説明

エアフィルタエレメント、フィルタハウジング及びフィルタ装置

【課題】 エアフィルタエレメント、フィルタハウジング及びフィルタ装置を提供する。
【解決手段】 シリンダ状中心パイプ(11)を備えたエアフィルタエレメント(10)が提供され、ここでは中心管(11)の一端に、工具からエアフィルタエレメント(10)にトルクを伝達するための機構(18)が備えられ、及び中心管(11)の他端に、フィルタエレメント(10)を挿入/回転動作によってシリンダ状支持本体(21)に着脱自在に装着するための締結機構(14)が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気をろ過するためのフィルタエレメント、かかるフィルタエレメント用のハウジング、並びにかかるフィルタエレメントとハウジングとを含むフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタエレメントは、流体の流れ又は気体媒質のろ過に使用される。例えばフィルタエレメントを使用して、自動車の乗員室内に誘導される空気の流れがろ過される。この目的では、フィルタエレメントは特に自動車に装着された空調機器において、環境空気から健康上有害な物質、臭気などを除去するために用いられ得る。かかるフィルタの例は、粒子フィルタ、臭気フィルタ又はそれらの組み合わせである。フィルタエレメントのさらなる使用分野は、内燃機関に供給される空気から浮遊粒子を取り除くエアフィルタである。概してかかるエアフィルタはハウジングを有し、そこに交換可能なエアフィルタエレメントが提供される。
【0003】
(特許文献1)は、その底部にいくつかの垂直に配列されたロッドを有するフィルタハウジングを含むエアフィルタを開示する。それらのロッドにフィルタエレメントを押し嵌めることができ、フィルタハウジングはカバーで閉じることができる。このカバーは、フィルタハウジングの底まで延在するちょうボルトによってねじ結合される。従って、単にちょうボルトを解除するだけでカバーを取り外すことができるとともに、フィルタエレメントは手で交換することができ、そのために別途工具を要することはないため、フィルタエレメントの交換を簡単な方法で実現することができる。しかしながら工具を使わないかかる簡単な交換は、実際には不可能とされることが望ましい場合が多く、なぜならフィルタエレメントが消費者により不適切な方法で、又は誤ったフィルタエレメントを使用して交換されるリスクがあるためである。それによってひいてはろ過機能が不十分になったり、又はフィルタ材の摩耗が早まったりし得る。
【0004】
(特許文献2)は、互いに着脱自在に結合される2つのコップ型のハウジングシェルを含むエアフィルタを開示し、ここでそれらのシェルのうち下側のシェルは、そこに一体化された円錐形の支持パイプを有する。この支持パイプ上に円錐形の丸いフィルタエレメントが押し嵌められ、続いて上側のハウジングシェルが下側のハウジングシェル上に置かれ、支持パイプの一端とねじ結合される。このエアフィルタではハウジングシェルは互いにねじ結合され、従って工具なしに解除することはできないが、ねじ結合はスクリュードライバによって実現することができるため、ここでもまたフィルタエレメントが不適切に交換されるリスクがあり、前述の欠点を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,588,426号明細書
【特許文献2】国際公開第00/56423 A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、構成が単純で、且つ容易に製造することができると同時に、工具、特に特殊工具がない場合にはフィルタハウジングに収容されたフィルタエレメントを交換できない、又は交換に必ず困難を伴うことを確実にする改良されたエアフィルタエレメント、かかるフィルタエレメント用のフィルタハウジング並びにフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的は、請求項1の特徴を有するエアフィルタエレメントにより解決される。
【0008】
