説明

エアーフィルター清掃機構及びプロジェクター装置

【課題】安価で、効率よくフィルターに付着した塵埃を除去することができるエアーフィルター清掃機構を提供する。
【解決手段】駆動源21、移動用駆動輪20a、回転清掃体19及び集塵室24を有するエアーフィルター清掃機構3であって、駆動源21からの動力を、移動用駆動輪20a及び回転清掃体19に伝達することによって、エアーフィルター清掃機構3がフィルター8上を移動し、回転清掃体19にてフィルター8上の塵埃を除去するもので、エアーフィルター清掃機構3が、広い濾過面積を有するフィルター8上を移動するだけなので、フィルター8を有する機器全体を大型化する必要がない。また、回転清掃体19が回転しながらフィルター8上の塵埃を除去するので、塵埃除去性能が良く、また、エアーフィルター清掃機構3の移動及び回転清掃体19の回転駆動を同一駆動源21で行うので安価に製作できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に搭載されるエアーフィルター清掃機構及びそれを用いたプロジェクター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のエアーフィルター清掃機構として、送り出しリールと、前記送り出しリールと間を置いて配された巻き取りリールと、一端が前記送り出しリールに係止されると共に巻かれ、他端が前記巻き取りリールに係止されたロール状のエアーフィルターと、巻き取りリールを回転駆動する駆動手段と、エアーフィルターをファンに密接すると共にエアーフィルターの張力を一定にするためのテンショナーを備え、前記エアーフィルターの前記送り出しリールと前記巻き取りリール間に位置する部分を、機器に設けられた空冷用吸気口の前に配置して、機器の運転中に、所定の時間間隔で前記駆動手段に通電して、汚れたエアーフィルターを巻き取りリールに順次巻き取るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような従来のエアーフィルター清掃機構の構成では、エアーフィルターに付着した塵埃を除去する機構が無く、単に塵埃で目詰まりしたエアーフィルターを巻き取りリールで巻き取るだけなので、エアーフィルターが全長に渡って目詰まりしたときは、エアーフィルターを巻き取りリールごと取り外し、そのエアーフィルターを広げて掃除する必要があり、清掃作業が非常に面倒であった。また、エアーフィルターは、巻き取りリール側にのみ移動可能、すなわち一方向にしか使用できないため、長期間の使用は困難で、清掃や、交換頻度が多くなり面倒である、という問題があった。
【0004】
また、テンショナーが設けられているため、駆動手段の駆動トルクを大きくする必要があり、この為駆動手段の大型化、ひいては機器の大型化を招く、という問題がった。
【0005】
そこで、上記問題を解決するために、機器に設けられた外気取り入れ口に沿って水平方向で移動可能又は、外気取り入れ口上でしかも水平方向で回転可能に配設したプレフィルターと、前記プレフィルターを移動又は回転させるための駆動メカユニットと、前記プレフィルターに摺接し、付着した粉塵を除去するブラシと、前記プレフィルターより下流側に設けられると共に、前記プレフィルターより粒子径の小さい塵埃を捕集する第2のエアーフィルターとから構成され、前記プレフィルターに一定量の粉塵が溜まっていることを、目詰まりセンサーで感知した時、あるいは所定の時間が経った時に、駆動メカユニットでプレフィルターを移動または回転させ、その間にブラシでプレフィルターに付着した埃や粉塵を除去するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
又、従来の他のエアーフィルター清掃機構として、第1のフィルタ部と、第1のフィルタ部の吸気側に設けられたメッシュ状のスクリーンと、このスクリーンの表面に接触しながら移動して塵埃を除去するクリーニングブラシを含む第2のフィルタ部と、上記第2のフィルタ部に設けられ塵埃を回収する塵受けトレーとから構成されたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−128400号公報
【特許文献2】特開2008−065021号公報
【特許文献3】特開2005−221581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載されたような従来のエアーフィルター清掃機構は、プレフィルターから除去された塵埃を収納する集塵室が無いので、プレフィルターが搭載された機器の内部や外部が、除去された塵埃で汚れたり、また、広い濾過面積を有するプレフィルターを移動または回転させるため、製品全体が大型化するといった課題があった。
