説明

エキシマー紫外線励起蛍光の検出

誘電体障壁−放電エキシマーランプ、エキシマーランプに接続するために適用される励起源、二酸化硫黄を含有する試料ガスを有する蛍光チャンバ、蛍光チャンバとともに動作する光電型検出器、及び試料の二酸化硫黄含有量を決定するための信号解析及び調整装置を備えるUV励起蛍光検出システムが提供される。誘電体障壁−放電エキシマーランプはクリプトン−塩素エキシマー充填ガス混合気を有する。励起干渉フィルタ及び蛍光フィルタをランプ及びチャンバとともに用いることができる。別の実施形態において、発明は、特定の波長を有する発光スペクトルを発生するエキシマーガス混合気を励起する工程、この波長を測定対象の特定の化学種に作用させる工程、特定の化学種を励起し、よって励起された化学種に固有の二次蛍光または燐光の発光を誘起する工程、及び被検下にある特定の化学種からのこれらの発光を分析する工程を含む、特定の化学種を検出するための好ましい検出方法である。また別の実施形態において、発明は、エキシマーガス混合気を励起する工程、被検下にある特定の化学種の蛍光発光を強める最適波長を有する発光スペクトルを発生させる工程、最適波長を特定の化学種に作用させる工程、特定の化学種の励起された形態を発生させる工程、特性スペクトルプロファイルを有する発光を、特定の化学種から誘起する工程、及び被検下にある化学種の含有量を評価するために発光を分析する工程を含む、特定の化学種を検出するための好ましいUV励起蛍光検出方法である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエキシマーUV(紫外線)励起蛍光の検出のためのシステム及び方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、紫外線励起蛍光を用いる、二酸化硫黄の検出感度を高めるためのシステム及び方法を提供する。さらに一層詳しくは、本発明はKrCl誘電体障壁−放電(DBD)エキシマーランプを用いる二酸化硫黄検出のためのシステム及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素燃料の燃焼によって生じる環境への影響を低減しようとする努力のため、自動車燃料の総結合硫黄含有量の許容レベルに課される要件はますます厳しくなり続けている。最近公布された米国連邦政令ガイドラインは、結局、現在課されている濃度よりさらに低い望ましい濃度のこれらの生成物の研究施設での分析及びオンライン分析に対する現行のASTM(米国材料試験協会)法にかなり達成困難な課題をもたらすことになろう。この結果、これらの燃料に課されていく厳しい要件に追従していくためには、改善されているかまたは代替の方法が開発される必要がある。以下に、提案される改善された方法及びそれにともなう結果を説明する。
【0003】
現在、蛍光X線(XRF)法は現行のガイドラインより低いレベルの硫黄含有量の再現性がある分析を提供できる能力が低い。炎光光度検出(FPD)法及び硫黄化学発光(SCD)法はより高い感度を有するが、様々な問題がある。いずれの方法でも、初期費用及び運転費用のいずれをも高めるだけでなく、安全要件を満たすためにこれらのシステムのシステム複雑性も高める、危険ガスである水素を使用する必要がある。FPD法は、開平、複数点較正及び/または濃度差に対して線形関係を近似するための硫黄添加を必要とする、硫黄への固有の非線形応答も有する。化学発光分析には安定な真空源及びオゾン発生器がさらに必要であり、システム複雑性が高くなり、高い維持費及び長期安定性問題のために評価が低い。
【0004】
広く用いられ、多年にわたり工業的利用で確証されている、最も簡単かつ最も実用的な低レベル硫黄分析法は、UV励起蛍光法である。燃料内の総硫黄含有量は、酸化されてCO,HO及びSOになる全ての炭化水素及び硫黄種の完全燃焼によって決定される。この方法は次いで、二酸化硫黄の光励起及びその後の、二次発光であるより長波長の連続光、すなわち連続蛍光線の検出を含む。
【0005】
