説明

エキソソーム及びコルチコステロイドを有する併用製剤

本発明は、コルチコステロイド及びエキソソームを有する併用療法用の薬剤学的組成物に関する。前記併用療法を用いて、関節症、関節炎及び/又は変形性脊椎症のような病気が処置されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルチコステロイド及びエキソソームを有する併用療法用の薬剤学的組成物に関する。前記併用療法を用いて、関節症、関節炎及び/又は変形性脊椎症のような病気が処置されることができ、その際に前記処置は好ましくは局所的に行われる。
【0002】
技術的背景
関節症は、独国において"関節摩耗"と呼ばれ、この摩耗は年齢で普通の限度を超える。この摩耗は冒された関節中の軟骨の損失を必然的に伴い、それらから痛み及び機能の悪化がもたされる。原因となるのは、過剰の負荷、先天的な原因又は外傷に関連した原因、例えば関節の位置異常、又は骨粗鬆症のような骨疾患による骨の変形ともされている。これは、同様に、他の疾患、例えば関節の炎症の結果として生じうるか、又は過負荷を原因とする滲出液形成を必然的に伴いうる。
【0003】
原則的に、全ての関節は、関節症変化(arthrotischen Veraenderungen)に冒されうる。独国においては、前記疾患は最も普通に膝関節中に局在化される。関節症は、一般医学の実務における最も普通の相談理由の1つである。西側諸国の人口の約10%は関節症にかかる。小さな椎骨関節の関節症及び変形性関節間板疾患をそれに含めると、人口の約15%〜20%さえも冒されている。関節症にかかるリスクは、年を取るにつれて高まる。65歳を超えるヒトの約3分の2は、前記疾患に冒されているが、しかしながら全ての罹患者が前記症状に苦しんでいるわけではない。
【0004】
関節症の処置のためには、既に幾つかの療法形態が知られている。これらには、保存的な(例えば薬物による)療法並びに人工補装具による完全な関節の置換に至るまでの外科手術が含まれる。そのような大々的で不可逆的な手術を回避するためには、完全関節置換術の時点をできるだけ長く先延ばしするための有効な薬物による処置を原則的に優先させるべきである。
【0005】
しかしながら、多くの薬物による処置は欠点も有する。一方では、これは医薬自体の副作用にあり、しかしまたそれらの有効性も、制約されて部分的に与えられているに過ぎない。
【0006】
関節症及び関節リウマチの処置のためにしばしば使用される医薬作用物質は、コルチゾン(局所的にも適用される)及び類縁のコルチコステロイドである。これらは全身性RAの場合及び関節症の場合に、冒された関節への注射として局所投与される。この場合に、しかしながら、コルチコステロイド投与の有利な作用は、関節症並びに関節リウマチの場合に、たった1週間後に既に明らかに弱まることがわかっている。これは、無作為研究及び臨床経験に基づいて臨床的に確実視されている。RAの場合に、コルチゾンの連続投与により全身で作用物質レベルを高く維持することが試みられるが、しかしながら、これは、副作用の増強及び連続投与の場合の治療効果の減弱のために、極めて問題がある。
【0007】
エキソソームは、脂質膜により包まれた小さなベシクルであり、例えば人体の細胞外空間中に存在している。これらは細胞から、細胞形質膜が裂けることにより形成され、かつ分泌される。通常、これらのエキソソームは、それらの起源細胞から渡されたタンパク質も含有する。エキソソームを製取及び投与する方法は、例えば、国際公開(WO-A2)第2006/007529号に記載されている。適した容器、例えば注射器中での血液試料のインキュベーションによる、予防上又は治療上有効なタンパク質、例えばIL−1Raのインビトロ誘導の際に、エキソソームが形成される。その結果、例えばオルソキン(Orthokin)は、エキソソームを含有する。エキソソームの形成は、エキソソーム形成を促進する添加剤の添加により増大されることができる。エキソソームの濃度は、例えば、高い遠心加速度での遠心分離により増大されることができる。関節リウマチを処置する際のエキソソームの使用はそれ自体として知られている。
【0008】
関節症の処置に使用されることができる別の医薬は、自己のタンパク質IL−1Ra又は類似の活性を有するそのイソフォーム又はフラグメントである。インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)は、細胞表面上でインターロイキン−1(IL−1)と同一の受容体に結合するが、しかしそこではIL−1結合により通常引き起こされる信号カスケードを誘発しない。IL−1受容体への結合により、IL−1Raは、IL−1の結合をブロックし、こうしてそのシグナル伝達、ひいては目的細胞へのIL−1の炎症を促進する作用を妨げる。
【0009】
IL−1Raが豊富化された自己血清での患者の処置は、技術水準において知られている。こうして使用されるIL−1Raは、オルソキンとも呼ばれる。組換え型IL−1Raフラグメントであるアナキンラは、これとは異なり、関節症の処置の場合に、プラセボ処置と比較して何ら作用を示さなかった。アナキンラは、ヒトインターロイキン−1受容体アンタゴニストの、アミノ酸が26〜177個短くされ、かつ末端でL−メチオニル化されたイソフォームであり、かつ153個のアミノ酸の配列長さを有する。その製造は、例えば組換え法を用いてエシェリキア コリ(Escherichia coli)株により行われる。
【0010】
故に、技術水準を考慮すれば、より良好な有効性を有し、かつ特に良好な長期有効性を有する薬物による関節症処置を提供するという課題があった。前記処置は、そのうえ、好ましくは良好な有効性、より好ましくは関節炎、特に関節リウマチの場合に長期有効性を有するべきである。
【0011】
発明の要約
意外なことに、関節症、関節炎及び変形性脊椎症の場合のコルチゾンのようなコルチコステロイドの有効性、特に長期有効性及び作用開始の早さが、エキソソームの付加的な投与により明らかにもしくは相乗的に改善されることができることが今や確かめられた。このことは、特に、処置すべき関節へ直接、治療薬を局所投与する場合に見出される。意外な知見の一つは、例えば、例えば血液試料からオルソキン注射器中で製取されたエキソソームとの組合せでのコルチコステロイド(例えばオルソキンと併せたコルチコステロイド)の使用が、関節症の場合の作用開始の早さに関して、作用物質エキソソームを含まない療法よりも優れているように思われることである。迅速に現れる作用は、それ自体として既に有効な関節症療法(例えばアナキンラと併せたコルチコステロイド)に、付加的な作用物質としてエキソソームを添加する場合にも観察されうる。
