説明

エアロゾル発生装置

【課題】簡易な機構で、AD法において2種類以上の微粒子材料からなる多層被膜、傾斜機能を有する被膜、呈色を連続的に変化させた被膜などを、高い生産性で形成可能とするエアロゾル発生装置を提供する。
【解決手段】微粒子8を導入する微粒子導入口と、搬送用のガスを導入するガス導入口3と、微粒子8をガス中に分散させたエアロゾルを導出するエアロゾル導出口4とを有するエアロゾル発生部と、内部に微粒子8が収容された複数の微粒子収容部9と、該微粒子収容部9から微粒子導入口に微粒子8を供給するための溝6aが形成された回転テーブル6とを備えてなるエアロゾル発生装置であって、微粒子が2種類以上であり、該微粒子の種類毎に微粒子収容部9に収納され、それぞれの微粒子収容部9から供給され充填された溝6a内の微粒子8が、微粒子導入口よりエアロゾル発生部5に導入されエアロゾル化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の微粒子を材料として用い基材上に複合被膜を形成するエアロゾルデポジション(以下、ADと記す)成膜装置に使用する、エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、常温下で緻密なセラミックス被膜等を形成する方法として、微粒子(粉体)をガス中に分散させたエアロゾルを基材に向けてノズルより噴射し、エアロゾルを基材表面に衝突させて、微粒子の構成材料からなる被膜を基材上に形成させるAD法が知られている。AD法の例としては、基板上に 50 nm〜5μm の超微粒子脆性材料を接合させて理論密度の 95 %以上で結晶サイズで 100 nm 以下の微結晶を含む脆性材料である超微粒子成形体を得る脆性材料超微粒子成形体の低温成形法が挙げられる(特許文献1参照)。
【0003】
AD法により基材と微粒子材料からなる複合構造物を作製するAD成膜装置は、エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生装置(部位)が必要となる。従来エアロゾル発生装置としては、所定量の微粒子材料を予め容器内に入れ、これに振動等を加えつつ搬送ガス中に分散させるバッチ式のものが多く使用されている。また、微粒子を連続的に供給する非バッチ式のエアロゾル発生装置として、粉体収容部と、粉体収容部からの粉体が充填される溝を設けた循環式の粉体輸送手段と、エアロゾル化手段とを備えてなり、エアロゾル化手段が、溝の一部にガスを吹き付けるガス導入口とこれに近接したエアロゾル導出口を有し、ガス導入口から導入される搬送ガスが、粉体輸送手段に輸送された粉体の一部に吹き付けられてエアロゾル化し、このエアロゾルがエアロゾル導出口から導出されるもの(特許文献2参照)が開示されている。
【0004】
また、AD法ではセラミックス被膜を堆積形成できること、すなわち、成膜されたセラミックス被膜上へ新たに堆積して成膜させることができること等が開示されている(特許文献3参照)。このことから、成膜した被膜上に別種のセラミックス被膜を形成する、または、成膜用の材料粒子を予め混合することで、被膜の機能に複合性を持たせることが可能となると考えられる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献2や特許文献3等の従来のAD法に関する出願においては、同種材料を堆積形成するものであり、種類の異なる材料を用いて、複合被膜を形成することについては開示されていない。
例えば、バッチ式のエアロゾル発生装置を用いて複合被膜を形成するために、成膜途中で発生装置内の微粒子材料を交換すると、連続的な成膜ができず生産性に劣ることや、交換時に被膜表面が劣化するおそれがある。また、多層化する場合において使用する微粒子の順序によっては、基材との密着力が十分に得られない場合や、既に成膜された被膜をエッチングしてしまう等のおそれがある。
【0006】
一方、特許文献2のエアロゾル発生装置を使用すれば連続的な成膜が可能であるが、例えば、粉体収容部に単に複数種の微粒子を混合して収容しておくだけでは、被膜に傾斜的な機能を持たせることや、呈色を連続的に変化させることなどができない。
また、特許文献2のようにエアロゾル発生装置において溝が一つである場合では、微粒子の供給効率が悪く被膜形成の生産性に劣るという問題がある。溝自体を大きくした場合では、溝内での微粒子の凝集や、溝からエアロゾル発生部への吸引導入がしにくい等が問題となる。
【特許文献1】特許第3265481号公報
【特許文献2】特開2003−275631号公報
