説明

エアレス塗装性評価装置及び該装置を用いたエアレス塗装性評価方法

【課題】エアレス塗装に用いる塗料のスプレーパターン、塗料の圧力等のエアレス塗装性を定量的に測定することができるエアレス塗装性評価装置、及び定量的かつ連続的な測定結果に基づいて塗料のエアレス塗装性を評価するエアレス塗装性評価方法を提供する。
【解決手段】塗料のスプレーパターンの測定と、塗料の圧力の測定を行うエアレス塗装性評価装置であって、塗料を噴出するノズルと、塗料を収納するシリンダーと、前記シリンダー内を摺動可能なピストンと、前記ノズルと前記シリンダーとの間に配置されたマニホールドと、前記ピストンを前記シリンダー内に摺動するためのアクチュエーターと、を備える塗装手段と、前記塗装手段により噴出する塗料のスプレーパターンを測定する手段と、前記マニホールド内の塗料の圧力を測定する手段とを備えることを特徴とするエアレス塗装性評価装置及び該装置を用いたエアレス塗装性評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料のエアレス塗装適性を評価する装置、及び該装置を用いたエアレス塗装性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料のスプレー塗装を行うに際し、その塗装性を評価することは、塗装により得られる塗膜の膜厚、平滑性、外観等を管理、制御する上で非常に重要である。従来、塗料のスプレー塗装性の評価は、実際に使用する塗装機を用い、実際にスプレー塗装を実施することにより行われていた。また、その評価は専ら目視により行われていたので、評価結果は定性的なものであった。また、スプレー塗装の中でもエアレス塗装機を用いたエアレス塗装性評価においては、配管やエアレスポンプの容量の関係から1回の塗装で数kgの塗料を必要とする場合があった。
【0003】
近年、塗料のスプレー塗装性を評価する方法として、光電センサを用いてスプレーパターンを測定する方法が利用されている。例えば特許文献1には、x方向及びy方向にそれぞれ走査する光電センサを用いスプレーパターンの状態を測定して、それをコンピュータにより解析しスプレーパターンの良否を判定する装置に関する発明が開示されている。この発明は、光電センサを複数用い二次元のスプレーパターンを解析できる点で優れているが、塗装機は実際に使用する塗装機を用いるため、エアレス塗装機等を用いた塗装性評価においては、使用する塗料の量が多くなるといった課題がある。また、得られる情報は、スプレーパターンの状態のみであり、それ以外の情報は得られなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−323271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エアレス塗装に用いる塗料のスプレーパターン、塗料の圧力等のエアレス塗装性を定量的に測定することができ、かつ少量の塗料で測定が可能なエアレス塗装性評価装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、塗装開始から塗装終了までの定量的かつ連続的な測定結果に基づいて塗料のエアレス塗装性を評価するエアレス塗装性評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、塗料のスプレーパターンの測定と、塗料の圧力の測定を行うエアレス塗装性評価装置であって、塗料を噴出するノズルと、塗料を収納するシリンダーと、前記シリンダー内を摺動可能なピストンと、前記ノズルと前記シリンダーとの間に配置されたマニホールドと、前記ピストンを前記シリンダー内に摺動するためのアクチュエーターと、を備える塗装手段と、前記塗装手段により噴出する塗料のスプレーパターンを測定する手段と、前記マニホールド内の塗料の圧力を測定する手段と、を備えることを特徴とするエアレス塗装性評価装置に関する。
【0007】
