説明

エアゾール製品

【課題】エアゾール容器を振とうすることなく用いることができると共に、吐出物の性状がフォームからジェルに変化するエアゾール製品を提供すること。
【解決手段】エアゾール製品は、水と、アクリル酸エステル重合体よりなる水溶性高分子物質と、エチルアルコールと、界面活性剤とを含有し、温度20℃における粘度が5,000〜35,000mPa・sである原液60〜90質量%、およびジメチルエーテルよりなる噴射剤10〜40質量%からなるエアゾール組成物が、エアゾール用バルブを備えた耐圧容器よりなるエアゾール容器内に充填されて均一な液状内容物が形成されており、
当該エアゾール容器から液状内容物が泡沫状に吐出され、泡沫状の吐出物の気泡が消失されてジェルが形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い粘度を有する原液を含有するエアゾール製品に関し、更に詳しくは、吐出物の性状がフォームからジェルに変化するエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール製品としては、有効成分などを含有する原液と、噴射剤とよりなるエアゾール組成物が、噴射バルブを備えた耐圧容器よりなるエアゾール容器に充填されなる構成を有し、基本的に適用時においてエアゾール容器を上下に振とうした後、内容物を噴射させることにより、種々の性状を有する吐出物が得られるものが知られている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
エアゾール製品の或る種のものとしては、原液が粘度の高いジェルよりなるものが知られているが、特に高い粘度を有する内容物をミスト状に吐出させる構成のエアゾール製品(特許文献3および特許文献4参照。)においては、その吐出量を目視にて確認することが容易ではない。また、ミスト状の吐出物を得る構成以外のエアゾール製品(例えば、特許文献5参照。)においても、エアゾール容器を上下方向に振とうせずに内容物を吐出させると、例えば噴射剤のみが吐出され、あるいは形成される吐出物が噴射剤を多量に含有するものとなるなどして吐出物に良好な状態を得ることができず、更には噴射剤の量が不足してエアゾール容器の内容物のすべてを吐出させることができなくなるおそれがある、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−178923号公報
【特許文献2】特開平9−165323号公報
【特許文献3】特許第2974081号公報
【特許文献4】特開平7−101851号公報
【特許文献5】特開2009−249343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、エアゾール容器を振とうすることなく用いることができると共に、吐出物の性状がフォームからジェルに変化するエアゾール製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエアゾール製品は、水と、アクリル酸エステル重合体よりなる水溶性高分子物質と、エチルアルコールと、界面活性剤とを含有し、温度20℃における粘度が5,000〜35,000mPa・sである原液60〜90質量%、およびジメチルエーテルよりなる噴射剤10〜40質量%からなるエアゾール組成物が、エアゾール用バルブを備えた耐圧容器よりなるエアゾール容器内に充填されて均一な液状内容物が形成されており、
当該エアゾール容器から液状内容物が泡沫状に吐出され、泡沫状の吐出物の気泡が消失されてジェルが形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアゾール製品において、前記水溶性高分子物質を構成するアクリル酸エステル重合体がカルボキシビニルポリマーおよび (アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーから選ばれた少なくとも1種であり、かつ前記原液に粘度調整剤が含有されることが好ましい。
【0008】
本発明のエアゾール製品においては、前記エアゾール組成物を構成する原液において、水溶性高分子物質の含有割合が0.1〜0.4質量%であることが好ましい。
【0009】
本発明のエアゾール製品においては、前記エアゾール組成物を構成する原液において、エチルアルコールの含有割合が5〜20質量%であり、界面活性剤の含有割合が0.05〜3質量%であることが好ましい。
【0010】
本発明のエアゾール製品においては、前記泡沫状の吐出物の気泡が消失されることによって形成されるジェルが無色透明であることが好ましい。
【0011】
