説明

エアフィルタ濾材

【課題】高い捕集効率を有し、圧力損失の上昇が抑制され、寿命が長いエアフィルタ濾材を提供する。
【解決手段】本発明のエアフィルタ濾材は、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と通気性繊維層とが積層されたフィルタ層と、フィルタ層の片面に積層されたプレフィルタ層と、フィルタ層とプレフィルタ層との間に設けられた接着層と、の積層体を含む。フィルタ層における両方の最外層は通気性繊維層である。プレフィルタ層を構成する繊維の平均繊維径は0.6〜15μmであり、通気性繊維層を構成する繊維の平均繊維径は10〜30μmである。通気性繊維層を構成する繊維の平均繊維径はプレフィルタ層を構成する繊維の平均繊維径よりも大きい。接着層は目付量5〜10g/m2の繊維層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜を用いたエアフィルタ濾材に関し、特に、タービン用吸気フィルタ濾材およびマスク用フィルタ濾材等、気体中の浮遊粒子の捕捉または除去のために用いられるエアフィルタ濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タービンの吸気等に用いられるエアフィルタ濾材としては、ガラス繊維にバインダーを加えて抄紙したガラス製フィルタ濾材が多く用いられてきた。このようなガラス製フィルタ濾材には、いくつかの問題点がある。例えば、ガラス製フィルタ濾材には、その中に付着小繊維が存在するため、折り曲げ等の加工が行われた時に自己発塵するという問題があった。
【0003】
近年、PTFE多孔質膜を含むフィルタ濾材が、半導体工業のクリーンルーム用の高性能エアフィルタ濾材として使用され始めている。特許文献1に記載されているフィルタ濾材はその一例である。PTFE多孔質膜を含むフィルタ濾材は、高い捕集効率および低い圧力損失を有するため、エアフィルタ濾材として適している。しかし、高捕集効率ゆえに、早期に目詰まりが生じて圧力損失が上昇するため、PTFE多孔質膜を含むフィルタ濾材はその寿命の点で問題があった。
【0004】
PTFE多孔質膜の目詰まりを防止してエアフィルタ濾材を長寿命化するために、種々の検討がなされている。例えば、特許文献2および特許文献3は、PTFE多孔質膜に対して空気の流れの上流側に、大きな粉塵を予め捕集できるプレフィルタ層を設けることを開示している。プレフィルタ層としては、繊維からなる不織布等の通気性支持材が用いられている。特許文献4には、径の異なる繊維からなる2種類の通気性支持材とPTFE多孔質膜とを積層した濾材が開示されている。特許文献5には、捕集効率の異なる2種類のPTFE多孔質膜を積層した濾材が開示されている。
【0005】
これらの技術は、PTFE多孔質膜とプレフィルタ層等の他の層との積層構造および濾材の構成について、特に制限していない。しかし、積層構造および構成がエアフィルタ濾材の性能に与える影響は大きく、場合によっては、プレフィルタ層を設ける等の工夫をしても濾材の寿命が大きく延びない結果となる。積層構造および構成によっては、濾材のハンドリング性が悪くなる。例えば、PTFE多孔質膜が最外層に設けられた濾材に対してプリーツ加工を行うと、PTFE多孔質膜がダメージを受けやすい。このように、PTFE多孔質膜とその他の層との最適な積層構造や、PTFE多孔質膜を含むエアフィルタ濾材の最適な構成についての知見は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−61280号公報
【特許文献2】特開2002−370009号公報
【特許文献3】特開2000−300921号公報
【特許文献4】特開2002−370020号公報
【特許文献5】特開2005−205305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い捕集効率を有し、圧力損失の上昇が抑制され、寿命が長いエアフィルタ濾材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
PTFE多孔質膜と通気性繊維層とが積層されたフィルタ層と、
前記フィルタ層の片面に積層されたプレフィルタ層と、
前記フィルタ層と前記プレフィルタ層との間に設けられた接着層と、
の積層体を含み、
前記フィルタ層における両方の最外層が前記通気性繊維層であり、
前記プレフィルタ層を構成する繊維の平均繊維径が0.6〜15μmであり、
前記通気性繊維層を構成する繊維の平均繊維径が10〜30μmであり、
前記通気性繊維層を構成する繊維の平均繊維径は前記プレフィルタ層を構成する繊維の平均繊維径よりも大きく、
前記接着層が目付量5〜10g/m2の繊維層である、
エアフィルタ濾材を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエアフィルタ濾材は、プレフィルタ層と接着層とフィルタ層との積層体を含む。プレフィルタ層は、平均繊維径が0.6〜15μmである繊維で構成され、フィルタ層の片面側に設けられている。これにより、エアフィルタ濾材の使用に伴う圧力損失の上昇を抑制することができる。フィルタ層は、通気性繊維層とともにPTFE多孔質膜を含む。これにより、高い捕集効率を有するエアフィルタ濾材を得ることができる。通気性繊維層を構成する繊維の平均繊維径は10〜30μmであり、プレフィルタ層を構成する繊維の平均繊維径よりも大きい。これにより、フィルタ層は高い通気性を有することができる。接着層は、フィルタ層とプレフィルタ層との間に設けられている。接着層は、目付量5〜10g/m2の繊維層である。