説明

エアバッグ装置

【課題】インナバッグを備えるエアバッグの折畳み完了時の嵩高さを抑制すること
【解決手段】本エアバッグは、長手方向へ延びる接合部38を備えるインナバッグ20とインナバッグ20を収納するアウタバッグ15とで構成される。エアバッグ10を短手方向へ折畳んだ際、接合部38と重なる領域のアウタバッグ15の厚みが、接合部38と重ならない領域のアウタバッグ15の厚みより、薄くなるようにエアバッグ10の折畳部位10eを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張用ガスを流入させて膨張するアウタバッグ内に膨張用ガスの流れを規制するインナバッグが配置されるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アウタバッグの内部にガスの流れを規制するインナバッグを配置させて、エアバッグ全体をバランス良く展開させることができるエアバッグ装置が知られている(特許文献1、特許文献2)。特許文献1(図5)、特許文献2(図28)に開示されているインナバッグは、エアバッグのガス流入口と対向する部分で、両端を縫製することにより結合されている。
【0003】
特に、特許文献2に記載のインナバッグは、上側膜長LUが下側膜長LDより長くするように設定されており、エアバッグが膨張した際、インナバッグの先端部がアウタバッグを押圧するように、インナバッグが上下方向に延びて配設されている。このようなインナバッグは、エアバッグの展開膨張時、インナバッグ内の内圧が高い状態で維持される為、上記インナバッグの縫製されている箇所でほづれたりする可能性があり、通常、図14に示すように補強布121を入れてインナバッグ120と縫製し、接合部130を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−216814
【特許文献2】特開2008−273486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアバッグ110は一般的に、図15(a)〜(c)に示すように、ほぼ均等の幅(W0、W1)で、エアバッグ中央部へコンパクトに折畳まれる。ここで、上述のようにインナバッグ120に接合部130があると、接合部130をどちらか一方に倒してから折り畳むことになるが、図14(b)に記載の通りインナバッグ120には接合部130の厚みT1が存在する。その為、図15(b)に記載の折畳中間体111は、折畳中間体111のA−A断面に示すように、アウタバッグ115がインナバッグ120の接合部130の上に、折り重ねられることになり、エアバッグ中央部が上記接合部130の厚みT1分、嵩高い状態となる。そのエアバッグ中央部が嵩高い状態でさらに折り畳むと、図15(c)に記載の折畳完了体112のC視に示すように、エアバッグ中央部が外側部分より嵩高い状態のまま大きくなってしまい、カバーとバッグホルダー(ケース)との収納空間の高さが低いと、前記折畳完了体112が前記収納空間に収納できなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、インナバッグに接合部が形成されている場合でも、エアバッグの折畳み完了時の嵩高さを抑制して、カバーとバッグホルダー(ケース)との収納空間へコンパクトに収納可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流入用開口(11)から流入する膨張用ガスにより折畳まれた状態から膨張する袋状のアウタバッグ(15)と、
前記アウタバッグ(15)の内部に配置され、前記流入用開口(11)から流入する膨張用ガスの流れを規制すると共に、一方向への長さと、該一方向と直交する方向の長さとで長短を設けたインナバッグ(20)と、を備えたエアバッグ(10)であって、
前記インナバッグ(20)は、前記流入用開口(11)に対向する箇所に、長手方向に延びる接合部(38)を備え、
前記エアバッグ(10)は、前記インナバッグ(20)の短手方向に、前記アウタバッグ(15)の両端(15a、15b)から中央へ折畳まれた際、前記接合部(38)と重なる領域の前記アウタバッグ(15)の厚みが、前記接合部(38)と重ならない領域の前記アウタバッグ(15)の厚みより、薄くなるように、エアバッグ(10)の折畳部位(10e)を形成していること、を特徴とする
、を特徴とする。
【0008】