【0012】
コルチコステロイド及びエキソソームの組合せは、作用開始の早さ並びに長期有効性に関して、関節リウマチの処置の場合にも、際立って良好な有効性を示す。この場合に、患者にとって特に好都合な副作用プロフィールで、意外に高い有効性による(異なる病態生理学的な出発点による)特に好都合な効果が見出された。好都合な副作用プロフィールは特に重要である、それというのも、慢性的なコルチコステロイド投与は、かなりの副作用、例えば代謝障害、骨粗鬆症及び他の副作用と結び付いているからである。しかしエキソソームとコルチゾンのようなコルチコステロイドとの組合せにより、コルチコステロイド(コルチゾン)の不都合な作用は低下し、かつ処置の有効性は高まる。
【0013】
前記指示とは独立して、エキソソームとコルチコステロイドとの組合せが、双方の作用物質エキソソーム及びコルチコステロイドの個々の治療効果の和を超える治療効果を、特に双方の作用物質がばらばらの投与の場合に治療上有効でない場合にも示すことが、かなりの患者の場合に観察され得た。
【0014】
故に、本発明は、第一態様において、コルチコステロイドを、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下でエキソソームと併せて含有する薬剤学的組成物を提供する。
【0015】
"サイトカインアンタゴニストの不在"という表現は、本発明の範囲内で、ただ一つのサイトカインアンタゴニストも存在していないことを意味する。このことは、増殖因子に関して相応して当てはまる。
【0016】
第一態様による薬剤学的組成物は、すなわち、いずれにせよコルチコステロイド及びエキソソームを含有する。さらに、サイトカインアンタゴニストの存在の選択肢又は不在の選択肢のいずれかがあり;そのうえ、増殖因子の存在の選択肢又は不在の選択肢のいずれかがある。
【0017】
同じように、前記治療薬は、2つの異なる薬剤学的組成物においても同時に又は時間順に投与されることができる。相応して、本発明の第二態様及び第三態様において、コルチコステロイドと併せた併用療法において使用するための、エキソソームをサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下で含有する薬剤学的組成物、並びにエキソソームと併せた併用療法において使用するための、コルチコステロイドをサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下で含有する薬剤学的組成物が提供される。
【0018】
本発明は、第四態様において、コルチコステロイド及びエキソソームと併せた併用療法において使用するためにサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子を含有する薬剤学的組成物を提供する。
【0019】
本発明による第五の態様において、(i)エキソソームをサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下で含有する薬剤学的組成物と、(ii)コルチコステロイドをサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在又は不在で含有する薬剤学的組成物とを含有するキットが提供される。
【0020】
そのうえ、本発明は、第六態様において、コルチコステロイドと併せた併用療法において使用するための薬剤学的組成物を製造するための、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下でのエキソソームの使用、及び第七態様において、エキソソームと併せた併用療法において使用するための薬剤学的組成物を製造するための、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下でのコルチコステロイドの使用に関する。
【0021】
上記で第二態様、第三態様、第四態様、第六態様及び第七態様に関連して述べた併用療法は、特に薬剤学的組成物自体中にサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子が不在である場合に、好ましくは、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子と併せた併用療法である。
【0022】
第八態様において、本発明は、次の工程:エキソソームを含有している血液試料を準備する工程、好ましくはエキソソームを濃縮する工程及びコルチコステロイドと混合する工程を含む、コルチコステロイド及びエキソソームを含有する薬剤学的組成物の製造方法に関する。
【0023】
本発明のさらなる実施態様は、以下の詳細な説明に及び特許請求の範囲に示されている。
【0024】
発明の説明
本発明は、関節及び脊柱の疾患、例えば関節症、関節炎及び変形性脊椎症の処置が、並びに自己免疫疾患、例えば神経皮膚炎及び円形脱毛症の場合に、エキソソームの付加的な投与によるコルチコステロイドを用いて明らかに改善されることができるという意外な知見に基づくものである。それゆえ、本発明は、エキソソームと併せたコルチコステロイドを用いるそのような疾患の併用療法に向けられている。この療法は、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下で行われることができる。サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在が好ましい。
【0025】
これらの異なる作用物質は、その際に、同時に − 同一の製剤中で又は異なる製剤中で −又は連続的にも投与されることができる。双方の作用物質エキソソーム及びコルチコステロイドの1つのみを含有する本発明による薬剤学的組成物は、本発明によるキットと同じように、故に、一方ではエキソソーム及びコルチコステロイドの同時投与のためのものであってよく、他方では連続投与のためのものであってよい。しかしながら、同時投与が、特に1つのみの製剤中での投与が、好ましい。そして、例えば、本発明によるキットの双方の薬剤学的組成物は、患者への投与前に適した比で混合されることができ、そうすると1つの製剤として投与されることができる。エキソソーム及びコルチコステロイドの連続投与の場合に、異なる作用物質は、好ましくは1週間の期間内、好ましくは5日、3日、1日以内又は12時間以内に投与される。
【0026】
