説明

エキシマランプ

【課題】 本発明の目的は、小型化及び短尺化の要請に適する特定の端部構造を備えたエキシマランプを提供すること。
【解決手段】 扁平な放電容器を備え、該放電容器の外壁面に一対の電極が設けられてなり、該放電容器の端部に板状の封止部材が設けられ、該放電容器の放電空間内にエキシマ放電を発生させるエキシマランプであって、該放電容器の少なくとも一方の端部において、該封止部材の位置する該放電容器の部位が縮径してなる凹部と、該凹部に巻付けられた線状部材と、該線状部材を介して該放電容器がその中に圧入して固定されるベース部材と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は半導体や液晶ディスプレイ等の製造における光洗浄工程に使用されるエキシマランプに関し、特にベース固定部に特徴のあるエキシマランプに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体集積回路の製造或いは液晶ディスプレイの製造などにおける基板の洗浄工程にエキシマランプが用いられている。最近では、被処理体に対する近接照射、均一で広範囲な照射、などの要請から断面矩形状のランプが用いられている。
エキシマランプの放電容器の端にはベース部材が設置されており、ベース部材は主に3つの機能を有している。第一の機能は放電容器外壁面に設けられる外部電極とリードとの接続を確保し給電構造を保護すること、第二の機能は放電容器に固定されていること、第三の機能は電気絶縁性を有して外部電極とベース部材の間の絶縁破壊を防止すること、である。
【0003】
特許文献1の特開2009−252662号公報には、図6に示すように電気絶縁性を有するリード保持部541と金属薄板からなる平坦支持部542で構成されるベース部材54が記載され、エキシマランプの端をリード保持部541と平坦支持部542で狭持することで、上述するベース部材の機能を有している、ことが記載されている。
【0004】
特許文献2の特開2009−076296号公報には、エキシマランプの製造方法として放電容器に封止部材を溶着させる方法が開示されており、当該公報の放電容器の概略図を図7に示す。
これによれば、ガス導入部31とフランジ部32を有する封止部材3が放電容器1の内部に挿入されていると共に、フランジ部32の外周縁321を放電容器1の内壁に溶着させることで、封止部材3と放電容器1の間に間隙を生じさせることがなく、また、封止部材3と放電容器1を溶着する際に溶着部Wには凹部が形成される、ことが記載されている。
特許文献1に記載のランプも、特許文献2に記載される放電容器の端部構造を有することが通例である。該端部構造の断面図を図3に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−252662号公報
【特許文献2】特開2009−076296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体チップやバイオチップの製造における光洗浄において、光洗浄装置の小型化の要請があり、小型化及び短尺化したエキシマランプが必要とされている。しかしながら、特許文献1に記載のリード保持部541と平坦支持部542からなるベース部材54は、小型化及び短尺化したエキシマランプに適当ではない。それは、エキシマランプの小型化及び短尺化に伴って、ベース部材を支持することのできる放電容器端部の領域が狭まり、ベース部材の固定を困難にするからである。さらに溶着部Wに近い放電容器の部位は加工時に生じる熱や歪によって寸法や形状が変形しやすく、エキシマランプ5を短尺化するに従って放電容器の端部の歪みは顕著に現れ、当該ベース部材54の固定を困難にする。よって、特許文献1のベース部材を短尺化したエキシマランプに用いることは困難である。また、ベース部材が傾いて固定されやすく、よって、放電容器の管軸とベース部材の中心軸は一致せず、被処理体に対して均一な光照射ができない、という問題を生ずる。