説明

エアゾール装置用の噴射部材およびそれを用いたエアゾール装置

【課題】患部等に当接させて押圧しても不快感を与えず、かつ、操作部材のどの部分を押してもエアゾール組成物を噴射させることができるエアゾール装置を提供する。
【解決手段】エアゾール容器12に取り付けられる装着部材14と、その装着部材に固定される弾力性を有する操作部材15とからなる噴射部材16を備えたエアゾール装置10。操作部材15は、エアゾール容器のステムに装着されるノズル13を覆う筒状の先端部47と、その先端部の下端から半径方向に拡がりながら下方に湾曲して延びる弾性変形部48と、その弾性変形部の下端から半径方向外側に伸びるフランジ状の基部49とを備えている。先端部47の上端にはノズル13の噴射孔34を閉じるようにして形成された切り込み部50を備えている。
装着部材14が基部49の外周を固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール装置用の噴射部材およびそれを用いたエアゾール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】実開昭63−23280号公報
【特許文献2】実開平3−47055号公報
【0003】
エアゾール装置は、耐圧容器とその耐圧容器に取り付けられるエアゾールバルブと、エアゾールバルブに取り付けられ、エアゾールバルブの開閉を操作する噴射部材とからなる。そして、噴射部材を押し下げる等の噴射操作を行い、エアゾールバルブを大気に対して開放することによって、耐圧容器内に充填されるエアゾール組成物(原液と噴射剤)が噴射剤の圧力によって押し出され、噴射される。
【0004】
このエアゾール装置は、用途や目的などに応じて様々な製品に使用されている。そして、消炎鎮痛剤、制汗剤、血行促進剤、育毛剤等、人体に噴射する目的でも数多く使用されている。このように人体に噴射する場合、患部等の噴射対象物以外への噴射は好ましくないため、使用者は、エアゾール装置をなるべく人体に近づけて噴射操作をすることになる。
【0005】
特許文献1の図1および特許文献2の図4には、下端に可撓性の操作部位(頂壁、可撓壁部)が形成されており、耐圧容器の軸方向に延びる円筒状のノズルを備えているエアゾール装置が開示されている。このようなエアゾール装置は、ノズルの側面を直接人体に当接させることによって確実に患部に噴射することができる。また、ノズルを患部に近づけて、ノズルの先端から離れたノズルの下端の操作部位を押圧することによりエアゾールバルブを開放させることができるため、噴射操作が容易である。
【0006】
また、特許文献1では、エアゾール装置のエアゾールバルブとして、ティルト式のエアゾールバルブを用いており、一層その操作を容易に行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、いずれのエアゾール装置も、そのノズルの先端はポリアセタール等の硬質の合成樹脂を使用しており、患部等と当接させて、そのままバルブを開放させようと押圧すると刺激になる。本発明は、患部等に当接させて押圧しても不快感を与えず、かつ、操作部材のどの部分を押してもエアゾール組成物を噴射させることができるエアゾール装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の噴射部材は、エアゾール容器に取り付けられる装着部材と、その装着部材に固定される弾力性を有する操作部材とからなり、前記操作部材は、エアゾール容器のステム、あるいは、そのステムに装着されるノズルを覆う筒状の先端部と、その先端部の下端から半径方向に拡がりながら下方に湾曲して延びる弾性変形部と、その弾性変形部の下端から半径方向外側に伸びるフランジ状の基部とを備えており、前記装着部材が基部の外周を固定することを特徴としている。
【0009】
このような噴射部材であって、前記先端部の上端には通常は弾力性により閉じている切り込みを備えているものが好ましい。また、先端部の上部が前記ステムあるいはノズルとの間に密閉した空間を形成するように球状に突出していることが好ましい。
【0010】
本発明のエアゾール装置は、耐圧容器およびエアゾールバルブからなるエアゾール容器と、そのエアゾール容器に取り付けられる噴射部材とからなることを特徴としている。
【0011】
