エクオル濃度調節剤

【課題】体内のエクオル濃度を調節する作用を有し、かつ、長期に渡って摂取可能な安全性の高い医薬、飲食品、並びにエクオル変換能を有する微生物の選択培地、検出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】各種糖類を有効成分とするエクオル濃度上昇又は低下剤;当該濃度上昇又は低下剤製造のための各種糖類の使用;各種糖類を有効量投与することを特徴とするエクオル濃度上昇又は低下方法;各種糖類を含有することを特徴とするエクオル変換能を有する微生物の選択培地;及び当該培地を用いるエクオル変換能を有する微生物の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクオル濃度調節剤、エクオル変換能を有する微生物の選択培地及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆食品に多く含まれるイソフラボンは、不定愁訴等の更年期障害の改善や骨粗鬆症の予防、高脂血症や動脈硬化の予防、乳がんや前立腺がんの予防等に効果がある機能性成分として知られている。近年の研究により、イソフラボンの一つであるダイゼインは、体内の腸内細菌によってエストロゲン作用や抗酸化作用がより強力なエクオル(Equol)に代謝されることが明らかになり、エクオルは体内で上記の作用を奏する主要な有効成分の一つとして注目されている。
【0003】
体内でのダイゼインからエクオルへの産生は全てのヒトで一律に行われるのではなく、その産生能には個人差があり、30〜50%のヒトがエクオル産生能を有することが報告されている(非特許文献1)。そこで、エクオル産生能を有する腸内細菌やエクオル産生を促進する物質の探索が精力的に行われており、エクオル産生能を有する微生物として、バクテロイデス・オバタス、ストレプトコッカス・インターメディアス、ストレプトコッカス・コンステラータスが報告されている(特許文献1)。また、ダイゼイン等と共に大豆オリゴ糖を配合した飼料を家禽に投与してエクオル含有卵を得ること(特許文献2)、フラクトオリゴ糖(非特許文献2)やツイントース(R)(非特許文献3)がエクオル産生を促進することが報告されている。なお、特許文献1では、エクオル産生能を有する微生物の維持、増殖成分として乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラクチュロース、ラクチトール、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖が挙げられているが、これらの糖類はいずれも微生物の維持、増殖に寄与する一般的に知られている栄養成分として挙げられているもので、これらの糖類がエクオル産生に対してどのように作用するかは何ら示されていない。
【0004】
一方、体内でエストロゲン作用を示す物質は、いわゆる環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)と呼ばれ、ヒトに対して精子の減少、生殖能力の低下、乳がんの増加等に関与することが疑われている。イソフラボンやエクオルも植物性エストロゲン物質の一つとして知られ、その過剰摂取や体内での過剰生産はヒトに対して悪影響を及ぼす可能性がある。特にエストロゲン作用がイソフラボンに比べて数十倍高いエクオルが体内で過剰生産される場合は、その生産を抑制することが重要となる。しかしながら、エクオルの産生を抑制する微生物や物質としてはラクトバチルス・ガセリ(非特許文献4)、イヌリン(非特許文献5)、フラクトオリゴ糖(非特許文献6)が報告されているのみである。
【0005】
従って、体内のエクオル濃度を適切な状態に調節することは、上記に示した様々な疾患の治療や改善、或いはその予防といった観点や、エクオルの環境ホルモン様作用により引き起こされる悪影響を回避するといった観点から非常に重要であり、体内のエクオル濃度を調節する作用を有し、かつ、長期に渡って摂取可能な安全性の高い物質が要望されている。
【0006】
しかしながら、体内のエクオル濃度を調節する微生物や物質は上記に報告されているのみで選択肢が非常に狭く、その効果も十分なものではなかった。また、エクオル変換能を有する微生物の選択培地も報告されておらず、エクオル変換能を有する微生物を簡便・迅速にスクリーニングしたり、検体中のエクオル変換能を有する微生物を検出するための選択培地の確立が切に要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開99/7392号パンフレット
