説明

エアタンクの構造

【課題】エアタンク内の空気抜き用のセーフティバルブとエアタンク内に溜まる凝水排出用のドレンバルブとを一体化して、取付け調整が簡単で、且つ部品点数が低減されまた装置の組立て及び製造コストが低減されたエアタンクの構造を提供する。
【解決手段】エアタンク100内の圧力が所定値に達した場合に開弁するセーフティバルブ50と、前記エアタンク100内に溜まる凝水を排出するためのドレンバルブ60を備えてなるエアタンク100の構造において、第1のケーシング2と、第2のケーシング5と、第1の弾性部材3とにより構成されたセーフティバルブ50と、ドレンコック6と、第2の弾性部材4とにより構成されたドレンバルブ60とを組立て一体化したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック、バス等の車両に搭載されるエアタンクの構造に関し、エアタンク内の圧力が所定値に達した場合に開弁するセーフティバルブと、前記エアタンク内に溜まる凝水を排出するためのドレンバルブを備えてなるエアタンクの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、トラック、バス等の車両に搭載されるエアタンク100の、(A)はセーフティバルブ050の構造を、(B)はドレンバルブ060の構造を示す。
図3(A)、(B)に示すように、セーフティバルブ050はエアタンク100の上部に1個、ドレンバルブ060はエアタンク100の下部に1個、それぞれ設けられている。
【0003】
図3(A)のセーフティバルブ050において、エアタンク100の上部にケーシング02がねじ止めされ(02aがねじ止め部)ており、エアタンク100内が所定圧を超えると、ケーシング02と上部ケーシング05との間に介装され、上部ケーシング05を下方に付勢するスプリング03のばね力に抗して、受圧部05bにかかる圧力Pにより該受圧部05bが上動し、該受圧部05bに連結された上部ケーシング05のシール部材05aが前記ケーシング02上端部のシール面02cから離間して、該シール部材05aとシール面02cとの間の隙間から空気が抜き出せる。
【0004】
一方、図3(B)のドレンバルブ060において、エアタンク100の下部にケーシング05がねじ止めされ(05aがねじ止め部)ており、ばね04はドレンコック06をドレンコック受07のシール面に当接させる方向に付勢している。09は前記ドレンコック受07の抜け止め用のスナップリングである。
前記ドレンコック06を開く場合には、ドレンコック06の下部に取り付けたリング08を、左右に振り、前記ドレンコック06とドレンコック受07との間に、隙間を形成して該隙間からドレンを行う。
【0005】
また、特許文献1(特開平9−188243号公報)には、トラック、バス等の車両に搭載されるエアタンク13の水抜き構造が示されている。該水抜き構造は、圧力スイッチ23とドレンバルブ22とを組み合わせたもので、セーフティバルブは示されていない。
【0006】
【特許文献1】特開平9−188243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のトラック、バス等の車両に搭載されるエアタンク100においては、図3(A)、(B)に示すように、空気抜き用のセーフティバルブ050はエアタンク100の上部に1個、ドレン水抜き用のドレンバルブ060はエアタンク100の下部に1個、それぞれ別個に設けられている。
従って、かかる従来技術にあっては、エアタンク100には、セーフティバルブ及びドレンバルブの取付け口数が上下に2箇所あるため、取付け調整が面倒で、且つ部品点数が多くまた装置の組立て及び製造コストがかかる。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、エアタンク内の空気抜き用のセーフティバルブとエアタンク内に溜まる凝水排出用のドレンバルブとを一体化して、取付け調整が簡単で、且つ部品点数が低減されまた装置の組立て及び製造コストが低減されたエアタンクの構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、エアタンク内の圧力が所定値に達した場合に開弁するセーフティバルブと、
前記エアタンク内に溜まる凝水を排出するためのドレンバルブを備えてなるエアタンクの構造において、
