説明

エアゾール製品

【課題】繊維体又は粒状体或いは粉状体を含む目的内容物を噴射した場合でも確実に詰まりを防ぐことができるエアゾール製品を提供する。
【解決手段】エアゾール製品は、繊維体又は粒状体或いは粉状体を含む目的内容物と噴射剤を充填した容器本体Aと、バルブBと、を有し、バルブBは、内部に流通室12が形成され下端に突起17が形成されたハウジング13と、流通室12に往復移動可能に収容されたステム15と、ステム15を一方向に付勢するばね16と、一端が突起17に接続され他端が目的内容物内に配置されたディップチューブ18と、を有して構成され、流通室12には、下端側に複数の溝20が形成されることによってばね16を支持する支持部21が形成されており、ハウジング13の下端面13a又は下端側の側面13bに溝20と連通する通孔25が形成され、該通孔25を介して容器本体Aの気相部2と溝20とが連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に充填した繊維体又は粒状体或いは粉状体を含む目的内容物を噴射するエアゾール製品に関し、特に、バルブでの詰まりを防ぐようにしたエアゾール製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアゾール製品では、噴射する粒状体や粉状体を含む目的内容物を噴射剤によって噴射し得るようにしたものがある。このようなエアゾール製品では、バルブ内部に粒状体や粉状体が滞留して詰まりが生じ易いという問題があり、この問題を解決するために幾つかの構造が採用されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載された発明は粉状内容物定量バルブ機構に関するものであり、定量室の残留粉状内容物が落下してステムのシール部分に入り込んで付着することで、ステム動作が円滑に行われくなったり、シール性が悪くなるという課題を解決するものである。この発明では、ステムにシール作用部への粉状内容物の落下を防止するための遮蔽部を設けることでシール性の劣化を防止している。また、粉状内容物の流れ方向に対して開状態となる一方向弁部材を設けることにより、使用時に粉状内容物がシール作用部に落下することを防止している。
【0004】
また、特許文献2に記載された発明では、ハウジング内の底部において、ハウジングに対する流入孔の開口部が、底部の最下部よりも高い位置とすることによって、ハウジング内に存在する析出物や不純物が沈降しても、流入孔の目詰まりを防ぐことができる。即ち、析出物や不純物等の沈降物をハウジングの底部における最下部に蓄積することが可能となり、この結果、沈降物に起因する流入孔の目詰まりを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−267462号公報
【特許文献2】特開2009−286469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された発明では、対象が粉状内容物を定量噴射するエアゾール製品に限定されており、定量噴射に制限されないエアゾール製品には適用し得ないという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明では、ハウジング内の底部に於ける最下部に析出物や不純物を蓄積させて目詰まりを防止できるものの、最下部が沈降物で充満した後はやはり目詰まりが生じる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、繊維体又は粒状体或いは粉状体を含む目的内容物を噴射した場合でも確実に詰まりを防ぐことができるエアゾール製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係るエアゾール製品は、繊維体又は粒状体或いは粉状体を含む目的内容物と噴射剤を充填した容器本体と、前記容器本体に固着され充填された目的内容物を噴射するバルブと、を有し、前記バルブは、内部に目的内容物が流通する流通室が形成され下端に流通室に連通する突起が形成されたハウジングと、前記ハウジングの流通室に往復移動可能に収容されたステムと、前記ハウジングに収容され前記ステムを一方向に付勢するばねと、一端が前記ハウジングに形成された突起に接続され他端が目的内容物内に配置されたディップチューブと、を有して構成され、前記ハウジングの流通室には、該ハウジングの下端側に複数の溝が形成されることによってばねを支持するための支持部が形成されており、且つハウジングの下端面又は下端側の側面に前記溝と連通する通孔が形成され、該通孔を介して容器本体の気相部と溝とが連通し得るように構成されているものである。