このようなエアゾール装置であって、エアゾール容器が、ティルト式のエアゾールバルブを備えているものが好ましい。そして、エアゾール容器のステムにノズルが取り付けられているものが好ましい。また、ノズルが取り付けられたエアゾール装置であって、ノズルとエアゾール容器の上端との間に、エアゾールバルブのバネよりも弾発力が強い外部スプリングを備えているものが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエアゾール装置用の噴射部材は、エアゾール容器に取り付けられる装着部材と、その装着部材に固定される弾力性を有する操作部材とからなるため、その操作部材を人体に当接させて使用しても、不快感を与えない。また、前記操作部材は、エアゾール容器のステム、あるいは、そのステムに装着されるノズルを覆う筒状の先端部と、その先端部の下端から半径方向に拡がりながら下方に湾曲して延びる弾性変形部と、その弾性変形部の下端から半径方向外側に伸びるフランジ状の基部とを備えており、前記基部の外周が、装着部材に固定されているため、操作部材のどの部分を押圧しても、椀状の弾性変形部が弾性変形し、先端部からステムあるいはノズルを下方に押す、あるいは、傾動する力が働き、その噴射操作が容易になる。また、噴射操作終了後、弾性変形部の弾力により、ステムあるいはノズルを元の位置に戻すことができるため、未使用時のシール性が高い。
【0013】
前記先端部の上端に通常は弾力性により閉じている切り込みを備えている場合、ステムあるいはノズルを介して噴射されるエアゾール組成物の勢いを先端で弱めることができる。そのため、患部等に比較的やさしい噴射をすることができ、特に、泡状、粗いミスト状、または、霧状に噴霧させるノズルあるいはステムを用いる場合に好ましい。
【0014】
前記先端部の上部が、前記ステムあるいはノズルとの間に密閉した空間を形成するように球状に突出している場合、この空間を潰すようにして噴射操作をすると、噴射操作後、操作部材は、その弾力性により元の球状の形状に戻ろうとする。これにより空間は弱い減圧状態となり、噴射操作後でステムあるいはノズル内に残留しているエアゾール組成物がその空間に導かれる。そのため、ノズル内に残留しているエアゾール組成物がゆっくり漏出するアフタードローを防止することができる。
【0015】
本発明のエアゾール装置は、上述した本発明の噴射部材がエアゾール容器にとりつけられているため、その噴射操作が容易である。
【0016】
また、エアゾール容器が、ティルト式のエアゾールバルブを備えている場合、操作部材をまっすぐ押すだけでなく、傾くように押すだけでもバルブを開放することができ、その操作が一層容易になる。さらに、この場合も弾性変形部は弾性変形し、噴射操作終了後にステムあるいはノズルを正立位置に戻すことができる。エアゾール容器のステムにノズルが取り付けられている場合、そのノズルを覆う操作部材の操作が容易になる。
【0017】
さらに、ノズルが取り付けられたエアゾール装置であって、ノズルとエアゾール容器の上端との間に、エアゾールバルブのバネよりも弾発力が強い外部スプリングを備えている場合、未使用時において、操作部材の弾力性によりエアゾールバルブのステムが下方に押し下げる力を受けても、ステムは常に同じ高さにあり、エアゾールバルブのシール性を低下させるおそれがない。また、このスプリングによりノズルの先端と操作部材の先端部との間の密着性も高め、シール性を確保することができ、アフタードローを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の噴射部材およびそれを用いたエアゾール装置を図面を用いて説明する。図1は、本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置の一実施形態を示す側面断面図、図2aは図1のエアゾール装置の一部側面断面図、図2bはその使用状態を示す一部側面断面図、図3aは本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置の他の実施形態を示す一部側面断面図、図3bは図3aの使用状態を示す一部側面断面図、図4は本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置のさらに他の実施形態を示す一部側面断面図、図5aは本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置のさらに他の実施形態を示す一部側面断面図、図5bはその使用状態を示す斜視図、図5c、図5dは本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置のさらに他の実施形態を示す一部側面断面図、図6aは本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置のさらに他の実施形態を示す一部側面断面図、図6b、cはその一部斜視図である。