フィルタ層の最外層であって接着層に接した層は、通気性繊維層である。これらにより、PTFE多孔質膜とプレフィルタ層との間における目詰まりが抑制され、PTFE多孔質膜とプレフィルタ層とが強固に一体化された、エアフィルタ濾材を得ることができる。フィルタ層の最外層であって接着層からより遠い側にある層も、通気性繊維層である。これにより、エアフィルタ濾材に対してプリーツ加工等の加工を行う際にPTFE多孔質膜を保護するとともに、エアフィルタ濾材の使用に伴うPTFE多孔質膜へのダメージを防ぐことができる。したがって、本発明により、高い捕集効率を有し、圧力損失の上昇が抑制され、寿命が長いエアフィルタ濾材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態であるエアフィルタ濾材を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態であるエアフィルタ濾材を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるエアフィルタ濾材を示す、模式的な断面図である。図2は、本発明の別の実施形態であるエアフィルタ濾材を示す、模式的な断面図である。なお、いずれの図面においても、使用時には、図面上方を気流の上流側としてエアフィルタ濾材を配置するものとする。また、これ以降、気流の上流側を、単に「上側」と記載することがある。
【0012】
図1に示すエアフィルタ濾材100は、フィルタ層10と、フィルタ層10の片面に接するように積層された接着層20と、接着層20のもう一方の面に接するように積層されたプレフィルタ層30とを含む。フィルタ層10は、PTFE多孔質膜11と通気性繊維層12とが積層されてなる積層体である。図1に示すように、フィルタ層10における両方の最外層は通気性繊維層12である。濾材100において、フィルタ層10は、通気性繊維層12/PTFE多孔質膜11/通気性繊維層12、の積層構造を有する。濾材100において、接着層20は単一の層からなっている。このように、濾材100は、上側から順に、プレフィルタ層30/接着層20/通気性繊維層12/PTFE多孔質膜11/通気性繊維層12、の積層構造を有する。
【0013】
図2に示すエアフィルタ濾材200は、図1に示すエアフィルタ濾材100と比べて、接着層20が二つの層の積層体である点のみが異なる。濾材200における接着層20は、通気性繊維層12に接する第一の接着層21とプレフィルタ層30に接する第二の接着層22とが積層されてなる。このように、濾材200は、上側から順に、プレフィルタ層30/第二の接着層22/第一の接着層21/通気性繊維層12/PTFE多孔質膜11/通気性繊維層12、の積層構造を有する。
【0014】
以下、エアフィルタ濾材100,200を構成する各層について説明する。
【0015】
〈プレフィルタ層〉
プレフィルタ層30は、フィルタ層10に対して気流の上流側に設けられている。プレフィルタ層30は、接着層20の片方の面に接するように積層されている。プレフィルタ層30は、適度に通気性を有しながら、大気中の比較的大きな粉塵を予め捕集することにより、PTFE多孔質膜11の目詰まりを防止する機能を有する。プレフィルタ層30により、濾材100,200の使用に伴う圧力損失の上昇が抑制されるため、濾材100,200の寿命が長くなる。PTFE多孔質膜11は、延伸によりその厚みが薄いため強度が弱く、それ単独ではエアフィルタ濾材としての使用が困難である。プレフィルタ層30は、PTFE多孔質膜11を補強する機能をも有している。
【0016】
プレフィルタ層30としては、短繊維やフィラメント等の繊維で構成された、PTFE多孔質膜よりも通気性に優れる材料、例えば、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)およびその他の多孔質材料を用いることができる。中でも、強度、柔軟性および作業性の点で優れることから、不織布が好ましい。
【0017】
プレフィルタ層30を構成する繊維の平均繊維径が0.6μm以上であれば、プレフィルタ層30は十分な強度および通気性を有することができる。プレフィルタ層30を構成する繊維の平均繊維径が15μm以下であれば、プレフィルタ層30は大気中の比較的大きな粉塵を捕集するのに十分な捕集効率を有することができる。したがって、プレフィルタ層30を構成する繊維の平均繊維径は、0.6〜15μmであり、0.6〜3.0μmが好ましい。
【0018】
なお、本明細書における平均繊維径は、後述するとおり、光学顕微鏡を用いて測定することができる。
【0019】
層を構成する繊維の平均繊維径が小さいほど、当該層が粉塵を捕集する性能は向上する。それゆえ、プレフィルタ層30を構成する繊維の平均繊維径は、通気性繊維層12を構成する繊維の平均繊維径よりも小さいことが好ましい。これにより、気流の上流側ではプレフィルタ層30が大気中の比較的大きな粉塵を予め捕集し、気流の下流側ではPTFE多孔質膜11がより微細な粉塵を捕集する、という構成を有する濾材100,200を実現できる。同様の観点から、プレフィルタ層30を構成する繊維の平均繊維径は、接着層20を構成する繊維の平均繊維径よりも小さいことが好ましい。
【0020】
