エクスビボ肺ケアのためのシステムおよび方法
エクスビボで肺を維持し、肺を診断し、肺に治療を供する方法およびシステム。本発明の方法およびシステムは、エクスビボ灌流回路内に肺を位置づけること; 肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させること; および気管界面を通じて換気ガスを流すことで肺を換気することを含む。肺を長期間維持することは、肺に捕集量(captive volume)の空気を再呼吸させること、および灌流流体と換気ガスとの間の平衡状態に到達することを含む。肺のガス交換能力を診断することは、灌流流体を脱酸素化することおよび、酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化するために要する時間を測定することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2008年1月31日出願の米国仮出願第61/024,976号; 2008年4月8日出願の米国本出願第12/099687号; 2008年4月8日出願の米国本出願第12/099715号; 2008年4月8日出願の米国本出願第12/099717号; 2008年4月8日出願の米国本出願第12/099725号; 2008年4月8日出願の米国本出願第12/099,728号の優先権および恩典を主張するものであり、これらの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、エクスビボ臓器ケアのためのシステム、方法および装置に関する。より詳しくは、各種態様において、本発明は、生理的または近生理的条件においてエクスビボで片肺または一対の肺をケアし、評価しかつそれに治療的対策を適用するための携帯型装置に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
現行の臓器保存技術は、氷上の化学保存液中の臓器の低温貯蔵を典型的に包含する。これらの技術は種々の溶液を利用するが、そのいずれも、虚血によるダメージから臓器を十分に保護しない。臓器をドナーからレシピエントに移植することを意図する場合、そのような損傷は特に望ましくない。
【0004】
エクスビボ臓器の有効な生理的保存は、慣行的なアプローチに比較して重要な利益を与える可能性がある。例えば、生理的エクスビボ保存は、回収した臓器のより注意深いモニタリング、機能検査、評価および治療を可能にする可能性がある。これにより、回収した臓器の欠損のより早期の検出および潜在的修復を可能にして、移植後の臓器不全の可能性をさらに減少させる可能性がある。臓器に対する単純な修復を実行および評価する能力も、微小な欠損を有する多くの臓器を保存することを可能にする可能性がある一方で、現行の移植技術ではそれらを廃棄することが必要になる。肺を回収する場合にこのことは決定的に重要である。これは、ドナーの体内で回収する前であっても、肺は容易に損なわれるためである。
【0005】
さらに、臓器と特定のレシピエントとの間のより有効なマッチングを実現させて、最終的な臓器拒絶の可能性をさらに減少させることができる。現行の移植技術はドナーおよび受容体の血液型のマッチングに主に依存しているが、このマッチングはそれ自体、臓器をレシピエントが拒絶するか否かの指標としては比較的信頼性がない。臓器適合性のより好ましい試験はヒト白血球抗原(HLA)マッチング試験であるが、現行の冷虚血臓器保存アプローチは、完了に12時間以上をしばしば要することがあるこの試験の使用を妨げている。
【0006】
慣行的なアプローチを使用する場合、虚血が引き起こす損傷は、臓器をエクスビボで維持する時間の長さの関数として増加する。例えば、典型的には、肺はわずか約6時間〜約8時間しかエクスビボで保存できず、その後移植には使用不能になる。典型的には、心臓はわずか約4時間〜約6時間しかエクスビボで保存できず、その後移植には使用不能になる。これらの比較的短い期間により、所与のドナー場所から到達可能なレシピエントの数が限定され、それにより、回収した臓器のためのレシピエントプールが制限される。期限内であっても、臓器はやはり著しくダメージを受けることがある。重大な問題は、ダメージの任意の観察可能な徴候がないことがあるということである。このため、最適未満の臓器を移植することで、移植後の臓器障害または他の損傷が生じることがある。したがって、エクスビボで健康状態で臓器を保存可能な時間を延長できる技術を開発することが望ましい可能性がある。そのような技術は移植後の臓器不全の危険性を減少させ、潜在的なドナーおよびレシピエントのプールを拡大する可能性がある。
【0007】
