説明

エアフィルタ用濾材

【課題】 生分解性の機能を有しながら、嵩高性と圧縮に対する耐性に優れヘタリが生じ難く、厚さの回復性にも優れたエアフィルタ用濾材を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸系複合繊維を少なくとも20質量%含み且つ平均繊度が10〜30デシテックスである構成繊維が結合しているエアフィルタ用濾材であって、前記ポリ乳酸系複合繊維は、高分子量成分であるポリ乳酸樹脂Aと、低分子量成分であるポリ乳酸樹脂Bとがサイドバイサイド型に配された複合繊維であり、前記複合繊維の断面において中空度10〜40%の中空部を有しているエアフィルタ用濾材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理場や台所などで用いる換気扇やレンジフード、或いは空調機の空気取り入れ口などにおいて、油煙や塵埃から機器を守るために使用する濾材として好適なエアフィルタ用濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
調理場や台所などで用いる換気扇やレンジフード、或いは空調機の空気取り入れ口などにおいては、これらの機器を空気中の油煙や塵埃から守るために難燃性を有した濾材が設置されており、このような濾材は使用機器に応じて換気扇フィルタやレンジフードフィルタなどの名称で呼ばれている。このような機器用の濾材は、空気中の油煙や塵埃が機器の中に進入して回転翼や電子部品などに付着してトラブルを起こすことを防止する機能をもつものであるが、繊維間距離の少ない緻密な繊維構造に形成して油煙や塵埃の除去効率を高め過ぎると、濾材前後の圧力損失が大きくなり、機器が必要とする風量が急激に低下してしまうという問題を生じる。そのため、このような機器用の濾材として、繊維組織が比較的粗いものが使用されている。また、メンテナンスの面ではできる限り長時間使用できることが求められており、このため油煙や塵埃をできるだけ多く保持できるように、濾材の厚さを比較的厚くしたものが要求されている。さらに、繊維構造が粗くて厚さが厚いと濾材の圧縮に対する耐性が劣りヘタリが生じる傾向があるため、反発弾性力に優れ厚さの回復性に優れたものが要求されている。
【0003】
このような機器用の濾材としては、例えば特許文献1のレンジフードフィルタが知られている。この公報には、ガラス繊維製フィルタ素材に、リン酸グアニジンを主成分とする難燃剤を付着させたことを特徴とする難燃化されたレンジフードフィルタが開示されており、また使用形態として織布や不織布によって補強されることが開示されている。しかし、フィルター材の繊維がガラス繊維であるので、フィルター材に可撓性がなくガラス繊維が折れてガラス繊維の破片が飛散して、手や体に刺さるなどの問題があり、取り扱いに注意が必要であった。また、最近の社会情勢から、環境に優しい材料が要求されており、ガラス繊維は焼却できず、また廃棄によって分解もされないことからガラス繊維に替わる素材として生分解性の素材が求められていた。
【0004】
このような生分解性の素材を用いた濾材としては、例えば特許文献2の難燃性エアフィルターが知られている。この公報には、ポリ乳酸系重合体からなるスパンボンド不織布により構成され、該スパンボンド不織布の難燃性がJIS K 7201の測定において酸素指数26以上であることを特徴とする換気扇フィルターやレンジフード用フィルターとして使用される難燃性エアフィルターが開示されている。しかし、この難燃性エアフィルターは、ポリ乳酸系重合体からなる繊維から構成されているため、繊維自身の強度に劣り嵩高になり難いという問題があり、その結果濾過寿命が短くなってしまうという問題があった。また、繊維自身の強度に劣るため、圧縮に対する耐性が劣りヘタリが生じ易いという問題があり、その結果皺になったり変形し易くなったり、厚さの回復性にも劣るという問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−168830号公報
【特許文献2】2003−286645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来技術の欠点を解消すべくなされたものであり、生分解性の機能を有しながら、嵩高性と圧縮に対する耐性に優れヘタリが生じ難く、厚さの回復性にも優れたエアフィルタ用濾材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための手段は、請求項1に係る発明では、ポリ乳酸系複合繊維を少なくとも20質量%含み且つ平均繊度が10〜30デシテックスである構成繊維が結合しているエアフィルタ用濾材であって、前記ポリ乳酸系複合繊維は、高分子量成分であるポリ乳酸樹脂Aと、低分子量成分であるポリ乳酸樹脂Bとがサイドバイサイド型に配された複合繊維であり、前記複合繊維の断面において中空度10〜40%の中空部を有していることを特徴とするエアフィルタ用濾材であり、生分解性の機能を有しながら、嵩高性と圧縮耐性や嵩回復性などの反発性(以下、単に反発性と称することがある。)にも優れるという利点を有している。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記ポリ乳酸系複合繊維の繊度が10〜50デシテックスであることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材であり、ポリ乳酸系複合繊維の繊度が比較的高い値を有するので繊維の剛性に優れ、その結果、嵩高性と反発性に特に優れたエアフィルタ用濾材となり得る。