説明

エアバッグ用織物

【課題】継ぎ目からのガス漏洩を減少させる織物を安価で提供する。
【解決手段】特にマルチフィラメントからなる経糸と緯糸を含み、織り密度がWalz教授の定義する密度で95%より大きいことを特徴とする織物である。また、ISO9237による空気透過率(LD)が、差圧500Paにおいて3(l/dm/min)より小さく、また経糸と緯糸の捲縮比が1より大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来型の縫製したエアバッグ又はいわゆる一体製織(one-piece woven,OPW)エアバッグのいずれにも用いられるエアバッグ拘束システムのための織物に関する。
【背景技術】
【0002】
EP1463655A1(ミリケン、Milliken)には、糸(引張)強度(Garnfestigkeit)の小さい(60〜40cN/tex)ポリエステル織物から作られたエアバッグクッションが開示されている。このエアバッグクッションは、コーティングされ、折り重ねて2重縫い又は3重縫いしたステッチで周囲を仕上げている。この目的は、エアバッグの本体にコーティングした低靭性のPES繊維を用い、新しい縫い目構造によって縫い目からの漏れによるガス漏れを解消することである。
【0003】
DE10049395A(BST)には、可塑的に変形可能な糸を含む乗員拘束システムに用いるための織物が開示されている。この織物は、少なくとも一つの面方向に荷重がかかると織物の表面積の拡大を許容し、特に弾性コーティングにより、一定の透過性を有することを特徴としている。
【0004】
エアバッグに用いられる織物の表面は、衝突の際における熱及び圧力による負荷を考慮して適切に寸法が取られているが、継ぎ目(接合部、縫目)がその弱点であることが明らかとなっている。すなわち、継ぎ目が衝突時に引っ張られて膨張し、コーティングの下の基布が露出し、基布が焼けて熱いガスが制御されずに漏出することがある。
【0005】
現在、特に正面用エアバッグシステムには、コーティングが不可欠なエアバッグ用織物が特に好まれて用いられる。このコーティングの目的はエアバッグ用織物のガス漏洩を防いで密閉するためである。即ちコーティングにより織物の穴径つまりガスの通路の穴径を小さくするのである。
【特許文献1】EP1463655A1
【特許文献2】DE10049395A
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアバッグシステムを用いる場合、非常に熱いガスをエアバッグ内に噴射することによりエアバッグ内を展開し膨らませる、とりわけガス発生器(Generator)が用いられる。特にこのような高温に対処するため、とりわけコーティングが行われる。コーティングによりエアバッグの熱容量が高められる。つまりコーティングは熱エネルギの一部を吸収してエアバッグ(素材)の焼け焦げを防止し、耐熱性を向上させるのである。コーティング、特に通常のシリコーンコーティングを用いることにより、コーティングされた領域において織物の摩擦が増加し、それはエアバッグの展開過程にマイナスの影響を与えうる。
