説明

エアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置

【課題】散気膜を用いることなく、酸化反応を促進して、良好な処理が可能なエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置を提供する。
【解決手段】被処理水中に微小気泡を発生させるエアレーション装置であって、被処理水中に、極微小気泡151を発生する極微小気泡発生装置150と、発生した極微小気泡151を攪拌する対流用気泡161を発生する対流用気泡発生装置162とを具備し、気液接触面積を増大させて、処理効率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き、原油焚き及び重油焚き等の発電プラントに適用される排煙脱硫装置の排水処理に係り、特に、海水法を用いて脱硫する排煙脱硫装置の排水(使用済海水)をエアレーションにより脱炭酸(曝気)するエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭や原油等を燃料とする発電プラントにおいて、ボイラから排出される燃焼排気ガス(以下、「ガス」と呼ぶ)は、該排ガス中に含まれている二酸化硫黄(SO2)等の硫黄酸化物(SOx)を除去してから大気に放出される。このような脱硫処理を施す排煙脱硫装置の脱硫方式としては、石灰石石膏法、スプレードライヤー法及び海水法等が知られている。
【0003】
このうち、海水法を採用した排煙脱硫装置(以下、「海水排煙脱硫装置」と呼ぶ)は、吸収剤として海水を使用する脱硫方式である。この方式では、たとえば略円筒のような筒形状を縦置きにした脱硫塔(吸収塔)の内部に海水及びボイラ排ガスを供給することにより、海水を吸収液として湿式ベースの気液接触を生じさせて硫黄酸化物を除去している。
上述した脱硫塔内で吸収剤として使用した脱硫後の海水(使用済海水)は、たとえば、上部が開放された長い水路(Seawater Oxidation Treatment System;SOTS)内を流れ排水される際、水路の底面に設置したエアレーション装置から微小気泡を流出させるエアレーションによって脱炭酸(爆気)される(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−055779号公報
【特許文献2】特開2009−028570号公報
【特許文献3】特開2009−028572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、エアレーション装置で用いるエアレーションノズルは、基材の周囲を覆うゴム製等の散気膜に小さなスリットが多数設けられたものであり、一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。
このようなエアレーションノズルは、供給される空気の圧力により、スリットから略均等な大きさの微小気泡(例えば1〜5mm程度)を多数流出させるが、エアレーション装置は、装置の底面にエアレーションノズルを多数設置したものであり、脱硫後の所定の海水性状に対し、主にエアレーションノズルが発生する空気量と気泡径によって、その形状(水路形状)が決まる。
このため、エアレーション水路の建設費や運転費の低減には、水路形状の縮小、供給する空気量の低減が必須となる。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑み、従来のエアレーション装置(水路)の小型化、及び供給する空気量の削減が可能なエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、被処理水中に、極微小気泡を発生する極微小気泡発生装置と、発生した極微小気泡を攪拌する対流用気泡を発生する対流用気泡発生装置とを具備することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記極微小気泡発生装置及び対流用気泡発生装置が被処理水中に浸漬され、被処理水中に極微小気泡と対流用気泡を発生することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0009】
第3の発明は、第1の発明において、前記極微小気泡発生装置から供給される極微小気泡を噴出する極微小気泡噴出部群と、対流用気泡発生装置から供給される対流用気泡を噴出する対流用気泡噴出部群とのいずれか一方がエアレーション水路の上流側に設けられていることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0010】