また本発明は、前記エアレス塗装性評価装置を用いて、前記塗装手段により噴出する塗料のスプレーパターンを塗装開始から塗装終了まで連続的に測定し、同時に前記マニホールド内の塗料の圧力を塗装開始から塗装終了まで連続的に測定して、測定されたスプレーパターンデータ及び圧力データにより塗料のエアレス塗装性を評価するエアレス塗装性評価方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエアレス塗装性評価装置は、少量の塗料で塗装が可能な塗装手段にスプレーパターンを測定する手段及び塗料の圧力を測定する手段を備える装置構成としている。そのことにより、エアレス塗装に用いる塗料のスプレーパターン及び塗料の圧力等のエアレス塗装性を定量的に評価できかつ信頼性が高く測定できる。さらに、少量の塗料かつ簡易な装置によって実際のエアレス塗装での評価と相関した評価結果が得られる。また、本発明のエアレス塗装性評価方法によれば、前記エアレス塗装性評価装置を用いてスプレーパターン及び塗料の圧力を測定することで、塗装開始から塗装終了までの定量的かつ連続的な測定結果に基づいて塗料のエアレス塗装性を評価ができ、かつ実際のエアレス塗装での評価と相関した評価を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にかかるエアレス塗装性評価装置の実施形態について、以下に図1及び図2を参照して説明する。なお、全図において、同様の構成部分には同符号を付した。
【0010】
図1は本発明のエアレス塗装性評価装置の1実施形態を示している。図1のエアレス塗装性評価装置は、塗料を噴出するノズル2と、塗料を収納するシリンダー3と、前記シリンダー3内を摺動可能なピストン4と、前記ノズル2と前記シリンダー3との間に配置されたマニホールド5と、前記ピストン4を前記シリンダー3内に摺動するためのアクチュエーター6とを備える塗装手段1と、前記塗装手段1により噴出する塗料のスプレーパターンを測定する手段7と、前記マニホールド5内の塗料の圧力を測定する手段8とを備えている。さらに、図1のエアレス塗装性評価装置は、塗料のスプレーパターンを測定する手段7により測定されたデータを処理するためのデータ処理手段9と、前記マニホールド内の塗料の圧力を測定する手段8により測定されたデータを処理するためのデータ処理手段10と、前記アクチュエーター6を制御するための制御手段11とを備えている。
【0011】
ノズル2は、塗料を噴出する部位であり、前記マニホールド5を介してシリンダー3に接続されている。ノズル2は、従来公知のエアレス塗装用ノズルを使用することができる。またノズル2は、評価対象の塗料を実際のエアレス塗装機で塗装する際に用いるノズルを使用することが好ましい。塗料のエアレス塗装性はノズルの種類に影響を受けるため、エアレス塗装機で実際に塗装する際に用いるノズルを使用した方が信頼性の高い測定をすることができる。また、ノズル2は、取外し自在のノズルであることが好ましい。取外し自在のノズルとすることで、評価する塗料に応じてノズルを交換することができるため、多種類の塗料のエアレス塗装性評価に本発明のエアレス塗装性評価装置を使用できる。また取外し自在のノズルとすることで、エアレス塗装機で実際に塗装する際に用いるノズルを使用できるため、信頼性の高い測定をすることができる。
【0012】
シリンダー3は塗料を収納する部位であり、図2に示すようにシリンダー3は塗料を収納するシリンダー室31を有している。前記シリンダー室31の一端にはシリンダー壁32が配置され、前記シリンダー壁32には孔33が形成されている。前記孔33は前記シリンダー3に接続された前記マニホールド5に通じている。前記シリンダー室31の他の一端には、前記ピストン4を前記シリンダー3内に摺動可能とするための開口34が形成されている。
【0013】
前記開口34及びシリンダー室31内の形状は特に限定されるものではないが、通常、開口は円形であり、シリンダー室は円柱状である。前記開口34の面積は、特に限定されるものではない。好ましくは、後述のアクチュエーター6の推進力と関連して設定される。具体的には例えば、前記開口34の面積は、アクチュエーター6を所定の推進力で作動し前記ピストン4を前記シリンダー3内に押込んだ場合に前記シリンダー3内の塗料の圧力が10MPa〜25MPa程度となるように調整して設定される。これは、一般的なエアレス塗装において加圧ポンプにより加圧される塗料の圧力(10MPa〜25MPa)に対応させるためである。一例として例えば、最大推進力が6000Nのアクチュエーターを使用する場合は、開口の面積は200〜600mm程度とすることが好ましい。
【0014】
