説明

エアバッグ用シリコーンコーティング組成物

安全性の目的のために使用され、自動車等の乗り物の乗員を保護するシリコーンゴム組成物でコーティングされたエアバッグが記載されている。組成物は、ヒドロシリル化によって硬化するシリコーンゴムコーティング組成物である。脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を有するオルガノケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基の反応を促進する触媒およびケイ素補強材を含み、シリカ充填剤はシリカ充填剤の重量に基づいて2重量%〜60重量%のSiが結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を含むオルガノポリシロキサンオリゴマーで前処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム組成物でコーティングされたエアバッグに関するものであって、該エアバッグは安全性の目的のために使用され、自動車等の乗り物の乗員を保護する。また、本発明は、組成物でコーティングされたエアバッグ用布および前記布から製造されているエアバッグに関する。特に、本発明は、1つのポリオルガノキサンと、他のSiに結合した水素基との反応によって生じる、ヒドロシリル化によって硬化するシリコーンゴムコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エアバッグは、少なくともその1つの側面がエラストマー層で被覆された合成繊維から製造されている織布または編地、例えばナイロン6,6またはポリエステル等のポリアミドから形成されている。エアバッグは、コーティングされ、縫い合された平織物から製造されていて、十分な機械的強度を提供するか、または継ぎ目のない1枚の形状に織ることができる。縫い合わされたエアバッグは、通常、エアバッグの内側に被コーティング布の表面があるように構成されている。1枚に織られたエアバッグは、エアバッグの外側がコーティングされている。エアバッグ用基布上に、シリコーンゴムをエラストマーコーティングとして使用することで、基布をシリコーンゴムの薄膜、例えば15〜50g/mでコーティングする性能により、軽量の構造を達成できることに加え、優れた高温性能を可能とする。しかしながら、低コーティング量で十分な気密性(即ち、被コーティング布が十分に低いガス透過性を有すること)を確保することは困難である。
【0003】
シリコーンゴムエアバッグコーティングは、多くの特許において開示されている。例えば、米国特許第6709752号明細書には、ヒドロシリル化反応で硬化することができる織物をコーティングするための組成物であって、3種類のポリオルガノシロキサン(そのうちの2つは互いに異なる特定の粘度を有するアルケニル末端ポリオルガノシロキサン、3つ目は分子末端および側鎖にアルケニル基を有する)と、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を有する有機ケイ素架橋剤、触媒および補強材、を含む組成物が開示されている。
【0004】
米国特許第6425600号明細書には、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり2つ以上有するオルガノポリシロキサン、微粉化されたシリカ、接着成分、1分子当り1以上のアルケニル基を生じるシリコーン可溶性樹脂、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金族触媒を含む、エアバッグをコーティングするためのシリコーンゴム組成物が記載されている。
【0005】
国際公開第08/020605号には、以下の成分を含む織物をコーティングするためのシリコーンゴム組成物が記載されている:2%以下のアルケニル基を含むオルガノポリシロキサン(A−1)および5%以上のアルケニル基を含むオルガノポリシロキサン(A−2)の混合物を含み、A−2はA−1に対して1重量%以下で存在する、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A);ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり平均3つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−1)およびケイ素に結合した水素原子を1分子あたり平均2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2)の混合物を含む、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B);ヒドロシリル化触媒(C);および補強微細シリカ粉末(D)。
【0006】
米国特許第6511754号明細書には、ケイ素に結合したC2−C6アルケニル基を1分子当たり2つ以上有する、1つ以上ポリオルガノシロキサン、ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり2つ以上有する、1つ以上のポリオルガノシロキサン、白金族に属する金属系触媒、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの存在下において相溶化剤でin situ処理されたケイ酸補強材、ポリオルガノシロキサン末端増粘剤、水素官能基を有する末端シロキシ単位およびC3−C6アルケニル基を含む1以上のアルコキシル化されたオルガノシランを含有する三元接着促進剤、1以上のエポキシ基を含む1以上の有機ケイ素化合物および金属キレート剤および/または金属アルコキシドを含むコーティング組成物が記載されている。
【0007】
国際公開第08/020635号には、アルケニル含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ヒドロシリル化触媒、微粉化されたシリカ補強材、メタクリル含有アルコキシシラン、アクリル含有アルコキシシランおよびジルコニウムキレート化合物を含む布をコーティングするためのシリコーンゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6709752号明細書
【特許文献2】米国特許第6425600号明細書
【特許文献3】国際公開第08/020605号
【特許文献4】米国特許第6511754号明細書
【特許文献5】国際公開第08/020635号