第4の発明は、第1の発明において、前記極微小気泡発生装置から供給される極微小気泡を噴出する極微小気泡噴出部と、対流用気泡発生装置から供給される対流用気泡を噴出する対流用気泡噴出部とが交互に設けられていることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0011】
第5の発明は、海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微小気泡を発生して脱炭酸を行う第1乃至4のいずれか一つのエアレーション装置とを具備することを特徴とする海水排煙脱硫装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、極微小気泡を発生させることで、散気膜を用いずとも酸化処理が可能となる。この際、対流気泡を発生させることで、気液接触領域が増大し、処理効率が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施例に係る海水排煙脱硫装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例1に係るエアレーション装置の概略図である。
【図3】図3は、実施例2に係るエアレーション装置の概略図である。
【図4】図4は、実施例3に係るエアレーション装置の概略図である。
【図5】図5は、実施例4に係るエアレーション装置の概略図である。
【図6】図6は、気泡径と上昇速度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0015】
本発明による実施例に係るエアレーション装置及び海水排煙脱硫装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る海水排煙脱硫装置の概略図である。図2は、実施例1に係るエアレーション装置の概略図である。
図1に示すように、海水排煙脱硫装置100は、排ガス101と海水103とを気液接触してSO2を亜硫酸(H2SO3)へ脱硫反応させる排煙脱硫吸収塔102と、排煙脱硫吸収塔102の下側に設けられ、硫黄分を含んだ使用済海水103Aを希釈用の海水103と希釈混合する希釈混合槽105と、希釈混合槽105の下流側に設けられ、希釈使用済海水103Bの水質回復処理を行う酸化槽106とからなるものである。
【0016】
海水排煙脱硫装置100では、排煙脱硫吸収塔102において海水供給ラインL1を介して供給される海水103の内の一部の吸収用の海水103を排ガス101と気液接触させて、排ガス101中のSO2を海水103に吸収させる。そして、排煙脱硫吸収塔102で硫黄分を吸収した使用済海水103Aを、排煙脱硫吸収塔102の下部に設けられている希釈混合槽105に供給される希釈用の海水103と混合させる。そして、希釈用の海水103と混合希釈された希釈使用済海水103Bは、希釈混合槽105の下流側に設けられている酸化槽106に送給され、エアレーション装置120Aの極微小気泡発生装置150から発生させた極微小気泡151により、酸化処理して水質回復させた後、排水124として海へ放流するようにしている。
図1中、符号102aは海水を上方に噴出させる液柱用の噴霧ノズル、120Aはエアレーション装置、L1は海水供給ライン、L2は希釈海水供給ライン、L3は脱硫海水供給ライン、L4は排ガス供給ライン、L5は浄化ガス101Aの排出ライン、L6は排水124の排出ライン、L10は極微小気泡151の供給ライン、L11は空気164の供給ラインである。
【0017】
本実施例では、図2に示すように、本実施例に係るエアレーション装置120Aでは、酸化槽106内のその上流側において、被処理水である希釈使用済海水103B中に、外部に設置した極微小気泡発生装置150で発生させた極微小気泡(ナノバブル、マイクロバブル等)151を、極微小気泡発生部152を介して発生させている。この極微小気泡151が発生する領域を領域Xという。この領域Xは、極微小気泡発生部152が集合して極微小気泡噴出部群を形成している。
【0018】
また、この極微小気泡151の発生した酸化槽106内の後流側には、発生した極微小気泡151を攪拌する対流用気泡161を発生する対流用気泡発生部162を有する対流用気泡発生装置163が設けられている。
対流用気泡発生装置163は、外部から取り入れた空気164をブロア165により供給することで、対流用気泡発生部162から対流用気泡161を酸化槽106内に発生させている。この対流用気泡161が発生する領域を領域Yという。この領域Yは、対流用気泡発生部162が集合して対流用気泡噴出部群を形成している。
【0019】
この対流用気泡発生装置163から発生する対流用気泡161は、海水中での対流用気泡の上昇に伴い海水の対流を発生させ、極微小気泡151を対流させる気泡径であればよく、例えば5〜数10mm程度であればいずれでもよい。
【0020】
また、対流用気泡発生部162は、散気管、ジェットノズル等を例示でき、吸気部であるブロア165から取り込んだ空気164を攪拌用に放出するものである。
