説明

エアレーション装置及び海水排煙脱硫装置

【課題】析出物の析出防止対策としてスプレーインジェクション方式により注水等を行うエアレーション装置において、空気供給系配管の配管内に水が堆積することを防止したエアレーション装置を提供する。
【解決手段】被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置120であって、空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、該空気供給配管に水分を供給する水分供給手段と、水分を含んだ空気が供給されるスリット12を有する散気膜11を備えたエアレーションノズル123とを具備し、空気供給配管が、ヘッダ配管15の底部に滞留した水を排水する排水機構30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き、原油焚き及び重油焚き等の発電プラントに適用される排煙脱硫装置の排水処理に係り、特に、海水法を用いて脱硫する排煙脱硫装置の排水(使用済海水)をエアレーションにより脱炭酸(脱気)するエアレーション装置、そしてこのエアレーション装置を備えた海水排煙脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭や原油等を燃料とする発電プラントにおいて、ボイラから排出される燃焼排気ガス(以下、「排ガス」と呼ぶ)は、該排ガス中に含まれている二酸化硫黄(SO)等の硫黄酸化物(SOx)を除去してから大気に放出される。このような脱硫処理を施す排煙脱硫装置の脱硫方式としては、石灰石石膏法、スプレードライヤー法及び海水法等が知られている。
【0003】
このうち、海水法を採用した排煙脱硫装置(以下、「海水排煙脱硫装置」と呼ぶ)は、吸収剤として海水を使用する脱硫方式である。この方式では、たとえば略円筒のような筒形状を縦置きにした脱硫塔(吸収塔)の内部に海水及びボイラ排ガスを供給することにより、海水を吸収液として湿式ベースの気液接触を生じさせて硫黄酸化物を除去している。
上述した脱硫塔内で吸収剤として使用した脱硫後の海水(使用済海水)は、たとえば、上部が開放された長い水路(Seawater Oxidation Treatment System;SOTS)内を流れて排水される際、水路の底面に設置したエアレーション装置から微細気泡を流出させるエアレーションによって脱炭酸(爆気)される。(特許文献1〜3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−055779号公報
【特許文献2】特開2009−028570号公報
【特許文献3】特開2009−028572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアレーション装置で用いるエアレーションノズルは、基材の周囲を覆うゴム製等の散気膜に小さなスリットが多数設けられたものであり、一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズルは、供給される空気の圧力により、スリットから略均等な大きさの微細気泡を多数流出させることができる。
【0006】
上述したエアレーションノズルを用い、海水中でエアレーションを連続して行うと、散気膜のスリット壁面やスリット開口近傍に、海水中の塩分等が海水塩(析出物)として析出し、付着した析出物がスリットの間隙を狭めたり、あるいはスリットを塞いだりする結果、散気膜の圧力損失を増大させる。このため、散気膜に空気を供給するブロア、コンプレッサ等の吐出手段においては、吐出圧力が上昇して吐出圧高の運転状況となる。
このような運転状況は、送風機や圧縮機のような吐出手段の負荷を増すので、最悪の場合、吐出手段のトリップやプラントの運転停止という事態に至ることも懸念される。
【0007】
上述した析出物の発生は、散気膜の外側に位置する海水がスリットから散気膜の内側へ浸み込み、この海水が常時スリットを通過する空気と長時間にわたって接触することに原因があると考えられる。すなわち、長時間にわたって空気と接触した海水は乾燥(海水の濃縮)が促進され、この結果、析出物の生成及び付着に至っているものと推測される。
【0008】
一方、上述した析出物の付着による散気膜の圧損高騰を回避する策としては、たとえば送風機で供給される空気に注水(スプレーインジェクション等)を行って供給空気の相対湿度を上げ、海水塩等の析出を防止する方法がある。しかし、通常利用できる注水手段では、注水した水が完全に蒸発せず、この結果、注水した水の一部がドレン化して空気供給系の配管底部に堆積する。