本発明のエアゾール製品は、人体用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエアゾール製品によれば、エアゾール容器内において、水、エチルアルコールおよび界面活性剤と共に特定の水溶性高分子物質を含有し、特定の範囲の粘度を有する原液と、ジメチルエーテルよりなる噴射剤とを特定の割合で有するエアゾール組成物によって液状内容物が形成されており、その液状内容物が原液と噴射剤を構成するジメチルエーテルとによって形成された均一なものであることから、エアゾール容器を振とうすることなく用いることができ、また界面活性剤とジメチルエーテルとの作用によって内容物を泡沫状に吐出し、その泡沫状の吐出物、すなわちフォームの気泡を消失させてジェルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のエアゾール製品は、エアゾール用バルブを備えた耐圧容器よりなるエアゾール容器内に、水、水溶性高分子物質、エチルアルコールおよび界面活性剤を含有し、温度20℃における粘度が5,000〜35,000mPa・sである原液と、ジメチルエーテルよりなる噴射剤とからなるエアゾール組成物が充填されてなるものである。
この本発明のエアゾール製品においては、エアゾール容器内にて、充填されているエアゾール組成物によって均一な液状内容物が形成されており、当該エアゾール製品が噴射されることにより、液状内容物が泡沫状に吐出され、その泡沫状の吐出物(フォーム)における気泡が、例えば指によって潰されることなどにより、消失されてジェルが形成される。
ここに、エアゾール容器内において形成されている液状内容物は、原液と噴射剤を構成するジメチルエーテルとによって形成され、均質な状態が維持されてなるものであり、原液が水、水溶性高分子、エチルアルコールおよび界面活性剤のみよりなる場合においては、通常、無色透明のものであるが、後述するように原液に任意成分が含有される場合においては、その任意成分の種類に応じて、有色であってもよく、不透明あるいは半透明であってもよい。
【0014】
本発明に係るエアゾール組成物を構成する原液は、水と、アクリル酸エステル重合体よりなる水溶性高分子物質と、エチルアルコールと、界面活性剤とを必須成分とし、必要に応じて任意成分を含有するものである。
【0015】
原液の必須成分である水としては、精製水あるいはイオン交換水が用いられる。
【0016】
水の含有割合は、原液100質量%において50〜95質量%であることが好ましく、更に好ましくは80〜95質量%である。
【0017】
水の含有割合が過大である場合には、原液に他の成分を十分な割合で含有させることができなくなるおそれがある。一方、水の含有割合が過小である場合には、原液の粘度が大きくなり、またエアゾール容器内において形成される液状内容物が均質な状態を維持することのできないものとなるおそれがある。
【0018】
原液の必須成分である水溶性高分子物質としては、アクリル酸エステル重合体が用いられ、アクリル酸エステル重合体としては、架橋型のものが好ましい。
水溶性高分子物質として架橋型のアクリル酸エステル重合体を用いることにより、これらの化合物が高い増粘作用を有するものであることから、少ない使用量によって原液に所望の粘度を得ることができ、また、原液における水溶性高分子物質の含有割合を少なくすることができるため、吐出物を十分に起泡したものとすることができ、しかも特に人体用に適用する場合においては、適用箇所にベタツキ感が生じることのない良好な使用感(さっぱり感)を得ることができる。
【0019】
水溶性高分子物質を構成するアクリル酸エステル重合体の好ましい具体例としては、カルボキシビニルポリマーおよび (アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーが挙げられる。これらは、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組合せて用いることができる。
ここに、カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸の架橋型(共)重合体である。カルボキシビニルポリマーの具体例としては、「カーボポール Ultrez10」(ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
また、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーは、アクリル酸と炭素数10〜30の高級アルコールとアクリル酸のエステルをアリルペンタエリスリトールで架橋したポリマーである。(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーの具体例としては、「カーボポール EDT2020」(ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
