説明

エアバッグ展開装置及びバッテリ電圧確認方法。

【課題】エアバッグ展開装置によるスクイブの展開処理を確実に行うことができるようにしたバッテリ電源の電圧確認方法を提供することである。
【解決手段】複数のスクイブ2を順次的に選択して各スクイブ2にそれぞれ点火用電圧を供給してエアバッグの展開処理を行うエアバッグ展開装置1である。エアバッグ展開装置1は、バッテリ電源20と、スクイブ2に点火用電圧を供給するコンデンサCと、バッテリ電源20の電圧を昇圧する昇圧回路21を含み、この昇圧された電圧によってコンデンサCを充電する充電回路と、バッテリ20の電圧を検出するバッテリ電圧検出手段と、電源投入時に、充電回路を作動させるとともに、バッテリ電圧検出手段からの検出値を入力し、バッテリ電圧検出手段によって得られた充電回路の作動状態中におけるバッテリ電圧が展開処理に最低限必要な所定電圧以上か否かを確認する制御回路22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置を廃棄するために用いられるエアバッグ展開装置であって、複数のスクイブを接続し、各スクイブにそれぞれ点火用電圧を供給するスクイブダイレクト通電方式によりエアバッグ展開(膨張)処理を行うエアバッグ展開装置及び、そのエアバッグ展開装置に備えられるバッテリ電源の電圧確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置を廃棄する際には、エアバッグ装置をステアリングホイールから取り外すことなく、インフレータを起動させることができるエアバッグ装置が提案されている(特開平8−80801号公報参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−80801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、車載電源やECU(電子制御装置)を用いることから、エアバッグ装置の廃棄時に、車載電源が劣化していたり、ECUが破損していた場合に、インフレータを起動できず、エアバッグ装置を廃棄できないという課題が生じる。
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、車載電源やECUを使用せず、スクイブを直接接続し、各スクイブにそれぞれ点火用電圧を供給するスクイブダイレクト通電方式によりエアバッグ展開(膨張)処理を行なうことにより、車載電源の劣化やECUの破損が生じている場合でもエアバッグ装置を廃棄できるエアバッグ展開装置及び、そのエアバッグ展開装置に使用される電池の電圧を確認する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、スクイブを接続し、そのスクイブに点火用電圧を供給してエアバッグの展開処理を行うエアバッグ展開装置であって、バッテリ電源と、前記スクイブに点火用電圧を供給するコンデンサと、前記バッテリ電源の電圧を昇圧し、この昇圧された電圧によって前記コンデンサを充電する充電回路と、前記バッテリの電圧を検出するバッテリ電圧検出手段と、電源投入時に、前記充電回路を作動させるとともに、前記バッテリ電圧検出手段からの検出値を入力し、前記バッテリ電圧検出手段によって得られた充電回路の作動状態中におけるバッテリ電圧が展開処理に最低限必要な所定電圧以上か否かを確認する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記の如く、本発明に係るエアバッグ展開装置はバッテリ電源を備えており、且つ、バッテリ電源によって充電されるコンデンサによってスクイブ点火用電圧を供給するように構成されているので、従来例のように車載電源やECUを使用しない。従って、車載電源
の劣化やECUの破損が生じている場合でもエアバッグ装置を確実に廃棄できる。
また、電源投入時に、充電回路を作動させてバッテリ電圧を確認することから、実使用時のバッテリ電圧を確認することができる。従って、例えば、電源投入後の展開処理等の運転動作中にのみバッテリ電圧を検出する場合に比べて、バッテリ電圧の確認が正確であり、そのため、確実に展開処理を行うことができる。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のエアバッグ展開装置であって、バッテリの電圧不足を表示する表示手段を備え、前記制御手段は、バッテリ電圧が前記所定電圧未満であると確認したときは、前記表示手段を駆動してバッテリの電圧不足を表示することを特徴とする。
