説明

エアロゲル

【課題】 透明性、断熱性に優れ、採光断熱材として使用する場合に優れた性能を発揮するエアロゲルを提供する。
【解決手段】 BET法による比表面積が400〜700m/g、BJH法による細孔容積が4〜8ml/g、BJH法による細孔直径のピークが10〜30nm、ふるい分け法による粒径が4mmを超える粒子を含まず、同0.5mm未満の粒子が5重量%であり以下(特に好ましくは実質的に含まず)、かつD65光源での全光線透過率が60%以上であることを特徴とするエアロゲル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエアロゲルに関する。詳しくは、断熱性に優れ、可視光透過性にも優れた新規なエアロゲルを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
エアロゲルは、断熱性、透明性に優れた材料であり、各種断熱用途や窓用の材料として有用に用いられる。エアロゲルの製法としては、アルコキシシランを原料として加水分解し、重縮合して得られるゲル状化合物を、分散媒の超臨界条件で乾燥する方法がある(特許文献1)。あるいは、ケイ酸アルカリ金属塩を原料とし、陽イオン交換樹脂を通過させるか、鉱酸を添加することでゾルを作成し、ゲル化させた後に、分散媒の超臨界条件で乾燥する方法がある(特許文献2)。
【0003】
上記の超臨界条件により乾燥したエアロゲルは、超臨界状態にするためにかかるコストが多大であり、用途は特殊なものに限定される。そのため、コスト低減を目的とした常圧乾燥法が提案されている(特許文献3)。
【0004】
エアロゲルの用途は、様々であるが、樹脂や硝子板の間に、大きさが数ミリ程度のエアロゲルの粒体を挟んで使用する採光断熱材の用途がある。その採光断熱材の用途においては、優れた断熱性と透明性が要求される。また、住宅等の一般建築物に用いる場合には、コスト面からの要求により、常圧乾燥法により製造されたエアロゲルを用いることが好ましい。特許文献3に記載された方法により製造されたエアロゲルは、断熱性は優れているものの透明性においては未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4402927号公報
【特許文献2】特開平10−236817号公報
【特許文献3】特開平07−257918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、優れた断熱性と透明性を有するエアロゲルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、常圧乾燥法によるエアロゲルの製法において、ゲルを熟成する際の条件が、その物性に極めて大きな影響を与えることを見出した。そしてさらに検討を進めた結果、上記課題を解決するエアロゲルを得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、BET法による比表面積が400〜700m/g、BJH法による細孔容積及び細孔直径のピークが各々4〜8ml/g、10〜30nm、ふるい分け法による粒径が0.5〜4mmの範囲内にあり、かつD65光源での全光線透過率(JIS−K7361−1)が60%以上であることを特徴とする疎水性エアロゲルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、断熱性に優れ、かつ可視光域の光透過率にも優れたエアロゲルである。そのため、採光用断熱材として、極めて有用に用いることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のエアロゲルは、BET法による比表面積が400〜700m/g、好ましくは400〜600m/gである。比表面積が大きいほど、エアロゲルを構成するシリカの一次粒子径が小さいことを示し、より少ない量でエアロゲルの骨格構造を形成することが可能であるため、断熱性を向上させる上で好ましい。比表面積がこの範囲より小さい場合には、十分な断熱性能を得ることはできない。また、この範囲を超えて大きいものを得ることは、困難である。
【0011】
なお当該BET法によるエアロゲルの比表面積は、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において、200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を取得し、BET法により解析して求めた値である。
【0012】
本発明のエアロゲルは、BJH法による細孔容積が4〜8ml/g、好ましくは4〜6ml/gである。細孔容積が4ml/g以下である場合には、十分な断熱性能を得ることはできない。またこの範囲を超えて大きなものを得ることは、困難である。