従って、シリンダ状の中心管を含むエアフィルタエレメントが提供され、ここでは中心管の一端に、工具からエアフィルタエレメントにトルクを伝達するためのトルク伝達機構が提供され、及び中心管の他端に、フィルタエレメントを挿入/回転動作によってシリンダ状支持本体に着脱自在に装着するための締結機構が提供される。
【0009】
挿入/回転動作による結合の例は、ねじ結合、バイオネット結合、ロック式結合及び/又はスナップ結合である。挿入/ロック式結合と比較した挿入/回転結合の利点は、それが振動を受けても解除され難いことであり、これは特に、トラック、建設機械、及び農機具などでの使用に有利である。設置されたエアフィルタエレメントは支持本体に収容され、従ってその外周が支持本体に覆われているため、それを支持本体から手で取り外すことはできないか、又は取り外しに必ず困難を伴う。このように支持本体は、特に破損に関するフィルタエレメントの機械的保護もまた提供することができる。これは特に、フィルタ交換中に機器が安定した位置に置かれることが必ずしも確実でなく、従ってフィルタハウジングが開いた状態でその機器を地面に落とした場合にフィルタエレメントが破損するリスクがある携帯型の機器に関連して重要となり得る。締結手段のトルク伝達機構との組み合わせにより、工具によって簡単な動作で支持本体に取り付けたり、そこから取り外したりすることができる一方で、工具なしには取り付け又は取り外しに必ず困難を伴い得るフィルタエレメントが提供される。
【0010】
フィルタエレメントのさらなる実施形態が従属請求項に開示される。
【0011】
フィルタエレメントの端部にトルク伝達機構として回転対称でないセクションを備えるとき、適切な構成の工具によることでトルクは十分に伝達される。トルク伝達機構は、中心管のシリンダ軸に関して回転対称でない突出部又は凹部として設計され得る。例えば、中心管を閉鎖するカバー上に多角形の凹部が提供されてもよく、又は工具によるねじ込み動作を可能にするビード若しくは突出部がカバー上に提供されてもよい。
【0012】
中心管の一端に、底部にトルク伝達機構を備えるタブ型凹部を有する端部ディスクが提供されてもよい。これに関連してタブ型凹部とは、直径が深さより大きい止まり穴型の凹部として理解されるべきである。トルク伝達機構は特に、端部ディスクの凹部の底から立ち上がる、しかし端部ディスクの上側リムより下側に位置する突出部として設計することができる。端部ディスクの凹部に備えられる突出部は、そのために特別に設計された工具のトルクを伝達する手段として機能する。これらの突出部は凹部に備えられるため、支持本体から手でエアフィルタエレメントのねじを緩めたり、又はそれを取り外したりするには不適である。このようにして、特殊工具なしには支持本体からエアフィルタエレメントを取り外すことができない、又は取り外しに必ず困難を伴うことを確実にすることができ、エアフィルタエレメントの不適切な交換を防ぐことができる。タブ型凹部は、上から見たとき円形であってもよい;それにより工具の使用が容易となる。
【0013】
突出部の側面は凹部の底面に対して略直角、すなわち75〜105度の角度を画定してもよい。さらに凹部は、上から見たとき円形状であってもよい。突出部の側面は、実質的に凹部のリムから中心管のシリンダ軸に向かって半径方向に延在してもよい。従って、特殊工具と突出部との間に大きい接触面を確保することができ、突出部から特殊工具が外れ落ちることが回避され得る。
【0014】
エアフィルタエレメントには、例えば少なくとも2つの突出部を備えさせることができる。さらにこれらの突出部は、凹部のリム上で互いの反対側に備えられてもよい。その結果、特殊工具のトルクを伝達する手段として比較的短い突出部を使用することができる;これによりエアフィルタエレメントを手で取り外すことが一層困難となる。
【0015】
例えば、半径方向に延在する突出部の側面の長さは、凹部の半径の半分未満であってもよい。例えば突出部は、凹部のリム上で互いの反対側に位置するように備えられてもよい。これによりトルクをエアフィルタエレメントに効率的に伝達することが可能となる。
【0016】
端部ディスクと中心管とは単体として構成することができる。これにより、例えば射出成形による、別途封止することのないフィルタエレメントの単純且つ安価な製造が可能となる。
【0017】
本目的は、請求項6の特徴を有するフィルタハウジングによりさらに解決される。
