説明

エアーボートの底板

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は折り畳みのできるエアーボートの底板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、エアーボート(ゴムボート)の底板としては、■複数の板片と接続杆とから構成され、接続杆の片側は板片に固着され、もう片側は板片が係合できるように形成されており、各板片の間に上記接続杆を介在させることにより上記板片同士をジョイントして用いることができるようにしたもの(実公昭58−9833号)、■複数の板片と、各板片をジョイントするための雌雄両横縁枠とから構成され、各板片の端部に相互に嵌合可能な雌横縁枠と雄横縁枠が固着されており、上記板片の両横縁枠同士を嵌合させることによって一枚の底板として用いることができるようにしたもの(実開昭60−95389号)、また■複数の板片を柔軟な連結シートで連結して該連結シートの部分で折り畳みできるようにしたもの(実開昭61−53291号)が公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、■の底板は、底板を構成する各板片(接続杆が固着されたものも含める)が繋がっていないためバラバラに離れ易く、組立てや収納の際の取り扱いが不便である。また■の底板についても雌横縁枠や雄横縁枠が固着された板片が繋がっていないために上記と同様な不都合がある。また■の底板は、板片が連結シートで一連に繋がっているので上記の欠点はないものの、ボートの底に敷設した場合、物を底板の上に乗せると底板は連結シートの部分で容易に折れ曲がるため安定性に欠けるという欠点があった。また板片は連結シートに固着されているため、一部の板片又は連結シートを取り外す必要が生じた時にこれらを取り外すことができず部品交換等が不可能であるという欠点があった。
【0004】本発明は上記の点に鑑みなされたもので、上記従来の欠点を解消し、折り畳むことができ、しかも構成部材が必要時以外はバラバラに離れることがなく組立てや収納の際の取り扱いが容易であると共に必要時には構成部材を取り外すことができるエアーボートの底板を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、(1)複数の底板片を、該底板片のそれぞれの間を跨がせて可撓性の連繋用部材を設け該連繋用部材によって一連に連繋してなるエアーボートの底板であって、上記底板の連繋用部材に沿う方向に互いに相隣り合う底板片の上記相隣り合う部位に、相互に嵌合可能であり、嵌合させたときに連接部位で折れ曲がらない連接用部材がそれぞれ装着されており、上記連繋用部材は、相隣り合う連接用部材又は相隣り合う連接用部材の底板片への装着部に取り外し可能に装着されていることを特徴とするエアーボートの底板、(2)連繋用部材が、底板の方向とは逆の方向への撓み癖又は弛み癖が付けられている上記(1)記載のエアーボートの底板を要旨とする。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1〜図2は本発明エアーボートの底板の一例を示す図であり、図1はエアーボートの底板の概略図、図2は図1の要部のA−A線に沿う縦断面拡大図である。本発明エアーボートの底板1は、図1に示すように、複数の底板片2(21、22、23、24)のそれぞれの間に跨がって可撓性の連繋用部材3が設けられ、該連繋用部材3によって上記底板片2が一連に連繋されている。
【0007】本実施例においては、図1に示すように、連繋用部材3にはその両端に連接用部材4(41、42)がそれぞれ装着されている。そして相隣り合う底板片21、22はそれぞれ上記連接用部材41、42に装着されていて、底板片21と22とはそれぞれ連接用部材41、42を介して連繋用部材3によって間接的に連繋されている。尚、図中5はエアーボート本体、6は把手部、7はボート後部に設けられたトランサム板、8は先端側の底板片2をボート先端部に位置固定するためのストッパー、dは連接部位をそれぞれ表す。
