説明

エアゾール製品

【課題】対象物への噴射により噴射物の効果が一層確実に得られ、無駄な内容物の噴射が防止できる定量噴射タイプのエアゾール製品を提供する。
【解決手段】定量噴射機構を備えたエアゾール容器と、10cm離れた位置におけるスプレーパターンの外円の直径が10cm以上である噴射機構を備えた噴射部材とを備えたエアゾール製品10。噴射部材のノズルには、噴射孔から噴射される噴射物のスプレーパターンを制御する制御部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定量噴射機能を有するエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一回の操作で一定量の内容物を噴射する定量噴射タイプのエアゾール製品が知られている。このようなエアゾール製品は、噴射操作を続けても一定量が噴射されれば噴射が停止する、あるいは、非常に微量の噴射となる。そのため、内容物が比較的人体に影響を及ぼしやすいもの、あるいは、高価なものに用いられ、その噴射対象は局所的になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−019726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、環境問題と共に、内容物の無駄な噴射を防止するべく、容器を小型化し原液中の有効成分を濃縮した定量噴射タイプのエアゾール製品の注目が高まる中、少量の噴射で効率よく噴射する方法が求められている。また、従来の定量噴射タイプのエアゾール製品は、スプレーパターンが狭く、噴射物の中心部分の濃度が極めて高く、濃度勾配が大きいため、有効成分の効果を充分に発揮できないことがわかった。さらに、その噴射時間は一瞬であり、その噴射物を視認しにくいため、消費者は過剰に噴射してしまう傾向にあった。
本発明は、所定量の噴射物を特定の大きさのスプレーパターンで噴射することにより、濃度勾配が小さくなり対象物への噴射による噴射物の効果が一層確実に得られ、さらにその噴射物を視認し易く、無駄な内容物の噴射が防止できる定量噴射タイプのエアゾール製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のエアゾール製品は、エアゾール容器と、そのエアゾール容器のバルブに取り付けられる噴射部材と、エアゾール容器に充填されるエアゾール組成物とからなるエアゾール製品であって、前記エアゾール容器が、所定量のエアゾール組成物を噴射させる定量噴射機構を備えており、前記噴射部材から10cm離れた位置におけるスプレーパターンの外円の直径が10cm以上であることを特徴としている。外円の直径とは多角形のスプレーパターンの外端が内接する円の直径のことである。また、本明細書において、スプレーパターンとは、噴射部材(噴射孔)から10cm離れた位置における断面形状を言う。
【0006】
本発明のエアゾール製品であって、前記噴射部材が、エアゾール容器のバルブと係合する係合部と、噴射物を噴射するための噴射孔と、噴射物のスプレーパターンを制御する制御部と、前記係合部と噴射孔とを連通する連通路とを備えているものが好ましい。また前記制御部が噴射孔の一部を塞ぐものが好ましい。特に、前記制御部が噴射孔を塞ぐ遮蔽壁と、その遮蔽壁に形成された噴射物を通すスリットとからなるものが好ましい。
このようなスリットが形成された本発明のエアゾール製品であって、前記噴射孔の側縁に前記スリットと連続した溝が形成されたものが好ましい。
また、前記スリットの幅が前記噴射孔の内径より小さいもの、前記スリットが噴射孔の縁部を跨ぐように形成されているもの、前記スリットが複数個独立して形成されているもの、前記スリットが複数個放射線状に設けられているものが好ましい。
【0007】
本発明のエアゾール製品であって、前記噴射部材が、エアゾール容器のバルブと係合する係合部と、噴射物を噴射する複数の噴射孔と、それらの噴射孔と係合部とを連通する連通路とを備えており、隣り合う噴射孔間の角度が30〜120度であるものが好ましい。前記噴射部材が、噴射物のスプレーパターンを制御する制御部を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエアゾール製品は、エアゾール容器が所定量のエアゾール組成物を噴射させる定量噴射機構を備えており、その噴射部材から10cm離れた位置におけるスプレーパターンの外円の直径が10cm以上であるため、その噴射物を視認しやすく、その噴射効果の確認も容易であり、使用者が無駄に内容物を噴射することを防止することができる。
