説明

エア抜き装置

【課題】ウォータポンプの不具合を防止することが可能なエア抜き装置を提供する。
【解決手段】エア抜き装置100は、リザーバタンク10と、ウォータポンプ20と、リザーバタンク10からウォータポンプ20の間に設けられてウォータポンプ20に冷却液90を圧送することでウォータポンプ20のエアを排出することが可能なエア排出装置300と、ウォータポンプ20の上流側に設けられてエア排出装置300からウォータポンプ20への冷却液の流れを許容するワンウエイバルブ200とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エア抜き装置に関し、より特定的には、車両の一部分を冷却する冷却液の循環経路のエア抜き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エア抜き装置は、たとえば特開2005−57953号公報(特許文献1)、特開2007−306053号公報(特許文献2)、特開2007−253691号公報(特許文献3)および実開平6−60776号公報(特許文献4)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−57953号公報
【特許文献2】特開2007−306053号公報
【特許文献3】特開2007−253691号公報
【特許文献4】実開平6−60776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ハイブリッドECUと補機バッテリとの電気的な接続の状態が非接続状態とされた履歴があるか否かを判別するステップと、電気的な接続の状態が非接続状態とされた履歴がある場合、非接続フラグをセットするステップと、非接続フラグがセットされている場合、ウォータポンプを作動させるステップとを含む。
【0005】
特許文献2では、放熱板を通ってCCDに冷却液が循環供給されるように配管が配設され、配管中の冷却液は、手動式ポンプによって送られ、手動式ポンプは、筐体の上面に配置されたポンプ手押しボタンをユーザが押圧操作して、シリンダ内のピストンを往復運動させることにより冷却液が送られる構成が開示されている。
【0006】
特許文献3では、冷却装置は、連動ウォータポンプにより冷却液が順次循環されるハイブリッド用ラジエータ、リザーバタンク、PCUおよびモータジェネレータウォータジャケットから構成され、モータジェネレータウォータジャケットの内部には、上下方向に蛇行を繰返す冷却水管路が形成され、モータジェネレータジャケットよりも鉛直上方の位置にドレーンパイプが設けられる構成が開示されている。
【0007】
特許文献4では、切換ハンドル付リリーフ弁とドレーン回路パイプからなる戻り回路の少なくとも排出口を覆うようなパイプで構成され、調圧用の液体に混入する気泡の横方向への分散を防止するためのカバーを設けたハンドポンプの回路構造が開示されている。
【0008】
従来の技術では、たとえば特許文献1では循環流路内に残存したエアを取り除くために、電動ウォータポンプを作動する必要があり、ウォータポンプの不具合が発生する可能性があった。
【0009】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、ウォータポンプの不具合を防止することが可能なエア抜き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従ったエア抜き装置は、冷却液を貯留することが可能なリザーバタンクと、リザーバタンクに接続されて冷却液を冷却経路に循環させるウォータポンプと、リザーバタンクまたはリザーバタンクからウォータポンプの間に設けられてウォータポンプに冷却液を圧送することでウォータポンプ内のエアを排出することが可能なエア排出装置と、ウォータポンプの上流側に設けられてエア排出装置からウォータポンプへの冷却液の流れを許容するワンウエイバルブとを備える。
【0011】
このように構成されたエア抜き装置では、エア排出手段およびワンウエイバルブが設けられているため、ウォータポンプ駆動前にエア排出手段が駆動することによってウォータポンプ内のエアを排出することができる。その結果、ウォータポンプの不具合を防止することができる。
【0012】
好ましくは、エア排出装置はリザーバタンクとウォータポンプとの間に設けられた手動ポンプであり、ワンウエイバルブは、ウォータポンプと手動ポンプとの間に設けられる第一部分と、手動ポンプとリザーバタンクとの間に設けられる第二部分とを含む。
【0013】
好ましくは、エア排出装置はリザーバタンク内に設けられ、ワンウエイバルブはエア排出装置とウォータポンプとの間に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に従ったエア抜き装置を有する冷却液の循環装置の模式図である。
【図2】図1中で示す配管110部分に設けられたエア抜き装置を詳細に示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に従ったエア抜き装置を有する冷却液の循環装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。また、各実施の形態を組合せることも可能である。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従ったエア抜き装置を有する冷却液の循環装置の模式図である。図1を参照して、冷却液の循環装置1は、冷却液を貯留するリザーバタンク10と、リザーバタンク10に溜められた冷却液を循環させるウォータポンプ20と、ウォータポンプから冷却液が供給されて冷却液により冷却されるモータジェネレータ30と、加熱された冷却液を冷却するためのラジエータ40を通過した冷却液により冷却されるパワーコントロールユニット50とを備える。
【0017】
リザーバタンク10は冷却液を溜めるタンクであり、冷却液が不足するとリザーバタンク10に冷却液が補充される。
【0018】
リザーバタンク10とウォータポンプ20とは配管110により接続されている。ウォータポンプ20は電動で駆動する。なお、ウォータポンプ20は電動で駆動するものに限られず、エンジンの出力軸に接続されてエンジンが駆動すると自動的にウォータポンプ20が駆動する構成としてもよい。
【0019】
ウォータポンプ20とモータジェネレータ30とは配管120により接続される。モータジェネレータ30はモータ、またはジェネレータとして駆動する回転電機である。なお、モータジェネレータ30は、モータおよびジェネレータのいずれか一方の働きをするだけでなく、ある時にはモータとして機能し別のときにはジェネレータとして機能してもよい。