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記構成繊維はレーヨン繊維を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のエアフィルタ用濾材であり、レーヨン繊維を含むことにより着火しても濾材に穴が空くことがなく、また燃焼中の燃えカスが落下することを防ぐという利点がある。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記構成繊維の90質量%以上が生分解性繊維からなることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材であり、構成繊維が殆んど生分解性繊維からなるので、特に環境に優しいという利点がある。
【0011】
請求項5に係る発明では、難燃剤を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、難燃性に優れるという利点がある。
【0012】
請求項6に係る発明では、前記難燃剤は非ハロゲン系の難燃剤であることを特徴とする請求項5に記載のエアフィルタ用濾材であり、難燃剤が非ハロゲン系の難燃剤からなるので、特に環境に優しいという利点がある。
【0013】
請求項7に係る発明では、前記構成繊維が難燃剤を含む接着剤で結合していることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、構成繊維を結合した後に難燃剤を塗布する工程を必要としないため、生産効率に優れるという利点がある。
【0014】
請求項8に係る発明では、前記接着剤は天然ゴム系の接着剤であることを特徴とする請求項7に記載のエアフィルタ用濾材であり、特に環境に優しいという利点がある。
【0015】
請求項9に係る発明では、見かけ密度が0.005〜0.04g/cmであることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、特に嵩高であり、また特に高級感があり、濾過寿命に優れるという利点がある。
【0016】
請求項10に係る発明では、面密度が30〜300g/mであり、風速2m/秒の時の圧力損失が30Pa以下であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、特に換気扇やレンジフードに好適に使用されるという利点がある。
【0017】
請求項11に係る発明では、1g/cmの荷重を開放した後の嵩回復率が、元の厚さに対して92%以上であることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、特に嵩回復性に優れるという利点がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、生分解性の機能を有しながら、嵩高性と圧縮に対する耐性に優れヘタリが生じ難く、厚さの回復性にも優れたエアフィルタ用濾材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、ポリ乳酸系複合繊維を少なくとも20質量%含み且つ平均繊度が10〜30デシテックスである構成繊維が結合されているエアフィルタ用濾材である。
【0020】
前記ポリ乳酸系複合繊維は、高分子量成分であるポリ乳酸樹脂Aと、低分子量成分であるポリ乳酸樹脂Bとがサイドバイサイド型に配された複合繊維であり、前記ポリ乳酸系複合繊維の断面において中空度10〜40%の中空部を有している。ここで、ポリ乳酸樹脂とは、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする共重合物である。ポリ乳酸を製造するための乳酸としては、D体のみ、L体のみ、D体とL体の混合物のいずれでもよい。ポリ乳酸を主体とする共重合物としては、乳酸(D体のみ、L体のみ、D体とL体の混合物のいずれでもよい。)と、例えばε−カプロラクトン等の環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から選ばれるモノマーの一種又は二種以上とを共重合したものが挙げられる。共重合の割合としては、乳酸100質量部に対して、共重合させるモノマーは10質量部以下が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0021】
前記ポリ乳酸系複合繊維は、横断面における中空度が10〜40%であることが必要である。ここで、中空度とは、中空複合繊維の中空部を含む全断面積に占める中空部の比率である。中空であることにより、繊維の質量に比較して繊維が太く、繊維の剛性に優れると共に嵩高性に優れたエアフィルタ用濾材となり得る。また、同じ太さの中実の繊維と比較した場合、原料コストが低くなり、また軽いエアフィルタ用濾材とすることができる。また、ポリ乳酸系複合繊維はポリエステル繊維と比較して燃焼熱が少ないため、難燃剤を用いる場合、用いる難燃剤の量をポリエステル繊維の場合よりも少なくすることができるという利点もある。あるいは同じ難燃剤の量であれば、ポリエステル繊維よりも難燃性のグレードを高くすることができるという利点がある。なお、横断面における中空度が10%未満では繊維剛性に劣り、嵩高性に乏しいエアフィルタ用濾材となってしまう。また、中空度が40%を超えると、中空割れを生じたり中空部分が潰れやすくなり、エアフィルタ用濾材のクッション性が低下する傾向を示す。