長期のかつ信頼できるエクスビボ臓器ケアは、臓器移植の文脈外の利益を与える可能性もある。例えば、典型的には、患者の身体は全体として、多くの特定の臓器よりもはるかに低いレベルの化学療法、生物療法および放射線療法にしか耐容性を示さないことがある。エクスビボ臓器ケアシステムは、臓器を身体から除去しかつ隔離下で処置することを可能にして、身体の他の部分に対するダメージの危険性を減少させる可能性がある。
【0008】
上記に鑑み、エクスビボで臓器をケアするための改善されたシステム、方法および装置が求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、携帯型エクスビボ臓器ケアに関する改善されたシステム、方法、解決策および装置を各種態様において提供することで、当技術分野の現状における欠陥に対処する。
【0010】
一般に、一局面では、本発明は携帯型シャーシを含む携帯型多用途モジュールと、単一用途使い捨てモジュールであって、多用途モジュールとの電気機械的相互操作のために単一用途使い捨てモジュールと多用途モジュールとを結合させるように適応した界面; および、肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面と、肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面とを有する肺チャンバアセンブリであって、肺から離れる灌流流体の流れを運搬するための二重ドレインシステムであって、灌流流体ガス含有量のセンサへ灌流流体流の一部を方向づけるための測定ドレインと、灌流流体流の残りの部分を受けるための主ドレインとを含む二重ドレインシステムを含む、肺チャンバアセンブリを含む、単一用途使い捨てモジュールとを含む、肺ケアシステムを特徴とする。一態様では、肺ケアシステムは、肺チャンバアセンブリから灌流流体を排出するためのドレナージシステムであって、ドレインシステムが測定導管および主ドレイン導管を含み、測定導管が灌流流体ガス含有量を測定するように適応したセンサへ灌流流体の流れをさらに方向づけるドレナージシステムを含む。
【0011】
他の態様は以下の特徴のうち1つまたは複数を含む。二重ドレインは灌流流体流を受け取るための容器を含み、容器からの溢流は主ドレインに流れる。システムは、灌流流体を循環させるためのポンプと、所定の組成を有するガスにより肺を換気するための換気システムとを含む。ガスは酸素、二酸化炭素を含む。携帯型多用途モジュールは使い捨てモジュールの電気制御、空気圧制御および機械制御のうち少なくとも1つを与えるための肺コンソールを含み、肺コンソールは、肺の換気を制御するための換気コントローラを含み、肺へのガスの流れを引き起こすベローズを作動させるための機械的アクチュエータを含む。肺コンソール空気圧制御システムは、使い捨てモジュールにおける肺に接続された換気ガス回路内の1つまたは複数のバルブを制御する。空気圧制御システムは、肺とベローズとの間の流れを遮るためのベローズバルブ、換気ガスを通気するためのリリーフバルブ、および換気ガス回路にガスを導入するためのトリクルバルブのうち少なくとも1つを制御する。換気コントローラは、酸素化ガス、脱酸素化ガスおよび維持ガスのうち1つより、肺の換気に使用するガスを選択する。酸素化ガスは空気、または25%〜100%の酸素を含有するガスである。脱酸素化ガスは二酸化炭素および窒素で組成され、維持ガスは酸素、二酸化炭素および窒素で組成される。一態様では、脱酸素化ガスは約6%の二酸化炭素および約94%の窒素であり、維持ガスは約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素である。多用途モジュールは、灌流流体中の酸素などのガス含有量のレベルを制御可能な灌流流体コントローラを含む。灌流流体コントローラは、ガスの流れと灌流流体との間でガスを交換するガス交換器へのガスの流れを例えば制御することで、灌流流体ガス成分を制御する。ガス交換器に流れるガスは、灌流流体から酸素を除去する脱酸素化ガスである。多用途モニタは、肺ケアシステムのステータスを表示するためのモニタを含み、ステータスは、肺に入りかつ肺から出る灌流流体の酸素含有量に関する情報を含む。それは換気ガス圧および肺動脈圧のリアルタイム追跡も表示する。
【0012】
一般に、別の局面では、本発明は単一用途使い捨てモジュールであって、多用途モジュールへの取り付けに適応した界面、および肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面とを有する肺チャンバアセンブリを含む、単一用途使い捨てモジュールと; 肺チャンバアセンブリから灌流流体の流れを排出するためのドレインシステムであって、測定導管および主ドレイン導管を含み、測定導管が灌流流体ガス含有量を測定するように適応したセンサに対して灌流流体の流れをさらに方向づけるドレインシステムとを含む、肺ケアモジュールを特徴とする。