初めに開発されたUV励起蛍光検出器は連続型であったが、これらの検出器の感度は、一部はUV励起ランプ内のプラズマの不安定性によるランプ光強度変動に起因する、固有の背景雑音すなわちベースライン不安定性により制限される。228nm及び214nmスペクトル輝線をそれぞれ利用する、カドミウム励起ランプ及び亜鉛励起ランプの両者が成功裏に適用されてきたが、現在では、試料の水分含有量の変動による蛍光消光の影響が最小であることにより、分析機器工業内では亜鉛ランプが好んで利用されている。
【0006】
検出限界をさらに下げるための試みにおいて、パルスUV励起蛍光(PUVF)法が開発された。PUVFの動作原理は、励起源としてキセノンフラッシュランプを使用することを除き、連続型UV励起蛍光検出器と極めて類似している。光が電気的に‘パルス化’されるから、信号対雑音比が改善され、より低い検出感度レベルが日常的に達成される。しかし、フラッシュランプ光強度はパルス毎にかなり変化するから、フラッシュ光強度は別の光検出器を用いて電気的に規格化され、誘起蛍光はある時間にわたって平均される。PUVF検出器は、理想的には、遭遇するSOの濃度が一般に時間とともにかなり緩やかに変化する、大気モニタリング及び同様のタイプの応用に適する。残念なことに、励起源のパルス性のために、総硫黄ピーク積分またはクロマトグラフィー分析による硫黄分種化のような、より高速の検出に対しては、PUVF検出器も要件を満たし得ない。
【0007】
さらに、フラッシュランプの動作、信号同期化及び引き続くデータ平均化に必要な補助エレクトロニクスの複雑性により、検出器は、連続型UV検出器よりかなり複雑になり、費用がかかる。
【0008】
検出器設計の最適化により、受け入れられるUV励起蛍光検出法に対するいくつかのさらなる改善を実現することができるが、固有の限界が現行方法のいかなるかなりの感度向上も妨げている。感度をさらに高めるための努力のほとんどは主として、励起及び蛍光信号を最大化するための改善された検出器構造及び光コンポーネントの慎重な選択による背景雑音の低減に向けられている。SO蛍光検出器の製造業者のいくつかは多年にわたり検出限界を押し下げようと努力してきているが、現在利用されているUV励起ランプまたはUV励起源では、現行の検出レベルをかなり改善できるとは思えないというのが出願人の意見である。
【0009】
したがって、高められた感度を有する二酸化硫黄の改善されたUV励起蛍光検出が必要とされている。
【0010】
新しい励起源によって、現在受け入れられている標準のUV励起蛍光法の利用により達成される現在のSO感度に対する改善を得ることができよう。この新しい励起源、すなわちエキシマーランプは、従来の亜鉛ランプまたはカドミウムランプよりも高いスペクトル純度を有する、高強度UV発光を生じる。
【0011】
エキシマーランプは、‘励起二量体’原理に基づく障壁−放電デバイスであり、不活性充填ガスまたは特定のハロゲンガスと不活性充填ガスの混合気が入っている。交流高電圧場が絶縁性媒質すなわち誘電体で隔てられた電極に印加され、充填ガス原子を励起して励起分子種を一時的に形成する、微視的な内部フィラメント放電の発生を誘起する。これらの短寿命遷移分子は急速に解離し、基底状態への遷移において失われる量子エネルギーに正比例する特定の波長の光子を放出する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、高められた感度を有する二酸化硫黄の改善されたUV励起蛍光検出の手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴は、被検下にある化学種の吸収帯と相関する波長または波長域において励起エネルギーを発生する発光を有する、UV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0014】
