方には透明樹脂製の保護板4が設けられる。この保護板4は、例えば板厚1mmのアクリル樹脂からなり、図3や図4に示すように左右両サイドにやや傾斜するようにして、前記天板6の上面にビス止め4−1によって取付けられている。さらに、脚体5の下部には、キャップ取外し板2のキャップ取外し孔3の部分から落下してきたキャップを受けるための出し入れ式のキャップ回収箱7を設ける。
【0015】
なお、本発明に係るエアゾール缶のキャップ取外し器1においては、取外し器自体の強度の安定化とコンパクト化をはかるために、左右一対の脚体5を略台形状の板部材で構成するとともに、キャップ取外し板2と脚体5との固着部に補強板2−1を取付け、さらに床面への安定的な設置をはかるために脚体5の下端部を内側に略L字型に折り曲げて帯状の接地板5−1を形成した(図1参照)。また、このキャップ取外し器の脚体5、天板6、キャップ取外し板2および補強板2−1は、一般的に金属製(例えばステンレス鋼板)のものを用い、製作に際してはそれぞれを例えばプレスによる打ち抜き加工および折り曲げ加工によって作成した後、溶接によって接合して一体に成形し、その後予め天板6の部分を除いた左右両サイドを下方に傾斜するように成形したアクリル樹脂製の保護板4を、該天板6の上面にビス止め4−1することによって組立てることができる。出し入れ式のキャップ回収箱7は、その組立てられた脚体5の下部の広さやキャップ取外し器の大きさに応じたものを使用する。
【0016】
上記構成のエアゾール缶のキャップ取外し器1において、使用済みエアゾール缶8から樹脂製キャップ9を取外す場合は、当該エアゾール缶8を把持してキャップ取外し板2のキャップ取外し孔3に缶本体頭部の樹脂製キャップ部を当該キャップ部の径より大径孔の部分に嵌入するとともに当該キャップ部をキャップ取外し孔3の小径孔の方へスライドさせて、テーパー状の凹凸面3−1と、ほぼ水平の下辺部との間に樹脂製キャップ9の下端部をクランプし、しかる後当該エアゾール缶8を下方に押し下げる(図3に矢印で示す)ことによって樹脂製キャップ9を缶本体から分離することができる。この時、キャップ取外し孔3の上辺部に設けられた波形の凹凸面3−1の作用により、エアゾール缶頭部のキャップ部のクランプがより確実に行われるとともに、当該クランプ部の位置ずれが防止され、簡易迅速にかつ的確に樹脂製キャップ9を缶本体より取り外すことができる。またこの時、誤ってエアゾール缶内部に残留していたガスや液状物等が飛散しても、天板6の上面に取付けられている保護板4により作業者の安全が確保され、さらに該保護板4が透明樹脂製であることによって作業者の手元が容易に確認できるので、使用済みエアゾール缶8のキャップ部をキャップ取外し板2のキャップ取外し孔3に簡易迅速にかつ的確にクランプすることができる上、そのクランプ状況を確認しながらキャップ取外し作業を行うことができる。
【0017】
缶本体より取り外された樹脂製キャップ9は、缶本体より分離後キャップ取外し板2のキャップ取外し孔3より落下して脚体5の下部に設けた出し入れ式のキャップ回収箱7内に回収されるので、周囲に飛散することはない。
【0018】
また、大きさや形状の異なるキャップのエアゾール缶の場合も前記と同様の動作を繰返すことにより当該樹脂製キャップ9を簡易迅速にかつ安全に缶本体より取り外すことができる。
【符号の説明】
【0019】
1 エアゾール缶のキャップ取外し器
2 キャップ取外し板
3 キャップ取外し孔
3−1 凹凸面
4 保護板
4−1 ビス止め
5 脚体
5−1 接地板
6 天板
7 キャップ回収箱
8 使用済みエアゾール缶
9 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の脚体と、該脚体の上端部に横設した天板と、該天板の裏面に略垂直に固着され、その中央部に略楔形のキャップ取外し孔が穿設された幅広の矩形板材からなるキャップ取外し板と、該キャップ取外し板を覆うようにして前記天板の上方に取付けられる透明樹脂製の保護板とからなるエアゾール缶のキャップ取外し器であって、前記キャップ取外し板に穿設される略楔形のキャップ取外し孔の上辺部に、波形、山形、角形、半円状等の凹凸が略全体にわたり連続して形成されていることを特徴とするエアゾール缶のキャップ取外し器。
【請求項2】
前記左右一対の脚体が略台形状の板材からなり、前記キャップ取外し板と脚体との固着部には補強板が取付けられ、脚体下部には当該脚体下端部を内側に略L字状に折り曲げて形成した接地板を有することを特徴とする請求項1に記載のエアゾール缶のキャップ取外し器。
【請求項3】
前記透明樹脂製の保護板がアクリル樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載のエアゾール缶のキャップ取外し器。
【請求項4】
前記脚体の下部に出し入れ式のキャップ回収箱を設けることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエアゾール缶のキャップ取外し器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−201595(P2011−201595A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73594(P2010−73594)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000145921)株式会社庄司操製作所 (4)
【Fターム(参考)】