【特許文献3】特開2001−181859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題に対処すべくなされたものであり、簡易な機構で、AD法において2種類以上の微粒子材料からなる多層被膜、傾斜機能を有する被膜、呈色を連続的に変化させた被膜などを、高い生産性で形成可能とするエアロゾル発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエアロゾル発生装置は、微粒子を導入する微粒子導入口と、搬送用のガスを導入するガス導入口と、上記微粒子を上記ガス中に分散させたエアロゾルを導出するエアロゾル導出口とを有するエアロゾル発生部と、内部に上記微粒子が収容された複数の微粒子収容部と、該微粒子収容部から上記微粒子導入口に上記微粒子を供給するための溝が形成された循環式輸送手段とを備えてなるエアロゾル発生装置であって、上記微粒子が2種類以上であり、該微粒子の種類毎に上記微粒子収容部に収納され、それぞれの微粒子収容部から供給され充填された上記溝内の微粒子が、上記微粒子導入口より上記エアロゾル発生部に導入されエアロゾル化されることを特徴とする。
また、上記エアロゾル発生装置は、上記溝を複数形成してなることを特徴とする。
【0009】
上記複数の微粒子収容部は、それぞれが微粒子供給量調整手段を有し、上記溝内において、エアロゾル化される側である溝一端側から溝他端側に向けて、種類の異なる微粒子の充填比率が連続的に変化するよう、それぞれが上記溝に微粒子を供給することを特徴とする。
【0010】
上記微粒子はセラミックス微粒子であり、平均粒子径が 0.1μm〜2μm であることを特徴とする。なお、本発明において平均粒子径は日機装株式会社製:レーザー式粒度分析計マイクロトラックMT3000によって測定した値である。
また、上記セラミックス微粒子は、アルミナ微粒子および窒化珪素微粒子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエアロゾル発生装置は、複数の微粒子収容部を有し、それぞれの微粒子収容部から供給され充填された溝内の微粒子が、微粒子導入口よりエアロゾル発生部に導入されエアロゾル化される構成であるので、複数の微粒子材料を用いた複合被膜を連続的に形成することができる。
【0012】
上記溝を複数形成するので、各溝の大きさを変えずに、微粒子の供給効率を向上させることができ、被膜生産性の向上を図れる。また、微粒子毎の専用溝を形成し各溝の大きさを所定のサイズ比率とすることで、所定材料比率の被膜を容易に形成することができる。
【0013】
上記微粒子収容部は、それぞれ供給量調整手段を有するので、それぞれの微粒子収容部からの微粒子の溝への供給量を調整し、エアロゾル化される側である溝一端側から溝他端側に向けて、種類の異なる微粒子の充填比率が連続的に変化する分布で充填することで、一定方向に段階的に物性が変化するような傾斜機能を有する被膜や、呈色を連続的に変化させた被膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明においてAD法は、セラミックス等の脆性材料の微粒子を搬送ガス中に分散させたエアロゾルを基材に向けてエアロゾル噴射ノズルより噴射し、エアロゾルをこの基材表面に高速で衝突させ、微粒子の構成材料からなる被膜を基材上に形成させる方法である。エアロゾル中の一次粒子等の微細なセラミックス微粒子は、衝突により粉砕し、清浄な新生表面を形成し、低温接合を生じさせるので、室温で微粒子同士の接合を実現できる。
【0015】
本発明のエアロゾル発生装置の一例を図1に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例に係るエアロゾル発生装置の斜視図である。図1に示すようにエアロゾル発生装置1は、セラミックス粉等の微粒子を連続的に供給する循環式輸送手段として円環状の溝6aが形成された回転テーブル6を有し、該回転テーブル6上にエアロゾル発生部5と、2個の微粒子収容部9とが載置されている。
微粒子収容部9には、それぞれ別種の微粒子が収納され、それぞれの微粒子収容部9から溝6aに微粒子8が供給・充填される。微粒子収容部9は、少なくとも複合被膜を構成する微粒子の種類数を設ければよい。また、各微粒子収容部の収容量は、材料比率に応じてそれぞれ適宜変更してもよい。
【0016】
また、図2に本発明の他の実施例として溝を2つ設けたエアロゾル発生装置の斜視図を示す。図2に示すようにエアロゾル発生装置1は、微粒子を連続的に供給する循環式輸送手段として円環状の溝6aおよび6bが形成された回転テーブル6を有し、該回転テーブル6上にエアロゾル発生部5と、2個の微粒子収容部9とが載置されている。
