説明

エキシマランプ

【課題】
照射される紫外線を有効に利用して、光触媒の処理効率を向上させることができるだけでなく、放電ガスとしてキセノンガスを用いた場合でも点灯性の良好なエキシマランプを提供する。
【解決手段】
放電ガスが気密に封入される放電管(2)に形成された放電空間(3)の少なくとも一部が円筒空間に形成されると共に、その中心側に配される中心電極(4A)と外周側に配される周面電極(4B)とを備え、周面電極(4B)は、多数の微細透孔(13)が形成された導電性メッシュ(14)に光触媒となるアナターゼ型酸化チタン(16)を担持させた多孔質光触媒シート(11)を巻回して、放電管(2)の外表面に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体バリア放電により紫外線を照射するエキシマランプに関し、特に、光触媒作用により浄化処理を行う空気清浄機や浄水器に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒として優れた機能を有するアナターゼ型酸化チタンは、空気清浄機や浄水器などに応用が期待されており、紫外線を照射することにより光触媒活性を呈し、特に波長320nm以下のUVB(280〜315nm)領域に光触媒活性のピークを有する。
このため、紫外線ランプなどにより紫外線を照射することが行われているが、一般の紫外線ランプは水銀を用いるため、環境負荷が大きい。
また、近年では、紫外線LEDも開発されているが、高価であるだけでなく、十分な光強度が得られないという問題があった。
【0003】
このため、水銀を使用せずに紫外線発光が可能なエキシマランプが注目されており、エキシマランプの放電管の外側に設けた透明電極の表面に光触媒層を積層形成した脱臭・殺菌用の紫外線ランプも提案されている(特許文献1参照)。
これによれば、照射された紫外線が透明電極を透過して光触媒層に照射されるから、光触媒が活性化され、これに触れる空気を脱臭・殺菌することができるとされている。
しかしながら、透明電極は一般に紫外光に対して透過率が低く、特に代表的な透明電極であるスズ添加酸化インジウム膜(ITO)は可視光に対しては透明でも、光触媒を活性化させるUVB(280〜315nm)領域の紫外光に対しては不透明であるため、透明電極の表面に光触媒を形成しても、決して、特許文献1に記載されたような効果を得ることはできない。
【0004】
このため、紫外線照射用のエキシマランプは、特許文献2に示すように、放電管の両側対向位置に一対の電極を設け、電極の隙間から紫外線を照射させたり(特許文献2:図2)、ワイヤなどを網状にしたメッシュ電極を使用し、ワイヤの隙間から紫外線を照射するようにせざるを得ず(特許文献2:図3)、いずれにしても電極の不透明部分で紫外線が遮られるため、光の利用効率が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−150997号公報
【特許文献2】特開2010−163295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、照射される紫外線を有効に利用して、光触媒の処理効率を向上させることができるだけでなく、キセノンガスを用いた場合でも点灯性に優れたエキシマランプを提供することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明は、放電ガスが気密に封入される放電管に形成された放電空間を挟むようにその外側に一対の電極が配され、当該電極間に高周波電圧を印加することにより前記放電空間内に誘電体バリア放電を生じさせて紫外線を照射するエキシマランプにおいて、前記放電空間の少なくとも一部が円筒空間に形成されると共に、前記一対の電極が円筒空間の中心側に配される中心電極と外周側に配される周面電極とからなり、当該周面電極は、多数の微細透孔が形成された導電性メッシュに光触媒を担持させた多孔質光触媒シートが巻回されて、前記放電管の外表面に設けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中心電極と周面電極との間に高周波電圧が印加されて、放電空間で誘電体バリア放電が生じ、放電管の外周面に設けられている周面電極に紫外線が照射される。