このように、空気供給系の配管内に注水が堆積した状態では、空気供給系に設けられたバルブ操作の如何によって、空気供給系配管内でウォーターハンマーが発生し、空気供給系配管を破損させることが懸念される。
【0009】
このような背景から、エアレーション装置の安定した運転を継続するためには、配管破損の回避対策が必須である。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、析出物の析出防止対策としてスプレーインジェクション方式により注水等を行うエアレーション装置において、空気供給系配管の配管内に水が堆積することを防止したエアレーション装置を提供すること、そして、このエアレーション装置を備えた海水排煙脱硫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るエアレーション装置は、被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、該空気供給配管に水分を供給する水分供給手段と、水分を含んだ空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルとを具備し、前記空気供給配管が、配管底部に滞留した水を排水する排水機構を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
このような本発明のエアレーション装置によれば、空気供給配管が、配管底部に滞留した水を排水する排水機構を備えているので、空気を加湿するために供給される水分が空気供給配管内に滞留することを防止できる。
【0012】
上記のエアレーション装置において、前記排水機構は、前記配管底部に連通して取り付けられた排出管に圧力損失形成部を設けた構成とされることが好ましく、これにより、排水機構が排水する水量は、圧力損失形成部により制限される。従って、空気供給配管に供給された水分の全量が運転中に排水されることはなく、スリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルに対して、水分を含んだ空気を確実に供給することができる。
この場合に好適な圧力損失形成部としては、ディフューザー、オリフィス、配管流路の圧力損失及び排出管出口における被処理水の水圧等を利用でき、これらのいずれか1つでもよいし、あるいは、複数を適宜組み合わせてもよい。
【0013】
本発明に係る海水排煙脱硫装置は、海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微細気泡を発生して脱炭酸を行う請求項1または2に記載のエアレーション装置と、を具備して構成したことを特徴とするものである。
【0014】
このような本発明の海水排煙脱硫装置によれば、請求項1または2に記載のエアレーション装置を備えているので、空気供給配管の配管底部に滞留した水を排水する排水機構により、空気を加湿するために供給される水分が空気供給配管内に滞留することを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によれば、配管底部に排水機構を設けたことにより、空気供給系の配管内に注水が堆積することを防止できる。この結果、空気供給系の配管内に水が存在しなくなるので、空気供給系に設けられたバルブ類を操作しても、空気供給系配管内でウォーターハンマーが発生することはない。従って、ウォーターハンマーの発生に起因して空気供給系配管が破損することを防止でき、信頼性や耐久性の高いエアレーション装置及びこのエアレーション装置を備えた海水排煙脱硫装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るエアレーション装置及び海水排煙脱硫装置について一実施形態を示す図で、エアレーション装置に設けた排水機構の構成例を示す図である。
【図2】図1に示した排水機構について、第1変形例を示す図である。
【図3】図1に示した排水機構について、第2変形例を示す図である。
【図4】図1に示した排水機構について、第3変形例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る海水排煙脱硫装置の概略構成図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るエアレーション装置の概略構成図である。
【図7】図6に示すエアレーション装置を構成する空気供給系配管のヘッダ配管内に水が溜まる状況を示す図である。
【図8】エアレーションノズルを示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図9】エアレーションノズルの内部構造概略図である。