微粒子収容部9は、図1の場合と同様にそれぞれ別種の微粒子が収納され、それぞれの微粒子収容部9から溝6aおよび6bに微粒子が供給・充填される。微粒子収容部9と各溝との関係は、(1)微粒子の種類毎、すなわち微粒子収容部毎に供給対象とする溝を決めて充填する場合、(2)各微粒子収容部から溝6aおよび6bに微粒子を充填する場合などが挙げられる。(1)の場合では、各溝内の微粒子8aおよび8bは、それぞれ異なる種類の微粒子であり、(2)の場合では、各溝内の微粒子8aおよび8bは、それぞれ複数種類の微粒子が混合されたものである。
【0017】
溝6aおよび6bの大きさは適宜変更でき、それぞれで異なる大きさとしてもよい。例えば、上記(1)の場合において、各溝の大きさを所定のサイズ比率とすることで、所定材料比率の複合被膜を容易に形成することができる。
また、溝は2個以上設けてもよい。溝を複数形成することで、各溝の大きさを小さいまま、微粒子の供給効率を向上させることができ、被膜生産性の向上を図れる。ここで、溝の大きさが小さいとは、例えば平均粒子径 0.1μm〜2μm 程度の微粒子を用いる場合において溝断面が (10〜20 mm)×(5〜7.5 mm) 程度であり、この程度の大きさとすることで、溝内において微粒子が凝集しにくく、また、微粒子をエアロゾル発生部5に吸引導入しやすい。
【0018】
図1および図2に示すエアロゾル発生装置において、溝6aおよび6bに充填された微粒子8aおよび8bは、回転テーブル6の回転(図中矢印)によりエアロゾル発生部5に供給される。該装置においては、溝の大きさや、回転テーブル6の回転速度を変更することで、エアロゾル発生部5への微粒子供給量を調節できる。溝内の微粒子が酸化劣化すること等を防止するとともに、エアロゾル発生部5に搬送ガスを供給するため、回転テーブル6全体がチャンバー7内に入れられている。チャンバー7はガス供給設備(図5参照)と接続され、チャンバー7内に搬送ガスが供給される。
【0019】
エアロゾル発生部5内におけるエアロゾル形成方法を図3に基づいて説明する。図3は図2におけるエアロゾル発生部5の一部断面図である。
図3に示すようにエアロゾル発生部5は、微粒子8aおよび8bを、溝6aおよび6bからエアロゾル発生部5内に吸引導入するための微粒子導入口2と、ガス供給設備(図5参照)からチャンバー7内に供給される搬送ガスをエアロゾル発生部5内に導入するためのガス導入口3と、微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを導出するためのエアロゾル導出口4とを有する。微粒子導入口2には、溝内で凝集した粗大粒子の侵入を防止するためのフィルター2aが設けられている。
【0020】
エアロゾル発生部5は、ガス導入口3を介して導入される搬送ガスを、各溝から微粒子導入口2を介して吸引された微粒子に吹き付けて、エアロゾル化し、該エアロゾルをエアロゾル導出口4から導出してエアロゾル噴射ノズル(図5参照)へと供給する。微粒子8aおよび8bは、溝6aおよび6bの一端側(エアロゾル発生部側)から順次吸引される。微粒子の吸引速度およびエアロゾルの導出速度等は、ガス供給設備からの搬送ガスの供給圧力、および、エアロゾル噴射ノズルが設けられた真空チャンバー内の減圧度によって調整される。
【0021】
また、本発明のエアロゾル発生装置においては、微粒子収容部9は、それぞれが微粒子供給量調整手段(図中省略)を設けることができる。該手段としては、微粒子の溝への供給量が調節可能なものであれば任意の手段を採用でき、例えば、ホッパーやフィーダー等が挙げられる。この微粒子供給量調整手段により、例えば、エアロゾル化される側である溝一端側から溝他端側に向けて、種類の異なる微粒子の充填比率が連続的に変化するように溝に微粒子を充填できる。図2のエアロゾル発生装置を用いる場合においては、上述(2)の場合でこのような分布とできる。
【0022】
溝に充填される微粒子分布の一例を図4に基づいて説明する。図4は、溝6aの回転テーブルの回転方向断面図である。図4に示すように、エアロゾル化される側である溝一端側(図中右側)から、溝他端側(図中左側)に向けて、種類の異なる微粒子Xおよび微粒子Yの充填比率が連続的に変化する分布として充填する。図4においては、右側ほど微粒子Yの比率が大きく、左側ほど微粒子Xの比率が大きいので、該図に示す分布の微粒子を用いてエアロゾル化し被膜を形成すれば、物性が微粒子Yから微粒子Xの物性に連続的に変化するような傾斜機能を有する被膜が形成できる。同時に、被膜の呈色も微粒子Yから微粒子Xの色に連続的に変化するものとできる。