【0022】
前記ポリ乳酸系複合繊維は、高分子量成分であるポリ乳酸樹脂Aと、低分子量成分であるポリ乳酸樹脂Bとが、サイドバイサイド型に配された繊維であり、両樹脂間の分子量の差により生じる、延伸や熱処理時の収縮率差により、スパイラル状の捲縮が発現する。このスパイラル状の捲縮が発現することにより、嵩高性と圧縮に対する耐性に優れヘタリが生じ難く、厚さの回復性にも優れたエアフィルタ用濾材となり得る。ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bの分子量の差は大きい程、捲縮発現には有利であるが、分子量の差が大きすぎると、紡糸安定性が悪くなる。また分子量の差が小さすぎると、捲縮の発現性が低下する。そのため、ポリ乳酸樹脂Aの数平均分子量とポリ乳酸樹脂Bの数平均分子量の差は10000〜40000、特に15000〜35000であることが好ましい。また、ポリ乳酸樹脂Aの数平均分子量は、60000〜90000であることが好ましい。また、ポリ乳酸樹脂Bの数平均分子量は、50000〜80000であることが好ましい。
【0023】
前記ポリ乳酸系複合繊維におけるポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bの複合比率は、体積比で30:70〜70:30、特に40:60〜60:40であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂Aの複合比率が30体積%より少ないと嵩高性と耐ヘタリ性に優れた中空複合繊維が得られ難くなる場合があり、ポリ乳酸樹脂Aの複合比率が70体積%よりも多い(ポリ乳酸樹脂Bの複合比率が30体積%よりも少ない)と、中空複合繊維に潜在捲縮能が付与され難い場合がある。
【0024】
前記ポリ乳酸系複合繊維の繊度は10〜50デシテックスであることが好ましく、このような比較的高い値の繊度を有することにより、繊維の剛性に優れ、その結果、反発性に特に優れたエアフィルタ用濾材となり得る。また、前記繊度は12〜40デシテックスであることがより好ましく、12〜30デシテックスであることが更に好ましい。10デシテックス未満であると、繊維の剛性に劣り、嵩高性と反発性に優れたエアフィルタ用濾材が得られない場合がある。また、50デシテックスを超えると繊維の紡糸性が劣り、エアフィルタ用濾材を構成することができなくなる場合がある。
【0025】
前記ポリ乳酸系複合繊維は以上のような形態を有しているが、このようなポリ乳酸系複合繊維は、例えばユニチカ株式会社製のテラマックHP8Fを利用することができる。
【0026】
本発明のエアフィルタ用濾材の構成繊維は、前記ポリ乳酸系複合繊維を少なくとも20質量%含むことが必要である。好ましくは、30質量%含むことが好ましく、35質量%含むことがより好ましい。20質量%未満であると、繊維の剛性に劣り、嵩高性と反発性に優れたエアフィルタ用濾材が得られない。
【0027】
前記ポリ乳酸系複合繊維以外の構成繊維としては、廃棄処理の点から有機質繊維であることが好ましく、有機質繊維としては、例えば、レーヨンなどの再生繊維、綿、羊毛などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維などの合成繊維である。これらの中でも構成繊維中にレーヨン繊維を含むことが好ましく、レーヨン繊維は生分解性であるため、環境により配慮できるという利点のほか、レーヨン繊維を含むことにより着火しても濾材に穴が空くことがなく、また燃焼中の燃えカスが落下することを防ぐという利点がある。
【0028】
また、その他の構成繊維として、熱接着性の繊維を含むことも可能である。このような熱接着性の繊維としては、例えば他の繊維よりも融点が低く他の繊維を熱接着することのできる単一樹脂成分からなる繊維や、他の繊維よりも融点が低く他の繊維を熱接着することのできる低融点成分を繊維表面に有する複合繊維がある。このような複合繊維には、その横断面形状が例えば、低融点成分を繊維表面に有する芯鞘型やサイドバイサイド型等の複合繊維があり、またその材質は例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリエステルなどの繊維形成性重合体の組み合わせからなる複合繊維がある。
【0029】
前述のように、構成繊維として前記ポリ乳酸系複合繊維以外の繊維を含むことが可能であるが、前記構成繊維の90質量%以上が生分解性繊維からなることが好ましく、この場合構成繊維が殆んど生分解性繊維からなるので、エアフィルタ用濾材を使用後に廃棄しても大部分の繊維の生分解がすすみ環境に優しいという利点がある。具体的には、例えば構成繊維が前記ポリ乳酸系複合繊維20〜80質量%とレーヨン繊維80〜20質量%からなる態様が好ましく、前記ポリ乳酸系複合繊維30〜70質量%とレーヨン繊維70〜30質量%からなる構成がより好ましい。
【0030】
本発明のエアフィルタ用濾材の構成繊維は、平均繊度が10〜30デシテックスである限り繊維組織の形態は特に限定されず、例えば繊維組織が二層以上の多層構造となっている場合であっても、全体の構成繊維の平均繊度が10〜30デシテックスであれば本発明に含まれる。本発明ではこのような比較的高い値の繊度を有することにより、繊維の剛性に優れ、その結果、嵩高性と反発性に特に優れたエアフィルタ用濾材となり得る。また、前記平均繊度は12〜25デシテックスであることがより好ましく、12〜20デシテックスであることが更に好ましい。10デシテックス未満であると、嵩高性と反発性に優れたエアフィルタ用濾材が得られず、また圧力損失が高くなり過ぎて、レンジフード用などの濾材として不適になるという問題がある。また、30デシテックスを超えると繊維組織が粗くなりすぎて、塵埃捕集が不十分になるという問題がある。