【0020】
水溶性高分子物質の含有割合は、原液100質量%において0.1〜0.4質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜0.3質量%である。
【0021】
水溶性高分子物質の含有割合が過小である場合には、原液の粘度が小さくなるおそれがある。一方、水溶性高分子の含有割合が過大である場合には、原液の粘度が大きくなるおそれがある。
【0022】
本発明のエアゾール製品に係る原液において、水溶性高分子物質として、カルボキシビニルポリマーおよび (アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーから選ばれた少なくとも1種のアクリル酸エステル重合体(以下、「特定アクリル酸エステル重合体」ともいう。)を用いる場合においては、当該原液には、特定アクリル酸エステル重合体を中和することによって増粘させ、その中和度、すなわち原液のpHを調整することによって原液の粘度を調整する作用を有する粘度調整剤が含有されることが必要である。
【0023】
粘度調整剤の具体例としては、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、水酸化アンモニウムなどのアルカリ化合物が挙げられる。これらのうちでは、トリエタノールアミンが好ましい。
【0024】
粘度調整剤の含有割合は、原液の粘度を所望の範囲内とすることのできる量とされ、特定アクリル酸エステル重合体の種類および含有割合、あるいは用いる粘度調整剤の種類によっても異なるが、具体的に、水溶性高分子物質として特定アクリル酸エステル重合体を用い、その原液における含有割合が0.1〜0.4質量%である場合においては、原液100質量%において0.01〜1.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜0.3質量%である。
【0025】
粘度調整剤の含有割合が過大である場合には、原液の粘度が小さくなるおそれがある。一方、粘度調整剤の含有割合が過小である場合には、原液の粘度が小さくなるおそれがある。
【0026】
原液の必須成分であるエチルアルコールは、主として、原液中に噴射剤を構成するジメチルエーテルを溶解させるための溶解助剤、および必要に応じて原液に含有される任意成分の溶解剤として作用するものである。
【0027】
エチルアルコールの含有割合は、原液100質量%において5.0〜20.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは5.0〜15.0質量%であり、特に好ましくは5〜10質量%である。
【0028】
エチルアルコールの含有割合が過小である場合には、原液と噴射剤とに十分な相溶性が得られなくなり、エアゾール容器内において形成される液状内容物が均質な状態を維持することができないものとなるおそれがある。一方、エチルアルコールの含有割合が過大である場合には、原液の粘度が小さくなるおそれがある。
【0029】
原液の必須成分である界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アニオン性界面活性剤および両性界面活性剤を用いることができる。これらは、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組合せて用いることができる。
これらのうちでは、起泡性、および人体用に適用する場合における人体に対する安全性の観点から、非イオン性界面活性剤およびポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0030】
非イオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、レシチン誘導体などのHLB値が10〜18であるものが挙げられる。
【0031】
ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤の好ましい具体例としては、PEG−12ジメチコンなどが挙げられる。
【0032】
界面活性剤の含有割合は、原液100質量%において0.05〜3.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.0質量%であり、特に好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0033】
界面活性剤の含有割合が過大である場合には、人体用に適用する場合には、適用箇所にベタツキ感が生じることから良好な使用感が得られなくなるおそれがある。一方、界面活性剤の含有割合が過小である場合には、吐出物が十分に起泡したものとならなくなるおそれがある。
【0034】