周面電極は、導電性メッシュに光触媒となるアナターゼ型酸化チタンを担持させた多孔質光触媒シートからなるので、その内側に担持されている光触媒が放電管から照射された紫外線により励起されると共に、メッシュの微細透孔の周辺に担持された光触媒が当該透孔を透過する紫外線により励起され、微細流路を透過した紫外線がその外側開口部で回折現象を起こすので多孔質光触媒シートの外側に担持されている光触媒も励起される。
したがって、放電管から照射された紫外線は、周面電極に遮られるものも、微細流路を透過するものも、そのほとんどが周面電極に担持された光触媒を励起することとなるので、光の利用効率が極めて高く、しかも、周面電極に担持されているほとんどの光触媒が励起される。
したがって、本発明に係るエキシマランプを水や空気などの被処理流体の流路中に配することにより、被処理流体が周面電極の表面に接触する際に、紫外線励起された光触媒に接触して浄化処理される。
【0009】
また、周面電極の、一方向に沿って連続する波状の起伏を形成すれば、その起伏が放電管の外表面に線接触するように設けられるので、放電管に接触する部分と接触しない部分が形成されていない部分との間に隙間が形成される。
この場合、被処理流体がその隙間を流通することによっても浄化処理されるので、浄化処理効率が向上する。
【0010】
さらに、周面電極を放電管の外周面に線接触させれば、周面電極と中心電極との間に形成される電界が放電管に線接触している部分に集中するため、絶縁破壊を起こしやすく、したがって、放電ガスとして点灯しにくいキセノンガスを使用する場合でも、大電力を印加することなく点灯することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るエキシマランプを示す管軸方向断面図。
【図2】その外観図。
【図3】その管軸直交断面図。
【図4】多孔質光触媒シートの外観図。
【図5】多孔質光触媒シートの製造方法を示す説明図。
【図6】使用状態を示す説明図。
【図7】他の実施形態を示す管軸直交断面図。
【図8】さらに他の実施形態を示す管軸方向断面図。
【図9】その外観図。
【図10】さらに他の実施形態を示す管軸直交断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、照射される紫外線を有効に利用して、光触媒の処理効率を向上させることができるだけでなく、キセノンガスを用いた場合でも点灯性を向上させるという目的を達成するために、放電ガスが気密に封入される放電管に形成された放電空間を挟むようにその外側に一対の電極が配され、当該電極間に高周波電圧を印加することにより前記放電空間内に誘電体バリア放電を生じさせて紫外線を照射するエキシマランプにおいて、前記放電空間の少なくとも一部が円筒空間に形成されると共に、前記一対の電極が円筒空間の中心側に配される中心電極と外周側に配される周面電極とからなり、当該周面電極は、多数の微細透孔が形成された導電性メッシュに光触媒を担持させた多孔質光触媒シートを巻回して、放電管の外表面に設けた。
【実施例1】
【0013】
図1〜図3に示す本例のエキシマランプ1は、放電ガスが気密に封入される石英ガラスからなる放電管2に形成された放電空間3を挟むようにその外側に一対の電極4A及び4Bが配され、当該電極4A及び4B間に電源5から高周波電圧を印加することにより、放電空間3内に誘電体バリア放電を生じさせるようになっている。
【0014】
放電空間3は、少なくとも一部が円筒空間に形成されると共に、前記一対の電極4A及び4Bが円筒空間の中心側に配される中心電極4Aと外周側に配される周面電極4Bとからなる。
中心電極4Aは、その両端縁6a,6bがナイフエッジのように尖って形成された帯板状に形成されて、誘電体である石英ガラス7で覆われて放電管2の中心に配されて成る。
また、周面電極4Bは、一方向に沿って連続する波状の起伏が形成された多孔質光触媒シート11で形成され、その起伏が放電管2の外表面に線接触するように巻回されて設けられており、放電管2の周面には、周面電極4Bと間に、その管軸方向に沿って延びるトンネル状の隙間8…が形成されている。
【0015】