【0013】
当該BJH法によるエアロゲルの細孔容積は、前記の比表面積測定の際と同様に吸着等温線を取得し、BJH法により解析して得られたものである。
【0014】
本発明のエアロゲルの細孔直径のピークは、同じくBJH法による解析で10〜30nm、好ましくは15〜25nmの範囲にある。気体分子の平均自由工程は、0℃、100kPaにおいて100nm程度であるが、本発明のエアロゲルの細孔直径はこの大きさよりも小さいため、効果的に気体分子同士の衝突による伝熱を抑制することができる。細孔直径がこの範囲を超えて小さい場合には、エアロゲルの密度が大きくなり、断熱性能が悪くなる。また、細孔直径がこの範囲を超えて大きい場合には、可視光透過性が悪くなる。
【0015】
当該BJH法によるエアロゲルの細孔直径は、細孔容積と同様に吸着等温線をBJH法により解析して得られたものである。
【0016】
本発明のエアロゲルは、粒状であり、ふるい分け法により測定される粒径が4mmを超える粒子を含まない。粒径が大きな粒子が含まれると、例えば断熱窓に用いるに際して樹脂や硝子板の間に挟むことが困難になるため、本発明においては、4mmを超える粒子を含まないようにするものである。さらに粒径の大きな粒子が存在すると該粒子に起因して断熱性が低下する傾向にあり、その点からも実質的に十分な断熱性を得るために4mmを超える粒子を含まないようにするべきである。
【0017】
一方、粒径が小さな粒子は光透過率を低下させる傾向にある。従って、本発明のエアロゲルとしては、0.5mm未満の粒子が5重量%以下である必要があり、1重量%以下であることが好ましく、実質的に存在しないことが特に好ましい。ここで実質的に存在しないとは、目開き0.5mmの篩上にエアロゲルをのせ、2,3度軽く振った程度では、篩を通過する粒子が存在しないことをいう。
【0018】
上記のような本発明のエアロゲル粒子は、その形状を特に限定されるものではなく、球状でも破砕状でも良い。
【0019】
本発明のエアロゲルは、D65光源を用いた際の全光線透過率(以下、単に「光透過率」と記す)が60%以上である。当該透過率の測定方法は、より具体的にはJIS−K7361−1に示されており、該方法により測定した値が60%以上であればよい。即ち、光源D65に対する全光線透過率であり、光路長1cmのセルにエアロゲルを充填し、サンプルの透過光を、積分球を用いて測定した値が60%以上であればよい。採光窓用途を考慮すると該透過率は65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが好ましい。
【0020】
一方、上限は特に限定されるものではないが、粒状エアロゲルにおいて、上記測定方法で光透過率が100%のものを得ることは困難であり、通常は90%以下、多くの場合85%以下であるが、断熱採光窓用途としてはこの程度あれば十分である。
【0021】
また本発明において、疎水性であるとは、有機溶媒を含まない水に対して分散しないことをいう。親水性である場合、その表面積の大きさなどに由来して急速に大気中の水分等を吸着し、断熱性、透明性に著しい悪影響を与えるため、取扱いが困難である。
【0022】
上述の物性を有する本発明の疎水性エアロゲルの製法は、特に限定されないが、本発明者等の検討によれば、以下の方法により製造することができる。
【0023】
即ち、本発明の疎水性エアロゲルは、シリカゾルの作成、シリカゾルのゲル化、熟成、ゲルの粉砕、溶媒置換、疎水化処理、乾燥という工程を順番に行う常圧乾燥法により製造することができる。
【0024】
上記各工程のうち、シリカゾルの作成工程は、公知の方法を適宜選択して実施すればよい。該シリカゾル作成の原料としては、金属アルコキシド、ケイ酸アルカリ金属塩等を使用することができる。本発明の疎水性エアロゲルの原料として使用可能な金属アルコキシドを具体的に例示すると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。また、ケイ酸アルカリ金属塩としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム等が挙げられ、化学式は、以下の式1で示される。
m(MO)・n(SiO) (式1)
(式中のm、nは正の整数を表し、Mはアルカリ金属原子を示す。)
上記のシリカゾル作成の原料のなかでも、安価な点でケイ酸アルカリ金属塩を好適に用いることができ、更には入手が容易であるケイ酸ナトリウムが好適である。
【0025】