本発明に係るエアゾール組成物の原液には、必須成分である、水、水溶性高分子物質、エチルアルコールおよび界面活性剤、または必要に応じて用いられる粘度調整剤の他、使用用途などに応じて任意成分が含有されていてもよい。
任意成分の具体例としては、例えば保湿剤、油剤、清涼剤などの使用目的に応じた有効成分、あるいは防腐剤、その他が挙げられる。
【0035】
以上のような必須成分および任意成分により構成される原液は、温度20℃における粘度が5,000〜35,000mPa・sであることが必要とされるが、好ましくは10,000〜20,000mPa・sであり、更に好ましくは12,000〜18,000mPa・sである。
【0036】
原液の粘度が過大である場合には、吐出物が十分に起泡したものとならず、またエアゾール容器内において形成される液状内容物に十分な流動性が得られなくなり、それに起因して良好な噴射状態を維持することができなくなるおそれ、あるいは最終的にエアゾール容器内の内容物(液状内容物)のすべてを吐出させることができなくなるおそれがある。一方、原液の粘度が過小である場合には、泡沫状の吐出物(フォーム)における気泡が消失されて形成されるジェルが所望の性状を有するもの、すなわち良好なジェル状とならず、それに起因して適用箇所に対する十分な密着性が得られなくなり、あるいは適用箇所において液ダレが生じることから良好な使用感を得ることができなくなるおそれがある。
【0037】
以上のような成分が含有されてなる原液の含有割合は、後述する噴射剤との関係から、エアゾール組成物全体100質量%において、60〜90質量%であることが必要とされ、好ましくは70〜90質量%、更に好ましくは80〜90質量%とされる。
【0038】
本発明に係るエアゾール組成物を構成する噴射剤としては、ジメチルエーテルが用いられる。
本発明のエアゾール製品においては、噴射剤としてジメチルエーテルを用いることにより、ジメチルエーテルが水性溶媒に対して高い溶解性を有することから原液中に完全に溶解しているため、ジメチルエーテルの有する特性により、吐出物を十分に起泡したものとすることができ、また、ジメチルエーテルの気化熱による冷却作用によって吐出物に冷感を付与することができる。
【0039】
噴射剤の含有割合は、エアゾール組成物全体100質量%において10〜40質量%であることが必要とされるが、好ましくは10〜30質量%であり、更に好ましくは10〜20質量%である。
【0040】
噴射剤の含有割合が過大であって原液の含有割合が過小である場合には、原液と噴射剤とに十分な相溶性が得られず、エアゾール容器内において形成される液状内容物が均質な状態を維持することのできないもの、すなわち液状内容物が均一なものとならなくなり、また吐出物が十分に起泡したものとならなくなるおそれがある。一方、噴射剤の含有割合が過小であって原液の含有割合が過大である場合には、吐出物が十分に起泡したものとならず、またエアゾール容器内において形成される液状内容物に十分な流動性が得られなくなり、それに起因して良好な噴射状態を維持することができなくなるおそれ、あるいは最終的にエアゾール容器内の内容物(液状内容物)のすべてを吐出させることができなくなるおそれがある。
【0041】
本発明のエアゾール製品を構成するエアゾール容器は、耐圧容器としては従来公知の種々のタイプのものを利用することができ、また、当該耐圧容器のタイプに応じて、バルブ装置を装着するための構造を適宜選定することができる。
【0042】
以上のような本発明のエアゾール製品は、本発明に係るエアゾール組成物をエアゾール容器、すなわちエアゾール用バルブ(噴射バルブ)を備えた耐圧容器内に充填することによって製造される。
ここに、本発明のエアゾール製品を製造するに際して、具体的には、例えば原液を調製し、得られた原液と噴射剤とをエアゾール容器に充填することによってエアゾール製品が製造されるが、原液の調製方法としては、水と水溶性高分子物質との混合溶液(以下、「水溶性高分子物質溶液」ともいう。)と、水および水溶性高分子物質以外の原液の構成成分の混合溶液(以下、「他成分溶液」ともいう。)とを別個に調製し、得られた水溶性高分子物質溶液に他成分溶液を添加する手法を用いることが好ましい。
【0043】
このような本発明のエアゾール製品によれば、エアゾール容器内において、水、エチルアルコールおよび界面活性剤と共に特定の水溶性高分子物質を含有し、特定の範囲の粘度を有する原液と、ジメチルエーテルよりなる噴射剤とを特定の割合で有するエアゾール組成物によって液状内容物が形成されており、その液状内容物が原液と噴射剤を構成するジメチルエーテルとによって形成された均一なものであることから、界面活性剤とジメチルエーテルとの作用によって内容物(液状内容物)を泡沫状に吐出し、その泡沫状の吐出物、すなわちフォームの気泡を消失させてジェルを得ることができる。しかも、液状内容物が均一なものであることから、使用直前にエアゾール容器を上下方向に振とうすることなく用いることができる。