【特許文献6】米国特許第6806339号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある種のエアバッグの使用においては、加圧ガスを布のエンベロープに比較的長時間保持する必要がある。この要件は、例えば自動車産業のサイド・カーテン・エアバッグの場合に要求される。サイド・カーテン・エアバッグは、一般的なエアバッグと同様に、接触時に膨張するように設計される。サイド・カーテンが広がることで、乗客と車体の側面、例えば窓の間でクッション性のあるカーテンとなる。従来の運転席用および乗客用エアバッグの場合のように、単に衝突そのものの衝撃に対するクッション性でなく、乗客を保護することを意図して設計され、例えば車の走行中、サイド・カーテン・エアバッグが十分に加圧されていることが重要である。従来の運転席用および乗客用エアバッグは、ほんの一瞬、圧力を維持する必要があるのみ一方で、サイド・カーテン・エアバッグは数秒間、適度な圧力を保持することが望ましい。一定のガス圧力を比較的長期間保持するため、加圧された布構造が望ましい場合、例えば航空用の緊急避難用シュートまたはゴムボートに同じように応用される。したがって、シリコーンゴムコーティングによる少ないコーティング量で、気密性が改良された、柔軟性および高温耐性を有する被コーティング布の要望がある。
【0010】
本発明の第1の態様におけるエアバッグ用コーティング組成物は、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した水素原子を3つ以上含むオルガノケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基との反応を促進する触媒およびシリカ補強材を含み、シリカ充填剤はシリカ充填剤に対して2重量%〜60重量%の、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を含むオルガノポリシロキサンオリゴマーで前処理されたコーティング組成物である。
【0011】
本発明の他の態様は、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を含むオルガノケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基との反応を促進する触媒およびシリカ補強材を含有するエアバッグ用コーティング組成物であって、前記組成物はシリカ充填剤に対して2重量%〜60重量%の、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーを含むことを特徴とする組成物である。
【0012】
本発明は、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を含むオルガノケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基の反応を促進する触媒およびシリカ充填剤を含有するコーティング組成物で布をコーティングする工程であって、前記組成物はシリカ充填剤に対して2重量%〜60重量%の、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーを含むことを特徴とする工程を包含する。記載の明確化のため、組成物が%値で記載されている場合、常に合計して100%になると解釈する。
【0013】
また、本発明は、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を有するオルガノケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基との反応を促進する触媒およびシリカ補強材を包含する、コーティング組成物でコーティングしたエアバッグまたはエアバッグ用布であって、前記組成物はシリカ充填剤に対して2重量%〜60重量%の、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明は、シリコーンゴムへと硬化可能なコーティング組成物を調製する工程を含み、前記コーティング組成物は、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を有するオルガノケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基との反応を促進する触媒、およびシリカ補強材を含有する前記コーティング組成物を含み、前記シリカ充填剤はシリカ充填剤に対して2重量%〜60重量%の、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーで処理され、処理された充填剤は脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を有するオルガノケイ素架橋剤および触媒とともに混合される。
【0015】
発明者らは、シリカ充填剤を、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーで前処理することで、該シリカ充填剤を含むシリコーンゴムコーティング組成物でコーティングされた布の透過性が低下することを見出した。このシリカ充填剤の前処理により、コーティング組成物の布、特にエアバッグに使用される織ナイロンまたはポリエステル布への接着性が向上する。本発明のコーティング組成物でコーティングした布から製造されているエアバッグは、著しく気密性が改良される。
【0016】
シリカ補強材は、例えばCabotから商標Cab−O−Sil MS−75として販売されているヒュームド(焼成)シリカ、沈降シリカまたはゲル生成シリカである。このシリカ補強材の比表面積は、少なくとも50m/gであることが好ましい。
【0017】
一般的に、シリカ充填剤は全コーティング組成物の少なくとも1重量%を占め、例えばコーティング組成物に40重量%以下を占めることができる。好ましくは、シリカ充填剤はコーティング組成物の2〜30重量%存在する。
【0018】
充填剤を処理するために使用されるオルガノポリシロキサンオリゴマーは、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有する。オルガノポリシロキサンオリゴマーは、例えば両方の分子末端がジメチルヒドロキシシロキシ単位であるメチルビニルポリシロキサンであっても、両方の分子末端がジメチルヒドロキシシロキシ単位であるメチルビニルシロキサンとジメチルシロキサン単位の共重合体であってもよい。オルガノポリシロキサンオリゴマーは、オルガノポリシロキサン分子の混合物であってもよく、両方の分子末端にシラノール末端基があるもの、1のシラノール基を有するもの、例えば他の末端単位がジメチルメトキシシロキシ単位、トリメチルシロキシ単位またはジメチルビニルシロキシ単位等を有するものであってもよい。好ましくはオルガノポリシロキサンオリゴマーの50重量%超、より好ましくは60−100重量%が、両分子末端にシラノール末端基を有する分子を含む。