【0023】
本発明のエアロゾル発生装置において使用可能な微粒子としては、AD法で使用可能なものであれば任意の微粒子を使用でき、主にセラミックス微粒子が挙げられる。セラミックス微粒子としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の酸化物、炭化珪素、窒化珪素等の微粒子が挙げられる。これらの中で、それぞれのセラミックスの高純度グレードにおいて、真比重が小さい方がエアロゾル化しやすいことから、アルミナ微粒子が特に好ましい。
セラミックス微粒子以外でも、シリコン、ゲルマニウムなどのへき開性の強い脆性材料の微粒子を使用することも可能である。
本発明では、これらの微粒子を2種類以上、複合被膜の所望の特性に合わせて組み合わせて使用する。
【0024】
本発明において使用する微粒子の平均粒子径は、0.1μm〜2μm であることが好ましい。0.1μm 未満では凝集しやすくエアロゾル化は困難であり、2μm をこえるとAD法での膜形成はできない(膜成長しない)。
また、被膜形成を良好に行なうため、基材への衝突時に微粒子が容易に粉砕するように、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて微粒子にクラックを予め形成しておくことが好ましい。
【0025】
基材として、軸受等に使用される軸受鋼を採用する場合では、アルミナ微粒子と窒化珪素微粒子とを併用することが好ましい。ここで、窒化珪素微粒子は溝内において凝集しやすく成膜効率に劣るので、例えば、図4において微粒子Yをアルミナとし、微粒子Xを窒化珪素として、まずアルミナ微粒子で被膜形成を行なった後に、段階的に窒化珪素微粒子を多くして被膜形成を行なうことで、軸受鋼との密着性を確保できる。その他、アルミナ微粒子とジルコニア微粒子の組み合わせも可能である。
【0026】
本発明の図2に示すエアロゾル発生装置を用いた被膜形成工程を図5に基づいて説明する。図5はAD法により、基材である軸受外輪の外径面にセラミックス被膜を形成する場合の被膜形成装置を示す図である。
図5に示すように、AD法による被膜形成装置10は、エアロゾル発生装置1と、真空チャンバー11とを有する。真空チャンバー11内には、被膜形成対象の基材である外輪13と、エアロゾル噴射ノズル17とが配設されている。真空チャンバー11の内部は真空ポンプ12によって減圧される。セラミックス微粒子の混入を防止するため、真空ポンプ12の直前に微粒子フィルター18が設けられている。
エアロゾル噴射ノズル17は、セラミックス微粒子を、長方形等の開口部を有するノズル先端から、基材である外輪13に噴射するものである。なお、エアロゾル噴射ノズル17は、1本であっても複数本であってもよい。また、エアロゾル噴射ノズル17は、真空チャンバー11内で変位可能に構成してもよい。
【0027】
エアロゾル発生装置1の微粒子収容部にそれぞれ種類の異なるセラミックス微粒子をいれ、該収容部より溝6aおよび溝6bに微粒子を充填する。回転テーブル6を回し、該微粒子を2つの溝からエアロゾル発生部5に供給しながら、ガス供給設備16からチャンバー7内に搬送ガスを導入し、ガス導入口3からエアロゾル発生部5に搬送ガスを供給して、該微粒子と搬送ガスとからなるエアロゾルを形成する。なお、各溝内のセラミックス微粒子は微粒子導入口2からエアロゾル発生部5内に順次導入される(図2および図3参照)。
また、使用可能な搬送ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。
【0028】
エアロゾル噴射ノズル17には、エアロゾル発生装置1のエアロゾル導出口4から上記のエアロゾルが供給される。固定したエアロゾル噴射ノズル17から、対象物回転用モータ15により所定回転数で回転(図中A)している外輪13に、上記のエアロゾルが噴射され、外輪13の外径面にセラミックス被膜が塗り重ねられて形成される。同時に、位置決め用XYテーブル14により外輪13を軸方向に移動(図中B)させることで、外輪13のXY方向にも均一に被膜が形成される。
【0029】
セラミックス被膜は、溝6aおよび溝6b内からの微粒子材料からなる複合被膜として形成される。溝が2つあるため、微粒子の供給効率が高く、被膜生産性に優れる。
【実施例】
【0030】
図2に示すエアロゾル発生装置および図5に示す被膜形成装置を用いた。エアロゾル発生装置2の2つの微粒子収容部9に、アルミナ微粒子(住友化学社製AKP−20、平均粒子径 0.50μm )と、窒化珪素微粒子(宇部興産社製SN−E10、平均粒子径 0.55μm )とをそれぞれ収容した。各微粒子収容部9からアルミナ微粒子を溝6aに、窒化珪素微粒子を溝6bにそれぞれ充填した。