プレフィルタ層30の厚みは、例えば、0.12〜0.35mmである。プレフィルタ層30を構成する繊維の材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)等のポリエステル、芯部分がPET製で、鞘部分がポリエチレン(PE)製である芯鞘構造を有する繊維(PET/PE繊維)、ポリアミド、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が挙げられる。プレフィルタ層30を構成する繊維の材料は、高い耐薬品性を備えるとともに、製造上の観点から融点の低さと耐熱性とのバランスが良いことが好ましい。これらの理由から、プレフィルタ層30はPP製の繊維で構成されることが好ましい。プレフィルタ層30の目付量は、ハンドリング性や圧力損失、捕集性能の観点から、5〜100g/m2が好ましい。
【0021】
〈フィルタ層〉
フィルタ層10は、通気性繊維層12とPTFE多孔質膜11との積層体で構成される。フィルタ層10におけるPTFE多孔質膜11としては、濾材100の使用用途に応じた捕集性能が発揮されるものであれば、孔径、厚さ、気孔率等を特に限定することなく用いることができる。
【0022】
PTFE多孔質膜11の厚みは、作製する濾材の大きさ等により適宜決定され、例えば、2〜100μmである。PTFE多孔質膜11の平均孔径は、例えば、0.5〜50μmである。
【0023】
PTFE多孔質膜11の製造方法としては、濾材100の使用用途に応じた捕集性能が発揮されるものであれば、特に制限されない。PTFE多孔質膜11の製造方法として、例えば、特開平10−030031号公報、国際公開第94/16802号パンフレット等に記載されている製造方法が挙げられる。PTFE多孔質膜11の製造方法の一例を以下に示す。
【0024】
まず、未焼成のPTFE微粉末に液状潤滑剤を加えて混合する。PTFE微粉末(PTFEファインパウダー)としては、特に制限されず、市販のものが使用できる。液状潤滑剤としては、PTFE微粉末の表面を濡らすことができ、後で除去できるものであれば特に制限されず、ナフサ、ホワイトオイル、流動パラフィン、トルエン、キシレン等の炭化水素油、アルコール類、ケトン類、エステル類等が使用できる。2種以上の液状潤滑剤を併用してもよい。
【0025】
PTFE微粉末に対する液状潤滑剤の添加割合は、PTFE微粉末の種類、液状潤滑油の種類および後述するシート成形の条件等により適宜決定されるが、例えば、PTFE微粉末100重量部に対して、液状潤滑剤15〜35重量部である。
【0026】
次に、未焼成のPTFE微粉末と液状潤滑剤との混合物を、未焼成状態でシート状に成形することにより、シート状成形体を得る。シート成形の方法としては、例えば、混合物をロッド状に押し出した後、対になったロールにより圧延する圧延法や、混合物を板状に押し出してシート状にする押し出し法が挙げられる。2種以上の方法を組み合せてシート成型を行ってもよい。シート状成形体の厚みは、後に行う延伸の条件等により適宜決定されるが、例えば、0.1〜0.5mmである。
【0027】
シート状成形体に含まれる液状潤滑剤は、続いて行う延伸工程の前に、加熱法または抽出法等により除去しておくことが好ましい。抽出法に使用する溶媒としては、特に制限されないが、例えば、ノルマルデカン、ドデカン、ナフサ、ケロシン、スモイル等が挙げられる。
【0028】
次に、シート状成形物に対して延伸を行う。延伸方法としては、二軸延伸が好ましい。例えば、シート状成形物を、その長手方向の長さが2〜60倍になるように、温度150〜390℃で延伸した後、幅方向の長さが10〜60倍になるように、温度40〜150℃で延伸することにより、PTFE多孔質膜11が得られる。なお、延伸後にPTFEの融点以上に加熱して焼成してもよい。
【0029】
フィルタ層10における通気性繊維層12は、PTFE多孔質膜11およびプレフィルタ層30の性能を維持し、かつ、濾材100,200の製造、加工、および使用に伴って生じうる不具合を防止する機能を有する。通気性繊維層12としては、十分な通気性を有する材料が用いられる。具体的には、通気性繊維層12としては、短繊維やフィラメント等の繊維で構成された、PTFE多孔質膜11よりも通気性に優れる材料、例えば、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)およびその他の多孔質材料を用いることができる。中でも、強度、柔軟性および作業性の点で優れることから、不織布が好ましい。
【0030】
従来、PTFE多孔質膜に接するようにプレフィルタ層を重ねて得られる積層体を一体化させることにより、濾材が製造されていた。しかし、このような場合、一体化の際にプレフィルタ層とPTFE多孔質膜との間の界面において目詰まりが生じるため、濾材の圧力損失が大きくなり、濾材の使用に伴う圧力損失の上昇も大きくなり易い。
【0031】
これに対し、本実施形態によれば、PTFE多孔質膜11は、フィルタ層10における2枚の通気性繊維層12の間に位置する。上述したように、通気性繊維層12を構成する繊維の平均繊維径は、プレフィルタ層30を構成する繊維の平均繊維径よりも大きい。すなわち、通気性繊維層12はプレフィルタ層30よりも高い通気性を有する。それゆえ、通気性繊維層12はPTFE多孔質膜11と接するように積層されても目詰まりを生じにくい。特に、フィルタ層10の最外層であってプレフィルタ層30側にある層(接着層20に接した層)は、通気性繊維層12である。言い換えれば、フィルタ層10の最上層(気流の上流側におけるフィルタ層10の最外層)は、通気性繊維層12である。それゆえ、プレフィルタ層30との一体化に関与するのは、PTFE多孔質膜11の表面ではなく、フィルタ層10の最上層であり通気性の高い通気性繊維層12の表面である。プレフィルタ層30が直接PTFE多孔質膜11上に積層されないため、上述したような不具合を抑制することができる。したがって、圧力損失の上昇が抑制され、長寿命であり、かつ、PTFE多孔質膜11とプレフィルタ層30とが強固に一体化した濾材100,200を実現できる。
