説明

エアフィルター濾材およびエアフィルターユニット

【課題】濾材製造工程の工程通過性に優れ、エアフィルターの圧力損失が低いエアフィルター用濾材であって、光触媒の有効利用率が高く、優れたガス分解性能を有するエアフィルター用濾材およびエアフィルターユニットを提供する。
【解決手段】光触媒を担持してなるフッ素樹脂系繊維を含むエアフィルター用濾材であって、前記フッ素樹脂系繊維の断面が略丸形断面であることを特徴とするエアフィルター用濾材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルター濾材およびエアフィルターユニットに関するものであり、さらには、大気中に存在する臭気ガス等を除去することが可能な消臭用のエアフィルター濾材およびエアフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、酸化チタン等の光触媒を利用して、空気中に含まれる窒素酸化物や硫黄酸化物などの環境汚染有害ガスや、臭気ガスを除去する方法や装置が提案されている。
【0003】
また、光触媒を活性化してガス成分を分解可能とするために紫外線ランプ等を照射する必要があるが、紫外線による劣化を受けにくく、かつ、光触媒による分解作用による劣化も受けにくい光触媒担持体として、フッ素樹脂系繊維を用いたものも提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
しかしながら、これらで提案されている光触媒担持フッ素樹脂系繊維は、ともに光触媒含有フッ素樹脂でフィルム状物を得、そのフィルム状物を、金属針を多数そなえたブラシのような掻き取り具や針刃ロールで引っ掻くことで得られたものであり、繊維の断面が矩形の形状をしており、エアの流路が乱れてしまう、矩形の長辺方向とフィルター濾材中を通過するエアが略直交してしまうなどして、フィルター濾材としての圧力損失が高くなってしまう問題があった。また、引っ掻くことで繊維を製造しているため、繊維径の制御ができないので繊維径バラツキが大きく、不織布製造工程等の濾材製造工程の工程通過性が悪いという問題があった。
【0005】
また、光触媒を担持したフッ素樹脂系繊維は、光触媒をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂中に練り込んだフィルムから得られており、PTFE樹脂中に埋没している光触媒は、分解対象ガスと接触せず、光触媒として活用されておらず、光触媒の有効活用率が少ないという問題があった。
【特許文献1】特開平9−313827号公報
【特許文献2】特開平10−286437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、かかる従来技術の問題点に鑑み、濾材製造工程の工程通過性に優れ、エアフィルターの圧力損失が低いエアフィルター用濾材であって、光触媒の有効利用率が高く、優れたガス分解性能を有するエアフィルター用濾材およびエアフィルターユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために次のような手段を採用する。すなわち、
(1)光触媒を担持してなるフッ素樹脂系繊維を含むエアフィルター用濾材であって、前記フッ素樹脂系繊維の断面が略丸形断面であることを特徴とするエアフィルター用濾材。
【0008】
(2)前記フッ素樹脂系繊維が、1〜5質量%の炭化成分を含有してなることを特徴とする前記(1)に記載のエアフィルター用濾材。
【0009】
(3)前記フッ素樹脂系繊維の断面が芯鞘構造を有しており、鞘部分が光触媒を含んでなることを特徴とする前記(1)または(2)のいずれかにに記載のエアフィルター用濾材。
【0010】
(4)前記フッ素樹脂系繊維の表層部に光触媒を固着してなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のエアフィルター用濾材。
【0011】
(5)前記フッ素樹脂系繊維が、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる繊維であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のエアフィルター用濾材。
【0012】
(6)前記光触媒が、少なくとも酸化チタン、酸化チタン変性物およびフラーレンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のエアフィルター用濾材。