エキソソーム及び/又はコルチコステロイドを含有する本発明による薬剤学的組成物中に、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子は存在していてよい又は不在であってよい。サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在が好ましい。すなわち、関節及び脊柱の疾患の場合のコルチコステロイドの有効性、特に長期有効性への明らかな有利な効果が、付加的にサイトカインアンタゴニスト、例えばオルソキン(天然型IL−1Ra)及びアナキンラ(組換え型IL−1Ra)が投与される場合に、特に処置すべき関節へ直接治療薬を局所投与する場合に、生じる。これらの作用物質の組合せの類似して意外に良好な有効性は、自己免疫病にも観察され、その際にとりわけ炎症抑制作用が役割を果たす。関節及び脊柱の疾患、例えば関節症、関節炎及び変形性脊椎症の場合にコルチコステロイド及びエキソソームを用いる併用療法の有効性は、サイトカインアンタゴニストの付加的な投与により同様にかなり改善される。組換え型IL−1Raであるアナキンラでの処置の場合に、意外なことにコルチコステロイドとの組合せによってはじめて有効性がもたらされる。天然型IL−1Raであるオルソキンの場合に、有効性の明らかな改善は、炎症性疾患の場合にまさに観察されうる。この状況の考えられる説明は、サイトカインアンタゴニストが、同化作用を有し、かつ冒された関節中でコルチコステロイドの既知の有害な異化作用を相殺しうるか又はそれどころか逆にしうることである。故に、コルチコステロイドは、例えば関節症の処置の際に、類似した作用を達成するために、サイトカインアンタゴニストに加えて、選択的に又は付加的に同化増殖因子とも組み合わされることができる。一般的に、サイトカインアンタゴニストは、増殖因子によっても置き換えられることができ、又は増殖因子と組み合わされることができる。
【0027】
コルチコステロイド及びエキソソームと併せた併用療法において使用するためのサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子を含有する本発明による各々薬剤学的組成物(本発明の第四態様による)は、一方ではサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子、エキソソーム及びコルチコステロイドの同時投与のためのものであってよく、かつ他方では連続投与のためのものであってよい。同時投与が、特に1つのみの製剤中での投与が、好ましい。そして、例えば、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子は、患者への投与前に適した比でコルチコステロイド及びエキソソームと混合されることができ、そうすると1つの製剤として投与されることができる。選択的に、同時投与の際に、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子、エキソソーム又はしかしコルチコステロイドは別個に投与されることもでき、かつ他の成分は、1つの製剤として混合されることができる。しかしながら、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子、エキソソーム及びコルチコステロイドは、任意の順序でも連続投与されることができ、又はこれらの作用物質の1つは、他の2つのものとは異なる時点に投与されることができる。連続投与の場合に、異なる作用物質は、好ましくは1週間の期間内、好ましくは5日、3日、1日以内又は12時間以内に投与される。
【0028】
他の、本発明による薬剤学的組成物並びに本発明によるキット及び本発明による使用(本発明の第一態様、第二態様、第三態様、第五態様、第六態様及び第七態様)の場合に、薬剤学的組成物中でのサイトカインアンタゴニストの存在又は不在が可能である。サイトカインアンタゴニストの存在が好ましい。そのうえ、本発明による併用療法は、特に薬剤学的組成物自体中にサイトカインアンタゴニストが不在である場合に、好ましくは、サイトカインアンタゴニストと併せた併用療法である(上記参照)。
【0029】
本発明により使用されるサイトカインアンタゴニストは、患者の体内で1種又はそれ以上のサイトカインの生物学的活性の少なくとも1つ、好ましくは本質的には全てを低下させるか又は阻害するあらゆる物質又はあらゆる物質混合物であってもよい。拮抗作用は、その際に直接アンタゴニストにより又は間接的に、例えばサイトカインの生物学的活性にも影響を及ぼす別の信号経路の活性化又は阻害により、行われることができる。好ましくは、サイトカインの生物学的活性は、サイトカインが結合することができる1種又はそれ以上の前記受容体とサイトカインとの相互作用をブロックすることにより阻害される。これは、例えば、アンタゴニストの相応する受容体への競争的な結合によるか又はサイトカイン自体へのアンタゴニストの結合により達成されることができる。好ましくは、サイトカインアンタゴニストは、サイトカインIL−1の作用を阻害する。
【0030】
サイトカインアンタゴニストは、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質又は有機化合物であってよい。また、サイトカインアンタゴニストは、本明細書に記載されているような2種又はそれ以上のサイトカインアンタゴニストの混合物からなっていてよい。特に、サイトカインアンタゴニストは、天然に存在するペプチド又はタンパク質又は組換えて製造されるペプチド又はタンパク質であってもよい。そのうえ、サイトカインアンタゴニストは、抗体又は抗体の抗原結合フラグメント、特に当該サイトカイン又はサイトカイン受容体を結合することができる抗体又は抗体フラグメントであってよく、又はそれらを含有していてよい。適したサイトカインアンタゴニストの例は、インターロイキンアンタゴニスト、特にIL−1アンタゴニスト、例えばIL−1Ra、腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト、特にTNF−α−アンタゴニスト、例えば抗TNF−α−抗体、インターフェロンアンタゴニスト、及びケモカインアンタゴニストである。特に好ましいのは、天然に存在するか又は組換え型のIL−1Raタンパク質、好ましくはヒトIL−1Raである。IL−1Raは、好ましくは、配列番号1、2、3、4又は5によるヒトIL−1Raのイソフォーム又は相同体、配列番号6又は7によるウマIL−1Raのイソフォーム、又は配列番号8によるイヌIL−1Raのイソフォームのアミノ酸配列を含むか、又は好ましくはそれらからなる。
【0031】