前記シリンダー室31の長さは、特に限定されるものではなく、例えば、エアレス塗装性の評価において、安定した状態のスプレーパターン及び安定した状態の塗料の圧力が測定できるようにすることを考慮して長さを設定することができる。例えば、シリンダー室の室内の長さは100〜1000mmの範囲であり、好ましくは150〜500mmの範囲である。この範囲の下限値は、安定した状態のスプレーパターン及び安定した状態の塗料の圧力を測定することができる点で意義があり、上限値は装置の小型化及び塗料の使用量の点で意義がある。
【0015】
前記シリンダー3の材質は特に限定されるものではないが、シリンダー室31内が高圧状態となることから、高耐圧性のシリンダーを使用することが好ましい。
【0016】
ピストン4は、前記シリンダー3内を摺動可能なものであり、詳細には、前記シリンダー室31内を摺動可能なものである。前記ピストン4の先端及び前記シリンダー室31の前記開口34には、前記シリンダー室31内に収納された塗料が漏れないように、シール部材等が適宜使用される。また前記ピストン4は、後述のアクチュエーター6に接続されている。前記ピストン4の摺動距離は、エアレス塗装性の評価において、安定した状態のスプレーパターン及び安定した状態の塗料の圧力を十分に測定できるに足りる塗料の噴出量となるような摺動距離であれば特に限定されるものではない。
【0017】
マニホールド5は、前記ノズル2と前記シリンダー3との間に配置されている。前記マニホールド5には、その内部に孔51が形成されており、前記孔51は前記シリンダー3内の孔33に通じている。また前記マニホールド5には、前記孔51に通じる開口52が形成されており、さらに前記開口52を介して前記マニホールド5内の塗料の圧力を測定する手段8が接続されている。また前記マニホールド5は前記ノズル2に接続されており、前記孔51は前記ノズル2に通じている。圧力損失の影響を極力低減してノズルから噴出される塗料の圧力に近似した信頼性の高い測定結果が得られる点から、前記マニホールド5と前記ノズル2は直結されていることが好ましい。
【0018】
アクチュエーター6は、前記ピストン4を前記シリンダー3内に摺動させるものである。アクチュエーター6は、所定の推進力を有するものであれば、特に限定することなく従来公知のアクチュエーターを使用することができる。好ましくは、前記シリンダー室31の開口34の広さと関連して、前記シリンダー3内の塗料の圧力が10MPa〜25MPaになるような推進力を有するアクチュエーターが選択される。本発明で使用するアクチュエーターの動作原理は、前記推進力を有するものであれば、油圧式、空気圧式、電気式等、特に限定されない。
【0019】
スプレーパターンを測定する手段7は、前記塗装手段1により噴出する塗料のスプレーパターンを測定するための手段である。前記手段は、ノズル2から噴出する塗料のスプレーパターンの側部に設置される。図1の実施形態においては、前記塗料のスプレーパターンを測定する手段7は、例えば投光器71と受光器72を一対とした光電センサが使用できる。前記光電センサは、投光器71と受光器72がスプレーパターンを挟んで一対となるように設置され、スプレーパターンの幅を測定する。また、ノズル2の開口部の形状にも拠るが、一般的なエアレス塗装におけるスプレーパターンは楕円形状をしているため、投光部71と受光部72を一対とした光電センサは、通常、スプレーパターンの楕円形状の長径が測定可能となるように設置される。
【0020】
塗料の圧力を測定する手段8は、前記マニホールド5内の塗料の圧力を測定するための手段である。前記塗料の圧力を測定する手段8は、開口52を介して前記マニホールド5に接続される。図1の実施形態においては、前記塗料の圧力を測定する手段8は、例えば圧力センサが使用できる。前記圧力センサは、前記マニホールド5内の塗料の圧力を測定することができるものであれば、センサ方式は特に限定されるものではなく、例えば、ダイアフラム式等が使用できる。エアレス塗装は高圧条件での塗装であるため、塗料の圧力を測定することは、エアレス塗装性評価の面のみならず、安全性等の面からも重要である。
【0021】