【0013】
(7)前記フッ素樹脂系繊維が、吸着剤を含有してなることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のエアフィルター用濾材。
【0014】
(8)前記ポリテトラフルオロエチレン繊維が、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末とセルロース系樹脂とを含む分散液を口金から凝固浴中に吐出して紡糸し凝固することによって繊維状物を得る湿式紡糸法によって得られたものであることを特徴とする前記(5)〜(7)のいずれかに記載のエアフィルター用濾材。
【0015】
(9)前記(1)〜(8)のいずれかに記載のエアフィルター用濾材を含んでなることを特徴とするエアフィルターユニット。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光触媒を担持しているので匂い等のガス成分を分解することができるエアフィルター濾材を得ることができる。
【0017】
また、繊維の断面が略丸形断面であるため、高次加工性に優れ、かつ、エアフィルターユニットの圧力損失が小さなエアフィルター濾材およびエアフィルターユニットを得ることができる。また、光触媒を繊維表層部に担持する場合には、光触媒の有効活用率が高いエアフィルター濾材およびエアフィルターユニットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の説明は本発明の一実施例を示すものであり、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明は、光触媒を担持してなるフッ素樹脂系繊維を含むエアフィルター用濾材であって、前記フッ素樹脂系繊維の断面が略丸形断面であるものである。
【0020】
上記のフッ素樹脂系繊維としては、重合体の繰り返し構造単位の90%以上が、主鎖または側鎖にフッ素原紙を1個以上含むモノマーで構成された繊維であれば、いずれのものでも使用することができるが、フッ素原子数の多いモノマーで構成された繊維ほど好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)またはエチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE)を用いることがさらに好ましい。PTFEは光触媒で最も劣化を受けにくい高分子であり、PTFE繊維を用いることが好ましい。PTFE繊維を用いることによって、PTFEは光触媒の劣化を受けにくいので、光触媒を大量に担持することが可能になり、それを用いたエアフィルター用濾材が高いガス分解性能を得ることができるのである。
【0021】
フッ素樹脂系繊維の断面は、略丸型断面であることが好ましい。略丸形断面とは、例えばある2定点からの距離の和が一定である点を結んだ軌跡である楕円形であってもよい。直線と直線が交わってできるような角部分がないことによって、濾材の中をエアが流れるときに、乱気流が発生せずに圧力損失を小さくすることができる。さらに好ましくは、ある定点から一定の距離の点を結んだ軌跡である円形であるとさらに好ましい。円形あるいは円形に近い形状であると、エアフィルター濾材内をエアが通過し、エアの進行方向と繊維とが交わるときに、繊維に沿ってエアが流れるので乱気流等を発生しにくくなり、圧力損失を小さくすることができる。さらには、略丸形断面でも、略円形であることが好ましい。なぜなら、繊維が矩形断面等であれば、エアの進行方向と繊維の断面の両辺や対角線とが略直交すると、エアの進行を妨げやくなり、圧力損失が高くなってしまうからである。しかしながら、略円形であれば、エアの進行方向と繊維とがどの方向で直交しても、直交する繊維断面の長さは略円形の直径の長さにしかならず、同じ繊維の断面積で比較すれば、矩形断面積の長辺や対角線よりも直径の方が短いので、圧力損失を低くすることができるのである。
【0022】
また、前記フッ素樹脂系繊維は、1〜5質量%の炭化成分を含有してなることが好ましい。炭化成分とは、有機物を適当な条件下で加熱し、熱分解をして得られる炭素に富んだ物質のことをいい、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末と混合したセルロール樹脂を加熱処理して熱分解されたものである。
【0023】