また好適な実施形態として、前記折畳部位(10e)は、複数の折重部を備えており、少なくとも前記流入用開口(11)側の最初の折目(FL1)より乗員側に形成された最初の折重部(10e−2)が前記接合部(38)と重なっておらず、該最初の折重部(10e−2)よりも乗員側の折畳部(10e−3、10e−4)の少なくとも一つが、前記接合部(38)と重なっていて、接合部(38)を収納する空間(SP)を備える、構成にすると好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に記載のエアバッグによれば、接合部38に重なる領域のアウタバッグ15の厚みが、接合部38に重ならない領域のアウタバッグ15の厚みより、薄く折畳まれている為、インナバッグの接合部38の厚みT1があっても、エアバッグ10の折畳中間体10g及び折畳完了体10hの中央が盛り上がることなく、エアバッグの中央と外側(周辺)の高さもほぼ一緒となり、カバーとバッグホルダー(ケース)との収納空間へコンパクトに収納できる。
【0010】
本発明の請求項2に記載のエアバッグ装置によれば、折重部によって形成された空間SPに、接合部38が収納されているので、膨張用ガスがエアバッグ10に流入しインナバッグ20が膨らんだ時、インナバッグ20がアウタバッグ15の最初の折り重ね部[(第2折重部)10e−2]を過度に押し上げることがない為、エアバッグ10の折畳部位10e全体がエアバッグ左右方向(エアバッグ外側)へ押し広げられにくく、カバー側壁部に干渉することなく、スムーズに展開膨張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るステアリングホイール用のエアバッグ装置を示す略平面図である。
【図2】本発明のエアバッグ装置における車両搭載状態の縦断面図である。
【図3】本発明のエアバッグ装置に使用するエアバッグの構成部材を示す分解斜視図である。(実施例1)
【図4】本発明のインナバッグを単体で膨張させた状態を示す概略正面図である。
【図5】本発明のエアバッグ装置に使用するエアバッグの膨張完了時におけるインナバッグのしぼんだ状態の上下方向に沿った概略縦断面図である。
【図6】本発明のエアバッグ装置に作動時を順に示す概略縦断面図である。
【図7】本発明のエアバッグ装置に使用するインナバッグの製造とアウタバッグ内への収納状態を順に説明する図である。(実施例1)
【図8】本発明のエアバッグの折り畳み方法を説明する図と、折畳中間体と折畳完了体の断面図である。(実施例1)
【図9】従来と本発明のエアバッグの折畳完了体を比較した図である。
【図10】本発明の実施例2の折畳中間体を示す断面図である。
【図11】本発明の実施例3の折畳中間体を示す断面図である。
【図12】本発明の実施例4の折畳中間体を示す断面図である。
【図13】本発明の実施例5の折畳完了体を示す断面図である。
【図14】従来のインナバッグを示す図である。
【図15】従来のエアバッグの折り畳み方法を説明する図と、折畳中間体と折畳完了体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
インナバッグを備えたエアバッグでも、折畳んだ際のエアバッグの嵩高さを抑制するという目的を実現した。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施例1のエアバッグ装置M1は、図1,2に示すように、ステアリングホイールWに搭載されるものであり、ステアリングホイールWは、ステアリングホイール本体1と、ステアリングホイール本体1の中央のボス部Bの上部に配置されるエアバッグ装置M1と、を備えて構成されている。ステアリングホイール本体1は、操舵時に把持する円環状のリング部Rと、リング部Rの中央に配置されてステアリングシャフトSSに締結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する4本のスポーク部Sと、を備えて構成されている。このエアバッグ装置M1では、収納されたエアバッグ10が、膨張途中において、極力、収納部位の周縁の部位となるリング部Rの上面PRから離れずに、膨張できるように構成されている。
【0014】
なお、本明細書の実施形態では、特に断らない限り、前後方向は、ステアリングシャフトSSの軸方向に沿った前後方向が対応し、上下方向は、車両の直進操舵時のステアリングシャフトSSの軸方向と直交した上下方向が対応し、左右方向は、車両の直進操舵時のステアリングシャフトSSの軸方向と直交した左右方向が対応するものとする。
【0015】
