説明

エアゾール製品および該エアゾール製品に充填されたエアゾール組成物の噴射方法

【課題】少ない液化ガス量で原液を非常に細かな粒子で噴射できるため、粒子の数が非常に多くなり(粒子の総面積が大きくなり)、効果が高く、空気中に噴射した場合は長時間滞留でき、殺虫、消臭、芳香効果が高く、噴射の勢いが抑制され、ソフトに噴射できるエアゾール製品および該エアゾール製品に充填されたエアゾール組成物を噴射するエアゾール組成物の噴射方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2種の溶剤を含有する原液と液化ガスからなるエアゾール組成物が充填され、断面積が0.005〜0.06mm2である噴射孔を備えた噴射ボタンを有するエアゾール製品および該エアゾール製品を用いて噴射した粒子の平均粒子径が15μm以下、該エアゾール組成物の噴射量が0.3〜1.2g/5秒となるよう噴射するエアゾール組成物の噴射方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製品および該エアゾール製品に充填されたエアゾール組成物の噴射方法に関する。さらに詳しくは、少ない液化ガス量で原液を非常に細かな粒子で噴射できるエアゾール製品および該エアゾール製品に充填されたエアゾール組成物の噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば害虫駆除の目的から、霧状に噴射するエアゾール製品が開発されている。霧状に噴射された噴射物は、空気中に長く滞留し、薬効を持続させるために、噴射物の粒子が小さくなるよう設計されている。ここで、一般に、噴射物の粒子径は、液化ガスの配合割合に比例し、液化ガスの配合割合が高くなると粒子は小さくなる傾向がある。
【0003】
たとえば、特許文献1は、噴射した粒子を小さくして空気中に長く滞留させる害虫の駆除方法に関する発明であり、液化石油ガスを60%以上配合することを特徴としている。
【0004】
また、特許文献2は、有効成分(殺虫剤)を高濃度に微量噴射するエアゾール組成物に関する発明であり、マクロミスト状に噴射できると記載されているが、低沸点溶剤としてイソペンタンを用い、液化石油ガスを90%配合することを特徴としている。
【0005】
また、特許文献3は、噴射孔の径が0.08〜0.15mmのノズルを備えたボタンを用いたエアゾール製品に関する発明であり、その実施例では溶剤としてエタノールが用いられ、液化ガスとして液化石油ガスが50重量%用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−17055号公報
【特許文献2】特開2002−3302号公報
【特許文献3】特許第4121656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1および2に記載の発明では、液化ガスの配合割合を大きくすることで噴射した粒子の粒子径を小さくしているが、その噴射物のほとんどがガスであり、薬剤を含む原液に粒子の数は少なく、殺虫効果が小さいという問題がある。
【0008】
また、特許文献3に記載の発明では、溶剤としてエタノールを単独で使用しているため、噴射される粒子は液化ガス量に比例した大きさであり、特に小さくならないという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、少ない液化ガス量で原液を非常に細かな粒子で噴射できるため、粒子の数が非常に多くなり(粒子の総面積が大きくなり)、効果が高く、空気中に噴射した場合は長時間滞留でき、殺虫、消臭、芳香効果が高く、噴射の勢いが抑制され、ソフトに噴射できるエアゾール製品および該エアゾール製品に充填されたエアゾール組成物を噴射するエアゾール組成物の噴射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエアゾール製品は、少なくとも2種の溶剤を含有する原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物が充填され、断面積が0.005〜0.06mm2である噴射孔を備えた噴射ボタンを有することを特徴とする。
【0011】
前記原液の配合量が30〜70重量%、液化ガスの配合量が30〜70重量%であることが好ましい。
【0012】
前記溶剤がアルコール系溶剤と炭化水素系溶剤またはシリコーン系溶剤からなり、前記液化ガスが炭素数3〜5個の脂肪族炭化水素であることが好ましい。
【0013】
前記溶剤がアルコール系溶剤と水からなり、前記液化ガスがジメチルエーテルであることが好ましい。
【0014】
また、本発明のエアゾール組成物の噴射方法は、少なくとも2種の溶剤を含有する原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物が充填された、断面積が0.005〜0.06mm2である噴射孔を備えた噴射ボタンを有するエアゾール製品を用いて、噴射した粒子の平均粒子径が15μm以下、該エアゾール組成物の噴射量が0.3〜1.2g/5秒となるよう噴射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアゾール製品およびエアゾール組成物の噴射方法によれば、少ない液化ガス量で原液を非常に細かな粒子で噴射できるため、粒子の数が非常に多くなり(粒子の総面積が大きくなり)、効果が高く、空気中に噴射した場合は長時間滞留でき、殺虫、消臭、芳香効果が高く、噴射の勢いが抑制され、ソフトに噴射できるエアゾール製品および該エアゾール製品に充填されたエアゾール組成物を噴射するエアゾール組成物の噴射方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のエアゾール製品の一実施形態にかかる噴射ボタンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のエアゾール製品は、少なくとも2種の溶剤を含有する原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物が充填され、断面積が0.005〜0.06mm2である噴射孔を備えた噴射ボタンを有することを特徴とする。