本発明の特徴は、最大蛍光強度をもたらすSOのピーク吸収帯と相関する励起波長を有する、UV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の特徴は、最大蛍光発光を誘起する吸収帯と相関するような222nmの励起波長またはその近傍において最大蛍光強度を有する、UV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の特徴は、誘電体障壁−放電エキシマーランプを利用する、UV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の特徴は、クリプトン−塩素エキシマー(KrCl)混合気を利用する、UV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の特徴は、背景測定限界の影響を軽減するために、より高い発光スペクトル純度をもつ励起源を有する、UV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の特徴は、信号対雑音比を高めるために、より高い発光スペクトル純度をもつ励起源を有する、UV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0020】
本発明のまた別の特徴は、ある用途に対して(1つまたは複数の)励起源フィルタの必要を排することができるように、より高い発光スペクトル純度をもつ励起源を有する、UV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0021】
本発明の別の特徴は、連続動作モードまたはパルス動作モードで動作させることができる、UV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0022】
本発明のまた別の特徴は、検出可能な最低レベルまたは最低濃度をさらに低めるための、UV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0023】
本発明のまた別の特徴は、亜鉛ランプで得られるよりも高い干渉性一酸化窒素(NO)除去比をもつ、SO蛍光を生じさせることである。
【0024】
本発明のまた別の特徴は、より安定な動作のために閉ループフィードバック制御を行うことができる、パルスUV励起蛍光検出システム及び方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらなる特徴及び利点は、一部は以下の説明に述べられ、一部は説明から明らかになるであろうし、本発明の実施により体得することができる。本発明の特徴及び利点は、添付される特許請求の範囲で特に示される組合せ及び工程を用いて実現することができる。
【0026】
上記の課題、特徴及び利点を達成するための、並びに本明細書で具現化され、概括的に説明されるような本発明の目的にしたがう、UV励起蛍光検出システム及び方法が提供される。
【0027】
本発明の一実施形態において、誘電体障壁−放電エキシマーランプ、高電圧AC電源または誘電体障壁−放電エキシマーランプのためのその他の励起源、二酸化硫黄を含有することもできる、試料ガスが入っている蛍光チャンバ、蛍光チャンバにともなって動作する光電型検出器、及び蛍光チャンバ内の試料の二酸化硫黄含有量を決定するために備えられる信号調整及び分析装置を備える、UV励起蛍光検出システムが提供される。誘電体障壁−放電エキシマーランプは、ランプ外囲器内にクリプトン−塩素エキシマー(KrCl)ガス混合気が入っている。励起及び蛍光を強めるために、(1つまたは複数の)光励起バンドパスフィルタまたはその他のフィルタ及び蛍光フィルタを蛍光チャンバとともに用いることができる。
【0028】
別の実施形態において、クリプトン−塩素エキシマー(KrCl)混合気を有するエキシマーランプ、エキシマーランプのための励起源、二酸化硫黄を含有するガス試料を収容するための、1つの場所に励起干渉フィルタを有し、別の場所に蛍光フィルタを有する、試料チャンバ、試料チャンバの蛍光フィルタとともに動作する光電型検出器、及び試料チャンバ内の試料の二酸化硫黄含有量を決定するための分析装置を備える、UV励起蛍光検出システムが提供される。
【0029】
特定の化学種を検出するための好ましいUV励起蛍光検出方法は、二次蛍光発光を生じさせる波長を有する発光スペクトルを発生させるためにエキシマーガス混合気を励起する工程及び、被検下にある化学種に固有の特性スペクトルプロファイルを有する、励起された化学種に固有の蛍光発光を発生させるために特定の化学種に波長を作用させる工程を含む。