【0013】
他の態様は以下の特徴のうち1つまたは複数を含む。モジュールは、維持ガス、評価ガス、および空気などの酸素化ガスのうち1つにより肺を換気するためのシステムを含む。システムは、ある量のガスを肺に再呼吸させるように構成され得る。換気システムは、約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素の組成を有する維持ガスにより肺を換気する。機械的に作動するベローズを使用して肺を換気する。換気システムは、維持ガスの流れを導入するためのトリクルバルブと、過剰のガスを通気するためのリリーフバルブとをさらに含む。肺に対する第2の界面は、気管に挿入するための挿入部と、換気ガス回路に接続するためのコネクタ部とを有する気管カニューレを含む。肺に対する第1の界面は、肺動脈に挿入するための挿入部と、灌流流体回路に接続するためのコネクタ部とを含む肺動脈カニューレを含む。それは、肺への灌流流体の流入地点の近くに圧力トランスデューサを位置づけるために、挿入管の近くにコネクタ部のルーメンへの開口を画定する圧力トランスデューサコネクタも含む。圧力トランスデューサコネクタは、圧力トランスデューサにおいて遠隔通気させるためのチャネルをさらに与える。
【0014】
一般に、さらに別の局面では、本発明は少なくとも1つのハウジングドレインを含む底面、および壁面を有するハウジングと; 肺を支持するための支持面であって、肺から出る灌流流体を排出するためのドレイン、およびドレインに通じるドレナージチャネルを画定する支持面と; ハウジングの壁面への封止可能な接続を与える開閉式蓋と; 肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と; 肺の換気を可能にするための第2の界面と; 肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面とを含む、肺チャンバアセンブリを特徴とする。
【0015】
他の態様は以下の特徴のうち1つまたは複数を含む。ハウジングは、肺から離れる灌流流体の流れを運搬するためのドレインシステムであって、灌流流体ガス含有量のセンサへ灌流流体流の一部を方向づけるための測定ドレインと、灌流流体流の残りの部分を受けるための主ドレインとを含むドレインシステムを含む。ドレインシステムは、肺から離れる灌流流体の流れを、測定ドレインに供給を行うプールに収集するための領域を有し、測定ドレインは、肺から離れる灌流流体の流量未満のドレナージ容量を有する。領域から溢流する灌流流体の流れは主ドレインに流れる。いくつかの態様では、ドレインシステムは、測定ドレインを部分的に取り囲む壁面であって、測定ドレインから主ドレインへの灌流流体の流れを部分的に遮断し、測定ドレインの上側での灌流流体のプールの形成を促進する壁面をさらに含む。肺チャンバのハウジングは、肺動脈カニューレ、肺動脈圧トランスデューサ導管および気管カニューレのハウジングを通じる封止された通路を与える開口を画定する。いくつかの態様では、灌流流体は、露出した左心房カフを通じて肺から出て、ドレナージシステムに流れる。他の態様では、肺から出る灌流流体の流れは、左心房カフへの封止された接続を通過し、左心房カフは、肺から離れる灌流流体を運搬する導管に接続されている。灌流流体流の一部は酸素含有量センサを通過し、残りはリザーバに流れる。
【0016】
一般に、さらなる局面では、本発明はエクスビボ灌流回路内に肺を位置づける段階; 肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階; 気管界面を通じて換気ガスを流すことで肺を換気する段階; 灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化する段階; 灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値に到達するまで酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化する段階; および灌流流体中の酸素含有量レベルを酸素含有量の第1の値から酸素含有量の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断する段階を含む、肺を診断する方法を特徴とする。
【0017】