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、小型化及び短尺化の要請に適する端部構造を備えたエキシマランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、扁平な放電容器を備え、該放電容器の外壁面に一対の電極が設けられてなり、該放電容器の端部に板状の封止部材が設けられ、該放電容器の放電空間内にエキシマ放電を発生させるエキシマランプであって、該放電容器の少なくとも一方の端部において、該封止部材の位置する該放電容器の部位が縮径してなる凹部と、該凹部に巻付けられた線状部材と、該線状部材を介して該放電容器がその中に圧入して固定されるベース部材と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記線状部材はセラミックを主成分とする絶縁材料であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエキシマランプによれば、放電容器と封止部材の溶着部において、放電容器が縮径してなる凹部に線状部材が巻き付けられ、この線状部材を介して放電容器がベース部材に圧入されて固定されているため、小型化及び短尺化したことによりエキシマランプの端部形状が歪んでいてもその形状に影響されることなく、放電容器の端部にベース部材を固定できる。また、放電容器の外壁面にある凹部がベース部材の固定位置であり、凹部はランプの小型化及び短尺化を行う上で最良の固定位置となり、かつ、線状部材はエキシマランプの紫外線照射を阻害することなく、かつ、凹部に線状部材を巻き付けて均一な厚みを設けることができる。
また、線状部材にセラミックを主成分とする絶縁材料を用いることで、電気絶縁性を備え、線状部材とリードとの間や、線状部材と外部電極との間での不要な放電現象を生じさせない、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るエキシマランプにおいて、(a)両端のベースが圧入固定されたもの、(b)片端のベースが圧入固定されたもの、の外観図を示す。
【図2】本発明に係るエキシマランプの端部断面図を示す。
【図3】従来のエキシマランプの端部断面図を示す。
【図4】ガス導入部を備えた封止部材の構成の斜視図を示す。
【図5】本発明のエキシマランプの製造方法の各工程の断面図を示す。
【図6】従来のエキシマランプの構成の斜視図を示す。
【図7】従来のエキシマランプの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るエキシマランプの外観図を図1に示し図2はエキシマランプの長手方向に沿った切断面から見た断面図を示す。図1と図2に示すエキシマランプは、図6に示す従来のエキシマランプに比べて、長手方向の寸法が短尺化している。放電容器1の端部には、外部電極2とリード55の接続を確保し給電構造を保護するためのベース部材61が設置している。ランプの製造工程時において放電容器1の端に凹部Wが形成され、凹部Wには線状部材7が巻付けてあり、線状部材7を介して放電容器1がベース部材61に圧入され固定されている。よって、放電容器1にベース部材61が設置され、外部電極2とリード55の接続が固定し維持されている。
【0013】
放電容器1は、合成石英ガラスよりなる扁平な形状を有するものであって、紙面において上方側に位置する上方側壁面と、紙面において下方側に位置する不図示の下方側壁面とが、所定の間隔を有して平行に伸びていると共に、上方及び下方の夫々の側壁面には外部電極2が設けられ、紙面において左方側に位置する左方側壁面と紙面において右方側に位置する右方側壁面とが、所定の間隔を有して平行に伸びている構成を有している。
【0014】
エキシマランプは扁平な放電容器1の両端部近傍の内壁面に封止部材3が溶着されることによって放電容器1の内部に気密空間Sが形成され、気密空間Sの内部にエキシマ放電を生成するための放電ガスが充填されており、放電容器1内にエキシマ放電を生じさせるための一対の外部電極2が放電容器1内の気密空間Sを挟んで対向するよう配置した構成を有している。
封止部材の構成を示す斜視図を図4に示す。放電容器1の両端部近傍の内壁面には、板状の封止部材、もしくは、放電用ガスを導入するためのガス導入部31とフランジ部32が連設してなる封止部材3が設けられており、放電容器内に気密空間を形成させている。
【0015】
放電容器1の気密空間Sには、例えばキセノンガスなどの希ガスや、希ガスに塩素ガスなどのハロゲンガスを混合したものが放電ガスとして充填されており、ガスの種類によって異なる波長のエキシマ光を発光させることができる。放電ガスは、通常は10〜100KPa程度の圧力で充填されている。
【0016】
図2に示す本発明のエキシマランプにおいて、凹部に線状部材7を巻き付けることで巻付け箇所に弾性力を生ずる効果がある。これは線状部材7をある一定の張力によって巻くことにより、線状部材7に弦のような作用、伸縮性が生ずる、また、凹部Wに巻付けた線状部材7の束には部材間にいくつもの間隙が生ずる、ことによる効果である。この効果により、放電容器1をベース部材61に圧入して固定できる。