【0009】
又、上記特許文献3に記載された従来のエアーフィルター清掃機構の構成では、ワイヤ状のクリーニングブラシを単にメッシュ状のスクリーンに接触させながら移動させるだけなので、スクリーンの表面からの塵埃の除去性能が非常に悪い、という課題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、エアーフィルター清掃機構が搭載される商品を大型化すること無く、安価で、効率よくフィルターに付着した塵埃を除去すると共に、商品内部や外部を、フィルターから除去された塵埃で汚すことの無い、品質の高いエアーフィルター清掃機構及び信頼性の高いプロジェクター装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明のエアーフィルター清掃機構は、駆動源、移動用駆動輪、回転清掃体及び集塵室を有するエアーフィルター清掃機構であって、前記駆動源からの動力を、前記移動用駆動輪及び前記回転清掃体に伝達することによって、前記エアーフィルター清掃機構がフィルター上を移動し、前記回転清掃体にて前記フィルター上の塵埃を除去するもので、エアーフィルター清掃機構が、広い濾過面積を有するフィルター上を移動するだけなので、フィルターを有する機器全体を大型化する必要がない。また、回転清掃体が回転しながらフィルター上の塵埃を除去するので、塵埃除去性能が良い。また、回転清掃体を回転させながら塵埃を除去するときに、同時に除去した塵埃を集塵室に送り、収納するようにすれば、フィルターが搭載された機器の内部や外部が、フィルターから除去された塵埃で汚れることは無い。
【0012】
また、エアーフィルター清掃機構の移動及び回転清掃体の回転駆動を同一駆動源にて実施するのでエアーフィルター清掃機構を安価に製作できる。また、エアーフィルター清掃機構内に、フィルター上の塵埃の除去から集塵にかかる一連の機能が集約されている為、製作時の組立完成及び検査が、同一場所で実施でき、品質の高いエアーフィルター清掃機構が供給できる。
【0013】
また、本発明のプロジェクター装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアーフィルター清掃機構を備えたもので、安価で、組み立て性に優れ、しかもフィルター上の塵埃除去性能にも優れたエアーフィルター清掃機構を搭載することで、安価で高品質、高性能のプロジェクター装置を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエアーフィルター清掃機構は、安価で、効率よくエアーフィルターに付着した塵埃を除去することができ、また、本発明のプロジェクター装置は、安価で、信頼性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)本発明の第1の実施例におけるエアーフィルター清掃機構を搭載したプロジェクター装置の外観斜視図、(b)図1(a)のA−A断面図
【図2】(a)同エアーフィルター清掃機構を内蔵した清掃ユニットの外観斜視図、(b)同清掃ユニットの斜視図(蓋を開けている状態)
【図3】同エアーフィルター清掃機構の斜視図
【図4】(a)同エアーフィルター清掃機構の平面断面図、(b)図4(a)のB−B部分断面図、(c)図4(a)のC−C断面図
【図5】同エアーフィルター清掃機構の裏面図
【図6】(a)〜(d)同エアーフィルター清掃機構の設置例を示す図
【図7】同エアーフィルター清掃機構の他の例を示す断面図
【図8】本発明の第2の実施例におけるエアーフィルター清掃機構の断面図
【図9】(a)本発明の第3の実施例におけるエアーフィルター清掃機構の内部構造を示す要部平面図(2つのギアA、Bが噛み合った状態)、(b)図9(a)のE−E矢視図、(c)図9(a)のギアA、Bの状態図、(d)同エアーフィルター清掃機構の内部構造を示す要部平面図(2つのギアA、Bが離れた状態)、(e)図9(d)のE’−E’矢視図、(f)図9(d)のギアA、Bの状態図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、駆動源、移動用駆動輪、回転清掃体及び集塵室を有するエアーフィルター清掃機構であって、前記駆動源からの動力を、前記移動用駆動輪及び前記回転清掃体に伝達することによって、前記エアーフィルター清掃機構がフィルター上を移動し、前記回転清掃体にて前記フィルター上の塵埃を除去するもので、エアーフィルター清掃機構が、広い濾過面積を有するフィルター上を移動するだけなので、フィルターを有する機器全体を大型化する必要がない。また、回転清掃体が回転しながらフィルター上の塵埃を除去するので、塵埃除去性能が良い。また、回転清掃体を回転させながら塵埃を除去するときに、同時に除去した塵埃を集塵室に送り、収納するようにすれば、フィルターが搭載された機器の内部や外部が、フィルターから除去された塵埃で汚れることは無い。