【0018】
前記原液は少なくとも2種の溶剤を含有しており、用途や目的に応じて有効成分や界面活性剤などを配合することができる。
【0019】
前記溶剤はエアゾール容器内では有効成分や液化ガスと溶解しており、外部に噴射されると液化ガスの気化により微細化されて細かな粒子になる。溶剤を少なくとも2種用いることで、液化ガス量が少ない範囲であっても特定の大きさの噴射孔から噴射すると溶剤単独の場合よりも粒子は小さくなり、ソフトな噴射状態になる。
【0020】
前記溶剤としては、たとえば、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール系溶剤、ケロシン、流動パラフィン、イソパラフィンなどの炭化水素系溶剤、メチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン系溶剤、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ヒドロシキシステアリン酸オクチル、ヒドロシキシステアリン酸エチルヘキシルキシル、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ−2−エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール、ジオレイン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール、ジオレイン酸トリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、トリ2−エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステルオイル、ツバキ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂、オレイン酸などの高級脂肪酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、水など、20℃において液体であるものがあげられ、これらからの中から少なくとも2種類を選択する。なお、溶剤を混合することで噴射した粒子が細かくなりやすい点から、アルコール系溶剤と炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤とシリコーン系溶剤、アルコール系溶剤と水を用いることが好ましい。
【0021】
前記溶剤の配合割合は、少なくとも2種の溶剤の合計量で原液中60〜100重量%、さらには70〜99.5重量%であることが好ましい。溶剤の配合割合が60重量%よりも少ない場合は噴射した粒子が霧状になりにくく、本発明の微細化する効果が得られにくくなる。
【0022】
前記溶剤の配合割合は、5/95〜5/95、さらには10/90〜90/10であることが好ましい。配合割合が5/95よりも小さいあるいは95/5よりも大きい場合は噴射した粒子が細かくならない。
【0023】
溶剤としてアルコール系溶剤と炭化水素系溶剤を用いる場合は、アルコール系溶剤/炭化水素系溶剤の配合割合が80/20〜20/80、特に75/25〜25/75であることが好ましい。
【0024】
溶剤としてアルコール系溶剤とシリコーン系溶剤を用いる場合は、アルコール系溶剤/シリコーン系溶剤の配合割合が80/20〜30/70、特に70/30〜40/60であることが好ましい。
【0025】
溶剤としてアルコール系溶剤と水を用いる場合は、アルコール系溶剤/水の配合割合が20/80〜95/5、特に30/70〜90/10であることが好ましい。
【0026】
前記有効成分は特に限定されないが、たとえば、フタルスリン、アレスリン、ペルメトリン、シスメスリン、プロパルスリン、レスメトリン、d−フェノトリン、テフルスリン、ベンフルスリンなどの殺虫成分、サイネピリン、ピペロニルブトキサイト、オクタクロロジプロピルエーテルなどの効力増強剤、メチルベンゾエート、ベンジルアセテートなどの消臭成分、チモール、カルバクロール、フェノキシエタノールなどの殺菌・防腐成分、ナフタレンなどの防虫成分、緑茶エキスなどの消臭成分、香料などの空間用有効成分、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤、N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)などの害虫忌避剤、スルホ石炭酸亜鉛、イソプロピルメチルフェノール、ミョウバンなどの制汗剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウムなどのビタミン類、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、オクトクレリン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸などの紫外線吸収剤、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤、レチノール、dl−α−トコフェロールなどのビタミン類、グリチルレチン酸などの抗炎症剤、硝酸ミコナゾール、硝酸スルコナゾール、クロトリマゾールなどの抗真菌剤、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤、l−メントール、カンフルなどの清涼化剤、香料などの人体用有効成分などがあげられる。