炭化成分を含有させる手段としては、接着剤等や熱溶融によりフッ素樹脂系繊維の表層部に固着してもよいし、フッ素樹脂系繊維に練り込んでもよい。固着力が強く炭化成分の脱落を少なくすることができるので練り込みの方が好ましい。フッ素樹脂は、疎水性である。よって、対象ガスが、NOx、SOxなどの親水性ガスであると、疎水性のフッ素樹脂からなる繊維の表面に親水性ガスが吸着せずに、光触媒による分解をうけにくくなる。そこで、一部、炭化成分を含有することにより親水性ガスとの親和性も得ることができ、親水性ガスの分解性能を向上することができるようになるのである。また、疎水性であるが故に、フッ素樹脂系繊維は水分率が非常に低くなり、帯電してしまい静電気が発生しやすい。よって、不織布等を加工するときに、静電気を帯びてしまい、カードマシーンのローラーに巻き付いてしまう等の問題が発生する。しかし、炭化成分を含有することにより、フッ素樹脂系繊維の水分率を適度に保つことができ、静電気を帯びにくくなり、カードマシーンのローラー巻き付きが劇的に改善され、濾材の生産時の収率を高く保つことができるのである。炭化成分の含有量は、前記の通り1〜5質量%が好ましい。1質量%よりも少ないと上記のような効果を十分に得ることができない、また5質量%よりも多いと練り込みの場合には、炭化成分が異物となりその部分で破断するので糸の強度が十分に得られない、かつ、糸の生産性も悪くなる。また、表面に固着する場合には、5質量%以上固着すると、炭化成分が脱落しやすくなってしまうのである。
【0024】
光触媒は、TiO、ZnO、Fe等の金属酸化物やCdS、CdSe、また、C60、C70等炭素のみからなる一連の球状炭素分子であるフラーレン、さらに、TiOにCuやCr、V、Sr等の金属をともに含有するTiO変性物等いかなるものを用いてもよいが、中でも酸化力が強いTiO、TiO変性物、C60が好ましく、その中でも最も光触媒活性が高いTiOが好ましい。また、これらの光触媒は単体で用いてもよいし、2種類以上を混合しても良い。
【0025】
触媒担持フッ素繊維において光触媒の担持量は、0.5質量%以上80質量%以下がよい。0.5質量%未満では光触媒の効果が充分に得られないし、80質量%を越えると光触媒の量が多すぎて繊維の風合いが悪くなる。好ましくは、練り込みで担持する場合には0.5質量%以上30質量%以下がよい。30質量%より多いと生産するときに糸切れを頻繁に起こしてしまい、生産性が悪くなる。さらには。0.5質量%以上20質量%以下が良い。また、表面で担持する場合には0.5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0026】
光触媒の担持方法としては、フッ素樹脂の中に光触媒を練り込んで繊維状にする練り込みのものでもよい。練り込む場合には、繊維内に均一に担持されていてもよい。しかしながら、内部に入っている光触媒は、光触媒として有効活用されないので、光触媒の有効利用率が低くなり、活用されない光触媒を投入することになるので、コストが高くなってしまう。そこで、芯鞘構造になっていて、鞘の部分に多く光触媒が担持されているものがさらには好ましい。また、フッ素繊維の表面に光触媒を接着剤等で接着する、あるいは、フッ素繊維の表面を熱溶融して光触媒を熱接着する等の表面で固着してもよい。
【0027】
さらに、光触媒を担持してなるフッ素樹脂系繊維が、吸着剤を含有するとよい。含有の手段としては、接着剤等や熱溶融によりフッ素樹脂系繊維の表層部に固着してもよいし、フッ素樹脂系繊維に練り込んでもよい。吸着剤の保持力が強く、脱落を少なくすることができるので練り込みの方が好ましい。吸着剤の含有量としては、0.1質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上5質量%以下がよい。含有量が0.1質量%未満では、含有量が少なすぎて吸着効果が十分に得られない。また、10質量%よりも多いと、表層部に固着する場合には吸着剤の量が多すぎて吸着剤を十分な固着力で固着するのが難しく、吸着剤が多く脱落してしまう。また、練り込みの場合には、吸着剤部分が異物となり糸が破断してしまい十分な強度が得られない、かつ、生産時に糸が破断するので糸の生産性も悪くなってしまう。吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、アパタイト、多孔シリカ、などいかなるものでもよい。吸着剤は、空気中や水中に含まれる汚染物質を吸着する作用がある。光が当たらず光触媒作用が発生しないときにも、吸着剤による汚染物質吸着作用が持続的に発揮される。そして、光が照射されて光触媒効果により、吸着剤に吸着された汚染物質を分解することで、再び吸着剤が吸着できるようになる。よって、光触媒フッ素繊維からなるパルプが吸着剤を含有すると、光が当たらないときも汚染物質の除去ができるので光の有無に関わらず連続的に効果が発揮でき、光触媒で吸着物質を分解するので吸着剤の効果を長く保つことができて、空気の浄化に一層効果的に使用することができる。