多孔質光触媒シート11は、図4〜図5に示すように、チタンシート12の片面又は両面から非周期的パターンによるエッチング処理を施して表裏を貫通する多数の微細流路13を形成した非周期性海綿構造を有するチタンメッシュ(導電性メッシュ)14の表面に、陽極酸化皮膜による酸化チタンベース15が形成され、当該酸化チタンベース15に光触媒となるアナターゼ型酸化チタン16が焼き付けられて成る。
【0016】
図5はこのような多孔質光触媒シート11の製造方法を示す説明図である。
まず、チタンシート12に微細流路13を形成するエッチング処理を行う。
エッチング処理は、純チタンを圧延して形成したチタンシート12の表裏両面にフォトレジスト剤17を塗布する塗布工程(図5(a))と、レジスト剤17の上から非周期的パターンが形成されたマスキングフィルム18、18を重ねて露光する露光工程(図5(b))と、露光後、レジスト剤の感光していない部分を洗浄し、感光した部分をチタンシート12の表面に残す洗浄工程(図5(c))と、レジスト剤17で非周期網目パターンがマスキングされたチタンシート12をエッチング液に浸漬し、表裏両面からチタンシート12の厚さの半分まで浸食させることにより表裏を貫通する多数の微細流路13…を形成する浸漬工程(図5(d))からなる。
【0017】
このように、チタンシート12の両面からエッチング処理を施せば、そのマスキングフィルム18のパターンに周期性がないことから、チタンシート12の表側と裏側から異なるパターンの孔が形成される。
その結果、図4に示すように、チタンシート12の厚さ方向に複雑なラビリンス状の微細流路が形成され、単純なメッシュ構造よりも比表面積が著しく大きくなる。
なお、チタンメッシュ14の空隙率(エッチング処理後の重量/エッチング処理前の重量)は20%程度である。
また、その表面を拡大観察すると、この時点では、図5(e)に示すように、概ねフラットな状態となっている。
【0018】
次いで、その表面に酸化チタンベース15を形成する陽極酸化処理を行う。
陽極酸化処理は、リン酸浴(例えばリン酸3%水溶液)中で、陽極となるチタンシート12と陰極との間に所定電圧を印加して行われ、その結果、図5(f)に示すように、チタンシート12の表面が酸化されて陽極酸化皮膜が形成される。
このとき、酸化皮膜は、チタンシート12の表裏両面だけでなく、微細流路13の内壁面などリン酸浴に曝されている全表面に形成される。
その後、このチタンシート12を大気中で550℃、3時間加熱する加熱処理を施し、陽極酸化皮膜が加熱された酸化チタンベース15が形成される。
その表面を拡大観察すると、エッチング処理した時点でフラットだった表面に、陽極酸化処理及び加熱処理によるひび割れ19が多数出現する。
【0019】
なお、チタンを陽極酸化処理した場合、その酸化皮膜の厚さに応じて光の干渉により異なる色が発色し、厚さ70nm程度で紫色、150nm程度で緑色、200nm程度でピンク色を呈することが知られている。
本例では、厚さ70〜150nmの皮膜を形成した。
【0020】
また、本例では、光触媒シート11を波板状に形成するため、陽極酸化処理を施した後、加熱処理を施す前に、プレス加工により波板状に形成する成形処理を施してチタンメッシュ14の長手方向に沿って連続する起伏を折曲形成している。
この成形加工は、エッチング処理後、酸化チタンベースにアナターゼ型酸化チタン粒子を焼き付ける焼き付け処理の前であればよく、例えば、エッチング処理後、陽極酸化処理の前にプレス加工をしても良い。
【0021】
そして最後に、アナターゼ型酸化チタン16を担持させる焼付処理を行う。
焼付処理は、表面に酸化チタンベース15が形成されたチタンシート12を、アナターゼ型酸化チタン16を分散したスラリー中にディッピングした後、これを550℃で焼き付けることにより行い、その結果、図5(g)に示すように、チタンシート12の表裏両面及び微細流路13の内壁面に光触媒層20が形成される。
なお、酸化チタンベース15と光触媒層20は、酸化チタン同士が結合することになるので、その結合性が極めて強くなり、その結果、光触媒層20が剥がれ難くなる。
【0022】
さらに、エッチング処理により微細流路13を形成したことにより表面が複雑な凹凸形状をなし、陽極酸化皮膜でなる酸化チタンベース15はミクロンオーダーの微細なひび割れ19を生ずるため、その上に光触媒層20が強固に結合するだけでなく、表面積が増え、処理効率が格段に向上する。