【0019】
図1に示すエアゾール装置10は、ステム11を備えたエアゾール容器12と、そのエアゾール容器に装着される噴射部材16とから構成されている。また、エアゾール容器のステム11には、ノズル13が取り付けられている。
【0020】
エアゾール容器12は、従来公知のものであり、上端にカール部17を備えた耐圧容器18と、その耐圧容器の開口部に取り付けられるエアゾールバルブ19とからなる。
【0021】
図2aに示すように、エアゾールバルブ19は、一般的にティルト式バルブと呼ばれる従来公知のものであり、耐圧容器の開口に固定される金属製のマウンティングカップ21と、そのマウンティングカップの中央に保持される筒状で合成樹脂製のハウジング22と、そのハウジング22内に収容されステム孔23を有する合成樹脂製のステム11と、そのステムを常時上向きに付勢するバネ25と、ステム孔23を塞ぐステムラバー26と、ハウジング22の下端に連結されるディップチューブ24とからなるものである。なおディップチューブ24は、エアゾール装置を上下反転させて使用する場合(倒立仕様)、不要である。
【0022】
前記ステム11は、円筒状のステム本体27と、その下部に半径方向外側に突出するように形成され、上面および下面が傾斜した環状フランジ28とからなる。また、ステム本体27は、上端に形成された開口29と、下部の側面(環状フランジ28の上)に形成されたステム孔23と、開口29とステム孔23とを連通するステム内通路30とを備えている。
【0023】
前記ステムラバー26はリング状のものであり、外周がハウジング22の上端とマウンティングカップ21との間で環状に固定され、内周面がステム本体27の外周面を内挿してシールすると共に、下面が環状フランジ28の上面の外周縁と当接して、ステム24の飛び出しを防止し、エアゾールバルブ全体のシールをしている。
【0024】
つまり、このエアゾールバルブ19は、ステム11がバネ25により上方に付勢されているため、環状フランジ28の上面の外周縁とステムラバー26の下面との間でシールが形成される。そして、ステム11の環状フランジ28近辺より下の部位がハウジング22内に収容され、ステム本体27の上部がマウンティングカップ21から突出するように構成されている。そのため、ステム11はハウジング22内において上下移動自在に、かつ、傾動自在に収容されている。
【0025】
このようにティルト式のエアゾールバルブ19は構成されているため、ステム11を下方に押し下げる、あるいは、ステム11をいずれかの方向に傾斜させるとステムラバー26とステムの環状フランジ28との間のシールが解消され、ステム孔23が開かれる。そして、ステム11への下方への、あるいは、傾斜させる操作を止めるとバネ25によりステム11は戻される。
【0026】
これらエアゾールバルブ19の部材の材料は特に限定されず、金属から形成しても、合成樹脂により形成してもよい。
【0027】
ノズル13は、下端に形成されたステム本体27を挿入するステム係合部33と、上端に形成された噴射孔34と、そのステム係合部33と噴射孔34とを連通するノズル内通路35とからなる円筒状のものである。
【0028】
図1に戻って噴射部材16は、エアゾール容器12に装着される装着部材14と、ノズル13を覆うよう形成され、装着部材14に取り付けられる操作部材15とからなる。
【0029】
装着部材14は、エアゾール容器12に装着される円筒状に形成された容器装着部37と、その容器装着部37の上端に形成されたキャップ装着部38と、そのキャップ装着部38の内周側に形成された基部装着部39とからなる。
【0030】
容器装着部37は、マウンティングカップの被せ部の外周とクリップ嵌合するように下端が内側に突出した突部41を備えている。
【0031】
キャップ装着部38は、容器装着部37の上端に段部42を形成するように容器装着部37の上端より半径方向内側に側壁43が上方に形成されている。
【0032】
基部装着部39は、キャップ装着部の側壁43の上端から半径方向内側に延びる抑え部44と、その抑え部44の下面から外周側に形成される環状の係合溝45とからなる。
【0033】
操作部材15は、弾力性を有するものであり、ノズル13を覆うように形成された筒状の先端部47と、その先端部の下端から半径方向に拡がりながら下方に湾曲して延びる弾性変形部48と、その弾性変形部48の下端から半径方向外側に延びるフランジ状の基部49とからなる。