【特許文献2】特開2003−310177号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Proc Soc Exp Biol Med、Vol.217、No.3、p335−339(1998)
【非特許文献2】J Nutr、Vol.132、p2048−2054(2002)
【非特許文献3】2005年度日本農芸化学会大会講演要旨集、p97(2005)
【非特許文献4】食品研究成果情報、No.17、p18−19(2005)
【非特許文献5】J Agric Food Chem、Vol.52、No.10、p2827−2831(2004)
【非特許文献6】Arch Microbiol、Vol.183、No.1、p45−55(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明は、体内のエクオル濃度を調節する作用を有し、かつ、長期に渡って摂取可能な安全性の高い医薬、飲食品、並びにエクオル変換能を有する微生物の選択培地、検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、食経験豊富で安全な物質である各種糖類がエクオル濃度を上昇又は低下させる作用を有することを見出し、また、エクオル濃度を上昇させる作用を有する糖類を含有する培地を用いれば、エクオル変換能を有する微生物を選択的に増殖させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、アドニトール、アラビノース、エリスリトール、ガラクトース、ラクチトール、メレチトース、トレハロース、リボース、ソルボース、キシロース、イノシトール及びソルビトールから選ばれる1以上を有効成分とするエクオル濃度上昇剤;エクオル濃度上昇剤を製造するためのこれらの糖類から選ばれる1以上の使用;並びにこれらの糖類から選ばれる1以上を有効量投与することを特徴とするエクオル濃度上昇方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、グルコース、ラクトース、ラクチュロース、メリビオース、ラフィノース、シュクロース及びガラクトオリゴ糖から選ばれる1以上を有効成分とするエクオル濃度低下剤;エクオル濃度低下剤を製造するためのこれらの糖類から選ばれる1以上の使用;並びにこれらの糖類から選ばれる1以上を有効量投与することを特徴とするエクオル濃度低下方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、アドニトール、アラビノース、エリスリトール、ガラクトース、ラクチトール、メレチトース、トレハロース、リボース、ソルボース、キシロース、イノシトール及びソルビトールから選ばれる1以上を含有することを特徴とするエクオル変換能を有する微生物の選択培地を提供するものである。
【0014】
さらに、本発明は、アドニトール、アラビノース、エリスリトール、ガラクトース、ラクチトール、メレチトース、トレハロース、リボース、ソルボース、キシロース、イノシトール及びソルビトールから選ばれる1以上を含有する選択培地を用いて、検体に含まれるエクオル変換能を有する微生物を培養することを特徴とする検体中のエクオル変換能を有する微生物の検出方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明で用いられる各種糖類は、優れたエクオル濃度の上昇作用、又は低下作用を有し、これらの糖類は食経験も豊富で安全性が高いことから、本発明のエクオル濃度上昇剤及び低下剤は、体内のエクオル濃度を適切な状態に調節するために日常的に安全に利用することができる。また、本発明の選択培地を用いることにより、エクオル変換能を有する微生物を簡便・迅速にスクリーニングしたり、検体中のエクオル変換能を有する微生物を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】エクオル変換に及ぼす各種糖類の影響を示すグラフである。
【図2】選択培地によりエクオルプロデューサーの糞便を継代培養した際のダイゼインからのエクオル変換能の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に用いられる糖類は、アドニトール(Adonitol)、アラビノース(Arabinose)、エリスリトール(Erythritol)、ガラクトース(Galactose)、ラクチトール(Lactitol)、メレチトース(Melezitose)、トレハロース(Trehalose)、リボース(Ribose)、ソルボース(Sorbose)、キシロース(Xylose)、イノシトール(Inositol)、ソルビトール(Sorbitol)、グルコース(Glucose)、ラクトース(Lactose)、ラクチュロース(Lacturose)、メリビオース(Melibiose)、ラフィノース(Raffinose)、シュクロース(Sucrose)、ガラクトオリゴ糖(Galacto−oligosaccharide)である。これらの糖類は、D体L体のいずれを用いてもよいが、好ましくは、D体である。また、無水物、5水和物等の水和物を用いることもできる。