【0017】
また、エアーフィルター清掃機構の移動及び回転清掃体の回転駆動を同一駆動源にて実施するのでエアーフィルター清掃機構を安価に製作できる。また、エアーフィルター清掃機構内に、フィルター上の塵埃の除去から集塵にかかる一連の機能が集約されている為、製作時の組立完成及び検査が、同一場所で実施でき、品質の高いエアーフィルター清掃機構が供給できる。
【0018】
第2の発明は、特に、第1の発明の回転清掃体を収納する回転清掃体収納室を設け、前記回転清掃体により除去された塵埃を保管する集塵室を、前記回転清掃体収納室に隣接して設け、前記回転清掃体に付着した塵埃を除去する除塵体を前記集塵室へ分離収納させるよう前記集塵室の入口近傍に設けると共に、前記集塵室に保管された塵埃が前記回転清掃体収納室に戻るのを防止する戻り防止体を設けたもので、回転清掃体にてフィルター上から除去された塵埃は、除塵体により回転清掃体から集塵室に確実に分離除去される為、更にフィルター上の塵埃除去性能が向上する。また、集塵室に集塵されている塵埃は、エアーフィルター清掃機構の設置方向にかかわらず、戻り防止体の作用により、塵埃のエアーフィルター清掃機構外への流出が阻止される為、商品品質の向上と、商品の設置方向の規制が無くなり商品価値が向上する。
【0019】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明の回転清掃体によりフィルター上から除去され、前記回転清掃体に付着した塵埃が、前記回転清掃体の1回転未満にて、除塵体にて除去され、集塵室へ分離収納されるもので、回転清掃体にてフィルター上から除去された塵埃は、1回転してフィルター上に再付着する事が無く、また、除塵体により集塵室に分離収納される為、回転清掃体のフィルター上からの塵埃除去性能が格段に向上する。また、回転清掃体にてフィルター上から除去された塵埃は、1回転未満にて除塵体により集塵室に分離収納される為、塵埃が回転清掃体に付着している時間が極めて短く、塵埃の保持性能が向上し、集塵率が向上する。
【0020】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の移動用駆動輪を駆動させる為のシャフトを、フィルターの全幅にわたって横断するよう回転自在にエアーフィルター清掃機構に一体的に設けたもので、エアーフィルター清掃機構がフィルターを横断し、両端近傍の各移動用駆動輪がシャフトで連結されている為、両移動用駆動輪の回転が同期化され、スムーズにエアーフィルター清掃機構が移動でき、静音化等の性能向上が図れる。さらに、シャフトがエアーフィルター清掃機構の筐体を横断して構成されている為、筐体の撓み、捩れ等の剛性の補強等に利用でき、商品の信頼性向上が図れる。
【0021】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか一つの発明のフィルター上に付着した塵埃を回転しながら除去する回転清掃体は、エアーフィルター清掃機構が移動する往路においては回転駆動し、復路においては回転させない構造、或いは、復路においては回転駆動し、往路においては回転させない構造を有するもので、フィルター上の塵埃に対して、回転清掃体の回転による塵埃のピックアップ(掻き上げ力)性能と、回転清掃体の停止による塵埃の掃き寄せ力が交互に作用する為、塵埃のフィルターからの剥離除去性能が向上する。
【0022】
第6の発明に係るプロジェクター装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアーフィルター清掃機構を備えたもので、安価で、組み立て性に優れ、しかもフィルター上の塵埃除去性能にも優れたエアーフィルター清掃機構を搭載することで、安価で高品質、高性能のプロジェクター装置を提供できる。
【0023】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。尚、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