【0007】
さらに、コーティングした織物は、その除去に多大なコストが必要なため、リサイクルが困難である。
【0008】
コーティングを施すことは非常に複雑であり、重大な問題なしという訳ではない。とりわけコーティングペースト、支持布地、コーティングプロセス等のミスから縞状の仕上がりになるといった重大な問題を生じがちである。このように縞状の仕上がりは、コーティング適用の高さ(厚み)の差によって生じる。これに対処するためには、コーティング適用が必然的に低下する縞状部分に対しても最小限の適用を確保するために全体のコーティング適用を増加させる必要がある。概してコーティング工程はコストがかかるところであるため、これはエアバッグ素材の製造コストに大きな負担となる。
【0009】
エアバッグの継ぎ目(接合部、縫目 Naht)及び本体(壁部)は構造要素であり、通常は同じ織物からできている。同じ(材質)仕様に対し異なる要求を補償するため、エアバッグ本体(壁部)の性能に「弱点である継ぎ目」を適合させるために複雑な継ぎ目構造が必要となる。
【0010】
他の欠点は、正面及び運転者側エアバッグの周囲の継ぎ目からの熱いガスが漏出すことにより、運転者の腕の下の領域にやけどを負わせる危険性があることである。
【0011】
エアバッグの本体布地の追求されたフィルタ効果は、継ぎ目からのガス漏洩によって大きく減少している。即ち、本体の表面には物理的耐用強度よりも小さな応力しかかからない。継ぎ目の信頼性のない機能と比べて本体領域の性能は過剰となっており、経済的に不利である。動的な負荷に関しても、公知の高強度繊維の織物を用いた場合に、エアバッグは最適な構造となっていない。
【0012】
本発明の課題は、従来技術の公知の欠点をなくす、又は少なくとも大きく減少させる織物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(第1の解決手段)
この目的は、請求項1に記載の織物により達成される。本発明に係るエアバッグのための織物は、特にマルチフィラメントからなる、経糸と緯糸を含み、織物密度(ないしカバーファクタ)(DG%)がWALZ密度(Textilpraxis「繊維の実務」(1947, page330-366, Robert Kohlhammer, Stuttgart, Germany)のDie Gewebedichte I「織物密度I」、Die Gewebedichte II「織物密度II」という論文中でWalz教授により定義された織物密度(ないしカバーファクタ)で95%より大きいことを特徴とする。織物密度(DG)を計算するには、糸の細さ(太さ)(dtex 繊度)、糸目数(Einstellung, set)、用いる繊維素材の密度を知る必要がある。
【0014】
Walz教授による織物密度(DG%)は、次の式で定義される。
織物密度(DG%)=(d+d×f×f
ここで、
、d=それぞれ経糸及び緯糸の実質直径(mm)
、f=それぞれ経糸及び緯糸の1cmあたりの本数
糸の実質直径は次の式で与えられる。

