説明

エアレイド不織布用繊維の製造方法

【課題】ガラス転移温度が比較的低いポリエステル系樹脂を表面に有するポリエステル系エアレイド不織布用繊維において、溶融紡糸段階での繊維膠着を抑制することによって、未開繊束や毛玉状欠点の極めて少ないエアレイド不織布用繊維を提供すること。
【解決手段】ガラス転移温度(Tg)が5〜50℃のポリエステル系樹脂により繊維表面の少なくとも30%が被覆されているエアレイド不織布用繊維の製造方法であって、溶融ポリマーを100〜1,500m/minの紡糸速度で引き取る途中で、紡出糸条を10〜40℃の空気で冷却した後、1〜Tg−3℃の紡糸油剤を付与して、糸温度を該Tg以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアレイド不織布用繊維の製造方法に関し、さらに詳しくは、溶融紡糸により得られる未延伸糸において、冷却不足のため融着を起こしやすいために開繊性の悪いエアレイド不織布用繊維の開繊性向上の技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
エアレイド法は、乾式不織布の製造方法の一つであり、高速生産性や、嵩高性で繊維配向が均一な不織布が得られるなどの特徴がある。(一例は特許文献1を参照)。元来は、ドライパルプを叩解し、空気開繊してウェブを成型し、接着剤で固定したパルプ不織布が主流であったが、高強度、高通気性、耐水性などを狙い、全て合成繊維からなるエアレイド不織布も検討されている。(特許文献2など)。
かかるエアレイド不織布用繊維においては、空気開繊性が重要であり、得られるエアレイド不織布の品位を左右する。例えば、本発明者の検討によれば、特許文献3に記載されているポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレン芯鞘型複合繊維やポリプロピレン/高密度ポリエチレン芯鞘型複合繊維のような繊維表面に高密度ポリエチレンが露出しているエアレイド不織布用短繊維は、空気開繊性が向上しており、形成されたエアレイドウェブ中に、数十本の繊維が平行に揃って束となった未開繊束や、繊維が絡合してできる毛玉状欠点が生成され難く、従来よりもウェブ品位が改善された不織布が得ることができる。
【0003】
しかしながら、ガラス転移温度(以下「Tg」と略す)が室温近傍と低いポリエステル系樹脂(例えば、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレートなど)が繊維表面に露出しているエアレイド不織布用短繊維は、形成されたエアレイドウェブ中に、未開繊束や毛玉状欠点が比較的多く発生する。この原因を鋭意検討した結果、ポリエステル系樹脂は、特許文献3のようなポリオレフィンに比べ、固化(結晶化)のスピードが遅いため、Tgが室温近傍より低いポリエステル系樹脂を溶融紡糸する際、単なる送風による空冷の方法では、未延伸糸引き取り後もTg以下に冷却されずに、単糸間の膠着を部分的に起こしていることが未開繊束に繋がっていることが判明した。特許文献4に記載されている、ポリエステル系樹脂にタルク粉を混合する方法においても、樹脂によっては膠着が十分防止できなかった。また、紡糸速度が2,000m/min以上の高速とすれば、ポリエステルの配向結晶化が促進され、より膠着し難くなるが、短繊維の主たる製造方法である、未延伸糸を缶またはケンスに収納した後に延伸する方法において、未延伸糸の落下運動量が大きく、缶またはケンス内で未延伸糸が絡まりやすく、運転上著しく障害となる欠点があった。
【特許文献1】米国特許第4,640,810号明細書
【特許文献2】国際公開第97/48846号パンフレット
【特許文献3】特開平11−81116号公報
【特許文献4】特開2003−89958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、ガラス転移温度が比較的低いポリエステル系樹脂を表面に有するポリエステル系エアレイド不織布用繊維において、溶融紡糸段階での繊維膠着を抑制することによって、未開繊束や毛玉状欠点の極めて少ないエアレイド不織布用繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ガラス転移温度(Tg)が5〜50℃のポリエステル系樹脂により繊維表面の少なくとも30%が被覆されているエアレイド不織布用繊維の製造方法において、溶融ポリマーを100〜1,500m/minの紡糸速度で引き取る途中で、紡出糸条を10〜40℃の空気で冷却した