【図10】散気膜のスリットに関する説明図で、(a)は空気(飽和湿り空気と水ミストとの混合)の流出と海水の侵入状況、(b)は空気(飽和湿り空気)の流出と海水の侵入状況、(c)は空気(飽和湿り空気;相対湿度100%以下)の流出と海水の侵入、及び濃縮海水の状況、(d)は空気の流出と海水の侵入、及び濃縮海水の状況、(e)は空気の流出と海水の侵入、濃縮海水及び析出物の状況を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るエアレーション装置及び海水排煙脱硫装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図5は、本実施形態に係る海水排煙脱硫装置(以下、「脱硫装置」と呼ぶ)の概略構成図である。この脱硫装置100は、排ガス101と海水103とを気液接触してSOを亜硫酸(HSO)へ脱硫反応させる排煙脱硫吸収塔102と、排煙脱硫吸収塔102の下側に設けられ、硫黄分を含んだ使用済海水103Aを希釈用の海水103と希釈混合する希釈混合槽105と、希釈混合槽105の下流側に設けられ、希釈使用済海水103Bの水質回復処理を行う酸化槽106とからなるものである。
【0018】
海水排煙脱硫装置100では、排煙脱硫吸収塔102において海水供給ラインL1を介して供給される海水103の一部が吸収用の海水103として用いられ、排ガス101と気液接触させて、排ガス101中のSOを海水103に吸収させる。
排煙脱硫吸収塔102で硫黄分を吸収した使用済海水103Aは、排煙脱硫吸収塔102の下部に設けられている希釈混合槽105に落下する。この使用済海水103Aは、希釈混合槽105に供給される希釈用の海水103と混合させる。
【0019】
こうして希釈用の海水103と混合希釈された希釈使用済海水103Bは、希釈混合槽105の下流側に設けられている酸化槽106に送給され、エアレーション装置120によりエアレーションを実施して水質の回復を図った後、排水124として海へ放流するようにしている。
なお、図5において、図中の符号102aは海水を上方に噴出させる液柱用の噴霧ノズル、122aは微細気泡、L1は海水供給ライン、L2は希釈海水供給ライン、L3は脱硫海水供給ライン、L4は排ガス供給ライン、L5は空気供給ライン、L6は脱硫後の排ガス(浄化ガス)101Aの排出ラインである。
【0020】
上述したエアレーション装置120は、被処理水である希釈使用済海水(不図示)中に浸漬され、希釈使用済海水103B中に微細気泡を発生させる装置である。すなわち、ブロア121より供給された酸化用の空気122をエアレーションノズル123から微細気泡122aとして酸化槽106に供給し、希釈使用済海水103Bのエアレーションを実施する装置である。
このエアレーション装置120は、たとえば図6に示すように、吐出手段のブロア121A〜121Dにより空気122を供給する空気供給ラインL5と、空気供給ラインL5に水分として真水141を供給する真水タンク140及び供給ポンプP1と、水分が含まれた空気の供給を受ける多数のスリットが形成された散気膜11を備えるエアレーションノズル123とを具備して構成される。
【0021】
図示の構成例では、空気供給ラインL5が8系統(L5a〜L5h)に分岐され、各系統の分岐入口部には、メンテナンス等を考慮した開閉弁V1〜V8が設けられている。空気供給ラインL5から分岐した各系統には、エアレーションノズル123が接続されている。このエアレーションノズル123は、酸化槽106の底面と略平行に配設されたヘッダ配管15に対して、多数の散気膜11を接続したものである。そして、各散気膜11は、各ヘッダ配管15から水平方向に向けて接続されている。なお、空気供給ラインL5で分岐された系統数は、8系統に限定されることはない。
【0022】
また、図示の空気供給ラインL5には、2基の冷却器131A,131Bと、2基のフィルタ132A,132Bとが各々設けられている。これにより、ブロア121A〜121Dにより圧縮された空気は、冷却及び濾過された後にエアレーションノズル123へ供給される。
この場合、4基のブロア121A〜121Dは、3基が通常の運転に使用され、一般的に残る1基が予備となる。また、冷却器131A,131B及びフィルタ132A,132Bが2基ずつ設けられているのは、エアレーション装置120を連続運転するため、通常は一方を使用して運転し、他方はメンテナンス用となる。
なお、エアレーションノズル123に供給する空気122の加湿については、図6に例示した構成に限定されることはない。
【0023】
ここで、エアレーションノズル123の構成例として、散気膜がゴムの場合について、図7〜図9を参照して説明する。