【0018】
従って、上述のエアフィルタエレメントを収容するためのフィルタハウジングが提供され、このフィルタハウジングは、ハウジング上部部品と、ハウジング上部部品に着脱自在に結合されるハウジング底部部品とを含み、ここでハウジング底部部品には空気透過性のシリンダ状支持本体が提供され、この支持本体は、ハウジング底部部品と向かい合うその端部に、挿入/回転動作によってエアフィルタエレメントを取り付けるための、エアフィルタエレメントのフィルタ関連締結機構と相互作用するハウジング関連締結手段を有する。
【0019】
ハウジング底部部品はシリンダ状支持本体と共に単体として構成することができる。これにより、一方でより高い圧力抵抗が提供され、他方で設置又は取り外しの間の操作性の向上が確保される。さらに、それゆえにフィルタハウジングを単純且つ安価な方法で製造することができる。
【0020】
シリンダ状支持本体は空気透過性の格子構造として設計することができる。これにより比較的高い安定性の支持本体が提供され、ここではフィルタを通る空気の流れに支持本体の比較的大きい外表面が用いられ得る。
【0021】
2つのハウジングシェル(ハウジング上部部品及びハウジング底部部品)は、例えばバックル又は着脱自在なねじ結合によって一体に保持され得る。
【0022】
一実施形態では、ハウジングを開けるため、ハウジング上部部品とハウジング底部部品との間に配置されたピボット軸受を中心にハウジング上部部品を枢動して折り返すように開くことができ、それにより支持パイプにアクセス可能となる。
【0023】
一実施形態において、特にハウジング上部部品及び/又はハウジング底部部品の側面に、サイクロンフィルタ段用の空気吸入開口が備えられる。サイクロンフィルタ段は、好ましくはプレセパレータとして1つ又は複数のハウジング部品に一体化される。サイクロンフィルタ段は特に少なくとも1つのインラインサイクロンセルによって形成され、このインラインサイクロンセルは、空気の流れに回転運動を付与するための吸入口側の転向手段を備えたパイプ、及び粒子の割合がより高い半径方向外側に位置する流れ範囲を分離するための吐出口側の浸漬パイプ、並びにこのように分離された粒子を排出するための排出開口を含む。サイクロンフィルタ段は、特に好ましくは、そこから出る流れがフィルタエレメントに直接向かうことなく、その傍を通り過ぎて流れるように配置される。このようにしてフィルタエレメントのより均一な負荷を実現することができる。さらに好ましくは、サイクロンフィルタ段から出る流れは第2のフィルタエレメントの傍を通り過ぎて流れることができ、サイクロンフィルタ段の反対側に位置決めされたハウジング壁に送り込まれ得る。これもまた、特にサイクロンフィルタ段として最小数のインラインサイクロンしか使用しない場合に、フィルタエレメントでの流入をより均一にすることに寄与し得る。
【0024】
本目的は、請求項9の特徴を有するフィルタ装置によりさらに解決される。かかるフィルタ装置は、上述のフィルタハウジングに装着される上記に開示されるとおりのエアフィルタエレメントを含む。
【0025】
このフィルタ装置の一実施形態において、フィルタエレメントは確動的な嵌合(positive fit)で完全に支持本体に収容される。このようにフィルタエレメントを完全に支持本体に収容するため、支持本体はフィルタエレメントを外側から、フィルタエレメントの上端が支持パイプの上縁より下側に位置決めされるように取り囲む。従ってフィルタエレメントの上端が支持パイプから突出しないため、フィルタエレメントの上端を手で把持することもできず、工具なしに取り外すことは不可能か、又は可能であっても必ず困難を伴う。
【0026】