また、UV光を照射したときに光触媒層20の表面及び酸化チタンベース15との界面で乱反射/光散乱が起き、UV光を効率よく利用できる。
さらにまた、チタン箔を使用したことで光触媒シート自体を軽量に形成することができることから設計の自由度が大きくなり、耐熱性、耐薬品にも優れるため、過酷な使用条件の下でも使用に耐え得る。
【0023】
そして、このように形成された多孔質光触媒シート11を、その起伏の形成方向に沿って巻回して放電管2に外装することにより、その起伏が放電管2の管軸方向に沿ってその外表面に線接触された周面電極4Bが形成されている。
周面電極4Bは、図3に示すように、放電管2に対して所定のピッチ(本例では中心角22.5°)で起伏が形成されており、0°から22.5°ピッチで線接触される。
このとき、径方向の対向位置すなわち0°と180°の位置で放電管2に線接触するとともに、その径方向上に、中心電極4Aの両端縁6a、6bが位置している。
これにより、周面電極4Bとなる多孔質光触媒シート11が放電管に線接触している部分11a、11bと、中心電極4Aの両端縁6a、6bが径方向に対向して設けられ、しかも、電極4A,4Bの最も接近した部分が線状に形成されているので、点灯時に絶縁破壊がおきやすい。
【0024】
以上が本発明に係るエキシマランプ1の一例構成であって、次にその作用を説明する。
図3(b)は、エキシマランプ1に電源5から例えば20kHzの高周波電圧を電極4A,4B間に印加したときに形成される電界E及びeを示す説明図で、電極4A,4B同士の最も接近した部分、すなわち、中心電極4Aの両端縁6a、6bと、これに対向する周面電極4Bの放電管2に線接触している部分11a、11bとの間で電界Eが形成される。
しかも、双方の電極4A,4Bの対向部分はいずれも線状に形成されているので、電界Eは双方の電極4A,4Bに対して局部的に集中して形成される。
【0025】
光触媒励起用の紫外線(発光波長:308nm)を照射するために、従来より、放電管2に放電ガスとしてキセノンガス(塩化キセノン:XeCl)が封入されるが、キセノンガスを用いたエキシマランプは、一般に、点灯しにくく点灯始動時に大電力を投入しなければならないため、電源装置に始動用の回路を組み込まなければならず、回路が複雑になったり、始動時に不要な発熱が生ずるという問題があった。
本例のように、周面電極4Bを波状に形成することにより、点灯時に大電力を印加しなくても絶縁破壊がおきやすくなり点灯性が向上するというメリットがある。
【0026】
また、中心電極4Aの両端縁6a、6bと、周面電極4Bの放電管2に線接触しているその他の部分11cとの間でも電界eが形成されているので、電界Eにより絶縁破壊されて点灯開始されると、放電管2内全体で誘電体バリア放電を生じ、放電管2からその外部へ紫外線が照射される。
この紫外線は、放電管2の管壁を透過して、まず、周面電極4Bの内周面に照射され、周面電極4Bを形成する多孔質光触媒シート11の微細流路13を透過する。
【0027】
したがって、多孔質光触媒シート11の内周面に形成された光触媒層20、微細流路13の内側に形成されている光触媒層20、さらに多孔質光触媒シート11の外側で紫外線が透過する微細流路13の外側開口部近傍に形成されている光触媒層20は、紫外線が直接照射されて励起される。
また、微細流路13を透過した紫外線は、その外側開口部で回折現象を起こすので、多孔質光触媒シート11の外側に形成されている光触媒層20も少なからず励起されることとなる。
【0028】
このように、エキシマランプ1を点灯することにより、放電管2から照射された紫外線は、周面電極4Bに遮られるものも、周面電極4Bの微細流路13を透過するものも、そのほとんどが周面電極4Bに形成されている光触媒層20を励起することとなるので、光の利用効率が極めて高く、しかも、周面電極4Bに担持されているほとんどの光触媒が励起することができる。
【0029】
そして、このエキシマランプ1を、図6に示すように、被処理流体として例えば汚染空気が流通する流路F中に設置し点灯させれば、汚染空気が周面電極4Bの外周面に沿う流れf1、周面電極4Bと放電管2との間に形成されたトンネル状の隙間8…内の流れf2、f3、周面電極4Bに形成された微細流路13を通過する流れf4、f5等が形成され、これらの流れf1〜f5により汚染空気が光触媒層20に接触して浄化される。
【0030】