【0028】
前記光触媒を担持してなるフッ素樹脂系繊維は、PTFE樹脂粉末を含む分散液とビスコース等セルロース系樹脂と光触媒粉末を含む分散液を減圧、脱泡しながら混合、撹拌し、口金から硫酸等の酸性の水溶液中に吐出した糸状物を加熱ロールに接触させて焼成して得る湿式凝固法により好ましく得ることができる。口金から吐出して、フッ素樹脂系繊維を得るので、口金形状を適切に円形等に設計することで、繊維径が均一に揃っていて、かつ、略丸形断面の高次加工性に優れたフッ素繊維を得ることができるのである。
【0029】
これらの光触媒を担持してなるフッ素樹脂系繊維を用いてエアフィルター濾材を作ることができる。エアフィルター濾材の形態としては、ニードルパンチやウォータージェットパンチ等の製造方法を用いた乾式不織布であってもよいし、光触媒担持フッ素樹脂系繊維のカットファイバー等を水に分散させたスラリーを作って、それを抄紙した湿式不織布であってもよい。
【0030】
これらの不織布は、光触媒を担持してなるフッ素樹脂系繊維のみから構成されていてもよいし、フッ素繊維以外の素材からなる繊維を含んでいてもよい。フッ素繊維以外の繊維としては、有機物素材を原料とする、ポリアリーレンスルフィド繊維、メタアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンレテフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維、ポリビニルアセテート繊維、などいずれの素材であってもよい。また、無機物素材として、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、バサルト繊維、耐炎化繊維などが挙げ得られる。なかでも、光触媒による劣化を受けにくい無機物素材とブレンドするのが好ましい。
【0031】
このように得た濾材を用いたエアフィルターユニットが好ましいのである。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。ただし、下記する実施例は本発明の一例であって、これに限定されるものではない。
【0033】
なお、評価項目の評価方法は各水準とも次のようにして行った。
【0034】
(1)単糸繊度
SEMにより、単糸150本の断面を倍率150倍で観察し、最も断面が大きいもの(単糸が最も太い)と、小さいもの(単糸が最も細い)の断面積(S(cm))を求め、以下の式で単糸繊度を算出する。
【0035】
単糸繊度(dtex)=S(cm)×100000(cm)×2.3g/cm
【0036】
(2)繊維断面形状
SEM写真にて、単糸の断面を倍率150倍で観察した。
【0037】
(3)不織布製造工程通過性
各工程を目視で観察した。
【0038】
(4)圧力損失
不織布を直径20cm以上に切り抜き、そのサンプルを内径15cmの円形のダクトで挟持する。ダクト内に風速2.0m/minの風を通し、不織布の上流側と下流側の差圧を測定した。
【0039】
(5)酸化チタン担持確認
SEM−XMA(X線マイクロアナライザー)を用いて、繊維の側面と断面においてチタンを含む粒子の有無を確認した。
【0040】
(6)炭化成分含有量測定
繊維サンプルを30質量%の水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬処理し、ビスコース等の不純物を溶出させた。これを流水で水洗した後、120℃に予め温度設定された乾燥機で10分間乾燥後、質量(M1)を測定した。次いで、炭化成分を焼きとばすべく、300℃の加熱空気中で24時間連続熱処理した後、質量(M2)を測定した。炭化成分を焼きとばす前後の質量変化率を次式により算出して、炭化成分含有量(質量%)とした。
炭化成分含有量(質量%)=(M1(g)−M2(g))/M1(g)×100。
【0041】
実施例1