【0019】
オルガノポリシロキサンオリゴマーは、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上のビニル基を含み、35または40重量%以下のビニル基を含むことができる。最も好ましくは、オルガノポリシロキサンオリゴマーが5〜30重量%のビニル基を含む。オルガノポリシロキサンオリゴマーの平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法の測定において、1000〜10000であることが好ましい。オルガノポリシロキサンオリゴマーの粘度は、好ましくは25℃で50mPa・S以下、より好ましくは25℃で0.1〜40mPa・S、最も好ましくは25℃で1〜40mPa・Sである。粘度測定は、他に記載されていない限り、10rpm、スピンドル7のブルックフィールド粘度計を用いた測定に基づいて示す。
【0020】
Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーは、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するポリオルガノシロキサン(A)の一部とみなされる。しかしながら、コーティング組成物中の全ポリオルガノシロキサンは、通常、5重量%未満、好ましくは3重量%未満のアルケニル基を含有する。ポリオルガノシロキサン(A)は、0.02〜2重量%のアルケニル基を含有することが好ましい。オルガノポリシロキサンオリゴマーは、例えばコーティング組成物に全ポリオルガノシロキサン(A)の0.1〜10重量%を占めることができる。
【0021】
オルガノポリシロキサン(A)のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基およびヘプテニル基が例示され、この中でもビニル基が好ましい。オルガノポリシロキサン(A)に含まれるアルケニル基以外のケイ素に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはアルキル基の類似体を例示することができ、フェニル基、トリル基、キシリル基またはアリール基の類似体;または3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基またはハロゲン置換基の類似体が例示される。アルケニル基以外の基としてはメチル基、および任意にフェニル基を含むことが好ましい。
【0022】
主要なオルガノポリシロキサン(A)は、主に直鎖分子構造を有することが好ましい。オルガノポリシロキサン(A)は、例えばα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサンとジメチルシロキサン単位のα,ω−ビニルジメチルシロキシ共重合体、および/またはメチルビニルシロキサンとジメチルシロキサン単位のα,ω−トリメチルシロキシ共重合体を含み得る。ポリオルガノシロキサン(A)の粘度は、好ましくは、25℃で100mPa・S以上、好ましくは300mPa・S以上であり、90000mPa・S以下、好ましくは70000mPa・S以下である。最も好ましくは、ポリオルガノシロキサン(A)は、25℃で100〜90000mPa・Sの1以上のα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンを含む。ポリオルガノシロキサン(A)は、例えば米国特許第6709752号明細書に記載されているように25℃で50〜650mPa・Sの粘度を有する第1のα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンおよび25℃で10,000〜90000mPa・Sの粘度を有する第2のα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンを含む。本明細書の全ての粘度測定は、他に記載されていない限り、25℃で測定される。
【0023】
任意に、且つ付加的に、オルガノポリシロキサン(A)は、アルケニル単位含有分岐状オルガノポリシロキサン(A1)を含む。前記分岐状オルガノポリシロキサンは、例えば、(CHViSiO1/2および/または(CHSiO1/2、任意にCHViSiO2/2および/または(CHSiO2/2単位を有するViSiO3/2(Viはビニルを示す)、CHSiO3/2および/またはSiO4/2分岐単位であり、1以上のビニル基が存在する分岐単位を含むことができる。分岐状オルガノポリシロキサン(A1)は、例えば米国特許第6806339号明細書に記載されているように(i)式(SiO4/2)の1以上のQ単位および(ii)式RSiO2/2の15〜995のD単位、式RSiO1/2(式中、R置換基はそれぞれ1〜6個の炭素原子を含むアルキル基、1〜6個の炭素原子を含むアルケニル基、1〜6個の炭素原子を含むアルキニル基、分岐状シロキサンの少なくとも3つのRa置換基はアルケニルまたはアルキニル単位、およびR置換基はそれぞれ1〜6個の炭素原子を含むアルキル基、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基およびメタクリレート基からなる群から選択される)のM単位からなり、単位(i)および(ii)が適切な組み合わせで連結されている。アルケニル官能化オルガノポリシロキサン(A)の一部としての前記分岐状オルガノポリシロキサン(A1)により、さらに本発明の組成物でコーティングされたエアバッグのガス透過性が低下し、膨らませたときのエアバッグからの圧力損失の速度が減少する。
【0024】
本発明のエラストマー形成コーティング組成物に使用するための有機ケイ素架橋剤は、好ましくはシラン、低分子量の有機ケイ素樹脂および短鎖オルガノシロキサンポリマーから選択される。架橋化合物はケイ素に結合した水素を1分子当たり3つ以上有していて、前記分子はアルケニル基または他の脂肪族不飽和基のポリオルガノシロキサン(A)と反応することができる。適切な短鎖オルガノシロキサンポリマーとしては、直鎖または環状のものを含む。好ましい有機ケイ素架橋剤は一般式
SiO(RSiO)(RHSiO)SiR
または