フィルタ装置のさらなる実施形態において、第2のシリンダ状フィルタエレメントがさらに提供される。第2のフィルタエレメントは好ましくは、リング状に閉じられた繊維ろ材がジグザグ型に折り畳まれたフィルタベローを有する。支持本体が特に第2のシリンダ状フィルタエレメントの中心管となり、従って内側に対するフィルタベローの半径方向支持が確保され得る。結果的に多段ろ過を実現することができ、ここでは好ましくは第2のフィルタエレメントが最初に外部(未処理側)から内部(清浄側)に流れを通して、比較的大きい粒子をろ過する主フィルタエレメントとして機能し、補助フィルタエレメントとしての第1のフィルタエレメントが比較的小さい粒子をろ過するよう機能する。これに関連して、第1のフィルタエレメントは挿入/回転動作によって固定することができる。第2のフィルタエレメントは支持本体に押し嵌めるように構成することができる。支持本体が第2のフィルタエレメント(主フィルタエレメント)の中心管となる場合、この第2のフィルタエレメントはそれ自体の中心管を有する必要がないため、より単純な構成となり得る。第2のフィルタエレメントは第1のフィルタエレメント又は支持本体に押し嵌めるように設計されてもよく、すなわち工具なしに装着及び取り外しできてもよい。好ましくは第2のフィルタエレメントは、流出開口を備える端部ディスクと、第1のフィルタエレメント又は支持本体に対する封止として機能するシールとを有する。このシールは、好ましくは環状構成のラジアルシールとして設計され、未処理側を清浄側と分離するように第1のフィルタエレメント又は支持本体のシリンダ状封止面を係合することができる。さらに、第2のフィルタエレメントは第2の閉じた端部ディスクを有することが好ましい。
【0027】
本発明のさらなる可能な実施態様には、実施形態に関連して上記又は以下に記載される特徴又は実施形態の変形例の明示的に記載されない組み合わせも含まれる。これに関連して、当業者はまた、本発明のそれぞれの基本形態に改良又は補足として個別の態様を加えることになるであろう。
【0028】
本発明について、添付の図面を参照して、且つ具体的な実施形態の変形例を実施形態として用いて、以下にさらに詳細に説明する。各図には、以下が示される:
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】フィルタ装置の斜視図
【図2】フィルタエレメント並びにフィルタエレメントが設置される底部ハウジングシェルの斜視図
【図3】図2のフィルタエレメント及びハウジングシェルの断面図
【図4】詳細図によるフィルタエレメントのハウジングシェルとの結合
【図5】フィルタハウジングの底部ハウジングシェルの斜視図
【図6】フィルタ装置の底部ハウジングシェル及び主フィルタエレメントの斜視図
【0030】
図では、特に指示がない場合、同じ又は機能的に同じ要素には同じ参照符号が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明を、内燃機関、例えば自動車の燃焼空気用フィルタを用いて説明する。対応するフィルタエレメントは、空気をろ過するように設計するのでなく、例えば別の気体媒質、又はさらには液状媒質、例えばオイルをろ過するように設計することができる.
【0032】
以下では、図1〜図5を用いて、一実施形態に係るフィルタエレメント10を含むフィルタ装置1を開示する。図1はフィルタ装置1の斜視図である。図2は、フィルタエレメント10が設置されているフィルタ装置の流体密ハウジング20の底部ハウジングシェル20aの斜視図である。図3は、図2におけるフィルタエレメント10及びハウジングシェル20aの断面図である。図4は、フィルタエレメント10のハウジングシェル20aとの結合を詳細図で示す。図5は、フィルタハウジング20の底部ハウジングシェル20aの斜視図である。
【0033】
これに関連して「上部」及び「底部」という表現は、図における向きに関するもので、必ずしも装着された状態のフィルタ装置1の向きに関するとは限らないことに留意しなければならない。
【0034】
エアフィルタとして具体化されるこの実施形態のフィルタ装置1は、プラスチック材料などのフィルタハウジング20に収容されるフィルタエレメント10(図2〜図4を参照のこと)を有する。フィルタハウジング20は、支持体21を含む底部ハウジングシェル20aと、上部ハウジングシェル20bとを有する。
【0035】
2つのハウジングシェル20aと20bとは、バックル22によって一体に保持され得る。バックル22が開いているとき、底部ハウジングシェル20aの後壁の上端に備えられるピボット軸受23を中心としてハウジングシェル20bを枢動させて折り返すように開くことができ、それにより支持管21にアクセス可能となる。支持管21には、以下に詳細に記載する方法でフィルタエレメント10が収容され、固定される。
【0036】