さらに、本発明によれば、IL−1Raのフラグメント又は誘導体は、これらが所望の機能、すなわちIL−1の1種又はそれ以上の生物学的機能を低下させるか又は阻害することができる限りは、サイトカインアンタゴニストとして使用されることができる。IL−1Raのフラグメントは、天然型IL−1Ra配列のアミノ酸を好ましくは少なくとも20個、より好ましくは少なくとも40、60、80又は少なくとも100個含む。好ましくは、前記フラグメントは、IL−1Raの天然に存在している分泌されたフラグメントである。一実施態様において、IL−1Raは、ヒトIL−1Raのアミノ酸26〜177個、好ましくは配列番号1による配列のアミノ酸26〜177個を含む。IL−1Raの誘導体は、好ましくは、天然型IL−1Raに対して相同であり、かつ好ましくは、天然型IL−1Raに対して、つながっているアミノ酸の少なくとも20個、好ましくはつながっているアミノ酸の少なくとも40、60、80個又は少なくとも100個の範囲にわたって、最も好ましくはIL−1Raの全長にわたって、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%及び最も好ましくは少なくとも98%の相同性又は同一性を有する。特に好ましいのは、オルソキンとも呼ばれる、血液のような天然の生物学的試料から単離可能なIL−1Ra並びにアナキンラとも呼ばれる、ヒトIL−1Raの26〜177個のアミノ酸を有するIL−1Raフラグメントである。オルソキンの製取は、とりわけ、国際公開(WO-A1)第00/46249号及び国際公開(WO-A1)第03/080122号に記載されている。アナキンラ並びに本発明において使用されることができる別のIL−1アンタゴニストは、とりわけ欧州特許出願公開(EP-A1)第0 343 684号明細書に記載されている。
【0032】
血液のような天然の生物学的試料からのIL−1Raの製取の場合、例えばオルソキンの場合に、得られたIL−1Ra溶液は好ましくは増殖因子も含有する。故に、サイトカインアンタゴニストは、本発明によれば1種又はそれ以上の増殖因子との組合せでも存在していてよく、又は1種又はそれ以上の増殖因子により置き換えられてもよい。増殖因子は、本発明によれば好ましくは同化作用を有する。適した増殖因子の例は、TGF−β、IGF、BMP、HGF及びVEGFである。これらの増殖因子の類似体、誘導体及びフラグメントも、これらが所望の作用、すなわち特に増殖因子としてのそれらの作用を有する限りは、含まれている。
【0033】
本発明により使用されるコルチコステロイドは、天然に存在する並びに合成的に製造されたあらゆるコルチコステロイドであってよい。特に、これはグルココルチコイド、ミネラルコルチコイド又はアンドロゲンであってよく、その際にグルココルチコイドが好ましくは使用される。同じように、本明細書に記載されたような二種又は複数のコルチコステロイドの混合物も使用されることもできる。グルココルチコイドの例は、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、クロプレドノール、デフラザコート、フルオコルチン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、フルプレドニゾロン、クロコルトロン、クロベタゾン、アルクロメタゾン、フルメタゾン、フルオプレドニデン(Fluopredniden)、フルオランドレノロン(Fluorandrenolon)、ベタメタゾン、ベクロメタゾン、フルオコルトロン、モメタソン、フルチカゾン、ハロメタソン(Halomethason)、フルオシノロン、ジフロラゾン、デソキシメタソン(Desoximethason)、フルオシノニド、アムシノニド、ハルシノニド、ジフルコルトロン、クロベタゾール及びパラメタゾンである。ミネラルコルチコイドの例は、アルドステロン、デオキシコルチコステロン及びフルドロコルチゾンであり、かつアンドロゲンの例は、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)及びエストロゲン類である。コルチコステロイドは、遊離化合物として又は塩、エステル又はプロドラッグの形で使用されることができる。好ましい実施態様において、使用されるコルチコステロイドは、トリアムシノロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン又はプレドニゾンである。
【0034】
本発明によるエキソソームを含有する薬剤学的組成物中もしくは本発明によるキット中のエキソソームは、好ましくは、次の工程:エキソソームを含有する血液試料を準備する工程及び好ましくはエキソソームを濃縮する工程を含む方法により製造可能である。濃縮は、好ましくは、少なくとも100 000gでの遠心分離工程により行われる、それというのも、そのように高い遠心加速度は、エキソソームを濃縮するために特に適しているからである。この工程は、好ましくは少なくとも30min、特に少なくとも60min実施される、それというのも、濃縮はそうすると特に効果的だからである。
【0035】
エキソソームを含有する血液試料を準備する工程は、好ましくは次の工程:患者から採取された血液試料を準備する工程、任意にエキソソーム形成を促進する添加剤を添加する工程、及びエキソソーム製造に適した容器中で血液試料をインキュベーションする工程を含む。インキュベーションは、コンディショニングされた血液組成物の形成をもたらす。エキソソーム製造に適した容器は、例えば注射器、小管、例えば真空小管、マイクロタイタープレート及び輸液バッグである。血液試料を接触させるための表面は、エキソソーム製造に適した容器の場合に、好ましくは、ガラス、プラスチック(例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン又はポリプロピレン)、コランダム又は石英を含み、かつ好ましくはこれらの材料の一種からなる。好ましくは、エキソソーム製造のために、これらの容器中へ、ガラス、プラスチック、コランダム又は石英製の表面積を増加させる添加剤、例えば球、ゲル、ウール、粉、顆粒又は粒子が添加される。エキソソーム形成を促進する添加剤は、好ましくはIL−1Raである。エキソソーム形成を促進する添加剤は、全血1mlあたり好ましくは1〜20μgの量で使用される。
【0036】