図1(a)は、本発明の第1の実施例におけるエアーフィルター清掃機構を搭載したプロジェクター装置の外観斜視図、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図、図2(a)は、同エアーフィルター清掃機構を内蔵した清掃ユニットの外観斜視図、図2(b)は、同清掃ユニットの斜視図(蓋を開けている状態)、図3は、同エアーフィルター清掃機構の斜視図、図4(a)は、同エアーフィルター清掃機構の平面断面図、図4(b)は、図4(a)のB−B部分断面図、図4(c)は、図4(a)のC−C断面図、図5は、同エアーフィルター清掃機構の裏面図、図6は、同エアーフィルター清掃機構の設置例を示す図である。
【0025】
図1、2において、清掃ユニット1は、プロジェクター装置2に着脱自在に装着される清掃ユニットで、内部に本実施例におけるエアーフィルター清掃機構3が組み込まれている。プロジェクター装置2の本体2aの前部には、画像を投射する投射レンズを有する投射体13が設けられ、本体2aの上面には、本体2a内に外気を取り入れるための開口部2bが複数設けられている。
【0026】
本体2aの内部には、多数の電子部品等から成り投射体13により投射される画像を光学的に処理する画像表示素子体4と、画像表示素子体4に電力を供給する電源基板体5と、本体2a内の温度や圧力等を検知するセンサー6と、プロジェクター装置2を制御する制御基板12が設けられている。
【0027】
本体2aの側壁2cには、排気口2dが設けられ、更に本体2aの内部の排気口2dの近傍には、モータ9で回転駆動される冷却ファン10が設けられている。
【0028】
本体2aの清掃ユニット1を受ける面2fに開口部2gが形成されている。15は、プロジェクター装置2を操作するための操作スイッチで、16は、LEDなどから構成され、プロジェクター装置2の運転状態を表示する告知部である。
【0029】
次に、図1〜5を用いて清掃ユニット及び本実施の形態におけるエアーフィルター清掃機構3の詳細について述べる。
【0030】
清掃ユニット1の底面には、枠体7が形成された開口1bが設けられ、その枠体7にフィルター8が一体的に設けられ、清掃ユニット1を、プロジェクター装置2の側壁2cに設けた挿入口2eより挿入し装着すると、フィルター8が、本体2aに設けた開口部2gを気密に覆うようになっている。
【0031】
本実施例におけるエアーフィルター清掃機構3(以下「清掃機構3」という)は、フィルター8に着脱自在に載置され、自走しながらフィルター8の表面に付着した塵埃17を除去するものである。
【0032】
本実施例では、清掃機構3の長さを、清掃ユニット1の開口1bの幅寸法よりわずかに小さい寸法に設定しているので、清掃機構3をフィルター8上に載置するだけで、清掃機構3の底部の両端に設けた後述の移動用駆動輪20aが、フィルター8の両端に延設されたラックギア11に確実に噛み合うようになっている。
【0033】
14は、一端(図2(b)では、右端)が、清掃ユニット1のユニット本体1aに回動自在に設けられると共に中央に開口14aを有した蓋で、閉じると、蓋14の裏面に設けたリブ14bで、清掃機構3を摺動自在に支持すると共に、プロジェクター装置2から清掃ユニット1を取り出した時に、フィルター8上に載置された清掃機構3が、ユニット本体1aから不用意に外れるのを防止するためのものである。
【0034】
清掃機構3には、回転ブラシ状で、一端にギアA19aを備えフィルター8に付着した塵埃17を除去する回転清掃体19と、両端にラックギア11と噛み合う移動用駆動輪20aを有し、一側に、ギアA19aと噛み合うギアB20bと傘歯車A20cを有するシャフト20と、モータなどからなりその回転軸21aに、傘歯車A20cに噛み合う傘歯車B21bを有する駆動源21と、駆動源21の電源となるバッテリー22が内蔵されている。
【0035】
清掃機構3の内部は、大きく、回転清掃体19が収納された回転清掃体収納室23と、回転清掃体収納室23に隣接すると共に回転清掃体19で除去された塵埃17を収納保管する集塵室24とに二分されている。回転清掃体収納室23と集塵室24との境には、回転清掃体19の回転方向に沿うように傾斜すると共に先端が回転清掃体19に摺接し、集塵室24に収納保管された塵埃17が回転清掃体収納室23に戻るのを防止する戻り防止体25が、回転清掃体19と平行に延設されている。本実施例では、戻り防止体25は、清掃機構3の内壁に一体に形成されている。
【0036】
清掃機構3の裏面には、集塵室24を自在に開閉する蓋体27と、回転清掃体19が臨む開口3aが設けられている。
【0037】
また、本実施例では、蓋体27に、先端が櫛歯状で、かつ回転清掃体19に食い込み、回転清掃体19に絡みついた塵埃17を除去するための除塵体26が、回転清掃体19と平行に、一体的に形成されている。