他の態様は以下の特徴のうち1つまたは複数を含む。灌流流体は、二酸化炭素および窒素、例えば約5.5%の二酸化炭素および約94.5%の窒素を含む換気ガスにより肺を換気することで脱酸素化される。灌流流体は、ガス交換装置に灌流流体を循環させることで脱酸素化され、ガス交換装置は、二酸化炭素および窒素を含む脱酸素化ガスと流体連通しており、ガス交換装置は、換気ガスと灌流流体との間のガス交換により灌流流体中の酸素の組成を改変する。酸素含有量の所定の第1の値は約73%の赤血球飽和度に対応する。酸素化ガスは空気、または約25%〜約100%の酸素を含むガスである。酸素含有量の所定の第2の値は約93%の赤血球飽和度に対応する。灌流流体は、1分当たり約1.5リットルの速度で流れ、ヒーターで近生理的温度レベルに加温される。灌流流体は全血、または、白血球が部分的に枯渇しているかもしくは血小板が部分的に枯渇している血液などの血液製剤で組成される。各種治療薬は、灌流中に灌流流体を経由して、または、気管界面を通じて噴霧器もしくは気管支鏡を使用して、肺に送達される。灌流流体中の酸素レベルは、流体中の赤血球飽和度を決定するパルスオキシメーターを使用して測定される。
【0018】
一般に、さらなる局面では、本発明は肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階; 肺と可変量チャンバとの間で捕集量(captive volume)の換気ガスを行ったり来たり流すことで気管界面を通じて肺を換気する段階; およびさらなる量の換気ガスを捕集量に導入しかつ捕集量から過剰の換気ガスを通気させることで、換気ガスの所定の組成を維持しかつ捕集量の最小ガス圧を維持する段階を含む、エクスビボで肺を保存する方法を特徴とする。
【0019】
他の態様は以下の特徴のうち1つまたは複数を含む。換気ガスは酸素、二酸化炭素、および窒素などの不活性ガスの組成を含む。灌流流体は、換気ガスの所定の組成に対応する平衡レベルに到達する。換気ガスの所定の組成は約5〜20%の酸素および約2〜10%の二酸化炭素を含む。灌流流体のガス含有量は、約88%〜98%のヘモグロビン飽和度レベルを有する平衡レベルに到達する。
【0020】
換気ガスの所定の組成は約12%の酸素および約5.5%の二酸化炭素を含む。肺に入る灌流流体のヘモグロビン飽和度レベルは約90〜95%の平衡レベルに到達し、肺を離れる灌流流体のヘモグロビン飽和度レベルは約90〜95%の平衡レベルに到達する。肺に入る灌流流体の酸素含有量は生理的レベルよりも低く、肺を離れる灌流流体の酸素含有量は生理的レベルよりも高い。以下のパラメータがある種の態様において使用される: 換気ガスのさらなる流れは1分当たり約400〜600mLであり、捕集量は約400〜1200mLであり、捕集量の最小ガス圧はH2O約4〜8cmであり、換気ガスの最大圧力はH2O約12〜22cmである。過剰の換気ガスは、捕集量と連通するリリーフバルブを通じて通気される。可変量チャンバはベローズであり、ベローズを圧縮することは肺への換気ガスの流れを引き起こす。肺動脈界面は肺動脈カニューレを含み、肺動脈カニューレの一部は肺の肺動脈に挿入される。灌流流体は、肺の露出した左心房カフを通じて、または左心房カフと左心房カニューレとの間の封止または半封止された接続を通じて、肺から離れるよう流れる。気管界面は気管カニューレを含み、気管カニューレの一部は肺の気管に挿入される。本方法は、肺に流れる灌流流体中の酸素含有量の第1のレベルおよび肺から流れる灌流流体中の酸素含有量の第2のレベルを測定する段階を含む。酸素測定段階は、灌流流体中のヘモグロビンの酸素飽和度のレベル、および肺に流れかつ肺から流れる灌流流体中の酸素の分圧のうち少なくとも1つを測定する段階を含む。灌流流体は血液製剤を含み、治療薬を肺に送達することができる。換気ガスと灌流流体との間の肺内でのガス交換は、灌流流体中の酸素および二酸化炭素などの1つまたは複数のガスのレベルを平衡値に到達させる。肺は、平衡レベルのガスにより維持する場合、約3〜24時間保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下の図面は、本発明の例示的態様を図示するものであり、ここで同様の参照番号は同様の要素を意味する。これらの図示された態様は原寸通りに描かれないことがあり、本発明を例示するものであって限定するものではないと理解すべきである。
【0022】
【図1A】携帯型臓器ケアシステムの記載される態様の模式図である。
【図1B】携帯型臓器ケアシステムの記載される態様の模式図である。肺灌流モジュールのガス関連構成要素を示す。
【図2】記載される態様の肺灌流回路の模式図である。
【図3】記載される態様に係る、維持モードでの臓器ケアシステムのガスループの模式図である。