このとき、エキシマランプ1の放電管2の径方向に照射されるすべての紫外線は、光触媒の励起に寄与するので、光の利用効率が極めて高く、低出力の紫外線で十分な浄化作用が得られる。
また、周面電極4Bに形成された光触媒層20に担持されているほとんどの光触媒が紫外線励起されるので、被処理流体が周面電極4Bに接触すれば、その光触媒作用により浄化されることとなり、浄化効率が極めて高いというメリットがある。
【実施例2】
【0031】
図7は本発明に係るエキシマランプのほかの実施例を示す。なお、図1〜3と共通する部分は同一符号を付して詳細説明を省略する。
図7に示すエキシマランプ21は、中心電極4Aが棒状に形成され、その表面に多数の突条22…が形成されており、周面電極4Bは、実施例1と同じものを用いている。
本例では、中心電極4Aの断面が星型となるように、中心角22.5°のピッチでに16個の突条22…が、その長手方向に延設されている。
【0032】
また、放電管2に巻回した周面電極4Bにも同様に周方向に16個の波が形成されるように所定のピッチ(本例では中心角22.5°)で起伏が形成され、放電管2に線接触している部分23と、中心電極4Aに形成された各突条22が、径方向に対向するように設けられている。
これにより、電極4A,4Bの最も接近した部分が線状に形成されて対向することとなるので、点灯時に絶縁破壊がおきやすい。
【0033】
すなわち、このエキシマランプ21に、電源5から例えば20kHzの高周波電圧を電極4A,4B間に印加すると、図7(b)に示すように、電極4A,4B同士の最も接近した部分、すなわち、中心電極4Aの各突条22…と、これに対向する周面電極4Bの放電管2に線接触している部分23…との間で電界Eが形成される。
しかも、双方の電極4A,4Bの対向部分はいずれも線状に形成されているので、電界Eは双方の電極4A,4Bに対して局部的に集中して形成され、したがって、点灯時に大電力を印加しなくても絶縁破壊がおきやすく点灯性が向上する。
さらに、そのような集中電界Eが、中心電極4Aから放射状に16方位に向って形成されるので、極めて点灯性に優れる。
【0034】
なお、エキシマランプ21から照射される紫外線の利用効率に優れる点、周面電極4Bに形成された光触媒層20による浄化処理効率が高い点は、実施例1と同様である。
また、中心電極4Aの表面に突条を形成する場合に限らず、多数の突起を形成しても同様である。
【実施例3】
【0035】
図8及び図9はさらに他の実施例を示す。
本例のエキシマランプ25に使用される周面電極4Bは、多孔質光触媒シート11を曲げ加工して起伏を形成すると共に、その起伏の形成方向と直交する方向に巻回した蛇腹状に形成されており、放電管2の周方向に沿って線接触されている。
本例の中心電極4Aは、通常の棒状電極を使用しているが、図1及び図3に示すようなナイフエッジを形成した帯板状の電極であっても、図7に示すように表面に突条22…を形成したものであっても、さらには、突起を形成したものであってもよい。
【0036】
本例においても、周面電極4Bが放電管2に線接触されているので、中心電極4Aとの間で形成される電界Eは、少なくとも周面電極4B側で集中することとなり、したがって絶縁破壊がおきやすく、点灯性を向上させることができる。
また、エキシマランプ25から照射される紫外線の利用効率に優れる点、周面電極4Bに形成された光触媒層20による浄化処理効率が高い点は、実施例1及び2と同様である。
【実施例4】
【0037】
さらに、本発明に係るエキシマランプ26は、図10に示すように、周面電極4Bとして、フラットな多孔質光触媒シート11を略楕円に巻回して、その短軸方向部分を放電管2の管軸方向に線接触させ、長軸方向に二つのトンネル状の隙間8を形成しても良い。
この場合、中心電極4Aの両端縁6a、6bと、これに対向する周面電極4Bの放電管2に線接触している部分11a、11bとの間で集中電界Eが形成されるので、実施例1と同様点灯性に優れる。
紫外線の利用効率、光触媒層20の浄化処理効率が高いのも、実施例1と同様である。
【0038】
なお、いずれの実施例においても、中心電極4Aは、ナイフエッジを形成した帯板上のものに限らず、両端縁が尖っていない単なる板状としたり、円柱状、円筒状に形成してもよい。