分散剤としてアルキルアリルエーテルアルコールを用いて純水に分散されたPTFE系樹脂を60質量%含有するエマルジョン(A)と、ビスコース(B)(セルロース10%と苛性ソーダ5%、二硫化炭素29%/セルロース量、残りイオン交換水)と、酸化チタンエマルジョン(C)(酸化チタン(石原産業(株)社製酸化チタン粉末ST−01(1次粒子径7nm))40%と純水60%とを撹拌しながら水酸化カリウムを添加しpH12に調整したもの)とを質量比A:B:C=55:5:40の割合で混合し、8℃、10Torrで24時間脱泡混合して原液を得た。これを口金から凝固浴(硫酸10質量%、硫酸ソーダ15質量%を純水にて溶解した水溶液入り)中に吐出して得た凝固繊維を純水の入った洗浄浴で洗浄し、これを370℃に加熱されたロールに接触させて焼成し、続いて350℃に加熱されたロールに接触させて延伸して単糸が60本集まったマルチフィラトを得た。
【0042】
これをクリンパーを用いて捲縮を付与し、ギロチンカッターでカットして、捲縮数15回/25mm、捲縮率14%、カット長70mmのステープルファイバーを得た。
【0043】
このようにして得たステープルファイバーをオープナーを用いて開繊し、さらにローラーカードで開繊し、クロスラッパーで積層してウェブを得た。このウェブを、440dtexのPTFEモノフィラメントメッシュ織物(織り密度:タテ、ヨコとも34本/inch)の片面にクロスラッパーで積層し、50本/cmの針密度でニードルパンチ処理を施し、続いて裏面にクロスラッパーでウェブを積層し50本/cmの針密度でニードルパンチ処理を施した。その後、片面ずつ再び50本/cmの針密度でニードルパンチ処理をして繊維を交絡させて目付約730g/mの不織布を得た。評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
分散剤としてアルキルアリルエーテルアルコールを用いて純水に分散されたPTFE系樹脂を60%含有するエマルジョン(A)と、ビスコース(B)(セルロース10%と苛性ソーダ5%、二硫化炭素29%/セルロース量、残りイオン交換水)とを質量比A:B=90:10の割合で混合し、8℃、10Torrで24時間脱法混合して原液を得た。これを口金から実施例1と同構成の凝固浴中に吐出して得た凝固繊維を純水の入った洗浄液で洗浄した。その後、酸化チタンエマルジョン(酸化チタン(石原産業(株)社製酸化チタン粉末ST−01(1次粒子径7nm))40質量%と純水60質量%とを撹拌しながら水酸化カリウムを添加しpH12に調整したもの)の入った浴に浸漬し、ニップローラーで絞ったあと、350℃に加熱されたロールに接触させて焼成した。これを350℃に加熱されたロールに接触させて延伸して、単糸が60本集まったマルチフィラメントを得た。
【0045】
これを実施例1と同じく、440dtexのPTFEモノフィラメントメッシュ織物(織り密度:タテ、ヨコとも34本/inch)の片面にクロスラッパーでウェブを積層し、50本/cmの針密度でニードルパンチ処理を施し、続いて裏面にクロスラッパーでウェブを積層し50本/cmの針密度でニードルパンチ処理を施した。その後、片面ずつ再び50本/cmの針密度でニードルパンチ処理をして繊維を交絡させて目付約760g/mのニードルパンチ不織布を得た。評価結果を表1に示す。
【0046】
実施例3
実施例1と同じ手順、同じ配合比でPTFE系樹脂エマルジョンとビスコースと酸化チタンエマルジョンを混合した原液(タイプ1)と、実施例2と同じ手順、同じ配合比でPTFE系樹脂エマルジョンとビスコースを混合した原液(タイプ2)を得た。同心円で2重円構造を有する芯鞘構造をなす口金の鞘にタイプ1の原液、芯部にタイプ2の原液を吐出するようにして、凝固浴(硫酸10質量%、硫酸ソーダ15質量%を純水にて溶解した水溶液入り)中に吐出して得た凝固繊維を純水の入った洗浄浴で洗浄し、これを370℃に加熱されたロールに接触させて延伸して単糸が60本集まったマルチフィラメントを得た。
【0047】
これを実施例1と同様の手順で目付約820g/mの不織布を得た。評価結果を表1に示す。
【0048】
実施例4
分散剤としてアルキルアリルエーテルアルコールを用いて純水に分散されたPTFE系樹脂を60質量%含有するエマルジョン(A)と、ビスコース(B)(セルロース10%と苛性ソーダ5%、二硫化炭素29%/セルロース量、残りイオン交換水)と、酸化チタンエマルジョン(C)(酸化チタン(石原産業(株)社製酸化チタン粉末ST−01(1次粒子径7nm))40質量%と純水60質量%とを撹拌しながら水酸化カリウムを添加しpH12に調整したもの)と活性炭(D)とを質量比A:B:C:D=55:5:39:1の割合で混合し、8℃、10Torrで24時間脱泡混合して原液を得た。これを口金から凝固浴(硫酸10質量%、硫酸ソーダ15質量%を純水にて溶解した水溶液入り)中に吐出して得た凝固繊維を純水の入った洗浄浴で洗浄し、これを370℃に加熱されたロールに接触させて焼成し、続いて350℃に加熱されたロールに接触させて延伸して単糸が60本集まったマルチフィラトを得た。これを実施例1と同様の手順で目付750g/mの不織布を得た。