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、Rは最高10個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基、RはR基または水素原子、pは0〜20、qは1〜70であり、ケイ素に結合した水素原子が1分子当たり3つ以上存在する)で表される。Rは3個以下の炭素原子を有する低級アルキル基を示すことが好ましく、最も好ましくはメチル基である。RはR基と同一であることが好ましい。好ましくはp=0、qは2〜70、より好ましくは2〜30であるか、または環状有機ケイ素物質が使用される場合、3〜8である。有機ケイ素架橋剤は、25℃で1〜150mPa/Sの粘度を有するシロキサンポリマーであることが最も好ましく、より好ましくは2〜100mPa・S、最も好ましくは5〜60mPa・Sの粘度である。架橋有機ケイ素化合物は、前記のいくつかの物質の混合物を含むことができる。したがって、適切なオルガノケイ素架橋剤の例としては、トリメチルシロキサン末端ブロック化されたポリメチルヒドロシロキサン、ジメチルヒドロシロキサン末端ブロック化されたメチルヒドロシロキサン、ジメチルシロキサンとメチルヒドロシロキサンの共重合体、およびテトラメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。
【0027】
有機ケイ素架橋剤のSi−H基のオルガノポリシロキサン(A)の脂肪族不飽和基に対するモル比は、好ましくは、1:1以上であり、8:1または10:1以下である。最も好ましいSi−H基の脂肪族不飽和基に対するモル比は、1.5:1〜5:1である。
【0028】
有機ケイ素架橋剤のSi−H基とオルガノポリシロキサン(A)の脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基との反応を促進する触媒は、好ましくは白金族金属(周期表のVIII族)またはその化合物である。白金および/または白金化合物、例えば微粉化した白金;塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液;塩化白金酸のオレフィン錯体;塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体;白金−ジケトンの錯体;シリカ、アルミナ、カルボンまたは同様のキャリアの白金金属;または白金化合物を含む熱可塑性樹脂が好ましい。他の白金族金属触媒としては、ロジウム、ルテニウム、イリジウムまたはパラジウム化合物が例示される。例えばこれら触媒は、以下の式で示される:RhCl(PPh、RhCl(CO)(PPh、Ru(CO)12、IrCl(CO)(PPhおよびPd(PPh(Phはフェニル基を示す)。
【0029】
触媒は、好ましくはポリオルガノシロキサン(A)に基づいて0.5〜100ppmw(parts per million weight)、より好ましくは1〜50ppmで使用される。
【0030】
コーティング組成物には、追加の触媒、例えばテトラ(イソプロポキシ)チタン(TiPT)等のチタン化合物を含有させてもよい。
【0031】
本発明のコーティング組成物を調製する際、コーティング組成物の主要部と混合される前に、シリカ充填剤は、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーで前処理される。発明者らは、オルガノポリシロキサンオリゴマーを含むが、シリカ充填剤がオルガノポリシロキサンオリゴマーで前処理されていない、同様のシリコーンゴムコーティング組成物でコーティングされた布と比較して、前記前処理により、シリコーンゴムコーティング組成物でコーティングされた布の透過性が低下することを見出した。
【0032】
本発明による1の工程において、シリカ充填剤は、実質的に乾式のオルガノポリシロキサンオリゴマーと混合される。つまり、他のオルガノポリシロキサンの非存在下で、シリカ充填剤はSiに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーと混合される。少量(通常、全混合物の25重量%以下)の水、有機溶媒および/またはカップリング剤(オルガノポリシロキサンオリゴマーのシリカ充填剤への接着性を改良する)が、混合工程の間に配合される。カップリング剤は、例えばヘキサメチルジシラザンまたはテトラメチルジシラザン等のシラザンであってもよい。処理済みの充填剤は、その後、コーティング組成物の他の含有物と混合することができる。
【0033】
本発明の他の工程において、シリカ充填剤は、オルガノポリシロキサンオリゴマーおよび脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換されたオルガノポリシロキサン(A)の一部と混合されてマスターバッチを形成し、該マスターバッチは、その後、炭化水素または炭化水素酸素置換オルガノポリシロキサン(A)をさらにふくむ、他のコーティング組成物成分と混合可能である。通常、シリカ充填剤およびオルガノポリシロキサンオリゴマーと混合されたポリオルガノシロキサン(A)は、上記のように0.02〜2重量%のアルケニル基を含有するアルケニル官能ポリオルガノシロキサンである。それは、例えば、25℃で粘度が100〜90000mPa・Sのα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンであってもよい。したがって、マスターバッチは、例えば、シリカ充填剤10−80重量%を含むことができる。マスターバッチは、例えばエラストマー形成コーティング組成物に使用される、全ポリオルガノシロキサン(A)の5〜50重量%を含有してもよい。たとえシリカ充填剤が、他のオルガノポリシロキサンの非存在下、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を含むオルガノポリシロキサンオリゴマーで前処理された場合でも、その後、処理された充填剤を脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素が置換されたオルガノポリシロキサン(A)の一部と混合し、マスターバッチを形成することが便利な場合がある。
【0034】
混合は、他の便利なミキサーの種類、例えばシグマブレードミキサー、Zブレードミキサー、ドラムミキサーまたはプロシェアミキサーで実施することができる。マスターバッチを形成する場合、混合は、択一的に継続的にロール製粉機または2軸押し出し機を用いて実施することができる。
【0035】
シリカ充填剤が、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びに実質的に乾式のシラノール末端基を包含するオルガノシロキサン(A)オリゴマーで前処理される場合においても、オルガノポリシロキサンオリゴマーに加えていくらかのポリオルガノシロキサンの存在下でマスターバッチを形成するとしても、オルガノポリシロキサンオリゴマーはシリカ充填剤に対して0.8重量%以上、好ましくは1.5重量%以上または2重量%以上存在する。オルガノポリシロキサンオリゴマーは、シリカ充填剤に対して40重量%以下または50若しくは60重量%以下でも存在することができる。