【0010】
上記エアゾール製品に於いて、前記ハウジングの底面に形成された溝の中から選択された1又は複数の溝に通孔が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るエアゾール製品では、ハウジングの内部に形成した流通室の下端側の底面に複数の溝を形成し、ハウジングの下端側の面又は下端側の側面に通孔を形成して溝と容器本体の気相部とを連通したので、ステムを移動させてバルブを開放したとき、該バルブからディップチューブを介して流通室に供給された目的内容物と、通孔を介して流通室に供給された気相ガスを噴射することができる。
【0012】
このとき、気相ガスは流通室の底面に形成された溝に供給されるため、該流通室の流れは底面側からバルブ側への一方向となり、目的内容物を円滑に且つ効果的に噴射することができる。このため、目的内容物に含まれた繊維体又は粒状体或いは粉状体が流通室に滞留することがなく、バルブの詰まりを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エアゾール製品の構成を説明する断面図である。
【図2】バルブの構成を説明する断面図である。
【図3】バルブを構成するハウジングの形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るエアゾール製品の好ましい実施例について図を用いて説明する。図1に示すように、噴射すべき目的内容物を主成分とする原液部1と、噴射剤を主成分とする気相部2と、を有する容器本体Aと、容器本体Aに固着され充填された目的内容物を噴射するバルブBとを有して構成されている。
【0015】
原液部1の主成分である目的内容物は、繊維体又は粒状体或いは粉状体を含んでいる。これらの繊維体、粒状体、粉状体は夫々単独で目的内容物に含まれていても良く、また自由な組み合わせで2種類が含まれていても良く、更には全てが含まれていても良い。
【0016】
上記繊維体としては特に材質を限定するものではなく、ナイロンやレーヨン或いはガラスファイバ等の化学繊維や絹糸や木綿糸等の天然繊維、或いはステンレス鋼や鉄鋼或いはアルミニウム等の金属繊維、更にはセラミックス等の無機質繊維等の繊維であって良い。また、繊維体の長さや太さも特に限定するものではなく、バルブBを構成するステム15に形成されたオリフィス15b、及び図示しないアクチュエータのオリフィスを通過し得る長さと太さであれば良い。このような繊維体の寸法の例として、長さは約0.1mm〜約0.5mm程度、太さは0.1デニール〜1.0デニール程度であって良い。
【0017】
また、粒状体の材質も特に限定するものではなく、合成樹脂からなる粒状体、天然の鉱物やセラミックス等の無機質からなる粒状体、金属からなる粒状体等の粒状体であって良い。これらの粒状体はバルブBを構成するステム15に形成されたオリフィス15b、及び図示しないアクチュエータに形成されたオリフィスを確実に通過し得る寸法であることが必要であり、従って、粒状体の寸法はオリフィスの径に応じて設定される。また、粉状体の材質も特に限定するものではなく、合成樹脂からなる粉状体、天然の鉱物やセラミックス等の無機質物からなる粉状体、金属からなる粉状体等の粉状体であって良い。
【0018】
また、目的内容物は、上記した繊維体、粒状体、粉状体の性質や使用目的に応じて、水、溶剤、油剤、増粘剤、安定剤、界面活性剤、滑沢剤、保湿剤、紫外線吸収剤、酸アルカリ剤、pH調整剤、イオン封鎖剤、香料或いは他の剤の中から選択された1種〜複数種が付加調合されている。
【0019】
気相部2の主成分である噴射剤としては、エアゾール製品に於いて一般的な噴射剤を用いることが可能である。このような噴射剤としては、炭酸ガスや窒素ガス或いは圧縮空気等の圧縮ガス類、及び液化石油ガスやジメチルエーテル等の液化ガスがあり、何れも利用することが可能である。
【0020】
容器本体Aは上端部分にバルブBが固着されており、目的内容物及び噴射剤が充填されて内部に原液部1と、気相部2が構成される。容器本体Aとしては、エアゾール製品に於いて一般的に用いられる容器を利用することが可能である。従って、容器本体Aとしては、金属容器、ガラス容器、合成樹脂容器等の容器を選択的に採用することが好ましい。
【0021】
次に、バルブBの構成について図2、3を用いて説明する。バルブBは、容器本体Aの上端部分に固着され、使用者による図示しないアクチュエータの操作に応じて、該容器本体Aに充填された目的内容物を噴射し、或いは噴射を停止するものである。