エキソソームと併せた併用療法において使用するための本発明による薬剤学的組成物の場合に、エキソソームが、好ましくは、血液試料から製取されたものであることがあてはまる。エキソソームは、好ましくは処置すべき患者に関して、自家又は同種である。エキソソームの製取に関して、エキソソームを製造するために今しがたなされた説明が参照される。好ましくは、エキソソームの高められた濃度が有意義である病気の処置の場合に、好ましくは関節リウマチの処置の場合に、前記の遠心分離工程は、少なくとも100 000g(好ましくは少なくとも30min、特に少なくとも60min)で実施される。特に好ましくは、そのような遠心分離工程は、併用療法が患者の血液試料から製取されるエキソソームを包含する場合には、かなり一般的に実施される。
【0037】
エキソソームを製造するために上記でなされたより詳細な説明は、次の工程:エキソソームを含有する血液試料を準備する工程、好ましくはエキソソームを濃縮する工程及びコルチコステロイドと混合する工程を含む、コルチコステロイド及びエキソソームを含有する薬剤学的組成物の本発明による製造方法に、相応してあてはまる。混合は、当業者によく知られた任意の方法で行われることができる。
【0038】
好ましい実施態様において、本発明による薬剤学的組成物もしくは本発明によるキットは、関節疾患、例えば関節症、関節炎、関節の炎症及び炎症性の軟骨損失、変形性脊椎症、関節痛及びまた自己免疫疾患の処置の際に使用するためのものである。処置すべき関節症は、過負荷により生じたものであってよく、先天性又は外傷性の原因を有していてよく、又は炎症のような他の疾患の結果であってよい。処置すべき関節症は、好ましくは、活性化された関節症又は炎症性関節症である。本発明による薬剤学的組成物は、任意のあらゆる関節、例えば膝関節、股関節、距骨関節、肩関節、椎骨関節、指関節、肘関節、足指関節、顎関節及び手関節での関節症及び関節炎の処置に使用されることができる。処置すべき関節炎は、感染により引き起こされる関節炎、例えば細菌性関節炎又は感染により引き起こされない関節炎、例えば関節リウマチ、乾癬性関節炎又は痛風性関節炎であってよい。選択的に、本発明による薬剤学的組成物及び/又は本発明によるキットは、1種又はそれ以上の前記の病気(例えば関節リウマチ)とは異なる病気の処置の際にも使用するためのものであってもよい。処置すべき変形性脊椎症は、例えば椎間板ヘルニアであってよい。自己免疫疾患は、とりわけ関節の自己免疫疾患、例えば例えばベヒテレフ病、関節リウマチ及び全身性エリテマトーデス、並びに他の自己免疫疾患、例えば特に神経皮膚炎及び円形脱毛症(kreisrunder Haarausfall)を含む。
【0039】
本発明による薬剤学的組成物もしくは本発明によるキットは、好ましくは局所投与に適している。これらは、好ましくは局所投与のためのものである。故に、これらは、好ましい実施態様において注射のため、特に処置すべき身体部位へ、特に冒された関節中へ、冒された神経根へ又は冒された関節間板中へ、又はこれらの局所的な周囲中への注射のためのものである。薬剤学的組成物は、それゆえ特に関節内及び/又は根周囲の注射のためのものである。選択的に、本発明による薬剤学的組成物は、外用投与のために、特にクリーム又はゲルとして、又は全身投与、特に経口投与のために錠剤、カプセル剤又はトローチ剤の形で、調合されていてよい。投与形態はとりわけ、処置すべき病気に依存する。局所的な関節症の場合又は変形性脊椎症の場合に、故に、本発明による薬剤学的組成物の局所投与が好ましい。好ましい実施態様において、本発明による薬剤学的組成物もしくは本発明によるキットは専ら全身投与とは異なる投与のためのものであるか又はそのような投与に適している。
【0040】
本発明による薬剤学的組成物は、多様な投与経路にそれぞれ適して、当業者に知られた方法で調合されている。そして、注射に適した薬剤学的組成物は、好ましくは溶液又は分散液として、又は乾燥した形でも、例えば粉末又は凍結乾燥物として存在し、この粉末又は凍結乾燥物は注射前に水のような適した溶剤中に溶解されなければならない。本発明による薬剤学的組成物は、治療上有効な量のエキソソーム及び/又はコルチコステロイドを含有する。コルチコステロイドは、好ましくは1〜80mg/用量、より好ましくは5〜40mg/用量の濃度で、コルチコステロイドを含有する薬剤学的組成物中に存在する。場合により存在しているサイトカインアンタゴニストは、好ましくは0.5〜150mg/用量の濃度でサイトカインアンタゴニストを含有する薬剤学的組成物中に存在しているが、しかしまた、かなりより少ない濃度、例えば約1ng/用量又はそれ以上、例えば1〜1000ng/用量で存在していてよい。これらの少ない用量濃度は、特に増殖因子との組合せの場合及び/又は天然型IL−1Ra製剤の場合、例えばオルソキンを有する組成物の場合に、使用されることができる。より高い用量濃度は、例えばアナキンラのような組換えて製造されるサイトカインアンタゴニストの場合に好ましい。そのうえ、本発明による薬剤学的組成物は、さらに1種又はそれ以上の担体物質及び/又は1種又はそれ以上の付形剤を含有することができる。
【0041】
本発明の薬剤学的組成物は、関連した病気、すなわち例えば関節症、関節炎、及び/又は変形性脊椎症の他の処置を既に受けた、特にこの他の処置が成果をあげていなかったか又は病気の症状が、初期に成果のある処置にも拘らず少なくとも部分的にぶり返している場合の、患者の処置のためのものであってもよい。好ましい実施態様において、この他の処置は、エキソソームを用いるが、しかしコルチコステロイドを用いない療法、又はコルチコステロイド、特に前記のようなグルココルチコイドを用いるが、しかしエキソソームを用いない療法である。
【0042】
本発明の意味での患者は、本明細書に記載された病気の1つにかかるヒト並びに動物であってよい。そのために、本発明による薬剤学的組成物は、ヒト及び/又は動物、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ラクダなどの処置に適当でありうる。
【0043】
図面の簡単な説明
図1A〜図1Cは、事例が以下に事例IXとして記載されている(例4)、神経皮膚炎患者の足の写真を示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】エキソソーム及びトリアムシノロンでの処置直前の両足の皮膚科学的な変化を示す図。
【図1B】右足の処置1週間後の状態を示す図。
【図1C】左足の処置1週間後の状態を示す図。
【実施例】
【0045】
以下に、進行性関節症を有する患者の多様な事例研究が記載されている。これらは、サイトカインアンタゴニスト(例えば組換え型IL−1Ra組換え又は自家の血液試料から製取されるIL−1Ra)及びコルチコステロイドを用いる併用療法で処置された。
【0046】
省略形:
re 右
li 左
bds 両側
IRO 内転
ARO 外転