【0030】
特定の化学種を検出するための別のUV励起蛍光検出方法は、エキシマーガス混合気を励起する工程、被検下にある特定の化学種の蛍光発光を強める最適波長を有する発光スペクトルを励起されたエキシマーガス混合気から発生させる工程、最適波長を特定の化学種に作用させる工程、励起された形態に固有の蛍光発光を、最適波長に作用された特定の化学種から発生させる工程、被検下にある特定の化学種に固有の特性スペクトルプロファイルを有する蛍光発光を特定の化学種から誘起する工程、及び被検下にある化学種の定性的または定量的含有量を評価するために特性スペクトルプロファイルから発光を分析する工程を含む。
【0031】
当業者であればさらなる利点及び改変を容易に考えつくであろう。したがって、本発明はさらに広い態様において、本明細書に示され、説明される、特定の詳細、代表的装置、及び実例に限定されない。したがって、開示される本発明の全般的概念の精神または範囲を逸脱することなく詳細からの新発展がなされ得る。
【0032】
本明細書に組み入れられて本明細書の一部をなす添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、上に与えられた本発明の全般的説明及び以下に与えられる好ましい実施形態の詳細な説明とともに、本発明の原理の説明に役立つ。
【0033】
上述の全般的説明及び以下の詳細な説明は包括的な本発明の例示に過ぎず、本発明の精神及び範囲を逸脱することのない本発明のさらなる態様、利点及び特色を当業者であれば容易に思いつくであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
エキシマーランプの動作
エキシマーランプは、誘電体障壁放電として知られる機構により、高強度で挟帯域のUV光を発生し、無音放電装置とも称される。エキシマーランプは数多くの構成を有することができるが、必ず、少なくとも1つの誘電媒質で隔てられた2つの電極及び希ガスあるいは希ガス−ハロゲンガス混合気または複合体を収めている。最も多く用いられる誘電媒質は高純度石英または石英ガラスである。
【0035】
エキシマーランプの動作は交流高電圧場が電極に印加されたときに開始される。誘電媒質は全ての誘電体材料の高抵抗性により初めは抵抗して電流を通さず、電荷が電極間に蓄積し始めるであろう。電圧すなわち印加電場強度が高くなり続けると、誘電媒質が印加電場の強まり続ける圧力にもはや抗し得ない、誘電破壊として知られる臨界点に達する。
【0036】
電圧が臨界点に達すると、電流が誘電体を通って運ばれ、多くのランダムに分布する微視的放電をエキシマーガスに渡すであろう。これらの微小放電によりつくられたプラズマが周囲の不活性ガスをイオン化して励起状態にする。励起された希ガス種は次いで弱束縛電子をハロゲン分子に渡して‘励起二量体’すなわちエキシマー複合体を形成する。時にエキシプレックスと称される、エキシマー複合体は、通常の条件下では基底状態での存在が許されない、誘起形成による分子種である。
【0037】
これらのエキシプレックス分子の極めて不安定な性質により、それらの原子は急速に、通常は数ナノ秒内に、分離し、分解するであろう。分子が解離して基底状態に戻る過程の間、励起エネルギーがUV光子の形態で放出される。放出される光子の波長はエキシマー複合体の希ガス種または希ガス−ハロゲン種のいずれにも依存し、これらの分子の励起状態と基底状態の間で失われる遷移エネルギーに正比例する。
【0038】
KrClエキシプレックスの代表的な発光スペクトルは222nmの主発光波長を示すが、同様の付随エキシマー遷移にともなうかなり強度の低い他の波長が不可避的に存在する。付随発光波長のスペクトル分布及びレベルはエキシマーガスの純度、充填圧力及び動作温度に関係することがわかっている。
【0039】
UV励起蛍光検出器の動作
光子がランプの放射アパーチャを出ると、光子はエキシマー波長の高いUV透過に適する材料でつくられたレンズまたはレンズ対によって集められる。第1のレンズの機能はランプから放射される発散光線を集めてコリメートすることである。第2のレンズは、引き続いて、第1のレンズからのコリメートされた光線を蛍光チャンバの中心内の、好ましくは光検出器または光電子増倍管の真っ直ぐ前すなわち光検出器または光電子増倍管の軸に垂直な方向にある焦点に集束する。