【0038】
29は、清掃機構3の裏面の、それぞれの移動用駆動輪20aと反対側に回転自在に設けられた自由歯車で、移動用駆動輪20aと同一高さに位置し、清掃機構3の移動時にラックギア11に噛み合って、清掃機構3がスムーズに移動することができるようにするためのものである。
【0039】
以上のように構成された本実施例におけるエアーフィルター清掃機構と、それを搭載したプロジェクター装置の動作、作用は、以下の通りである。
【0040】
操作スイッチ15を操作することにより、プロジェクター装置2を使用することができる。本実施例におけるプロジェクター装置2は、一般的に、図6(a)に示すように開口部2bが上を向くようにして、机やテーブルの上に置かれるが、図6(b)に示すようにプロジェクター装置2を天井からつるして床面に投射するようにしたり、図6(c)に示すように、プロジェクター装置2の投射体13と反対側の面を下にして机、テーブル或いは床において、天井などに投射したり、更には、図6(d)に示すように、本体2aをひっくり返して使用しても良い。
【0041】
プロジェクター装置2を運転している間、あるいは、使用直後の所定の冷却期間の間は、モータ9で回転駆動される冷却ファン10により、外気が、本体2aの開口部2b、清掃機構3の開口14a、清掃ユニット1の開口1bに設けたフィルター8を順に通って、本体2a内に吸引され、画像表示素子体4や電源基板体5、制御基板12などの発熱部品を冷却し、排気口2dより外部に排出される。
【0042】
外気が、フィルター8を通過するときに、その外気に含まれた塵埃は、フィルター8で捕集されるので、塵埃が本体2a内に入ることは無い。
【0043】
このようにして、プロジェクター装置2を長期間使用していると、フィルター8が次第に塵埃で目詰まりし、外気が本体2a内に入り難くなって、本体2a内の発熱部品の冷却効果が低下してくるが、本実施例では、本体2a内の温度や圧力を検知するセンサー6を設けて、空気の流れが悪くなって本体2a内の温度が所定の温度を超えたり、空気が本体2a内に入り難くなって、本体2a内の空気圧力が所定の値以下になったことを検知すると、制御基板12より信号が発信され、その信号を清掃機構3に内蔵された受信機(図示せず)が受信すると、駆動源21が動作するようになっている。
【0044】
駆動源21が動作すると、その動力が傘歯車B21bを経て傘歯車A20cに伝達され、シャフト20と共に、ラックギア11に噛み合った移動用駆動輪20aが回転し、清掃機構3が、図2中の白抜き矢印方向に移動し始める。同時に、動力が、ギアB20bを介してギアA19aに伝わり、回転清掃体19が回転する。回転清掃体19が回転すると、フィルター8に付着した塵埃17が掻き上げられ、掻き上げられた塵埃17は、回転清掃体収納室23を通って、集塵室24に送られる。又、回転清掃体19に絡みついた塵埃17は、除塵体26により梳きとられる。
【0045】
集塵室24に溜まった塵埃17を廃棄するときは、プロジェクター装置2の挿入口2eより清掃ユニット1を取り出し、蓋14を開けて、清掃機構3を取り出し、その底部に設けた蓋体27を開けるだけで簡単に済ませることができる。
【0046】
以上のように本実施例によれば、エアーフィルター清掃機構3が、広い濾過面積を有するフィルター8上を移動するだけなので、フィルター8を有する機器全体を大型化する必要がない。また、回転清掃体19が回転しながらフィルター8上の塵埃17を除去するので、塵埃除去性能が良い。また、回転する回転清掃体19でフィルター8上から除去された塵埃17は、除塵体26により回転清掃体19から集塵室24に確実に分離除去される為、フィルター8が搭載された機器の内部や外部が、フィルター8から除去された塵埃17で汚れることは無い。
【0047】
特に、本実施例では、先端が回転清掃体19に摺接する戻り防止体25を設けているので、プロジェクター装置2の使用時の向きがどのようになっても、集塵室24に一旦入った塵埃17が、回転清掃体収納室23に戻り、開口3aから外部に漏れ出て、塵埃17がフィルター8に再付着したり、プロジェクター装置2内部にこぼれたり、テーブルなどを汚すことが無い。
【0048】
また、エアーフィルター清掃機構3の移動及び回転清掃体19の回転駆動を一つの駆動源21で行っているので、エアーフィルター清掃機構3を、小型にしかも安価に製作できる。また、エアーフィルター清掃機構3内に、フィルター8上の塵埃17の除去から集塵にかかる一連の機能が集約されている為、エアーフィルター清掃機構3の製作時の組立完成及び検査が、同―場所で実施でき、品質の高いエアーフィルター清掃機構3を供給することができる。