本発明のシリカゾル作成原料として、ケイ酸アルカリ金属塩を用いる場合には、塩酸、硫酸等の鉱酸により中和する方法か、あるいは対イオンがHとされている陽イオン交換樹脂(以下、「酸型陽イオン交換樹脂」)を用いる方法により、シリカゾルを作成することができる。これらの方法のうちでも、酸型陽イオン交換樹脂を用いた方が、透明性の良いものが得られ易い点で好ましい。
【0026】
本発明のエアロゲルの製造において、酸型陽イオン交換樹脂を用いてシリカゾルを作成する方法は、公知の方法により行うことができ、酸型陽イオン交換樹脂を充填した充填層に適切な濃度のケイ酸アルカリ金属塩の溶液を通過させるか、あるいは、ケイ酸アルカリ金属塩の溶液に、酸型陽イオン交換樹脂を添加、混合し、アルカリ金属を除去した後に濾別するなどして酸イオン交換樹脂を分離することにより行うことができる。その際に、用いる酸型陽イオン交換樹脂の量は、溶液に含まれるアルカリ金属を交換可能な量以上を用いる必要がある。
【0027】
上記の酸型陽イオン交換樹脂としては、市販のものを使用することができる。例えば、スチレン系、アクリル系、メタクリル系等で、イオン交換性基としてスルフォン酸基やカルボキシル基が置換されたものを用いることができる。このうち、スルフォン酸基を有する、いわゆる強酸型の陽イオン交換樹脂を好適に用いることができる。
【0028】
なお上記の酸型陽イオン交換樹脂は、アルカリ金属の交換に使用した後に、硫酸や塩酸を通過させることで、再生処理を行うことができる。再生に用いる酸の量は、通常は、イオン交換樹脂の交換容量に対して2〜10倍の量が用いられる。
【0029】
上記のケイ酸アルカリ金属塩の溶液の濃度としては、シリカ分の濃度として、5〜10g/L程度のものを用いることが好ましい。シリカ分の濃度がこの範囲を超えて小さい場合には、ゲル化に時間がかかり、またエアロゲルの骨格構造の形成が不十分となり易く、乾燥時に収縮を起こして細孔容量が小さくなる傾向にある。また、シリカ分の濃度がこの範囲を超えて大きい場合には、エアロゲルの密度が大きくなり、シリカ自体による熱伝導が起こりやすくなるため、断熱性能が悪くなる傾向にある。
【0030】
本発明のエアロゲルを製造するためには、上記の如くして作成されたシリカゾルの作成に引き続き、シリカゾルをゲル化させ、次いでその熟成を行う。本発明の疎水性エアロゲルを得るためには、このゲル化(及び熟成工程)における厳密なpH管理が重要である。即ち、通常、上記の酸イオン交換樹脂によりイオン交換されたシリカゾルのpHは3以下である。このようなシリカゾルを中和して弱酸性〜中性とすることによりシリカゾルがゲル化するが、本発明で規定する光透過率を有する疎水性エアロゲルを得るためには、シリカゾルのpHを5.0〜5.8、好ましくは5.3〜5.7とすることによってゲル化させる必要がある(但し、25℃での値である)。
【0031】
本発明者等の推定によれば、ゲル化後の熟成時のpHが特定の範囲であることにより、極めて高い光透過率を有するエアロゲルを得ることができ、ゲル化時点でのpHの影響は軽微なのではないかと推測しているが、一旦ゲル化したもののpHを調整(変更)することは多大な困難を伴うため、pH調整の容易なゲル化直前の段階で上記pHに調整するものである。なおシリカゾルのpHは、市販のガラス電極を有するpHメーターを用て行えばよい。市販のpHメーターには温度補正機能を有するものもあり、このようなpHメーターを用いれば、前記範囲のpHに調製することがより容易である。
【0032】
シリカゾルのpHをこの範囲に調整するには、シリカゾルに塩基を添加すればよい。当該塩基としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸アルカリ金属塩等を用いることができる。最終的に得られる疎水性エアロゲルに不純物が混入しにくい点でアンモニアを用いることが好ましい。なお上記のゲル化にかかる時間は、温度やシリカゾルの濃度にもよるが、例えば、pHを5.0に調整した場合、温度50℃、シリカゾル中のシリカ濃度が80g/Lの場合には、数分後にはゲル化が起こる。
【0033】
このようにしてゲル化された直後のゲルはその透明性(光透過率)があまり高くないが、熟成が進むにつれて透明性が増大する。しかしながら、熟成が進行しすぎると再度、透明性が低下していくため、適切な熟成時間とする必要がある。
【0034】
本発明の疎水性エアロゲルを製造するに際して、所望の光透過率を得るための熟成時間に影響を与える因子としては、pH及び温度が挙げられる。pHは高いほど熟成が早く進行し、温度は高温ほど熟成が早くなる。従って、後述する実施例、比較例の開示に従い、適切な温度及び時間を設定することは当業者には容易であろう。具体的に一例を挙げると、ゲル化時のpHを5.5、熟成温度50℃とした場合には、4〜20時間が好適であり、更には8〜16時間が好適である。
【0035】