後、1〜Tg−3℃の紡糸油剤を付与して、糸温度をTg以下とすれば、従来にないレベルに著しくエアレイド不織布の欠点が少ないエアレイド不織布用繊維を得られることを発見し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ガラス転移温度が室温近傍に低く、結晶固化が遅いために未延伸糸間で微小な膠着を生じる傾向にあるポリエステル系短繊維を通常の2ステップの製綿工程で製造するに当たって、未延伸糸収缶に問題の無い程度の低紡糸速度であっても膠着を抑制でき、結果として、従来になかったレベルまで不織布欠点が少なく、地合いの良好なエアレイド不織布用繊維を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明で対象とするエアレイド不織布用繊維に用いられるポリエステル系樹脂としては、酸成分の少なくとも一成分はテレフタル酸成分および/またはイソフタル酸成分からなり、グリコール成分の少なくとも一成分がエチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分および/またはヘキサメチレングリコール成分からなる芳香族ポリエステル系樹脂で、Tgが5〜50℃の範囲にあるものである。脂肪族ポリエステルでは、Tgが0℃以下にあるものが多く、好ましくない。
【0008】
上記芳香族ポリエステル系樹脂の具体的な実施態様は、酸成分の40〜100モル%がテレフタル酸成分、60〜0モル%がイソフタル酸成分であり、グリコール成分の30〜100モル%がテトラメチレングリコール成分またはヘキサメチレングリコール成分である芳香族ポリエステルが挙げられる。
ここで、テレフタル酸成分およびイソフタル酸成分の標記は、該ポリエステルが、テレフタル酸および/またはテレフタル酸ジメチルとイソフタル酸および/またはイソフタル酸ジメチルとグリコール成分とを重縮合触媒存在下で、エステル化反応またはエステル交換反応させて得られることを示唆しており、重縮合触媒としては、チタン化合物が好ましく、特にチタニウムテトラブトキサイドが好ましい。このチタン化合物はエステル交換反応触媒能も有しているため、エステル交換触媒として用いてもよい。
【0009】
上記芳香族ポリエステル系樹脂のその他の酸成分として、アルカリ金属塩スルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、その他の共重合ジオール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコールなどのアルキレングリコールやジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオールなどを、Tgが5〜50℃となり得る範囲で含み得るものである。
【0010】
本発明に用いられるポリエステル系樹脂のTgが5℃より小さい場合は、紡糸油剤冷却によっても膠着が抑制できない。一方、Tgが50℃より大きい場合は、紡糸油剤冷却によらなくても、膠着しないことが多いので、対象外とする。上記Tgは、好ましくは10〜45℃である。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂のTgを5〜50℃に調整するには、酸成分の40〜100モル%がテレフタル酸成分、60〜0モル%がイソフタル酸成分であり、グリコール成分の30〜100モル%がテトラメチレングリコール成分またはヘキサメチレングリコール成分である芳香族ポリエステルとすればよい。
【0011】
なお、ポリエステル系樹脂は、110℃以上の融点をもつ結晶性ポリエステルであることが好ましい。このような結晶性ポリエステルは、上記された芳香族ポリエステル系樹脂が挙げられる。
ポリエステル系樹脂のより好ましい融点は、130℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは160〜200℃である。
【0012】
また、本発明に用いられるポリエステル系樹脂中には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤などの添加剤を適宜必要に応じて添加してもよい。
【0013】