【0049】
また、本実施例では、戻り防止体25が、清掃機構3の内壁に一体に形成されているので、部品点数が削減され、組み立て工数も減り、製造コストの低減を図ることができる。
【0050】
なお、上記実施例では、戻り防止体25を清掃機構3の内壁に一体に形成したが、図7に示すように、戻り防止体30を、清掃機構3の内壁に取り付けられる別部品とし、それを、弾性に富んだ材料でブレード状或いはリップ状に形成したり、弾性に富んだシート部材、発泡体あるいは布部材で形成するようにすれば、万が一大きな塵埃17が回転清掃体19で掻き取られても、戻り防止体30が容易に撓むので、塵埃17の集塵室24への移動が確実に行われる。また、戻り防止体30が容易に撓みやすいので、戻り防止体30が回転清掃体19に摺接していても、回転清掃体19に加わる負荷が軽減され、回転清掃体19を駆動する駆動源21の小型化を図ることもできる。
【0051】
又、上記実施例では、回転清掃体19に絡みついた塵埃17を梳く除塵体26を清掃機構3の蓋体27に一体で形成しているので、部品点数、組み立て工数が低減し安価に構成することができ、また、蓋体27を開けたときに、除塵体26の汚れやすい先端部分が外部に露出するので、その部分の清掃も容易となる。
【0052】
また、本実施例では、図4(c)に示すように、回転清掃体19のA点でフィルター8から除去された塵埃17は、そのまま回転清掃体19の表面に付着したまま、反時計方向に約270度回転すると、除塵体26の先端が位置するB点に達し、そこで除塵体26により、回転清掃体19の表面に付着した塵埃17が除去され、集塵室24内に収納されるようになっている。すなわち本実施例では、フィルター8上から除去され回転清掃体19に付着した塵埃17が、回転清掃体19が1回転し終わる前に、除塵体26にて除去され集塵室24へ分離収納されるので、回転清掃体19でフィルター8上から除去された塵埃17が、1回転してフィルター8上に再付着する事が無く、また、除塵体26により集塵室24に分離収納される為、回転清掃体19のフィルター8上からの塵埃除去性能が格段に向上する。
【0053】
しかも、回転清掃体19にてフィルター8上から除去された塵埃17は、1回転未満で除塵体26により集塵室24に分離収納される為、塵埃17が回転清掃体19に付着している時間が極めて短く、塵埃17の保持性能が向上し、集塵率が向上する。
【0054】
また、本実施例では、左右の移動用駆動輪20aに連結されると共にそれらを回転駆動するシャフト20を、フィルター8の略全幅にわたって横断するよう回転自在に、しかもエアーフィルター清掃機構3に一体的に設けているので、両移動用駆動輪20aの回転が同期化され、スムーズにエアーフィルター清掃機構3がフィルター8上を移動でき、静音化等の性能向上が図れる。さらに、シャフト20がエアーフィルター清掃機構3の筐体を横断して構成されている為、筐体の撓み、捩れ等の剛性の補強等に利用でき、商品の信頼性向上が図れる。
【0055】
なお、上記実施例では、清掃機構3が動作するタイミングとして、センサー6が、本体2a内の温度が高かったり、圧力が低下したときに動作するようにしたが、プロジェクター装置2の所定の累積使用時間毎に、或いは、プロジェクター装置2の電源をOFFする都度、清掃機構3を自動的に動作させるようにしても良い。
【0056】
上記実施例では、フィルター8を清掃ユニット1の底面に設けた開口1bに形成したが、プロジェクター装置2の本体2a側に設けても良い。この場合は、開口1bを全開口とし、清掃機構3は、開口1bを移動しながら、本体2aに設けたフィルター8を清掃することになる。
【実施例2】
【0057】
図8は、本発明の第2の実施例におけるエアーフィルター清掃機構の断面図である。なお、上記第1の実施例におけるエアーフィルター清掃機構、プロジェクター装置と同一部品には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図8において、本実施例におけるエアーフィルター清掃機構33(以下「清掃機構33」と称す)は、集塵室24を、第1の集塵室24aと第2の集塵室24bに分割し、集塵室24に保管された塵埃17が回転清掃体収納室23に戻るのを防止する戻り防止体34を回動自在に設け、戻り防止体34の回動時に、第1の集塵室24aに収納された塵埃17を、第2の集塵室24bに送り出すようにしたものである。本実施例では、第1の集塵室24aと第2の集塵室24bとを、除塵体35で区画し、第1の集塵室24aを除塵体35の上側に形成している。