なお、熟成温度の範囲としては、30〜80℃が好適である。熟成温度がこの範囲を外れて高い場合には、温度を上昇させるために必要な熱量が多大となり、また熟成反応の進行が早いため、光透過率の高い時点で熟成を中止することが困難となりやすい。一方、熟成温度がこの範囲を超えて低い場合には、透明性を得るために必要な熟成時間が長くなるため、工業的に好ましくない。特に好ましくは40〜60℃である。
【0036】
本発明の疎水性エアロゲルを高収率で得るためには、上記の熟成工程に引き続き、ゲルを粉砕することが好ましい。このゲルの粉砕により、粒径をできるだけ0.5〜4mmに近づけておくことが、最後に行われるエアロゲルの分級の収率を向上させる上で好ましい。それに対し、次に述べる溶媒置換及び疎水化処理の後に粉砕を行うと、粉砕により疎水化処理されていない破断面が新たに生じることになり好ましくない。
【0037】
上記のゲルの粉砕は、例えばヘンシャル型のミキサーにゲルを入れるか、あるいはミキサー内でゲル化させ、ミキサーを適度な回転数と時間で運転することにより行うことができる。
【0038】
本発明の疎水性エアロゲルを製造するには、上記の粉砕工程に引き続き、溶媒置換が行われる。この溶媒置換は上記方法で得たゲルを乾燥するに際し、乾燥収縮を起こさないよう、ゲルの作成に用いた水を、表面張力の小さな溶媒に置き換えるものである。直接水を表面張力の小さな溶媒に置き換えることは困難なため、通常はこの溶媒置換は、2段階で行なわれる。1段目に用いる溶媒の選定基準としては、水、及び2段目の溶媒置換に用いられる溶媒に対して馴染みが良いことが挙げられる。1段目は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を用いることができ、好適には、エタノールを用いることができる。また2段目に用いる溶媒の選定基準としては、引き続き行われる疎水化処理に用いられる処理剤と反応しないこと、乾燥収縮を起こさないために表面張力が小さいことが挙げられる。2段目に用いる溶媒としては、ヘキサン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン等を用いることができ、好適にはヘキサンを用いることができる。むろん必要に応じて、上記1段目の溶媒置換と2段目の溶媒置換との間に、更なる溶媒置換を行っても構わない。
【0039】
上記の1段目の溶媒置換は、公知の方法により行うことができる。例えば、ゲルに対して一定量溶媒を加え一定時間置いた後に溶媒を抜くことを繰り返す方法や、カラムに入れたゲルに対して溶媒を一定量通過させる方法等が挙げられる。置換に用いる溶媒を節約する上では、カラムを用いた方法が好ましい。また、カラムにより置換を行う場合には、効率を上げる目的で、0.2〜1.0MPa程度の加圧下で行うことができる。
【0040】
上記の1段目の溶媒置換に用いられる溶媒の量としては、ゲル中の水分を十分に置換できる量とすることが好ましい。置換後のゲル中の含水率としては、シリカ分に対して10%以下とすることが好ましい。上記のカラムによる方法を採用する場合には、ゲルの容量に対して5〜10倍の量の溶媒を用いることができる。
【0041】
上記の2段目の溶媒置換についても、1段目の溶媒置換と同様の方法で行うことができ、1段目に用いた溶媒を十分置換できる量で行うことができる。カラムによる方法を採用する場合には、ゲルの容量に対して5〜10倍量の溶媒を用いることができる。
【0042】
なお上記の置換のために用いた溶媒は、回収し、蒸留等の精製を行った後に、繰り返し使用することが、溶媒にかかる費用を節約する上で好ましい。
【0043】
本発明の疎水性エアロゲルを製造するには、上記の溶媒置換の後に、疎水化処理を行う。疎水化処理に用いる処理剤としては、一般式(2)RSiX4−n(Rは、炭化水素基、Xは、アルコキシ基又はハロゲン原子、nは1〜2の整数)で示される構造のものを用いる。好ましくは、Xが塩素原子であるジアルキルジクロロシラン、モノアルキルトリクロロシランである。より透明性の良いエアロゲルを得るためには、上記一般式(2)で示されるもののうち、Rとしてはメチル基のものを採用することが好ましい。原料コストや反応性を考慮するとジメチルジクロロシランを最も好適に用いることができる。
【0044】
上記の疎水化処理の際に使用する処理剤の量としては、処理剤の種類にもよるが、例えばジメチルジクロロシランを処理剤として用いる場合には、疎水化前のエアロゲル(シリカ成分)100重量部に対して50〜150重量部が好適である。
【0045】
