説明

エアドーム固定装置および容器

【課題】エアドームの下端部を固定する際の制限を少なくする。
【解決手段】エア吹込みにより凸状に変形されるエアドーム1の外周部を固定するための固定装置であって、上記エアドーム1を構成するシート5の外周部5aとネット6の外周部6aが巻き付けられる被巻付部材20、21と、上記被巻付部材20、21が入る凹溝14、15を底面10bに有し、その底面10bで該シート5の外周部5aとネット6の外周部6aを下側の被取付面4に押し付ける給排水可能な容器10とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプールの外側を覆うように設けられるエアドームの下端部を固定するためのエアドーム固定装置および給排水可能な容器に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したエアドームを固定する手法として、エアドームの下端部を被固定面にアンカーにより係止する手法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭48−14891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したようにアンカーによりエアドームの下端部を固定する場合には、アンカーを打ち込むためのスペースや、打ち込み可能な地面などが要求され、エアドームの下端部を固定する箇所に種々の制限があった。
【0004】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、エアドームの下端部を固定する際の制限を少なくすることができるエアドーム固定装置および容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のエアドーム固定装置は、エア吹込みにより凸状に変形されるエアドームの外周部を固定するための固定装置であって、上記エアドームの外周部が巻き付けられる被巻付部材と、上記被巻付部材が入る凹溝を底面に有し、その底面で該エアドームの外周部を下側の被取付面に押し付ける給排水可能な容器とを具備することを特徴とする。
【0006】
請求項2のエアドーム固定装置は、請求項1に記載のエアドーム固定装置において、前記エアドームは、外周部が固定されてエア吹込みにより凸状に変形されるシートと、該シートの上側に設けられかつ外周部が固定されて該シートの広がりを抑制するためのネットとを有し、前記被巻付部材としてシート用とネット用の2つ備え、かつ前記容器の底面にはシート用被巻付部材とネット用被巻付部材のそれぞれが別々に入る一対の凹溝が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3のエアドーム固定装置は、請求項2に記載のエアドーム固定装置において、前記ネットの上側にはネットを固定するためのロープが設けられ、そのロープが前記容器に形成されたロープ取付部に係止されることを特徴とする。
【0008】
請求項4のエアドーム固定装置は、請求項3に記載のエアドーム固定装置において、前記容器の天井面に形成された持運び用取手が前記ロープ取付部に兼用されていることを特徴とする。
【0009】
請求項5の容器は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のエアドーム固定装置に用いられる給排水可能な容器であって、上記エアドームの外周部が巻き付けられる被巻付部材が入る凹溝を底面に有し、その底面で該エアドームの外周部を下側の被取付面に押し付けるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の固定装置または容器による場合には、エアドームの外周部が巻き付けられた被巻付部材が凹溝に入る状態で、容器をエアドーム外周部の上に載せる。この状態において、給水により容器を重くしておくことで、エアドーム外周部を容器の底面で被取付面に押付けることができる。また、エアドームの外周部を被巻付部材に巻き付ける、例えば少なくとも1重以上で巻き付けることにより、エアドームに外周部が内側へ引っ張られて容器の底面から抜出る力が作用しても、被巻付部材に巻付けられたエアドーム外周部が巻き締まるとともに被巻付部材が凹溝内に保持される。その結果、エアドーム外周部を容器の底面で固定することが可能になる。よって、アンカーによりエアドームの下端部を固定する場合のようにアンカーを打ち込むためのスペースや、打ち込み可能な地面などの要求がなく、エアドームの下端部を固定する際の制限を少なくすることができる。
【0011】
請求項2による場合には、エアドームがシートとネットとからなるときに、シートとネットの外周部を各被巻付部材に巻き付け、これら2つの被巻付部材のそれぞれが凹溝に入った状態でエアドームの外周部の上に給水状態の重い容器を載せることで、エアドーム外周部を容器の底面で固定することができる。
【0012】
請求項3による場合には、更にネットの上側にネットを固定するためのロープを設ける構成のときは、そのロープを容器に形成されたロープ取付部に係止することで、容易にロープの固定が可能になる。
【0013】
請求項4による場合には、容器の天井面に形成された持運び用取手をロープ取付部に兼用することにより、ロープ取付部を別途設ける必要がなく、容器の構成を簡略にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を具体的に説明する。
【0015】
図1は本発明のエアドーム固定装置をプール覆い用のエアドームに適用した例を示す斜視図、図2はそのエアドームを固定する本実施形態に係るエアドーム固定用容器を示す正面図である。
【0016】