【0031】
なお、構成繊維の平均繊度の計算方法としては、構成繊維に含まれる各繊維の繊度をaデシテックス、bデシテックス、cデシテックス・・・として、各繊維の含有割合をそれぞれa’質量%、b’質量%、c’質量%・・・とすると、(a’/a)+(b’/b)+(c’/c)・・・=(100/x)の関係式が成り立ち、この関係式から平均繊度xを求めることができる。
【0032】
本発明のエアフィルタ用濾材は、前記構成繊維が結合しているが、構成繊維が結合している形態としては、不織布の形態であることが好ましい。このような不織布は、従来エアフィルタ用濾材として使用される不織布であることが可能であり、例えば、乾式法により繊維ウエブを形成した後、熱硬化性の樹脂や熱可塑性樹脂からなるバインダーによって結合することにより形成することが可能である。なお、他の結合方法である繊維の融着性を利用して結合する方法や、水流やニードルによって絡合する方法も可能であり、これらの方法を適宜組み合わせることによって形成することも可能である。これらの中でも、バインダーをスプレーにより塗布して結合する方法であると、嵩高な状態で繊維ウエブを接着できるため、嵩高性に優れたエアフィルタ用濾材を形成でき、好適な製造方法である。また、繊維ウエブを熱硬化性樹脂によって結合することにより、耐久性に優れたエアフィルタ用濾材を形成でき、好適な製造方法である。
【0033】
本発明のエアフィルタ用濾材は、難燃剤を含有していることが好ましく、難燃剤を含有する形態としては、例えば構成繊維が熱接着性の繊維によって結合された後に、難燃剤を含有する難燃剤液を含浸加工、またはスプレー加工によって塗布して得られる形態がある。また、前記構成繊維が難燃剤を含む接着剤で結合して得られる形態が可能であり、本発明では、後者の形態であることが好ましい。後者の形態を得るには、乾式法不織布の製法を用いることが好ましい。乾式法不織布の製法を用いた場合、構成繊維の配合割合を自由に調整することが容易となり、また均一な繊維ウエブを得ることができるという利点がある。具体的には、捲縮加工された繊維をカード機によって繊維フリースに形成し、さらにこの繊維フリースを例えば交差させるようにして複数枚積層して繊維ウエブを形成する。また必要に応じて構成繊維の配合割合が異なる二層以上の繊維フリースを積層して繊維ウエブを形成する。次いで、この繊維ウエブに液状の接着剤をスプレーやプリントなどによる塗布、及び/又は含浸した後、加熱により乾燥と必要に応じて熱硬化させることにより、構成繊維を接着剤で結合してエアフィルタ用濾材を形成することができる。なお、難燃性が不足する場合は、構成繊維を難燃剤を含む接着剤で結合した後に、難燃剤を更にスプレーやプリントなどによって片面又は両面に塗布することも可能である。また、接着剤を塗布、または含浸する前に、繊維ウエブに予めニードルパンチ加工を施すことも可能である。このニードルパンチ加工は厚さが薄くならない程度の軽度のニードルパンチ加工であることが好ましく、接着剤による結合を確実に行なうことができるという利点がある。
【0034】
前記接着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂を適用することができ、例えばポリアクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、尿素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル・エーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、シリコーン系樹脂、などを適用することができる。これらの樹脂の中でも、実質的にハロゲン元素を含まない、アクリル酸エステル系樹脂、尿素系樹脂などが好ましい。また、これらの接着剤に難燃剤を含有させることが可能である。
【0035】
また前記接着剤として、生分解性樹脂である、例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)(例えば、ポリグリコール酸、ポリ−L−乳酸など)、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、β−ヒドロキシ酪酸−βヒドロキシ吉草酸共重合体など)、ポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリ−ε−カプロラクトンなど)、ポリアルキレンジカルボキシレート(例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート共重合体など)を適用することができ、所望によりこれらの材料の少なくとも1種以上用いることも可能である。生分解性樹脂からなる接着剤であることにより、繊維のみならず接着剤についても環境により配慮できる点で、特に環境に優しいという利点がある。
【0036】