【0032】
さらに、フィルタ層10の最外層であってプレフィルタ層30からより遠い側にある層も、通気性繊維層12である。言い換えれば、フィルタ層10の最下層(気流の下流側におけるフィルタ層10の最外層)は、通気性繊維層12である。よって、濾材100,200におけるPTFE多孔質膜11は両側から通気性繊維層12により保護されている。それゆえ、濾材100,200に対してプリーツ加工等の加工が行われても、PTFE多孔質膜11は損傷を受けずに済む。したがって、プリーツ加工等の加工時におけるハンドリング性に優れた濾材100,200を実現できる。
【0033】
PTFE多孔質膜11の面に接する通気性繊維層12は、濾材100,200の使用時にPTFE多孔質膜11を支える機能を有する。通気性繊維層12を構成する繊維の平均繊維径が大き過ぎる場合、通気性繊維層12を構成する繊維とPTFE多孔質膜11との接点間の距離が長くなるため、PTFE多孔質膜11が通気性繊維層12によって十分に支えられていない部分が生じる。PTFE多孔質膜11が十分に支えられていないと、濾材100,200のプリーツ加工や、プリーツ加工後の濾材100,200の使用に伴って、PTFE多孔質膜11が損傷を受け易い。PTFE多孔質膜11が損傷を受けると、リークの発生により濾材100,200の捕集効率が低下し、濾材100,200の寿命も短くなる。他方、通気性繊維層12における平均繊維径が小さ過ぎる場合、濾材100,200の圧力損失が大きくなり易い。これらの理由から、通気性繊維層12を構成する繊維の平均繊維径は、10〜30μmであり、15〜25μmが好ましい。通気性繊維層12を構成する繊維の平均繊維径がこの範囲にあることにより、高い捕集効率を有し、圧力損失の上昇が抑制され、寿命が長い濾材100,200を実現できる。
【0034】
以上のとおり、PTFE多孔質膜11を通気性繊維層12と積層してフィルタ層10とすることにより、PTFE多孔質膜11の優れた性能が十分に発揮される濾材100,200を実現できる。
【0035】
フィルタ層10における両方の最外層、すなわち、フィルタ層10における最上層および最下層が、ともに通気性繊維層12である限り、フィルタ層10における通気性繊維層12およびPTFE多孔質膜11の積層の順序は制限されない。フィルタ層10において、PTFE多孔質膜11と通気性繊維層12とが交互に積層されていてもよいし、PTFE多孔質膜11および通気性繊維層12のいずれか一方もしくは両方が連続して積層されている部分があってもよい。フィルタ層10における複数の通気性繊維層12は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。フィルタ層10は、通気性繊維層12/PTFE多孔質膜11/通気性繊維層12、の積層構造を有することが好ましい。フィルタ層10は、図1,2に示すように、これら3つの層のみからなっていてもよい。
【0036】
通気性繊維層12の目付量は、濾材100,200の通気性等の観点から、15〜30g/m2が好ましい。通気性繊維層12の厚みは、濾材100,200の通気性や、プリーツ加工等におけるハンドリング性、濾材100,200の全体としての厚みの観点から、130〜200μmが好ましい。
【0037】
通気性繊維層12を構成する繊維の材料としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリアミド、ならびにこれらの複合材等が挙げられる。PTFE多孔質膜11と通気性繊維層12とを容易かつ良好に接着できるという観点から、通気性繊維層12を構成する繊維は、融点が低いポリオレフィン、特に、ポリプロピレンまたはポリエチレンを含むことが好ましい。
【0038】
通気性繊維層12は、芯成分が鞘成分より相対的に融点が高い芯鞘構造を有する複合繊維からなることが好ましい。芯成分としては、PET等、比較的融点の高い材料が用いられ、鞘成分としては、ポリオレフィン等、比較的融点の低い材料が用いられる。具体的には、芯鞘構造を有する繊維として、芯部分がPET製で、鞘部分がPE製であるもの(PET/PE繊維)や、芯部分がPP製で、鞘部分がPE製であるもの(PP/PE繊維)が挙げられる。芯鞘構造の繊維からなる通気性繊維層12を用いた場合、加熱により通気性繊維層12とPTFE多孔質膜11とをラミネートしても、通気性繊維層12の構造および厚みの熱による変化を抑制するとともに、通気性繊維層12の収縮によるPTFE多孔質膜11へのダメージを防止することができる。PTFE多孔質膜11と通気性繊維層12とを容易かつ良好に接着できるという観点から、通気性繊維層12、特に、PTFE多孔質膜11に接する通気性繊維層12は、PET/PE繊維からなることが好ましい。
【0039】
PTFE多孔質膜11と通気性繊維層12との積層体を一体化させてフィルタ層10を製造するための方法としては、熱によるニップラミネート、赤外線ヒータを用いるラミネート(特許第3672868号公報を参照)等が挙げられる。中でも、各層の厚みをつぶすことなく強固な接着を実現できるという観点から、赤外線ヒータを用いるラミネートが好ましい。なお、通気性繊維層12が芯鞘構造の繊維からなる場合、通気性繊維層12の加熱温度は鞘成分の軟化点以上(好ましくは融点以上)で芯成分の融点よりも低く設定することが好ましい。
【0040】
〈接着層〉