このエアドーム1は、図1に示すように矩形状をしたプール2の周囲を取り囲むように設けられていて、内側にエアを吹き込み膨らませた概略蒲鉾形状に形成されており、エアドーム1の下端部3は矩形状をなしてプールサイドである被取付面4に固定されている。また、エアドーム1は、図2に示すように内側からシート5とネット6とを有する構成であり、シート5とネット6はエアドーム1と同様の形状とされている。このエアドーム1のネット6の上には、ネット6を固定するためのロープ7が、例えば図1に一点鎖線で示されるようにエアドーム1を横切るように張り巡らされる。更に、エアドーム1の側面には共に図示しない出入り口とエア吹込み用の送風機とが設けられる。
【0017】
シート5の外周部5a、ネット6の外周部6aおよびロープ7の係止部7aは、それぞれエアドーム固定用容器10に固定されている。なお、係止部7aとしては、ロープ7の端部または途中部分が該当する。
【0018】
上記容器10は、エアドーム固定用の給排水可能な軽量なものであって、例えば合成樹脂により作製されている。上部には給水栓11が設けられ、下部には排水栓12が設けられていて、エアドーム1の下端部3の固定を行うときには給水され、上記固定を行わないときは排水される。また、天井面10aには取手13が形成され、底面10bには2つの凹溝14、15が形成されている。更に、底面10bの両端10cは、角落としにより丸く形成されていて、シート5およびネット6の傷付き防止を図っている。
【0019】
容器10の大きさは、水量により重量が決まるので、エアドーム1の下端部3の全長に対して容器10を何個配置するかを考慮して決定すればよい。なお、水を一杯に入れても容器10の重量が下端部3の固定に足りない場合は、容器10を配置するピッチを短くすることで対応可能である。
【0020】
上記取手13は、容器10の持運び用として用いられるとともに、ロープ7の係止部7aを固定するためのロープ取付部としても用いられる。このとき、ロープ7の係止部7aには、取手13に係止されるフック(図示せず)を取付けておくと、ロープ7の係止部7aを簡単に取手13に係止させ得る。
【0021】
図2および図3に示すように、凹溝14には、シート5の外周部5aが巻き付けられた、断面形状で四隅を有する被巻付部材20、例えばC形鋼が入れられ、凹溝15には、ネット6の外周部6aが巻き付けられた、断面形状で四隅を有する被巻付部材21、例えばC形鋼が入れられる。凹溝14の深さL1は、図3に示すように被巻付部材20に巻き付けたシート5の外周部5aの下面と上面との離隔寸法L2よりも若干長い寸法に設定され、凹溝15の深さL3は、被巻付部材21に巻き付けたネット6の外周部6aの下面と上面との離隔寸法L4よりも若干長い寸法に設定される。これにより、容器10を給水により重くしておくことで、底面10bにおける凹溝14、15以外の部分で、シート5の外周部5aとネット6の外周部6aが被取付面4に上から押し付けられる。
【0022】
上記外周部5aが巻き付けられた被巻付部材20と、外周部6aが巻き付けられた被巻付部材21とは、図4に示すようにエアドーム1の矩形状をした下端部3の一辺が延びる方向Aに平行に並べられ、かつ、方向Aに対して交差する方向、例えば直交方向に所定距離だけ離隔して配される。そして、両被巻付部材20、21に凹溝14、15が入る状態で、容器10を上側から載せることで、以下の作用を発生させる。すなわち、被巻付部材20、21が凹溝14、15内に保持されることに加えて、シート5の外周部5aとネット6の外周部6aが内側に引っ張られて容器10の底面10bから抜出る力が作用しても、シート5の外周部5aとネット6の外周部6aのそれぞれを被巻付部材20、21に、例えば少なくとも1重以上で巻き付けておくことにより、被巻付部材20、21に巻付けられた外周部5a、6aが巻き締まる。なお、被巻付部材20、21としては、引っ張られることで巻き締まりを起こり易くする点で、断面が円形などよりも四隅を有するものが好ましく、特にその四隅も角張っているものが望ましい。
【0023】
このように構成された本実施形態のエアドーム固定装置によるエアドームの組立内容について説明する。
【0024】
プール2の周りに外周部5aが位置するようにシート5を置き、その外周部5aを被巻付部材20に少なくとも1重以上で巻き付ける。続いて、シート5の上にネット6を被せ、ネット6の外周部6aを被巻付部材21に少なくとも1重以上で巻き付ける。このとき、両被巻付部材20、21は、図4で説明したように配置する。
【0025】
続いて、両被巻付部材20、21が凹溝14、15に入る状態で容器10をネット6の外周部6aの上に載せる。
【0026】
その後、図示しない送風機を回転させ、シート5の下にエアを吹き込む。これにより、シート5が上側に膨らんで概略蒲鉾形状になるとともに、ネット6もシート5と同様の形状となる。なお、エアを吹き込む前に、容器10を給水により重くしておく。給水のタイミングは、容器10をネット6の外周部6aの上に載せる前でも後でもよい。
【0027】
しかる後、ネット6の上側にロープ7を張り巡らせ、ロープ7の係止部7aを容器10の取手13に繋ぐ。ここで、取手13に繋ぐ係止部7aとしては、ロープ7が長尺である場合にはロープ7の両端部と1または2以上の途中部分とに相当し、逆に、ロープ7が短尺である場合にはロープ7の両端部のみが相当することもある。
【0028】