【0021】
よって、本実施例では、エアレーション水路である酸化槽106の上流側の領域X内で発生した極微小気泡151を、領域Y内で発生した対流用気泡161により攪拌することで、酸化反応に寄与する極微小気泡151の拡散を増大させ、酸化反応を促進させるようにしている。
これにより、従来のような散気管に供給する気泡径が例えば1〜5mmの気泡を供給して酸化反応させる場合に較べて、空気の供給量を減少させることができる。
【0022】
ここで、本発明で極微小気泡151とは、その気泡径が10〜数10μmのマイクロバブルや、数100nm以下のナノバブルをいう。また、両方の中間の大きさの気泡が混合している状態のものをマイクロナノバブルという。
これらのナノバブル等は、極微小気泡発生装置150より発生される。本実施例では、外部に設置した極微小気泡発生装置150を用いているが、本発明はこれに限定されず、海水中に浸漬され、極微小気泡発生部を兼用するものを用いるようにしてもよい。
【0023】
図6は、気泡径と上昇速度との関係図である。図6においては、海水温度が35℃の場合における気泡径とその上昇速度との関係を示すものであるが、通常の気泡(例えば2.0mm)の場合では、上昇速度が222mm/s程度である。
これに対して、0.1mm以下の気泡径のものは、上昇速度が6.4mm/s以下となり、そのほとんどが滞留することとなる。
【0024】
よって、この極微小気泡151は、海水中において、そのほとんどが滞留していることとなるので、対流用気泡161を供給して攪拌することで、酸化槽106において、酸化反応を促進する。この結果、酸化槽106における希釈使用済海水103Bの酸化反応が効率的となる。
【0025】
本実施例によれば、極微小気泡151を発生させると共に、その発生した極微小気泡を対流させる対流用気泡161により希釈使用済海水103Bとまんべんなく接触させることとなるので、酸化反応が促進でき、従来のような散気膜を用いたエアレーション装置の水路長よりもその長さを短縮することができ、さらに極微小空気の発生のために空気の供給量が少なくなり、エアレーション装置の建設費と運転費の大幅な削減を図ることができる。
例えば、従来の散気膜を用いたエアレーション装置(一例として、水路の長さ150m、水路の幅20m、水深4m)に対し、供給する空気量(極微小気泡の空気量と対流用気泡の空気量)が1/2低減すれば、水路の幅と水深を従来と同で、水路の長さは、従来の水路の長さの1/2の75mとなる。また、例えば、建設費が最小となる様に、水路長の変更に加え、水路の幅と水深も変更してもよい。
【実施例2】
【0026】
本発明による実施例2に係るエアレーション装置について、図面を参照して説明する。図3は、実施例2に係るエアレーション装置の概略図である。
図3に示すように、本実施例に係るエアレーション装置120Bは、酸化槽106内のその上流側において、対流用気泡161を発生する対流用気泡発生部162を有する対流用気泡発生装置163が設けられて、領域Yを形成している。そして、対流用気泡161を発生させることで、希釈使用済海水103Bを攪拌状態としている。
【0027】
また、この対流用気泡161の発生した酸化槽106内の後流側には、被処理水である希釈使用済海水103B中に、外部に設置した極微小気泡発生装置150で発生させた極微小気泡(ナノバブル)151を、極微小気泡発生部152を介して発生させて、領域Xを形成している。
【0028】
本実施例では、対流した状態の希釈使用済海水103Bに、極微小気泡151を発生するので、発生した極微小気泡151は直ちに、攪拌混合され、酸化槽106の後流側において、酸化反応を促進する。この結果、実施例1と同様に酸化槽106における希釈使用済海水103Bの酸化反応が効率的となる。
【実施例3】
【0029】
本発明による実施例3に係るエアレーション装置について、図面を参照して説明する。図4は、実施例3に係るエアレーション装置の概略図である。
図4に示すように、本実施例に係るエアレーション装置120Cは、酸化槽106内のその上流側において、極微小気泡151を発生する極微小気泡発生部152と、対流用気
泡161を発生させる対流用気泡発生部162とを交互に配置させて、領域Zを形成している。
ここで、領域Zにおいて、極微小気泡発生装置は省略し、発生部のみを図示している。
【0030】
この領域Zでは、発生した極微小気泡151は隣接する対流用気泡発生部162から発生した対流用気泡161により、直ちに攪拌されて極微小気泡151と対流気用泡161と混合された状態となっている。
【0031】
本実施例では、この領域Zの後流側に、混合状態の極微小気泡151と対流用気泡161とをさらに攪拌する対流用気泡161を発生する対流用気泡発生部162を有する対流用気泡発生装置163が設けられて、領域Yを形成している。