【0040】
光が蛍光チャンバに入る前に、光は挟通過帯域干渉フィルタを通過する。このフィルタの機能は所望の励起波長、この場合は222nm、を通し、不要な波長のチャンバへの入射を阻止または排除することである。励起波長以外のいかなる波長も、特に励起または測定される化学種の蛍光帯域に入るいかなる波長も、最適蛍光検出を妨害する望ましくない背景を生じさせ得る。
【0041】
測定対象の試料ガスは、蛍光チャンバすなわち試料チャンバを通って流れるように向けられる。このガスは、環境モニタリングまたは自動車排気用途に対する場合のように、真空ポンプまたは圧力によって引き込まれる、大気または内燃機関からの排気とすることができる。あるいは、試料は、定性及び/または定量分析のための、石油燃料及び関連製品だけでなく、SOまたはSOに転化されるその他の硫黄化合物を含有し得るいかなる非関連試料にも関する、総硫黄分析器に一般に見られるような酸化燃焼炉からの排気とすることができよう。
【0042】
励起光の光子からのエネルギーはSO分子に吸収され、吸収されたエネルギーは引き続いて様々な機構によって失われるかまたは散逸される。エネルギーは、共鳴蛍光として知られる、同じ波長の光として再放出され得る。エネルギーは、正味のエネルギーレベルが同じ電子一重項レベル内の最低の回転または振動レベルまで減衰しながら熱の形態で失われることもある。
【0043】
本検出器による検出が主目的とされる、失われるエネルギーの形態は、最も普通に単に蛍光と称される、SOが一重項レベル内の最低の回転及び振動レベルから減衰して基底状態に戻るときにおこる現象である。蛍光は励起源よりエネルギーが低い光子を含み、通常は、より長波長の広帯域連続体である。蛍光の減衰時間は極めて短く、ほとんどの実用目的に対しては、ほぼ即時と見なされる。
【0044】
しかし、そのような検出器は、励起一重項状態の分子が減衰して最終的に基底状態に戻る前に、対応する三重項状態にシフトするような、非発光遷移が初めにおこる場合に生じるまた別の放射エネルギーの形態の、SO燐光をさらに検出する。有意な持続性をもたない蛍光と異なり、燐光は準安定であり、基底状態に戻る確率がかなり低く、測定可能なより長い時間にわたって続く発光を生じる。
【0045】
放出光子は全方向に等しく放射されるから、比較的小率の部分が、蛍光フィルタとして知られる、第2のフィルタによって集められる。蛍光フィルタは一般に、SOの蛍光及び燐光発光からの光子を通過させ、およそ250〜450nmの理想的な波長通過範囲を有する、広帯域通過フィルタである。
【0046】
蛍光フィルタを通過した光子は次いで、蛍光発光波長に対して十分高い感度を有するべきである光検出器に当たる。このタイプの用途に普通に用いられる検出器は、光子エネルギーを電流に変換する、‘ダイノードチェーン’とも呼ばれる、一連の抵抗結合された荷電プレートを利用する光電子増倍管である。SO発光が電気的表現に変換されてしまえば、電気的表現を数多くのアナログ及び/またはデジタル信号調整エレクトロニクス構成によって処理することができる。処理には、信号フィルタリング、ピーク検出、積分、データ収集、信号平均化及び統計的データ解析機能を含めることができるが、これらには限定されない。様々な測定値表示構成によって実時間データ及び蓄積データを表すこともできる。
【0047】
動作
ここで、添付図面に示されるような、本発明の現在好ましい実施形態を詳細に参照する。
【0048】
図1は本発明のUV励起蛍光検出システム10の好ましい実施形態の略図である。UV励起蛍光検出システム10の主要コンポーネントは、エキシマーランプ100,光収集及びレンズ作用部材200,蛍光チャンバ300及びエレクトロニクス/分析部材400である。
【0049】