【0044】
従って、本発明のエアゾール製品によれば、吐出されたフォームまたはこれにより形成されるジェルを広範囲の適用箇所にも均一塗布することができ、また、適用箇所には最終的にはジェルが付着されることとなるため、当該適用箇所においては、液ダレが生じることがなく、しかもジェルによる高い密着性が得られると共に、付着物が比較的長時間にわたって存在することにより原液の含有成分による効果が持続して作用されることとなる。
【0045】
また、吐出物が最終的に無色透明のジェルを形成するものである場合であっても、その吐出時における性状が白色のフォームであることから、その吐出量を目視にて容易に確認することができる。
また、適用する場合において、その使用直前にエアゾール容器を上下方向に振とうする必要がないことから、例えば噴射剤のみが吐出され、あるいは形成される吐出物が噴射剤を多量に含有するものとなるなどして吐出物に良好な状態を得ることができないなどの弊害が生じることが防止されることから、最終的にエアゾール容器内の内容物のすべてを良好な噴射状態によって吐出させることができる。
【0046】
このような本発明のエアゾール製品は、様々な用途に用いることができるが、特に人体用として好適に用いることができ、具体的には、例えば冷却用途、保湿用途、トリートメント用途あるいはその他の用途に用いることができる。吐出されるフォームおよびこれにより形成されるジェルにはジメチルエーテルおよびエチルアルコールの気化熱による冷却作用によって冷感が付与されることから、冷却用途に好適に用いることができ、更にはフォームおよびジェルによって得られる冷感は、その性状に起因して穏やかなものとなることから、乳幼児用として最適である。
ここに、本発明のエアゾール製品の具体的な適用方法の一例としては、例えばエアゾール容器内からその内容物を手の平に向かって噴射することによって手の平上に泡沫状の吐出物(フォーム)を形成し、得られた泡沫状の吐出物を、気泡を潰すようにして指で手の平に塗り延ばすことによって最終的にはその性状をジェルとし、その後、手の平上においてジェル状とされた吐出物を適用箇所に塗布することによって適用する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0048】
〔実施例1〜11および比較例1〜6〕
先ず、表1および表2に示す配合処方に従って組成物原料および2つのガラスビーカーを用意し、一方のガラスビーカー内に、水および水溶性高分子物質を仕込み、プロペラ撹拌機を用いて回転数500rpmの条件で撹拌し、水中に水溶性高分子物質を均一に分散させることにより、水溶性高分子物質溶液を得た。また、他方のガラスビーカー内に、水および水溶性高分子物質以外の組成物原料を仕込み、プロペラ撹拌機を用いて回転数500rpmの条件で撹拌するによって均一な溶解液(他成分溶液)を得た。
次いで、得られた水溶性高分子物質溶液をプロペラ撹拌機によって回転数500rpmの条件で撹拌しながら、当該水溶性高分子物質溶液中に、得られた他成分溶液をゆっくりと添加することにより、水およびエチルアルコールよりなる溶媒中に、水溶性高分子物質、界面活性剤およびその他の成分が均一に溶解されてなる無色透明の原液を調製した。
【0049】
そして、得られた原液を、ジメチルエーテルよりなる噴射剤と共に、原液および噴射剤の割合が表1および表2に示す割合となるように、エアゾール用バルブを備え、容積100mlの透明なガラス製耐圧容器よりなるエアゾール容器内に充填した後、エアゾール容器を上下方向に10回振とうすることにより、エアゾール容器内にエアゾール組成物の無色透明の液状内容物が形成されてなるエアゾール製品を作製した。
【0050】
ここに、比較例1は、原液にエチルアルコールが含有されていない場合の例であり、比較例2は、原液に界面活性剤が含有されていない場合の例であり、比較例3は、原液の温度20℃における粘度が過小である場合の例であり、比較例4は、原液の温度20℃における粘度が過大である場合の例であり、比較例5は、原液の含有割合が過大であって噴射剤の含有割合が過小である場合の例であり、比較例6は、原液の含有割合が過小であって噴射剤の含有割合が過大である場合の例である。
また、実施例1〜11に係るエアゾール製品は、人体用であり、具体的には、実施例1〜実施例9に係るエアゾール製品は、冷却用途に用いられるエアゾール製品であり、実施例8に係るエアゾール製品は、保湿用途に用いられるエアゾール製品であり、実施例9に係るエアゾール製品は、へートリートメント用途に用いられるエアゾール製品である。
【0051】
<評価試験>