【0018】
トレハロースには、2分子のグルコースの結合様式の相違により、α,α体、α,β体及びβ,β体の異性体が存在し、本発明においては、これらのいずれも異性体も用いることができるが、好ましくはα,α体である。
【0019】
本発明に用いられるイノシトールには、9種類の立体異性体(myo−イノシトール、D(+)−イノシトール、L−(−)イノシトール、muco−イノシトール、scyll−イノシトール、cis−イノシトール、epi−イノシトール、allo−イノシトール、neo−イノシトール)が存在する。天然にはmyo−イノシトール、D(+)−イノシトール、L−(−)イノシトール、muco−イノシトール、scyll−イノシトールが存在するが、入手し易さの観点から、myo−イノシトールを使用することが好ましい。また、当該イノシトールは2種以上の立体異性体を併用することができる。
【0020】
本発明で用いられるガラクトオリゴ糖とは、分子内に少なくとも1以上のガラクトース残基があるオリゴ糖の総称であり、例えば単糖が2個〜9個結合した糖が挙げられる。また、ガラクトオリゴ糖としては、ガラクトースがβ1−2結合したもの、β1−3結合したもの、β1−4結合したもの、β1−6結合したものが挙げられるが、β1−4結合したもの、β1−6結合したものを有するガラクトオリゴ糖が特に好ましい。本発明においては、これらのガラクトオリゴ糖の混合物を用いることもできる。
【0021】
本発明の糖類は、合成品や天然由来抽出物等の市販品を使用してもよく、また、これらの糖類を多く含む天然由来素材として使用してもよい。具体的に、アドニトールを多く含む素材としては、植物の根やリボフラビン含有素材が挙げられ、ソルボースを多く含む素材としては植物の果実などが挙げられ、メレチトースを多く含む素材としては植物の蜜や分泌液が挙げられ、トレハロースを多く含む素材としてはキノコ類が挙げられる。
【0022】
各種糖類のエクオル濃度調節活性は、例えば、エクオル産生能を有するヒト(エクオルプロデューサー)から糞便を採取し、採取した糞便にエクオルの基質となるダイゼイン(Daidzein)と対象とする糖類を添加し培養を行って培養液中のエクオル濃度を測定し、糖類を含まない培養液中のエクオル濃度と比較して、次式に当てはめることにより調べることができる。
エクオル濃度調節活性(%)=(対象とする糖類を含む培養液中のエクオル濃度)/(糖類を含まない培養液中のエクオル濃度)×100
【0023】
ここでエクオルプロデューサーより採取した糞便は遠心洗浄処理したものを用いることが好ましく、培養はヒト腸管内の状態を再現するために、嫌気培養で行うことが望ましい。エクオル濃度は常法に従って測定することができ、すなわち、液体クロマトグラフィーあるいはLC−MSにより測定すればよい。本発明のエクオル濃度上昇作用を有する糖類はエクオル濃度調節活性が200%以上の糖類であり、特に400%以上である糖類がより好ましい。また、本発明のエクオル濃度低下作用を有する糖類はエクオル濃度調節活性が50%以下の糖類であり、特に10%以下である糖類がより好ましい。
【0024】
エクオルプロデューサーより採取した糞便にダイゼインと抗生物質を添加して嫌気培養するとダイゼインからのエクオルの産生が阻害されることから、各種糖類によるエクオル濃度調節作用は、糞便中に存在する微生物を介した作用であると考えられる。すなわち、エクオル濃度上昇作用を有する糖類はエクオル変換能を有する微生物を選択的に増殖させたり、或いは微生物のエクオル変換能を亢進しているものと推測され、エクオル濃度低下作用を有する糖類は、エクオル変換能を有する微生物の増殖を選択的に阻害したり、或いは微生物のエクオル変換能を阻害しているものと推測される。
【0025】