【0059】
以上のように構成された本実施例における清掃機構33の動作、作用は以下の通りである。
【0060】
通常は、戻り防止体34の先端は、実線で示すように、回転清掃体19に摺接しており、回転清掃体19の回転に伴い、フィルター8から除去された塵埃17は第1の集塵室24aに溜まる。そして図示しない駆動手段で、戻り防止体34を間欠的に回動(図8では、反時計方向に回動)、すなわち戻り防止体34を揺動させて、第1の集塵室24aに溜まった塵埃17を、第2の集塵室24bに送るようにしたものである。
【0061】
以上のように本実施例によれば、集塵室24が2つに分割されているので、塵埃17の外部への漏れをより確実に防止することができると共に、第1の集塵室24aの塵埃17を第2の集塵室24bに移動させるための専用の部品が不要なので、組み立て工数や製造コストが上昇することもない。
【実施例3】
【0062】
図9(a)は、本発明の第3の実施例におけるエアーフィルター清掃機構の内部構造を示す要部平面図(2つのギアが噛み合った状態)、図9(b)は、図9(a)のE−E矢視図、図9(c)は、図9(a)のギアA、Bの状態図、図9(d)は、同エアーフィルター清掃機構の内部構造を示す要部平面図(2つのギアが離れた状態)、図9(e)は、図9(d)のE’−E’矢視図、図9(f)は、図9(d)のギアA、Bの状態図である。なお、上記第1、第2の実施例におけるエアーフィルター清掃機構と同一部品には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図9において、3cは、エアーフィルター清掃機構46の回転清掃体19の軸19b及びシャフト20のそれぞれの端部を回転自在に支持する支持壁で、特に、本実施例では、回転清掃体19の軸19bの端部を、支持壁3cに設けた長孔3dで回転自在に支持するようにして、回転清掃体19が前後方向に移動可能に設けたものである。47は、エアーフィルター清掃機構46の一部に設けられ、回転清掃体19のギアA19aに係脱自在に係止するストッパー片である。
【0064】
なお、他の構成は上記第1の実施例におけるエアーフィルター清掃機構と同一なので、共通する各部の説明は省略する。
【0065】
以上のように構成された本実施の形態におけるエアーフィルター清掃機構46の動作、作用を以下に説明する。
【0066】
まず図9(a)〜(c)において、フィルター8上の塵埃17を除去するときは、駆動源21(図示せず)を動作させて、シャフト20を時計方向に回転させる。これにより、シャフト20の端部に設けた移動用駆動輪20aがラックギア11上で時計方向に回転して、エアーフィルター清掃機構46が右方向への移動を開始する。このとき、回転清掃体19は、フィルター8の表面に置かれた状態なので、エアーフィルター清掃機構46が右に移動する際、エアーフィルター清掃機構46によって左側から押されることになる。
【0067】
これにより、シャフト20に設けたギアB20bが、回転清掃体19のギアA19aに噛み合い、回転清掃体19を反時計方向に回転させる。このようにして、エアーフィルター清掃機構46が右方向に移動する間、回転清掃体19が反時計方向に回転しながら、フィルター8上の塵埃17を除去し、除去された塵埃17は、同時に集塵室24内に回収される。なお、エアーフィルター清掃機構46が右方向に移動している間は、回転清掃体19の軸19bが長孔3d内で左側に寄っているので、ギアA19aとストッパー片47は離れている。
【0068】
次に、図9(d)〜(f)を用いて、エアーフィルター清掃機構46が左方向に、すなわち元の位置に戻る際の動作を説明する。
【0069】
エアーフィルター清掃機構46が右方向に移動して、図示しない検知手段で、エアーフィルター清掃機構46がフィルター8の右端に達したことを検知すると、自動的に駆動源21(図示せず)が逆転し、それに伴い移動用駆動輪20aが反時計方向に回転し、エアーフィルター清掃機構46が左方向への移動を開始する。このとき、回転清掃体19がフィルター8上に置かれた状態で、エアーフィルター清掃機構46が左方向に移動するので、回転清掃体19の軸19bが、支持壁3cに設けた長孔3d内で右方向に移動し、シャフト20に設けたギアB20bと回転清掃体19のギアA19aとの噛み合いが外れ、同時に、回転清掃体19の軸19bが長孔3d内で右方向に移動することにより、回転清掃体19のギアA19aに、ストッパー片47の先端が係止し、回転清掃体19の回転が阻止される。
【0070】