【0027】
前記有効成分の配合割合は、原液中0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。有効成分の配合割合が0.1重量%よりも少ない場合は効果が不充分であり、20重量%よりも多い場合は噴射した粒子が細かいため有効成分によっては人体に悪影響を及ぼす場合がある。
【0028】
前記界面活性剤は、有効成分を対象物に付着しやすくする、などの目的で用いられ、たとえば、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アミノ酸系界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤など、特に限定されない。
【0029】
前記原液は、有効成分を溶剤に溶解させることにより調製することができる。前記原液の配合割合は、エアゾール組成物中30〜70重量%、好ましくは35〜60重量%である。原液の配合割合が30重量%よりも少ない場合は噴射した粒子の濃度が小さく効果が得られにくくなり、70重量%よりも多い場合は混合溶剤使用による微細化の効果が得られにくくなる。
【0030】
前記液化ガスはエアゾール容器内では液体であり、外部に噴射されると気体に変化して原液を微細化する。前記液化ガスとしては、たとえば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの炭素数3〜5個の脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル、フロンおよびこれらの混合物があげられる。中でも断面積が0.005〜0.06mm2と小さな噴射孔から霧状に噴射できる、噴射された粒子が15μm以下、特に10μm以下と細かくなりやすく、ソフトに噴射できる点から、炭素数3〜5個の脂肪族炭化水素はアルコール系溶剤と炭化水素系溶剤またはシリコーン系溶剤と、ジメチルエーテルはアルコール系溶剤と水の混合溶剤と用いることが好ましい。
【0031】
なお液化ガスの蒸気圧は25℃において0.15〜0.55MPaであることが好ましく、特に0.2〜0.5MPaであることが好ましい。蒸気圧が0.15MPaよりも低い場合は噴射した粒子が小さくなりにくく、0.55MPaよりも高い場合は噴射の勢いが強くなりすぎ、跳ね返りやすく付着しにくくなる。
【0032】
前記液化ガスの配合割合は、エアゾール組成物中30〜70重量%、好ましくは35〜60重量%である。液化ガスの配合割合が30重量%よりも少ない場合は霧状に噴射できなくなり、70重量%よりも多い場合は液化ガス量による微細化効果が大きくなり、混合溶剤および特定の大きさの噴射孔から噴射したときに粒子が小さく効果が得られにくくなる。
【0033】
前記エアゾール組成物は、アルミニウム、ブリキ、合成樹脂などの耐圧容器に原液を充填し、容器の開口部にバルブを取り付け、液化ガスを充填することにより調製することができる。
【0034】
前記バルブとしては、たとえば、耐圧容器の開口部に固着されるマウンティングカップと、マウンティングカップに保持されるハウジングと、ハウジング内に上下動自在に収容されるステムと、ステムを常時上方に付勢するスプリングと、ステムのステム孔を塞ぐステムラバーと、容器内のエアゾール組成物をハウジング内に供給するチューブを備えたものがあげられる。
【0035】
噴射した粒子を細かくできる点から、エアゾール組成物の気相を導入するためのベーパータップ孔を備えたハウジングを用いることが好ましい。なおステムを下方に押し下げたときにハウジング内に供給する導入孔を閉鎖する定量バルブを用いてもよい。
【0036】
図1に示されるように、前記バルブのステムに装着される噴射ボタン1は、ステムに装着されるステム装着部2およびノズル3を収容するノズル収容部を備えたボタン本体4と、底部中心に噴射孔5を有する有底筒状のノズル3と、ノズルの内部に収容されるセンターポスト6を備えている。センターポスト6はたとえば円柱状のものを採用することができる。
【0037】
前記ノズル3の噴射孔5は断面積が0.005〜0.06mm2、好ましくは0.007〜0.05mm2である。さらに好ましくは、0.007〜0.041mm2である。噴射孔5の形状は断面視で円状が好ましいが、楕円状であってもよく、正方形や長方形などの矩形であってもよい。噴射孔5が円状である場合は、その直径が0.1〜0.28mm、好ましくは、0.1〜0.24mm、さらに好ましくは0.12〜0.22mmであることが好ましい。噴射孔5の断面積が0.005mm2よりも小さい場合は霧状になりにくく、0.06mm2よりも大きい場合は混合溶剤を用いても噴射した粒子が細かくならない。
【0038】
噴射ボタン1を押し下げるとステムが下方に移動してステム孔が開放され、容器内部と大気とが連通する。容器内部は大気よりも圧力が高いため、容器内のエアゾール組成物はチューブからハウジング内部に入り、ステム孔を通って噴射ボタン1に供給される。噴射ボタン1内ではステム装着部2からノズル収容部に入り、ノズル内壁とセンターポスト6の間を通って噴射孔5から噴射される。なお、センターポスト6の側面に溝を設け、溝とノズル内壁との隙間で通路を形成してもよい。これにより、一旦エアゾール組成物が、通路において渦を巻くこととなり、均一かつ小さな粒径の噴射物が得られやすくなる。また側面の溝を複数個設けることにより、前記通路が異物のフィルターの役割をして、本発明で用いているような小さな噴射孔での詰まりを防止できる。