【0036】
エラストマー形成コーティング組成物は、単に、混合される1の成分である処理済みシリカ充填剤またはシリカ充填剤マスターバッチを用いて、成分を所望の比率で混合することによって調製することができる。しかしながら、保存安定性、および組成物を織布に塗布する前の、または塗布時の浴寿命の理由から、通常、触媒を有機ケイ素架橋剤とを分けて、組成物を2部に分けて保存することが好ましい。処理済みシリカ充填剤またはシリカ充填剤のマスターバッチを含む組成物の他の成分は、どちらの組成物の部にあってもよいが、好ましくは均等に両方の部位に分散することで、2部を塗布する直前、容易に混合することができる。このように容易に混合できる比率は、例えば1/10または1/1とできる。
【0037】
本発明のコーティング組成物に含有させることができる、他の追加の成分としては、例えば接着促進剤、他の充填剤、顔料、色素、粘度調整剤、保存剤、阻害剤および/または軟化剤が挙げられる。
【0038】
接着促進剤の使用においては、布、例えばエアバッグ基布に一般的に使用されるナイロン織布またはポリエステル織布に優れた接着性を与え、長期間布を高温、且つ、高湿度にさらした後でも、コーティングの布への持続的な接着性が保たれることが望まれる。適切な接着促進剤としては、ジルコニウムキレート化合物およびエポキシ官能基またはアミノ官能化有機ケイ素化合物が挙げられる。従来技術において、既知の適切なジルコニウムキレート化合物としては、下記の例が挙げられる:ジルコニウム(IV)テトラアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)トリフルオロアセチルアセトネート、テトラキス(エチルトリフルオロアセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−ヘプタンエチオネート)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ジブトキシビス(エチルアセトネート)、ジイソプロポキシビス(2,2,6,6−テトラメチル−ヘプタンチオネート)ジルコニウムまたはβ−ジケトンを有する同様のリガンドとして使用されるジルコニウム錯体(そのアルキル置換型およびフルオロ置換型)が挙げられる。これらの化合物のうち最も好ましいのは、アセトアセテートのジルコニウム錯体である(アルキル置換型およびフルオロ置換型を含む)。このようなジルコニウムキレート化合物は、エポキシ含有アルコキシシラン、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランと共に使用することができる。
【0039】
他の充填剤を使用する場合、該充填剤としては、石英粉末、微粉化硬化シリコーンゴム粒子および炭酸カルシウムが挙げられる。このような他の充填剤は、好ましくはシリカ補強材より少量で配合する。好ましくはこれら他の充填剤は、その表面が疎水性となるように処理される。他の充填剤が使用される場合、それらをシリカ充填剤と共にオルガノポリシロキサンオリゴマーで処理することが有利である。
【0040】
適切な阻害剤の例としては、エチレン性または芳香族不飽和アミド、アセチレン化合物、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィン系シロキサン、不飽和炭化水素ジエステル、共役エン−イン、ヒドロペルオキシド、ニトリルおよびジアジリジンが挙げられる。具体例としては、メチルブチノール、ジメチルヘキシノール、エチニルシクロヘキサノール、トリメチル(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オキシ)シラン、マレイン酸塩、例えばマレイン酸ビス(2−メトキシ−1−メチルエチル)またはマレイン酸ジアリル、フマル酸塩、例えばフマル酸ジエチルまたはフマル酸塩/アルコールの混合物が挙げられ、アルコールとしては、例えばベンジルアルコールまたは1−オクタノールおよびエテニルシクロヘキサン−1−オルが挙げられる。阻害剤が使用される場合は、例えばコーティング組成物の0.1〜3重量%で使用することができる。
【0041】
本発明は布を本発明の組成物でコーティングするコーティング工程を含む。布は好ましくは織布、特に平織布であるが、例えば編地または不織布であってもよい。布は合成繊維から製造されているか、天然繊維および合成繊維の混合物から製造されていて、例えばナイロン−6,6、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル綿またはガラス繊維であってもよい。エアバッグ布として使用するため、布は十分に柔軟性であり、比較的低い容積に畳むことができるが、十分に頑丈であり、高速での展開、例えば炸薬の影響に耐えることができる必要性がある。本発明のコーティング組成物は、平織ナイロン布に良好な接着力を有するものであって、通常は接着性がない。また、このコーティング組成物は、布に良好に浸透し、減少した透過性を布にもたらし、この組成物でコーティングされた布から製造されているエアバッグの気密性が改良される。
【0042】
本発明のコーティング組成物は、既知の技術に従って、基布に塗布することができる。既知の塗布と方法としては、スプレー、グラビアコーティング、バーコーティング、ロール式ナイフコーティング、エア式ナイフコーティング、パディング、ディッピングおよびスクリーンプリンティングが挙げられる。組成物は、エア式ナイフコーティング法またはロール式ナイフコーティング法によって塗布することが好ましい。コーティング組成物は、エアバッグ用布をバラバラに切断し、縫い合わせて組み立てたものにも、1枚の織布エアバッグにも塗布することができる。コーティング組成物は、一般的に10g/m以上、好ましくは15g/m以上のコーティング量で塗布され、100または150g/m以下で塗布することができる。本発明のコーティング組成物は、特に、低コーティング量、即ち50g/m未満、例えば15〜40g/mで塗布した場合も、エアバッグの十分な気密性を達成する、という利点を有する。
【0043】
好ましい形態ではないが、全コーティング量を上記のようにして、組成物を複数の層となるように塗布してもよい。コーティング組成物上に、さらにコーティング、例えば摩擦を低減する物質を塗布することも可能である。
【0044】
本発明のコーティングは、長時間かけて環境温度で硬化させてもよいが、コーティングの好適な硬化条件は、例えば120〜200℃の高温において、実際に適用した温度に応じた時間、例えば5秒〜5分間硬化させることである。
【実施例】
【0045】