接着層20は、フィルタ層10の上面に接するように積層されている。接着層20は、フィルタ層10の最上層にある通気性繊維層12とプレフィルタ層30との間に介在することにより、フィルタ層10とプレフィルタ層30とを一体化させる。接着層20は、目付量5〜10g/m2の繊維層である。接着層20の目付量が10g/m2以下であることにより、フィルタ層10とプレフィルタ層30との一体化に伴う通気性の低下および濾材100,200の使用に伴う圧力損失の上昇を防ぐことができる。接着層20の目付量が5g/m2以上であることにより、接着層20を介してプレフィルタ層30とフィルタ層10とを強固に一体化させることができる。
【0041】
接着層20は、エアレイド法により形成された繊維層であることが好ましい。エアレイド法(エアレイ法)とは、開繊した繊維群を空気中に分散させ、それを空気流に乗せて搬送し、キャリア上に堆積させることで繊維層を形成する方法であり、不織布の製造等に用いられている方法である(例えば、特開2006−81779号公報、特開2006−83496号公報、特開2006−83497号公報等を参照)。エアレイド法を用いることにより、得られる繊維層の目付量を容易に制御することができる。また、エアレイド法を用いることにより、接着層の目付量を極力少なくすることができる。具体的には、接着層20の目付量を、5〜10g/m2に制御することが容易にできる。
【0042】
通常、2つの層を一体化させる方法として、2つの層を互いに接するように重ね合わせた後、熱により両層の表面を溶かす方法や、2つの層の間にホットメルト等の接着剤を塗布する方法等が採用される。しかし、このような方法を用いて、平均繊維径の比較的小さい繊維からなる(捕集効率の比較的高い)プレフィルタ層とその他の層とを一体化させた場合、両層の間の界面において目詰まりが生じ易い。その結果、得られた濾材の圧力損失が大きくなり、濾材の使用に伴う圧力損失の上昇も大きくなり、濾材の寿命が短くなる。
【0043】
これに対し、本実施形態では、フィルタ層10およびプレフィルタ層30が、目付量5〜10g/m2の繊維層である接着層20を介して一体化されているため、フィルタ層10とプレフィルタ層30との間において目詰まりが生じ難い。それゆえ、圧力損失の上昇が抑制された、寿命の長い濾材100,200を実現することができる。
【0044】
接着層20の厚みは、例えば、30〜70μmである。接着層20の厚みが30μm以上であれば、プレフィルタ層30と接着層20との間および接着層20とフィルタ層10との間の接着を良好とすることができる。接着層20の厚みが70μm以下であれば、接着層20における通気性を高くすることができる。
【0045】
接着層20を構成する繊維の平均繊維径は、例えば、10〜60μmであり、15〜40μmが好ましい。接着層20を構成する繊維の平均繊維径が10μm以上であれば、接着層20における通気性を高くすることができる。接着層20を構成する繊維の平均繊維径が60μm以下であれば、プレフィルタ層30と接着層20との間および接着層20とフィルタ層10との間の接着を良好とすることができる。
【0046】
接着層20を構成する繊維の平均繊維径は、フィルタ層10における通気性繊維層12を構成する繊維の平均繊維径よりも大きいことが好ましい。これにより、フィルタ層10に接着層20を接着した際に、フィルタ層10と接着層20との間の界面における目詰まりを抑制し、濾材100,200の圧力損失の上昇を抑制することができる。同様の観点から、接着層20を構成する繊維の平均繊維径は、プレフィルタ層30を構成する繊維の平均繊維径よりも大きいことが好ましい。
【0047】
接着層20は、接着層20が接する通気性繊維層12および/またはプレフィルタ層30に含まれる材料と同じ材料を含むことが好ましい。これにより、接着層20はフィルタ層10とプレフィルタ層30とをより強固に接着させることができ、剥がれの生じにくい濾材100,200を得ることができる。接着層20は、芯成分が鞘成分より相対的に融点が高い芯鞘構造を有する複合繊維からなることが好ましい。芯鞘構造を有する複合繊維として、芯部分がPET製で、鞘部分がPP製であるもの(PET/PP繊維)、芯部分がPET製で、鞘部分がPE製であるもの(PET/PE繊維)等が挙げられる。
【0048】
接着層20は2つ以上の層からなっていてもよい。フィルタ層10の最上層にある通気性繊維層12とプレフィルタ層30とで互いに材料が異なっている場合、2つ以上の層からなる接着層20における各層の材料を適切に選択することにより、フィルタ層10、接着層20およびプレフィルタ層30が互いに強固に接着した濾材200を容易に得ることができる。例えば、2つの層、すなわち、第一の接着層21と第二の接着層22との積層体からなる接着層20を備えた濾材200において、フィルタ層10の最上層にある通気性繊維層12が材料Aを含み、プレフィルタ層30が材料Bを含むとする。この場合、第一の接着層21として、材料Aを含むものを選択することにより、フィルタ層10と第一の接着層21との間において強固な接着を実現できる。さらに、第二の接着層22として、材料Bを含むものを選択することにより、第二の接着層22とプレフィルタ層30との間において強固な接着を実現できる。その結果、全体として隣り合う層同士が強固に一体化された濾材200が得られる。
【0049】
フィルタ層10、接着層20およびプレフィルタ層30の積層方法は、特に限定されない。例えば、フィルタ層10、接着層20およびプレフィルタ層30をそれぞれ個別に作製し、これら3つの層10,20,30をこの順に重ね合わせた後、一体化することにより濾材100,200を製造できる。
【0050】