また図1の装置は、塗料のスプレーパターンを測定する手段7により測定された検出値データを処理するためのデータ処理手段9を備えている。また、図1の装置は前記マニホールド5内の塗料の圧力を測定する手段8により測定された検出値データを処理するためのデータ処理手段10を備えている。データ処理手段9及びデータ処理手段10は、塗装開始から塗装終了まで連続的に測定した検出値データを処理することが可能なデータ処理手段であることが、連続的な測定結果が得られる点、及び信頼性の高い測定が可能な点から好ましい。
【0022】
さらに図1の装置は、前記アクチュエーター6を制御するための制御手段11を備えている。制御手段11は、特に限定されるものではなく、従来公知の制御手段を使用することができる。前記制御手段11は、例えば前記アクチュエーター6の推進力及び前記ピストン4の前記シリンダー3への摺動距離を制御できるものが好ましい。
【0023】
続いて、本発明のエアレス塗装性評価方法について説明する。
【0024】
本発明のエアレス塗装性評価方法は、本発明のエアレス塗装性評価装置を用いて、塗装手段により噴出する塗料のスプレーパターンを塗装開始から塗装終了まで連続的に測定し、同時にマニホールド内の塗料の圧力を塗装開始から塗装終了まで連続的に測定して、測定されたスプレーパターンデータ及び圧力データにより塗料のエアレス塗装性を評価するエアレス塗装性評価方法である。
【0025】
本発明のエアレス塗装性評価方法について、以下に図1〜3を参照して説明する。なお本発明のエアレス塗装性評価方法は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
まず、本発明の1実施形態である図1に示す塗装手段1により塗料を噴出させる。具体的には、下記工程により行われる。まず所定量の塗料を前記シリンダー室31内に注入する。注入する際の塗料の使用量は、シリンダー室31の容積、単位時間あたりの噴出量、測定時間等により適宜選択されるが、本発明においては、実際のエアレス塗装機を用いてエアレス塗装性を評価する際の塗料の使用量(約1000〜4000cc)と比較して、極少量の塗料でエアレス塗装性の評価が可能である。具体的には例えば、30〜400cc、好ましくは50〜200ccの塗料でエアレス塗装性の評価が可能である。続いて、前記ピストン4を前記シリンダー室31に僅かに押込み、前記シリンダー室31内の空気を排除しつつシリンダー室31内に塗料を充填する。続いて、制御手段11によりアクチュエーター6を所定の推進力により作動させ、所定の推進力で前記ピストン4を前記シリンダー室31内に押込むことにより、ノズル2より塗料が噴出される。この際、ノズル2は、評価対象の塗料をエアレス塗装機で実際に塗装する際に用いるノズルを使用することが好ましい。
【0027】
前記方法により噴出する塗料のスプレーパターンは、スプレーパターンを測定する手段7により塗装開始から塗装終了まで連続的に測定される。塗装開始から塗装終了まで連続的に測定する方法は、前記スプレーパターンを測定する手段7及びデータ処理手段9を用いることにより行われる。具体的には例えば、図3に図示するように、前記スプレーパターンを測定する手段7として、投光器71と受光器72を一対とした光電センサを用いる。光電センサは、スプレーパターンの幅が測定できるよう、投光器71と受光器72がスプレーパターンを挟んで一対となるように設置される。また、楕円形状のスプレーパターンの場合、投光器71と受光器72を一対とした光電センサは、当該楕円形状の長径が測定可能となるように設置される。そして、前記方法により塗料を噴出してスプレーパターンを形成しつつ、投光器71から光を投光しスプレーパターンを介して受光器72により光を受光する。このとき、スプレーパターンを通過した光とスプレーパターンのない部位を通過した光では、受光部72の検出値に差異が生じるため、スプレーパターンの幅に応じた検出値データを得ることができる。そして、得られた検出値データをデータ処理手段9へ送信して処理することによりスプレーパターンの幅の測定結果を得ることができる。さらに、上記測定を塗装開始から塗装終了まで連続的に行うことにより、塗装開始から塗装終了までのスプレーパターンの幅を連続的に測定することができる。
【0028】