【0009】
上記構成により、操作者は、目視によりバッテリの電圧不足を知ることができる。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のエアバッグ展開装置であって、前記制御手段は、バッテリ電圧が前記所定電圧未満であると確認したときは、展開処理を動作させないようにすることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、展開処理の確実性が向上する。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、バッテリ電源と、コンデンサと、前記バッテリ電源の電圧を昇圧し、この昇圧された電圧によって前記コンデンサを充電する充電回路とを備えるとともに、スクイブを接続し、前記コンデンサからの点火用電圧をスクイブに供給してエアバッグの展開処理を行うエアバッグ展開装置における電池電圧確認方法であって、電源投入時に、前記充電回路を作動させるステップと、前記充電回路の作動状態中におけるバッテリ電圧を検出するステップと、検出されたバッテリ電圧が展開処理に最低限必要な所定電圧以上か否かを確認するステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
上記構成により、実使用時のバッテリ電圧を確認することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来例のように車載電源やECUを使用しないので、車載電源の劣化やECUの破損が生じている場合でもエアバッグ装置を確実に廃棄できる。
【0015】
また、電源投入時に、充電回路を作動させてバッテリ電圧を確認することから、実使用時のバッテリ電圧を確認することができる。従って、例えば、電源投入後の展開処理等の運転動作中にのみバッテリ電圧を検出する場合に比べて、バッテリ電圧の確認が正確であり、そのため、確実に展開処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は実施の形態に係るエアバッグ展開装置の外観構成を示す平面図であり、図2はその側面図である。エアバッグ展開装置1は展開方式としてスクイブダイレクト通電方式を用いており、そのため、エアバッグ展開装置1の図1における上部には、複数のスクイブ2a〜2h(総称するときは参照符号2で示す。)をそれぞれ直接接続するためのコネクタ部3が備えられている。また、エアバッグ展開装置1の表面には、モードセレクトスイッチ操作片4と、スクイブの展開処理を実行させる展開用作動釦6とが備えられている。
【0018】
モードセレクトスイッチ操作片4は、電源OFFモードと、電源ONモードと、アイドル(診断)モードとを選択的に切り替えるために用いられる。モードセレクトスイッチ操作片4を差し込んだ状態が電源OFFモードであり、モードセレクトスイッチ操作片4を右に少し回転させた状態が電源ONモードであり、さらにモードセレクトスイッチ操作片4を右に回転させた状態がアイドル(診断)モードである。
【0019】
展開用作動釦6は、診断・展開モード設定時に、それを押し込むことにより、展開処理が実行されるようになっている。
【0020】
また、本実施の形態におけるエアバッグ展開装置1は、8個のスクイブ2a〜2hが接続可能であり、一括展開処理できるようになっており、そのため、各スクイブ2a〜2hの正常・異常を操作者に、目視で知らせるために例えばLEDによって実現される複数の表示ランプ7a〜7h(総称するときは参照符号7で示す。)が備えられており、そのうち表示ランプ7aが運転席エアバッグのスクイブ用であり、表示ランプ7bが助手席エアバッグのスクイブ用であり、表示ランプ7cが運転席プリテンショナのスクイブ用であり、表示ランプ7dが助手席プリテンショナのスクイブ用であり、表示ランプ7eが運転席サイドエアバッグのスクイブ用であり、表示ランプ7fが助手席サイドエアバッグのスクイブ用であり、表示ランプ7g,7hが予備のスクイブ用である。なお、複数の表示ランプ7は、例えば正常であれば緑色で点灯し、ショートであれば赤色で点灯し、オープンであれば消灯する。