√(dtexks
ks=-----------------------------------
88.5×√(密度g/cm

(注)上記式は平織のみに適用される。他の(種類の)織物は所定の係数を掛けた織物密度を用いる。(例えば綾織2:1=0.70、綾織2:2=0.56、綾織3:1=0.56、綾織4:4=0.38、サテン1:4=0.49、かご織2.2=0.56)
【0015】
織物の経糸と緯糸が円形で滑らかで円柱状体であると仮定すると、糸が互いに隙間なくぴったりと接触して互いに変形を生じさせない状態での密度(糸目数、1cmあたりの糸数)が計算できる。この状態を織物密度100%とする。
【0016】
用いるいくつかの用語について以下に説明する。
「バッグ」、「エアバッグ」、「側面用エアバッグ」又は「エアクッション」(Luftsack)はいずれも同じものを意味する。
「バッグ壁部ないし本体」とは、エアバッグの(継ぎ目ではない)本体壁部を意味する。
「織物の伸び(Gewebedehnung)」とは、繊維業界の当業者には自明の、素材及び構造の伸びの関数としてのパラメータを意味する。
「糸目数(Einstellung)」とは、素材の種類及び繊維の太さ(細さ)であり、構造中の経糸/緯糸の密度である。
糸の太さ(Garnfeinheit):DIN ISO 2060の定義による。
糸密度(Fadendicht):DIN EN 1049の定義による。
経糸/緯糸の縮れ(捲縮、Einarbeitung):DIN 53852の定義による。
櫛引抜抵抗(Kammausziehkraft, edge comb resistance):ASTM−D6479の定義による。(ASTM=米国試験・材料協会)
【0017】
(発明の効果)
本発明に係る高密度の織物を用いることにより、コーティングをせずに信頼性が高く機能するエアバッグを製造することができるようになる。これによって、実際上縫い合わせ方式のエアバッグ及びOPWエアバッグのいずれも大きく製造コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の択一的な一側面として、本発明に係る織物はISO9237による空気透過率(Permeabilitaet、通気度、LD)として(差圧500Paにおいて)3(l/dm/min)より小さい値、好ましくは1(l/dm/min)より小さい値を持つ。これにより、特に高強度(張力)糸を用いた場合に、ガス放出の管理を改善することができる。
【0019】
本発明の他の特に好ましい択一的側面として、織物の経糸と緯糸の捲縮比が1より大きい。経糸方向により大きなウェーブ凹凸(Ondulation)を持たせることにより、織物の経糸方向の構造的伸びに対してより強いという利点が得られる。
【0020】
本発明の他の択一的側面として、本発明に係る織物は経糸方向又は緯糸方向の櫛引抜抵抗値(力)が700Nより大きい。櫛引抜抵抗は継ぎ目(接合部、縫目)の(引張)強度の指標であり、かつ継ぎ目(接合部、縫目)の開口の尺度でもある。櫛引抜抵抗は、ASTM−D6479に従って試験され、その値は、経糸と緯糸の2つの構造間の交差点における静止摩擦として記述される。経糸と緯糸との間の静止摩擦が大きいほど、織物が構造的にその位置から変位する抵抗が大きく、櫛引抜抵抗が大きくなる。本発明によって櫛引抜抵抗が大きいことにより、継ぎ目の(引張)強度が高くなる。
【0021】
経糸の捲縮を大きくすることにより、低い空気透過率(LD)と共に高い織物密度を得ることができる。捲縮は、経糸及び/又は緯糸方向に糸を捲縮させることにより、織物構造中の繊維短縮を生ずる。捲縮に差を付けることは、経糸の張力を正確に低く保つことで達成できる。経糸の張力を小さくすると捲縮は増加することは公知である。さらに、捲縮をつけることで、織物の経糸/緯糸方向のいかなる伸びの差も補償できる。そのため、織物の素材自体の経糸/緯糸方向の伸びの差は、織物の当該伸びから捲縮の当該伸びが差し引かれて生じ、かくて非常に小さくなる。このようなパラメータを組み合わせることによって、従来の縫い合わせた継ぎ目又は織り合わされた継ぎ目(Webnaht)のいずれでも、エアバッグの継ぎ目の開口をより小さくすることができる。これは一つには高い櫛引抜抵抗のためであり(経糸/緯糸の位置が変位することに基づく織物構造の開口を減少)、またもう一つには大きな弾性率(E-module)のためである(負荷時の糸構造の伸びが小さいことに基づく織物構造の開口を減少)。継ぎ目の開口がより小さくなることにより、エアバッグ製造に用いる継ぎ目のシール(例えばコーティング)がなくとも、(ガス)漏洩は非常に小さくなる。
【0022】
本発明のさらなる択一的側面として、本発明に係る織物は、櫛引抜抵抗値として、経糸方向又は緯糸方向に750Nより大、ないし900Nより大である。この利点は上述のとおりである。
【0023】
(第2の解決手段)
本発明の課題はまた、請求項15に示すように、特にマルチフィラメントの経糸及び緯糸を含むエアバッグ用織物であって、以下に本発明により新しく定義されるPFファクタが2700より大きいことを特徴とする織物により解決される。
【0024】
PFファクタの計算式:

織物の空孔数×(単位表面積重量)
PF=-----------------------------------------
1000000

ここで、
織物の空孔数=(経糸密度−1)×(緯糸密度−1)
経糸・緯糸の糸密度=織物の単位長さ(Strecke)あたりの糸数(n/dm)
比表面積重量=単位表面積あたりの重量(g/m)(坪量)
【0025】
請求項11以下の請求項に記載された本発明に係る利点は、請求項1〜10のいずれかに記載した織物の利点と同じである。本発明に係る高密度の織物を用いることにより、コーティングをせずに信頼性が高く機能するエアバッグを製造することができるようになる。これによって、縫い合わせ方式のエアバッグ及びOPWエアバッグのいずれも大きく製造コストを削減できる。PFファクタが大きいほど、コーティングしていないエアバッグの性能が向上する。
【0026】
本発明に係る高密度織物は、エアバッグを展開させるときに放出される起爆剤の粒子(粉塵)を捕捉するのに適している。従って、車両の乗員がこれによってやけどをしたり怪我をしたりするリスクを除くことができる。さらに、本発明に係る織物を用いることにより、追加の製造工程であるコーティングをなくすことができ、従来技術にありがちな不良品のために付加的な高価な検査・試験(装置)による監視をする必要性がなくなる。従って本発明に係る高密度織物を用いることにより、このようなコストも削減できる。
【0027】
本発明に係る織物のさらなる利点は、従来技術のエアバッグ用織物に比べて高い耐熱性を有することである。従来技術のコーティング(付加的な熱容量の提供=耐熱性のさらなる増大)の機能は、織物の高密度によって補って余りある。
【0028】
本発明のさらなる有利な側面として、本発明に係る織物は、ISO9237による空気透過率(LD)が3(l/dm/min)より小さく、経糸/緯糸の捲縮比が1より大きい。この利点は既に述べたとおりである。
【0029】
本発明のさらなる有利な択一的側面として、本発明に係る織物は、PFファクタが2800より大きく、好ましくは2900より大きいことにより、さらに前述の利点が強調される。
【0030】
本発明のさらなる有利な択一的側面として、本発明に係る織物は、経糸の捲縮が緯糸の捲縮より大きい。この利点は既に述べたとおりである。
【0031】
本発明の他の有利な択一的側面として、本発明に係る織物は、低張力繊維の粗(未加工ないし織ったままの状態の)織物の織物密度が100%である高密度織物である。
【0032】
本発明のさらなる有利な択一的側面として、本発明に係る織物は、織物密度(DG)が110%以上であり、LDPF糸(Low Denier Per Filament yarn、1繊維あたり5dtexより小さいデニールの細い糸)を用いた継ぎ目の引張強度が高い(櫛引抜抵抗値が200Nより大きい)。
【0033】
本発明により、例えば糸の太さ(デニール)、引張強度50〜85cN/tex、糸の伸び、弾性率及び要求に対応した糸の作用(ないし仕事)能力(後述)といった種々のパラメータによって種々の織物を形成することができると共に、エアバッグの最大内圧の範囲まで(フック則の)弾性領域にあるために、圧力がなくなるともとの密度に戻るという、(素材の伸びに関連した)伸びに特徴がある織物が形成できる。
【0034】
本発明により、細い繊維の糸から最大限の織物密度を持つ、コーティングしていないエアバッグ用織物を作ることができる。この織物は、対称的な構造であり、異なるデニール、異なる引張強度及び伸びを持つ糸からなることを特徴とする。引張強度が低下すると、弾性率も低下し作用能力は増加することに注意しなければならない。未処理(織ったまま)のもので最大100%の織物密度が得られ、処理後では最大110%の織物密度が得られる。その際、高い織物密度及び高い櫛引抜抵抗により継ぎ目からの漏洩を最小限にすることが目的とされる。この目的のため、エアバッグ本体は、エアバッグの構造に応じて異なった仕様の糸を用いたコーティングされていない織物から製造される。
【0035】
本発明に係る解決法は種々の利点を持つ。1つは、櫛引抜抵抗(N)で測定される高い継ぎ目の引張強度により、エアバッグ本体及び/又は追加の通気口からのガスの抜けをコントロールできるということである。これは保護効果を高めることができる。そのほか、本発明に係る織物により、設計者はエアバッグの設計を最適化することができる。織物密度の最大限まで密度を高めることにより、構造的伸び(ウェーブ凹凸)をより大きくすることができる。低張力の糸を用いることにより、表面の一部をより大きな番手の糸で補償し、織物の素材の伸びを増加させる。動的負荷条件下での作用能力を増加させたことにより、より弾力的に応答することができる。これらは、より低い伸びの糸を用いることによる製造コストの低減になり、また伸びの低い糸で良いことから、品質の良い糸を用いることによる品質コストを低減することができる。
【0036】
工業PA6.6糸(470dtex)のパラメータ例



透過率LDを小さくするには、大きなフィラメント数を含む糸を用いる必要がある。言い換えれば、小さいデニールの繊維(LDPFタイプ)、例えば5(dtex/繊維)以下である。
作用能力は次式により与えられる。
作用能力(cN/tex)=靭性(cN/tex)×√(伸び)(%)
【実施例】
【0037】
(織物の実施例)
以下のパラメータ表は(事前)計算値である。