また前記方法により塗料を噴出させている間、前記マニホールド5内の塗料の圧力を塗装開始から塗装終了まで連続的に測定する。該測定は前記塗料のスプレーパターンの測定と同時に行う。塗装開始から塗装終了まで連続的に測定する方法は、前記圧力を測定する手段8及びデータ処理手段10を用いることにより行う。具体的には例えば、前記圧力を測定する手段8を圧力センサとした場合、前記マニホールド5に接続された圧力センサにより塗料の圧力に応じた検出値データを得ることができる。そして、得られた検出値データをデータ処理手段10へ送信して処理することにより、前記マニホールド5内の塗料の圧力の測定値を得ることができる。さらに上記測定を塗装開始から塗装終了まで連続的に行うことにより、塗装開始から塗装終了までのマニホールド5内の塗料の圧力を連続的に測定することができる。
【0029】
測定されたスプレーパターンデータと測定された塗料の圧力データから塗料のエアレス塗装性を評価することができる。具体的には例えば、前記方法により塗装開始から塗装終了まで連続的に測定したスプレーパターンの幅について、測定時間を横軸、測定したスプレーパターンの幅を縦軸とするグラフに表すことにより、スプレーパターンの幅、及びその経時変化等の知見を得ることができる。また前記方法により塗装開始から塗装終了まで連続的に測定した塗料の圧力について、測定時間を横軸、測定した塗料の圧力を縦軸とするグラフに表すことにより、塗料の圧力の高さ、及びその経時変化等の知見を得ることができる。一般的に、エアレス塗装性のよい塗料とは、低い圧力において広いスプレーパターンを安定的に得ることができる塗料である。したがって、前記知見からエアレス塗装性の評価を行うことが可能である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明のエアレス塗装性評価方法をさらに詳細に説明する。
【0031】
<評価塗料>
本発明のエアレス塗装性評価方法に使用する評価塗料として、表1に示す粘度を有する評価塗料1〜3を使用した。評価塗料1の作成は、エポマリンFW−NS ベージュ ベース(商品名、関西ペイント社製、エポキシ樹脂系塗料用ベース)に粘度調整剤を添加した塗料とエポマリンFW−NS 硬化剤(商品名、関西ペイント社製、エポキシ樹脂系塗料用硬化剤)を100対20(重量比)の比率で混合することにより行った。評価塗料2及び3の作成は、粘度調整剤の種類又は添加量を変更する以外は評価塗料1の作成と同様にして行った。
【0032】
【表1】

【0033】
<エアレス塗装機によるエアレス塗装性評価>
上記評価塗料1〜3について、実際の塗装に使用するエアレス塗装機を用いてエアレス塗装を行い、そのエアレス塗装性を目視により評価した。塗装条件及び評価基準を以下に、評価結果を表2に示した。
・塗装条件
ノズル:スタンダードチップ625(商品名、グラコ社製)
加圧ポンプにより加圧される塗料の圧力:0.4MPa(1次圧)、圧縮比1/45
・評価基準
ノズル先端から30cm離れた位置に被塗物を設置し塗装を行った。被塗物に塗装された塗料のスプレーパターンの長径の幅を測定して、下記基準により評価した。
○:スプレーパターンの長径が25cm以上
○△:スプレーパターンの長径が15cm以上25cm未満
△:スプレーパターンの長径が10cm以上15cm未満
×:スプレーパターンの長径が10cm未満
【0034】
【表2】

【0035】
<本発明のエアレス塗装性評価装置によるエアレス塗装性評価>
本発明のエアレス塗装性評価装置を用いて、上記評価塗料のエアレス塗装性を評価した。エアレス塗装性評価装置は図1に示す装置を用いた。装置条件を以下に示す。
・装置条件
ノズル:スタンダードチップ625(商品名、グラコ社製)
シリンダー室の開口の面積:314mm(開口は直径20mmの円)
シリンダー室の長さ:250mm
アクチュエーター作動時の推進力:6000N
スプレーパターンを測定する手段:LS−5000(商品名、キーエンス社製、投光器と受光器を一対とする光電センサ)
スプレーパターンの測定位置:ノズル先端より塗料の噴出方向に向かって10mm離れた位置
塗料の圧力を測定する手段:MP467−M10−35MPa−25/45(商品名、日本ダイニスコ社製、圧力センサ)
【0036】
上記条件を有するエアレス塗装性評価装置を用いて評価塗料1〜3をそれぞれ噴出し、スプレーパターンの長径の幅及び塗料の圧力を測定した。測定方法を以下に示す。
【0037】