【0021】
さらに、モードセレクトスイッチ操作片4及び展開用作動釦6に関連して電源表示用ランプ7i,準備中表示用ランプ7j,作動中表示用ランプ7kが備えられている。電源表示用ランプ7iは電池電圧が正常(使用可状態)のとき緑色で点灯し、電池電圧が低下(使用可状態)のとき橙色で点灯し、電池電圧が不良(使用不可状態)のとき赤色で点灯する。
【0022】
また、準備中表示用ランプ7jは、スクイブ診断中に点滅し、診断完了で点灯する。また、作動(展開)釦6の押下後も、展開を開始するまでは点灯を継続し、スクイブに対し通電(展開)を開始したら消灯する。
【0023】
作動中表示用ランプ7kは、作動(展開)処理開始後(作動釦6の押下後1秒後)より点滅し、完了(途中停止を含む)で点灯し、一度作動(点灯)したら、ON(リセットモード)に戻すまではその状態を保持する。
【0024】
上記のようにエアバッグ展開装置1は、複数の表示ランプによって、スクイブの診断結果や、展開処理状態等が目視によって操作者に知らせられるようになっている。
【0025】
図3はエアバッグ展開装置の電気的構成を示すブロック図である。エアバッグ展開装置1は、バッテリ電源20(本実施の形態では開路電圧1.4V、公称電圧1.2Vの電池が4本装着されている。)と、スクイブに点火用電圧を供給するコンデンサCと、バッテリ電源の電圧を昇圧する(本実施の形態では12V)昇圧回路21と、制御回路22と、表示ランプ7a〜7kを駆動表示する表示駆動回路23とを有する。
【0026】
図中、SW1はモードセレクトスイッチ操作片4の電源ONモード用スイッチであり、SW2はモードセレクトスイッチ操作片4のアイドル(診断)モード用スイッチであり、SW3は作動釦6の押圧によってONとされる展開モード用スイッチである。また、図中、D1、D2は逆流防止用ダイオードであり、D3は定電流ダイオードである。この定電流ダイオードD3は、スクイブ診断の際に、スクイブに定電流を流すための機能を果たす。
【0027】
また、図中、Q1はスイッチング用トランジスタであって、制御回路22によってON・OFFが制御されている。このスイッチング用トランジスタQ1がONのときに、昇圧回路21からの電圧によってコンデンサCの充電が開始される。そして、コンデンサCの充電電圧はラインM1を介して制御回路22で検出されるようになっている。また、昇圧回路21は、制御回路22からラインM2を介して昇圧許可信号が与えられたときに、昇圧駆動可能状態となる。なお、バッテリ電源20の電圧は、ラインM3を介して制御回路22で検出されるようになっている。
【0028】
また、図中、Q2a〜Q2hはスイッチング用トランジスタであって、制御回路22によってON・OFFが制御されている。このスイッチング用トランジスタQ2a〜Q2h(総称するときは参照符号Q2で示す)がONのときに、コンデンサCから点火用電圧が対応するスクイブに供給されて、展開が実行される。
【0029】
また、図中、Q3a〜Q3hはスイッチング用トランジスタであって、制御回路22によってON・OFFが制御されている。このスイッチング用トランジスタQ3a〜Q3h(総称するときは参照符号Q2で示す)がONのときに、定電流ダイオードD3からの定電流が対応するスクイブに流れ、そのときのスクイブの端子間電圧がラインM4、増幅回路25を介して制御回路22によって読み取られ、その測定電圧を抵抗値に換算して、スクイブの正常・異常の診断を行っている。
【0030】
また、制御回路22は、図4に示すように、CPU30と、システムプログラムや後述する高基準電圧値Vh及び低基準電圧値Vl、スクイブの抵抗値に応じたコンデンサの充電電圧及び展開時間等が記憶されたROM31と、RAM32と、複数のタイマTと、アナログ/デジタル変換回路33,34と、入力ポート35と、出力ポート36とから構成されている。なお、ROM31は例えばEPROMを用いてもよく、RAM32は例えばDRAMを用いてもよく、また、他種のメモリ(例えばEEPROM、SRAM、フラッシュメモリ等)を任意に用いてもよい。
