説明

エアバツグの製造方法

【目的】機械化が可能で、エアバッグ7の縫合部76近傍がエアバッグ内に折り返されることのないエアバッグ7の製造方法を提供する。
【構成】中央部に取付開口72を有する一方の基布71と他方の基布70を重ね合わせてその周縁を縫合し、外方に延びる縫合部76を備えたエアバッグ7を作成する。このエアバッグ7を一方の基布71の取付開口72が作業台2の貫通孔21に対向するよう作業台2上に配置し、他方の基布70の中央部を押し込み部材たるロッド5にて、少なくとも縫合部76が一方の基布71の取付開口72を通過するまで、貫通孔21を通過させて押し込む。その後、圧縮気体をエアバッグ内に流入し、エアバッグを膨らませ、次いで、エアバッグ内から圧縮気体を排出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両のエアバッグ装置内に折り畳んで装着されるエアバッグの製造方法に関する。本発明は、特に車両のステアリングホイール内に装着されるエアバッグの製造方法として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】この種エアバッグとして、中央部に取付開口を有する一方の円形基布と、この一方の基布と重ね合わされた他方の円形基布と、両基布の周縁が縫合された内方に延びるは縫合部とをされたものが一般的に用いられている。(実開昭63−34751号公報参照)
【0003】従来このエアバッグを製造する方法としては、まず、両基布を重ね合わせ、その周縁をミシンで縫合する。次いで手作業にて、取付開口から両基布を引出し・反転させる。その後、手作業にて両基布を再び円形平板状態に整え、上記縫合部が内方に延びたエアバッグを得る。
【0004】この様に製造されたエアバッグは、その後所定形状に折り畳まれてエアバッグ装置内に配置可能な状態とされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の製造方法においては、エアバッグの反転及び反転後の円形に整える作業を手作業にて行っていたため、多くの工数が必要であった。
【0006】また、反転後の円形に整える作業では、周縁の縫合部がエアバッグ内に位置しているので、エアバッグ周縁の把持が不安定となり、縫合部近傍の周縁がエアバッグ内部に折り込まれがちで、正確な円形に整え難かった。
【0007】さらに、エアバッグには、その内側(基布縫合段階では外側)にゴム等の高分子材料がコーティングされたものもあるが、この種のエアバッグには高分子材料の貼着防止のため、タルク等の貼着防止粉を塗布することが行われている。このようなエアバッグを手作業で反転すると、貼着防止粉が空気中に舞い上がり、作業環境が悪くなるという問題もあった。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するため、中央部に取付開口を有する一方の基布と、該一方の基布と重ね合わされた他方の基布と、前記両基布の周縁が縫合され内方に延びる縫合部とされたエアバッグの製造方法において、前記中央部に取付開口を有する一方の基布と前記他方の基布を重ね合わせてその周縁を縫合し、外方に延びる縫合部を備えたエアバッグを作成し、前記外方に延びる縫合部を備えたエアバッグを、前記一方の基布の取付開口が作業台の貫通孔に対向するように、作業台上に配置し、前記他方の基布の中央部を押し込み部材にて、少なくとも前記縫合部が前記一方の基布の取付開口を通過するまで、前記一方の基布の取付開口および前記作業台の貫通孔を通過させて押し込み、その後、圧縮気体をエアバッグ内に流入し、エアバッグを膨らませ、次いで、エアバッグ内から圧縮気体を排出し、前記縫合部が内方に延びるよう反転された平板状エアバッグを得るという手段を採用した。
【0009】
【発明の作用・効果】本発明の製造方法によれば、押し込み部材を用いて他方の基布の中央部を一方の基布の取付開口および作業台の貫通孔を通過させて押し込みという機械化可能な作業で、エアバッグの反転を行った。また、反転後のエアバッグに圧縮気体を流入・排出させるという機械化可能な作業で、反転後の平板形状を整えた。従って本発明は、従来手作業で行っていた上記作業を機械化し、工数を低減できる効果を有する。
【0010】また、本発明では、反転後のエアバッグに圧縮気体を流入し、縫合部近傍の基布周縁を気体圧力により十分外方に伸ばした後、エアバッグを平板状に整えるので、従来の如き縫合部近傍の周縁がエアバッグ内部に折り込まれれるといった不具合を解消・低減できる。
【0011】さらに、基布として高分子材料がコーティングされているものを使用した場合においても、前述のように、大部分の作業を機械化できるので、これらの作業を作業者から隔離した空間内ですることができ、たとえ貼着防止粉が舞い上がったとしても、作業者の作業環境が改善される。
【0012】
【実施例】以下本発明の実施例を、図面に基づき説明する図2ないし図3は、本実施例にて製造されたエアバッグ7を示し、このエアバッグ7は、基本的に、取付開口72を有する一方の円形基布71と、この基布71に重ね合わされた他方の円形基布70とからなっている。基布70・71の内面にはクロロプレンゴムがコーティングされている。両基布70・71は、その周縁で互いに縫合され、内方に延びる縫合部76とされている。
【0013】なお、符号73は、基布71の取付開口72周縁に縫合された2枚の補強布である。この補強布73も基布70・71と同様にコーティングされている。符号74はガス発生器に取り付けるための取付孔、75はエアバッグ膨張時のガスを排出するための排気口である。