エアロゾル発生部5でエアロゾルを形成し、真空チャンバー内に取り付けた軸受鋼SUJ2製テスト基板(縦 30 mm×横 30 mm、厚み 3 mm )表面にAD法で複合被膜を 5 分間形成した。装置構成については、回転テーブル6の直径は 340 mm、一周約 9 時間の回転速度、溝6aおよび6bの断面は、いずれも 10 mm×5 mm の矩形形状とした。
AD法は位置決め用XYテーブルを用いて、6 mm/分で移動するテスト基板に、100 Pa 以下の減圧下で、開口サイズ 10 mm×0.3 mm のノズルを通して上記セラミックス微粒子のエアロゾルを噴射して被膜形成を行なった。なお、搬送ガスには窒素ガスを用い、粒子速度は搬送ガス流量で制御した。
【0031】
得られた被膜を観察した結果、被膜の分離などがみられず、完全に2種類の微粒子材料が混ざった被膜となっていた。これにより、被膜が複合化していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のエアロゾル発生装置は、簡易な機構で、AD法において2種類以上の微粒子材料からなる多層被膜などを、高い生産性で形成可能とするので、各種産業部品等へセラミックス被膜形成を行なうAD被膜形成装置のエアロゾル発生装置として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例に係るエアロゾル発生装置の斜視図である。
【図2】本発明の他の実施例に係るエアロゾル発生装置の斜視図である。
【図3】図2におけるエアロゾル発生部の一部断面図である。
【図4】エアロゾル発生装置における溝の回転方向断面図である。
【図5】本発明のエアロゾル発生装置を用いた被膜形成装置を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 エアロゾル発生装置
2 微粒子導入口
3 ガス導入口
4 エアロゾル導出口
5 エアロゾル発生部
6 回転テーブル
6a 溝
7 チャンバー
8 微粒子
9 微粒子収容部
10 被膜形成装置
11 真空チャンバー
12 真空ポンプ
13 外輪
14 位置決め用XYテーブル
15 対象物回転用モータ
16 ガス供給設備
17 エアロゾル噴射ノズル
18 微粒子フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子を導入する微粒子導入口と、搬送用のガスを導入するガス導入口と、前記微粒子を前記ガス中に分散させたエアロゾルを導出するエアロゾル導出口とを有するエアロゾル発生部と、内部に前記微粒子が収容された複数の微粒子収容部と、該微粒子収容部から前記微粒子導入口に前記微粒子を供給するための溝が形成された循環式輸送手段とを備えてなるエアロゾル発生装置であって、
前記微粒子が2種類以上であり、該微粒子の種類毎に前記微粒子収容部に収納され、それぞれの微粒子収容部から供給され充填された前記溝内の微粒子が、前記微粒子導入口より前記エアロゾル発生部に導入されエアロゾル化されることを特徴とするエアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記エアロゾル発生装置は、前記溝を複数形成してなることを特徴とする請求項1記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記複数の微粒子収容部は、それぞれが微粒子供給量調整手段を有し、前記溝内において、エアロゾル化される側である溝一端側から溝他端側に向けて、種類の異なる微粒子の充填比率が連続的に変化するよう、それぞれが前記溝に微粒子を供給することを特徴とする請求項1または請求項2記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記微粒子はセラミックス微粒子であり、平均粒子径が 0.1μm〜2μm であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記セラミックス微粒子は、アルミナ微粒子および窒化珪素微粒子であることを特徴とする請求項4記載のエアロゾル発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−196012(P2008−196012A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32181(P2007−32181)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】