VAS 痛みの感覚のビジュアルアナログスケール(0〜10)
WOMAC 関節症についての患者の質問表
CRP c−反応性タンパク質、血液中で検出可能な炎症マーカー
OSG 大腿関節
関節症の場合のオルソキン及びコルチゾンでの治療:
患者数:N=129
平均再診期間:3ヶ月
平均の痛み減少:71%(すなわち処置前の100%の痛みから処置後の29%への減少)
際立って迅速な作用開始。
【0047】
1.アナキンラ及びコルチゾン及びエキソソームの局所投与
事例I:T.、56歳、女性
診断:臨床放射線学的には、内側及び膝蓋後の(retropatellare)膝関節症li、グレードIVがある。よそでは、既に左の膝関節全置換術が計画されていた;
治療:膝手術を回避しながら、左膝へのアナキンラ及び10mgのトリアムシノロンと併せたエキソソームの3回の注射(週2回)。
結果:3回目の注射の時点までに100%痛み改善、明らかな機能改善。手術日は取り消され、患者は治療終了の5ヶ月後にもなお痛みがなかった。
【0048】
2.アナキンラ及びコルチゾン及びオルソキンの局所投与
事例II:L.、57歳、男性
診断:6ヶ月前からひどい肩痛li(VAS 8);それ以降明らかに損なわれた安眠。患者はこの6ヶ月にわたり殆ど眠ることはできず、故に一般的な健康の障害も。左肩へのコルチゾンの多数の注射は不成功に終わった。左肩の手術日が取り決められていた。ここでは、手術を回避する試みが講じられるべきであった。放射線学的及び臨床的には、左の完全な肩硬直を伴う部分的な回旋筋腱板裂傷及び肩峰下の狭窄の症候;左の手及び前腕の力の衰弱を伴う左腕の感覚異常、グレード4。
治療:注射を、左肩へ背部及び側方に適用した。オルソキン2mlを、アナキンラ10mg及びトリアムシノロン10mgと共に1つの注射器により左肩へ適用した。治療を4日続けて実施した。
結果:既に処置2日目に、患者は、90%の痛み減少を伴う極度の痛み改善を示した。VASは8から1へ低下しており、肩は自由にかつ正常に動かすことができた。患者は、この6ヶ月ではじめて眠り続けることができた。患者は、それにより彼の一般的な健康が明らかに改善されていた。治療の続き 処置日4まで。さらに、処置日2と同じく変わらず明らかな改善を示し、処置6ヶ月後の追跡検査の際に、変わらず肯定的な所見があった。手術は取り消され、可動性は自由であり、患者は、再び問題なくスーツケース及び本を肩の高さを超えて持ち上げることができる。
【0049】
事例III:F.、45歳、女性
診断:約8ヶ月前から右の完全な肩硬直。これまでの全ての治療が不成功に終わっており、OPが計画されていた。患者は、新たな保存的処置の試みを望んだ。夜の睡眠は数(einigen)週前からもはや不可能であった。左に始まる肩痛、主所見はしかし右肩、そこで10までの重度の急性発作を伴うVAS 9、それにより全体で減少された一般状態。
治療:6日続けて、オルソキン2mlと別個に適用されるアナキンラ150mg及びトリアムシノロン5mgの組合せからなる他の注射器と併せた組合せの右肩の処置。
結果:5日目から85%痛み改善。夜間に眠り続けることは2回目の処置以来可能であった、それによりかなり改善された一般状態。処置終了の際のVASは1。処置8ヶ月後の追跡検査はさらに、極めて良好な変わらない結果を示した;OPは取り消された。
【0050】
3.IL−1 Ra及びトリアムシノロン/プレドニゾロンと共にインキュベートしたエキソソーム
事例IV:S.、25歳、男性
診断:約15年前から重度の若年性関節リウマチ。
週2回のエンブレル25mg、1日2回のメトトレキセート10mg、デコルチン5mg及びナプロキセンでの処置。広範性(Massive)滑膜炎及び痛み 両OSG及び両肩。処置前の両肩の外転60度。実験室CRP値:5.35(0.5mgまでが正常);白血球増加症。
治療:血液をエキソソームの製造のために6ml注射器(オルソキン注射器)中へ取り出した。その後、37度で24hインキュベーションし、その際に血液を注射器に充填する際に前もってアナキンラ(IL−1Ra)1mg及びプレドニゾロン2mgを注射器へ適用した。遠心分離(100 000gまで)の多様な工程後に、混合物を、ついで患者のOSGe及び肩へ適用した。
結果:開始3日後に関節の明らかな腫脹消失(Abschwellung)。9日後の臨床的及び実験室化学的な検査:80%痛み改善、OSG正常、腫脹なし。CRP値は今や1.93に。局所的に注射しなかった他の冒された関節でも改善。一般的な生活の質はかなり改善される。3ヶ月後の検査の際に、変わらず安定な状況を示す。処置前のVAS 9、注射後最初の週以降VAS 3。患者は極めて満足しており、仕事を再び続けることができる。
【0051】
4.エキソソーム及び注射の際の付加的なトリアムシノロンでの注射
事例V:M.、64歳、女性
プレドニゾロン15mg p.d.、ランタレル(Lantarel) 20mg p.W.、ヒュムラでの全2週間の基本治療にも拘わらず、重度の治療耐性RA。手関節への放射線滑膜切除術は最小の効果のみを示し、トリアムシノロン10mg〜40mgの用量での関節内注射は、痛み並びに炎症パラメーターへの極めて弱い(1週間後に20%痛み改善)効果のみを示した。エキソソーム治療のための導入の際に、前記の基本治療にも拘わらずCRP 120mg/l、手及び両肩中の極めてひどい痛み。MCP2−5bds及び両肩へのエキソソーム(IL−1Raと共にインキュベーションした後の)の注射の実施及びトリアムシノロン全量20mgの混合。その後、開始2日後に臨床的の著しい改善(1週間後に80%痛み減少)、連続して3ヶ月にわたり持続する。3ヶ月後のCRP検査 CRP 42.6mg/l、基本治療は変わらないので、前記効果はエキソソームとトリアムシノロンとの組合せに関連づけることができる。前記のように単独のトリアムシノロンのより高い用量は、匹敵しうる作用を示さなかった。
【0052】
事例VI:M.、25歳、男性
既知の乾癬関節炎;基本治療 プレドニゾロン5mg及びMTX 10mg;基本治療のもとでの主問題 滑膜炎及び反対側と比べて2cmの腫脹を伴う左膝のなお明らかな腫脹。付加的に、実施される基本治療にも拘わらず手関節の範囲内での腫脹。膝及び手関節への20〜40mgの用量での関節内コルチゾン注射は、10〜30%の痛み減少を伴う数日にわたる極めて弱い効果のみを示した。エキソソーム治療のための導入。注射直前のCRP 5.6mg/l。エキソソームの完成後、エキソソーム(前記のようにIL−1Raインキュベーションにより製造される)の、左膝(エキソソーム+トリアムシノロン10mg)及びMCP2+3bds(各関節につきトリアムシノロン各2mgと併せたエキソソーム)への適用。複雑化のない経過、数日後に90%の明らかな痛み緩和;3ヶ月後のCRP 3.0mg/l;膝は1週間後に完全に腫脹消失し、左右の差なし:プレドニゾロン5mgは、基本治療の範囲内で完全に取り消されることができた、それというのも、エキソソーム及びトリアムシノロンの関節内注射の効果は持続的であったからである。