【0008】連繋用部材3の連接用部材41、42への装着の1態様としては、例えば図2に示すように、連接用部材41、42の一部に開口を有する係止部a1、a2を設けられ、また連繋用部材3の両端に玉渕31、32を設けられていて、該玉渕31、32を上記係止部a1、a2に挿入されて係止されることにより連接用部材41と42とが連繋されている。玉渕31、32と係止部a1、a2の開口の大きさや形は、玉渕31、32を係止部a1、a2に挿入でき且つ必要に応じて該係止部から取り外すこともできるように考慮されている。上記係止部は互いに隣接する連接用部材の係止部の位置と相対する位置であれば、底板1の上面に相当する位置でも下面に相当する位置でも或いは上下面の両方に設けてもよいが、底板1の下面に設けた方が底板1の表面が平滑になるので底板1の上に人が乗った時に違和感を与えず好ましい。尚、連繋用部材が表面柔軟な素材からなるものであれば、底板を連接用部材の係止部が上面側になるようにしてボート本体に敷設しても、上記係止部は表面柔軟な連繋用部材によって覆われているので触感をあまり低下させない。
【0009】連接用部材41、42は、その片側端面には断面略コ(逆さコ)字状の底板片挾持部b1、b2が設けられており、該底板片挾持部b1、b2の底板片当接面には断面鋸歯状の凹凸が形成されていて、上記底板片挾持部b1、b2によって底板片21、22を確実に挾持することができると共に、必要に応じて底板片21、22を自在に着脱できるように構成されている。
【0010】また連接用部材41、42の上記底板片挾持部b1、b2とは反対側の端面にはそれぞれ凹条が設けられた当接部c1、凸条が設けられた当接部c2がそれぞれ設けられており、上記当接部c1とc2とは互いに嵌合可能であり、当接部c1とc2とを嵌合させた時には連接用部材41と42との連接部位dでは折れ曲がることがない。当接部c1、c2の形態としては上記したものに限られず、当接部c1とc2とが嵌合可能でありかつ上記両者を嵌合させた時に底板1が連接部位dで折れ曲がらないような形態であればよい。
【0011】連繋用部材3は、図2に示すように、少なくとも上記連接用部材41と42との嵌合を外し、連繋用部材3の部分で折り曲げることによって底板1の折り畳みが可能であることが必要である。連繋用部材3が非伸縮性の材質からなる場合であって、図中矢印e方向に折り畳む場合は、連繋用部材3の長さが図中Lより僅かに短い程度かそれより長くなるように調節して上記条件を満足するようにすればよく、また上記と逆方向に折り畳む場合はそれに応じた長さにすればよい。本発明においては連繋用部材3としては伸縮性を有するものであるのが好ましい。連繋用部材3として伸縮可能な材質を用いた場合には連繋用部材3の長さは上記Lに制約されず、Lより短くてもよく、また勿論それ以上でもよい。
【0012】本発明において、連繋用部材3の連接用部材41、42への装着の別の例としては、図3に示すように、連繋用部材3はその端部がそれぞれ連接用部材41、42と底板片21、22との間に挟まれるようにして設けられてもよい。このような場合は、連接用部材には係止部は不要である。連繋用部材3の端部が挟み込まれる位置は、連接用部材41と42との嵌合を妨害しないような位置であれば、前記と同様、底板1の上面に相当する位置でも下面に相当する位置でも或いは上下面の両方に設けてもよい。尚、連繋用部材3と連接用部材41、42とが上記のように連繋されてなる場合は、底板の連繋用部材が設けられている側の面を表側(上側)にしてボートに敷設しても、人に凹凸の触感からくる違和感を与えないので、敷設の際、表裏方向に注意する煩わしさがない。更に、連繋用部材が表面柔軟な素材からなるものであれば、連繋用部材が底板の表側になっても触感をあまり低下させない。
【0013】本発明においては、連繋用部材3及び連接用部材4は、図1に示したように、底板片2の全幅に亘って設けられてもよく、又一部箇所に設けられてもよい。また一部箇所に設けられる場合は、図4に示すように、1つの連接部位(例えば図中矢印dの連接部位)当たり1対(同図(a))でも複数対(同図(b)でもよい。
【0014】本発明において、連繋用部材としては可撓性を有するものが用いられ、例えばPVCシート、PVCターポリン等の合成樹脂製のシート、編織布、ゴム引布、ゴムシート等を用いることができる。
【0015】また底板片、及び連接用部材としては、容易に変形しないようなものであれば如何なる材質のものでも使用可能であり、例えばアルミニウムまたはその合金等の各種金属材料、各種木材、各種プラスチック、ゴム等を用いることができるが、比較的軽量のものが好ましい。
