説明

エアドライヤの排気ポート構造

【課題】停車状態でのエアドライヤのエア放出時における液滴の滴下による汚れを従来よりも著しく低減し得るエアドライヤの排気ポート構造を提供する。
【解決手段】ドライヤ本体1下部の排気ポート4にエア放出時の騒音を抑制するサイレンサ5を備え、該サイレンサ5にエア放出時の油分を含む水分の周囲への飛散を防ぐガイド筒7を装着したエアドライヤの排気ポート構造に関し、ガイド筒7の最下部位10の縦断面形状が先の尖った先鋭形状を成すように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアドライヤの排気ポート構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラック等の車輌においては、空気を圧縮するコンプレッサと、該コンプレッサから供給される圧縮空気を除湿するエアドライヤと、該エアドライヤからの除湿された圧縮空気をチェックバルブを介して貯蔵するエアタンクとが、主としてブレーキ圧力源を確保するために搭載されている。
【0003】
図7はエアドライヤの概要を説明するための概略図を示し、ドライヤ本体1の内部下方にオイルフィルタが備えられていると共に、その内部上方には乾燥剤を充填した分離筒が備えられており、また、ドライヤ本体1の一側にコンプレッサに連通するエア導入口2が備えられ、その他側にはエアタンクに連通するエア供給口3が備えられている。
【0004】
そして、コンプレッサからエアタンクへエアを供給する際には、エアをコンプレッサからエア導入口2を介してドライヤ本体1内に導入し、エアの油分をオイルフィルタを通して除去すると共に、エアの水分を分離筒を通して除去するようにしており、然る後、ドライヤ本体1内からエア供給口3を介してエアをエアタンクへ供給するようにしている。
【0005】
また、エアから除去された水分の一部は、油分を含んだ状態でドライヤ本体1内の底部に溜り、エアタンクの圧力が設定値を超えてコンプレッサがアンロードの状態になった際に、ドライヤ本体1の開放弁を開けて分離筒内を大気開放することが自動的に行われ、これにより乾燥したエアが逆流することでオイルフィルタ及び分離筒の乾燥剤が清浄化され、油分を含んだ水分が排気ポート4からサイレンサ5を介して大気中へ放出されるようになっている。
【0006】
ここで、前記サイレンサ5の下部周囲には、エアを拡散して放出し得るよう多数のスリット6が形成されており、しかも、その内部には図示しない消音材が収容されるようになっていて、エアを大気中へ放出する際における騒音を極力低減し得るようにしてある。
【0007】
前述の如きサイレンサ5を備えたエアドライヤにあっては、エアを大気中へ放出する際に、油分を含む水分が周囲に飛散して車輌側の周辺機器や部材が油分で汚れてしまうという問題があったため、近年においては、業界内の自主対応として、サイレンサ5にガイド筒7を設け、油分を含む水分の周囲への飛散を前記ガイド筒7により防ぐようにしている。
【0008】
前記ガイド筒7には、ゴム製又は樹脂製のホースから成る別品のガイド筒7を採用したり、サイレンサ5と一体的に成形したガイド筒7を採用したりすることが可能であるが、ここに図示する例においては、ゴム製又は樹脂製のホースから成る別品のガイド筒7を採用した場合で例示している。
【0009】
尚、この種のエアドライヤにおけるエアの放出に関連する先行技術文献情報としては、例えば、下記の特許文献1及び特許文献2等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−66470号公報
【特許文献2】実公平7−8020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、斯かる従来構造にあっては、ガイド筒7の下端が単純に水平面で切断した形状となっていたため、図8に図7のVIII−VIII方向の矢視図を示すように、ガイド筒7の下端に水平な環状端面8ができてしまい、エアの放出時にガイド筒7の内周面に衝突して流下した液滴9が前記環状端面8の周方向複数箇所に溜まり易く、エアの放出が繰り返されるたびに徐々に成長して大きな液滴9となり、停車して荷役作業等を行っている際に、新たなエアの放出等をきっかけとして前記環状端面8から多量の液滴9が滴下し、積荷の搬入搬出先等で地面を広範囲に亘り色濃く汚してしまうことがあった。