【図4】記載される態様に係る、評価モードでの臓器ケアシステムのガスループの模式図である。
【図5】図5A〜5Bは、記載される態様に係る肺換気装置空気圧回路の模式図である。
【図6】記載される態様に係る、呼吸サイクルにわたる肺における典型的な圧力波形を示す図である。
【図7】図7A〜7Eは、記載される態様に係る気管カニューレの例を示す。
【図8】図8A〜8Fは、記載される態様に係る肺動脈カニューレの例を示す。
【図9】図9A〜9Fは、図8A〜8Fに例示される肺動脈カニューレの側面図を示す。
【図10】左心房カニューレの図である。
【図11】記載される態様に係る、維持モードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図12】記載される態様に係る、構成メニュー維持タブを示す、維持モードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図13】記載される態様に係る、連続評価モードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図14】記載される態様に係る、逐次評価モード、脱酸素化サブモードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図15】記載される態様に係る、逐次評価サブモード設定に関する構成メニューを示す、臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図16】記載される態様に係る、逐次評価モード、保持サブモードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図17】記載される態様に係る、逐次評価モード、酸素化サブモードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図18】記載される態様に係る、評価タブに関する構成メニューを示す、臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図19】記載される態様に係る、換気装置設定に関する構成メニューを示す、臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図20】記載される態様に係る、肺タブに関する構成メニューを示す、臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図21】記載される態様に係る、システムタブに関する構成メニューを示す、臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図22】記載される態様に係る、正面図から45°より描いた、臓器ケアシステムの図である。
【図23】記載される態様に係る、臓器ケアシステムの側面図である。
【図24】記載される態様に係る、臓器ケアシステムの正面図である。
【図25】記載される態様に係る、サイドパネルが除去された臓器ケアシステムの図である。
【図26】記載される態様に係る、肺灌流モジュールが除去された臓器ケアシステムの図である。
【図27】記載される態様に係る、肺灌流モジュールの図である。
【図28】記載される態様に係る、肺チャンバの分解図である。
【図29】記載される態様に係る、肺チャンバの肺支持面、ハウジングおよび正面部の図である。
【図30】記載される態様に係る、気管カニューレおよびPAカニューレを示す、肺チャンバの肺支持面、ハウジングおよび正面部の図である。
【図31】記載される態様に係る、臓器ケアシステムに肺を配置する前に肺ドナー場所で行われる段階を示す流れ図である。
【図32】記載される態様に係る、ドナー場所からレシピエント場所への肺の輸送中に行われる段階を示す流れ図である。
【図33】記載される態様に係る、臓器ケアシステムから肺を除去しかつそれらをレシピエントに移植するために肺レシピエント場所で行われる段階を示す流れ図である。
【図34】エクスビボでの肺の連続評価中に行われる段階を示す流れ図である。
【図35】エクスビボでの肺の逐次評価中に行われる段階を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