また、エクオル濃度上昇作用を有する糖類を含有する培地は、エクオル変換能を有する微生物の選択培地として利用することができる。この選択培地は、アドニトール、アラビノース、エリスリトール、ガラクトース、ラクチトール、メレチトース、トレハロース、リボース、ソルボース、キシロース、イノシトール及びソルビトールから選ばれる1以上を含有するが、これら糖類のほか、エクオルの基質となるダイゼインを添加することが好ましい。培地において、例えば、使用し得る状態にしたときの全体量に対して、糖類は0.3〜3質量%、ダイゼインは0.0025〜0.25質量%の範囲で使用可能である。ここで、培地とは、培養に直ちに使用し得る状態にあるもののほか、水に溶解して滅菌した後に培養に供するための、水以外の培地構成成分の混合物も含む。培地は、液体培地として、また寒天等を加えて固形培地としても使用できる。選択培地には、目的とする微生物の選択性を高める目的で抗生物質を添加してもよく、コリスチン(Colistin)やクロラムフェニコール(Chloramphenicol)などが、使用し得る状態にしたときの全体量に対して、例えば、1〜100μg/mlの範囲で使用可能である。また、その他の窒素源等の適当な成分を加えて使用してもよいが、エクオル変換能を有する微生物の増殖を阻害したり、微生物のエクオル変換能を阻害する成分の使用は好ましくない。加えることができる成分としては、例えば、ペプトン、トリプチケースペプトン、イーストエキス、ヘミン、ビタミンK1等のビタミン、L−システイン塩酸塩、KH2PO4、K2HPO4、NaCl、(NH42SO4、CaCl2、MgSO4等が挙げられる。本発明の培地中に含まれる成分のうち、エクオル濃度上昇作用を有する糖類やダイゼイン以外の成分の組成は、例えば、PY培地、GAM培地、BHI培地などの組成とすることができる。
【0026】
この選択培地を用いて、ダイゼインからのエクオル産生能(変換能)を確認しながら、糞便等の検体を継代培養していくことで、エクオル変換能を有する微生物をスクリーニングすることが可能となり、エクオル変換能を有する微生物を取得することができる。また、この選択培地により検体中のエクオル変換能を有する微生物の検出も可能となる。エクオル変換能を有する微生物の検出は、例えば、本発明の培地を用いて検体を培養したのち、培地中のエクオル濃度を測定し、エクオル濃度上昇が観察された場合に、検体中にはエクオル変換能を有する微生物がいると判断することにより行うことができる。ここでエクオル濃度上昇についての対照には、本発明に用いられる糖類が無添加である以外は共通の組成の培地を用いたものを用いればよい。
【0027】
本発明の検出方法の検体に特に制限はないが、エクオル変換能を有する微生物をスクリーニングする場合は、エクオル変換能を有する微生物が存在する可能性のある検体を用いることが望ましく、特に糞便や消化管内容物等が好適に用いられる。
【0028】
本発明のエクオル濃度上昇作用を有する糖類(アドニトール、アラビノース、エリスリトール、ガラクトース、ラクチトール、メレチトース、トレハロース、リボース、ソルボース、キシロース、イノシトール、ソルビトール)は体内、血中、大腸内等の腸内等におけるエクオル濃度上昇剤として利用でき、これら糖類を有効成分とするエクオル濃度上昇剤は、不定愁訴等の更年期障害、骨粗鬆症、高脂血症、動脈硬化、乳がん、前立腺がん、月経前症候群等のイソフラボンが関与する様々な疾病の治療や改善、或いはその予防等の目的に利用できる。ここで、本発明のエクオル濃度上昇作用を有する糖類は、単独で用いてもよく、又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、本発明の糖類は、エクオルの基質となるダイゼインと共に使用することが好ましい。ダイゼインは合成品や天然由来抽出物等の市販品を使用してもよく、ダイゼインを多く含む天然由来素材やその加工品として使用してもよい。具体的に、ダイゼインを多く含む素材としては大豆、えんどう豆、葛、クローバー等が挙げられ、これらの加工品としては例えば、豆腐、豆乳、油揚げ、納豆、醤油、味噌、テンペ等が挙げられる。また、一般的に、イソフラボン配糖体は体内の腸内細菌の働きによりアグリコン化されるため、ダイゼインは、その配糖体化合物であるダイジン、マロニルダイジン、アセチルダイジン等の形態として使用することもできる。
【0030】
さらに、本発明の糖類は、本発明の選択培地により得られたエクオル変換能を有する微生物と共に使用してもよい。微生物を使用する場合、微生物の形態は特に制限されず、生菌又は加熱菌体(死菌体)のいずれでもよく、また凍結乾燥したものであってもよく、あるいはこれら微生物を含む培養物として利用することもできる。
【0031】