* Webnutzeffekt, **Weberei-Ausbringung(織物生産量)
【0038】
織りはすべてL1/1平織りである。既に述べたように、コーティング無しの高密度織物は、エアバッグ本体表面からのガス漏洩を最適化するように継ぎ目のシールが改善されている。即ち、このように内圧が増加すると透過率LDも増加してガス漏洩をコントロールし、その後圧力が降下するとLDは−負荷に対応して同様に−再びゼロに向かって降下される。このような(ガス)保持作用の挙動は継ぎ目が気密の場合は本体表面を介してのみコントロールできる。
【0039】
その都度の車両、用いるガス発生器(膨張器)及び継ぎ目構造に適合した車両用製織エアバッグの開発の必要のため、強度、伸び及び作用能力の異なる糸タイプをもった高密度織物が、設計される。このようにして、織りの設計構造によってエアバッグの拡開挙動の最適化のより大きな余地が生ずる。
【0040】
静的透過率LDが(差圧500Paにおいて)同じ1(l/dm/min)であっても、強度(靭性)、伸び、作用能力及び弾性率などの織物パラメータが、そしてさらに継ぎ目構造が変更でき、ないし最適化しうる。
【0041】
これによって特に、構造的伸びと素材の伸びとからなる織物の伸びを、(素材の伸びに関して)弾性的な(フック則の)範囲で、負荷の均等化という意味において、利用することができる。
【0042】
WALZの定義(前述)による最大の織物密度は、処理後の織物で最大110%であり、未処理織物で約100%である。

本発明に係る織物構造例の概要
(素材の糸密度及びWALZによる織物密度の例を示す)

【0043】
織物のパラメータである伸び(%)、引き裂き強度(N),櫛引抜抵抗(N),最大引張強度(N/5cm)及び透過率LD(l/dm/min)は、撚糸の選択並びに織り及び仕上げプロセスの対応する製造パラメータによっても調節される。
【0044】
本発明において、cN/texで表される引張強度が小さく、同時に素材伸びが大きく、作用(仕事)能力が大きく、最大引張強度が小さいPA6.6撚糸(例えば上記のもの)を用いることができる。
【0045】
同様に、本発明において、糸密度を最大限にした(織物密度が可及的に最大化された)ことを特徴とする織物構造が提供される。
【0046】
コーティングされていない状態において、織物は1(l/dm/min)という低い空気透過率しか持たない。エアバッグの内圧に対応して、作用能力が増加された織物は伸び、透過率LDは大きくなり、同時にエアバッグ容積は増加し、その結果内圧は減少する。コーティングされた織物もその作用能力及びエアバッグ容積に関して同様な挙動を示す。
【0047】
コーティングの弾性率がどの程度かによって、透過率LDの増加の仕方ないし内圧に依存するLD曲線の経過は異なる。弾力性のある膜でコーティングをした織物としての挙動(ないし関係、Verhaelfnis)も同様であり、エアバッグ本体の伸び挙動は、エアバッグ容積の増加により、内圧を減少させる。
【0048】
本発明に係る織物により、エアバッグ本体部分の引張強度及び作用能力/継ぎ目の負荷の挙動(ないし関係)が改善されて、継ぎ目の気密性が向上する。従来技術とは異なって織物の継ぎ目領域からのコントロールできない膨張ガスの漏洩が発生しない。本発明によってこの制限(継ぎ目からの漏洩)をなくすことにより、エアバッグの保持(ないし拘束)能力が向上する。
【0049】
このような有用な効果にもかかわらず、出荷量が小さいため工場での製造コストは増加する。しかしこれは品質コストの低減でそれ以上に補償される。撚糸の品質を改善することでそれ以上に製造速度が増加するのである。標準的な織物と比較することにより、最適化のための必要条件が実証される。本発明に係る高密度織物は、コーティングなしでエアバッグに用いることができる。これはコーティングコストを削減できると同時に、リサイクル性も改善するものである。
【0050】
最後に、本発明に係る2つの例(下記例1、2)を、2つの従来例(下記例5、6)と比較した。

例番号 本発明例1 本発明例2 従来例5 従来例6
構造
糸の太さ、経糸(dtex) 235 470 235 470
素材密度、経糸(g/cm3) 1.15 1.15 1.15 1.15
糸密度、経糸 (x/dm) 316 220 285 200
糸の太さ、緯糸(dtex) 235 470 235 470
素材密度、緯糸(g/cm3) 1.15 1.15 1.15 1.15
糸密度、緯糸 (x/dm) 316 220 285 190

実質直径、経糸 0.16152574 0.228431893 0.16152574 0.22843189
実質直径、緯糸 0.16152574 0.228431893 0.16152574 0.22843189