図2及び3はエキシマーランプ100の詳細を示す。エキシマーランプ100の実施形態が多数の多様な形態をとりうることは上の議論によって理解され得る。エキシマーランプ100の現在好ましい実施形態は、外部電極110,内部電極120及び石英外囲器130を備える。石英外囲器130は、内部円筒表面で内部電極100と、また外部円筒表面で外部電極130と接している。
【0050】
エキシマーランプ100は、エレクトロニクス400によって電力が供給される。エレクトロニクス400によって、エキシマーランプ100の電極110,120に交流高電圧場が印加される。誘電媒質は、誘電体材料の高抵抗性により初めは抵抗して電流を通さないであろう。電荷が電極110,120間に蓄積し始めるであろう。電圧すなわち印加電場強度が高くなり続けると、誘電破壊として知られる臨界点に達する。
【0051】
電圧が誘電破壊点に達すると、電流が誘電体を通って伝導し、数多くのランダムに分布する微視的放電によって、石英外囲器130内のエキシマーガスに渡されるであろう。微小放電によってプラズマが生成され、プラズマは周囲の不活性ガスをイオン化して励起状態にする。励起された希ガス種は次いで弱束縛電子をハロゲン分子に渡して‘励起二量体’すなわちエキシマー複合体を形成するであろう。エキシプレックス分子の極めて不安定な性質により、それらの原子は急速に、通常は数ナノ秒内に、分離し、分解するであろう。分子が解離して基底状態に戻る過程の間、それらの励起エネルギーはUV光子の形態で放出される。放出される光子の波長は、石英外囲器130内のエキシマー複合体の希ガスまたは希ガス−ハロゲン種に依存するであろうし、分子の励起状態と基底状態の間で失われる遷移エネルギーに正比例する。
【0052】
光子は放射アパーチャ132を通ってランプ100を出るであろう。放射された光子はレンズ作用部材200を通過して蛍光チャンバ300に入るであろう。レンズ作用部材200において、光子はアパーチャ部材202のアパーチャ202Aを通過するであろう。次いで、光子は、エキシマー波長の高いUV透過に適する材料でつくられた一対のレンズ204,206によって集められる。第1のレンズ204の機能はランプ100から放射される発散光線を集めてコリメートすることである。第2のレンズ206は、引き続いて、第1のレンズ204からのコリメートされた光線を蛍光チャンバ300内の、好ましくは光検出器または光電子増倍管450の真っ直ぐ前すなわち光検出器または光電子増倍管450に垂直な方向にある集束点すなわち焦点312に集束する。
【0053】
光子すなわち光が蛍光チャンバ300に入る前に、光子は挟帯域通過干渉フィルタ306を通過する。筐体域通過干渉フィルタ306の機能は所望の励起波長、この場合は222nm、を通し、不要な波長の蛍光チャンバ300への入射を阻止または排除することである。励起波長以外のいかなる波長も、特に、例えば二酸化硫黄のような、励起または測定される化学種の蛍光帯域に入るいかなる波長も、最適蛍光検出を妨害する望ましくない背景を生じさせ得る。
【0054】
測定対象の試料ガスは、流入口302を通って入り、チャンバ310を通過して、流出口304から出ることにより、蛍光チャンバ300を通って流れるように向けられる。試料ガスは、例えば、環境モニタリングまたは自動車排気用途に対する場合のように、真空ポンプまたは圧力によって引き込まれる、大気または内燃機関からの排気とすることができる。あるいは、試料は、定性及び/または定量分析のための、石油燃料及び関連製品だけでなく、SOまたはSOに転化されるその他の硫黄化合物を含有し得るいかなる非関連試料にも関する、総硫黄分析器に一般に見られる酸化燃焼炉からの排気とすることができよう。励起光の光子からのエネルギーは被検下にある化学種、例えばSO分子に吸収され、吸収されたエネルギーは引き続いて様々な機構によって失われるかまたは散逸される。エネルギーは、共鳴蛍光として知られる、同じ波長の光として再放出され得る。エネルギーは、正味のエネルギーレベルが同じ電子一重項レベル内の最低の回転または振動レベルまで減衰しながら熱の形態で失われることもある。検出器450は主に、SOが一重項レベル内の最低の回転及び振動レベルから減衰して基底状態に戻るときにおこる現象である、蛍光を検出する。しかし、本発明を用いて別のタイプのエネルギーを検出できることが理解され得る。そのような検出器はさらに、励起一重項状態が減衰して最終的に基底状態に戻る前に対応する三重項状態に初めにシフトするような、非発光遷移がおこる場合に生じるまた別の放射エネルギーの形態の、SO燐光を検出する。有意な持続性をもたない蛍光と異なり、燐光は準安定であり、基底状態に戻る確率がかなり低く、測定可能なより長い時間にわたって続く発光を生じる。