また前記接着剤として、天然ゴム系、合成ゴム系などのゴム系の接着剤を用いることも可能である。合成ゴム系としては、例えばSBR系接着剤、NBR系接着剤などを適用することができる。また、天然ゴム系の接着剤を用いることにより、繊維のみならず接着剤についても環境により配慮できる点で、特に環境に優しいという利点がある。また、天然ゴム系の接着剤を用いた場合、ゴム弾性に優れるので、厚さ回復性に優れるという利点や、難燃剤を多量に含んだ接着剤が繊維から脱落する現象を防ぐ効果に優れるという利点がある。このような天然ゴム系の接着剤としては、天然ゴムや天然ゴムにアクリル系樹脂などをグラフト重合したものなどを利用することができる。天然ゴムに他の樹脂を共重合した接着剤であれば前記生分解性樹脂を用いた場合よりも強度などの物性に優れるという利点がある。
【0037】
前記難燃剤としては、特に限定されることなく、無機系の難燃剤及び有機系の難燃剤のいずれも適用可能である。これらの難燃剤の中でも、環境に与える影響から考慮して非ハロゲン系難燃剤が好ましい。
【0038】
無機系の非ハロゲン系難燃剤としては、例えば水和金属化合物、水和シリケート化合物、リン系化合物、窒素系化合物、硼素系化合物、アンチモン系化合物等を適用することができる。水和金属化合物には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等があり、リン系化合物には赤リン、メタリン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、縮合リン酸アミドがあり、窒素系化合物にはリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウムがあり、硼素系化合物にはホウ酸亜鉛があり、アンチモン系化合物には酸化アンチモンがあり、その他各種金属酸化物には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムがあり、その他各種金属硝酸塩、各種金属錯体等を適用することができる。これらのうち特に、難溶性のメタリン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、縮合リン酸アミドなどのリン系難燃剤、あるいは難溶性の水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが好適である。
【0039】
また、有機系の非ハロゲン系難燃剤としては、例えばNメチロールジメチルホスホノプロピオンアミド、ポリリン酸カルバメート、グアニジン誘導体リン酸塩、環状ホスホン酸エステル、リン酸メラミンなどのリン系難燃剤を適用することができる。また、リン系難燃剤以外にも、例えばシアヌル酸メラミンなどの難燃剤を適用することができる。
【0040】
本発明では、前記構成繊維と難燃剤を含む接着剤(以下、難燃剤含有接着剤と称することがある。)との質量比率は、構成繊維25〜75質量%に対して難燃剤含有接着剤75〜25質量%であることが好ましく、構成繊維32〜68質量%に対して難燃剤含有接着剤68〜32質量%であることがより好ましく、構成繊維40〜60質量%に対して難燃剤含有接着剤60〜40質量%であることが更に好ましい。構成繊維が25質量%未満であると濾材としての厚さを十分に得られない場合があり、また接着剤の剥離量が多くなるという問題が生ずる場合がある。また構成繊維が75質量%を超えると濾材としての強度などの物性に劣る場合があり、また含まれる難燃剤の量も少なくなるので、濾材としての難燃性に劣る場合がある。
【0041】
また、接着剤と難燃剤との質量比率は、エアフィルタ用濾材の全体の質量を100%とすると、接着剤10〜65質量%に対して難燃剤65〜10質量%であることが好ましく、接着剤15〜50質量%に対して難燃剤50〜15質量%であることがより好ましく、
接着剤15〜45質量%に対して難燃剤45〜15質量%であることが更に好ましい。接着剤が10質量%未満であると濾材としての強度などの物性に劣る場合があり、接着剤が65質量%を超えると相対的に難燃剤の量が減少して難燃性が低下する場合がある。また難燃剤が10質量%未満であると難燃性が低下する場合がある。
【0042】
前記難燃剤含有接着剤は前記構成繊維に対して厚さ方向に均一に塗布及び/又は含浸されていることが可能であるが、片面において難燃剤の量が多くなるように塗布されることも可能である。片面において難燃剤の量が多くなるように塗布されることにより、難燃剤の量が多く塗布された面を空気流入側に配置することにより難燃性の効果をより高めることが可能である。例えば、空気流出側における難燃剤の質量と空気流入側における難燃剤の質量比率を1:2〜1:10とすることが可能であり、望ましくは1:3〜1:7程度である。
【0043】
前記難燃剤含有接着剤を得るには、具体的には、例えばバインダー樹脂液として、粉末状の非ハロゲン系難燃剤を液体中に懸濁させたスラリーと、実質的にハロゲン元素を含有しない接着剤溶液とを混合したバインダー樹脂液を準備する。スラリーは、一般的に、非ハロゲン系難燃剤20〜80質量%と水80〜20質量%とを混合し、分散安定剤を用いて、非ハロゲン系難燃剤を分散させることによって得ることができる。あるいは、液体状の非ハロゲン系難燃剤を液体中に分散させた難燃剤液と実質的にハロゲン元素を含有しない接着剤溶液とを混合したバインダー樹脂液を準備する。なお、バインダー樹脂液に抗菌剤、抗黴剤または撥水剤などが含まれるようにすることも可能である。
【0044】
本発明のエアフィルタ用濾材は前述のように、繊維断面において中空部を有するサイドバイサイド型のポリ乳酸系複合繊維を少なくとも20質量%含み、且つ平均繊度が10〜30デシテックスである構成繊維を有しているので、嵩高性に優れている。この嵩高性に関しては、見かけ密度が0.005〜0.04g/cmであることが好ましく、0.01〜0.035g/cmであることが好ましく、0.015〜0.03g/cmであることが更に好ましい。ここで、見かけ密度とは単位面積当たりの質量を厚さで除した値で表すものとする。なお、厚さは1cmあたり0.5gの荷重のもとに測定した値とする。