本発明が対象とする繊維は、前述のポリエステル系樹脂により繊維表面の30%以上が被覆されているものであり、該ポリエステル系樹脂のみからなるホモ繊維や、該ポリエステル系樹脂を表面に配し、他方を結晶性の高いポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、融点が200℃以上に高いポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートやナイロンなどと組み合わせた芯鞘型や偏芯芯鞘型、サイドバイサイド型、分割型、海島型などの複合繊維が例示される。これらの溶融〜口金からの吐出にあたっては、通常のポリエステル系繊維に用いられる公知の製造方法を適用できる。
【0014】
本発明では、口金からポリマー吐出して、紡糸速度100〜1,500m/minで引き取って未延伸糸を得るが、その間、口金下20〜100mmの位置で、紡出糸条に10〜40℃の空気を送風して冷却固化し、さらに、1〜Tg−3℃の紡糸油剤で冷却して、未延伸糸の温度をTg以下とする。
【0015】
紡糸速度は、1,500m/min以下にすることが、通常の短繊維用の繊維の製造方法である、紡糸−延伸の2ステップ法においては必要である。紡糸速度が1,500m/minを超えると、2ステップ法で未延伸糸の収納するための原トウ缶またはケンスへの収納が困難になる。詳しくは、収納時の未延伸糸の落下運動量が大きく、既に収納済みの未延伸糸に突き刺さって絡まり、延伸の連続運転に障害となる。一方、紡糸速度100m/min未満では、紡糸ドラフトや紡糸張力が不十分で膠着防止の効果が不十分となる。好ましい紡糸速度の範囲は、300〜1,300m/minである。
【0016】
また、口金下の空冷においては、10〜40℃の温度が適正であり、40℃より高い温度では冷却が不十分となり、一方10℃を下回ると口金面が冷却されやすく、吐出不良となる恐れがある。
なお、口金下冷却の開始位置は20〜100mmが適切であり、20mm未満であると口金面が冷却されやすく、吐出不良となる恐れがあり、一方100mmを超えると冷却が不十分で膠着する。好ましくは、口金下30〜70mmの位置で、15〜30℃の冷却風を付与することが望ましい。
【0017】
これだけでは、未延伸糸温度をTg以下に下げることが困難であるため、1〜Tg−3℃の温度に冷却した紡糸油剤を未延伸糸に付与する。紡糸油剤温度がTg−3℃を超えると、未延伸糸温度をTg以下に下げる効率が小さく、一方1℃を下回ると、冷却効率は良くなるものの、紡糸油剤が固化したり、高粘度となり、糸条への付着やオイリング装置への送液が困難となる。紡糸油剤は、冷却水による熱交換やクーラーなどを用いて、冷却すればよい。
【0018】
本発明において、紡出糸条を冷却するのに、水でなく、紡糸油剤が好ましい理由は、水ではガラス転移点を下げたりる、鞘ポリマーの界面が相溶するといった課題が生じるためであり、界面活性剤のエマルジョンや鉱物油の非水溶系油剤とすることで、融着を防止することができる。本発明の場合は、未延伸糸の集束を生じにくい界面活性剤エマルジョンがより好ましく、特に油膜強度の高いアルキル燐酸アルカリ金属塩の0.1〜1重量%水溶液が好ましく用いられる。
【0019】
紡糸油剤の付与方法としては、通常、溶融紡糸において用いられるオイリングローラー方式で付与するのが適切である。スリット給油方式で付与すると、十分熱をもった可能性のある未延伸糸を集束することとなるため、オイルが冷却されていてもスリット上で未延伸糸が融着することがある。
【0020】
得られた未延伸糸は、紡糸装置に直結していない延伸機を用いて、公知の短繊維の製造方法により、所定のエアレイド不織布用短繊維を得る。具体的には、収缶した未延伸糸を束ねてトウとし、60〜90℃の温水中で1〜2ステップに分けて延伸する。その後、エアレイド工程通過性や親水性などの機能性を付与する仕上油剤を付着させ、押込クリンパーにより捲縮を付与し、熱風オーブンによってトウの乾燥と熱セットを行った後、ロータリーカッターなどで3〜25mm程度の繊維長にカットし、目的の短繊維を得る。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
【0022】
(1)ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い,昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。
(2)捲縮数
JIS−L−1015に準じて測定した。
(3)単糸繊度
JIS−L−1015に準じて測定した。
(4)繊維長
JIS−L−1015に準じて測定した。
【0023】
(5)エアレイドウェブ欠点数(エアレイド性)