WALZ密度(%) 104.2119775 101.0226669 84.768245 79.315317

基布重量 (g/m2) 171.5 243.9 155 210

空孔数 (x/dm2) 99225 47961 80656 37611
坪量 29412.25 59487.21 24025 44100

PFファクタ (x) 2918.430506 2853.066079 1937.7604 1658.6451

捲縮、経糸 (%) 10.2 9.5 6.46 6.6
捲縮、緯糸 (%) 4.4 6.3 4.73 3.9

Δ捲縮、
(経糸−緯糸) (%) 5.8 3.2 1.73 2.7

織物伸び、経糸 (%) 38.8 40.6 34.2 36.09
織物伸び、緯糸 (%) 32.1 36.3 32.92 34.34

素材伸び、経糸 (%) 28.6 31.1 27.74 29.49
素材伸び、緯糸 (%) 27.7 30 28.19 30.44

Δ素材伸び、
(経糸−緯糸) (%) 0.9 1.1 -0.45 -0.95

櫛引抜抵抗、経糸 (N) 715 895 632 511
櫛引抜抵抗、緯糸 (N) 819 907 628 422

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にマルチフィラメントからなる、経糸と緯糸とを含むエアバッグ用織物であって、織物密度がWALZ密度で95%より大きいことを特徴とする織物。
【請求項2】
ISO9237による空気透過率LDが、差圧500Paにおいて3(l/dm/min)より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の織物。
【請求項3】
前記経糸/前記緯糸の捲縮比が1より大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の織物。
【請求項4】
前記織物がコーティングされていないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の織物。
【請求項5】
前記織物密度がWALZ密度で100%より大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の織物。
【請求項6】
前記経糸方向又は前記緯糸方向の櫛引抜抵抗値が700Nより大きいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の織物。
【請求項7】
前記経糸方向又は前記緯糸方向の櫛引抜抵抗値が750Nより大きいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の織物。
【請求項8】
前記経糸方向又は前記緯糸方向の櫛引抜抵抗値が800Nより大きいことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の織物。
【請求項9】
前記経糸方向又は前記緯糸方向の櫛引抜抵抗値が850Nより大きいことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に記載の織物。
【請求項10】
前記経糸方向又は前記緯糸方向の櫛引抜抵抗値が900Nより大きいことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一に記載の織物。
【請求項11】
特にマルチフィラメントからなる、経糸と緯糸とを含むエアバッグ用織物であって、(空孔・坪量)PFファクタが2700より大きいことを特徴とする織物。
【請求項12】
ISO9237による透過率LDが、3(l/dm/min)より小さいことを特徴とする、請求項11に記載の織物。
【請求項13】
前記経糸の前記緯糸に対する捲縮比が1より大きいことを特徴とする、請求項11又は12に記載の織物。
【請求項14】
前記織物がコーティングされていないことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一に記載の織物。
【請求項15】
前記PFファクタが2800より大きいことを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一に記載の織物。
【請求項16】
前記PFファクタが2900より大きいことを特徴とする、請求項11〜15のいずれか一に記載の織物。
【請求項17】
前記経糸方向又は前記緯糸方向の櫛引抜抵抗値が700Nより大きいことを特徴とする、請求項11〜16のいずれか一に記載の織物。
【請求項18】
前記経糸方向又は前記緯糸方向の櫛引抜抵抗値が750Nより大きいことを特徴とする、請求項11〜17のいずれか一に記載の織物。
【請求項19】
前記経糸方向又は前記緯糸方向の櫛引抜抵抗値が800Nより大きいことを特徴とする、請求項11〜18のいずれか一に記載の織物。
【請求項20】
前記経糸方向又は前記緯糸方向の櫛引抜抵抗値が850Nより大きいことを特徴とする、請求項11〜19のいずれか一に記載の織物。
【請求項21】
前記経糸方向又は前記緯糸方向の櫛引抜抵抗値が900Nより大きいことを特徴とする、請求項11〜20のいずれか一に記載の織物。
【請求項22】
前記経糸の捲縮が前記緯糸の捲縮より大きいことを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一に記載の織物。

【公表番号】特表2009−533566(P2009−533566A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504646(P2009−504646)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003265
【国際公開番号】WO2007/118675
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(505351153)アイティジィ オートモーティブ セーフティー テキスタイルズ ゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフトゥング (11)
【Fターム(参考)】