サイクロンフィルタ段25用の空気吸入開口が、上部ハウジングシェル20bの側面に備えられる。サイクロンフィルタ段25は上部ハウジングシェル20bに一体化される。ろ過により粒子を取り除く空気は、空気吸入開口24を通ってサイクロンフィルタ段25に送り込まれる。サイクロンフィルタ段25では、最初にサイクロン分離によって粒子が空気と分離される。粒子は排出開口26を介して取り除かれてもよい。サイクロンフィルタ段は特に少なくとも1つのインラインサイクロンによって形成され、このインラインサイクロンには、空気の流れに回転運動を付与するための吸入側における転向手段を有するパイプと、粒子の割合がより高い半径方向外側に位置する流れ範囲を分離するための吐出口側の浸漬パイプとが備えられる。サイクロンフィルタ段は、特に好ましくは、そこから出る流れがフィルタエレメントに直接向かうことなく、その傍を通り過ぎて流れるように配置される。このようにしてフィルタエレメントのより均一な負荷を実現することができる。さらに、サイクロンフィルタ段から出る流れが第2のフィルタエレメントの傍を通り過ぎて流れ、サイクロンフィルタ段の反対側に位置決めされたハウジング壁に送り込まれることが好ましい。これもまた、特にサイクロンフィルタ段として最小数のインラインサイクロンしか使用しない場合に、フィルタエレメントでの流入をより均一にすることに寄与し得る。
【0037】
このように予備的に清浄化された空気は、次に支持パイプ21に供給されるフィルタエレメントを通過し、そこに備えられるフィルタ材によって浄化される。浄化された空気は、最後に支持パイプ21の下側の底部ハウジングシェル20aの底にある空気吐出口ソケット27(図4を参照のこと)からハウジングを離れる。浄化された空気は自動車などの内燃機関に供給され得る。
【0038】
特に図3で分かるとおり、フィルタエレメント10はシリンダ状の中心管11を含み、そのシリンダ状外表面は、中心管11の上端にある第1のシール13によって取り付けられたフィルタ材12に取り囲まれている。フィルタエレメント10は支持パイプ21内に嵌装される。支持パイプ21はシリンダ状の格子型支持本体であり、底部ハウジングシェル20aと単体として形成される。これに関連して支持パイプ21の下端は、底部ハウジングシェル20aの底に形成される底部ハウジングシェル20aのカップ型セクションに隣接し、それによりフィルタ装置1により高い安定性が提供される。
【0039】
中心管11はその下端に、ハウジングシェル20aにおいてフィルタエレメント10を締結するための締結手段を有する。フィルタにおけるこの締結手段は、例示される実施形態ではねじ切り部14として形成される。ねじ切り部14とフィルタ材12との間に第2のシール15が配置される。フィルタの締結手段はハウジングの締結手段と相互作用し、それによりフィルタエレメント10が支持パイプ21に固定される。より正確には、ハウジングにおいて支持パイプ21の下端にねじ切り部29が備えられる。従ってフィルタエレメント10を支持パイプ21に挿入/回転動作によって固定することができる。これに関連して、フィルタエレメント10は最初に、フィルタ関連ねじ切り部14がハウジング関連ねじ切り部29に載るまで支持パイプ21に軸方向に押し込まれる。フィルタエレメント10を回転させると、フィルタエレメント10が支持パイプ21にねじ結合される。ねじ切り部14及び29は中心管11又は支持管21の全周にわたって備えられるべきではないが、周囲に沿っていくつかの区間に分かれた突出部として形成することもできる。特にねじ切り部14及び29は、フィルタエレメント10を比較的小さい角度、例えば90度以下又は45度以下の角度だけ回転させることにより支持パイプ21に固定することができるように形成されてもよい。このようにしてフィルタエレメント10の迅速な固定が可能となる。フィルタエレメント10はまた、上述のねじ結合に代えて、バイオネット結合、ロック式結合及び/又はスナップ結合によって支持パイプ21に固定されてもよい。かかる結合であっても、フィルタエレメント10は挿入/回転動作によって支持パイプ21に固定される。
【0040】