本発明のエクオル濃度低下作用を有する糖類(グルコース、ラクトース、ラクチュロース、メリビオース、ラフィノース、シュクロース、ガラクトオリゴ糖)は体内、血中、大腸内等の腸内等におけるエクオル濃度低下剤として利用でき、これら糖類を有効成分とするエクオル濃度低下剤は、エクオルの環境ホルモン様作用により引き起こされる、精子の減少、生殖能力の低下等の悪影響を予防する目的に利用できる。ここで、本発明のエクオル濃度低下作用を有する糖類は、単独で用いてもよく、又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明のエクオル濃度上昇剤とエクオル濃度低下剤を適宜用いることで、体内のエクオル濃度を適切な状態に調節することができる。例えば、環境ホルモンへの感受性が高いと指摘されている乳幼児や小児、或いは妊産婦においては、エクオル暴露のリスクを軽減させるため、本発明のエクオル濃度低下剤を使用することが挙げられる。逆に、不定愁訴等の更年期障害や骨粗鬆症、発がんのリスクが高まる中年期や老年期においては本発明のエクオル濃度上昇剤を使用することが挙げられる。特に、エクオル産生能を有さないヒト(エクオル非プロデューサー)やエクオル産生能が低いヒトに、エクオル濃度上昇剤を使用することは、イソフラボンが関与する様々な疾病を日常的に予防するとの観点から非常に重要である。ここで、体内でのエクオル産生能の把握は、対象者の尿中や血中のエクオル濃度をHPLC等の常法により測定することで行うことができる。
【0033】
本発明のエクオル濃度上昇剤、エクオル濃度低下剤の有効成分である各種糖類は、食経験も豊富で安全性が高いことから、これらをエクオル濃度上昇剤、或いはエクオル濃度低下剤として使用する場合の投与量に厳格な制限はない。また、対象者や適用疾患等の様々な使用態様によって得られる効果が異なるため、適宜投与量を設定することが望ましいが、その投与量は1日当たり0.1mg〜100gであり、特に50mg〜50gが好ましい。
【0034】
本発明のエクオル濃度上昇剤、エクオル濃度低下剤は、経口投与又は非経口投与のいずれも使用できるが、経口投与が好ましい。投与に際しては、有効成分である各種糖類を経口投与、直腸内投与、注射等の投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬品製剤の形態で投与することができる。
【0035】
このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散在、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥剤等が挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、澱粉、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0036】
また、本発明の糖類は、上記のような医薬品製剤として用いるだけでなく、飲食品等として用いることもできる。この場合には、本発明の糖類をそのまま、又は種々の栄養成分を加えて、飲食品中に含有せしめればよい。エクオル濃度上昇作用を有する糖類を用いた場合は、体内のエクオル濃度を上昇させる目的、或いは不定愁訴等の更年期障害、骨粗鬆症、高脂血症、動脈硬化、乳がん、前立腺がん、月経前症候群等の改善、予防等に有用な保健用食品又は食品素材として利用でき、これらの飲食品又はその容器には前記の効果を有する旨の表示を付してもよい。エクオル濃度低下作用を有する糖類を用いた場合は、体内のエクオル濃度を低下させる目的、或いはエクオルの環境ホルモン様作用により引き起こされる、精子の減少、生殖能力の低下等の予防に有用な保健用食品又は食品素材として利用でき、これらの飲食品又はその容器には前記の効果を有する旨の表示を付してもよい。具体的に本発明の糖類を飲食品に配合する場合は、飲食品として使用可能な添加剤を適宜使用し、慣用の手段を用いて食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト等に成形してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料、茶飲料等の飲料に添加して使用してもよい。なお、飲食品には動物の飼料も含まれる。
【実施例】
【0037】
以下、試験例及び実施例を挙げて本発明の内容をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約されるものではない。
【0038】
試験例1 エクオル産生に及ぼす各種糖類の影響