上記の実施例1〜11および比較例1〜6により作製されたエアゾール製品の各々に関して、下記の手法により、エアゾール容器内において形成されている液状内容物における原液と噴射剤との相溶性(以下、「内容物における原液と噴射剤との相溶性」ともいう。)、吐出物における起泡性、吐出物における液ダレ抑制性およびエアゾール容器内において形成されている液状内容物の流動性(以下、「内容物の流動性」ともいう。)を評価した。結果を表1および表2に示す。
【0052】
(内容物における原液と噴射剤との相溶性)
実施例および比較例の各々により作製されたエアゾール製品を45℃に設定した恒温室内に3日間静置した後、目視にて観察することにより、エアゾール製品に係るエアゾール容器内において形成されている液状内容物における相分離現象(原液相と噴射剤相とに分離する現象)の有無を確認し、相分離現象が生じていないことが確認された場合を内容物における原液と噴射剤との相溶性が良好であるとして「A」、相分離現象が生じていることが確認された場合を内容物における原液と噴射剤との相溶性が不十分であるとして「C」と評価した。
【0053】
(吐出物における起泡性)
実施例および比較例の各々により作製されたエアゾール製品を25℃に設定した恒温水槽に30分間浸漬した後、各エアゾール製品の内容物3gを、容積20mlのガラスビーカー内に噴射し、噴射直後におけるガラスビーカー内の吐出物の体積を測定し、体積が20ml以上である場合を起泡性が極めて良好であるとして「A」、体積が10ml以上であって20ml未満である場合を起泡性が良好であるとして「B」、体積が10ml未満である場合を起泡性が不十分であるとして「C」と評価した。
【0054】
(吐出物における液ダレ抑制性)
実施例および比較例の各々により作製されたエアゾール製品を25℃に設定した恒温水槽に30分間浸漬した後、各エアゾール製品の内容物1gを、床に水平であって上方に向いた状態の手の平上に噴射し、特に吐出物が泡沫状である場合には気泡を潰すようにして当該吐出物を手の平に塗り延ばした後、その手の平を床に対して垂直となるように傾けて液ダレの有無を目視により確認し、液ダレがまったく生じなかった場合を液ダレ抑制性が極めて良好であるとして「A」、極めてわずかに液ダレが生じるものの、実用上問題がない場合を液ダレ抑制性が良好であるとして「B」、液ダレが生じ、実用上問題がある場合を液ダレ抑制性が不十分であるとして「C」と評価した。
【0055】
(内容物の流動性)
実施例および比較例の各々により作製されたエアゾール製品をエアゾール用バルブが下方となる状態(さかさま状態)として静置し、エアゾール製品に係るエアゾール容器内において形成されている液状内容物の全量をエアゾール容器におけるエアゾール用バルブ側(さかさま状態のエアゾール容器の下方側)に移動させた後、エアゾール用バルブが上方となる状態として、液状内容物の全量が落下、すなわち液状内容物の全量がエアゾール用バルブ側から耐圧容器の底面側に移動するまでに要する時間(以下、「全量落下時間」ともいう。)を確認し、全量落下時間が5秒以内である場合を内容物の流動性が極めて良好であるとして「A」、全量落下時間が5秒を超えて11秒未満である場合を内容物の流動性が良好であるとして「B」、全量落下時間が11秒以上である場合を内容物の流動性が不十分であるとして「C」と評価した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
表1および表2において、評価の「吐出物における起泡性」に係る測定値の欄の「20ml以上」とは、ビーカーから泡沫があふれ出た場合を示す。
また、表1および表2において、「カルボキシビニルポリマー」は、「カーボポール Ultrez10」(ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)であり、「(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー」は、「カーボポール EDT2020」(ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)であり、「非イオン界面活性剤」は、「TO−10V」(日光ケミカルズ(株)製;(ポリソルベート80)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)であり、「ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤」は、「SH3771M」(東レ・ダウコーニング(株)製;PEG−12ジメチコン)であり、「トリエタノールアミン」は、「TEA99」(ジャパンケムテック(株)製)であり、「メントール」は、「メントールJP」(高砂香料(株)製)であり、「1,3−ブチレングリコール」は、協和発酵ケミカル(株)製のものであり、「シクロペンタシロキサン」は、「SH245」(東レ・ダウコーニング(株)製)であり、「メチルパラベン」は、「メッキンスM」(上野製薬(株)製)である。