【0031】
なお、昇圧回路21及びスイッチング用トランジスタQ1等によって充電回路が構成されている。
【0032】
次いで、上記構成のエアバッグ展開装置1の動作について説明する。エアバッグ展開装置1は、基本的には、図5に示す電池電圧確認処理と、図6に示すスクイブ診断・展開処理を行う。
【0033】
(電池電圧確認処理)
図5は電池電圧確認の処理を示すフローチャートである。図5を参照して、電池電圧確認処理を説明する。電源投入のため、モードセレクトスイッチ操作片4の操作によってスイッチSW1がONになると(ステップS1)、表示用ランプ7の確認のため、全ての表示用ランプ7を点灯する(ステップS2)。なお、点灯時間は、確認に要する時間として本実施の形態では2秒間とされている。この点灯時間はタイマTによって時間管理されている。その他の電池電圧確認処理における時間管理や、後述するスクイブ診断・展開処理における時間管理も、タイマTによって行われる。
【0034】
次いで、スイッチSW1のON後、0.5秒経過したか否かが判断され(ステップS3)、0.5秒経過したときは、処理はステップS4に移って、コンデンサCの充電が開始される。なお、電源投入初期状態では、昇圧回路21は昇圧不許可状態であり、スイッチング用トランジスタQ1はOFF状態となっており、また、各スイッチング用トランジスタQ2はOFF状態となっている。そして、0.5秒経過したときは、制御回路22は、昇圧回路21に昇圧許可信号を与えて昇圧回路21を昇圧許可状態とするとともに、スイッチング用トランジスタQ1をONとする。これにより、昇圧された電圧がコンデンサCに印加され、コンデンサCの充電が開始される。
【0035】
次いで、ステップ5において0.1秒経過したか否かが判断され、経過したときはステップS6に移って、バッテリ電源20の初期電圧の確認が行われる。具体的には、ラインM1を介して検出電圧値Vが制御回路22(正確には制御回路22内のCPU30)に与えられると、制御回路22内のCPU30は、ROM31から予め設定されている高基準電圧値Vh及び低基準電圧値Vlを読み出し、検出電圧値Vと、高基準電圧値Vh及び低基準電圧値Vlとのそれぞれの比較を行う。
【0036】
ここで、本実施の形態では、高基準電圧値Vhは4.8V(バッテリ電源20の公称電圧(=1.2×4V))に設定され、低基準電圧値Vlは4.6Vに設定されている。
【0037】
そして、比較結果が、検出電圧値V>高基準電圧値Vhのときは、正常(動作可状態)と判定され、電源表示用ランプ7iを緑色で点灯する。高基準電圧値Vh>検出電圧値V>低基準電圧値Vlのときは、電圧不足(但し、動作可状態)と判定され、電源表示用ランプ7iを橙色で点灯する。低基準電圧値Vl>検出電圧値Vのときは、電圧不足(動作不可状態)と判定され、電源表示用ランプ7iを赤色で点灯する。これにより、操作者は、バッテリ電源20の容量状態を目視することができる。
【0038】
また、このようにして、電源投入時に昇圧回路21を動作させてコンデンサCに充電を行うようにしたので、実使用時のバッテリ電圧を確認することができる。従って、例えば、運転動作中にのみバッテリ電源20の電圧を検出する構成の場合、バッテリ電源20の容量が残り少なくても、バッテリ電源20の電圧のみで判断しているので、正常電池と判断してしまい、実際の展開処理(コンデンサへの充電)を行うと、電圧が低下し、充電不足となって、展開が行えないという事態が生じる。しかし、本実施の形態の場合は、運転開始前に昇圧回路21を作動させコンデンサCに充電を行うことにより、実使用時のバッテリ電源20の電圧が検出されることになり、その後の展開処理で充電不足となって、展開を行えないという事態が回避される。
【0039】
なお、ステップS7において、低基準電圧値Vl>検出電圧値Vであって、電圧不足(動作不可状態)と判定されたときは、動作不可状態とする(ステップS8)。具体的には、昇圧回路21に昇圧許可信号を与えないように処理がなされる。これにより、そのままの状態では作動釦6を押下げても展開処理は実行されない。
【0040】