【0020】
またこの例では、1つのモータジェネレータ30のみが示されているが複数のモータジェネレータが冷却液により冷却されてもよい。
【0021】
モータジェネレータ30とラジエータ40とは配管130により接続されている。ラジエータ40は、アルミニウムまたは銅などの熱伝導率の高いチューブを有し、このチューブ内を冷却液が流れ、このチューブに走行風が当てられることで冷却液が冷却される。
【0022】
ラジエータ40とパワーコントロールユニット50とは配管140により接続されている。パワーコントロールユニット50は、インバータ、コンバータおよびコンデンサなどの発熱素子を有する装置であり、素子の発熱は冷却液により冷却される。
【0023】
パワーコントロールユニット50とリザーバタンク10とは配管150により接続されている。
【0024】
図2は、図1中で示す配管110部分に設けられたエア抜き装置を詳細に示す断面図である。図2を参照して、配管110には、エア排出装置300が接続されている。エア排出装置300の側面は蛇腹状であるため、矢印301,302で示す方向に往復移動することが可能である。配管110にはワンウエイバルブ200が設けられている。すなわち、実施の形態1に従ったエア抜き装置100は、冷却液90を貯留することが可能なリザーバタンク10と、リザーバタンク10に接続されて冷却液90を冷却経路に循環させるウォータポンプ20と、リザーバタンク10からウォータポンプ20の間に設けられてウォータポンプ20に冷却液90を圧送することでウォータポンプ20内のエアを排出することが可能なエア排出装置300と、ウォータポンプ20の上流側に設けられてエア排出装置300からウォータポンプ20への冷却液の流れを許容するワンウエイバルブ200とを備える。エア排出装置300はリザーバタンク10とウォータポンプ20との間に設けられた手動ポンプであり、ワンウエイバルブ200は、ウォータポンプ20と手動ポンプとの間に設けられる第一部分220と、手動ポンプとリザーバタンク10との間に設けられる第二部分210とを含む。
【0025】
このように構成されたエア抜き装置100では、エア排出装置300を作動させるとワンウエイバルブ200により冷却液90(ロングライフクーラント)はウォータポンプ20側にのみ圧送され、循環経路内に残留しているエアがリザーバタンク10の空気室へ排出される。この操作を繰返し行なうことで、電動のウォータポンプ20を作動させることなくエアの排出と冷却液90の交換作業ができる。
【0026】
すなわち、冷却液を交換し、新たな冷却液をリザーバタンク10に入れた場合であっても、ウォータポンプ20内は完全に冷却液90で満たされることがない。この場合、ウォータポンプ20を駆動させると冷却液90が存在しない状態でウォータポンプ20が駆動するため潤滑不良が生じる可能性がある。このような場合においてウォータポンプ20を駆動させる前にエア排出装置300を用いてウォータポンプ20内のエアを排出することで、ウォータポンプ20の不具合を抑制することができる。
【0027】
(実施の形態2)
図3は、この発明の実施の形態2に従ったエア抜き装置を有する冷却液の循環装置の模式図である。図3を参照して、実施の形態2に従ったエア抜き装置100は、リザーバタンク10に設けられる。ワンウエイバルブ440はエア排出装置400とウォータポンプ20との間に設けられる。実施の形態2では、手動で駆動可能なエア排出装置400は、リザーバタンク10内に設けられたスリーブ420と、スリーブ420に嵌まり合うピストン410と、ピストン410を押圧するコイルバネ430とを有する。スリーブ420側面には穴450が設けられて穴450からリザーバタンク10内の冷却液を取り入れることが可能である。ピストン410は矢印401,402で示す方向に上下運動することが可能である。
【0028】
このようなエア抜き装置100において手動ポンプとしてのピストン410がスプリングであるコイルバネ430により上側に押されているとき、側面の導入口としての穴450から冷却液がピストン410内に入り、ピストン410を押して下降させると穴450が閉じられて冷却液90はウォータポンプ20へのみ圧送され、冷却液の循環経路内に残留しているエアがリザーバタンク10の空気室へ排出される。この操作を繰返し行なうことで、電動のウォータポンプ20を作動させることなくエアの排出と冷却液の交換作業を行なうことができる。
【0029】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0030】
1 循環装置、10 リザーバタンク、20 ウォータポンプ、30 モータジェネレータ、40 ラジエータ、50 パワーコントロールユニット、90 冷却液、100 エア抜き装置、200,440 ワンウエイバルブ、300,400 エア排出装置、410 ピストン、420 スリーブ、430 コイルバネ、450 穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液を貯留することが可能なリザーバタンクと、
前記リザーバタンクに接続されて冷却液を冷却経路に循環させるウォータポンプと、
前記リザーバタンクまたは前記リザーバタンクから前記ウォータポンプの間に設けられて前記ウォータポンプに冷却液を圧送することで前記ウォータポンプ内のエアを排出することが可能なエア排出装置と、
前記ウォータポンプの上流側に設けられて前記エア排出装置から前記ウォータポンプへの冷却液の流れを許容するワンウエイバルブとを備えた、エア抜き装置。
【請求項2】
前記エア排出装置は前記リザーバタンクと前記ウォータポンプとの間に設けられた手動ポンプであり、前記ワンウエイバルブは、前記ウォータポンプと前記手動ポンプとの間に設けられる第一部分と、前記手動ポンプと前記リザーバタンクとの間に設けられる第二部分とを含む、請求項1に記載のエア抜き装置。
【請求項3】
前記エア排出装置は前記リザーバタンク内に設けられ、前記ワンウエイバルブは前記エア排出装置と前記ウォータポンプとの間に設けられる、請求項1に記載のエア抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−253301(P2012−253301A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127050(P2011−127050)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】