【0009】
本発明のエアゾール製品であって、前記噴射部材が、エアゾール容器のバルブと係合する係合部と、噴射物を噴射するための噴射孔と、噴射物のスプレーパターンを制御する制御部と、前記係合部と噴射孔とを連通する連通路とを備えている場合、制御部を設計することにより内容物を任意のスプレーパターンで噴射させることができ、特に、噴射物が均等な濃度で拡散するように噴射させることができる。
前記制御部が噴射孔の一部を塞ぐ場合、噴射孔から噴射される噴射物の一方向の広がりを遮り、他方向の広がりを許すことができるため、前記噴射部材から10cm離れた位置におけるスプレーパターンの外円の直径を一層大きくすることができる。
【0010】
前記制御部が噴射孔を塞ぐ遮蔽壁と、遮蔽壁に形成された噴射物を通すスリットとからなる場合、内容物が各スリットから細長く噴射され、スプレーパターンが明確に現れる。また、スプレーパターンの中心から外周における面積当たりの噴射量を均一にできる、つまり、噴射物の濃度勾配を小さいため、原液中の有効成分を濃くしてもその効果を充分に発揮できる。
前記噴射孔の側縁に前記スリットと連続した溝が形成された場合、噴射物はその溝からも噴射されるため、噴射物のスプレーパターンを一層大きくすることができる。
前記スリットの幅が前記噴射孔の内径より小さい場合、噴射される噴射物のスプレーパターンを一層スリットに合わせた形状とすることができる。そのため、スリットの形状を調整することにより、噴射物を視認できる。そのようなスリットの形状として、例えば、「一」字、「十」字、「Y」字、「V」字、「L」時などとすることが挙げられる。
【0011】
前記スリットが噴射孔の縁部を跨ぐように形成されている場合、噴射孔から噴射される噴射物の広がりを一層大きくすることができる。
前記独立したスリットが複数個形成されている場合、そのスリットを任意に配置することにより噴射物のスプレーパターンを自在に決定することができ、一層スプレーパターンの自由度が上がる。
前記複数の独立したスリットが放射線状に設けられている場合、スプレーパターンを放射線状にでき、スプレーパターンの中心から外周に向けて面積当たりの噴射量を均一にできる。
【0012】
本発明のエアゾール製品であって、噴射部材がエアゾール容器のバルブと係合する係合部と、噴射物を噴射する複数の噴射孔と、それらの噴射孔と係合部とを連通する連通路とを備えており、隣り合う噴射孔間の角度が30〜120度である場合、噴射物が視認しやすく、また、効率よく内容物を噴射させることができる。さらに、前記噴射部材が噴射物のスプレーパターンを制御する制御部を備えている場合は制御部を設計することにより内容物を任意のスプレーパターンで噴射させることができ、特に、噴射物が均等な濃度で拡散するように噴射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のエアゾール製品の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1のエアゾール製品に用いられるバルブの側面断面図である。
【図3】図3aは図1のエアゾール製品に用いられる噴射部材の側面図であり、図3b、c、dはその噴射部材に用いられるノズルの正面図、X−X線断面図、Y−Y線断面図である。
【図4】図4aは図1のエアゾール製品に用いることができるノズルの他の形態を示す正面図、図4bは図4aのZ−Z線断面図、図4Cはノズルの他の形態である。
【図5】図5aは図1のエアゾール製品に用いることができるノズルのさらに他の形態を示す正面図、図5bは図5aのW−W線断面図である。
【図6】図6a、bはそれぞれ本発明のエアゾール製品のスプレーパターンを示す概略図である。
【図7】本発明のエアゾール製品の他の実施形態を示す一部側面図である。
【図8】本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【図9】本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1のエアゾール製品10は、定量噴射機構を有するエアゾール容器11と、そのエアゾール容器に取り付けられる噴射部材12と、エアゾール容器11に充填されるエアゾール組成物Aとを備えている。エアゾール組成物Aは、有効成分等を含む内容物(原液)と、噴射剤とからなる。
【0015】