概要において先に記載のように、記載される態様は、特にエクスビボ携帯型環境におけるエクスビボ肺ケアに対する改善されたアプローチを一般に提供する。肺ケアシステムは、空気の約半分の酸素を有する特別に調合されたガスを肺に再呼吸させながら、肺の血管系に灌流流体を循環させることで肺を平衡状態に維持する。灌流流体は肺動脈(PA)に、PAに挿入されるカニューレを経由して入ることで循環する。肺を通過した後、灌流流体は開放状のカニューレ挿入していない左心房(LA)から肺を出て、そこでそれはリザーバに排出される。ポンプは、流体をリザーバから取り出し、それをヒーターおよびガス交換器に通過させ、カニューレ挿入したPAに戻す。記載される態様では、灌流流体はドナーの血液に由来する。代替の態様では、灌流流体は血液製剤に基づくか、合成代用血液に基づくか、血液製剤と代用血液との混合物であるか、または血液バンクからの血液に由来する。
【0024】
記載される態様は、例えば3〜24時間またはそれ以上などの長期間、エクスビボで肺を維持することを可能にする。そのような長期的なエクスビボ維持時間は、ドナーの肺の潜在的なレシピエントのプールを拡張して、ドナーとレシピエントとの間の地理的距離の重要性を低下させる。また、長期的なエクスビボ維持時間は、ドナー臓器と臓器レシピエントとの間のよりよい遺伝子およびHLAマッチングに必要な時間を与えて、好ましい予後の可能性を増加させる。近生理的機能条件に臓器を維持する能力により、臨床医は、臓器の機能をエクスビボで診断し、かつダメージを受けた臓器を同定することも可能になる。このことは肺の場合に特に有用である。これは、ドナーの死の原因の直接的または間接的な結果として、肺がしばしば損なわれるためである。したがって、新たに回収した肺であってもダメージを受けていることがある。回収した臓器の速やかな評価を行う能力により、外科医は、肺の質を決定し、ダメージがある場合には問題の性質の決定を行うことが可能になる。次に外科医は、肺を廃棄するか否か、または肺に治療を適用するか否かに関する決定を行う。治療としては、補充(recruitment)プロセス、肺のダメージを受けた区域の除去またはステープリング、分泌物の吸引、出血する血管の焼灼、および放射線処置の供与を挙げることができる。回収から移植までのいくつかの段階において肺を評価しかつ必要であれば肺に治療を与えることができることにより、肺移植成功の全体的可能性が大きく改善される。いくつかの場合では、改善した評価能力および長期的な維持時間により、医学的手術者は、微小な欠損を有するドナーの臓器に対する物理的修復を行うことが可能になる。増加したエクスビボ臓器維持時間により、臓器を患者から除去し、エクスビボで隔離下で処置した後、患者の身体に戻すことを可能にすることもできる。そのような処置としては、薬学的処置、ガス処置、外科的処置、化学療法、生物療法、遺伝子療法および/または放射線療法を挙げることができるがそれに限定されない。
【0025】
以下、肺ケアシステムを下記の順序で説明する。第一に、例示的臓器ケアシステムの構成要素の概観を示す。第二に、肺の準備およびそのシステムへの取り付けをはじめとする、システムの例示的操作を論じる。第三に、肺を維持するためのシステムの使用を説明する。次に、肺を評価する2つの方法、すなわち連続評価モードおよび逐次評価モードを第4節および第5節で説明する。第六に、肺換気装置空気圧回路の機能を説明する。第七に、肺の維持および評価中の代表的な臓器ケアシステムのユーザーインターフェースおよびシステムディスプレイを示す。第八に、臓器ケアシステムおよび選択される構成要素の例示的な実施を説明する。第9節では、臓器ケアシステムを使用するための例示的モデルを説明する。
【0026】
臓器ケアシステムの概観
図1は、肺の保存および処置に適応した臓器ケアシステム(OCS)1000の主要構成成分を示すブロック図である。臓器ケアシステムは、恒久的な多用途の非使い捨て部分であるOCS肺コンソール101と、物理的な肺ならびにそれを通過するガスおよび流体と直接接触する、単一用途使い捨て部分である肺灌流モジュール400とを含む。多用途OCS肺コンソール101は4つの構成成分を含む: OCSコンソール100; 肺コンソールモジュール200; OCSモニタ300; ならびに流れを測定するためのプローブ(114)ならびに灌流流体中の酸素レベルおよびヘマトクリットレベルを測定するためのプローブ(116, 118)。記載される態様では、OCS 1000は自給式の可搬および携帯型ユニットであり、ホイールを使用して平面での輸送用に1人で容易に取り扱うか、または、例えば車両に荷積みする際に2人で容易に持ち上げることができる。臓器および灌流流体と共に荷積みする場合、OCS 1000の重量は約75〜100ポンド、好ましくは約80ポンドである。
【0027】
