説明

エアゾール製剤

【課題】特定の医薬品、フルオロカーボン噴射剤、及び全製剤量の6〜25重量%の極性共溶媒を含む医薬エアゾール製剤であって、実質的に表面活性剤を含まない製剤の提供。
【解決手段】粒状医薬品、フルオロカーボン噴射剤、及び全製剤量の6〜25重量%の極性共溶媒を含む医薬エアゾール製剤であって、噴射剤が1,1,1,2−テトラフルオロエタン又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパンであり、実質的に表面活性剤を含まない製剤を含有しているキャニスター。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
この発明は、吸入薬エアゾールのための医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン層破壊性ガスに関するモントリオールプロトコールは、クロロフルオロハイドロカーボン噴射剤を含有する吸入治療のための現存する医薬エアゾールの製剤変更という医薬品工業にとって緊急の事柄を策定した。
【0003】
多くのハイドロフルオロカーボン(HFC)が毒物学上の試験の対象であるが、特にP134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)及びP227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)の2種は、医薬エアゾールに使用しても安全であると確認されている。
【0004】
多くの特許出願がこの分野で提出され、その最初のものはEP372777であって、医薬品、表面活性剤、P134a、及びP134aよりも高い極性の共溶媒からなる4成分の、溶液又は懸濁液の形態にある混合物の使用を開示している。
【0005】
吸入薬エアゾールは、肺への投与を意図されているので、不要な物質を肺に入れるのを避けるために、できるだけ少数の成分だけを含有すべきであるということが長い間受け入れられている。
【0006】
EP372777にも拘らず、歴史的には、溶液エアゾールは、医薬品、噴射剤又は噴射剤混合物、及び必要な場合には通常はエタノールである共溶媒だけを含有した(例えば、米国特許第2868691号)。表面活性剤の使用は、溶液エアゾールには普通は不必要であった。しかしながら、表面活性剤の使用は、粒子の凝集を阻止するのに、容器の壁への接着を阻止するのに、バルブの潤滑性を支援するのに、そしてバルブがねばねばするのを阻止するのに必要であると考えられてきたので、歴史的には、医薬品の懸濁エアゾールは表面活性剤を含有してきた(例えば、米国特許第3014844号)。
【0007】
しかしながら、極性の共溶媒を添加すれば、表面活性剤を必要とすることなくハイドロフルオロカーボン中で医薬品懸濁液を調製することが可能であるということが、EP616525に開示された。普通の共溶媒であるエタノールは、十分に確立された物理的作用を有しており、そして純粋な吸収性液体であることが肺の中に残留物が残る可能性を無くする。多くが類似する化合物の混合物であるところの表面活性剤からの刺激又はあるかも知れない毒性が避けられる。
【0008】
EP616525は、極性の共溶媒レベルを具体的に0.01〜5重量%に限定し、特に、好ましいレベルは約0.1重量%であると記述している(第3頁55行)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第1の側面によれば、粒状医薬品、フルオロカーボン噴射剤、及び全製剤量の6〜25重量%の極性共溶媒を含む医薬エアゾール製剤であって、実質的に表面活性剤を含まない製剤が提供される。
【0010】
本発明の第2の側面によれば、1又はそれを越える粒状医薬品、1又はそれを越えるフルオロカーボン又はハイドロカーボン又は脂肪族ガス噴射剤、及び6〜25重量%の極性共溶媒を含む医薬エアゾール製剤が提供される。
【0011】
本発明の第3の側面によれば、医薬エアゾール製剤を送り込むのに適するキャニスターであって、用いられる噴射剤の蒸気圧に耐えることができる容器を含み、該容器が計量バルブで密閉され、かつ、該容器が粒状医薬品、全て又は一部がフルオロカーボンからなる噴射剤、及び6〜25%の極性共溶媒を含む医薬エアゾール製剤であって実質的に表面活性剤を含まない製剤を含有しているキャニスターが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚いたことに、今回、高いベルのアルコールが有益な結果を有することが分かった。6%又はそれを越えるレベルのエタノールが、放置しても凝集せずに再び振ると微細に分散した医薬品をもたらす満足のゆく懸濁液をもたらす。高いレベルのアルコールは、缶の内部での堆積の度合いを軽減すると考えられる。これは非常に望ましい特徴である。加えて、これら大きなパーセンテージのエタノールの使用は、ずっと安価な製造方法を可能にする。