【0045】
本発明のエアフィルタ用濾材の用途としては、換気扇やレンジフードなどに好適であり、このような用途に適合する面密度として、30〜300g/mであることが好ましく、100〜300g/mであることが好ましく、150〜250g/mであることが更に好ましい。また、厚さは5〜25mm程度が好ましく、8〜20mmがより好ましく、10〜20mmが更に好ましい。また風速2m/秒の時の圧力損失が30Pa以下であることが好ましい。
【0046】
また、本発明のエアフィルタ用濾材は、後述の「厚さの耐荷重試験方法」で定義する、厚さ圧縮率(%)の値が、90%以上であることが好ましく、91%以上であることがより好ましく、92%以上であることが更に好ましい。また、1g/cmの荷重を開放した後の嵩回復率(%)、すなわち後述の「厚さの耐荷重試験方法」で定義する嵩回復率(%)の値が、92%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましく、94%以上であることが更に好ましい。
【0047】
また、本発明のエアフィルタ用濾材の難燃性は、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により評価すると、難燃性の評価値が区分3であることが好ましい。なお、難燃剤が他の面よりも多く塗布された面を有する場合は、この多く塗布された面に炎を当てて試験するものとする。
【0048】
以上説明したように、本発明によって、生分解性の機能を有しながら、嵩高性と圧縮に対する耐性に優れヘタリが生じ難く、厚さの回復性にも優れたエアフィルタ用濾材を提供することが可能となった。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本願発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【0050】
(厚さの耐荷重試験方法)
評価用サンプルに対して、任意箇所から、25cm角の正方形の試験片を4枚採取する。次に、これらの試験片を重ね合わせて上面が平滑な測定台に載置して、この4枚の試験片の上に、25cm角の正方形で、質量が312.5gの加圧板を、この試験片と重ね合わせるようにして載置して、荷重が0.5g/cmとなるように押圧する。次に、この状態の試験片の各辺の中央部において、各辺につき1ヶ所ずつ、合計4ヶ所の試験片の厚さを測定し、試験片1枚あたりの平均値に換算して初期厚さとして記録する。
次いで、上記加圧板の上に、さらに25cm角の正方形で、質量が312.5gの加圧板を重ね合わせるようにして載置して、荷重が1g/cmとなるように押圧する。そして、この状態のまま、この試験片を24時間放置する。その後、荷重が1g/cmの状態の試験片の各辺の中央部において、各辺につき1ヶ所ずつ、合計4ヶ所の試験片の厚さを測定し、試験片1枚あたりの平均値に換算して「荷重後厚さ」とする。
次いで、試験片の上に載置した加圧板を除去して、加圧のない状態で80時間放置した後に、初期厚さの測定と同様にして荷重が0.5g/cmにおける厚さを測定して、「回復厚さ」とする。
次いで、厚さ圧縮率(%)及び嵩回復率(%)を次の式1及び2から求める。
厚さ圧縮率(%)=荷重後厚さ(mm)×100/初期厚さ(mm)・・・(式1)
嵩回復率(%)=回復厚さ(mm)×100/初期厚さ(mm)・・・(式2)
【0051】
(接着剤の準備1)
アクリル系樹脂からなるエマルジョンに、グアニジン誘導体リン酸塩からなる難燃剤を混合して、固形分の質量比が接着剤70%と難燃剤30%になるように調整した接着剤液(液濃度:約30%)A1及び固形分の質量比が接着剤30%と難燃剤70%になるように調整した接着剤液A2(液濃度:約40%)を得た。
(接着剤の準備2)
天然ゴムラテックスにメチルメタアクリレートをグラフト共重合した樹脂からなるエマルジョンに、グアニジン誘導体リン酸塩からなる難燃剤を混合して、固形分の質量比が接着剤70%と難燃剤30%になるように調整した接着剤液B1(液濃度:約30%)及び固形分の質量比が接着剤30%と難燃剤70%になるように調整した接着剤液B2(液濃度:約40%)を得た。
【0052】
(実施例1)
ユニチカ株式会社製のポリ乳酸系複合繊維(品名:テラマックHP8F、繊度:17デシテックス、繊維長:64mm)を準備した。このポリ乳酸系複合繊維は高分子量成分であるポリ乳酸樹脂と、低分子量成分であるポリ乳酸樹脂とがサイドバイサイド型に配された複合繊維であり、前記複合繊維の断面において中空度22%の中空部を有していた。次いで、このポリ乳酸系複合繊維45質量%と、レーヨン繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:76mm)55質量%とを混合して、さらにカード機により繊維フリースに形成し、この繊維フリースを交差させるようにして複数枚積層して面密度100g/mの繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブの片面に、接着剤の準備1で得た接着剤液A1(液濃度:約30%)を固形分付着が面密度30g/mになるようにスプレー塗布して、ドライヤーにより乾燥した。