80ccの評価塗料をシリンダー室内に注入した。続いて、ピストンをシリンダー室内に僅かに押し込み、シリンダー室内の空気を排除しつつシリンダー室内に評価塗料を充填した。続いて、制御手段によりアクチュエーターを6000Nの推進力により作動させ、ピストンをシリンダーに押込むことにより、ノズルより評価塗料を噴出させた。続いて、噴出する塗料について、上記光電センサを用いて塗装開始から塗装終了まで連続的にスプレーパターンの長径の幅を測定した。また、同時に上記圧力センサを用いて塗装開始から塗装終了まで連続的に塗料の圧力を測定した。上記で測定した検出値データをそれぞれに対応したデータ処理手段に送信してスプレーパターンの長径の幅、塗料の圧力及びその経時変化を算出した。算出結果を図4及び図5に示した。
【0038】
図4及び図5に示した算出結果からエアレス塗装性について評価した。評価塗料1は、相対的にスプレーパターンの長径の幅が狭くかつ塗料の圧力が高い結果が得られた。また、評価塗料2は、スプレーパターンの長径の幅及び塗料の圧力共に、評価した3種類の塗料の中で中間的な結果を示した。また、評価塗料3は、評価した3種類の塗料の中で最もスプレーパターンの長径の幅が広くかつ塗料の圧力が低い結果が得られた。したがって、本発明による評価結果は、「評価塗料3」が最もエアレス塗装性が良く、続いて「評価塗料2」、最後に「評価塗料1」という順序であった。この結果は、表2に示したエアレス塗装機を用いたエアレス塗装性の評価結果と相関していた。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の1実施形態に係るエアレス塗装性評価装置である。
【図2】図1のエアレス塗装性評価装置の塗装手段1の一部分1aの断面図である。
【図3】スプレーパターンの測定方法を例示する図である。
【図4】スプレーパターン幅の測定結果
【図5】塗料の圧力の測定結果
【符号の説明】
【0040】
1:塗装手段
2:ノズル
3:シリンダー
4:ピストン
5:マニホールド
6:アクチュエーター
7:スプレーパターンを測定する手段
8:塗料の圧力を測定する手段
9、10:データ処理装置
11:制御手段
31:シリンダー室
32:シリンダー壁
33、51:孔
34、52:開口
71:投光器
72:受光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料のスプレーパターンの測定と、塗料の圧力の測定を行うエアレス塗装性評価装置であって、塗料を噴出するノズルと、塗料を収納するシリンダーと、前記シリンダー内を摺動可能なピストンと、前記ノズルと前記シリンダーとの間に配置されたマニホールドと、前記ピストンを前記シリンダー内に摺動するためのアクチュエーターと、を備える塗装手段と、前記塗装手段により噴出する塗料のスプレーパターンを測定する手段と、前記マニホールド内の塗料の圧力を測定する手段と、を備えることを特徴とするエアレス塗装性評価装置。
【請求項2】
前記スプレーパターンを測定する手段が、投光器と受光器を一対とした光電センサである請求項1記載のエアレス塗装性評価装置。
【請求項3】
前記圧力を測定する手段が、圧力センサである請求項1又は2記載のエアレス塗装性評価装置。
【請求項4】
前記ノズルが、取外し自在のノズルである請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアレス塗装性評価装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアレス塗装性評価装置を用いて、前記塗装手段により噴出する塗料のスプレーパターンを塗装開始から塗装終了まで連続的に測定し、同時に前記マニホールド内の塗料の圧力を塗装開始から塗装終了まで連続的に測定して、測定されたスプレーパターンデータ及び圧力データにより塗料のエアレス塗装性を評価するエアレス塗装性評価方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−50799(P2009−50799A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220458(P2007−220458)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】