【0014】図4ないし図5は、本実施例に使用したエアバッグ反転用装置を示すものである。この装置は、基台1、作業台2、アーム3、エアシリンダ4、ロッド5、及びガイド6から成っている。
【0015】基台1上に位置する作業台2は、反転前のエアバッグ7が載置されるもので、本体23及び貫通孔21を有する取替板22から構成されている。取替板22は、反転されるエアバッグ7の取付開口72の径に略一致した径の貫通孔21を有し、反転されるエアバッグ7に合わせて取り替えられる。作業台2の下方には、貫通孔21からエアバッグ7が落下可能に空間が設けられている。
【0016】アーム3は、ロッド5及びエアシンリンダ4を基台1上方に固定するもので、アングル31・32・33・34・35から成っている。
【0017】貫通孔21の中央上方に配置された押し込み部材としてのロッド5は、エアシリンダ4により駆動され、ガイド6にてその水平方向の動きが規制されている。このロッド5の先端にてエアバッグ7の基布70中央部を貫通孔21内に押し込み、反転作業を行う。
【0018】以下本発明の実施例について、図1を基に説明する。まず、2枚のコーティングされた円形の基布70・71を重ね合わせ、その外周縁をミシンで縫合する。縫合されたエアバッグ7は、縫合部76が外方に延び、コーティング層は外面に位置している。なお、基布71には予め、取付開口72、排気口75が設けられ、補強布73が縫合されている。(図1■及び図2参照)
【0019】縫合されたエアバッグ7を図1■のように、取付開口72がエアバッグ反転用装置の貫通孔21に対向するよう配置する。
【0020】次いで図1■のようにロッド5を下げ、その先端で基布70の中央部を押し込む。すると、基布70中央部は、取付開口72、貫通孔21を貫通して押し込まれるとともに、基布70の周縁に位置する縫合部76は、中心に引き寄せられ、基布71周縁は折り返された状態となる。
【0021】さらに図1■のようにロッド5を下げると、基布70及び縫合部76は、作業台2下方まで押し込まれて反転し、基布71も順次貫通孔21から押し込まれて反転されていく。
【0022】さらに図1■のようにロッド5を下げると、基布71も完全に反転し、最後に取付開口72周縁が変形しつつ貫通孔21を抜け出て、作業台2下方から反転したエアバッグ7が得られる。こうして得られエアバッグ7は、図1■のように縦方向に長く伸びた状態で、多数の縦方向の襞を有するものである。
【0023】次いで図1■のように、エアバッグ7の取付開口72内側に治具8を配置し、治具8を部材9に取り付ける。その後、部材9、治具8の各流通孔91、81を通して圧縮空気をエアバッグ7内に流入し、エアバッグ7を膨らませる。このとき、排気口75は図示しない他の治具で、取付孔74は治具8及び部材9で閉塞されている。なおこの時同時に、流入された圧縮空気の圧力変化を測定することで、エアバッグ7の気密検査を行っている。
【0024】次いで、治具8を部材9から取り外し、エアバッグ7内の圧縮空気を自然排出し、図3のような平板円形のエアバッグ7を得る。この時、縫合部76近傍の基布70・71周縁は、膨張時に十分外側に位置されているので、平板状になったときにもエアバッグ7の内側に折り返される状態となることがない。
【0025】以上説明した本実施例では、エアバッグ7の反転作業をエアバッグ反転用装置により達成し、反転後の円形に整える作業を圧縮空気の流入・排出により達成した。従って、作業の大部分を機械化することができ、作業工数を低減することができた。また機械化に伴い、これらの作業を作業者から隔離した空間内で行えるようになったので、作業者の作業環境が改善された。
【0026】また、反転後のエアバッグ7を円形に整える作業において、空気圧を利用したので、縫合部76近傍の基布70・71周縁を、十分外側に位置させることができたので、該周縁がエアバッグ7の内側に折り返された状態となることがなくなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るエアバッグの製造方法を説明する図。
【図2】同実施例にて製造したエアバッグの正面図。
【図3】図2に示すエアバッグのA−A断面図。
【図4】同実施例にて使用したエアバッグ反転用装置の上面図。
【図5】図4に示すエアバッグ反転用装置の一部破断側面図。
【符号の説明】
2…作業台
21…貫通孔
5…ロッド(押し込み部材)
7…エアバッグ
70…他方の基布
71…一方の基布
72…取付開口
76…縫合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】中央部に取付開口を有する一方の基布と、該一方の基布と重ね合わされた他方の基布と、前記両基布の周縁が縫合され内方に延びる縫合部とされたエアバッグの製造方法において、前記中央部に取付開口を有する一方の基布と前記他方の基布を重ね合わせてその周縁を縫合し、外方に延びる縫合部を備えたエアバッグを作成し、前記外方に延びる縫合部を備えたエアバッグを、前記一方の基布の取付開口が作業台の貫通孔に対向するように、作業台上に配置し、前記他方の基布の中央部を押し込み部材にて、少なくとも前記縫合部が前記一方の基布の取付開口を通過するまで、前記一方の基布の取付開口および前記作業台の貫通孔を通過させて押し込み、その後、圧縮気体をエアバッグ内に流入し、エアバッグを膨らませ、次いで、エアバッグ内から圧縮気体を排出し、前記縫合部が内方に延びるよう反転された平板状エアバッグを得ることを特徴とするエアバッグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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