ステアリングホイール本体1は、図2に示すように、リング部R、ボス部B、スポーク部Sの各部を連結するように配置されて、アルミニウム合金等の金属製の芯金2を備えて構成されている。芯金2のリング部Rの部位と各スポーク部Sのリング部R側の部位とには、合成樹脂製の被覆層5が被覆されている。芯金2のボス部Bの部位には、ステアリングシャフトSSを挿入させてナットN止めするための鋼製のボス3が配設されている。また、ステアリングホイール本体1の下部には、ボス部Bの下方を覆う合成樹脂製のロアカバー7が配設されている。
【0016】
エアバッグ装置M1は、図2に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ10、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するインフレーター43、折り畳んだエアバッグ10の上方を覆うエアバッグカバー49、エアバッグ10とインフレーター43とを収納保持するとともにエアバッグカバー49を保持するケース45、及び、インフレーター43とともにエアバッグ10をケース45に取り付けるためのリテーナ41、を備えて構成されている。
【0017】
リテーナ41は、図2に示すように、インフレーター43の円柱状の本体部43aを下方から挿入可能な四角環状として、四隅に下方へ突出する図示しないボルトを備えて構成されている。リテーナ41は、突出させた状態でエアバッグ10内に収納されて、ケース45への取付時、各ボルトを、ケース45の底壁部46の貫通孔46b(図1参照)とインフレーター43のフランジ部43cとに貫通させて、各ボルトに図示しないナットを締結させることにより、エアバッグ10とインフレーター43とをケース45の底壁部46に取付固定している。
【0018】
インフレーター43は、図2に示すように、上部に複数のガス吐出口43bを備えた円柱状の本体部43aと、本体部43aの外周面から突出するフランジ部43cと、を備えて構成されている。フランジ部43cには、リテーナ41の各ボルトを貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。
【0019】
ケース45は、図1,2に示すように、長方形板状の底壁部46と、底壁部46の外周縁から上下に延びる側壁部47と、を備えた板金製とし、ステアリングホイールWのボス部Bの上部に配置されて、折り畳まれたエアバッグ10を収納する収納部位を構成している。底壁部46には、インフレーター43の本体部43aを下方から挿入可能な円形に開口した挿通孔46aが形成されるとともに、その周囲に、リテーナ41の各ボルトを貫通させる4つの貫通孔46bが形成されている。側壁部47の上端には、外方へ延びる取付片47aが形成され、取付片47aには、図示しないホーンスイッチ機構の取付基板が取り付けられ、図示しない取付基板を利用して、ケース45がステアリングホイールWの芯金2に取付固定され、エアバッグ装置M1が、ステアリングシャフトSSに装着済みのステアリングホイール本体1のボス部Bの上部に搭載されることとなる。また、ケース45の側壁部47には、リベット48等を利用してエアバッグカバー49の側壁部51が取り付けられている。
【0020】
エアバッグカバー49は、合成樹脂製として、収納したエアバッグ10の上方を覆う天井壁部50と、天井壁部50の外周縁付近から下方へ延びる略四角筒形状の側壁部51と、を備えて構成されている。天井壁部50には、膨張するエアバッグ10に押されて前後両側に開く2枚の扉部50aが形成されている。
【0021】
エアバッグ10は、図1,2の二点鎖線に示すように、膨張完了形状を、上方から見て円形として、側方から見て略楕円形とするように構成されて、図2に示すように、膨張用ガスを流入させるように円形に開口する流入用開口11が配設されている。流入用開口11の周縁には、エアバッグ10をケース45の底壁部46に取り付けるためのリテーナ41の各ボルトを貫通させる取付孔13が、形成されている(図3参照)。そのため、流入用開口11の周縁が、エアバッグ10の収納部位としてのケース45の底壁部46に取付固定される取付部位12としている。なお、流入用開口11、各取付孔13、及び、取付部位12は、後述するアウタバッグ15とインナバッグ20の重なる各部位に、それぞれ、配設されることとなる。また、重なり状態は、エアバッグ10の外周側から内周側にかけて、アウタバッグ15、インナバッグ20としている。
【0022】