エアゾール容器11は、アルミニウムやブリキなどの金属製の耐圧容器14と、その耐圧容器の開口部に取り付けられるバルブ15とを備えている。このエアゾール容器11は、バルブ15に定量噴射機構が設けられている。
耐圧容器14は、底部14a、円筒状の胴部14b、目金部14cおよびビード部14dを備えたものであり、それぞれ胴部14bの上下端(巻締部14e、14f)に二重巻き締めにより目金部14c、底部14aを連結した公知のスリーピース缶である。しかし、他のエアゾール用の耐圧容器を用いてもよい。
【0016】
定量噴射機構が設けられたバルブ15は、図2に示すように、筒状のハウジング16と、そのハウジング内に上下移動自在に収容されるステム17と、そのステム17を常時上向きに付勢するスプリング18と、ステム17のステム孔17aを塞ぐステムラバー19
と、ハウジング16の上部を覆い耐圧容器14に固着されるマウンティングカップ20と、ハウジング16の下端に取付けられるボール収容部21と、その収容部内に上下移動自在に収容されるボール(可動弁)22と、収容部の下端に取付けられるディップチューブ23とを備えている。
【0017】
ハウジング16は、上端が開口しており、ステム17を収容する上筒部16aと、下端が開口しており、前記ボール収容部21に挿入される下筒部16bと、それらを隔てる隔壁16cとからなり、上筒部16aと下筒部16bとは隔壁16cの中央に形成される連通孔16dで連通している。また、下筒部16bの下端に、切欠き16eが形成されている。
ステム17は、有底筒状のものであり、上端が開口しており、側面にステム孔17aを備えたものである。
スプリング18は、ステム17の下端と、ハウジング16の隔壁16cとの間に設けられている。
ステムラバー19は、ステム孔17aを塞ぐリング状のものであり、ハウジング16の上端開口部とマウンティングカップ20との間に狭持されている。
【0018】
マウンティングカップ20は、前記ビード部に固着されるマウント部20aと、中央のハウジング保持部20bと、マウント部20aとハウジング保持部20bとを連結する連結部20cとからなり、ハウジング保持部20bの中央にはステム17の突出を許す中心孔が形成されている。また、マウント部20aとビード部14dの間にはシール材19aが設けられている。
ボール収容部21は、ハウジングの下筒部16bを受け入れるハウジング取付部21aと、ボール22を収容する収容部本体21bと、ディップチューブ23が連結される筒状の連結部21cとからなる。収容部本体21bの径は、ボール22より大きく構成されており、下筒部16bおよび連結部21cの径は、ボール22より小さく構成されている。
【0019】
このように構成された定量噴射用のバルブ15は、ステム17を押し下げ、ステム孔17aをステムラバー19から開放し、バルブ15内と大気とを連通させることにより、耐圧容器14内のエアゾール組成物Aがディップチューブ23の開口(導入孔)から導入され、それと同時に収容部本体21b内のボール22がそのエアゾール組成物Aにより上に押し上げられる。つまり、ボール22がハウジングの下筒部16bの開口を切欠き16eを残して閉じる(図2の想像線)。それにより、ボール収容部21からハウジング16にあるエアゾール組成物(定量のエアゾール組成物)が一度に噴射される(定量噴射状態)。それ以降も、エアゾール組成物Aは切欠き16eを通じてハウジング16内にエアゾール組成物は導入され、噴射されるが、その噴射量は微量である(微量噴射状態)。そのため、噴射量の違いによって定量噴射状態か微量噴射状態かを認識でき、微量噴射となったときに噴射操作を止めれば定量のエアゾール組成物が噴射されたことになる。
一方、噴射操作を止め、ステム17がスプリング18によって上方に持ち上げられることにより、ハウジング16内は切欠き16eを残して密閉となる。切欠き21eからエアゾール組成物Aがハウジング16内に導入されることにより、ボール22はボール収容部21内を自重で下降する。これにより繰り返し定量噴射を行うことができる。
【0020】
噴射部材12は、図3aに示すように、バルブ15のステム17に取り付けられる円柱状の押ボタン31と、その側面に取り付けられる筒状のスペーサ32と、その先端に取り付けられるノズル33とからなる。
押しボタン31は、下端中央に設けられたステム係合部31aと、側面に設けられたスペーサ係合部31bと、ステム係合部とスペーサ係合部を連通するボタン内通路31cとを備えている。