【0055】
放出光子は全方向に等しく放射され、したがって、比較的小率の部分が蛍光チャンバ300の蛍光フィルタ308によって集められる。蛍光フィルタ308は一般に、被検下にある化学種の蛍光及び燐光発光からの光子を通過させ、SOに対する250〜450nmのような、理想的な波長通過範囲を有する、広帯域通過フィルタである。
【0056】
蛍光フィルタ308を通過した光子は次いで、蛍光発光波長に対して十分高い感度を有するべきである光検出器450に当たる。このタイプの用途に普通に用いられる検出器450は、光子エネルギーを電流に変換する、光電子増倍管である。SO発光が電気的表現に変換されてしまえば、電気的表現をエレクトロニクス400によって処理することができる。エレクトロニクス400は、数多くのアナログ及び/またはデジタル信号調整エレクトロニクス構成とすることができる。処理には、信号フィルタリング、ピーク検出、積分、データ収集、信号平均化及び統計的データ解析機能を含めることができるが、これらには限定されない。様々な測定値表示構成によって実時間データ及び蓄積データを表すこともできる。好ましい構成は、検出器450に電力を供給するための高電圧電源402,電位計/増幅器404,データ収集/信号処理406,積分/平均化エレクトロニクス408,記録計/ディスプレイ410及びエキシマーランプ100に電力を供給するための高電圧RF/AC電源412を備える。
【0057】
図4は本発明の好ましいUV励起蛍光検出方法を示すフローチャートである。特定の化学種を検出するためのUV励起蛍光検出方法は、エキシマーガス混合気を励起する工程、被検下にある特定の化学種の蛍光発光を強める最適波長を有する発光スペクトルを励起されたエキシマーガス混合気から発生させる工程、最適波長を特定の化学種に作用させる工程、特定の化学種の励起された形態を発生させる工程、被検下にある特定の化学種に固有の特性スペクトルプロファイルを有する蛍光発光を、特定の化学種から誘起する工程、及び被検下にある特定の化学種の含有量を評価するために特性スペクトルプロファイルから発光を分析する工程を含む。
【0058】
図5は本発明の別の好ましいUV励起蛍光検出方法を示すフローチャートである。特定の化学種を検出するための別の好ましいUV励起蛍光検出方法は、特定の化学種の発光を誘起する波長を有する発光スペクトルを発生するエキシマーガス混合気を励起する工程、励起された特定の化学種に固有の蛍光発光を発生させるためにこの波長を特定の化学種に作用させる工程、及び被検下にある励起された化学種からの発光を分析する工程を含む。
【0059】
当業者であればさらなる利点及び改変を容易に思いつくであろう。したがって、本発明はさらに広い態様において、本明細書に示され、説明される、特定の詳細、代表的装置、及び実例に限定されない。したがって、開示される本発明の全般的概念の精神または範囲を逸脱することなく詳細からの新発展がなされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のUV励起蛍光検出システムの好ましい実施形態の略図である
【図2】図1に示されるエキシマーランプの断面図である
【図3】図2に示される区画3−3に沿ってとられたエキシマーランプの断面である
【図4】本発明の好ましいUV励起蛍光検出方法を示すフローチャートである
【図5】本発明の別の好ましいUV励起蛍光検出方法を示すフローチャートである
【符号の説明】
【0061】
10 UV励起蛍光検出システム
100 エキシマーランプ
200 光収集及びレンズ作用部材
300 蛍光チャンバ
400 エレクトロニクス/分析部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の二酸化硫黄含有量を決定するためのUV(紫外線)励起蛍光の検出システムにおいて、