【0039】
本発明のエアゾール製品および該エアゾール製品に充填されたエアゾール組成物の噴射方法によれば、混合溶剤を用いた原液と液化ガスを特定割合で配合したエアゾール組成物を、特定の断面積を有する噴射孔から0.3〜1.2g/5秒、特に0.4〜1.0g/5秒で噴射することで、噴射した粒子は微細化されて平均粒子径が15μm以下、好ましくは12μm以下、特に10μm以下と小さくなる。そのため、噴射した粒子の数が多くなり、たとえば殺虫剤、消臭剤、芳香剤などの空間に噴射する製品の場合は空間での滞留時間が長く、効果が持続する。また、人体に噴射する製品の場合は噴射した粒子の跳ね返りが少なく、付着率が高い。その結果、有効成分の濃度を高くして1回に使用する量を少なくし、従来と同じ使用回数であるにも関わらず内容量を少なくできるコンパクトなエアゾール製品として好適に用いられるとともに、かかる効果を奏するエアゾール組成物の噴射方法を提供することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例をもとに本願のエアゾール製品および該エアゾール製品に充填されたエアゾール組成物の噴射方法をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
試験例1 アルコール系溶剤と炭化水素系溶剤1
溶剤としてエタノールと流動パラフィン(*1)を用いて表1に示す割合の原液A〜Fを調製し、原液60gをアルミニウム製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いで液化石油ガス(*2)を40g充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物1〜6を製造した。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1
エアゾール組成物2を用い、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0044】
実施例2〜4
原料として、それぞれエアゾール組成物3〜5を用い、他は実施例1と同様にしてエアゾール製品を製造した。
【0045】
比較例1
エアゾール組成物1を用い、他は実施例1と同様にしてエアゾール製品を製造した。
【0046】
比較例2
原料として、エアゾール組成物6を用い、他は実施例1と同様にしてエアゾール製品を製造した。
【0047】
実施例5
エアゾール組成物2を用い、噴射孔の断面積が0.041mm2(直径が0.23mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0048】
実施例6〜8
原料として、それぞれエアゾール組成物3〜5を用い、他は実施例5と同様にしてエアゾール製品を製造した。
【0049】
比較例3
エアゾール組成物1を用い、他は実施例5と同様にしてエアゾール製品を製造した。
【0050】
比較例4
原料として、エアゾール組成物6を用い、他は実施例5と同様にしてエアゾール製品を製造した。
【0051】
比較例5〜10
原料として、それぞれエアゾール組成物1〜6を用い、噴射孔の断面積が0.070mm2(直径が0.30mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0052】
試験評価
1)噴射量
エアゾール製品を25℃の恒温水槽に30分間保存し、5秒間噴射したときの重量を測定した。結果を表2に示す。
【0053】
2)平均粒子径
エアゾール製品を25℃の恒温水槽に30分間保存し、東日コンピュータアプリケーションズ(株)製、粒度分布測定装置(LDSA−3400A)を用いて、噴射孔からの距離15cmにおける噴射粒子の平均粒子径を測定した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例9
25℃での蒸気圧が0.2MPaである液化石油ガス(*3)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、エアゾール製品を製造した。
*3:ノルマルブタン、イソブタンの混合物 25℃での蒸気圧が0.2MPa(LPG0.2MPa)
【0056】
実施例10
25℃での蒸気圧が0.2MPaである液化石油ガス(*3)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0057】
比較例11
25℃での蒸気圧が0.2MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例1と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0058】
比較例12
25℃での蒸気圧が0.2MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例2と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0059】
比較例13
25℃での蒸気圧が0.2MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例5と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0060】
比較例14