【0013】
医薬エアゾールは、一緒に混合された全ての成分を含有する1分量の液体で充填されても、第1分量が医薬品と、共溶媒、場合によって使用する表面活性剤、場合によって使用する補助化合物、例えば、フレーバー、及び僅かな噴射剤を含む他の全ての成分とを含有し、続いて第2分量が純粋な噴射剤を含有するという2分量法により充填されてもよい。この2分量充填法は、固定数の缶についてのミックスの容量が有意に少ないので、より小さな混合容器を使用できるという点で大きなコスト上の利点を有している。特に、古いCFC噴射剤よりも低い沸点を有する新しいHFC噴射剤を使用する場合、1分量充填法を使用すると、混合及び充填の間の噴射剤の蒸発を阻止するために、冷却された加圧容器を使用する必要が生じ得る。共溶媒を追加したこの新たな製剤では、その共溶媒中に医薬品だけを懸濁させた第1ミックスを使用した後に、純粋は噴射剤の第2分量を使用することができる。これは、噴射剤を他の成分と混合及び貯蔵する必要なしに保持タンクから缶に直接充填できることを意味する。例えば、医薬品と共溶媒の1gのミックス重量の後に7.5gの噴射剤とすることができる。このようにすれば、混合されるべき容量は、8.5gから1gに減少する。EP616525における全ての実施例は実験室スケールのものなので、取扱い上の問題はずっと小さいとはいえ、そこに記載された全ての製剤は、本開示の場合のように噴射剤を混合しないで2分量法で充填することが、できないものである。
【0014】
EP616525の第5頁2〜13行に示された充填方法の説明は、1分量充填法だけが意図されていることを示している。
本発明の全ての場合において、医薬品は、肺への吸入に適する粒度のものからなるので、100ミクロン未満、望ましくは20ミクロン未満、そして好ましくは1〜10ミクロンであって、通常は平均粒度が1〜5ミクロンである。
【0015】
本発明によるエアゾール製剤において投与されることができる医薬品には、選択された噴射剤に実質的に完全に不溶である形態で存在することができる吸入治療に有用なあらゆる薬剤が含まれる。かくして、適切な医薬品は、例えば、鎮痛剤、例えば、コデイン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、フェンタニル又はモルヒネ;狭心症製剤、例えば、ジルチアゼム;抗アレルギー剤、例えば、クロモグリケート、ケトチフェン又はネドクロミル;抗感染症剤、例えば、セファロスポリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミド剤、テトラサイクリン及びペンタミジン;抗ヒスタミン剤、例えば、メタピリレン;抗炎症剤、例えば、ベクロメタゾン、フルニソリド、ブデソニド、チプレダン、トリアムシノロンアセトニド又はフルチカゾン;鎮咳剤、例えば、ノスカピン;気管支拡張剤、例えば、エフェドリン、アドレナリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピルブテロール、レプロテロール、リミテロール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン、イソエタリン、トルブテロール、オルシプレナリン;利尿剤、例えば、アミロライド;抗コリン作用薬、例えば、イプラトロピウム、アトロピン又はオキシトロピウム;ホルモン類、例えば、コルチゾン、ハイドロコルチゾン又はプレドニゾロン;キサンチン類、例えば、アミノフィリン、コリンテオフィリネート、リシンテオフィリネート又はテオフィリン;及び治療性タンパク質及びペプチド、例えば、インスリン又はグルカゴンから選択することができる。適切な場合には、医薬品を塩の形態(例えば、アルカリ金属塩又は酸付加塩として)で又はエステル(例えば、低級アルキルエステル)として又は溶媒和物(例えば、水和物)として使用して、その医薬品の活性及び/又は溶解性を最適化するか及び/又は噴射剤中でのその医薬品の溶解性を最小化することができるということは当業者にとって明らかであろう。
【0016】
好ましいのは、共溶媒にも実質的に不溶性である化合物である。医薬品として特に好ましいのは、塩基として又は塩としてのサルブタモール、特に硫酸サルブタモールである。
共溶媒は、極性アルコール及びポリオール、特に、プロピレングリコール、好ましくはエタノールのようなC2〜C6脂肪族アルコール及びポリオールから選択することができる。共溶媒のレベルは、全キャニスター内容物の6〜25重量%、好ましくはキャニスター内容物の10〜15重量%であろう。
【0017】