【0053】
事例VII:R.、32歳、男性
数年来既知の、完全脱毛症、高い全身及び局所的な用量(プレドニゾロン10〜80mg)の全身及び局所的なコルチゾン適用を含めた全ての治療試験 効果なし:エキソソームでの処置のための導入。前記の技術におけるエキソソームの製造、トリアムシノロン10mgと併せたエキソソームの1回の筋肉内注射。経過検査 目立つものなし、3ヶ月後に疾患前に当初に毛の生えていた面積のほぼ半分の毛髪の成長の検出。
【0054】
事例VIII:H.、47歳、男性:
軟骨欠損を伴う膝関節症re 関節鏡検により確かめられたアウターブリッジによるグレード2〜4。患者は、OP及び関節置換術の先延ばしを望んでいる。既往歴では関節内の10〜40mgの用量でのトリアムシノロンの注射 効果なし。前記のような技術において製造されたIL−1Raと共にインキュベーションした後のエキソソーム1mlの注射。エキソソーム2mlの1回の関節内注射、4週間後に患者は痛み及び機能に関する臨床効果に不満であった。その後、トリアムシノロン10mgと組み合わせた右膝への関節内注射の決定。複雑化のない経過。1週間後に95%の痛み改善、機能は再び完全に回復し、患者は、何年かではじめて再びテニスの試合に参加できる。
【0055】
事例IX:J.、27歳、男性:
とりわけ手及び足の範囲内での著しい変化を伴う重度の皮膚科学的に確かめられた神経皮膚炎。全ての知られた皮膚科学的な治療は、持続的な改善を示さず、特に、コルチコステロイドの局所的な適用及び筋肉内に80mgの用量のプレドニゾロン及びトリアムシノロンの全身適用1週間後の短時間の効果のみが観察されることができた。前記の技術におけるエキソソームの製造、筋肉内適用;3週間後に、皮膚変化及び病気への満足すべき効果はない。その後、トリアムシノロン20mgと組み合わせたエキソソーム2mlの筋肉内適用の試み。2週間以内に明らかな改善、これはまた6ヶ月にわたって変わらず持続する。その後、軽度の悪化、しかし前所見と比べてさらに改善。図1Aには、処置直前の両足の皮膚科学的な変化、図1B及び図1Cには、右足もしくは左足の1週間処置後の皮膚科学的な変化が記載されている。
【0056】
事例X、B.、69歳、女性
左眼の虹彩毛様体炎を伴う重度のベヒテレフ関節炎。患者は、基本治療として変化する用量のプレドニゾロン及びMTXを受ける。CRP 20.3mg/l;左OSG 他の側に比べて+2cmで明らかに腫れている;左MCP及び左第1指の末端関節 明らかに腫れており、痛い、右肩 腫れている、痛い、外転 正常に比べて30度低下している。その後、冒された関節への知られた技術におけるエキソソームの注射 痛み減少及びCRP減少なし、その後、全ての冒された関節への40mgの全用量でのトリアムシノロンの注射、1週間にわたる20%の軽度の改善。4週間後にエキソソーム及びトリアムシノロン全用量20mgの注射、その後、肩80%改善、左手親指周囲MCP関節8.2cmから6.6cmへの腫脹消失を伴う指50%改善。距骨関節はなお明らかな効果なし。CRPは1週間以内に20.3mg/lから2.9mg/lへ減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルチコステロイドを、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下でエキソソームと併せて含有する、薬剤学的組成物。
【請求項2】
コルチコステロイドと併せた併用療法において使用するための、エキソソームをサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下で含有する薬剤学的組成物。
【請求項3】
エキソソームと併せた併用療法において使用するための、コルチコステロイドをサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在又は不在で含有する薬剤学的組成物。
【請求項4】
コルチコステロイド及びエキソソームと併せた併用療法において使用するための、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子を含有する薬剤学的組成物。
【請求項5】
(i)エキソソームをサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在又は不在で含有する薬剤学的組成物と、(ii)コルチコステロイドをサイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下で含有する薬剤学的組成物とを含有する、キット。
【請求項6】
(1種又はそれ以上の)薬剤学的組成物が、エキソソーム及びコルチコステロイドの同時投与又は連続投与のためのものである、請求項2又は3のいずれか1項記載の薬剤学的組成物又は請求項5記載のキット。
【請求項7】
コルチコステロイドが、
(a)グルココルチコイド、例えばコルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、クロプレドノール、デフラザコート、フルオコルチン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、フルプレドニゾロン、クロコルトロン、クロベタゾン、アルクロメタゾン、フルメタゾン、フルオプレドニデン、フルオランドレノロン、ベタメタゾン、ベクロメタゾン、フルオコルトロン、モメタソン、フルチカゾン、ハロメタソン、フルオシノロン、ジフロラゾン、デソキシメタソン、フルオシノニド、アムシノニド、ハルシノニド、ジフルコルトロン、クロベタゾール、パラメタゾン;
(b)ミネラルコルチコイド、例えばアルドステロン、デオキシコルチコステロン及びフルドロコルチゾン;又は
(c)アンドロゲン、例えばデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)及びエストロゲン類;
又はそれらの塩、エステル又はプロドラッグである、請求項1から6までのいずれか1項記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項8】