25℃での蒸気圧が0.2MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例7と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0061】
比較例15
25℃での蒸気圧が0.2MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例8と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0062】
比較例16
25℃での蒸気圧が0.2MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例10と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0063】
【表3】

【0064】
実施例11
25℃での蒸気圧が0.5MPaである液化石油ガス(*4)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、エアゾール製品を製造した。
*4:ノルマルブタン、イソブタン、プロパンの混合物 25℃での蒸気圧が0.5MPa(LPG0.5MPa)
【0065】
実施例12
25℃での蒸気圧が0.5MPaである液化石油ガス(*4)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0066】
比較例17
25℃での蒸気圧が0.5MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例1と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0067】
比較例18
25℃での蒸気圧が0.5MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例2と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0068】
比較例19
25℃での蒸気圧が0.5MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例5と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0069】
比較例20
25℃での蒸気圧が0.5MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例7と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0070】
比較例21
25℃での蒸気圧が0.5MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例8と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0071】
比較例22
25℃での蒸気圧が0.5MPaである液化石油ガスを用いたこと以外は比較例10と同様にして、エアゾール製品を製造した。
【0072】
【表4】

【0073】
比較例23
原液Aを40重量%、液化石油ガス(*2)を60重量%含有したエアゾール組成物7を製造し、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0074】
実施例13
原液Cを40重量%、液化石油ガス(*2)を60重量%含有したエアゾール組成物8を製造し、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0075】
実施例14
原液Dを40重量%、液化石油ガス(*2)を60重量%含有したエアゾール組成物9を製造し、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0076】
比較例24
原液Fを40重量%、液化石油ガス(*2)を60重量%含有したエアゾール組成物10を製造し、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0077】
【表5】

【0078】
試験例2 アルコール系溶剤と炭化水素系溶剤2
溶剤としてエタノールとケロシン(*5)を用いて表6に示す割合の原液G〜Jを調製し、原液60gをアルミニウム製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いで液化石油ガス(*2)を40g充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物11〜13を製造した。
【0079】
【表6】

【0080】
実施例15
エアゾール組成物11を用い、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0081】
実施例16および17
原料として、それぞれエアゾール組成物12および13を用い、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0082】
比較例25
エアゾール組成物14を用い、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0083】
【表7】

【0084】
試験例3 アルコール系溶剤とシリコーン系溶剤
溶剤としてエタノールとシクロペンタシロキサンを用いて表8に示す割合の原液K〜Nを調製し、原液60gをアルミニウム製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いで液化石油ガス(*2)を40g充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物15〜18を製造した。