前記セーフティバルブは、前記エアタンクの下部に取り付けられるシール部材を有する第1のケーシングと、該第1のケーシングの内部に収容されるとともに前記エアタンク内の圧力を受圧する受圧部、当該受圧部から下方に延びる中空部、及び該中空部の下部から拡径して前記ドレンバルブを内部に収容するドレンバルブ収容部により構成される第2のケーシングと、前記第1のケーシングと第2のケーシングとの間に介装され、前記エアタンク内の圧力が所定圧に達していない場合に前記第2のケーシングを前記シール部材に当接させる方向に付勢し、所定圧に達した場には前記第2のケーシングを前記シール部材から離間させる第1の弾性部材により構成され、
前記ドレンバルブは、前記中空部の下方に設けられ前記ドレンバルブ収容部に収容されるドレンコックと、前記ドレンバルブ収容部とドレンコックとの間に介装され、ドレンコックをドレンバルブ収容部のシール部材に当接させる方向に付勢する第2の弾性部材とにより構成されたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、好ましくは、前記第2のケーシングに、前記第1のケーシングのシール部材に前記第2のケーシングが当接している際に、第1のケーシングに流入する凝水を前記ドレンバルブ収容部に排出する連通孔を設ける。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エアタンク内の圧力が所定値に達した場合に開弁するセーフティバルブと、前記エアタンク内に溜まる凝水を排出するためのドレンバルブを備えてなるエアタンクの構造において、
前記セーフティバルブは、前記エアタンクの下部に取り付けられるシール部材を有する第1のケーシングと、該第1のケーシングの内部に収容されるとともに前記エアタンク内の圧力を受圧する受圧部、当該受圧部から下方に延びる中空部、及び該中空部の下部から拡径して前記ドレンバルブを内部に収容するドレンバルブ収容部により構成される第2のケーシングと、前記第1のケーシングと第2のケーシングとの間に介装され、前記エアタンク内の圧力が所定圧に達していない場合に前記第2のケーシングを前記シール部材に当接させる方向に付勢し、所定圧に達した場には前記第2のケーシングを前記シール部材から離間させる第1の弾性部材により構成され、
また、前記ドレンバルブは、前記中空部の下方に設けられ前記ドレンバルブ収容部に収容されるドレンコックと、前記ドレンバルブ収容部とドレンコックとの間に介装され、ドレンコックをドレンバルブ収容部のシール部材に当接させる方向に付勢する第2の弾性部材とにより構成されており、
かかる構成により、エアタンク内の圧力が所定値に達した場合に開弁するセーフティバルブと、エアタンク内に溜まる凝水を排出するためのドレンバルブとを、1体にしてエアタンクの下部に取り付けたので、セーフティバルブとドレンバルブとが1個で済み、従来技術のようなセーフティバルブをエアタンクの上部に設置しドレンバルブをエアタンクの下部に設置したものに比べて、セーフティバルブ及びドレンバルブの個数が減り、該セーフティバルブ及びドレンバルブの取付け口数が1箇所で済む。
【0012】
従って、セーフティバルブとドレンバルブとを1体とすることにより、前記部品点数が従来技術の約半分になり、且つ1箇所で組付けられるので組立て及び製造コストが低減される。
【0013】
また、前記のように、セーフティバルブは構成されていて、エアタンクの下部に取り付けられているので、エアの抜き出し時には、中空部の下部から拡径した部位で側方に屈曲してエアが流れ出るようになっており、エアの抜き出しに対して安全である。
【0014】
また、本発明は、前記第2のケーシングに、前記第1のケーシングのシール部材に前記第2のケーシングが当接している際に、第1のケーシングに流入する凝水を前記ドレンバルブ収容部に排出する連通孔を設けるので、セーフティバルブ側に流入した凝水がドレンバルブ収容部側に排出されることとなり、セーフティバルブ側に凝水が溜まるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0016】
図1(A)は、本発明の実施例にかかるエアタンクの外観図、(B)はセーフティバルブとドレンバルブの一体型のセーフティバルブ付きドレンコックの断面図である。図2は前記セーフティバルブ付きドレンコックのセーフティバルブが開いたときの断面図である。