また、周面電極4Bに形成される波状の起伏は、ピッチが一定の場合に限らず、被処理流体の状態に応じて起伏の大きさや長さを変えて、トンネル状の隙間8の大きさを変えたものでもよい。
【0039】
また、キセノンガスに替えてより点灯し易い放電ガスを使用するなどして、局所的に電界を集中させる必要が無い場合には、周面電極4Bを放電管2の外周面に沿った円筒状として、放電管2の外表面に面接触させて、トンネル状の隙間を無くしても良い。
この場合においては、多数の微細透孔を設けた周面電極4Bの非周期性海綿構造により、電界の集中が生じ、絶縁破壊がおきやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のエキシマランプは、周面電極に光触媒を担持させているので、このまま励起光源付き光触媒ユニットとして空気清浄機や浄水器に組み込んで使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 エキシマランプ
2 放電管
3 放電空間
4A、4B 電極
11 多孔質光触媒シート
12 チタンシート
14 チタンメッシュ(導電性メッシュ)
16 アナターゼ型酸化チタン
20 光触媒層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ガスが気密に封入される放電管に形成された放電空間を挟むようにその外側に一対の電極が配され、当該電極間に高周波電圧を印加することにより前記放電空間内に誘電体バリア放電を生じさせて紫外線を照射するエキシマランプにおいて、
前記放電空間の少なくとも一部が円筒空間に形成されると共に、前記一対の電極が円筒空間の中心側に配される中心電極と外周側に配される周面電極とからなり、
当該周面電極は、多数の微細透孔が形成された導電性メッシュに光触媒を担持させた多孔質光触媒シートが巻回されて、前記放電管の外表面に設けられたことを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記周面電極は、前記放電管の外表面に線接触するように前記多孔質光触媒シートが湾曲又は折曲形成されてなる請求項1記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記多孔質光触媒シートは、一方向に沿って連続する波状の起伏が湾曲又は折曲形成されて成る請求項2記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記導電性メッシュが、チタンシートの片面又は両面から非周期的パターンによるエッチング処理を施して表裏を貫通する多数の微細流路を形成した非周期性海綿構造を有するチタンメッシュで成る請求項1乃至3いずれか記載のエキシマランプ。
【請求項5】
前記多孔質光触媒シートは、前記チタンメッシュの表面に陽極酸化皮膜による酸化チタンベースが形成され、当該酸化チタンベースにアナターゼ型酸化チタン粒子が焼き付けられて成る請求項4記載のエキシマランプ。
【請求項6】
前記中心電極が誘電体で覆われて前記放電管内に配されて成る請求項1乃至4いずれか記載のエキシマランプ。
【請求項7】
前記中心電極が帯板状に形成された請求項6記載のエキシマランプ。
【請求項8】
前記中心電極が表面に多数の突条又は突起が形成された棒状に形成された請求項6記載のエキシマランプ。
【請求項9】
前記周面電極は、前記多孔質光触媒シートが、前記起伏の形成方向に沿って巻回され、放電管の管軸方向に沿って線接触される請求項3乃至5いずれか記載のエキシマランプ。
【請求項10】
前記周面電極は、前記多孔質光触媒シートが、前記起伏の形成方向と直交する方向に巻回され、放電管の周方向に沿って線接触される請求項3乃至5いずれか記載のエキシマランプ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−195071(P2012−195071A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56427(P2011−56427)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(506308633)ユーヴィックス株式会社 (11)
【出願人】(000128496)株式会社オーク製作所 (175)
【Fターム(参考)】