【0049】
比較例1
PTFE系樹脂微粉末70質量%と酸化チタン(石原産業(株)社製酸化チタン粉末ST−01(1次粒子径7nm))5質量%とナフサ25質量%とを撹拌混合し、これを円筒状に予備成型した、これを押し出し成型して、圧延し、厚さ0.1mmのシートを得た。これを300℃に加熱焼成して、酸化チタン含有PTFEシートを得た。このシートを350℃に加熱しながら長手方向に3倍に延伸した。このシートを金属針を多数備えたブラシで引っ掻き開繊して断面が矩形の光触媒担持PTFE繊維を得た。
【0050】
これを実施例1と同じく、440dtexのPTFEモノフィラメントメッシュ織物(織り密度:タテ、ヨコとも34本/inch)の片面にクロスラッパーでウェブを積層し、50本/cmの針密度でニードルパンチ処理を施し、続いて裏面にクロスラッパーでウェブを積層し50本/cmの針密度でニードルパンチ処理を施した。その後、片面ずつ再び50本/cmの針密度でニードルパンチ処理をして繊維を交絡させて処理をして目付約870g/m2の不織布を得た。評価結果を表1に示す。
【0051】
実施例1〜4で得られた光触媒を担持してなるフッ素繊維樹脂系繊維は、繊維断面形状が円であり、かつ、単糸繊度のバラツキが小さいため、不織布製造等の高次加工性に優れ、これらの繊維により構成された不織布からなるエアフィルター用濾材は圧力損失が繊維断面形状が矩形の比較例と比較し圧力損失が小さかった。また、すべての水準について酸化チタンが含有されているのが観察された。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を担持してなるフッ素樹脂系繊維を含むエアフィルター用濾材であって、前記フッ素樹脂系繊維の断面が略丸形断面であることを特徴とするエアフィルター用濾材。
【請求項2】
前記フッ素樹脂系繊維が、1〜5質量%の炭化成分を含有してなることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルター用濾材。
【請求項3】
前記フッ素樹脂系繊維の断面が芯鞘構造を有しており、鞘部分が光触媒を含んでなることを特徴とする請求項1または2のいずれかにに記載のエアフィルター用濾材。
【請求項4】
前記フッ素樹脂系繊維の表層部に光触媒を固着してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエアフィルター用濾材。
【請求項5】
前記フッ素樹脂系繊維が、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエアフィルター用濾材。
【請求項6】
前記光触媒が、少なくとも酸化チタン、酸化チタン変性物およびフラーレンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエアフィルター用濾材。
【請求項7】
前記フッ素樹脂系繊維が、吸着剤を含有してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエアフィルター用濾材。
【請求項8】
前記ポリテトラフルオロエチレン繊維が、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末とセルロース系樹脂とを含む分散液を口金から凝固浴中に吐出して紡糸し凝固することによって繊維状物を得る湿式紡糸法によって得られたものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のエアフィルター用濾材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のエアフィルター用濾材を含んでなることを特徴とするエアフィルターユニット。

【公開番号】特開2007−167771(P2007−167771A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369342(P2005−369342)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】