そして、実施形態のエアバッグ10は、ポリエステルやポリアミド等の可撓性を有した織布から形成され、図3、5、6に示すように、エアバッグ10の外周壁を構成するアウタバッグ15と、流入用開口11を覆うようにアウタバッグ15内に配置されるインナバッグ20と、を備えて構成されている。インナバッグ20は、流入用開口11を経て流入してきた膨張用ガスG(図2参照)をアウタバッグ15へ流出して、アウタバッグ15を膨張させるように、複数(実施形態では4個)の流出口27を備えている。
【0023】
アウタバッグ15は、図3、5、6に示すように、平らに展開した際に円形状となる2枚の車体側壁部16と運転者側壁部17とから構成され、外周縁相互を縫合させて結合させることにより、楕円球状の袋状に膨張するように構成されている。車体側壁部16は、アウタバッグ15の膨張完了時、リング部R側に位置することなり、運転者側壁部17は、アウタバッグ15の膨張完了時、運転者側に位置することとなる。車体側壁部16の中央には、流入用開口11が開口しており、その周縁には、取付孔13が形成されている。
【0024】
インナバッグ20は、膨張時の形状として、図3〜7に示すように、流入用開口11とその周縁に配置される4つの取付孔13とを有した中央部21と、中央部21から流入用開口11の直径方向に沿って上下両側に延びる腕部23(23U,23L)と、を備えて構成されている。インナバッグ20は、中央部21の流入用開口11の周縁が、アウタバッグ15とともに、リテーナ41に共締めされるように押えられてケース45の底壁部46に取付固定される取付部位12となっている。また、各腕部23は、中央部21から先端部26の先端の頂部26aにかけて、先細りの筒形状となるように、構成されている。各先端部26の各頂部26aを、車体側壁部16と運転者側壁部17との外周縁16b,17b相互の結合時、共縫いして、アウタバッグ15に結合させている。よって、インナバッグ20は、各頂部26aと取付部位12とを除くアウタバッグ15の内周面15aから離隔可能に配設されることとなる。
【0025】
インナバッグ20の流出口27は、流入用開口11からの膨張用ガスGの流入時、インナバッグ20の中央部21から各腕部23の先端部26の頂部26aまでの周壁の全域を膨らませ可能に、各腕部23の先端部26より、流入用開口11側の位置に配置されるとともに、開口面積が大きくなりすぎないように、設定されている。なお、実施形態の場合には、各流出口27は、各腕部23における中央部21と先端部26との間の中間部25の上下方向に沿った側面に、円形に開口して形成されており、各腕部23で2個ずつ、合計4個配設されている。さらに、各腕部23に設けられる二つずつの流出口27は、各腕部23がリング部Rの上面PRから離れないように、車両後方の運転者側壁部17へ向かって膨張用ガスGを流出させるように構成されている
【0026】
また、インナバッグ20は、各ボルトを取付孔13から突出させた状態でインナバッグ20内にリテーナ41を入れて、中央部21における流入用開口11の周縁の取付部位12を固定した状態とし、そして、インナバッグ20単体を膨らませた状態では、図4に示すように、二つの腕部23U,23Lの延びている上下方向と直交する左右方向から見た状態で、流入用開口11の開口面OPより、膨張用ガスGの流入方向DBと逆方向DFに下がった位置に、換言すれば、アウタバッグ15の流入用開口11の周縁におけるケース45から離脱した周縁離脱部位16aをケース45の周縁側に押える押圧力PWの作用方向に沿って(図5、6参照)、開口面OPより下がった位置に、前後の各腕部23における先端部26の頂部26aが配置されるように、構成されている。
【0027】
さらに、実施形態のインナバッグ20では、膨張完了時、流入用開口11と対向する側の上側周壁29での二つの腕部23U,23Lの先端部26間を結ぶ稜線29aを凸形状とするとともに、上側周壁29の二つの腕部23U,23Lの先端部26間を結ぶ膜長(上側膜長)LUを、流入用開口11側の下側周壁30での二つの腕部23U,23Lの先端部26間を結ぶ膜長(下側膜長)LDより、長くするように、構成している。上側周壁29は、腕部23Uの頂部26aから、腕部23Uの上面23a、中央部21の上面21a、腕部23Lの上面23aを経て、腕部23Lの頂部26aまでの部位である。下側周壁30は、腕部23Uの頂部26aから、腕部23Uの下面23b、中央部21の下面21b(この部位は、リテーナ41によって固定される取付部位12となる)、腕部23Lの下面23bを経て、腕部23Lの頂部26aまでの部位である。
【0028】