エアレーションノズル123は、基材20の周囲を覆うゴム製の散気膜11に小さなスリット12が多数設けられたものであり、一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズル123は、空気供給ラインL5から供給される空気122の圧力により散気膜11が膨張すると、スリット12が開いて略均等な大きさの微細気泡122aを多数放出させることができる。
【0024】
エアレーションノズル123は、空気供給ラインL5から分岐した複数の枝管(図6の構成例ではL5a〜L5hの8本)に設けられたヘッダ配管15に対して、フランジ16を介して取り付けられている。なお、希釈用済海水103B中に設置される枝管及びヘッダ配管15には、耐食性を考慮して樹脂製パイプ等が使用されている。
【0025】
エアレーションノズル123は、たとえば図9に示すように、使用済海水103Bに対する耐食性を考慮して樹脂製とした略円筒形状の支持体20を用い、この支持体20の外周を覆うようにして多数のスリット12が形成されたゴム製の散気膜11を被せた後、左右両端部をワイヤやバンド等の締結材22により固定した構成とされる。
また、上述したスリット12は、圧力を受けない通常の状態においては閉じた状態となっている。なお、海水排煙脱硫装置100において、通常空気122を供給している状態では、常にスリット12が開放状態となる。
【0026】
ここで、支持体20の一端20aは、ヘッダ配管15に取り付けた状態で空気122の導入を可能とし、かつ、その他端20bは、海水103が導入可能に開口されている。
このため、一端20a側は、ヘッダ配管15及びフランジ16を貫通する空気導入口20cを介して、ヘッダ配管15の内部と連通している。そして、支持体20の内部は、支持体20の軸方向の途中に設けた仕切板20dにより分割され、この仕切板20dにより空気の流通が阻止されている。
【0027】
さらに、この仕切板20dよりヘッダ配管15側となる支持体20の側面には、散気膜11の内周面と支持体外周面との間に、すなわち、散気膜11を加圧して膨張させる空間11へ空気122を流出させるための空気出口20e,20fが開口している。従って、ヘッダ配管15からエアレーションノズル123に流入する空気122は、図中に矢印で示すように、空気導入口20cから支持体20の内部へ流入した後、側面の空気出口20e,20fから加圧空間11aへ流出することとなる。
なお、上述した締結部材22は、散気膜11を支持体20に固定するとともに、空気出口20e,20fから流入する空気が両端部から漏出することを防止するものである。
【0028】
このように構成されたエアレーションノズル123において、ヘッダ配管15から空気導入口20cを通って流入する空気122は、空気出口20e,20fを通って加圧空間11aへ流出することにより、最初はスリット12が閉じているため、加圧空間11a内に溜まって内圧を上昇させる。内圧が上昇された結果、散気膜11は加圧空間11a内の圧力上昇を受けて膨張し、散気膜11に形成されているスリット12が開くことによって空気122の微細気泡122aを希釈使用済海水103B中に流出させる。
このような微細気泡122aの発生は、枝官LL5a〜L5h及びヘッダ配管15を介して空気供給を受ける全てのエアレーションノズル123で実施される。
【0029】
図10(a)〜(e)は、散気膜11のスリット12において、空気(水分を供給した状態)の流出と海水103の侵入とを示す図である。
ここで、本発明において、スリット12とは、散気膜11に多数形成される切れ込みをいい、スリット12の間隙は空気が排出される通路となる。
この通路を形成するスリット壁面12aは、海水103が接触しているが、空気122の導入によって乾燥・濃縮され、濃縮海水103aとなり、その後スリット壁面12aに析出物103bが析出され、スリット12の通路を閉塞するものとなる。
【0030】
図10(a)では、空気122の相対湿度が100%(飽和湿り空気)であり、さらに水ミスト150が同伴して、気液二相の状態となっているので、スリット12に侵入した海水103は乾燥(濃縮)せず、塩分濃度が薄まることとなり、海水の乾燥(濃縮)が阻止される状態を示している。
図10(b)では、空気122の相対湿度が100%であるので、海水の塩分濃度に変化はなく、海水の乾燥が阻止される状態を示している。
【0031】
図10(c)では、空気122の相対湿度がたとえば80%であるので、海水の乾燥を抑制した状態であり、海水の塩分濃縮が徐々に増加し、濃縮海水103aが形成された状況を示している。但し、海水の濃縮が始まっても、海水の塩分濃度が概ね14%以下では、硫酸カルシウム等の析出物は析出しない。よって、この状態では、強制的に水分リッチな状態とすべく、水ミスト150を同伴する飽和湿り空気を間欠的に導入することで、ある程度濃縮された塩分濃度を薄めるようにして、析出を回避するようにすることで、長期間にわたっての運転が可能になる。