なお、後述するように、運転中の電池電圧確認処理では、低基準電圧値Vl>検出電圧値Vであって、電圧不足(動作不可状態)と判定されたときであっても、その後に電圧が低基準電圧値Vl以上に回復した場合は動作可とされているが、電源投入時の初期電圧確認処理では、その後電圧が低基準電圧値Vl以上に回復しても、動作不可状態のままである。これにより、実使用時のバッテリ電源20の電圧確認に誤動作が生じることが防がれる。
【0041】
次いで、2秒経過したときは、ステップS9からステップS10に移る。そして、スクイブの展開処理中は、ステップS10、11において、0.1秒毎に通常電圧確認処理が行われる。具体的には、上記と初期電圧確認処理と同様に、検出電圧値Vと、高基準電圧値Vh及び低基準電圧値Vlとのそれぞれの比較を行い、検出電圧値V>高基準電圧値Vhのときは、正常(動作可状態)と判定されて電源表示用ランプ7iを緑色で点灯し、高基準電圧値Vh>検出電圧値V>低基準電圧値Vlのときは、電圧不足(但し、動作可状態)と判定されて電源表示用ランプ7iを橙色で点灯し、低基準電圧値Vl>検出電圧値Vのときは、電圧不足(動作不可状態)と判定されて電源表示用ランプ7iを赤色で点灯する。なお、上記したように、低基準電圧値Vl>検出電圧値Vであって、電圧不足(動作不可状態)と判定されたときであっても、その後に電圧が低基準電圧値Vl以上に回復した場合は動作可とされており、展開処理を継続することができる。
【0042】
そして、スイッチSW1がOFFとなると、バッテリ電源20の電圧確認処理は終了する(ステップS12)。
【0043】
(スクイブ診断・展開処理)
図6はスクイブ診断・展開処理を示すフローチャートである。図6を参照して、スクイブ診断・展開処理電を説明する。
【0044】
先ず、スイッチSW2がONになると(ステップR1)、制御回路22は昇圧回路21に昇圧許可信号を出力し、これにより昇圧回路21が昇圧作動可能状態となる(ステップR2)。
【0045】
次いで、ステップR3→ステップR4→ステップR3の閉ループにおいて、全てのスクイブ2について順次的に診断処理を実行する。具体的に説明すると、先ず、スクイブ2aの診断を行う。診断に際しては、制御回路22は、昇圧回路21を昇圧許可状態し、スイッチング用トランジスタQ1をOFF、全てのスイッチング用トランジスタQ2をOFFとする。さらに、スイッチング用トランジスタQ3aをON、その他のスイッチング用トランジスタQ3b〜Q3hをOFFとする。これにより、昇圧回路21からの出力が定電流ダイオードD3を介して定電流化され、この定電流がスクイブ2aに供給される。これにより、ラインM4を介してスクイブ2aの端子電圧を測定すれば、測定電圧からスクイブ2aの抵抗値を換算でき、結果としてスクイブ2aの抵抗値を知ることができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、測定精度の向上のため、スクイブ2aの測定電圧は増幅回路25によって増幅されて、制御回路22に与えられるようになっている。制御回路22では、測定電圧からスクイブ2aの抵抗値を算出し、正常・異常の診断を行う。そして、上記のようなスクイブ診断処理を全てのスクイブ2a〜2hについて行い、全てのスクイブ2a〜2hについての診断が終了したときは、ステップR5に移って、診断結果を表示する。診断結果表示は、上記したように、各スクイブ用表示ランプ7a〜7hについて正常であれば緑色で点灯し、ショートであれば赤色で点灯し、オープンであれば消灯することにより行われる。
【0047】
次いで、診断結果により、正常と判定されたスクイブ2について展開処理を行う。具体的には、作動釦6の押圧により(ステップR6)、展開処理が開始される。次いで、ステップR7で、昇圧許可信号が昇圧回路21に与えられ、昇圧回路21が昇圧許可状態となる。次いで、ステップR8で、コンデンサCの充電が開始される。即ち、スイッチング用トランジスタQ1をON、全てのスイッチング用トランジスタQ2をOFFとする。これにより、コンデンサCの充電が開始される。
【0048】