【0085】
【表8】

【0086】
実施例18
エアゾール組成物15を用い、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0087】
実施例19および20
原料として、それぞれエアゾール組成物16および17を用い、他は実施例18と同様にしてエアゾール製品を製造した。
【0088】
比較例26
エアゾール組成物18を用い、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0089】
【表9】

【0090】
試験例4 アルコール系溶剤と精製水
溶剤としてエタノールと精製水を用いて表10に示す割合の原液O〜Sを調製し、原液60gをアルミニウム製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いでジメチルエーテルを40g充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物19〜23を製造した。
【0091】
【表10】

【0092】
比較例27
エアゾール組成物19を用い、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0093】
実施例21
エアゾール組成物20を用い、噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0094】
実施例22〜24
原料として、それぞれエアゾール組成物21〜23を用い、他は実施例21と同様にしてエアゾール製品を製造した。
【0095】
比較例28
エアゾール組成物19を用い、噴射孔の断面積が0.041mm2(直径が0.23mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0096】
実施例25
エアゾール組成物20を用い、噴射孔の断面積が0.041mm2(直径が0.23mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0097】
実施例26〜28
原料として、それぞれエアゾール組成物21〜23を用い、他は実施例25と同様にしてエアゾール製品を製造した。
【0098】
比較例29
エアゾール組成物19を用い、噴射孔の断面積が0.070mm2(直径が0.30mmである円形)である噴射ボタンを装着してエアゾール製品を製造した。
【0099】
比較例30〜33
原料として、それぞれエアゾール組成物20〜23を用い、他は比較例27と同様にしてエアゾール製品を製造した。
【0100】
【表11】

【0101】
製品例1 制汗剤
下記の原液を調製し、原液30g(60重量%)をアルミニウム製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いでジメチルエーテルを20g(40重量%)充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物を製造した。噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着して制汗剤用のエアゾール製品を製造した。噴射量は0.7g/5秒であり、平均粒子径は7.7μmであった。
【0102】
原液処方
l−メントール 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.5
エタノール 20.0
精製水 79.0
合計 100.0(重量%)
【0103】
製品例2 ボディ用冷却剤
下記の原液を調製し、原液30g(60重量%)をアルミニウム製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いでジメチルエーテルを20g(40重量%)充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物を製造した。噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着して冷却剤用のエアゾール製品を製造した。噴射量は0.7g/5秒であり、平均粒子径は7.9μmであった。
【0104】
原液処方
l−メントール 1.0
エタノール 30.0
精製水 69.0
合計 100.0(重量%)
【0105】
製品例3 害虫忌避剤
下記の原液を調製し、原液30g(60重量%)をアルミニウム製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いでジメチルエーテルを20g(40重量%)充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物を製造した。噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着して害虫忌避剤用のエアゾール製品を製造した。噴射量は0.7g/5秒であり、平均粒子径は8.0μmであった。
【0106】
原液処方
l−メントール 0.5
N,N−ジメチル−m−トルアミド 5.0
エタノール 60.0
精製水 34.5
合計 100.0(重量%)
【0107】
製品例4 鎮痒剤
下記の原液を調製し、原液30g(60重量%)をアルミニウム製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いでジメチルエーテルを20g(40重量%)充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物を製造した。噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着して鎮痒剤用のエアゾール製品を製造した。噴射量は0.7g/5秒であり、平均粒子径は7.7μmであった。