【0012】
例えば、積荷の搬入搬出先が、食品や薬品を扱う工場、生鮮食料品を扱う市場、医療施設等のように衛生管理の厳しい施設である場合には、前述の如きエアドライヤのエア放出時における液滴9の滴下による汚れが大きな問題として指摘されるようになってきており、改善を求める声が高まっている。
【0013】
本発明は、上述の実情に鑑みてなしたもので、停車状態でのエアドライヤのエア放出時における液滴の滴下による汚れを従来よりも著しく低減し得るエアドライヤの排気ポート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ドライヤ本体下部の排気ポートに備えられてエア放出時の騒音を抑制するサイレンサと、該サイレンサに備えられてエア放出時の油分を含む水分の周囲への飛散を防ぐガイド筒とを有するエアドライヤの排気ポート構造において、ガイド筒の最下部位の縦断面形状が下方向きに先の尖った先鋭形状を成すように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
而して、このようにすれば、ガイド筒の最下部位の縦断面形状が先の尖った先鋭形状となることで、前記ガイド筒の下端に従来の如き水平な環状端面が形成されなくなり、エアの放出時にガイド筒の内周面に衝突した液滴が前記ガイド筒の下端まで流下しても、該ガイド筒の下端に留まることなく放出エアの勢いで振るい落とされることになる。
【0016】
この時、車輌が停車しているタイミングであったとしても、それ以前に行われたエアの放出による液滴は、もはやガイド筒の下端には残っていないため、ガイド筒から振るい落とされる液滴は1回分のエアの放出でガイド筒の内周面に衝突して流下した僅かな量だけであり、従来のように、それまでに溜まった多量の液滴が一度に滴下して地面を広範囲に亘り色濃く汚してしまう事態が起こらなくなる。
【0017】
尚、更に付言しておけば、エア放出時の油分を含む水分の多くは、ミスト状になってガイド筒の内周面に衝突しないまま大気中に放散されるので、1回分のエアの放出でガイド筒の内周面に衝突して流下する液滴の量が極めて少ないことは確かである。
【0018】
また、本発明においては、ガイド筒の最下部位の直上に前記ガイド筒の口径を下方向きに徐々に縮小する絞り部が形成されていることが好ましく、このようにすれば、絞り部によりガイド筒の流路断面積が絞り込まれてエア放出時の流速が高まり、放出エアの勢いを利用して効果的に液滴を振るい落とすことが可能となる。
【0019】
更に、本発明においては、ガイド筒の最下部位が下端を水平面で切断され且つ該下端に向かうに従い前記ガイド筒の肉厚が徐々に減少するようにして先鋭形状を付されていたり、ガイド筒の最下部位が下端を斜めに切断されて先鋭形状を付されていたりしても良い。
【0020】
また、本発明においては、ガイド筒がガイド筒本体と該ガイド筒本体の下端に内嵌装着可能な挿入管とに分割構成され、該挿入管の下側部分が前記ガイド筒の最下部位を成して先鋭形状を付されていても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明のエアドライヤの排気ポート構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0022】
(I)停車状態でのエアドライヤのエア放出時に多量の液滴が一度に滴下して地面を広範囲に亘り色濃く汚してしまう事態を未然に回避することができ、ガイド筒から滴下する液滴をエア放出1回分の僅かな量に抑えることができるので、液滴の滴下による汚れを従来よりも著しく低減することができる。
【0023】
(II)ガイド筒の最下部位の直上に前記ガイド筒の口径を下方向きに徐々に縮小する絞り部を形成すれば、該絞り部により流速を高められた放出エアの勢いを利用して効果的に液滴を振るい落とすことができるので、該ガイド筒の下端に液滴が留まる虞れを更に低減することができ、停車状態でのエアドライヤのエア放出時に多量の液滴が一度に滴下して地面を広範囲に亘り色濃く汚してしまう事態をより一層確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施例を示す部分断面図である。