このインナバッグ20は、図7(a)に示すように、平らに展開した状態で菱形状となるインナバッグ本体35とインナバッグ本体35の各辺から外側へ突出した4本の余剰部36と、で構成されている。インナバッグ20を形成する際には、図7(a)〜(b)に示すように、まずを余剰部36をインナバッグ本体35内へ折り、その折重ねた部分を、第1縫製ラインS1で縫合する。さらに図7(b)〜(c)に示すように、折目FL0で二つ折りしたインナバッグ本体35の重ねた外周縁相互を、第1縫製ラインS1より外側の二つの第2縫製ラインS2で縫合し結合して、結合縁37を設けて、インナバッグ20を形成している。つまり、この結合縁37は、4枚の基布を重ねた状態で結合されているので、インナバッグ20の接合部38として存在することになり、インナバッグ20の内圧が高くなっても、ほづれない状態となっている。さらに、図7(d)に示すように、インナバッグ20を平らに広げるとともに、接合部38を結合縁37に沿って且つ結合縁37に対して直交方向の一方へ倒して折畳むと共に、結合縁37に対して直交方向に沿う谷折りの折目VFを付けて、中央部21の余剰部分である対向頂部22をインナバッグ本体35に重ねるように折り畳む。このような折り畳み状態で、インナバッグ20をアウタバッグ15内に収納しておく。
【0029】
第1折畳工程では、まず、図8(a)に示すように、対向頂部22を折目VFを付けてインナバッグ本体35上に重ねるように折り畳んだ状態で、インナバッグ20をアウタバッグ15内に収納しておく。また、アウタバッグ15の運転者側壁部17を車体側壁部16の上方側に重ねて平らにし、エアバッグ10を流入用開口11を中心として、平らに展開させておく。そして、図8(a)、(b)に示すように、インナバッグ20の結合縁37(接合部38の長手方向)に対して直交するエアバッグ10の左縁10a,右縁10b(アウタバッグ15の左縁15aと右縁15b)を、それぞれ、折目FL1〜FL6に従い、流入用開口11に接近させて、結合縁37(接合部38の長手方向)と直交するエアバッグ10の幅寸法を狭めるように蛇腹折りして折り畳むと、折畳中間体10gが形成される。左右の折畳部位10e,10fは、運転者側壁部17上に中心線ICを中心として、線対称形に折り畳まれている[図8(b)D−D断面参照]。
【0030】
第2折畳工程では、図8(b)〜(c)に示すように、第1折畳工程を経た後、第1折畳工程前のインナバッグ20の結合縁37(接合部38の長手方向)に沿った方向のエアバッグ10の上縁10c、下縁10d(アウタバッグ15の上縁15c、下縁15)を、それぞれ、流入用開口11に接近させて、結合縁37に沿った方向のエアバッグ10の幅寸法を狭めるように折り畳む。具体的には、流入用開口11から上縁10cや下縁10dまでの中間部位を巻いて、上縁10cと下縁10dとを対向させるように、流入用開口11の上方に配置させている[図8(c)E−E断面参照]。このように折畳まれて、折畳完了体10hが完成する。そして、この折り畳んだエアバッグ10(折畳完了体10h)を、ステアリングホイールに搭載する。本実施形態の第2折畳工程では、上記折畳方法で畳まれているが、この方法に限らず、蛇腹折り、ロール折りなど折り方を採用しても良い。
【0031】
本エアバッグ10には、インナバッグ20の接合部38が存在しており、図8(a)のように、中心線ICの左側へ倒している。つまり、折畳中間体10gの図8(b)D−D断面に示すように、接合部38は厚みT1が存在する。エアバッグ10(アウタバッグ15)の左折畳部位10eは、中央から第1折目FL1までを第1折重部10e−1とし、第1折目FL1〜第2折目FL2、及び第2折目〜第3折目FL3の距離W1で設定した部分を第2折重部10e−2とし、第3折目FL3〜第4折目FL4、及び第4折目〜第5折目FL5との距離W2で設定した部分を第3折重部10e−3とし、第5折目〜第6折目、第6折目〜左縁10a(左縁15a)の距離W3で設定した部分を第4折重部10e−4として折畳まれている。また、第2折重部10e−2は、図8(b)D−D断面で見たとき、接合部38(領域X)と重なっていない状態で折畳まれており、第3折重部10e−3は接合部38(領域X)と若干重なっている状態で折畳まれており、第4折重部10e−4は接合部38(領域X)と重なっている状態(オーバーラップしている状態)で、折り重ねられている。ここで、右折畳部位10fは、左折畳部位10eと中心線ICで対称になるように折畳まれている。よって、エアバッグ10は、空間SPを形成するように折畳まれていることになり、その空間SP内にインナバッグ20の接合部38が配置されている構造となっている。