あるいは、接着層20とプレフィルタ層30との接合体を予め作製し、接合体における接着層20の上にフィルタ層10を重ね合わせた後、一体化することにより濾材100,200を製造してもよい。接着層20とプレフィルタ層30との接合体は、例えば、予め製造されたプレフィルタ層30と、エアレイド法等を用いて単独で製造された接着層20とを重ね合わせた後、一体化することにより製造できる。あるいは、エアレイド法等を用いて単独で製造された接着層20の上に、通常の方法を用いてプレフィルタ層30を形成することにより、接合体を製造してもよい。またあるいは、予め製造されたプレフィルタ層30の上に、エアレイド法等を用いて接着層20を形成することにより、接合体を製造してもよい。この場合、例えば、プレフィルタ層30の上面に繊維群を堆積させると同時に、プレフィルタ層30の下面側から空気の吸引を行う。これにより、プレフィルタ層30の上面から下面へと流れる空気流に乗って繊維群がプレフィルタ層30の内部へ侵入し、プレフィルタ層30の上面の繊維に絡まるため、プレフィルタ層30と接合した接着層20を形成することができる。単独で製造された接着層20に対して、または、プレフィルタ層30上に形成された接着層20に対して、サーマルボンド法を用いて接着層20における繊維群を互いに結着させる工程をさらに加えてもよい。これにより、後の工程における接着層20のハンドリング性を向上させることができる。
【0051】
フィルタ層10と接着層20とプレフィルタ層30との一体化、接着層20とプレフィルタ層30との一体化、接着層20とプレフィルタ層30との接合体とフィルタ層10との一体化等、層同士の一体化には、熱または赤外線が用いられる。具体的には、一体化の方法として、熱によるニップラミネート、赤外線ヒータを用いるラミネート等が挙げられる。中でも、各層の厚みをつぶすことなく強固な接着を実現し、目詰まりの抑制された、寿命の長い濾材100,200を実現し易いという観点から、赤外線ヒータを用いるラミネートが好ましい。なお、通気性繊維層12、接着層20および/またはプレフィルタ層30が芯鞘構造の繊維からなる場合、これらの層の加熱温度は鞘成分の軟化点以上(好ましくは融点以上)で芯成分の融点よりも低く設定することが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0053】
(実施例1)
実施例1では、図1に示す積層構造を有するエアフィルタ濾材を作製した。
【0054】
プレフィルタ層としては、PP製の繊維からなり、平均繊維径3μm、厚み0.26mm、目付量40g/m2である不織布(シンテックス、三井化学社製)を用いた。まず、プレフィルタ層の上に、エアレイド法を用いて接着層を形成することにより、プレフィルタ層と接着層との接合体を作製した。なお、接着層を構成する繊維は、芯鞘構造を有し、芯部分がPET製で鞘部分がPE製である、PET/PE繊維であった。PET/PE繊維の平均繊維径は30μmであった。接着層の厚みは40μm、目付量は5g/m2であった。
【0055】
次に、フィルタ層を作製した。PTFEファインパウダ−(フルオンCD−123、旭・ICIフロロポリマーズ社製)100重量部に対して、液状潤滑剤としての流動パラフィン20重量部を均一に混合した。得られた混合物を圧力20kg/cm2で予備成形した。得られた予備成型物をシート状に押出成形した。得られたシート状物を一対の金属製圧延ロール間に通すことにより、厚さ0.2mmの長尺フィルムとしてのシート状成形体を得た。トリクレンを用いた抽出法によって、シート状成形体に含まれる液状潤滑剤を除去した。このシート状成形体を管状芯体にロール状に巻き取った。ロール延伸法により、巻き取ったシート状成形体を280℃で長手方向へ15倍に一軸延伸した。さらに、これを120℃で幅方向へ30倍に延伸した後、400℃で30秒間熱処理を加えることにより、厚み10μm、平均孔径0.6μmのPTFE多孔質膜を得た。
【0056】
通気性繊維層としては、不織布(エルベスT0303WDO、ユニチカ社製)を用いた。通気性繊維層を構成する繊維は、芯鞘構造を有し、芯部分がPET製で鞘部分がPE製である、PET/PE繊維であった。PET/PE繊維の平均繊維径は20μmであった。通気性繊維層の厚みは150μm、目付量は30g/m2であった。
【0057】
PTFE多孔質膜の両面に通気性繊維層が積層した3層構造となるように、PTFE多孔質膜と通気性繊維層とを赤外線ラミネートによって一体化させることにより、フィルタ層を作製した。なお、通気性繊維層の加熱温度は160℃であった。
【0058】
図1に示した積層構造となるように、プレフィルタ層と接着層との接合体をフィルタ層に重ねることにより積層体を得た。この積層体を赤外線ラミネートによって160℃で一体化させることにより、エアフィルタ濾材を作製した。
【0059】
(実施例2)
実施例2では、図2に示す積層構造を有するエアフィルタ濾材を作製した。
【0060】
プレフィルタ層としては、実施例1と同じものを用いた。フィルタ層としては、実施例1と同じものを作製した。
【0061】
プレフィルタ層の上に、エアレイド法を用いて第二の接着層を形成し、さらに、第二の接着層の上に、エアレイド法を用いて第一の接着層を形成した。これにより、(プレフィルタ層/第二の接着層/第一の接着層)の積層構造を有する、プレフィルタ層と接着層との接合体が得られた。なお、第一の接着層を構成する繊維は、芯鞘構造を有し、芯部分がPET製で鞘部分がPE製である、PET/PE繊維であった。PET/PE繊維の平均繊維径は60μmであった。第一の接着層の厚みは15μm、目付量は5g/m2であった。第二の接着層を構成する繊維は、芯鞘構造を有し、芯部分がPET製で鞘部分がPP製である、PET/PP繊維であった。PET/PP繊維の平均繊維径は60μmであった。第二の接着層の厚みは15μm、目付量は5g/m2であった。したがって、第一の接着層および第二の接着層からなる接着層は、全体として、平均繊維径60μmの繊維からなり、厚みは30μm、目付量は10g/m2であった。