【図2】本発明の第二実施例を示す断面図である。
【図3】ガイド筒の最下部位の下端を大きな傾斜角度で切断した時の断面図である。
【図4】本発明の第三実施例を示す断面図である。
【図5】本発明の第四実施例を示す断面図である。
【図6】本発明の第五実施例を示す断面図である。
【図7】従来例を示す部分断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII方向の矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0026】
図1は本発明の第一実施例を示すもので、前述した図7及び図8の従来例の場合と同様に、ドライヤ本体1下部の排気ポート4に備えられてエア放出時の騒音を抑制するサイレンサ5と、該サイレンサ5に備えられてエア放出時の油分を含む水分の周囲への飛散を防ぐガイド筒7とを有するエアドライヤを対象とし、ガイド筒7の最下部位10の縦断面形状が下方向きに先の尖った先鋭形状を成すように構成されているところを特徴としており、より具体的には、ガイド筒7の最下部位10が下端を水平面で切断され且つ該下端に向かうに従い前記ガイド筒7の肉厚が徐々に減少するようにして先鋭形状が付されている。尚、ガイド筒7の最下部位10の下端における肉厚は、0.5mm〜2.5mm程度まで減少させておくことが好ましい。
【0027】
また、ここに図示している例においては、ガイド筒7の最下部位10の直上に前記ガイド筒7の口径を下方向きに徐々に縮小する絞り部11が形成されており、該絞り部11によりガイド筒7の流路断面積が絞り込まれてエア放出時の流速が高まるようにしてあるが、エアの放出に過剰な排気抵抗を与えない適切な流路断面積は確保されるようになっている。例えば、一般的なエアドライヤの場合で15mm〜35mm程度の口径が確保されるようにしておくと良い。
【0028】
而して、このようにすれば、ガイド筒7の最下部位10の縦断面形状が先の尖った先鋭形状となることで、前記ガイド筒7の下端に従来の如き水平な環状端面が形成されなくなり、エアの放出時にガイド筒7の内周面に衝突した液滴9が前記ガイド筒7の下端まで流下しても、該ガイド筒7の下端に留まることなく放出エアの勢いで振るい落とされることになる。
【0029】
特に本実施例の場合には、ガイド筒7の最下部位10の直上に前記ガイド筒7の口径を下方向きに徐々に縮小する絞り部11を形成しているので、この絞り部11によりガイド筒7の流路断面積が絞り込まれてエア放出時の流速が高まり、エアの放出時にガイド筒7の内周面に衝突して流下した液滴9を、放出エアの勢いを利用して効果的に振るい落とすことが可能となる。
【0030】
この時、トラック等の車輌が積荷の搬入搬出先で停車して荷役作業等を行っているタイミングであったとしても、それ以前に行われたエアの放出による液滴9は、もはやガイド筒7の下端には残っていないため、ガイド筒7から振るい落とされる液滴9は1回分のエアの放出でガイド筒7の内周面に衝突して流下した僅かな量だけであり、従来のように、それまでに溜まった多量の液滴9が一度に滴下して搬入搬出先の地面を広範囲に亘り色濃く汚してしまう事態が起こらなくなる。
【0031】
尚、更に付言しておけば、エア放出時の油分を含む水分の多くは、ミスト状になってガイド筒7の内周面に衝突しないまま大気中に放散されるので、1回分のエアの放出でガイド筒7の内周面に衝突して流下する液滴9の量が極めて少ないことは確かであり、図示では説明の便宜上からガイド筒7の内周面を流下する液滴9を大きく図示している。
【0032】
従って、上記実施例によれば、停車状態でのエアドライヤのエア放出時に多量の液滴9が一度に滴下して積荷の搬入搬出先等における地面を広範囲に亘り色濃く汚してしまう事態を未然に回避することができ、ガイド筒7から滴下する液滴9をエア放出1回分の僅かな量に抑えることができるので、液滴9の滴下による汚れを従来よりも著しく低減することができる。
【0033】
また、特に本実施例の場合は、絞り部11により流速を高められた放出エアの勢いを利用して効果的に液滴9を振るい落とすことができるので、該ガイド筒7の下端に液滴9が留まる虞れを更に低減することができ、停車状態でのエアドライヤのエア放出時に多量の液滴9が一度に滴下して地面を広範囲に亘り色濃く汚してしまう事態をより一層確実に回避することができる。