特に記載のない限り、本発明を示す以下の実施例において、部およびパーセントは重量で示され、粘度は25℃における測定結果を示す。特に記載のない限り、粘度の測定は、10rpm、スピンドル7のブルックフィールド(登録商標)粘度計を用いて測定される。標準の炭素二重結合ストレッチを用いた赤外線分光学によって、ビニル基含有量を測定した。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて分子量を測定した。
【0046】
<実施例1>
‘MS−75D’ヒュームドシリカ 500gをベーカーパーキンスミキサーに加え、水28.9g、粘度が20mPa・Sの、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャッピングされたメチルビニルシロキサンとジメチルシロキサン単位の共重合体ViO1 52.0g、およびヘキサメチルジシラザン90.2gを続けて添加し、1時間混合して、処理済み充填剤を形成した。
【0047】
式(MeSiO1/2(MeViSiO1/2(SiO4/2)(ここで、(n+m)/r=0.71)で表され、数平均分子量Mn=4300およびビニル基含有量=1.9%のオルガノポリシロキサン樹脂を、粘度が40,000mPa・Sでビニル基含有量が0.09%の、ジメチルビニルシロキシ末端でキャッピングされたジメチルポリシロキサンSP1と混合することによって、シリコーン樹脂/ポリオルガノシロキサン混合物RP1を調製した。
【0048】
シリコーン樹脂/ポリオルガノシロキサン混合物RP1を51.7%、粘度が2,000mPa・Sでビニル基含有量が0.23%ジメチルビニルシロキシ末端でキャッピングされたジメチルポリシロキサンViP1 25.9%に添加した。処理されたシリカ充填剤を21.4%添加し、混合し、2部式のシリコーンゴムコーティング組成物の両方の部位に混合することができるマスターバッチMB43を形成した。
【0049】
2部式のコーティング組成物をMB43、RP1、ViO1および以下の含有物から調製した:
INT:
白金触媒:Ptを0.40%含有する、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン白金複合体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液
TiPT触媒:
架橋剤:粘度5.5mPa・Sの、トリメチルシロキシ基で両方の分子末端をキャッピングされたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサン単位の共重合体;ケイ素に結合した水素原子の含有量が約0.73質量%
シランS1:3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
シランS2:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
阻害剤:エチニルシクロヘキサノール
【0050】
コーティング組成物の配合物のそれぞれの割合を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
パートA 48.6%、パートB 48.6%および赤色色素2.8%を、Hauschild歯科用ミキサーで20秒間混合した。生成されたコーティング組成物を、30g/mの標的コーティング量で、46×46平織布420デニールナイロン布に、エア式ナイフコーティング機を用いて塗布した。コーティング機は、強制空気加熱オーブンを有し、被コーティング布193℃で、停滞時間50秒間処理した。一定の面積の未コーティングサンプルの重量を測定してから、同じ面積のコーティング済みサンプルの重量を測定し、2つのサンプルの重量の違いより、コーティング量を算出した。
【0053】
<実施例2および3>
以下の量のオルガノポリシロキサンオリゴマーViO1を用いること、パート2の架橋剤を、SiHとビニルのモル比が2.69:1に維持されるように調節すること以外は、実施例1と同様の配合を用いて繰り返した。
実施例2−156g
実施例3−260g
【0054】
<実施例4>
シリカ充填剤マスターバッチを、表2に示す配合でベーカーパーキンスミキサーにて混合することによって調製した。原料を続けてミキサーに加え、1時間混合し、マスターバッチを形成した。
【0055】
【表2】

【0056】
MB43の代わりにマスターバッチを使用し、表1に示した成分とさらに混合し、2部式のコーティング組成物を形成した。パート2の架橋剤の量を調整し、SiHとビニルのモル比が2.69:1となるように維持した。
【0057】
パートA 48.6%、パートB 48.6%および赤色色素2.8%を混合し、実施例1に記載した通りに布にコーティングした。
【0058】
<実施例5〜8>
以下の量のオルガノポリシロキサンオリゴマーViO1を用いること、パート2の架橋剤をSiHとビニルのモル比2.69:1が維持されるように調節すること以外は、実施例4と同様の配合を用いて繰り返した。
実施例5−1.80部
実施例6−3.60部
実施例7−5.40部
実施例8−9.00部
【0059】
スコットNo.363タイプ耐揉摩耗試験機(東洋精機製作所(日本、東京)で製造され、Test Machines, Inc.(ニューヨーク州ロンコンコマ)から販売されている)を用いた揉み試験における、実施例4〜8の布へのコーティング接着力を測定した。互いに向かい合った2枚の25mm×120mm(縦方向)のコーティングされた布の試験片を、グリップ間隔30mmに設定した試験装置のクランプに設置した。耐揉度の往復距離を50mmに設定した。サンプルを圧力が作用する位置まで近づけ、プローブを被コーティング表面の間に設置し、それらを膨らませた。作用圧力を1.0kg荷重に調節した。試験を1000〜2000サイクルで実施し、5(変化なし)〜3(不十分)〜0と評価の標準に対して確認した。その後、磨り減り速度に応じて、500または1000サイクル増やして、3に低下するまで試験した。それぞれ配合物について、3つの縦に切断したサンプルを用いて試験した。2000サイクル後の、それぞれのサンプルの評価及び評価3が得られるまでの合計サイクル数を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
それぞれ実施例1〜8の被コーティング布、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーが存在しない以外は実施例4と同様に調整した組成物でコーティングされた布(比較例C1)を、408時間、105℃で加熱して老化させ、その後、上記のように揉み試験を試験した。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