Dan−Webforming社のフォーミングドラムユニット(600mm幅、フォーミングドラムの孔形状2.1mm×24.5mmの長方形、開孔率38%)を用いてドラム周速度200m/min、ニードルロール回転数900rpm、ウェブ搬送速度20m/分の条件で、短繊維100%からなる目付17g/mのエアレイドウェブを採取した。ウェブから1g分を10箇所ランダムに採取し、これに含まれる、繊維が平行に凝集した未開繊束で長径が1mm以上であるものと直径5mm以上の毛玉状欠点を数えて、1g当りの平均個数を算出し、欠点数が10個以下を合格とした。
【0024】
実施例1
8時間減圧乾燥した表1の樹脂略号CPET−1で示すポリエステルと、120℃で16時間真空乾燥した表1の樹脂略号PETで示すポリエチレンテレフタレートを各々別のエクストルーダーで溶融し、各々240℃と280℃の溶融ポリマーとして、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、複合比率A:B=50:50(重量比)として、孔径0.3mmの紡糸孔を1,032孔有する芯鞘型複合紡糸口金を用いて、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は280℃、吐出量は550g/分であった。これを口金下40mmで紡出糸条を25℃の冷風で冷却した後、紡糸油剤として18℃に冷却したラウリルホスフェートカリウム塩0.3重量%水溶液をオイリングローラーで未延伸糸に付与し、紡糸速度1,250m/分でケンスに収缶して未延伸糸条を得た。
次いで、70℃温水中で2.45倍、90℃温水中で1.15倍に2段延伸し、ステアリルホスフェートカリウム塩/ジメチルシリコーン=65/35からなる油剤の水溶液に延伸糸条を浸漬した後、スタッフイングボツクスを用いて11個/25mmの機械捲縮を付与し、90℃で60分乾燥した後、繊維長5.0mmに切断して、単糸繊度1.7デシテックスのポリエステル系短繊維を得た。
得られた短繊維のエアレイドウェブ欠点数は、未開繊束2個/g、毛玉0個と良好であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表2に示す。
【0025】
比較例1
紡糸油剤の温度を35℃とした他は、実施例1と同様にした。得られた短繊維のエアレイドウェブ欠点数は、未開繊束が50個/gを超え、不良であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表2に示す。
【0026】
比較例2
紡糸油剤をオイリングローラーからスリット給油とした他は、実施例1と同様にした。得られた短繊維のエアレイドウェブ欠点数は、未開繊束が50個/gを超え、不良であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表2に示す。
【0027】
実施例2
8時間減圧乾燥した表1の樹脂略号CPET−2で示すポリエステルと、120℃で16時間真空乾燥した表1の樹脂略号PETで示すポリエチレンテレフタレートを各々別のエクストルーダーで溶融し、各々250℃と285℃の溶融ポリマーとして、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、複合比率A:B=50:50(重量比)として、孔径0.3mmの紡糸孔を1,032孔有する芯鞘型複合紡糸口金を用いて、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は285℃、吐出量は550g/分であった。これを口金下40mmで紡出糸条を25℃の冷風で冷却した後、紡糸油剤として18℃に冷却したラウリルホスフェートカリウム塩0.3重量%水溶液をオイリングローラーで未延伸糸に付与し、紡糸速度1,250m/分でケンスに収缶して未延伸糸条を得た。
次いで、70℃温水中で2.45倍、90℃温水中で1.15倍に2段延伸し、ステアリルホスフェートカリウム塩/ジメチルシリコーン=65/35からなる油剤の水溶液に延伸糸条を浸漬した後、スタッフイングボツクスを用いて11個/25mmの機械捲縮を付与し、65℃で60分乾燥した後、繊維長5.0mmに切断して、単糸繊度1.7デシテックスのポリエステル系短繊維を得た。
得られた短繊維のエアレイドウェブ欠点数は、未開繊束1個/g、毛玉0個と良好であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表2に示す。
【0028】
実施例3