【0022】
バルブBは、容器本体Aに固着されたマウンテンカップ11と、マウンテンカップ11に固着され内部に上端側が解放された流通室12が形成されたハウジング13と、マウンテンカップ11とハウジング13との間に配置された可撓性を有するステムラバー14と、流通室12に往復移動可能に収容されたステム15と、ステム15を上方に付勢するばね16と、ハウジング13の下端に形成され流通室12と連通する流通孔17aを有する筒状の突起17と、一端が突起17に接続され他端が目的内容物内に配置されるディップチューブ18と、を有して構成されている。
【0023】
ハウジング13の内部に形成された流通室12は上端側が開放されており、下端側は突起17の流通孔17a、ディップチューブ18を介して容器本体Aの原液部1に連通している。そして、開放された上端側は可撓性を有するステムラバー14と流通室12内を往復移動するステム15とによって閉鎖されている。
【0024】
特に、流通室12の下端側であってハウジング13の内面には複数の溝20(本実施例では4本)が形成されており、この溝20の形成に伴ってばね16の端部を支持するための平坦面からなる支持部21が形成されている。また、支持部21に連続して形成された突起部分22は、ばね16を所定の配置位置に保持する機能を有している。尚、溝20の数は限定するものではなく、流通室12の径に応じて適宜設定することが好ましい。
【0025】
溝20は流通室12の下端側の底面に形成された傾斜面20aを有している。この傾斜面20aは、ハウジング13に形成された突起17の流通孔17aに向けて下降し得るような傾斜を持って形成されており、この溝20に目的内容物が落下したような場合でも、容易に流通孔17aに流れ込むことが可能である。
【0026】
溝20の傾斜面20aに通孔25が形成されている。この通孔25は、傾斜面20aとハウジング13の下端面13aとの間を連通して、或いはハウジング13の下端面13a側の側面13bとの間を連通して形成されている。通孔25の径は特に限定するものではなく、容器本体Aに於ける気相部2に存在する気相ガス(噴射剤)が流通し得るような寸法であれば良い。また、通孔25をいくつ形成するか、についても特に限定するものではなく、目的内容物に含まれた繊維体、粒状体、粉状体の材質や含有量等の諸条件に応じて適宜設定することが好ましい。
【0027】
ステム15は、中心に噴射孔15aが形成され、側面にオリフィス15bが形成されている。このオリフィス15bは、ステム15がばね16に付勢されて上方に位置するとき、ステムラバー14よりも上方となる位置(図2(a)参照)に形成されている。従って、この状態では噴射孔15aは流通室12とは縁が切られており、目的内容物の噴射が行われることのない停止状態となる。また、ステム15が下降したとき、オリフィス15bはステムラバー14よりも下方となる位置(図2(b)参照)に形成されている。従って、この状態では、オリフィス15bを介して流通室12と噴射孔15aとが連通しており、目的内容物の噴射が行われる作動状態となる。
【0028】
ステム15の外形形状は、上端側が平行な円筒部15cが形成され、オリフィス15bの形成位置よりも下方で下端側に向けて径が大きくなるテーパ部15dが形成され、下端面にばね16の上端を受け入れるリング状の溝15eが形成されている。そして、ステム15がばね16に付勢されて上昇し、テーパ部15dがステムラバー14と接触したとき、オリフィス15bがステムラバー14よりも上方に位置し、且つステム15が上昇限となるように構成されている。
【0029】
上記の如く構成されたエアゾール製品では、繊維体、粒状体、粉状体を含む目的内容物と、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、フロンガス等の噴射剤と、を容器本体Aに充填したとき、該容器本体Aの内部には目的内容物を主成分とする原液部1と噴射剤(気相ガス)を主成分とする気相部2とに分離した状態となる。気相部2に存在する噴射剤の圧力は、通孔25を介して流通室12に作用している。
【0030】
ステム15が上昇限にあり、目的内容物の噴射が停止状態にあるとき、流通室12及び流通孔17aの原液部1よりも上部には気相部2の圧力が作用し、これにより、流通室12に目的内容物が流入するのを防止している。
【0031】