【0108】
原液処方
尿素 10.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
エタノール 40.0
精製水 47.0
合計 100.0(重量%)
【0109】
製品例5 スキンケア剤
下記の原液を調製し、原液65g(65重量%)をアルミニウム製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いで液化石油ガス(*2)を35g(35重量%)充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物を製造した。噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着してスキンケア用のエアゾール製品を製造した。噴射量は1.0g/5秒であり、平均粒子径は11.7μmであった。
【0110】
原液処方
レチノール 1.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
香料 0.1
エタノール 60.0
シクロペンタシロキサン(*6) 36.9
合計 100.0(重量%)
【0111】
製品例6 殺虫剤
下記の原液を調製し、原液30g(60重量%)をアルミニウム製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いで液化石油ガス(*2)を20g(40重量%)充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物を製造した。噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着して殺虫剤用のエアゾール製品を製造した。噴射量は0.6g/5秒であり、平均粒子径は8.5μmであった。
【0112】
原液処方
フタルスリン 0.5
サイネピリン 0.2
エタノール 40.0
ケロシン 59.3
合計 100.0(重量%)
【0113】
製品例7 消臭剤
下記の原液を調製し、原液100g(50重量%)をブリキ製耐圧容器にそれぞれ充填した。次いで液化石油ガス(*2)を100g(50重量%)充填し、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプしエアゾール組成物を製造した。噴射孔の断面積が0.018mm2(直径が0.15mmである円形)である噴射ボタンを装着して消臭剤用のエアゾール製品を製造した。噴射量は0.5g/5秒であり、平均粒子径は6.8μmであった。
【0114】
原液処方
緑茶エキス 0.2
香料 0.1
エタノール 60.0
流動パラフィン(*1) 39.7
合計 100.0(重量%)
【符号の説明】
【0115】
1 噴射ボタン
2 ステム装着部
3 ノズル
4 ボタン本体
5 噴射孔
6 センターポスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の溶剤を含有する原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物が充填され、断面積が0.005〜0.06mm2である噴射孔を備えた噴射ボタンを有するエアゾール製品。
【請求項2】
前記原液の配合量が30〜70重量%、液化ガスの配合量が30〜70重量%である請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項3】
前記溶剤がアルコール系溶剤と炭化水素系溶剤またはシリコーン系溶剤からなり、前記液化ガスが炭素数3〜5個の脂肪族炭化水素である請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項4】
前記溶剤がアルコール系溶剤と水からなり、前記液化ガスがジメチルエーテルである請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項5】
少なくとも2種の溶剤を含有する原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物が充填された、断面積が0.005〜0.06mm2である噴射孔を備えた噴射ボタンを有するエアゾール製品を用いて、
噴射した粒子の平均粒子径が15μm以下、該エアゾール組成物の噴射量が0.3〜1.2g/5秒となるよう噴射する、エアゾール組成物の噴射方法。
【請求項6】
前記原液の配合量が30〜70重量%、液化ガスの配合量が30〜70重量%である請求項5記載のエアゾール組成物の噴射方法。
【請求項7】
前記溶剤がアルコール系溶剤と炭化水素系溶剤またはシリコーン系溶剤からなり、前記液化ガスが炭素数3〜5個の脂肪族炭化水素である請求項5記載のエアゾール組成物の噴射方法。
【請求項8】
前記溶剤がアルコール系溶剤と水からなり、前記液化ガスがジメチルエーテルである請求項5記載のエアゾール組成物の噴射方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−105365(P2011−105365A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264281(P2009−264281)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】