【0032】
エアバッグ10(アウタバッグ15)の各折重部の厚みはそれぞれ、第1折重部10e−1の厚さはH0、第2折重部10e−2〜第4折重部10e−4の厚さは、ほぼ均等なH1となっている。また、第2折重部10e−2から第4折重部10e−4まですべて重なっている箇所を領域aとし、第3折重部10e−3と第4折重部10e−4が重なっている箇所を領域b、第2・3折重部とは重なっていない第4折重部10e−4の箇所を領域cとすると、領域aでは厚みHa=3×H1、領域bでは厚みHb=2×H1、領域cでは厚みHc=H1となって、エアバッグ10の中央に行くに従って、エアバッグ10(アウタバッグ15)の厚みが薄くなっている。換言すれば、折畳中間体10gの折畳部位10eは、接合部38の存在する領域Xの折畳部位の厚みが、接合部38が存在しない領域(領域Xと重ならない部分)の折畳部位の厚みより、薄くなっている。従って、図9(実線)に示すように、インナバッグ20の接合部38の厚みT1があっても、エアバッグ10の折畳完了体10hの中央が盛り上がることなく、エアバッグの中央と外側(周辺)の高さもほぼ一緒となり、従来(点線)ように中央部分の高さが高くならないため、カバーとバッグホルダー(ケース)との収納空間へコンパクトに収納が可能となる。
【0033】
このステアリングホイールW用のエアバッグ装置M1では、作動時、図2に示すように、膨張用ガスGが流入用開口11を経てエアバッグ10に流入すると、エアバッグ10が膨張し、エアバッグカバー49の扉部50a,50aを押し開いて、エアバッグ10が、図2の二点鎖線に示すように、収納部位としてのケース45から突出して、リング部Rの上面PR側を覆うように、膨張を完了させる。その際、エアバッグ10の膨張初期では、図5、図6に示すように、インナバッグ20が、アウタバッグ15より先に膨張を完了させる。また、アウタバッグ15も、膨張するインナバッグ20自体に押されたり、あるいは、インナバッグ20の流出口27からの膨張用ガスGにより膨張し、そして、インナバッグ20とともに、ケース45から突出する。エアバッグ10は、折畳まれた順とは逆の順番で、上下方向の折りを解消後、左右方向の折りを解消するように、展開膨張する。
【0034】
このアウタバッグ15の膨張時には、先に膨張を完了させたインナバッグ20が、流入用開口11から離れた各腕部23U,23Lの先端部26によって、エアバッグ装置M1の作動時におけるインナバッグ20の膨張完了形状を維持している間、車体側壁部16の流入用開口11の周縁におけるケース45から離脱した周縁離脱部位16aをケース45の周縁側となるリング部Rの上面PR側に押さえ、かつ、押さえ状態を維持することとなる。なお、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ10の膨張完了後、すなわち、アウタバッグ15が、インナバッグ20の流出口27から供給される膨張用ガスGによって、膨張を完了した後、インフレーター43からの膨張用ガスGの供給が停止すれば、図6のB,Cに示すように、インナバッグ20は、膨張完了形状からしぼみ、押圧力PWを発揮できない状態となる。
【0035】
したがって、第1実施形態のステアリングホイールW用のエアバッグ装置M1では、アウタバッグ15は、図6のBに示すように、膨張初期から膨張完了後の膨張用ガスGの供給停止までの間、ケース4の周縁側の周縁離脱部位16aがリング部Rの上面PRから浮き上がることを抑制されて、膨張し、膨張途中の揺動運動(アウタバッグ15がリング部Rから離れたり再びリング部Rに当たる揺動運動)が抑制される。その結果、膨張途中に乗員(運転者)を受け止めることとなっても、アウタバッグ15は、素早くリング部Rの上面PRに支持されて反力を確保できて、クッション作用を生じさせて迅速に運転者を受け止めることができる。
【0036】
以上に記述した本発明によれば、次の効果が得られる。
(1)図8に示すように、折畳中間体10gの折畳部位10eにおいて、第2折重部10e−2は、接合部38(領域X)と重なっていない状態で折畳まれており、第3折重部10e−3は接合部38(領域X)と若干重なっている状態で折畳まれており、第4折重部10e−4は接合部38(領域X)と重なっている状態(オーバーラップしている状態)で、折り重ねられている。また、エアバッグ10は空間SPを形成するように折畳まれて、その空間SP内にインナバッグ20の接合部38が配置されている構造となっている。従って、インナバッグ20の接合部38の厚みT1があっても、エアバッグ10の折畳完了体10hの中央が盛り上がることなく、エアバッグの中央と外側(周辺)の高さもほぼ一緒となり、カバーとバッグホルダー(ケース)との収納空間へコンパクトな収納が可能となる。