中心管11の上端に、中心管11を気密に閉鎖する端部ディスク16が備えられる。例示される実施形態では、中心管11と端部ディスク16とは単体構成であるが、端部ディスクを別個の要素として提供することもまた可能である。端部ディスク16にはタブ型凹部17が備えられ、これは例示される実施形態では逆円錐台形である。端部ディスク16は第1の環状セクション16aを有し、これは中心管11のシリンダ壁に隣接し、且つそれと直角に半径方向に内側に向かって延在する。第2の環状セクション16bはこの環状セクション16aの内端に隣接し、第1の環状セクション16aと共に例えば110〜160度、例えば約135度の角度を画定する。ディスク型の第3のセクション16cはこの第2のセクション16bに隣接し、第2のセクション16bと共に凹部17を形成する。第1のシール13もまた環形状であり、端部ディスクの第1のセクション16a並びにそこに置かれるフィルタ材12の端部を取り囲むことによってフィルタ材12を中心管11の端部で固定する。第1のシール13の材料としてはポリウレタン(PU)の発泡体又はPUR発泡体を使用することができる。
【0041】
エアフィルタエレメント10には、工具からエアフィルタエレメントにトルクを伝達するためのトルク伝達機構が備えられる。そのため、凹部17の内側リム、すなわち第2のセクション16bが第3のセクション16cと交わるところに、半径方向に延在する少なくとも1つの突出部18が備えられる。例示される実施形態では、トルク伝達機構として2つの突出部18a及び18bが備えられ、これらは凹部17のリムから凹部17のリムと端部ディスク16の中心との間のほぼ中間にある位置まで延在する。これらの突出部18a及び18bは、凹部17の底から端部ディスク16の上側リムより低い高さまで突出する突出部を形成する。図2に例示される実施形態では、2つの突出部18a及び18bは略平行六面形であり、リムの対向する位置に位置決めされて、すなわち180度の角度だけずれている。
【0042】
突出部18a及び18bを用いることで、フィルタエレメント10を支持パイプ21に装着し、又はそこから取り外すことができる。装着するには、フィルタエレメント10を支持パイプ21の中に、ねじ切り部14及び29が互いに載るまで前述の方法で押し込む。以上で、詳細には開示されない特殊工具によってフィルタエレメント10を回して固定することができる。そのために特殊工具を凹部17に挿入し、突出部18a及び18bの側面を横向きに押し進めるようにして回す。突出部18a及び18bは特殊工具のトルクを吸収し、そのトルクをフィルタエレメント10に伝達する。突出部18a及び18bへのトルクの伝達に好適でなければならないという制限を除いては、特殊工具の構成に関して制限はない。例えば、特殊工具の端部に、スクリュードライバと同様の矩形のブレードが備えられてもよい。しかしながら、特殊工具の形状が凹部17に合致し、すなわち突出部18用の凹部を備えた円錐台の形状を有することもまた可能である。
【0043】
例えば整備に関連して、フィルタエレメント10を支持パイプ21から解除するときは、そのためにもまた特殊工具が必要となる。支持パイプ21に完全に収容されている状態では、フィルタエレメント10は格子型の支持パイプ21に取り囲まれているため、手で把持したり、ねじを緩めたりすることはできない。また上端にも、工具なしにフィルタエレメント10にトルクを伝達できるような取っ掛かりとなる箇所がない。従ってフィルタエレメント10は、手で支持パイプ21に固定したり、若しくはそこから解除したりすることはできず、又は固定及び解除に必ず困難を伴う。必要な特殊工具を利用できるのは概して認定の修理店若しくは販売代理店、又は適正な認可若しくは訓練を受けた整備要員に限られるため、これによりフィルタエレメント10の適切な交換が確実となる。
【0044】
突出部18の側面は凹部の底面に対して例えば75〜105度、好ましくは実質的に90度の角度を画定する。突出部18の側面は、凹部17のリムから中心管11のシリンダ軸に向かって略半径方向に延在する。従って、特殊工具と突出部18との間に大きい接触面を確保することができ、突出部18から特殊工具が外れ落ちることが回避される。さらに、突出部18を凹部のリムに、すなわち回転軸から可能な限り遠く隔てて提供することにより、効率的なトルク伝達が確保される。
【0045】