噴射剤は、ハイドロフルオロカーボン、特にP134a又はP227であることができる。他のハイドロフルオロカーボン又はハイドロカーボン又は脂肪族ガス(例えば、ジメチルエーテル)を添加して、要求される通りの噴射剤特性に修飾することができる。
【0018】
製品は、活性医薬品を計量してそれを共溶媒中に懸濁させることによって優先的に製造される。次いで、適切な量の懸濁液を缶の中に入れてから、第2分量の噴射剤又は噴射剤混合物を入れる。しかしながら、一発充填又は何らかの他の同等な方法を用いることもできる。
【0019】
市場での普通の医薬製品は、約480ミクロンのスプレーオリフィス直径を有する作動器を有する。しかしながら、この発明で意図される大きなパーセンテージのエタノールでは、その共溶媒ができるだけ速やかに粒子から蒸発するのが望ましい。
【0020】
これは、開口部を100〜300ミクロンに小さくすることにより達成され、これは、同じ用量又は薬剤についてより速やかな共溶媒の蒸発をもたらす。本発明の特に好ましい態様は、10〜15%レベルの共溶媒(普通はエタノール)と150〜250のステム開口部との組み合わせである。
【0021】
本発明を更に実施例によって説明するが、それにはいかなる限定的意味もない。
【実施例】
【0022】
硫酸サルブタモール 0.03g
エタノール 0.97g
テトラフルオロメタン(P134a) 7.5g
硫酸サルブタモールを前もって微細化して10ミクロン以下の粒子が90%以上の重量になるようにし、そしてエタノールに添加する。この懸濁液を滑らかかつ均一になるまで混合してから、エアゾールキャニスターの中に充填する。このキャニスター上に計量バルブ組立体を曲げ加工(好ましくは真空曲げ加工)で取り付けてから、P134aをそのバルブから充填する。このバルブの能力は、一回の作動当たりの硫酸サルブタモールとして100マイクログラムのサルブタモールを送り込むような能力である。
【0023】
そのようなキャニスターの特に好ましい使用は、通常の手動装置というよりむしろ患者呼吸作動装置においてである。そのような装置は、“Easi-Breathe" という商標で販売されているもののように、商業的に入手可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬エアゾール製剤を送り込むのに適し、100〜300ミクロンのスプレーオリフィス直径を有する作動器内に装着されたキャニスターを含んでなる製品であり、該キャニスターが、用いられる噴射剤の蒸気圧に耐えることができる容器を含んでなり、該容器が計量バルブで密閉され、かつ、該容器が粒状医薬品、フルオロカーボン噴射剤、及び6〜25%の極性共溶媒を含んでなる医薬エアゾール製剤であって表面活性剤を含まない製剤を含有し、該粒状医薬品がエフェドリン、アドレナリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピルブテロール、レプロテロール、リミテロール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン、イソエタリン、トルブテロール、及びオルシプレナリン、又はその塩から選択される気管支拡張剤である製品。
【請求項2】
該気管支拡張剤が該共溶媒に実質的に不溶性である、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
該気管支拡張剤が塩の形態である、請求項1または2のいずれか1項に記載の製品。
【請求項4】
該粒状医薬品がサルブタモールの塩である、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
該粒状医薬品がフォルモテロールの塩である、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
該噴射剤が1,1,1,2−テトラフルオロエタン又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパンである、請求項1から5のいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
該キャニスターが呼吸作動装置により作動する、請求項1に記載の製品。

【公開番号】特開2011−173910(P2011−173910A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97582(P2011−97582)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願平10−507695の分割
【原出願日】平成9年6月3日(1997.6.3)
【出願人】(508008555)ノートン・ヘルスケアー リミテッド (10)
【Fターム(参考)】