そして、ステップR9で充電開始から0.5秒経過したか否かが判断され、経過していないときはステップR10に移って、コンデンサCの充電電圧の確認が行われる。具体的には、制御回路22はラインM1を介してコンデンサCの充電電圧を検出する。そして、ステップR9→ステップR10→ステップR11→ステップR9の閉ループ処理により、充電開始から0.5秒以内にコンデンサCが所定電圧になるまで充電される。
【0049】
ここで、注目すべきは、スクイブ診断処理により得られたスクイブ2の抵抗値に応じて、コンデンサCの充電電圧及び後述する展開時間を可変としていることである。詳細に説明すると、本実施の形態において使用するスクイブ2は、エアバッグ系(運転席用、助手席用、運転席サイド用を問わない)と、プリテンショナ系(運転席用、助手席用を問わない)との2種類があり、エアバッグ系スクイブ2(抵抗値が2オーム)とプリテンショナ系スクイブ2(抵抗値が2.15オーム)とは抵抗値が異なる。そこで、スクイブの抵抗値に応じて、コンデンサCの充電電圧及び後述する展開時間を可変とすることにより、昇圧回路21の駆動時間を短縮化でき、電池の消費を少なくすることができる。
【0050】
具体的には、エアバッグ系スクイブとプリテンショナ系スクイブとに応じて、以下の表1に示す充電電圧及び展開時間に設定している。なお、上記したように、充電電圧及び展開時間は、ROM31にテーブル状に記憶されており、後述するコンデンサの充電時及び展開処理の際にそれら充電電圧及び展開時間がCPU30に読み出されて、所定の処理が行われるようになっている。
【0051】
【表1】

【0052】
つまり、2オームのスクイブの場合、展開のためには少なくても1.75A以上の電流を、2mSec流し続ける必要があり、そのためには、コンデンサCの充電電圧は4.6V必要となる。なお、充電電圧の算出に際しては、コンデンサCの容量が3300マイクロファラッドとして算出したものである。また、同様にして、2.15オームのスクイブの場合、展開のためには少なくても2.0A以上の電流を、1mSec流し続ける必要があり、そのためには、コンデンサCの充電電圧は5.0V必要となる。
【0053】
そこで、ステップR10におけるコンデンサCの充電電圧の確認処理では、コンデンサCの充電電圧を検出し、エアバッグ系スクイブの場合は4.6Vに達したら昇圧回路21への昇圧許可信号を停止して、昇圧回路21の駆動を停止し、プリテンショナ系スクイブの場合は5.0Vに達したら昇圧回路21への昇圧許可信号を停止して、昇圧回路21の駆動を停止する。
【0054】
次いで、0.5秒経過したときは、ステップR9からステップR12に移って、コンデンサCの電圧が所定電圧であるか否かが判断され、コンデンサCの電圧が所定電電圧でない場合は、スクイブが正常でないとして展開処理されない(ステップR13)。
【0055】
ステップR12において、コンデンサCの電圧が所定電電圧である場合は、ステップR14に移って展開処理を行う。つまり、正常なスクイブについてのみ展開処理が行われる。展開処理では、スイッチング用トランジスタQ1をOFFとし、かつ、電流を流すべきスクイブに対応するスイッチング用トランジスタQ3をONとすることにより行われる。そして、上記したように、展開時間は、スクイブの抵抗値に応じて可変とする。
【0056】
次いでステップR15で全てのスクイブの処理が完了したか否かが判断され、そうでない場合はステップR9に戻る。なお、展開処理は、スイッチング用トランジスタQ1をOFFとし、かつ、複数のスクイブのうち展開させるべきスクイブに対応するスイッチング用トランジスタQ3をONとすることにより行われる。
【0057】
こうして、ステップR9〜R16の一連の処理により、正常なスクイブに対して順次的に展開処理が実行される。
【0058】
なお、参考まで述べると、スクイブの抵抗値の相違に拘らず、全て同じ電圧(例えば10V程度)までコンデンサCを充電し、且つ、同じ展開時間(2mSec)で展開を行っても、展開は達成することは可能である。しかしながら、このような処理方法では、昇圧回路を必要以上に駆動することになり、電池の電気を無駄に消費することになる。これに対して、本実施の形態のように、スクイブの抵抗値に応じて、コンデンサCの充電電圧及び展開時間を可変とすることにより、コンデンサに蓄積した電気の放電量を抑え、再度、電気を蓄積する場合の昇圧回路21の駆動時間を短縮化でき、電池の消費を少なくすることができる。