(a) クリプトン−塩素エキシマーガス混合気を内部に有する石英外囲器、
(b) 前記石英外囲器を含む励起源、
(c) 二酸化硫黄を含有するガス試料を収容するための、励起干渉フィルタ及び蛍光発光フィルタを有する蛍光チャンバであって、前記励起干渉フィルタを介して前記励起源が前記蛍光チャンバと通じている蛍光チャンバ、
(d) 前記蛍光チャンバの前記蛍光フィルタとともに動作する光電型検出器、及び
(e) 前記蛍光チャンバ内の前記試料の前記二酸化硫黄含有量を決定するための前記光電型検出器と通じる装置、
を備えることを特徴とするUV励起蛍光の検出システム。
【請求項2】
試料の二酸化硫黄含有量を決定するためのUV励起蛍光の検出方法において、
(a) エキシマーガス混合気を励起する工程、
(b) 二酸化硫黄の蛍光発光を強める最適波長を有する発光スペクトルを励起された前記エキシマーガス混合気から発生させる工程、
(c) 前記最適波長を二酸化硫黄に作用させる工程、
(d) 二酸化硫黄の励起された形態に固有の蛍光発光を、前記最適波長に作用された前記二酸化硫黄から発生させる工程、
(e) 二酸化硫黄に固有の特性スペクトルプロファイルを有する蛍光発光を前記二酸化硫黄から誘起する工程、及び
(f) 前記二酸化硫黄含有量を評価するために前記特性スペクトルプロファイルから前記発光を分析する工程、
を有してなることを特徴とするUV励起蛍光の検出方法。
【請求項3】
試料の含有量を決定するためのUV励起蛍光の検出システムにおいて、
(a) エキシマーガス混合気を内部に有する誘電体障壁−放電エキシマーランプ、
(b) 測定対象の特定のガス化学種を含有するガス試料を収容するための蛍光チャンバであって、励起干渉フィルタ及び蛍光フィルタを有し、よって前記ランプが前記干渉フィルタを介して前記チャンバと通じる蛍光チャンバ、
(c) 前記蛍光チャンバの前記蛍光フィルタとともに動作する光電型検出器、及び
(d) 前記蛍光チャンバ内の測定対象の前記特定の化学種の含有量を決定するための前記光電型検出器と通じる装置、
を備えることを特徴とするUV励起蛍光の検出システム。
【請求項4】
特定の化学種を検出するためのUV励起蛍光の検出方法において、
(a) エキシマーガス混合気を励起する工程、
(b) 被検下にある前記特定の化学種の蛍光発光を強める最適波長を有する発光スペクトルを励起された前記エキシマーガス混合気から発生させる工程、
(c) 前記特定の化学種に前記最適波長を作用させる工程、
(d) 前記特定の化学種の励起された形態を発生させる工程、
(e) 被検下にある前記特定の化学種に固有の特性スペクトルプロファイルを有する蛍光発光を、前記特定の化学種から誘起する工程、及び
(f) 被検下にある前記特定の化学種の含有量を評価するために前記特性スペクトルプロファイルから前記発光を分析する工程、
を有してなることを特徴とするUV励起蛍光の検出方法。
【請求項5】
特定の化学種を検出するためのUV励起蛍光の検出方法において、
(a) 前記特定の化学種の発光を誘起する波長を有する発光スペクトルを発生するエキシマーガス混合気を励起する工程、
(b) 励起された化学種に固有の発光を発生させるために前記特定の化学種に前記波長を作用させる工程、及び
(c) 被検下にある前記励起された化学種からの前記発光を分析する工程、
を有してなることを特徴とするUV励起蛍光の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−524801(P2007−524801A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565616(P2004−565616)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/040787
【国際公開番号】WO2004/061415
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(505243261)
【氏名又は名称原語表記】OLSTOWSKI,Franek
【Fターム(参考)】