【0032】
これにより、本実施例では、実施例1及び2よりもさらに極微小気泡151と対流用気泡161との混合攪拌効果が発揮され、酸化槽106の後流側において、酸化反応を促進する。この結果、実施例1と同様に酸化槽106における希釈使用済海水103Bの酸化反応が、実施例1及び2よりもさらに効率的となる。
【実施例4】
【0033】
本発明による実施例4に係るエアレーション装置について、図面を参照して説明する。図5は、実施例4に係るエアレーション装置の概略図である。
図5に示すように、本実施例に係るエアレーション装置120Dは、酸化槽106内のその上流側において、対流用気泡161を発生する対流用気泡発生部162を有する対流用気泡発生装置163が設けられて、領域Yを形成している。そして、対流用気泡161を発生させることで、希釈使用済海水103Bを攪拌状態としている。
【0034】
また、この対流用気泡161の発生した酸化槽106内の後流側には、極微小気泡151を発生する極微小気泡発生部152と、対流用気泡161を発生させる対流用気泡発生部162とを交互に配置させて、領域Zを形成している。
この領域Zでは、発生した極微小気泡151は隣接する対流用気泡発生部162から発生した対流用気泡161により、直ちに攪拌されて極微小気泡151と対流用気泡161との混合された状態となっている。
【0035】
本実施例では、対流した状態の希釈使用済海水103Bに、極微小気泡151及び対流用気泡161とを発生するので、領域Zにおいては、発生した極微小気泡151の、攪拌混合効果が助長されることとなる。この結果、酸化槽106の後流側において、酸化反応を促進する。この結果、実施例1と同様に酸化槽106における希釈使用済海水103Bの酸化反応が効率的となる。
【0036】
以上、本実施例では被処理水として海水を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば汚染処理における汚染水にエアレーションを行うエアレーション装置に適用して、長期間に亙って安定して操業することができる。
【符号の説明】
【0037】
100 海水排煙脱硫装置
102 排煙脱硫吸収塔
103 海水
103A 使用済海水
103B 希釈使用済海水
105 希釈混合槽
106 酸化槽
120A〜120D エアレーション装置
150 極微小気泡発生装置
151 極微小気泡
152 極微小気泡発生部
161 対流用気泡
162 対流用気泡発生部
163 流用気泡発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に、極微小気泡を発生する極微小気泡発生装置と、
発生した極微小気泡を攪拌する対流用気泡を発生する対流用気泡発生装置とを具備することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記極微小気泡発生装置及び対流用気泡発生装置が被処理水中に浸漬され、直接被処理水中に極微小気泡と対流用気泡を発生することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記極微小気泡発生装置から供給される極微小気泡を噴出する極微小気泡噴出部群と、
対流用気泡発生装置から供給される対流用気泡を噴出する対流用気泡噴出部群とのいずれか一方がエアレーション水路の上流側に設けられていることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記極微小気泡発生装置から供給される極微小気泡を噴出する極微小気泡噴出部と、
対流用気泡発生装置から供給される対流用気泡を噴出する対流用気泡噴出部とが交互に設けられていることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項5】
海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、
前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、
前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微小気泡を発生して脱炭酸を行う請求項1乃至4のいずれか一つのエアレーション装置とを具備することを特徴とする海水排煙脱硫装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−236146(P2012−236146A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106691(P2011−106691)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】