使用者が図示しないアクチュエータを操作するのに伴って、オリフィス15bがステムラバー14よりも下方となる位置までステム15が下降すると、オリフィス15bを介して噴射孔15aと流通室12とが連通する。このため、ディップチューブ18、流通孔17a、流通室12、オリフィス15b、噴射孔15aを通って原液部1の目的内容物が外部に噴射される。同時に、気相部2の噴射剤が通孔25から流通室12に流入し、流入した噴射剤は目的内容物と共に外部に噴射される。
【0032】
外部に対して目的内容物を噴射している間、噴射剤は溝20を構成する傾斜面20aから流通室12に流入することとなり、流通室12の内部に於ける流れは、流通室12の下端側から上方へと向かう略直線的となる。即ち、流通室12の内部に渦流が形成されることがなく、略一様な速度で流れることとなる。このため、目的内容物を噴射している間、流通室12に繊維体、粒状体、粉状体が堆積することがない。
【0033】
アクチュエータの操作を停止して目的内容物の噴射を停止したとき、流通室12に於ける目的内容物及び噴射剤の流れが停止し、該流通室12の内部には目的内容物が充満していることになる。このため、目的内容物は流通孔17aを通って原液部1に戻り、これに伴って繊維体、粒状体、粉状体も原液部1に戻る。
【0034】
上記の如くして目的内容物が容器本体Aの原液部1に戻る際に、繊維体、粒状体、粉状体の一部が溝20の傾斜面20aに残留することがある。しかし、目的内容物が原液部1に戻るのに伴って、流通室12には通孔25を介して気相部2に存在する噴射剤が流入し、この噴射剤の流れによって傾斜面20aに残留した繊維体、粒状体、粉状体を移動させて流通孔17aから原液部1に落下させることが可能である。
【0035】
上記の如く、本実施例に係るエアゾール製品では、流通室12の下端側に気相部2と連通する通孔25を形成することによって、目的内容物を噴射する際に流通室12内に形成される流線を略直線状にすることが可能となり、目的内容物に含まれた繊維体、粒状体、粉状体が流通室12の内部で落下することがない。また、噴射を停止したときにも目的内容物に含まれた繊維体、粒状体、粉状体が流通室12の内部に堆積することがない。このため、バルブBに於ける詰まりを防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係るエアゾール製品は、セメントスプレーやラメスプレー等の粒子径が大きいもの、粒子の表面が平滑ではないようなものを噴射する際に利用して有利である。
【符号の説明】
【0037】
A 容器本体
B バルブ
1 原液部
2 気相部
11 マウンテンカップ
12 流通室
13 ハウジング
13a 下端面
13b 側面
14 ステムラバー
15 ステム
15a 噴射孔
15b オリフィス
15c 円筒部
15d テーパ部
15e 溝
16 ばね
17 突起
17a 流通孔
18 ディップチューブ
20 溝
20a 傾斜面
21 支持部
22 突起部分
25 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維体又は粒状体或いは粉状体を含む目的内容物と噴射剤を充填した容器本体と、前記容器本体に固着され充填された目的内容物を噴射するバルブと、を有し、
前記バルブは、内部に目的内容物が流通する流通室が形成され下端に流通室に連通する突起が形成されたハウジングと、前記ハウジングの流通室に往復移動可能に収容されたステムと、前記ハウジングに収容され前記ステムを一方向に付勢するばねと、一端が前記ハウジングに形成された突起に接続され他端が目的内容物内に配置されたディップチューブと、を有して構成され、
前記ハウジングの流通室には、該ハウジングの下端側に複数の溝が形成されることによってばねを支持するための支持部が形成されており、且つハウジングの下端面又は下端側の側面に前記溝と連通する通孔が形成され、該通孔を介して容器本体の気相部と溝とが連通し得るように構成されていることを特徴とするエアゾール製品。
【請求項2】
前記ハウジングの底面に形成された溝の中から選択された1又は複数の溝に通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載したエアゾール製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−126430(P2012−126430A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280046(P2010−280046)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(591183935)中央エアゾール化学株式会社 (2)
【出願人】(507108977)株式会社三田理化 (2)
【Fターム(参考)】