この実施形態のフィルタハウジング20は工具なしに開閉することができる。これに関連してバックルによる閉鎖が、片手で素早く操作可能である。支持パイプ21は格子型の構成であり、フィルタエレメント10の端部まで延在するため、上記に記載したとおり、フィルタエレメント10を工具なしに装着したり取り外したりすることはできない。従って、フィルタエレメント10の装着及び取り外し用の特殊工具が必要である;これにより正しい整備作業が確実となる。しかしながら、フィルタハウジング20は片手で開けることができ、且つフィルタエレメント10は簡単な挿入/回転動作で固定することができるため、これは少しの操作で行うことができる。
【0046】
例示される実施形態では2つの突出部18が備えられているが、3つ以上の突出部18を有することもまた可能である。また、凹部17の片側のリムから端部ディスク16の中心を通ってリムの反対側まで延在する連続的な突出部のみを備えることも可能である。さらに、互いに反対側になく、例えば凹部17のリムに沿って90度の角度をなす2つの突出部18a及び18bを備えることもまた可能である。これには適切な構成の特殊工具が必要であり、単一の矩形ブレードなどによって交換され得ることが防止される。
【0047】
フィルタハウジング20とフィルタエレメント10とを含むフィルタ装置1は、サイクロンフィルタ段25によるサイクロン前置ろ過作用とフィルタエレメント10による主ろ過作用とによる2段階ろ過を達成する。しかしながら、より多数のフィルタ段を備えることもまた可能である。かかるフィルタ装置50を図6に概略的に示す。
【0048】
この実施形態に係るフィルタ装置50は、上述のフィルタハウジング20と、さらなる詳細は示されない補助フィルタエレメントと、並びに主フィルタエレメント60とを有する。上述のフィルタエレメント10を補助フィルタエレメントとして用いることができ、従ってこれに関連して既に考察したフィルタハウジング20及びフィルタエレメント10の態様を改めて説明することはしない。図6は、フィルタハウジング20の底部ハウジングシェル20a並びに支持パイプ21に押し嵌められた第2のフィルタエレメント60のみを示す。
【0049】
例示される構成において、フィルタエレメント60は、主フィルタエレメント60と補助フィルタエレメントとを含むフィルタ装置50のうちの主フィルタエレメントとして機能する。主フィルタエレメント60もまたシリンダ状であり、フィルタ材61に囲い込まれた、詳細には示されないシリンダ状の格子型中心管を含む。中心管の端部にはポリウレタン(PU)又はPUR発泡体の端部ディスク62が備えられ、これがシリンダ状の中心管を気密に閉鎖する。
【0050】
主フィルタエレメント60のフィルタ材61は、空気からより大きい粒子をろ過して取り除くように設計され、補助フィルタエレメントのフィルタ材はより細かい粒子をろ過して取り除くように設計される。
【0051】
サイクロンフィルタ段25による前置ろ過後、ろ過される空気は主フィルタエレメント60のフィルタ材61を通過し、支持パイプ21を通過し、次に補助フィルタエレメントのフィルタ材を透過することで、次に底部ハウジングシェル20aの底にある空気吐出開口を通じて外に誘導される。結果的に3段階ろ過が提供される。
【0052】
主フィルタエレメント60は、手で単純な動作によって支持パイプ21に押し込んだり、そこから取り外したりすることができ、従って交換を迅速且つ簡単に行うことができる。これに関連して、補助フィルタエレメントが上述のようにして構成されるため、フィルタ装置を完全に交換するためには特殊工具を要することが確実となり、従って正しい整備が確実となる。
【0053】
有利な実施形態では、支持パイプ21が同時に主フィルタエレメント60の中心パイプとしても機能し得る。従って追加的な構成要素を回避することができ、それによりフィルタ装置を一層高い費用対効果で実現することが可能となる。
【0054】