実施例1〜8の被コーティング布および比較例C1でコーティングされた布を、それぞれ1000時間、70℃、相対湿度95%の条件で、加熱/加湿して老化させ、その後、上記のように揉み試験を試験した。結果を表5に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
実施例4〜8の被コーティング布について、そのブロッキング性、即ちコーティングを互いに向かい合わせて押し合わせたとき、粘性があるかを試験した。7日間、105℃、9kgの荷重条件で、各実施例の3組の100mm×100mmのサンプルについて試験した。50kgのおもりを1組のシートの一方の上縁に取り付け、もう一方のシートを持ち上げて、室温で平衝状態とした後、サンプルを引き離した。全サンプルは直ちに分離した。
【0066】
実施例4〜8の被コーティング布および比較例C1の被コーティング布を、それぞれ56mm直径の円形の開口を有する金属プレートの間にはさみ、高圧力空気中の透過性試験を行った。布の被コーティング面を加圧したチャンバーに入れた;このチャンバーを空気圧200kPaまで加圧し、その後、空気供給口を閉めた。布の他方の面を大気圧にさらした。チャンバー内の圧力の低下率を電子的に観測した。30秒後の圧力を表6に示す。
【0067】
【表6】

【0068】
表8からジメチルビニルシロキシ基でキャッピングされたメチルビニルシロキサンとジメチルシロキサンの共重合体で充填剤を処理することで、気密性を実質的に減少するか、または空気圧を保持する、という効果がみられた。
【0069】
<実施例9>
0.08g(0.0005モル)トリフルオロメタンスルホン酸の存在下、208.33g(1モル)のオルトケイ酸テトラエチルを186.40g(1モル)のジビニルテトラメチルジシロキサンと反応させてから、36.93g(2.05モル)のHOを添加し、分岐状ポリシロキサン(上記(A1)に示す種類のもの)を形成した。
トリメチルアミンヒドロキシフォスファゼン塩基触媒0.005部、10,000重量カリウム当量のカリウムシラノレート0.03部(0.03 parts potassium silanolate of equivalent weight per potassium of 10,000)、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート0.009部の存在下、前記分岐状ポリシロキサン2.73部をデカメチルシクロペンタシロキサン297.3部と反応させた。ビニル含有量が0.17%、粘度が21600mPa/S、かつ平均分子量Mwが53,100の分岐状ポリシロキサンA1aを生成した。
【0070】
分岐状ポリシロキサンA1a 363gを水15.0g、オルガノポリシロキサンオリゴマーViO1 81.0gと共にベーカーパーキンスミキサーに加えた。‘MS−75D’ヒュームドシリカ100gを添加し、5分間混合した。ヘキサメチルジシラザン44.1gを添加し、5分間混合した。‘MS−75D’ヒュームドシリカ159.35gを添加し、35分間、室温で混合した後、1時間、100℃で混合し、処理済み充填剤を形成した。
【0071】
分岐状ポリシロキサンA1a 25.65gおよびシリコーン樹脂/ポリオルガノシロキサン混合物RP1 711.9gを処理済み充填剤に添加し、冷却しながら混合し、2部式のシリコーンゴムコーティング組成物の両方の部位に混合することができるマスターバッチMB2を形成した。
【0072】
2部式のコーティング組成物を以下の成分から調製した。コーティング組成物の各配合割合を表7に示す。
【0073】
【表7】

【0074】
パートA 48.6%、パートB 48.6%および赤色色素2.8%をHauschild歯科用ミキサーで20秒間混合した。生成されたコーティング組成物を46×46平織布420デニールナイロン布に、エア式ナイフコーティング機を用いて様々なコーティング量で塗布した。コーティング機は、強制空気加熱オーブンを有し、被コーティング布を130℃で停滞時間50秒間処理した。
【0075】
実施例9として、多様なコーティング量の被コーティング布サンプルの高圧力空気の透過性に関して、上記の方法で試験した。30秒後の圧力を表8に示す。
【0076】
同じ布にコーティング量35g/mで塗布された市販のシリコーンゴムエアバッグコーティングのコントロールサンプルC2についても試験した。市販のコーティングされたエアバッグ用布の比較サンプルC3についても試験を実施した。その結果を表8に示す。
【0077】
【表8】

【0078】
低コーティング量あっても、実施例9のコーティングが良好に圧力を保持したことが表2から考察できる。コーティング量20,26および30g/mでの圧力保持は、市販のコーティングC2と同様に良好であり、C3の市販のコーティングより優れていた。現状の解釈に制限することは望まないが、これは分岐状ポリシロキサンA1aの存在が組成物の織物をコーティングする性能並びに組成物のせん断回復性能の双方を改良すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した水素原子を3つ以上有する有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基の反応を促進する触媒およびシリカ補強材を含むエアバッグ用コーティング組成物であって、前記シリカ充填剤は、シリカ充填剤に対して2重量%〜60重量%が、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーで前処理されたシリカ充填剤である、コーティング組成物。
【請求項2】
オルガノポリシロキサンオリゴマーは、5〜30重量%のビニル基を含有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
オルガノポリシロキサンオリゴマーの平均分子量は、1000〜10000である、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
シリカ充填剤は、コーティング組成物の2〜30重量%で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
ポリオルガノシロキサン(A)は、0.02〜2重量%のアルケニル基を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
ポリオルガノシロキサン(A)は、25℃で粘度が100〜90000mPa・Sのα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