スペーサ32は、先端にノズル係合部32aを備えた円筒状のものであり、基端32bをスペーサ係合部31bに係合させて連結する。また、スペーサ32は中心にノズル係合部32aと押しボタンのボタン内通路31cとを連通するスペーサ内通路32cを有している。
【0021】
ノズル33は、図3b、c、dに示すように、先端に噴射部34を備えた円筒状のものであり、基端をノズル係合部32aに係合させて連結する。ノズル33も、噴射部34とスペーサ内通路32cを連結するノズル内通路35を有している。ノズル内通路35の先端は、先端に向かって狭まるテーパ部35aとなっている。噴射部34は、テーパ部35aと連通した円筒状の噴射孔36と、噴射孔から噴射される噴射物のスプレーパターンを制御する制御部37とからなる。制御部37は、噴射孔の一部を塞ぐ遮蔽壁37aと、その遮蔽壁37aに形成され、噴射孔36と外部空間とを連通するスリット37bとからなる。また、噴射孔36の側縁には、このスリット37bと実質的に連続する溝36aが形成されている。その溝36aの幅はスリット37bと実質的に同じである。溝36aを設けているため、噴射物はこの溝36aからも噴射され、スプレーパターンは一層大きくなる。このような噴射孔36の径は、0.2〜2mm、特に0.3〜1.5mmが好ましい。
【0022】
このスリット37bは、幅が噴射孔の径より小さく構成されており、噴射部全体を横切るように形成されている。しかし、スリット37bの幅は、噴射孔から噴射される円錐状に広がろうとするエアゾール組成物Aの広がりを遮るものであれば、噴射孔の径より多少大きくても構わない。また、スリット37bの長さは、遮蔽壁37aによって遮られたエアゾール組成物Aがスリット37bから広がって噴射され、スリット37bから噴射した噴射物の10cm離れた位置におけるスプレーパターンの外円の直径が10cm以上の楕円状となれば、特に限定されない。しかし、スリット37bの幅がその噴射孔の径の0.2〜1倍、好ましくは0.3〜0.9倍であり、その場合、そのノズルより噴射される噴射物のスプレーパターンが一層明確に楕円状、長方形状あるいは棒状を呈する。また、スリットの長さが噴射孔の径より0.5〜2倍、好ましくは0.7〜1.5倍である場合、一層細長いスプレーパターン(細長い楕円、細長い長方形、細長い棒)を呈し、その濃度も単位面積あたりの濃度勾配を一層小さくできる。
【0023】
一方、テーパ部35aの角度は、30〜120度、好ましくは40〜110度である。また、テーパ部35aは断面円弧状にしてもよく、さらに、内面に突起や溝を設けて内容物の流れを制御しても良い。テーパ角αが30度よりも小さい場合、もしくは120度よりも大きい場合は、スプレーパターンの中心部分が濃く、スプレーパターンの外郭部の濃度が薄くなり、つまり、スプレーパターンにおける濃度勾配が大きくなり、また、スプレーパターンの明瞭性が低下する。また、その場合、噴射部材から目的物までの噴射物の立体形状の外郭において、噴射物の舞い散りが見られるようになり、逆火現象が生じやすくなる。また、テーパ部35aの長さは噴射孔36の長さの0.5〜3倍、好ましくは0.7〜2.8倍である。テーパ部35aの長さが0.5倍よりも小さい場合、もしくは3倍より大きい場合も、スプレーパターンの中心部分が濃く、スプレーパターンの外郭部の濃度が薄くなりやすくなる。
【0024】
このように構成された噴射部材12は、ノズル33をスペーサ32に形成したノズル係合部32aに密に嵌合し、そのスペーサ32は押しボタン31のスペーサ係合部31bに気密に嵌合して組み立てられる。一方、この噴射部材12のステム係合部31aにエアゾール容器のステム17を密に嵌合することにより、噴射部材12はエアゾール容器11に連結される(エアゾール製品10)。
この噴射部材12をエアゾール容器11に取り付けて噴射操作(押しボタン31を下方に押圧)を行うと、噴射部材12のノズル33から噴射されるエアゾール組成物Aは、楕円状または長方形状を呈して噴射される。つまり、エアゾール組成物Aは、スリット37bと平行方向に広がり、スリット37bと垂直方向が薄くなる。そのため、噴射部材12から10cm離れた地点におけるスプレーパターンの単位面積当たりの濃度が均一になる。そして、その外円の直径は、スリット37bが無い場合より大きくなり、10cm以上、好ましくは、15cm以上となる。
【0025】