また、放電容器1の凹部Wに線状部材7を巻付けることで、放電容器1の周囲に均一な厚みを持たせることができる。よって、線状部材7を凹部Wに十分巻付けた放電容器1をベース部材に圧入固定する際、放電容器1とベース部材61の間隙72を均等に保たせて放電容器1とベース部材61を固定することができ、また、放電容器1の管軸とベース部材61の中心軸が傾いて固定されることがない。
また、放電容器1やベース部材61の材料や寸法、形状、重量などによって線状部材7の巻付け数を適宜変更でき、製品に応じて適切な固定が可能となる。
【0017】
外部電極2に接続するリード55は、凹部Wと同様に線状部材7に巻き付けられ固定される、もしくは、線状部材7とベース部材61の間で固定され、リード55はベース部材61に設けられるリード導入穴を介して外部の電源に配線される。これにより、放電容器1がベース部材61に圧入して固定した際、リード55を線状部材7、または、ベース部材61で保持すると共に、外部電極2とリードの接続を確保し給電構造を保護できる。
【0018】
線状部材7に用いる素材には、セラミックを主成分とした電気絶縁性及び耐熱性に優れるセラミック糸が適している。例えば(株)ニチビのニチビアルフ(登録商標)が挙げられる。これはAlが72%、SiOが28%からなり、数μmの繊維径の繊維を束ねたものからなる。この微小な繊維径の繊維を束ねた線状部材は、強度や断熱性に加えて弾性に富むものである。
また線状部材7に用いる素材として金属、導体を用いることもできる。この場合、前記リード55に十分な絶縁皮膜を施すことで、リード55と線状部材間の放電破壊及び放電現象を抑制できる。
【0019】
本発明のエキシマランプの製造において、封止部材3のフランジ部32と放電容器1の内壁面との溶着、および放電容器内1への放電ガスの導入は図5に示す手順に基づいて行われる。
(イ) 放電容器1となる放電容器構成部材1´の内部に、封止部材3のガス導入部31の先端が放電容器構成部材1´の各外端面を超えて放電容器構成部材1´の外方へ伸び出ると共に、ガス導入部31の中心軸が放電容器構成部材1´の管軸に一致するよう封止部材3を配置する。
(ロ) 封止部材3のフランジ部32の外周縁321に対応する放電容器構成部材1´の各外壁面領域をバーナーなどの加熱手段によって加熱し、放電容器構成部材1´の内壁面に対し各フランジ部32の外周縁321を溶着することにより、溶着部Wを形成する。
(ハ) 封止部材3のガス導入部31の先端側の開口34より、キセノンガスを放電容器構成部材1´の内部に導入する。
(ニ) 封止部材3のガス導入部31の先端部をバーナーなどの加熱手段によって加熱溶融することにより、各ガス導入部31の先端側の開口を閉塞することにより閉塞部35を形成する。
【0020】
図5の製造工程によれば、上記(ロ)の作業の際に、放電容器1の内壁面と封止部材3のフランジ部32との間に隙間が生ずることなく、また加熱手段の火炎がフランジ部32の外周縁321を変形させてしまう虞はない。また放電容器1の外壁面から加熱することで、放電容器1の加熱部分が縮径し、放電容器1の内壁面とフランジ部32の外周縁321が溶着する、加えて、放電容器1の外壁面の加熱部分に凹部Wが形成される。このとき、放電容器1の縮径およびフランジ部32の溶着は、該フランジ部32の外周縁321が仕切壁となり、放電容器1はフランジ部32の外周縁321に合わせて縮径し溶着する、よって、加熱部分に均一な凹部Wが形成される、という効果を生む。さらに、凹部Wは応力集中の影響を受けやすく強度の弱体化が懸念されるが、凹部Wの内面に埋設するフランジ部32が衝立となり、凹部Wの機械的強度は強化されている。
【0021】
図2及び図3に示すように、エキシマランプの製造工程時に形成される凹部Wと、放電容器1の管内に埋設されるフランジ部32の位置は一致している。また、フランジ部32は放電空間側S1と外空間側S2の境界となる。
【0022】
エキシマランプの小型化および短尺化の要請から、外空間側S2にある放電容器1の放電容器端部62の領域はより狭めることが望ましい。
しかし、放電容器端部62の短尺化が進めばベース部材61が放電容器を狭持する領域が狭まり、加えて、凹部Wの加工時に生ずる熱が放電容器端部62へ強く影響して形状が変形しやすく、図3に示すような従来のベース部材の固定が困難になる。しかし、図2に示す本発明のエキシマランプは線状部材7を凹部Wに巻付けて、線状部材7を介して放電容器1をベース部材61に圧入して固定しており、放電容器端部62の形状に影響されずベース部材61の固定が可能であり、上記のようなエキシマランプの短尺化に伴う障害を回避できる。
【0023】