【0062】
図2に示した積層構造となるように、得られたプレフィルタ層と接着層との接合体をフィルタ層に重ねることにより、積層体を得た。この積層体を実施例1と同様の方法で一体化することにより、エアフィルタ濾材を作製した。
【0063】
(実施例3)
実施例1と同様にして、プレフィルタ層と接着層との接合体にフィルタ層が重ねられた積層体を作製した。この積層体を、加熱したカレンダーロールを用いた熱ロールニップによって一体化させることにより、図1に示す積層構造を有するエアフィルタ濾材を作製した。
【0064】
(比較例1)
プレフィルタ層としては、実施例1と同じものを用いた。フィルタ層としては、実施例1と同じものを作製した。プレフィルタ層の上に、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)系ホットメルト接着剤を目付量10g/m2で塗布した。プレフィルタ層において接着剤が塗布された面の上にフィルタ層を重ねることにより、プレフィルタ層とフィルタ層とが接着剤を介して一体化したエアフィルタ濾材を作製した。
【0065】
(比較例2)
プレフィルタ層としては、実施例1と同じものを用いた。フィルタ層としては、実施例1と同じものを作製した。プレフィルタ層の上に、フィルタ層を直接重ねることにより、積層体を得た。この積層体を、加熱したカレンダーロールを用いた熱ロールニップによって一体化させることにより、エアフィルタ濾材を作製した。
【0066】
(比較例3)
接着層を構成する繊維の平均繊維径を10μmとし、通気性繊維層を構成する繊維の平均繊維径を50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、図1と同様の積層構造を有するエアフィルタ濾材を作製した。
【0067】
(比較例4)
接着層の目付量を30g/m2とし、接着層を構成する繊維の平均繊維径を60μmとした以外は実施例1と同様にして、図1と同様の積層構造を有するエアフィルタ濾材を作製した。
【0068】
(比較例5)
通気性繊維層を構成する繊維の平均繊維径を50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、図1と同様の積層構造を有するエアフィルタ濾材を作製した。
【0069】
なお、層を構成する繊維の平均繊維径は、光学顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて求めた。すなわち、層から採取した少量の繊維を光学顕微鏡で観察し、30本の繊維について真円換算繊維径を測定した。測定された繊維の真円換算繊維径の合計を、測定した繊維の本数で除することにより、平均繊維径を求めた。
【0070】
実施例1〜3および比較例1〜5で得られたエアフィルタ濾材の圧力損失および捕集効率を測定した。さらに、実施例1〜3および比較例1〜5で得られたエアフィルタ濾材に対してプリーツ加工を行い、プリーツ加工後のエアフィルタ濾材の捕集効率およびDHC(Dust Holding Capacity)を測定した。これらの測定方法を以下に説明する。なお、プリーツ加工は、プリーツ機(TK−11、東洋工機社製)を用い、プリーツの山高さを20mmとして行った。
【0071】
〈圧力損失〉
エアフィルタ濾材を有効面積100cm2の円形ホルダーにセットした。セットした濾材に気体を透過させ、入り口側と出口側とで圧力差を印加した。濾材を通過する気体の線速度を5.3cm/秒に調整したときの圧力損失を、圧力計(マノメータ)で測定した。
【0072】
〈DHC〉
プリーツ加工後のエアフィルタ濾材を、上記圧力損失の測定と同様の装置にセットした。セットした濾材に、線速度30cm/秒で14日間、空気(大気)を透過させ、14日経過後の圧力損失を圧力計(マノメータ)で測定した。
【0073】
〈捕集効率〉
エアフィルタ濾材(または、プリーツ加工後のエアフィルタ濾材)を、上記圧力損失の測定と同様の装置にセットし、濾材を通過する気体の線速度を5.3cm/秒に調整した。次いで、濾材の上流側から、0.3〜0.5μmのDOP粒子の濃度が約107個/Lとなるように多分散ジオクチルフタレート(DOP)を流した。濾材の下流側における上記DOP粒子の濃度をパーティクルカウンターで測定し、以下の式(1)により捕集効率を求めた。
【0074】
【数1】

【0075】
これらの測定の結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
実施例1〜3で得られたエアフィルタ濾材は、高い捕集効率を示した。実施例1〜3で得られたエアフィルタ濾材は、プリーツ加工後においても、高い捕集効率を示した。実施例1〜3で得られたエアフィルタ濾材の圧力損失およびDHC圧力損失はいずれも小さかった。実施例1〜3で得られたエアフィルタ濾材は、圧力損失とDHC圧力損失との差も小さかった。このように、実施例1〜3では、高い捕集効率を有し、濾材の使用に伴う圧力損失の上昇が抑制された、長寿命なエアフィルタ濾材が得られた。
【0078】
実施例1と実施例3とを比較すると、実施例1で得られたエアフィルタ濾材の方が、圧力損失およびDHC圧力損失が小さかった。圧力損失とDHC圧力損失との差は、実施例1において110Pa、実施例3において180Paであった。このように、実施例3に比べて、実施例1では、濾材の使用に伴う圧力損失の上昇がより効果的に抑制された。実施例3と異なり、実施例1では、接着層を介してプレフィルタ層とフィルタ層とを一体化させる方法として、赤外ラミネート法が採用された。それゆえ、実施例3に比べて、実施例1では、一体化に伴う濾材の目詰まりがより効果的に抑制されたと考えられる。