このようにエアゾール製品10は構成されているため、定量(少量)しか噴射されなくても効率良く、少なくとも一方向に広く噴射されるため、使用者はその噴射音だけでなく、その噴射物を視認または確実に認識できる。また、本実施形態のように楕円状または長方形状を呈して噴射される場合、家具同士の隙間等に効率よくエアゾール組成物Aを噴射することができる。つまり、エアゾール製品の使用回数を減らすことができる。
【0026】
図4、図5のノズル40a、bは、図1のエアゾール製品10のノズル33の代わりに用いることができるものである。
図4a、bのノズル40aは、図3のノズル33と同様に、先端に噴射部41およびノズル内通路42を備えた円筒状のものであり、基端を図3のスペーサ32のノズル係合部32aに係合させて連結する。また、ノズル33と同様に、ノズル内通路42の先端は、先端に向かって狭まるテーパ部42aとなっている。噴射部41は、テーパ部42aと連
通した円筒状の噴射孔41aと、その噴射孔から噴射される噴射物のスプレーパターンを制御する制御部44とからなる。制御部44は、噴射孔の一部を遮へいする遮蔽壁44aと、その遮蔽壁44aに形成され、噴射孔41aと外部空間とを連通し、放射線状に設けられた3つのスリット44bとからなる。また、噴射孔41aの側縁にはスリット44bと連続する溝41bが形成されており、スプレーパターンの外円を一層大きくしている。
【0027】
それぞれのスリット44bは、中心で連結せず、半径方向外側に向けて延びるものであり、等角度で放射線状に設けられている。このように遮蔽壁44aで噴射孔41aの一部を遮蔽すると共に遮蔽壁44aにスリット44bを設けることにより、噴射孔41aがスリ
ット44bに沿って軸方向から水平方向に渡って大気と連通するため、噴射物のスプレーパターンの中心の濃度が濃くなるのを防止すると共に、複数のスリット44bから均等な濃度で放射線状に噴射され、スプレーパターン全体で均一な濃度になる。それぞれのスリット44bの幅および長さは、それぞれのスリット44bから噴射物が平面状に噴射され、ノズル40aから10cm離れた位置における3つのスリット44bから噴射されるY字状のスプレーパターンの外円の直径が10cm以上であれば、特に限定されるものではない。しかし、スリット44bの幅がその噴射孔の径の0.2〜0.8倍、好ましくは0.3〜0.7倍である場合、スプレーパターンがより明確に認識できる。また、その長さが噴射孔の径より0.5〜2倍、好ましくは0.7〜1.5倍である場合、より外円の大きなスプレーパターンが得られる。この制御部の構成により、それぞれ1つのスリットから楕円状または長方形で噴射部材から10cmにおいて均等な濃度となるように噴射することができる。
【0028】
図4cのノズル40bは、噴射孔41aに溝41bが形成されていないものである。この場合でも噴射部材から10cm離れたスプレーパターンの外円の直径が10cm以上となる。しかし、図4aのノズル40aよりスプレーパターンは小さくなる。
【0029】
図5a、bのノズル40cは、先端の噴射部41の制御部44の遮蔽壁44aに4本のスリット44bが等角度で形成されている。このスリット44bも噴射孔の一部まで延びている。他の構成は、ノズル40aと実質的に同じものである。そのため、スプレーパターンが十字状となっている。
【0030】
図3cのノズル33および図5bのノズル40cを用いたエアゾール製品を操作して、エアゾール組成物を噴射する場合、噴射物のスプレーパターンは、それぞれ長方形状(棒状)(図6a)、十字状(図6b)となる。このようにスプレーパターンを構築することにより、噴射部材から10cm離れた位置におけるスプレーパターンの外円の直径を10cm、あるいは、それ以上とすることができ、使用者は噴射したことを視覚的に確認することができる。
【0031】
図7のエアゾール製品45は、噴射物がエアゾール容器11に対して上方に噴射されるものである。このエアゾール製品45は、噴射部材46が耐圧容器に取り付けられるカバー部47と、そのカバー部47とヒンジ部47aを介して連結される押ボタン48と、その押しボタン48に取り付けられる図4のノズル40aとを備えている。
押ボタン48は、平板状の押部48aを側面に備えており、下端に下方に向けて開口しており、バルブのステム17と係合するステム係合部48bと、上端に上方に向けて開口したノズル係合部48cが形成されている。
このように構成されているため、押ボタン48の押部48aを下方に押圧することにより、バルブ15が開放され、定量のエアゾール組成物がエアゾール製品45に対して上方に噴射される。
【0032】