【0016】本発明においては、連繋用部材の中程部が底板の方向とは逆の方向に、撓むか弛むことがし易いように、連繋用部材に底板の方向とは逆の方向への撓み癖或いは弛み癖が付けられているのが好ましい。連繋用部材がこのように構成されていると、折り畳まれていた底板を延ばして組み立てる際に、相隣合う底板片の間において、各底板片に設けられている連接用部材の間に連繋用部材を挟み込んでしまう虞れがなく、組立作業をスムーズに行なうことができる。
【0017】上記した連繋用部材の撓み癖或いは弛み癖は、例えば次のような手段によって付与することができる。即ち、図6に示すように、連繋用部材3の任意の一部位を底板の方向とは逆の方向に摘出したように折曲した形態の摘出様部33を形成しておけば、該摘出様部33の摘出基部fにおいては、屈曲させられている連繋用部材3が元に戻ろうとして常に上記摘出様部33を底板の方向とは逆の矢印g方向に押し出す力が働いているため、摘出様部33は連繋用部材3の両端に設けられた連接用部材41と42の間に挟まれる虞れがない。この効果は、図6中において、連繋用部材3の長さが、連接用部材41、42間の長さによって規定される長さLよりも著るしく長い場合においてより顕著に得られるものである。
【0018】上記摘出様部33は、例えば図7に示すように、■連繋用部材3の略中央部を底板の方向とは逆の方向に摘出してその先端に折り癖9を設ける(図7(a))、■連繋用部材3の略中央部を底板の方向とは逆の方向に摘出してその基部f付近をミシンを用いた縫製等の縫着手段で縫着(図中10はミシン糸等の縫製用糸である。)する(図7(b))、■連繋用部材3の略中央部を底板の方向とは逆の方向に摘出して摘出部位における連繋用部材3の積層箇所の層間に接着剤11を設けて摘出部位において屈曲された連繋用部材3を積層接着する(図7(c))等のようにして構成することができる。また、上記■〜■のいずれか2乃至3種の手段を併用して摘出様部33を構成してもよい。
【0019】上記■の手段を採用する場合は、連繋用部材3としては、未加硫ゴム引布、ゴムシート等の折り癖の付き易い部材で構成される。また■、■の手段を採用する場合においても連繋用部材3としては折り癖の付き易い部材が用いられるのがより好ましいが、特にそれに限られるものではない。また■の手段を採用する場合は接着剤によって接着可能な、ゴム、PVC等の部材が用いられる。接着剤としてはゴム用接着剤、軟質ビニール用接着剤等の従来公知の接着剤が使用可能である。
【0020】次に、本発明エアーボートの底板1を使用する場合について、図1を用いて説明する。エアーボートの底に敷設された時の状態と同じ状態の、本発明エアーボート1の底板を折り畳むには、まず把手孔6を利用して底板片2相互の各連接部位dにおいて、各底板片2を21から24の順で順次底板1の前後方向にズラして連接用部材41、42を離間させ、連接用部材41と42との嵌合を外し、図1に示した如き状態とする。次に底板1を連繋用部材3の部分で折り曲げて、連接用部材41、42、或いはそのどちらか一方が端部に把着された底板片2を、例えば図5に示すような形に折り畳む。尚、本発明において、エアーボート後部に取付けられるトランサム板7を底板1と繋げておくこともできるが、その場合は図に示すように、上記トランサム板7と底板1との連結部fで折り曲げて底板と一緒に畳み込めるようにしてもよい。底板1の折り畳み方向は、底板片の枚数や大きさに応じて任意に選択できる。
【0021】本発明のエアーボートの底板1をエアーボートの底部に敷設するには、上記と反対の手順で行なえばよく、底板片24から21まで順次エアーボート後方に向かって敷設していき、底板1を一枚の剛直な状態とする。この状態では、底板片21の先端部は図1中2点鎖線で示す位置にある。そして最後にエアーボート前部に設けられたストッパー8(マウントストッパー等)を用いて底板片21をボート本体或いはボート本体に設けられるエアーキール(図示せず)に固定し、底板片21がボート前方へ移動するのを防止する。但し、ボート前部が前方に先鋭状に漸次幅狭になっているので、上記ストッパー8は必ずしもなくても、底板片21はボート前方に移動することは殆どない。尚、把手孔6は底板片2のどの部位に設けられていてもよい。