【0079】
比較例1では、実施例1〜3に比べてDHC圧力損失が大きく、圧力損失とDHC圧力損失との差も大きかった。このように、比較例1では、エアフィルタ濾材の使用に伴う圧力損失の上昇を十分に抑制できなかった。比較例1では、接着層の代わりにホットメルト接着剤を用いてプレフィルタ層とフィルタ層とが一体化されたため、使用に伴って目詰まりの生じ易いエアフィルタ濾材が得られたと考えられる。
【0080】
比較例2では、実施例3に比べて、圧力損失およびDHC圧力損失が大きく、圧力損失とDHC圧力損失との差も大きかった。このように、比較例2で得られた濾材は圧力損失が大きく、濾材の使用に伴う圧力損失の上昇も大きかった。比較例2では、プレフィルタ層とフィルタ層とを直接に重ね合わせた状態で一体化させることにより濾材を作製した。このため、通気性の低い濾材が得られ、濾材の使用に伴いプレフィルタ層とフィルタ層との間で目詰まりが生じたと考えられる。
【0081】
比較例3および5では、実施例1に比べて、プリーツ加工後の捕集効率が低かった。比較例3および5では、通気性繊維層を構成する繊維の平均繊維径が50μmと大きかった。このため、比較例3および5で得られた濾材では、通気性繊維層を構成する繊維によってPTFE多孔質膜が十分に支えられておらず、プリーツ加工や濾材の使用(DHC測定)に伴ってリークが生じたと考えられる。
【0082】
比較例4では、実施例1に比べて、圧力損失およびDHC圧力損失が大きく、圧力損失とDHC圧力損失との差も大きかった。比較例4では、接着層の目付量が30g/m2と大きかった。このため、比較例4では、通気性の低い濾材が得られ、プリーツ加工後の濾材の使用(DHC測定)に伴って目詰まりが生じたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のエアフィルタ濾材は、タービン用吸気フィルタ濾材、クリーンルーム用エアフィルタ濾材、マスク用フィルタ濾材、家電全般に使用されるフィルタ濾材等、様々な用途に用いることができる。本発明のエアフィルタ濾材は、特に、プリーツ加工等の加工が施されるエアフィルタ濾材としての使用に適している。
【符号の説明】
【0084】
10 フィルタ層
11 PTFE多孔質膜
12 通気性繊維層
20 接着層
21 第一の接着層
22 第二の接着層
30 プレフィルタ層
100,200 エアフィルタ濾材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜と通気性繊維層とが積層されたフィルタ層と、
前記フィルタ層の片面に積層されたプレフィルタ層と、
前記フィルタ層と前記プレフィルタ層との間に設けられた接着層と、
の積層体を含み、
前記フィルタ層における両方の最外層が前記通気性繊維層であり、
前記プレフィルタ層を構成する繊維の平均繊維径が0.6〜15μmであり、
前記通気性繊維層を構成する繊維の平均繊維径が10〜30μmであり、
前記通気性繊維層を構成する繊維の平均繊維径は前記プレフィルタ層を構成する繊維の平均繊維径よりも大きく、
前記接着層が目付量5〜10g/m2の繊維層である、
エアフィルタ濾材。
【請求項2】
前記接着層を構成する繊維の平均繊維径が15〜40μmである請求項1に記載のエアフィルタ濾材。
【請求項3】
前記接着層の厚みが30〜70μmである請求項1または2に記載のエアフィルタ濾材。
【請求項4】
前記接着層が、前記フィルタ層の最外層であって前記接着層に接する前記通気性繊維層に含まれる材料と同じ材料を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のエアフィルタ濾材。
【請求項5】
前記接着層が、エアレイド法により形成された繊維層である、請求項1〜4のいずれかに記載のエアフィルタ濾材。
【請求項6】
前記フィルタ層における前記通気性繊維層が、芯鞘構造を有し、芯部分がポリエチレンテレフタラート(PET)製であり鞘部分がポリエチレン(PE)製である、複合繊維で構成される請求項1〜5のいずれかに記載のエアフィルタ濾材。
【請求項7】
前記接着層を構成する繊維が、芯鞘構造を有し、芯部分がPET製であり鞘部分がPE製である、複合繊維で構成される請求項6に記載のエアフィルタ濾材。
【請求項8】
前記プレフィルタ層がポリプロピレン(PP)製の繊維で構成され、
前記接着層が2層からなり、
前記2層のうち、前記フィルタ層に接した第一の接着層は、
芯鞘構造を有し、芯部分がPET製であり鞘部分がPE製である、複合繊維
で構成され、
前記2層のうち、前記プレフィルタ層に接した第二の接着層は、
芯鞘構造を有し、芯部分がPET製であり鞘部分がPP製である、複合繊維
で構成される、請求項6に記載のエアフィルタ濾材。
【請求項9】
前記フィルタ層が、通気性繊維層/PTFE多孔質膜/通気性繊維層の積層構造を有する請求項1〜8のいずれかに記載のエアフィルタ濾材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−94717(P2013−94717A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238592(P2011−238592)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】