このように、エアーフィルター清掃機構46が左方向に移動するときは、回転を止めた回転清掃体19が、フィルター8上で引きずられることになるので、フィルター8上に残った塵埃17を左方向に掃き寄せることになる。この時、掃き寄せられた塵埃は、回転清掃体19の中心の真下近傍かあるいは少し遅れた位置となる。その後、再びエアーフィルター清掃機構46が右方向に移動する時、回転清掃体19が再び回転するので、掃き寄せられた塵埃17は取り残しなくピックアップされる。この時、1回転未満で除塵体26にて塵埃17を除去させれば、フィルター8に塵埃17が再付着することなく、構造上新規な効果が発生する。
【0071】
すなわち本実施例によれば、フィルター8上の塵埃17に対して、回転清掃体19の回転による塵埃17のピックアップ(掻き上げ力)性能と、回転清掃体19の回転停止による塵埃17の掃き寄せ力が交互に作用する為、塵埃17のフィルター8からの剥離除去性能が大幅に向上するものである。
【0072】
なお、上記実施例では、エアーフィルター清掃機構46が移動する往路において、回転清掃体19を回転駆動し、復路において、回転させないようにしたが、逆に、回転清掃体19を、復路において回転駆動し、往路において回転させないようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明に係るエアーフィルター清掃機構は、エアーフィルター清掃機構が搭載される商品を大型化すること無く、安価で、効率よくフィルターに付着した塵埃を除去すると共に、商品内部や外部を、フィルターから除去された塵埃で汚すことの無い、品質の高いもので、プロジェクター装置に限らず、塵埃を捕捉するフィルターを有する各種機器にも広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0074】
1a 開口
2 プロジェクター装置
3、33、46 エアーフィルター清掃機構(清掃機構)
8 フィルター
17 塵埃
19 回転清掃体
20a 移動用駆動輪
21 駆動源
23 回転清掃体収納室
24 集塵室
25、30、34 戻り防止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源、移動用駆動輪、回転清掃体及び集塵室を有するエアーフィルター清掃機構であって、前記駆動源からの動力を、前記移動用駆動輪及び前記回転清掃体に伝達することによって、前記エアーフィルター清掃機構がフィルター上を移動し、前記回転清掃体にて前記フィルター上の塵埃を除去することを特徴とするエアーフィルター清掃機構。
【請求項2】
回転清掃体を収納する回転清掃体収納室を設け、前記回転清掃体により除去された塵埃を保管する集塵室を、前記回転清掃体収納室に隣接して設け、前記回転清掃体に付着した塵埃を除去する除塵体を前記集塵室へ分離収納させるよう前記集塵室の入口近傍に設けると共に、前記集塵室に保管された塵埃が前記回転清掃体収納室に戻るのを防止する戻り防止体を設けたことを特徴とする請求項1に記載のエアーフィルター清掃機構。
【請求項3】
回転清掃体によりフィルター上から除去され、前記回転清掃体に付着した塵埃が、前記回転清掃体の1回転未満にて、除塵体にて除去され、集塵室へ分離収納されることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアーフィルター清掃機構。
【請求項4】
移動用駆動輪を駆動させる為のシャフトを、フィルターの全幅にわたって横断するよう回転自在にエアーフィルター清掃機構に一体的に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアーフィルター清掃機構。
【請求項5】
フィルター上に付着した塵埃を回転しながら除去する回転清掃体は、エアーフィルター清掃機構が移動する往路においては回転駆動し、復路においては回転させない構造、或いは、復路においては回転駆動し、往路においては回転させない構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアーフィルター清掃機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアーフィルター清掃機構を備えたプロジェクター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−255288(P2011−255288A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130651(P2010−130651)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】