【0032】
なお、図10(d)及び(e)に、散気膜11のスリット12における、空気による海水の乾燥・濃縮が進行して析出物が成長する状態を示す。
図10(d)は、濃縮海水103aの一部において、局所的な海水の塩分濃度が14%を超えた部分に析出物103bが発生している状態である。この状態では、析出物103bが僅かであるので、スリット12を空気が通過する際の圧力損失が僅かに上昇するものの、空気122は通過過程である。
【0033】
これに対し、図10(e)は、濃縮海水103aの濃縮が進行すると、析出物103bによる閉塞(プラッキング)状態となり、圧力損失が大きくなる状態である。なお、このような状態でも空気122の通路は残っているものの、吐出手段にはかなりの負荷がかかるものとなる。
【0034】
ここで、本実施形態では、水分の供給源として真水を使用しているが、真水に代えて海水(たとえば、希釈海水供給ラインL2の海水103、希釈混合槽105の使用済海水103A、酸化槽106の希釈使用済海水103B等)や水蒸気を使用してもよい。
すなわち、空気供給ラインL5に水分を供給することにより、エアレーションノズル123に供給する空気122が加湿(水蒸気分圧増加)されていればよい。
【0035】
このようにして、空気122を加湿して供給することにより、散気膜11のスリット12での海水の乾燥・濃縮を防ぐことができ、この結果、硫酸カルシウム等の析出物が析出することを回避することが可能となる。すなわち、スリット12においては、供給される空気122が海水103を乾燥・濃縮させることを防止するため、空気供給配管L5に真水等の水分を供給することにより、水分の多い湿り空気(相対湿度が高い状態)が散気膜11のスリット12に供給されるようになっている。
ここで、空気122の相対湿度が高い状態としては、好適には、相対湿度が100%の飽和湿り空気、あるいは、水ミストを含む飽和湿り空気の状態となるようにして対策を講じている。
【0036】
しかし、上述したようにして空気122を加湿する場合には、注水した水分が完全に蒸発せず、この結果、たとえば図7に想像線で示すように、注水した水分の一部がドレン化してヘッダ配管15内に堆積する。すなわち、空気供給系のヘッダ配管15においては、配管底部に水Wが存在する状態となり、ヘッダ配管15の底部に溜まった水は、空気流とともにオリフィスとして機能する空気導入口20cを通過して散気膜11へ流出することとなる。
なお、散気膜11は、たとえば図7に示すように、ヘッダ配管15の軸中心より可能な限り低い位置に接続しているが、ヘッダ配管15の配管底部は空気導入口20cより低くなるため、注水が配管底部に堆積することは避けられない。
【0037】
そこで、本実施形態では、ヘッダ配管15のように加湿用の水が溜まる空気供給系の配管底部に対し、たとえば図1に示すように、配管底部に滞留した水を排水するための排水機構30が設置されている。
すなわち、本実施形態に係るエアレーション装置120は、空気を吐出手段のブロア121により供給する空気供給配管L5と、空気供給配管L5に水分を供給する供給ポンプP1及び真水タンク140を備えた水分供給手段と、水分を含んだ空気が供給されるスリット12を有する散気膜11を備えたエアレーションノズル123とを具備し、空気供給配管L5が、配管底部に滞留した水を排水する排水機構30を備えている。
【0038】
図1に示す排水機構30は、ヘッダ配管15の配管底部に連通して取り付けられた排出管31に圧力損失形成部として小型のディフューザー32を設けた構成とされる。
このディフューザー32は、排出管31から流出しようとする水に圧力損失を付与するので、排水機構30が排水する水量を制限することができる。従って、エアレーション装置120の運転中において、空気供給配管L5に供給された水分の全量が排水されるようなことはなく、スリット12を有する散気膜11を備えたエアレーションノズル123に対して、水分を含んだ空気を確実に供給することができる。
【0039】
図2に示す第1変形例の排水機構30Aでは、上述したディフューザー32に代えて、排出管31の内部に圧力損失形成部としてオリフィス33が設置されている。このオリフィス33は、上述したディフューザー32と同様に、排出管31から流出する水に圧力損失を付与するので、排水機構30が排水する水量を制限することができる。
【0040】