コルチコステロイドが1〜80mg/用量の濃度で、コルチコステロイドを含有する薬剤学的組成物中に存在している、請求項1、3、5、6又は7のいずれか1項記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項9】
エキソソームが、次の工程:エキソソームを含有する血液試料を準備する工程及び好ましくはエキソソームを濃縮する工程を含む方法により製造される、請求項1、2、5、6、7又は8のいずれか1項記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項10】
エキソソームが、血液試料から製取されたものである、請求項3、4、6、7又は8のいずれか1項記載のエキソソームと併せた併用療法において使用するための薬剤学的組成物。
【請求項11】
エキソソームが、処置すべき患者に関して、自家又は同種である、請求項10記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項12】
関節疾患、例えば関節症、関節炎、関節の炎症及び炎症性の軟骨損失、変形性脊椎症、及び/又は関節痛の処置の際に使用するための、請求項1から11までのいずれか1項記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項13】
関節症が、活性化された関節症又は炎症性関節症である、請求項12記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項14】
関節炎が、感染により引き起こされる関節炎、例えば細菌性関節炎又は感染により引き起こされない関節炎、例えば関節リウマチ、乾癬性関節炎又は痛風性関節炎である、請求項12記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項15】
変形性脊椎症が椎間板ヘルニアである、請求項12記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項16】
自己免疫疾患の処置の際に使用するための、請求項1から11までのいずれか1項記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項17】
自己免疫疾患が神経皮膚炎又は円形脱毛症である、請求項16記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項18】
(1種又はそれ以上の)薬剤学的組成物が局所投与に適している、請求項1から17までのいずれか1項記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項19】
局所投与が、冒された身体部位へ、特に冒された関節中へ、冒された神経根へ又は冒された関節間板中へ、又はこれらの局所的な周囲への注射;関節内注射;及び局所投与からなる群から選択されている、請求項18記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項20】
(1種又はそれ以上の)薬剤学的組成物が、さらに担体及び/又は付形剤を含有する、請求項1から19までのいずれか1項記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項21】
サイトカインアンタゴニストが存在しており、かつサイトカインアンタゴニストが、インターロイキンアンタゴニスト、特にIL−1アンタゴニスト、例えばIL−1Ra、腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト、特にTNF−α−アンタゴニスト、例えば抗TNF−α−抗体、インターフェロンアンタゴニスト、及びケモカインアンタゴニストからなる群から選択されている、請求項1から20までのいずれか1項記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項22】
サイトカインアンタゴニストが、天然に存在するか又は組換え型のIL−1Raタンパク質、特にオルソキン又はアナキンラである、請求項21記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項23】
サイトカインアンタゴニストが0.5〜150mg/用量の濃度で、サイトカインアンタゴニストを含有する薬剤学的組成物中に存在する、請求項21又は22のいずれか1項記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項24】
増殖因子が存在しており、かつ増殖因子が、TGF−β、IGF、BMP、HGF及びVEGFからなる群から選択されている、請求項1から23までのいずれか1項記載の薬剤学的組成物又はキット。
【請求項25】
コルチコステロイドと併せた併用療法において使用するための薬剤学的組成物を製造するための、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下での、エキソソームの使用。
【請求項26】
エキソソームと併せた併用療法において使用するための薬剤学的組成物を製造するための、サイトカインアンタゴニスト及び/又は増殖因子の存在下又は不在下での、コルチコステロイドの使用。
【請求項27】
次の工程:エキソソームを含有する血液試料を準備する工程、好ましくはエキソソームを濃縮する工程及びコルチコステロイドと混合する工程を含む、コルチコステロイド及びエキソソームを含有する薬剤学的組成物を製造する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【公表番号】特表2013−513582(P2013−513582A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542570(P2012−542570)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069426
【国際公開番号】WO2011/082950
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512152477)オアトゲン アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】ORTHOGEN Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Graf−Adolf−Strasse 41, D−40210 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】