次いで、繊維ウエブの反対面に、接着剤の準備1で得た接着剤液A2(液濃度:約40%)を固形分付着が面密度60g/mになるようにスプレー塗布して、ドライヤーにより乾燥し、引き続き加熱によりキュアリング加工を行い面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、接着剤39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有接着剤が付着しており、この難燃剤含有接着剤によって、平均繊度17デシテックスの構成繊維が結合していた。このエアフィルタ用濾材の厚さは10.6mmであり、荷重後厚さは9.9mm(厚さ圧縮率は93%)であり、回復厚さは10.1mm(嵩回復率は95%)であり、見かけ密度は0.018g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は17Mpaであった。また、接着剤液A2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性と生分解性の機能を有しながら、嵩高性と反発性に優れレンジフード用濾材として好適であった。
【0053】
(実施例2)
実施例1の繊維ウエブ形成において、ポリ乳酸系複合繊維25質量%と、レーヨン繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:76mm)75質量%とを混合して、さらにカード機により繊維フリースに形成し、この繊維フリースを交差させるようにして複数枚積層して面密度100g/mの繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、接着剤39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有接着剤が付着しており、この難燃剤含有接着剤によって、平均繊度17デシテックスの構成繊維が結合していた。このエアフィルタ用濾材の厚さは9.5mmであり、荷重後厚さは8.7mm(厚さ圧縮率は92%)であり、回復厚さは9.0mm(嵩回復率は95%)であり、見かけ密度は0.020g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は20Mpaであった。また、接着剤液A2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性と生分解性の機能を有しながら、嵩高性と反発性に優れレンジフード用濾材として好適であった。
【0054】
(実施例3)
実施例1において、繊維ウエブの片面に、接着剤の準備2で得た接着剤液B1(液濃度:約30%)を固形分付着が面密度30g/mになるようにスプレー塗布したこと、及び繊維ウエブの反対面に、接着剤の準備2で得た接着剤液B2(液濃度:約40%)を固形分付着が面密度60g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は実施例1と同様にして、面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、接着剤39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有接着剤が付着しており、この難燃剤含有接着剤によって、平均繊度17デシテックスの構成繊維が結合していた。このエアフィルタ用濾材の厚さは11.9mmであり、荷重後厚さは11.1mm(厚さ圧縮率は93%)であり、回復厚さは11.6mm(嵩回復率は97%)であり、見かけ密度は0.016g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は20Mpaであった。また、接着剤液B2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性と生分解性の機能を有しながら、嵩高性と反発性に優れレンジフード用濾材として好適であった。
【0055】
(比較例1)
実施例1の繊維ウエブ形成において、ユニチカ株式会社製の中実タイプのポリ乳酸繊維(品名:テラマックPL01、繊度:11デシテックス、繊維長:51mm)を準備したこと、次いで、このポリ乳酸繊維15質量%と、ポリエステル繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:51mm)85質量%とを混合して、さらにカード機により繊維フリースに形成し、この繊維フリースを交差させるようにして複数枚積層して面密度100g/mの繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、接着剤39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有接着剤が付着しており、この難燃剤含有接着剤によって、平均繊度16デシテックスの構成繊維が結合していた。このエアフィルタ用濾材の厚さは8.7mmであり荷重後厚さは8.0mm(厚さ圧縮率は92%)であり、回復厚さは8.3mm(嵩回復率は95%)であり、見かけ密度は0.022g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は28Mpaであった。また、接着剤液A2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は嵩高性と反発性に優れていたが、生分解性の機能が不十分であり、レンジフード用濾材として不適であった。