有機ケイ素架橋剤のSi−H基とオルガノポリシロキサン(A)の脂肪族不飽和基のモル比が、1.5:1〜5:1であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
シリコーンゴムに硬化可能なコーティング組成物を調製する工程であって、前記コーティング組成物は、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した水素原子を3つ以上有する有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基との反応を促進する触媒、およびシリカ補強材を含み、前記シリカ充填剤は、シリカ充填剤に対して2〜60重量%が、Siに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を含むオルガノポリシロキサンオリゴマーで処理され、処理済み充填剤は、脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン、ケイ素に結合した水素原子を3つ以上有する有機ケイ素架橋剤、および触媒と混合される、工程。
【請求項9】
乾燥シリカ充填剤は、オルガノポリシロキサンオリゴマーと混合される、請求項8に記載の工程。
【請求項10】
オルガノポリシロキサンオリゴマーおよび0.02〜2重量%のアルケニル基を含有するアルケニル官能化ポリオルガノシロキサン(A)が、使用前にシリカ充填剤と混合されて10〜80重量%のシリカを含むマスターバッチを形成し、前記マスターバッチは脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を有するオルガノケイ素架橋剤、および触媒とさらに混合される、請求項8に記載の工程。
【請求項11】
マスターバッチを形成するために、オルガノポリシロキサンオリゴマーおよびシリカ充填剤と混合されるアルケニル官能化ポリオルガノシロキサン(A)は、25℃で粘度が100〜90000mPa/Sのα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンを含む、請求項10に記載の工程。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項に記載の工程によって調製された、シリコーンゴムコーティング組成物。
【請求項13】
脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を有する有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基の反応を促進する触媒、およびシリカ補強材を含有するエアバッグ用コーティング組成物であって、前記組成物は、シリカ充填剤に対して2〜60重量%のSiに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーを含有する、ことを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項12または13に記載のコーティング組成物でコーティングされたエアバッグ用布。
【請求項15】
請求項12または13に記載のコーティング組成物でコーティングされたエアバッグ。
【請求項16】
脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を有する有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基の反応を促進する触媒、およびシリカ補強材を含むコーティング組成物で布をコーティングする工程であって、前記組成物は、シリカ充填剤に対して2〜60重量%のSiに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーを含有することを特徴とする、工程。
【請求項17】
脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を有する有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基との反応を促進する触媒、およびシリカ補強材を含むコーティング組成物でエアバッグをコーティングする工程であって、前記組成物はシリカ充填剤に対して2〜60重量%のSiに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーを含有することを特徴とする工程。
【請求項18】
脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3値以上の水素原子を有する有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基との反応を促進する触媒、およびシリカ補強材を含むコーティング組成物でコーティングしたエアバッグ用布であって、前記組成物はシリカ充填剤に対して2〜60重量%のSiに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーを含有することを特徴とするエアバッグ用布。
【請求項19】
脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基を有するオルガノポリシロキサン(A)、ケイ素に結合した3つ以上の水素原子を有する有機ケイ素架橋剤、Si−H基と脂肪族不飽和炭化水素または炭化水素酸素置換基との反応を促進する触媒、およびシリカ補強材を含むコーティング組成物でコーティングしたエアバッグであって、前記組成物はシリカ充填剤に対して2〜60重量%のSiに結合したメチル基およびビニル基、並びにシラノール末端基を有するオルガノポリシロキサンオリゴマーを含有することを特徴とするエアバッグ。
【請求項20】
前記コーティング組成物が15〜40g/mで存在する、請求項18に記載のエアバッグ用布または請求項19に記載のエアバッグ。
【請求項21】
請求項14に記載のコーティング組成物でコーティングされたエアバッグ用布から製造された物品。
【請求項22】
航空用の緊急避難用シュート、ゴムボートまたはパラシュートから選択される、請求項21に記載の物品。

【公表番号】特表2013−516520(P2013−516520A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547183(P2012−547183)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/062149
【国際公開番号】WO2011/082134
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】