【0017】
図1及び図3において、エアタンク100は、該エアタンク100内の圧力が所定値に達した場合に開弁するセーフティバルブ50及び該エアタンク100内に溜まる凝水を排出するためのドレンバルブ60を備えている。後述のように、セーフティバルブ50及びドレンバルブ60が1体化されたセーフティバルブ付きドレンコック1に構成され、該セーフティバルブ付きドレンコック1を、エアタンク100の下部に装着している。
【0018】
前記セーフティバルブ50は、前記エアタンク100の下部板101に螺着された第1のケーシング2を備えており、該第1のケーシング2は下側に環状のシール部材2aを有し、該シール部材2aが、第2のケーシング5の上面のシール面5dに当接するようになっている。
また、第2のケーシング5は、該第1のケーシング2の内部に収容されて、前記エアタンク100内の圧力Pを受圧する上端部の受圧部5aと、該受圧部5aから下方に延びる中空部5bと、及び該中空部5bの下部から円筒状に拡径し、内部にドレンコック6が収納されるドレンバルブ収容部5cにより構成される。
【0019】
また、第1のスプリング3(第1の弾性部材)は、前記第1のケーシング2の下端面2cと第2のケーシング5の受圧部5aとの間に介装されており、第1のケージング2に対して第2のケージング5を上方に付勢している。
そして、該第1のスプリング3は、前記エアタンク100内の圧力Pが所定圧に達していない場合には、前記シール部材2aに、前記第2のケーシング5のシール面5dを当接させる方向に付勢し、所定圧に達した場合には、前記シール部材2aから前記第2のケーシング5を離間させるようになっている。
【0020】
図2は前記セーフティバルブ付きドレンコック1のセーフティバルブ50が開いたときの断面図であり、前記受圧部5a及び中空部5bからドレンバルブ収容部5cへ流入し、ドレンコック6の上面6aなどにかかる圧力Pが所定圧に達した場合には、前記第2のケーシング5を下動させてシール面5dを下げて、該シール部材2aをシール面5dから距離Lだけ、離間させるようになっている。
従って、前記セーフティバルブ50は、前記エアタンク100内の圧力Pにより前記受圧部5aにかかる圧力が予め設定された所定圧に達した場合には、前記第2のケーシング5シール部材2aを前記シール面5dから、距離Lだけ離間させて、該離間Lを通して空気抜き(空気流を破線で示す)を行うようになっている。
【0021】
また、前記ドレンバルブ60は、前記中空部5bの下方に設けられて、前記ドレンバルブ収容部5cに収容されるドレンコック6と該ドレンコック受7と、第2のスプリング4(第2の弾性部材)とを備えている。
前記第2のスプリング4は、前記ドレンバルブ収容部5cの上面5fとドレンコック6との間に介装され、ドレンコック6をドレンコック受7のシール面7gに当接させる方向に付勢している。9は前記ドレンコック受7の抜け止め用のスナップリングである。
【0022】
また、前記第2のケーシング5の上部には、前記第1のケーシング2のシール部材2aとシール面5dとが当接している際に、第1のケーシング2に流入する凝水を前記ドレンバルブ収容部5c内に排出する複数の連通孔10を設けている。
従って、複数の連通孔10を設けたことにより、セーフティバルブ50側に流入した凝水がドレンバルブ収容部5c側に排出されることとなり、セーフティバルブ50側に凝水が溜まるのを防止できる。
併って、第1のスプリング3が凝水に浸かることによる第1のスプリング3のサビの発生を防止することができ、エアタンク100内の圧力が所定値に達した場合に開弁することができる。
【0023】
以上の実施例では、前記セーフティバルブ50において、自動エア抜きは、前記エアタンク100内の圧力により前記受圧部5aにかかる圧力が予め設定された所定圧に達した場合、図2に示すように、前記第1のケーシング2のシール部材2aと第2のケーシング5のシール面5dとを、距離Lだけ離間させて、該離間Lを通して空気抜き(空気流を破線で示す)を行うこととなる。
また、前記ドレンコック6を開く場合には、ドレンコック6の下部に取り付けたリング8を、左右に振り、前記ドレンコック6とドレンコック受7との間に、隙間を形成して該隙間からドレンを行う。