【0056】
(比較例2)
実施例1の繊維ウエブ形成において、ポリ乳酸系複合繊維の代わりにユニチカ株式会社製の中実タイプのポリ乳酸繊維(品名:テラマックPL01、繊度:11デシテックス、繊維長:51mm)を用いて、面密度100g/mの繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、接着剤39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有接着剤が付着しており、この難燃剤含有接着剤によって、平均繊度14デシテックスの構成繊維が結合していた。このエアフィルタ用濾材の厚さは8.1mmであり、荷重後厚さは7.0mm(厚さ圧縮率は86%)であり、回復厚さは7.3mm(嵩回復率は90%)であり、見かけ密度は0.023g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は23Mpaであった。また、接着剤液A2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性と生分解性の機能を有していたが、嵩高性と反発性に劣りレンジフード用濾材として不適であった。
【0057】
(比較例3)
実施例1の繊維ウエブ形成において、ポリ乳酸系複合繊維15質量%と、レーヨン繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:76mm)85質量%とを混合して、さらにカード機により繊維フリースに形成し、この繊維フリースを交差させるようにして複数枚積層して面密度100g/mの繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、面密度190g/mのエアフィルタ用濾材を得た。
このエアフィルタ用濾材には、接着剤39g/mと難燃剤51g/mとからなる難燃剤含有接着剤が付着しており、この難燃剤含有接着剤によって、平均繊度17デシテックスの構成繊維が結合していた。このエアフィルタ用濾材の厚さは8.2mmであり、荷重後厚さは7.2mm(厚さ圧縮率は88%)であり、回復厚さは7.4mm(嵩回復率は90%)であり、見かけ密度は0.023g/cmであり、風速2m/秒の時の圧力損失は23Mpaであった。また、接着剤液A2の塗布により難燃剤が多く塗布された面から炎を当てて、JIS L1091「繊維製品の燃焼性試験方法」のA−1法により、難燃性を評価すると、難燃性の評価値が区分3であり、このエアフィルタ用濾材は難燃性と生分解性の機能を有していたが、嵩高性と反発性に劣りレンジフード用濾材として不適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系複合繊維を少なくとも20質量%含み且つ平均繊度が10〜30デシテックスである構成繊維が結合しているエアフィルタ用濾材であって、前記ポリ乳酸系複合繊維は、高分子量成分であるポリ乳酸樹脂Aと、低分子量成分であるポリ乳酸樹脂Bとがサイドバイサイド型に配された複合繊維であり、前記複合繊維の断面において中空度10〜40%の中空部を有していることを特徴とするエアフィルタ用濾材。
【請求項2】
前記ポリ乳酸系複合繊維の繊度が10〜50デシテックスであることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項3】
前記構成繊維はレーヨン繊維を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項4】
前記構成繊維の90質量%以上が生分解性繊維からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項5】
難燃剤を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項6】
前記難燃剤は非ハロゲン系の難燃剤であることを特徴とする請求項5に記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項7】
前記構成繊維が難燃剤を含む接着剤で結合していることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項8】
前記接着剤は天然ゴム系の接着剤であることを特徴とする請求項7に記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項9】
見かけ密度が0.005〜0.04g/cmであることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項10】
面密度が30〜300g/mであり、風速2m/秒の時の圧力損失が30Pa以下であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項11】
1g/cmの荷重を開放した後の嵩回復率が、元の厚さに対して92%以上であることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載のエアフィルタ用濾材。

【公開番号】特開2009−189994(P2009−189994A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35569(P2008−35569)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】