(2)また、エアバッグ10は、インナバッグ20(接合部38)が空間SPに収納されており、膨張用ガスがエアバッグ10に流入しインナバッグ20が膨らんだ時、インナバッグ20がアウタバッグ15の第2折重部10e−2を過度に押し上げることがない為、エアバッグ10(アウタバッグ15)の折畳部位10e(15e)全体がエアバッグ左右方向(エアバッグ10の外側)へ押し広げられにくく、カバー側壁部に干渉することなく、スムーズに膨張することができる。
【実施例2】
【0037】
なお、本発明は、実施例1(図8)のエアバッグ10の折畳中間体10gを、図10に示すような折畳中間体10Bgに変更することも可能である。図10に示すように、折畳中間体10Bgの折畳部位10Beは、実施例1同様、第1折重部10Be−1、第2折重部10Be−2、第3折重部10Be−3、及び第4折重部10Be−4の蛇腹状に構成され、第2折重部10Be−2と第3折重部10Be−3は同じ距離W5となっており、接合部38B(領域X)と重なっていない状態であり、第4折重部10Be−4の距離W6は距離W5より長く、接合部38B(領域X)と重なっている状態(オーバーラップしている状態)で、折り重ねられている。さらに、第1折重部10Be−1の厚みを除いて、第2折重部10Be−2から第4折重部10Be−4がすべて重なっている領域eの厚みHeは、第4折重部10Be−4のみの領域fの厚みHfよりも厚くなっており、エアバッグ10Bは空間SPを形成するように折畳まれて、その空間SP内にインナバッグ20Bの接合部38Bが配置されている構造となっている。換言すると、接合部38Bに重なる領域Xのアウタバッグ15Bの厚みが、接合部38Bに重ならない領域のアウタバッグ15Bの厚みより、薄くなっている。従って、インナバッグ20Bの接合部38Bの厚みT1があっても、エアバッグ10Bの折畳完了体10Bhの中央が盛り上がることなく、エアバッグの中央と外側(周辺)の高さもほぼ一緒となり、カバーとバッグホルダー(ケース)との収納空間へコンパクトな収納が可能となる。
【0038】
また、実施例2は、第2折重部10Be−2と第3折重部10Be−3は同じ距離W5となっており、最終折重部である第4折重部10Be−4の距離W6が、前記距離W5より長くなっている。このことにより、第2折重部から最終折重部の手前の折重部(実施例2の場合は、第3折重部10Be−3)までは、長さを等しく折畳めばよい為、目視で確認しながら折りたたみ易く、また最後に最終折重部(実施例2の場合は、第4折重部10Be−4)のみエアバッグ10Bの中央まで延ばして折畳めば良いので、全体を通して、折畳み易い折畳工程となる。
【実施例3】
【0039】
また、図11に示すような折畳中間体10Cgに変更することも可能である。折畳中間体10Cgの折畳部位10Ceは、実施例1同様、第1折重部10Ce−1、第2折重部10Ce−2、第3折重部10Ce−3、及び第4折重部10Ce−4の蛇腹状に構成され、第2折重部10Ce−2の長さはW7となっていて、接合部38C(領域X)と重なっている状態であり、第3折重部10Ce−3と第4折重部10Ce−4は同じ距離W8となっており、接合部38Cと重なっておらず、前記距離W7より短くなっている。さらに、第1折重部10Ce−1の厚みを除いて、第2折重部10Be−2から第4折重部10Ce−4がすべて重なっている領域gの厚みHgは、第3折重部10Ce−3と第4折重部10Ce−4とが重なっている領域hの厚みHhよりも厚くなっている。換言すると、接合部38Cに重なる領域Xのアウタバッグ15Cの厚みが、接合部38Cに重ならない領域のアウタバッグ15Cの厚みより、薄くなっている。また、上述より本実施例3の空間SPは、実施例1または実施例2とは異なり、エアバッグ10Cの外側(左右の第3折重部と第4折重部の間)に形成されている。このような実施例でも、インナバッグ20Cの接合部38Cの厚みT1があっても、エアバッグ10Cの折畳中間体10Cg及び折畳完了体10Chの中央が盛り上がることなく、エアバッグの中央と外側(周辺)の高さもほぼ一緒となり、カバーとバッグホルダー(ケース)との収納空間へコンパクトに収納が可能となる。また、第2折重部10Ce−2が長く、第3折重部10Ce−3と第4折重部10Ce−4が短い為、目視で確認しながら折畳みしやすく、折畳み易い折畳工程となる。