【0034】
先端部47は、ノズルを密接して挿入できるような寸法に設計されており、その上端に切り込み部50を有している。また、ノズル13の上端を先端部47の上端の内周面と密接させることにより、噴射操作時のみ切り込み部50が開放するため、エアゾール組成物を噴射した後にノズル13内に残ったエアゾール組成物が漏れるアフタードロー現象を防止することができる。
【0035】
弾性変形部48は、エアゾール容器の上端において椀状に突出しており、エアゾール容器の上端に対して空間51を形成するように設けられている。
【0036】
基部49は、その外周52が装着部材の基部装着部の係合溝45と嵌合している。嵌合強度を上げるために、本実施形態のように外周の厚さを係合溝45より若干に大きくして、外周52を係合溝45にこじ入れるようにしてもよい。
【0037】
この操作部材15はシリコーンゴム、合成ゴム、シリコーンエラストマー等の柔軟で弾力性を有する材料で構成されているため、操作部材15を押し付けるように直接患部に当接させても、患部を傷つけにくく、さらに、押し付けることによる患部への刺激を弱めることができる。
【0038】
また、この操作部材15は、先端部47の先端が切り込み部50を有しているが、通常の状態では先端部47の切り込み部50は弾力性により閉じられている。そのため、エアゾールバルブ19を開放させ、ノズル13から噴射されるエアゾール組成物の圧力によって切り込み部50は開かれる。この場合、エアゾール組成物も切り込み部50に衝突してから外気に噴射されるため、その勢いを弱める作用も有する。そのため、泡状、粗いミスト状、霧状に噴霧させる場合に好ましい。
【0039】
このように構成されているエアゾール装置10を使用するとき、操作部材15を患部に押さえつけることにより、ノズル13が下方に押される、あるいは傾けられる(図2b参照)。そして、それと同時に、ステム11も下方に押されあるいは傾けられ、ステムの環状フランジ28とステムラバー26のシールが解消され、ステム孔23が開放される。これによりエアゾール容器12内に充填されているエアゾール組成物がディップチューブ24からハウジング22内に導入され、さらにステム孔23、ステム内通路30、ノズル内通路35を介して操作部材の切り込み部50から噴射される。
【0040】
また、操作部材15を患部に押し付ける使用方法以外に、操作部材の先端部47の先端を患部に近づけ、操作部材の先端部47を指で直接傾けてもよく、あるいは、操作部材の弾性変形部48を押し込んでもよい(図2c参照)。この場合、弾性変形部48の変形(凹み)によりノズル13が先端部47から押し下げる方向への力を受ける。いずれにしても、ノズル13の動きと共にエアゾールバルブ19は開放される。
【0041】
図3aのエアゾール装置55は、先端部57の上部58が球状になっており、ノズル13との間に空間59を有する操作部材56を備えている。
【0042】
このようなエアゾール装置55は、先端部57の上部58を横方向に押すと上部内の空気が切り込み部50から外部に排出されて変形すると共に、ノズル13は傾き操作される(図3b参照)。これにより、上述したように先端部の切り込み部50からエアゾール組成物が噴射される。このとき、ノズル13と先端部57との間の空間59が小さくなっている。次に、噴射操作を止めると、ノズル13が元の正立状態に戻るのと同時に、先端部の上部58が弾性力により元の球状に戻る。このように上部58が元の形状である球状に戻ろうとし、戻ることにより空間59が減圧状態になる。そのため、ノズルの噴射孔34あるいは先端部の切り込み部50近辺に残ったエアゾール組成物を吸引し、アフタードローを防止する。
【0043】
図4のエアゾール装置60は、ノズル13とエアゾール容器のマウンティングカップ21との間に外部スプリング61を備えたものである。この外部スプリング61の弾発力は、エアゾールバルブのバネ25より強い。他の構成は図3aのエアゾール装置55と実質的に同じである。
【0044】
図3aのエアゾール装置55は、操作部材56の基部49が装着部材14に固定されており、さらに操作部材56が弾性力を有しているため、ステムの高さ、ノズルの長さ、さらには操作部材の大きさのばらつきにより、未使用時でも操作部材56が収縮し、ノズル13が常時下方に押圧する力を受ける場合がある。この力によりティルト式のエアゾールバルブは、ステムラバーの下面と環状フランジの当接が弱くなり、シール性が低下しやすい(微作動の状態)。そのため、エアゾール装置60のように、外部スプリング61を設けることにより、ノズル13を上方に付勢してエアゾールバルブ19のシール性を保ち、かつ、ノズルの噴射孔34と先端部57との間にもシール性を設けることができる。