【0059】
表1の結果から、実施例1〜実施例11に係るエアゾール製品は、エアゾール容器内に形成される液状内容物が均一なものであって使用直前にエアゾール容器を振とうすることなく用いることができ、また内容物が泡沫状に吐出され、しかもその吐出物が十分に起泡したものとなることが確認された。
一方、比較例1に係るエアゾール製品においては、原液にエチルアルコールが含有されていないため、内容物における原液と噴射剤とに十分な相溶性が得られなかった。比較例2に係るエアゾール製品においては、原液に界面活性剤が含有されていないため、吐出物が十分に起泡したものとならなかった。比較例3に係るエアゾール製品においては、原液の温度20℃における粘度が過小であるため、液ダレが発生し、比較例4に係るエアゾール製品においては、原液の温度20℃における粘度が過大であるため、エアゾール容器内において形成されている液状内容物には十分な流動性が得られず、吐出物が十分に起泡したものとならなかった。また、比較例5に係るエアゾール製品においては、原液の含有割合が過大であって噴射剤の含有割合が過小であるため、エアゾール容器内において形成されている液状内容物には十分な流動性が得られず、吐出物が十分に起泡したものとならなかった。比較例6に係るエアゾール製品においては、原液の含有割合が過小であって噴射剤の含有割合が過大であるため、内容物における原液と噴射剤とに十分な相溶性が得られず、また吐出物が十分に起泡したものとならなかった。
【0060】
また、実施例1〜実施例11に係るエアゾール製品は、いずれも液状内容物が無色透明のものであるが、形成される吐出物は白色の泡沫状のもの(白色のフォーム)であったことから、その吐出量を目視にて容易に確認することができた。
更に、実施例1〜実施例8、実施例10および実施例11に係るエアゾール製品は、吐出されたフォームおよびこれにより形成されたジェルに穏やかな冷感が感じられるものであり、実施例9に係るエアゾール製品は、原液に清涼剤が含有されていることから、吐出されたフォームおよびこれにより形成されたジェルには、他のエアゾール製品(実施例1〜実施例8、実施例10および実施例11に係るエアゾール製品)に係るフォームおよびジェルに比してより一層の冷感が感じられるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、アクリル酸エステル重合体よりなる水溶性高分子物質と、エチルアルコールと、界面活性剤とを含有し、温度20℃における粘度が5,000〜35,000mPa・sである原液60〜90質量%、およびジメチルエーテルよりなる噴射剤10〜40質量%からなるエアゾール組成物が、エアゾール用バルブを備えた耐圧容器よりなるエアゾール容器内に充填されて均一な液状内容物が形成されており、
当該エアゾール容器から液状内容物が泡沫状に吐出され、泡沫状の吐出物の気泡が消失されてジェルが形成されることを特徴とするエアゾール製品。
【請求項2】
前記水溶性高分子物質を構成するアクリル酸エステル重合体がカルボキシビニルポリマーおよび (アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーから選ばれた少なくとも1種であり、かつ前記原液に粘度調整剤が含有されることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項3】
前記エアゾール組成物を構成する原液において、水溶性高分子物質の含有割合が0.1〜0.4質量%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアゾール製品。
【請求項4】
前記エアゾール組成物を構成する原液において、エチルアルコールの含有割合が5〜20質量%であり、界面活性剤の含有割合が0.05〜3質量%であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエアゾール製品。
【請求項5】
前記泡沫状の吐出物の気泡が消失されることによって形成されるジェルが無色透明あることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエアゾール製品。
【請求項6】
人体用であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のエアゾール製品。


【公開番号】特開2013−18725(P2013−18725A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151630(P2011−151630)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】