線状部材7は凹部Wに限らずどこにでも巻付けることは可能だが、本発明はエキシマランプの製造工程時に必然的に形成される凹部Wに特定して線状部材7を巻付け、ベース部材61を固定する、ことに格別の効果を見出している。
まず、凹部Wの内部にはフランジ部32が埋設されており、フランジ部32が凹部Wの衝立となって凹部Wの周囲からの圧縮応力に対する機械的強度を強くする。そのため、凹部Wに線状部材7を巻付けてベース部材61を圧入固定した場合、該凹部Wに生ずる圧縮応力に耐えることができ、凹部Wは破壊されにくい、という効果を生ずる。
また、放電容器1とフランジ部32の溶着加工の際、フランジ部32の外周縁321が仕切壁となり、放電容器1が均一に縮径して溶着するため、均一な凹部Wが形成される。よって、線状部材7を該凹部Wに巻付けて該線状部材を介して放電容器1をベース部材61に圧入して固定する際、放電容器1とベース部材61の間隙72を均等に保たせたままベース部材61を固定できる。
また、放電容器端部62の形状が変形した場合でも放電容器1の管軸とベース部材61の中心軸を一致させて固定できるため、エキシマランプから被処理体に対して均一な光照射が行える、という効果を奏する。
また、凹部Wに線状部材を巻き付けることで、線状部材の位置がずれにくく、線状部材を所定の位置に設置しやすい。
【0024】
線状部材7を凹部Wより放電空間側の領域S1に巻付けた場合、線状部材7がエキシマランプの紫外線照射を一部遮ることになり、照度分布が縮小又は不均一になる、また、線状部材7が紫外線及び熱により変質又は劣化しやすくなる、また、線状部材7と放電容器1の外壁面に設けられる外部電極2との間隔が狭まり、線状部材7と外部電極2との間で放電が発生しやすく、外部電極2のような印刷電極は焼けてしまい、最悪の場合断線してしまう、といった問題を生じさせる。
また、線状部材7を凹部Wより外空間側の領域S2、つまり放電容器端部62に巻付ける場合、放電容器端部62は凹部Wの加工時に形状が変形しやすく、ベース部材61の固定が困難で、かつ、ベース部材が傾いて固定される虞がある。また、線状部材7を凹部Wより外空間側の領域S2に巻付ける構成は、本発明の課題であるランプの短尺化の要請に対して適切な構成ではない。
【0025】
上記の理由から、エキシマランプの製造工程時に形成する凹部Wに特定して線状部材7を巻付け、線状部材7を介して放電容器をベース部材61に圧入固定する本発明の構成は、エキシマランプの光照射を障害することなく、かつ、ベース部材61を的確に固定でき、エキシマランプの短尺化を可能にする、という点で優れた効果を有している。
【0026】
本発明によるベース部材61の固定は、エキシマランプの両端であっても、エキシマランプの片側であっても、本発明の効果を奏する。例えば図1(b)に示すような、左端部が従来のベース固定、右端部が本発明のベース固定の構成を持つエキシマランプであっても本発明の効果を奏する。
【符号の説明】
【0027】
1 放電容器
2 外部電極
3 封止部材
31 ガス導入部
32 フランジ部
321 外周縁
4 紫外線反射膜
5 エキシマランプ
52 外部電極
54 ベース部材
541 リード保持部
542 平坦支持部
55 リード
57 端壁面部
61 ベース部材
62 放電容器端部
7 線状部材
71 圧入固定部
72 間隙
W 溶着部、凹部
S 放電空間、気密空間
S1 放電空間側の領域
S2 外空間側の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な放電容器を備え、該放電容器の外壁面に一対の電極が設けられてなり、該放電容器の端部に板状の封止部材が設けられ、該放電容器の放電空間内にエキシマ放電を発生させるエキシマランプであって、
該放電容器の少なくとも一方の端部において、
該封止部材の位置する該放電容器の部位が縮径してなる凹部と、
該凹部に巻付けられた線状部材と、
該線状部材を介して該放電容器がその中に圧入して固定されるベース部材と、
を有することを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記線状部材はセラミックを主成分とする絶縁材料であることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−164531(P2012−164531A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24349(P2011−24349)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】