図3に示す第2変形例の排水機構30Bでは、排出管31の内部に圧力損失形成部としてフロート弁34が設置されている。このフロート弁34は、ヘッダ配管15内に滞留する水位が上昇すると、浮力により想像線で示すように上方へ移動する。この結果、排出管31の入口開口が開いて流出する水に圧力損失を付与するので、排水機構30Bが排水する水量を制限することができる。
【0041】
図4に示す第3変形例の排水機構30Cでは、酸化槽106の底面にピット106aを形成し、このピット106a内に排出管31を配置している。これは、エアレーションノズル123及び排水機構30Cが海水中に配設されているため、水深に応じて水圧が異なることを利用したものである。すなわち、排出管31は、酸化槽106の底面よりΔHだけ深い位置に開口しているので、出口水圧が高い分だけヘッダ配管15内に滞留する水の流出抵抗となる。
【0042】
このように、排水機構30,30A〜30Cの圧力損失形成部として、ディフューザー32、オリフィス33、排出管31等における配管流路の圧力損失、及び排出管31の出口における被処理水の水圧等を利用できるが、このような圧力損失形成部は、これらのいずれか1つでもよいし、あるいは、複数を適宜組み合わせたものでもよい。
【0043】
このように、上述した実施形態のエアレーション装置120によれば、空気供給配管L5がヘッダ配管15の配管底部に滞留した水を排水する排水機構30,30A〜30Cを備えているので、空気を加湿するために供給される水分が空気供給配管L5内に滞留することを防止できる。従って、空気供給系に設けられた開閉弁V1〜V8等のバルブ操作により、空気供給系配管L5内でウォーターハンマーが発生することを防止できるようになり、この結果、空気供給系配管L5を破損させるようなことはない。
【0044】
このように、上述した本実施形態の発明によれば、空気供給系の配管内に注水した水が堆積することを防止できるので、空気供給系配管内でウォーターハンマーが発生することはなく、従って、ウォーターハンマーの発生に起因して空気供給系配管が破損することを防止できる。すなわち、空気供給系の配管内に注水が堆積しないように排出機構30,30A〜30Cを設置したことにより、ウォーターハンマーの発生に起因して空気供給系配管が破損することはなくなるので、エアレーション装置120及びこのエアレーション装置120を備えた海水排煙脱硫装置100の信頼性や耐久性が向上する。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0045】
11 散気膜
12 スリット
15 ヘッダ配管
20 基材
30,30A〜30C 排水機構
31 排出管
32 ディフューザー(圧力損失形成部)
33 オリフィス(圧力損失形成部)
34 フロート弁(圧力損失形成部)
100 海水排煙脱硫装置(脱硫装置)
106 酸化槽
106a ピット
120 エアレーション装置
123 エアレーションノズル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、
空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、該空気供給配管に水分を供給する水分供給手段と、水分を含んだ空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルとを具備し、
前記空気供給配管が、配管底部に滞留した水を排水する排水機構を備えていることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項2】
前記排水機構は、前記配管底部に連通して取り付けられた排出管に圧力損失形成部を設けた構成とされることを特徴とする請求項1に記載のエアレーション装置。
【請求項3】
海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、
前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、
前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微細気泡を発生して脱炭酸を行う請求項1または2に記載のエアレーション装置と、を具備して構成したことを特徴とする海水排煙脱硫装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−22512(P2013−22512A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159269(P2011−159269)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】