図8のエアゾール製品50は、エアゾール容器51が図1のエアゾール容器11とは異
なる定量噴射機構を備えている。他の構成は図1のエアゾール製品10と実質的に同じものである。
エアゾール容器51は、耐圧容器52と、その耐圧容器の開口部に取り付けられたバルブ53とからなる。
耐圧容器52は、底部52aと、胴部52bと、肩部52cと、上端が円筒状に延びた首部52dとを備えており、首部に内側に突出する環状突起52eが形成されたものである。
【0033】
バルブ53は、耐圧容器52の開口部に挿入して係止されるハウジング56と、ハウジング内を上下動自在に設けられるステム57と、そのステムを上方に付勢するスプリング58と、ハウジングの下部に係止されるリング状のシール部材59と、ハウジングの上部に係止されるリング状のステムラバー60と、バルブ全体を耐圧容器52に固着するバルブ用キャップ61と、ハウジングの下端に取り付けられるディップチューブ62とからなる。このバルブ53において、ハウジング56とシール部材59からなる空間が定量室となる。
【0034】
ハウジング56は、筒状のハウジング本体66と、その上端を閉じる上部材67と、その下端を閉じる下部材68とからなる。
ハウジング本体66は、上端にステムラバー60を係止するステムラバー係止部66aが形成されており、下部にシール部材59を係止するシール部材係止部66bが形成されており、下端に下部材68を連結する下部材連結部66cが形成されている。
上部材67は、ハウジング本体を覆うようにして係止する筒状のハウジング係止部67aと、その上部側面に形成されたフランジ部67bとからなる。ハウジング係止部67aは、上げ底を有しており、その中心にはステムを通す中心孔67cが形成されている。
下部材68は、上端のハウジング本体と嵌合する本体連結部68aと、下端のディップチューブと連結するディップチューブ連結部68bとを有している。
【0035】
このように構成されているため、ステムラバー60はハウジング本体66と上部材67とで係止され、シール部材59はハウジング本体66と下部材68とで係止される。
このバルブ53の上部材67のフランジ部67bが耐圧容器の円筒状の首部52dに当接するように挿入し、バルブ用キャップ61の下部を耐圧容器の環状凹部52eにカシメることにより、バルブ53と耐圧容器52が固着する。この実施形態では、フランジ67bと首部52dとの間にシール部材を設けている。しかし、それらの間を密に閉じることができれば、シール部材はなくてもよい。
【0036】
このバルブ53は、ステム57を押し下げることにより、ステム57の先端が、シール部材59の中心孔を塞ぐ。これにより、ハウジング56と耐圧容器52内との連通が閉じられる。そのため、ハウジング56内のエアゾール組成物Aが噴射された後、完全に噴射は止まる。図1のバルブ12とはこの点で異なる。そのため、厳密な定量噴射を行うには好ましい。
【0037】
このエアゾール製品50も、図1のエアゾール製品10と同じ噴射部材12を備えているため、定量しか噴射されなくても効率良く、少なくとも一方向に広く噴射されるため、使用者はその噴射音だけでなく、その噴射物を視認または確実に認識できる。
【0038】
図9のエアゾール製品70は、噴射部材71が2方向に噴射する2つのノズル72を備えたものである。また、耐圧容器14として底部、胴部、肩部、ビード部を備えた一体成形品を用いている。他の構成は、図1のエアゾール製品10と実質的に同じである。このノズル72は、円筒状の噴射孔72aを備えたものであり、制御部はない。
ノズル72の噴射孔72a間の角度は、30〜120度、特に50〜100度であるこ
とが好ましい。30度より小さいと、噴射部材から10cm離れた位置におけるスプレーパターンの外円の直径が10cm以上とならず、視覚的効果が小さくなる。また各噴射孔からのスプレーパターンの重なり部分が多くなり、濃度が不均等になりやすい。120度より大きいと、噴射物を一つの形状として認識できず、かえって視覚的効果が小さくなる。またスプレーされない空間ができやすい。
このエアゾール製品70も、定量しか噴射されなくても噴射物は広く噴射されるため、使用者はその噴射音だけでなく、その噴射物を視認または確実に認識できる。なお、この実施の形態にも噴射物のスプレーパターンを制御する制御部(図3、4、5参照)を設けて、より均等な濃度で噴射することが好ましい。
【符号の説明】
【0039】
A エアゾール組成物
10 エアゾール製品
11 エアゾール容器
12 噴射部材
14 耐圧容器
14a 底部