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明エアーボートの底板は、複数の底板片を、該底板片のそれぞれの間を跨がせて可撓性の連繋用部材を設け該連繋用部材によって一連に連繋してなるエアーボートの底板であって、上記底板の連繋用部材に沿う方向に互いに相隣り合う底板片の上記相隣り合う部位に、相互に嵌合可能な連接用部材がそれぞれ装着されており、上記連繋用部材は、連接用部材又は連接用部材の底板片への装着部に取り外し可能に装着されているので、底板片を組み合わせて連接用部材を嵌合させれば1枚の剛直な底板となり、また底板は連接部位において両連接用部材を離間させて連繋用部材の部分で折り曲げることによってコンパクトに折り畳むことができ、またエアーボートと一緒に折り畳めば更にコンパクトに収納することができる効果を有する。しかも本発明のエアーボートの底板は、各底板片が連繋用部材によって連繋されているので不用意にバラバラになってしまうことがなく、そのため組み立て収納の手間を削減できる効果を奏する。また、連繋用部材は連接用部材又は連接用部材の底板片への装着部に取り外し可能に装着されているので、必要に応じて任意の場所の連接用部材、底板片、連繋用部材のうちの任意の1つ乃至は2つ以上の部品を取り外すことができ、例えば一部部品を交換する等が可能であるという利点がある。
【0023】また、上記したエアーボートの底板において、連繋用部材が、底板の方向とは逆の方向への撓み癖又は弛み癖が付けられている場合は、折り畳まれていた底板を延ばして組み立てる際に、相隣合う底板片の間において、各底板片に設けられている連接用部材の間に連繋用部材を挟み込んでしまう虞れがなく、組立作業をスムーズに行なえるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】エアーボートの底板の概略図である。
【図2】図1の要部のA−A線に沿う縦断面拡大図であり、連繋用部材及び連接用部材及び連繋用部材の取付け方の例を示す縦断面図である。
【図3】連繋用部材の取付け方の別の例を示す図である。
【図4】底板の連繋部位における連繋用部材と連接用部材の設け方の態様を示す図である。
【図5】底板を半ば折り畳んだ状態を示す側面図である。
【図6】連繋用部材の好ましい態様を示す図である。
【図7】図6の円内の拡大図であり、連繋用部材の好ましい態様の具体例である。
【符号の説明】
1 底板
2 底板片
3 連繋用部材
4 連接用部材
5 エアーボート本体
6 把手孔
7 トランサム板
8 ストッパー
d 連接部位
33 摘出様部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の底板片を、該底板片のそれぞれの間を跨がせて可撓性の連繋用部材を設け該連繋用部材によって一連に連繋してなるエアーボートの底板であって、上記底板の連繋用部材に沿う方向に互いに相隣り合う底板片の上記相隣り合う部位に、相互に嵌合可能であり、嵌合させたときに連接部位で折れ曲がらない連接用部材がそれぞれ装着されており、上記連繋用部材は、隣り合う連接用部材又は相隣り合う連接用部材の底板片への装着部に取り外し可能に装着されていることを特徴とするエアーボートの底板。
【請求項2】 連繋用部材が、底板の方向とは逆の方向への撓み癖又は弛み癖が付けられている請求項1記載のエアーボートの底板。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【特許番号】特許第3512241号(P3512241)
【登録日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【発行日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−218172
【出願日】平成6年8月19日(1994.8.19)
【公開番号】特開平7−223581
【公開日】平成7年8月22日(1995.8.22)
【審査請求日】平成13年4月19日(2001.4.19)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【出願人】(000101020)アキレスマリン株式会社 (1)
【参考文献】
【文献】実開 昭61−53291(JP,U)
【文献】実開 平2−66397(JP,U)
【文献】実開 昭54−133600(JP,U)
【文献】実開 昭60−95389(JP,U)