上記の疎水化処理の条件は、前記置換処理後のゲルを含む液に対して、一定量の溶媒を追加した後に疎水化処理剤を加え、一定時間反応させることにより行うことができる。疎水化処理剤としてジメチルジクロロシランを用い、処理温度を50℃とした場合には、12時間程度以上保持することで行うことできる。この際の追加溶媒としては、前記溶媒置換の際の2段目の溶媒としての要求物性を満たすものであればよい。また該溶媒の追加量としては、ゲルの容量に対して0.5〜2倍程度の量とすることができる。
【0046】
本発明の疎水性エアロゲルを製造するには、上記の疎水化処理の後に、濾別し、未反応の処理剤を溶媒で洗浄した後に、乾燥する。この際の洗浄溶媒としても、前記溶媒置換の際の2段目の溶媒としての要求物性を満たすものであればよい。洗浄が十分に行われたか否かは、例えば、洗浄後に分離した溶媒中の疎水化剤の有無を分析するなどして把握できる。乾燥する際の温度は、溶媒の沸点以上で、表面処理剤の分解温度以下であることが好ましく、圧力は常圧、或いは減圧下で行うことが好ましい。
【0047】
このようにして製造された疎水性エアロゲルを最終的に本発明のエアロゲルとするためには、上記の乾燥工程の後に、例えば、篩を用いた分級操作により、粒径を0.5〜4mmに調整すればよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。また、実施例、比較例において、比表面積、細孔容積、細孔分布の測定は、日本ベル株式会社製、BELSORP−maxにより行い、熱伝導率の測定は、英弘精機株式会社製HC−074−200により行った。また、透過率の測定は、日本電色株式会社製、NDH−2000により測定を行った。またpHの測定はメトラートレッド社製、セブンイージーS20により行った。
【0049】
実施例1
3号ケイ酸ソーダの溶液を希釈し、SiO:80g/L、NaO:27g/Lの濃度に調整した。この希釈したケイ酸ソーダの溶液を、予め硫酸によりH型にしたイオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製、アンバーリスト、IR−120B)に通過させ、2Lのシリカゾルを取得した。このシリカゾルのpHは、2.8であった。
【0050】
攪拌しながら0.1%のアンモニア水を滴下することにより、シリカゾルのpHを5.5に調整した。シリカゾルは、数分後には、ゲル化した。ゲルを入れた容器を50℃の水浴に入れ、12時間保持することにより熟成を行った。その後、ゲルを適度に砕きながら4mmの篩いを通過させた。全ての粒子が4mmの篩を通過するまでこの操作を行った。
【0051】
粉砕したゲルをカラムに入れ、10Lのエタノールで溶媒置換した後に、10Lのヘキサンにより溶媒置換を行った。ゲルにヘキサンを追加することで、全体の容量を3Lとし、ジメチルジクロロシラン240gを添加した。その後、50℃において、24時間保持した。
【0052】
疎水化処理後のゲルを、吸引濾過により濾別し、ヘキサン500mlで洗浄した。ゲルの乾燥を常圧下、窒素を流通させながら行った。乾燥の温度、時間は、40℃で3時間、50℃で2時間、150℃で12時間とした。その後、粒径が0.5〜4mmの粒子を篩い分けし、取得した。製造条件を表1に示す。また、このようにして得られたエアロゲルの物性を表2に示す。
【0053】
実施例2〜3,比較例1〜4
ゲル化させるためのアンモニア水添加完了時のpH、及び熟成時間を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして疎水性エアロゲルを製造した。得られたエアロゲルの物性を表2に示す。
【0054】
比較例5
疎水化処理の処理剤をトリメチルクロロシランとした以外は、実施例1と同様にエアロゲルの製造を行った。得られたエアロゲルの物性を表2に示す。
【0055】
比較例6
実施例1において、最終工程における篩分けの際に、0.5mmの篩を通過したものの各種物性の分析結果を表2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET法による比表面積が400〜700m/g、BJH法による細孔容積及び細孔直径のピークが各々4〜8ml/g、10〜30nm、ふるい分け法による粒径が4mmを超える粒子を含まず、同0.5mm未満の粒子が5重量%以下であり、かつD65光源での全光線透過率(JIS−K7361−1)が60%以上であることを特徴とする疎水性エアロゲル。
【請求項2】
2枚の透明板間に、請求項1記載の疎水性エアロゲルが充填されてなる断熱採光部材。

【公開番号】特開2012−91943(P2012−91943A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238692(P2010−238692)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】