14b 胴部
14c 目金部
14d ビード部
14e、f 巻締部
15 バルブ
16 ハウジング
16a 上筒部
16b 下筒部
16c 隔壁
16d 連通孔
16e 切欠き
17 ステム
17a ステム孔
18 スプリング
19 ステムラバー
19a シール材
20 マウンティングカップ
20a マウント部
20b ハウジング保持部
20c 連結部
21 ボール収容部
21a ハウジング取付部
21b 収容部本体
21c 連結部
22 ボール(可動弁)
23 ディップチューブ
31 円柱状の押ボタン
31a ステム係合部
31b スペーサ係合部
31c ボタン内通路
32 筒状のスペーサ
32a ノズル係合部
32b 基端
32c スペーサ内通路
33 ノズル
34 噴射部
35 ノズル内通路
35a テーパ部
36 噴射孔
36a 溝
37 制御部
37a 遮蔽壁
37b スリット
40a、b、c ノズル
41 噴射部
41a 噴射孔
41b 溝
42 ノズル内通路
42a テーパ部
44 制御部
44a 遮蔽部
44b スリット
45 エアゾール製品
46 噴射部材
47 カバー部
47a ヒンジ部
48 押ボタン
48a 押部
48b ステム係合部
48c ノズル係合部
50 エアゾール製品
51 エアゾール容器
52 耐圧容器
52a 底部
52b 胴部
52c 肩部
52d 首部
52e 環状突起
53 バルブ
56 ハウジング
57 ステム
58 スプリング
59 シール部材
60 ステムラバー
61 バルブ用キャップ
62 ディップチューブ
66 ハウジング本体
66a ステムラバー係止部
66b シール部材係止部
66c 下部材連結部
67 上部材
67a ハウジング係止部
67b フランジ部
67c 中心孔
68 下部材
68a 本体連結部
68b ディップチューブ連結部
70 エアゾール製品
71 噴射部材
72 ノズル
72a 噴射孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器と、そのエアゾール容器のバルブに取り付けられる噴射部材と、エアゾール容器に充填されるエアゾール組成物とからなるエアゾール製品であって、
前記エアゾール容器が、所定量のエアゾール組成物を噴射させる定量噴射機構を備えており、
前記噴射部材から10cm離れた位置におけるスプレーパターンの外円の直径が10cm以上である、エアゾール製品。
【請求項2】
前記噴射部材が、エアゾール容器のバルブと係合する係合部と、噴射物を噴射するための噴射孔と、噴射物のスプレーパターンを制御する制御部と、前記係合部と噴射孔とを連通する連通路とを備えている
請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項3】
前記制御部が噴射孔の一部を塞ぐ請求項2記載のエアゾール製品。
【請求項4】
前記制御部が噴射孔を塞ぐ遮蔽壁と、その遮蔽壁に形成された噴射物を通すスリットとからなる請求項3記載のエアゾール製品。
【請求項5】
前記噴射孔の側縁に前記スリットと連続した溝が形成された請求項4記載のエアゾール製品。
【請求項6】
前記スリットの幅が前記噴射孔の内径より小さい請求項4記載のエアゾール製品。
【請求項7】
前記スリットが噴射孔の縁部を跨ぐように形成されている、請求項4記載のエアゾール製品。
【請求項8】
前記スリットが複数個独立して形成されている、請求項4記載のエアゾール製品。
【請求項9】
前記スリットが複数個放射線状に設けられている、請求項4記載のエアゾール製品。
【請求項10】
前記噴射部材が、エアゾール容器のバルブと係合する係合部と、噴射物を噴射する複数の噴射孔と、それらの噴射孔と係合部とを連通する連通路とを備えており、隣り合う噴射孔間の角度が30〜120度である、
請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項11】
前記噴射部材が、噴射物のスプレーパターンを制御する制御部を備えている請求項10記載のエアゾール製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−219132(P2011−219132A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90416(P2010−90416)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】