エクオルプロデューサーの新鮮排泄便について、ガラスビーズ(φ3mm)を用いて10倍容の嫌気状態の希釈液(KH2PO4 0.00255%、K2HPO4 0.00255%、NaCl 0.006%、(NH42SO4 0.00255%、CaCl2 0.000255%、MgSO4 0.000255%、0.1%レサズリン溶液 0.1%、8%Na2CO3溶液 2.2%、L−システイン塩酸塩 0.05%)に懸濁し、滅菌ガーゼを用いて固形分を除去した。8,000rpm、10分の遠心分離を行い、沈殿を同量の同希釈液にて懸濁した。この状態で−30℃にて凍結保存した。
解凍した糞便希釈液について再度遠心分離し、沈殿を100倍容のPY培地(ペプトン 0.5%、トリプチケースペプトン 0.5%、イーストエキス 1%、ヘミン 0.00005%、ビタミンK1 0.0001%、L−システイン塩酸塩 0.05%、KH2PO4 0.0006%、K2HPO4 0.0006%、NaCl 0.0012%、(NH42SO4 0.0006%、CaCl2 0.00006%、MgSO4 0.00006%)に再懸濁した。その際に最終濃度1%となるように、アドニトール、アラビノース、セロビオース、エリスリトール、フラクトオリゴ糖、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グリコーゲン、イノシトール、イヌリン、ラクチトール、ラクトース、ラクチュロース、マルトース、マンニトール、マンノース、メレチトース、メリビオース、ラフィノース、ラムノース、リボース、ソルビトール、ソルボース、シュクロース、トレハロース、キシロース、ガラクトオリゴ糖を加えた。同時に糖を添加しない系列も作製した。それらに最終濃度100μMとなるようにダイゼインを添加し、37℃で、16時間完全嫌気培養を行った。なお、培養はすべて独立した4系列で行った。得られた培養液から、ダイゼインとエクオルの抽出及びHPLC分析を行った。なお、ここで用いたイノシトールは、SIGMA社製のmyo−イノシトールである。グリコーゲンは、SIGMA社製のグリコーゲンであり、その由来は、牡蠣である。トレハロースは、SIGMA社製のD(+)トレハロースであり、α,α体である。ガラクトオリゴ糖は、ヤクルト薬品工業社製のTOS−Sであり、4’ガラクトシルラクトースと6’ガラクトシルラクトースとの混合物である。フラクトオリゴ糖は、和光純薬社製であり、1−ケストース、ニストース、1−フラクトシル−D−ニストースとの混合物である。
ダイゼイン及びエクオルの抽出は以下のように行った。培養液500μLに250μLのジエチルエーテルを添加し十分に攪拌した。この混合液を2,000rpmにて10分間遠心分離し、ジエチルエーテル層を得た。残った水層に対して同様のジエチルエーテル抽出を再び行い、2度の抽出で得られたエーテル層を併せて窒素ガス噴射下40℃にて濃縮乾固した。これを250μLの80%メタノールにて溶解し、フィルター濾過した通過物を測定検体とした。
また、HPLC条件は次の条件で行った。
装置:LCモジュール1(Waters)
カラム:YMC−Pack CN(Y.M.C製)
検出:紫外吸光光度計(測定波長 280nm)
カラム温度:40℃
移動相:0.1%蟻酸溶液/アセトニトリル/メタノール(87:3:10)混液
流量:2.5mL/min
サンプル注入量:10μL
上記条件にて、ダイゼイン、エクオルの標準品をそれぞれ注入し、検量線を作成して、試料中のダイゼイン、エクオル濃度を測定した。得られた濃度より段落〔0020〕に記載した数式を用いてエクオル濃度調節活性を算出した。
その結果を表1及び図1に示した。糖無添加を100%とした場合、フラクトオリゴ糖、グルコース、イヌリン、ラクトース、ラクチュロース、メリビオース、ラフィノース、シュクロース、ガラクトオリゴ糖では、エクオル変換が50%以下に抑制されていたことから、負のエクオル濃度調節活性があることがわかった。特に、フラクトオリゴ糖、グルコース、イヌリン、ラクトース、ラフィノース、シュクロース、ガラクトオリゴ糖では、生成したエクオルは全く見られず培地に添加した100μMのダイゼインが殆ど残存していた。なお、イヌリンにはラットの血清中のエクオル濃度を低下させる作用が知られているが(非特許文献5)、今回の試験系でもイヌリンにダイゼインからのエクオル変換能を著しく低下させる作用が見出された。また、フラクトオリゴ糖にはエクオル産生を促進させるとの報告(非特許文献5)、及びヒト糞便培養物のエクオル産生活性を低下させるとの報告(非特許文献6)があるが、今回の試験系ではフラクトオリゴ糖にダイゼインからのエクオル変換能を著しく低下させる作用が見出された。