【実施例4】
【0040】
さらに、図12に示すような折畳中間体10Dgに変更することも可能である、本実施例は、実施例2の第4折畳部10De−4が内ロール折りされた点が異なるのみで、他は一緒である。この場合でも、折畳中間体10Dgの中央が盛り上がることなく、エアバッグ10Dの中央と外側(周辺)の高さもほぼ一緒となり、カバーとバッグホルダー(ケース)との収納空間へコンパクトに収納が可能となる。
【実施例5】
【0041】
さらに、図13に示すような折畳中間体10Egに変更しても良い。折畳中間体10Egは、エアバッグ10Eの中央17Eaを取付部位12Eに対して延ばしておき、その間に、第7折目FL7、第8折目FL8、第9折目FL9をつけて、エアバッグ10E(アウタバッグ15)の左縁15Eaから、各折目までの距離を、各折目に伴い徐々に長くするように、W9、W10、W11と設定している。第7折目FL7は、接合部38Eと重ならない箇所に、第8折目FL8と第9折目FL9は、図13に示すような重なる箇所(領域X)に、設定されている。従って、接合部38Eに重なる領域Xのアウタバッグ15Eの厚みが、接合部38Eに重ならない領域のアウタバッグ15Eの厚みより、薄くなっている。このような実施例でも、エアバッグ10Eは空間SPを形成するように折畳まれて、その空間SP内にインナバッグ20Eの接合部38Eが配置されている構造となっている。従って、インナバッグ20Eの接合部38Eの厚みT1があっても、エアバッグ10Eの折畳完了体10Ehの中央が盛り上がることなく、エアバッグの中央と外側(周辺)の高さもほぼ一緒となり、カバーとバッグホルダー(ケース)との収納空間へコンパクトに収納が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、インナバッグが備わるエアバッグ製品すべてに適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…エアバッグ
10e…左折畳部位(折畳部位)
10f…右折畳部位(折畳部位)
10g…折畳中間体
10h…折畳完了体
11…流入用開口
12…取付部位
15…アウタバッグ
20…インナバッグ
21…中央部
23(23U,23L)…腕部
37…結合縁
38…接合部
110…エアバッグ
111…折畳中間体
112…折畳完了体
115…アウタバッグ
120…インナバッグ
121…補強布
130…接合部
W…ステアリングホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入用開口(11)から流入する膨張用ガスにより折畳まれた状態から膨張する袋状のアウタバッグ(15)と、
前記アウタバッグ(15)の内部に配置され、前記流入用開口(11)から流入する膨張用ガスの流れを規制すると共に、一方向への長さと、該一方向と直交する方向の長さとで長短を設けたインナバッグ(20)と、を備えたエアバッグ(10)であって、
前記インナバッグ(20)は、前記流入用開口(11)に対向する箇所に、長手方向に延びる接合部(38)を備え、
前記エアバッグ(10)は、前記インナバッグ(20)の短手方向に、該エアバッグ(10)のアウタバッグ(15)の両端(15a、15b)から中央へ折畳まれた際、前記接合部(38)と重なる領域の前記アウタバッグ(15)の厚みが、前記接合部(38)と重ならない領域の前記アウタバッグ(15)の厚みより、薄くなるように、エアバッグ(10)の折畳部位(10e)を形成していること、を特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記折畳部位(10e)は、複数の折重部を備えており、少なくとも前記流入用開口(11)側の最初の折目(FL1)より乗員側に形成された最初の折重部(10e−2)が前記接合部(38)と重なっておらず、該最初の折重部(10e−2)よりも乗員側の折畳部(10e−3、10e−4)の少なくとも一つが、前記接合部(38)と重なっていて、接合部(38)を収納する空間(SP)を備えること、を特徴とするエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−71543(P2013−71543A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211020(P2011−211020)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】