【0045】
図5aのエアゾール装置70は、小型のエアゾール容器71と、それに取り付けられる噴射部材72とからなり、ノズルを有さず、操作部材73の先端部74がステム11に直接装着されているものである。また、エアゾール容器71は、カバーキャップ75を用いてバルブを円筒状の開口部を有する耐圧容器に固定している従来公知のものである。
【0046】
装着部材76の下端は、カバーキャップ75の下端と係合する容器装着部77を備えており、他の構成であるキャップ装着部38および基部装着部39は図1のエアゾール装置10と実質的に同じである。
【0047】
このエアゾール容器の耐圧容器78の径は、5〜40mm、特に、10〜30mmが好ましく、その高さは10〜150mm、特に、20〜100mmが好ましい。通常、このように小さいエアゾール容器71は、噴射操作が困難である。しかし、図5bに示すようにエアゾール装置を3本の指で保持し、直接操作部材73の先端を患部等に押し付けることにより、使用することができる。例えば、消炎鎮痛剤用のエアゾール製品に用いる場合、首や肩等の鼻に近い患部、つぼなどの局部的な患部に噴射するのに非常に便利である。また、育毛用、制汗用、虫刺され等によるかゆみ止めなどのエアゾール製品に用いてもよい。
【0048】
図5cに示すエアゾール装置80は、ステム11の先端に、エアゾール組成物の噴射状態を調整するノズル81を挿入している。また、ノズル81の側面と上面の外周は噴射剤の先端部で覆われているが、ノズル81の噴射孔81aは覆われていない。そのため、このエアゾール装置80のエアゾール組成物の噴射状態はノズル81の形状によってコントロールされ、先端部によるエアゾール組成物の噴射の勢いを弱める効果は有しない。このノズルの噴射孔81aの径や長さをコントロールすることにより、噴射形態を噴霧、粗いミスト状、棒状等にすることができる。例えば、図5dに示すように円柱状で側面に螺旋状に延びる溝が形成されたブッシュ86をステム内通路30に挿入し、ステムの上端に、メカニカルブレークアップ機構を備えたノズル87を設けたエアゾール装置85が挙げられる。このエアゾール装置85では、ステム孔から放出されたエアゾール組成物がブッシュ86の側面の螺旋状の溝を通って、ブッシュ86の上端とノズルの裏面との間に至り、ここでメカニカルブレークアップ機構によりエアゾール組成物が旋回して噴射孔88から霧状に噴射される。なお、ブッシュの側面の溝は上下方向に延びる縦溝としてもよい。図5a、b、dに示すエアゾール装置は、ステムに直接噴射部材の先端部を装着し、あるいはノズルをステムの開口に挿入し、ステムとノズルに先端部を装着しているため、エアゾール装置の高さをエアゾール容器とほぼ同じにすることができ、エアゾール組成物の内容量を減らすことなく小型化できる。
【0049】
図6のエアゾール装置90は、操作部材91の先端部92が、十文字状のスリットからなる切り込み部93を備えており、2つの隣り合う長いスリット端部93aと、2つの隣り合う短いスリット端部93bとを備えている。また、ノズル13の先端と先端部92の先端との間に空間94が形成されるように構成されている。
【0050】
このように構成されているため、先端部92の先端を押さえ、長いスリット端部93aの方向に折り曲げるようにして操作部材の先端部を患部に押し付けることにより、空間94の容積が小さくなって、長いスリット端部93aが開き、エアゾール組成物が噴射される(図6c参照)。そして、噴射操作を止めると弾力性により先端部の切り込み部93が閉じられると共に、空間が元の容積に戻るため切り込み部付近に付着あるいは残留しているエアゾール組成物のアフタードローを防止する。
【0051】
この先端部92は、本実施形態で説明した全てのエアゾール装置に使用することができる。
【0052】
また、実施形態において開示した本発明のエアゾール装置のステムあるいはノズルに、操作部材を操作するときにステムあるいはノズルを開放し、操作部材を操作していないときにステムあるいはノズルを塞ぐストップチップを設けてもよい。このようなストップチップを備えることにより、アフタードローを防止する効果がより高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置の一実施形態を示す側面断面図である。