上述の実施形態はあくまでも例示的な実施形態として理解されるべきであり、同様に保護範囲に包含されることが意図される他の構成が考えられ得る。例えば、トルク伝達機構はまた、回転対称性を有しない多角形の凹部として端部ディスクに備えられてもよい。さらにまた、トルク伝達機構として端部ディスクにいくつかの凹部を備えさせることも可能である。さらに、トルク伝達機構を、端部ディスク上の回転対称性を有しない1つ又は複数の突出部として設計することが可能である。これらの又は他の幾何学的構成により、トルク伝達機構が鍵と鍵穴の原則に従い工具と相互作用し、工具なしには装着できない、又は装着に必ず困難を伴うこともまた確実にすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ状の中心管(11)を備えたエアフィルタエレメント(10)であって、前記中心管(11)の一端に、工具から前記エアフィルタエレメント(10)にトルクを伝達するためのトルク伝達機構(18)を備え、前記中心管(11)の他端に、前記フィルタエレメント(10)を挿入又は回転動作によってシリンダ状支持本体(21)に着脱自在に設置するための締結機構(14)を備える、エアフィルタエレメント(10)。
【請求項2】
前記トルク伝達機構(18)が、前記中心管(11)のシリンダ軸に関して回転対称性を有しない突出部又は凹部として形成される、請求項1に記載のエアフィルタエレメント(10)。
【請求項3】
前記中心管(11)の一端に、底部に前記トルク伝達機構(18)を備えたタブ型凹部(17)を有する端部ディスク(16)を備える、請求項1又は2に記載のエアフィルタエレメント(10)。
【請求項4】
前記トルク伝達機構(18)が、前記凹部(17)のリムにおいて互いに反対側に位置決めされて備えられる少なくとも2つの突出部を有する、請求項3に記載のエアフィルタエレメント(10)。
【請求項5】
前記端部ディスク(16)と前記中心管(11)とが単体として形成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエアフィルタエレメント(10)。
【請求項6】
上部ハウジング部品(20b)と、前記上部ハウジング部品(20)に着脱自在に結合される底部ハウジング部品(20a)とを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエアフィルタエレメント(10)を収容するためのフィルタハウジング(20)であって、
前記底部ハウジング部品(20a)に空気透過性のシリンダ状支持本体(21)が備えられ、前記シリンダ状支持本体(21)が、前記底部ハウジング部品(20a)と向かい合うその端部に、前記エアフィルタエレメント(10)を挿入又は回転動作によって締結するための前記エアフィルタエレメントのフィルタ関連締結機構(14)と相互作用するハウジング関連締結機構(24)を有する、フィルタハウジング(20)。
【請求項7】
前記底部ハウジング部品(20a)が前記シリンダ状支持本体(21)と共に単体として形成される、請求項6に記載のフィルタハウジング(20)。
【請求項8】
前記シリンダ状支持本体(21)が空気透過性の格子として形成される、請求項6又は7に記載のフィルタハウジング(20)。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のフィルタハウジング(20)に装着される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエアフィルタエレメント(10)を備えた、特に携帯型ハンドヘルド電動工具用のフィルタ装置(40)。
【請求項10】
前記フィルタエレメント(10)が前記支持本体(21)に完全に且つ確動的に収容される、請求項9に記載のフィルタ装置(40)。
【請求項11】
第2のシリンダ状フィルタエレメント(60)をさらに含み、前記支持本体(21)が前記第2のシリンダ状フィルタエレメント(60)の中心管を形成する、請求項9又は10に記載のフィルタ装置(40)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−743(P2013−743A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−134070(P2012−134070)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(505229863)マン ウント フンメル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (86)
【Fターム(参考)】