したがって、本実施形態による場合には、エアドーム1を構成するシート5とネット6の外周部5a、6aが巻き付けられた被巻付部材20、21が凹溝14、15に入る状態で、容器10を外周部5a、6aの上に載せる。この状態において、給水により容器10を重くしておくことで、外周部5a、6aを容器10の底面10b(凹溝14、15を除く底面10b部分)で被取付面4に押し付けることができる。また、シート5とネット6の外周部5a、6aを被巻付部材20、21に、例えば少なくとも1重以上、好ましくは2重以上で巻き付けることにより、シート5とネット6に、外周部5a、6aが内側へ引っ張られて容器10の底面10bから抜出る力が作用しても、被巻付部材20、21に巻付けられた外周部5a、6aが巻き締まるとともに被巻付部材20、21が凹溝14、15内に保持される。その結果、シート5とネット6の外周部5a、6aを容器10の底面10bで固定することが可能になる。よって、アンカーによりエアドームの下端部を固定する場合のようにアンカーを打ち込むためのスペースや、打ち込み可能な地面などの要求がなく、エアドーム1の下端部3を固定する際の制限を少なくすることができる。
【0029】
なお、上述した実施形態では前記L1を前記L2よりも若干長い寸法に設定し、かつ前記L3を前記L4よりも若干長い寸法に設定し、外周部5a、6aを容器10の底面10b(凹溝14、15を除く底面10b部分)で被取付面4に押し付けるようにしているが、本発明はこれに限らず、前記L1を前記L2とほぼ同一寸法に設定し、かつ前記L3を前記L4とほぼ同一寸法に設定し、凹溝14、15を含む底面10bの全域で外周部5a、6aを被取付面4に押し付けるようにしてもよい。
【0030】
また、上述した実施形態ではシートとネットが別体となったエアドームの固定に適用しているが、本発明はこれに限らず、シートとネットが一体化されたエアドームの固定にも同様に適用することができる。この場合には、被巻付部材は1つでよく、容器の底面に設ける凹溝も1つでよい。
【0031】
更に、上述した実施形態ではロープ取付部としても兼用する持運び用取手の位置を天井面としているが、本発明はこれに限らず、天井面に繋がる4側面のうちのいずれか1面または2面以上にしてもよい。このとき、2面以上に取手を設けておいても、そのうちの一部を係止部として用い、残りを係止部として用いないような使い方をしても構わない。要は、ロープの係止に便利な箇所の取手のみを使用するようにしても構わない。
【0032】
更にまた、上述した実施形態では矩形状のプールを覆う矩形状のエアドームを固定する例につき説明しているが、本発明はこれに限らない。例えば、円形のプールを覆う円形のエアドームを固定する場合にも適用できる。更には、プールに限らず、運動場や菜園などを覆うエアドームの固定にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のエアドーム固定装置をプール覆い用のエアドームに適用した例を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエアドーム固定用容器を示す正面図である。
【図3】被巻付部材を示す平面図である。
【図4】シートとネットの外周部がそれぞれ巻き付けられる被巻付部材の配置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 エアドーム
2 プール
3 下端部
4 被取付面
5 シート
5a 外周部
6 ネット
6a 外周部
7 ロープ
7a 係止部
10 容器
10a 天井面
10b 底面
13 取手(ロープ取付部)
14、15 凹溝
20、21 被巻付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア吹込みにより凸状に変形されるエアドームの外周部を固定するための固定装置であって、
上記エアドームの外周部が巻き付けられる被巻付部材と、
上記被巻付部材が入る凹溝を底面に有し、その底面で該エアドームの外周部を下側の被取付面に押し付ける給排水可能な容器とを具備することを特徴とするエアドーム固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアドーム固定装置において、
前記エアドームは、外周部が固定されてエア吹込みにより凸状に変形されるシートと、該シートの上側に設けられかつ外周部が固定されて該シートの広がりを抑制するためのネットとを有し、
前記被巻付部材としてシート用とネット用の2つ備え、かつ前記容器の底面にはシート用被巻付部材とネット用被巻付部材のそれぞれが別々に入る一対の凹溝が形成されていることを特徴とするエアドーム固定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアドーム固定装置において、
前記ネットの上側にはネットを固定するためのロープが設けられ、そのロープが前記容器に形成されたロープ取付部に係止されることを特徴とするエアドーム固定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエアドーム固定装置において、
前記容器の天井面に形成された持運び用取手が前記ロープ取付部に兼用されていることを特徴とするエアドーム固定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載のエアドーム固定装置に用いられる給排水可能な容器であって、
上記エアドームの外周部が巻き付けられる被巻付部材が入る凹溝を底面に有し、その底面で該エアドームの外周部を下側の被取付面に押し付けるように構成されていることを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−284944(P2007−284944A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111728(P2006−111728)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(501448406)
【Fターム(参考)】