【0034】
図2は本発明の第二実施例を示すもので、この第二実施例においては、ガイド筒7の最下部位10が下端を斜めに切断されて先鋭形状を付されるようになっており、その傾斜角度θ(水平面に対する傾斜角度)は20゜〜60゜程度とすることが好ましく、この範囲を超えて傾斜角度θを大きくすると、図3に例示する如く、ガイド筒7の下端が下方へ長く延びて車輌への搭載性が悪くなってしまう。
【0035】
ただし、ガイド筒7の下端を斜めに切断するにあたっては、先の図2のように単一の切断面で切断する以外に、図4に第三実施例として示す如く、傾斜角度θの異なる複数の切断面を連続させて段階的に傾斜させるようにしても良く、このようにすれば、車輌への搭載性を悪化させることなく、ガイド筒7の最終的な最下部位10の傾斜角度θを限りなく90゜に近付けることが可能となる。
【0036】
図5は本発明の第四実施例を示すもので、この第四実施例においては、ガイド筒7がガイド筒本体12と該ガイド筒本体12の下端に内嵌装着可能な挿入管13とに分割構成され、該挿入管13の下側部分が前記ガイド筒7の最下部位10を成して先鋭形状を付されるようになっており、ここでは、前記挿入管13の下側部分を斜めに切断することで先鋭形状を付している。
【0037】
更に、図6に第五実施例として示す如く、先の図5の挿入管13における先鋭形状を付した下側部分の直上に絞り部11を形成した構成としても良く、これら図5及び図6の如きガイド筒7をガイド筒本体12と挿入管13とに分割構成されたものとすれば、極めて簡易に既存設備を改造することが可能となる。
【0038】
尚、本発明のエアドライヤの排気ポート構造は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、絞り部は必要に応じて併用すれば良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 ドライヤ本体
4 排気ポート
5 サイレンサ
7 ガイド筒
9 液滴
10 最下部位
11 絞り部
12 ガイド筒本体
13 挿入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライヤ本体下部の排気ポートに備えられてエア放出時の騒音を抑制するサイレンサと、該サイレンサに備えられてエア放出時の油分を含む水分の周囲への飛散を防ぐガイド筒とを有するエアドライヤの排気ポート構造において、ガイド筒の最下部位の縦断面形状が下方向きに先の尖った先鋭形状を成すように構成されていることを特徴とするエアドライヤの排気ポート構造。
【請求項2】
ガイド筒の最下部位の直上に前記ガイド筒の口径を下方向きに徐々に縮小する絞り部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアドライヤの排気ポート構造。
【請求項3】
ガイド筒の最下部位が下端を水平面で切断され且つ該下端に向かうに従い前記ガイド筒の肉厚が徐々に減少するようにして先鋭形状を付されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアドライヤの排気ポート構造。
【請求項4】
ガイド筒の最下部位が下端を斜めに切断されて先鋭形状を付されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアドライヤの排気ポート構造。
【請求項5】
ガイド筒がガイド筒本体と該ガイド筒本体の下端に内嵌装着可能な挿入管とに分割構成され、該挿入管の下側部分が前記ガイド筒の最下部位を成して先鋭形状を付されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のエアドライヤの排気ポート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107038(P2013−107038A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253595(P2011−253595)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】