【図2】図2aは図1のエアゾール装置の一部側面断面図であり、図2bはその使用状態を示す一部側面断面図である。
【図3】図3aは本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置の他の実施形態を示す一部側面断面図であり、図3bは図3aの使用状態を示す一部側面断面図である。
【図4】本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置のさらに他の実施形態を示す一部側面断面図である。
【図5】図5aは本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置のさらに他の実施形態を示す一部側面断面図であり、図5bはその使用状態を示す斜視図であり、図5c、図5dは本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置のさらに他の実施形態を示す一部側面断面図である。
【図6】図6aは本発明の噴射部材を備えたエアゾール装置のさらに他の実施形態を示す一部側面断面図であり、図6b、cはその一部斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
10 エアゾール装置
11 ステム
12 エアゾール容器
13 ノズル
14 装着部材
15 操作部材
16 噴射部材
17 カール部
18 耐圧容器
19 エアゾールバルブ
21 マウンティングカップ
22 ハウジング
23 ステム孔
24 ディップチューブ
25 バネ
26 ステムラバー
27 ステム本体
28 環状フランジ
29 開口
30 ステム内通路
33 ステム係合部
34 噴射孔
35 ノズル内通路
37 容器装着部
38 キャップ装着部
39 基部装着部
41 突部
42 段部
43 側壁
44 抑え部
45 係合溝
47 先端部
48 弾性変形部
49 基部
50 切り込み部
51 空間
52 外周
55 エアゾール装置
56 操作部材
57 先端部
58 上部
59 空間
60 エアゾール装置
61 外部スプリング
70 エアゾール装置
71 エアゾール容器
72 噴射部材
73 操作部材
74 先端部
75 カバーキャップ
76 装着部材
77 容器装着部
78 耐圧容器
80 エアゾール装置
81 ノズル
81a 噴射孔
85 エアゾール装置
86 ブッシュ
87 ノズル
88 噴射孔
90 エアゾール装置
91 操作部材
92 先端部
93 切り込み部
93a 長いスリット端部
93b 短いスリット端部
94 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に取り付けられる装着部材と、その装着部材に固定される弾力性を有する操作部材とからなり、
前記操作部材は、エアゾール容器のステム、あるいは、そのステムに装着されるノズルを覆う筒状の先端部と、その先端部の下端から半径方向に拡がりながら下方に湾曲して延びる弾性変形部と、その弾性変形部の下端から半径方向外側に伸びるフランジ状の基部とを備えており、
前記装着部材が基部の外周を固定する、エアゾール装置用の噴射部材。
【請求項2】
前記先端部の上端には通常は弾力性により閉じている切り込みを備えている請求項1記載の噴射部材。
【請求項3】
前記先端部の上部が、前記ステムあるいはノズルとの間に密閉した空間を形成するように球状に突出している、請求項1記載の噴射部材。
【請求項4】
耐圧容器およびエアゾールバルブとからなるエアゾール容器と、そのエアゾール容器に取り付けられる請求項1記載の噴射部材とを備えたエアゾール装置。
【請求項5】
前記エアゾール容器が、ティルト式のエアゾールバルブを備えている請求項4記載のエアゾール装置。
【請求項6】
前記エアゾール容器のステムにノズルが取り付けられた請求項4記載のエアゾール装置。
【請求項7】
前記ノズルとエアゾール容器の上端との間に、エアゾールバルブのバネよりも弾発力が強い外部スプリングを備えている請求項6記載のエアゾール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−24365(P2008−24365A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202535(P2006−202535)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】