一方、アドニトール、アラビノース、エリスリトール、ガラクトース、ラクチトール、メレチトース、トレハロース、リボース、ソルボース、キシロース、イノシトール、ソルビトールでは、エクオル変換が200%以上に促進されていたことから、正のエクオル濃度調節活性があることがわかった。特に、ラクチトール、メレチトース、トレハロース、ソルボース、キシロース、イノシトールでは、培地に添加した100μMのダイゼインの70%以上がエクオルに変換されており、エクオル濃度調節活性も400%以上であった。
【0039】
【表1】

【0040】
試験例2 エクオル変換能を有する微生物の培養
試験例1に記載の方法にて保存した糞便懸濁液を500μLのPY培地(PY培地に最終1%となるようにアドニトール又はソルボースを添加、アドニトール又はソルボースの代わりに滅菌蒸留水を添加したものを対照とした)に1/10となるように懸濁し、最終濃度100μMとなるようにダイゼインを添加した。それを16時間、37℃にて完全嫌気培養した。培養後液50μLを新しい500μLの同培地に植え継ぎ、残りはダイゼイン及びエクオルの抽出に用いた。植え継ぎ以降の操作を順次繰り返し、継代を重ねた。その際に、適宜菌液をグラム染色し、顕微鏡観察した。ダイゼイン及びエクオルの抽出及びHPLCによる定量は、試験例1に記載の方法で行った。得られたダイゼイン及びエクオル濃度を次式に当てはめることによりダイゼイン−エクオル変換率を求めた。なお、培養はすべて独立した3系列で行い、平均値と標準偏差を求めた。
ダイゼイン−エクオル変換率(%)=100×(培養液中のエクオル濃度)/(培養液中のエクオル濃度+ダイゼイン濃度)
その結果、図2に示すように、アドニトール、ソルボースを糖源とした場合、それぞれ8代目、及び11代目までダイゼイン−エクオル変換能が維持できた。また、11代目の培養液内には元来の糞便由来物は1012分の1しか含まれていないことから、ソルボースを糖源としたPY培地のみでエクオル変換能を維持できることが推察された。また、ソルボースを糖源としたPY培地で11代培養した際のグラム染色像を観察すると、3〜5種類の細菌が観察された。このことから、11代の継代培養によりエクオル変換菌が選択的に増殖していることがわかった。
【0041】
処方例1 錠剤の製造
下記の処方で各種成分を混合して造粒・乾燥・整粒した後に、打錠して錠剤を製造した。
(処方) (mg)
微結晶セルロース 100
トレハロース 80
ステアリン酸マグネシウム 0.5
メチルセルロース 12
【0042】
処方例2 清涼飲料の製造
下記処方により、常法に従って各成分を配合し、均質化して清涼飲料を得た。得られた清涼飲料は褐色瓶に充填後、アルミキャップにて封印し、加熱処理を施した。
(処方) (g)
香料 0.8
クエン酸 0.2
果糖 4
ガラクトオリゴ糖 1.5
水 93.5
【0043】
処方例3 培地の製造
下記の組成で各種成分を混合し、水を用いて1Lに調整した後、滅菌してエクオル変換能を有する微生物の選択培地を製造した。
(組成) (g)
ペプトン 5
トリプチケースペプトン 5
イーストエキス 10
アドニトール 10
ソルボース 10
ヘミン 0.0005
ビタミンK1 0.001
L−システイン塩酸塩 0.5
KH2PO4 0.006
2HPO4 0.006
NaCl 0.012
(NH42SO4 0.006
CaCl2 0.0006
MgSO4 0.0006
10mMダイゼイン溶液 10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルボースを有効成分とする、微生物によるダイゼインからのエクオル変換の促進剤。
【請求項2】
体内におけるエクオル濃度を上昇させるものである請求項1記載の促進剤。
【請求項3】
さらにダイゼインを含有する請求項1又は2に記載の促進剤。
【請求項4】
ソルボース及びダイゼインを含有することを特徴とするエクオル変換能を有する微生物の選択培地。
【請求項5】
請求項4記載の選択培地を用いて、検体に含まれるエクオル変換能を有する微生物を培養することを特徴とする検体中のエクオル変換能を有する微生物の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−91652(P2013−91652A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282829(P2012−282829)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2007−542801(P2007−542801)の分割
【原出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【Fターム(参考)】