【0024】
かかる実施例によれば、エアタンク100内の圧力が所定値に達した場合に開弁するセーフティバルブ50と、エアタンク100内に溜まる凝水を排出するためのドレンバルブ60とを、1体にしてエアタンク100の下部に取り付けたので、セーフティバルブ50とドレンバルブ60とが1個で済み、従来技術のようなセーフティバルブ50をエアタンク100の上部に設置し、ドレンバルブ60をエアタンク100の下部に設置したものに比べて、セーフティバルブ50及びドレンバルブ60の個数が減り、該セーフティバルブ50及びドレンバルブ60の取付け口数が1箇所で済む。
【0025】
従って、セーフティバルブ50とドレンバルブ60とを1体とすることにより、前記部品点数が従来技術の約半分になり、且つ1箇所で組付けられるので組立て及び製造コストが低減される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、エアタンク内の空気抜き用のセーフティバルブとエアタンク内に溜まる凝水排出用のドレンバルブとを一体化して、取付け調整が簡単で、且つ部品点数が低減されまた装置の組立て及び製造コストが低減されたエアタンクの構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)は、本発明の実施例にかかるエアタンクの外観図、(B)はセーフティバルブとドレンバルブの一体型のセーフティバルブ付きドレンコックの断面図である。
【図2】本発明の実施例にかかるセーフティバルブ付きドレンコックのセーフティバルブが開いたときの断面図である。
【図3】従来技術にかかるエアタンクの、(A)はセーフティバルブの構造を、(B)はドレンバルブの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 セーフティバルブ付きドレンコック
2 第1のケーシング
2a シール部材
5d シール面
3 第1のスプリング(第1の弾性部材)
4 第2のスプリング(第2の弾性部材)
5 第2のケーシング
5a 受圧部
5b 中空部
5c ドレンバルブ収容部
6 ドレンコック
7 ドレンコック受
8 リング
10 連通孔
50 セーフティバルブ
60 ドレンバルブ
100 エアタンク
101 下部板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアタンク内の圧力が所定値に達した場合に開弁するセーフティバルブと、前記エアタンク内に溜まる凝水を排出するためのドレンバルブを備えてなるエアタンクの構造において、
前記セーフティバルブは、前記エアタンクの下部に取り付けられるシール部材を有する第1のケーシングと、
該第1のケーシングの内部に収容されるとともに前記エアタンク内の圧力を受圧する受圧部、当該受圧部から下方に延びる中空部、及び該中空部の下部から拡径して前記ドレンバルブを内部に収容するドレンバルブ収容部により構成される第2のケーシングと、
前記第1のケーシングと第2のケーシングとの間に介装され、前記エアタンク内の圧力が所定圧に達していない場合に前記第2のケーシングを前記シール部材に当接させる方向に付勢し、所定圧に達した場合には前記第2のケーシングを前記シール部材から離間させる第1の弾性部材とにより構成され、
前記ドレンバルブは、前記中空部の下方に設けられ前記ドレンバルブ収容部に収容されるドレンコックと、
前記ドレンバルブ収容部とドレンコックとの間に介装され、ドレンコックをドレンバルブ収容部のシール部材に当接させる方向に付勢する第2の弾性部材とにより構成されたことを特徴とするエアタンクの構造。
【請求項2】
前記第2のケーシングに、前記第1のケーシングのシール部材に前記第2のケーシングが当接している際に、第1のケーシングに流入する凝水を前記ドレンバルブ収容部に排出する連通孔を設けたことを特徴とする請求項1記載のエアタンクの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−156422(P2010−156422A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335290(P2008−335290)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】