8時間減圧乾燥した表1の樹脂略号CPET−3で示すポリエステルと、120℃で16時間真空乾燥した表1の樹脂略号PETで示すポリエチレンテレフタレートを各々別のエクストルーダーで溶融し、各々230℃と280℃の溶融ポリマーとして、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、複合比率A:B=50:50(重量比)として、孔径0.3mmの紡糸孔を1,032孔有する芯鞘型複合紡糸口金を用いて、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は280℃、吐出量は550g/分であった。これを口金下40mmで紡出糸条を25℃の冷風で冷却した後、紡糸油剤として18℃に冷却したラウリルホスフェートカリウム塩0.3重量%水溶液をオイリングローラーで未延伸糸に付与し、紡糸速度1250m/分でケンスに収缶して未延伸糸条を得た。
次いで、70℃温水中で2.45倍、90℃温水中で1.15倍に2段延伸し、ステアリルホスフェートカリウム塩/ジメチルシリコーン=65/35からなる油剤の水溶液に延伸糸条を浸漬した後、スタッフイングボツクスを用いて11個/25mmの機械捲縮を付与し、95℃で60分乾燥した後、繊維長5.0mmに切断して、単糸繊度1.7デシテックスのポリエステル系短繊維を得た。
得られた短繊維のエアレイドウェブ欠点数は、未開繊束3個/g、毛玉0個と良好であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表2に示す。
【0029】
実施例4
表1の樹脂略号CPET−4で示すポリエステルを8時間減圧乾燥した後、紡出温度270℃で孔径0.35mmの紡糸孔を450孔有する紡糸口金を通して吐出量300g/minで溶融紡出し、口金下63mmで紡出糸条を25℃の冷風で冷却した後、紡糸油剤として22℃に冷却したラウリルホスフェートカリウム塩0.3重量%水溶液をオイリングローラーで未延伸糸に付与し、紡糸速度1,000m/分でケンスに収缶して未延伸糸条を得た。
次いで、4倍に冷延伸した後85℃温水中で1.0倍で緊張熱処理し、ステアリルホスフェートカリウム塩/ジメチルシリコーン=65/35からなる油剤の水溶液に延伸糸条を浸漬した後、スタッフイングボツクスを用いて11個/25mmの機械捲縮を付与し、135℃で60分乾燥した後、繊維長5.0mmに切断して、単糸繊度2.8デシテックスのポリエステル系短繊維を得た。
得られた短繊維のエアレイドウェブ欠点数は、未開繊束4個/g、毛玉0個と良好であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表2に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度(Tg)が5〜50℃のポリエステル系樹脂により繊維表面の少なくとも30%が被覆されているエアレイド不織布用繊維の製造方法であって、溶融ポリマーを100〜1,500m/minの紡糸速度で引き取る途中で、紡出糸条を10〜40℃の空気で冷却した後、1〜Tg−3℃の紡糸油剤を付与して、糸温度を該Tg以下とすることを特徴とするエアレイド不織布用繊維の製造方法。
【請求項2】
冷却した紡糸油剤をオイリングローラーで付与する請求項1記載のエアレイド不織布用繊維の製造方法。
【請求項3】
ガラス転移温度(Tg)が5〜50℃のポリエステル系樹脂が、酸成分の少なくとも一成分はテレフタル酸成分および/またはイソフタル酸成分からなり、グリコール成分の少なくとも一成分がエチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分および/またはヘキサメチレングリコール成分からなる芳香族ポリエステル系樹脂である請求項1〜2いずれかに記載のエアレイド不織布用繊維の製造方法。
【請求項4】
エアレイド不織布用繊維が、ガラス転移温度(Tg)が5〜50℃のポリエステル系樹脂を鞘成分とする芯鞘型複合繊維である請求項1〜3いずれかに記載のエアレイド不織布用繊維の製造方法。
【請求項5】
エアレイド不織布用繊維が、ガラス転移温度(Tg)が5〜50℃のポリエステル系樹脂のみからなる繊維である請求項1〜3いずれかに記載のエアレイド不織布用繊維の製造方法。

【公開番号】特開2007−297727(P2007−297727A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124560(P2006−124560)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】