【0059】
(その他の事項)
上記実施の形態では、スクイブの抵抗値が2種類とされたけれども、3種類以上であってもよい。また、コンデンサの充電電圧及び展開時間は、それぞれ2つの値を切り替えるようにしたけれども、3種類以上抵抗値が異なるスクイブの場合には、その抵抗値に応じてコンデンサの充電電圧及び展開時間を可変にするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、複数のスクイブを一括展開するエアバッグ展開装置に好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態に係るエアバッグ展開装置の外観構成を示す平面図である。
【図2】実施の形態に係るエアバッグ展開装置の側面図である。
【図3】実施の形態に係るエアバッグ展開装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】制御回路の具体的な構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態に係るエアバッグ展開装置における電池電圧確認処理を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係るエアバッグ展開装置におけるスクイブ診断・展開処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1:エアバッグ展開装置
2a〜2h:スクイブ
4:モードセレクトスイッチ操作片
7a〜7k:表示用ランプ
20:バッテリ電源
21:昇圧回路
22:制御回路
30:CPU
31:ROM
32:RAM
C:コンデンサ
T:タイマ
SW1〜SW3:スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクイブを接続し、そのスクイブに点火用電圧を供給してエアバッグの展開処理を行うエアバッグ展開装置であって、
バッテリ電源と、
前記スクイブに点火用電圧を供給するコンデンサと、
前記バッテリ電源の電圧を昇圧し、この昇圧された電圧によって前記コンデンサを充電する充電回路と、
前記バッテリの電圧を検出するバッテリ電圧検出手段と、
電源投入時に、前記充電回路を作動させるとともに、前記バッテリ電圧検出手段からの検出値を入力し、前記バッテリ電圧検出手段によって得られた充電回路の作動状態中におけるバッテリ電圧が展開処理に最低限必要な所定電圧以上か否かを確認する制御手段と、
を備えたことを特徴とするエアバッグ展開装置。
【請求項2】
バッテリの電圧不足を表示する表示手段を備え、
前記制御手段は、バッテリ電圧が前記所定電圧未満であると確認したときは、前記表示手段を駆動してバッテリの電圧不足を表示する、請求項1記載のエアバッグ展開装置。
【請求項3】
前記制御手段は、バッテリ電圧が前記所定電圧未満であると確認したときは、展開処理を動作させないようにする、請求項1又は2記載のエアバッグ展開装置。
【請求項4】
バッテリ電源と、コンデンサと、前記バッテリ電源の電圧を昇圧し、この昇圧された電圧によって前記コンデンサを充電する充電回路とを備えるとともに、スクイブを接続し、前記コンデンサからの点火用電圧をスクイブに供給してエアバッグの展開処理を行うエアバッグ展開装置における電池電圧確認方法であって、
電源投入時に、前記充電回路を作動させるステップと、
前記充電回路の作動状態中におけるバッテリ電圧を検出するステップと、
検出されたバッテリ電圧が展開処理に最低限必要な所定電圧以上か否かを確認するステップと、
を有することを特徴とするエアバッグ展開装置におけるバッテリ電圧確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−15922(P2006−15922A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197164(P2004−197164)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000000309)和泉電気株式会社 (188)
【Fターム(参考)】