OCSコンソール100は、システムに対して処理、温度、および電力の制御サービスを与える。製造プロセス中に、OCSコンソール100を、OCS肺コンソールモジュール200との使用に適応させる。あるいは、OCSコンソール100を、肺以外の臓器、例えば心臓、肝臓、または腎臓を保存するように適応したモジュールとの使用に適応させることもできる。OCSコンソール100は、システムコントロールおよびプロセスデータを与える、記載される態様ではFreescale MX1である主プロセッサ102を含む。主プロセッサ102は、肺コンソールモジュールコントローラ202、ヒーターコントローラ104、OCSモニタプロセッサ302およびポンプコントローラ(図示せず)を含む、システム内の他のプロセッサにソフトウェアを分配する。それは、流れセンサ114、圧力センサ115および酸素センサ116、118から受け取るデータなどのデータも管理する。
【0028】
記載される態様ではPICマイクロコントローラであるヒーターコントローラ104は、灌流流体の加熱を制御する。圧力トランスデューサ223は、タンク221中の内部維持ガスの圧力を測定し、それにより残存ガスの量を決定することができる。調整器222は、システム内での使用のためにガスタンク圧を25mmHgに変換する。内部維持ガスタンク221は、以下に記載の維持モード中に肺組織を維持するために十分な酸素を与えるように設計される混合物を含む。記載される態様では、維持ガスは12%の酸素、5.5%の二酸化炭素および82.5%の窒素で組成される。いくつかの態様では、OCSコンソール100は、肺の評価中に使用する内部脱酸素化ガスタンク、調整器および圧力トランスデューサ(図示せず)も含む。評価モードは後の節で説明する。
【0029】
(他の臓器ではなく)肺の保存に特異的な機能は、肺コンソールモジュール200により制御される。肺コンソールモジュール200は、データ接続、電力接続およびガス接続によりOCSコンソール100に接続される。データ接続は、OCSコンソール100上の主プロセッサ102を、記載される態様ではPICマイクロコントローラ上に組み込まれる肺コンソールモジュールコントローラ202にリンクさせる。電力接続は、OCSコンソールの電力制御モジュール106を電力変換器218にリンクさせ、これにより電力変換器218は、肺コンソールモジュール200内の電力式構成要素に適切な電圧で電力を供給する。ガス接続は維持ガス調整器222からガスセレクタスイッチ216に伸びており、このスイッチは、維持ガスまたは脱酸素化ガスのいずれが肺に流れるかを選択する。記載される態様では、脱酸素化ガスタンク501はOCS 100の外側であり、維持ガスタンク221はOCSコンソール100の内側に位置する。代替的な態様では、OCSコンソール100は内部脱酸素化ガスタンクも含む。別の代替的な態様では、さらなる外部維持ガスタンク221が、OCSコンソールの内側の維持ガスタンクを補完する。外部ガスタンクは、ドナー場所、レシピエント場所で供給を行うことができるか、または肺を輸送する車両に積み込むことができる。外部タンクは、制約された容積のOCS肺コンソール101内に入れる必要がないため、より大きくすることができ、OCS 1000のより小さい内部ガスタンクの限定されたガス供給源を補完することができる。
【0030】
コントローラ202は、バルブ、ガスセレクタスイッチ216および換気装置214を制御することで維持ガスおよび評価ガスの放出を管理し、それにより、維持モードで肺の保存を、または評価モードの1つで肺の評価を実施する。血液ガスソレノイドバルブ204は、血液ガス交換器402に流れるガスの量を制御する。気道圧センサ206は、隔離膜408を通じて検知される肺404の気道の圧力をサンプリングする。リリーフバルブアクチュエータ207は空気圧制御され、リリーフバルブ412を制御する。空気圧制御は、制御される空気通路を遮断または遮断解除するオリフィス絞りを膨張または緊縮させることで行われる。この制御方法は、肺コンソールモジュール200内の制御システムと肺灌流モジュール400内の換気ガスループとの間の完全な隔離を可能にする。空気圧制御208はリリーフバルブ207およびベローズバルブアクチュエータ210を制御する。肺コンソールモジュール200の空気圧制御回路は以下で詳細に説明する。トリクルバルブ212は、肺404の気道へのガスの送達を制御する。換気装置214は、ベローズ418を収縮および拡張するアクチュエータアームを有する機械的装置であり、これは肺404へのおよび肺404からのガスの吸入および呼出を引き起こす。
【0031】
OCSモニタ300は、ボタンによるOCS 1000のユーザー制御を与え、かつ、肺の状態およびOCS 1000内の各種サブシステムの状態を示すシステムのセンサからのデータを表示する。モニタ300は汎用であり、すなわち、任意の臓器に使用可能である。それはモニタ300を制御するソフトウェアを実行しかつLCD 304上にデータを表示するモニタプロセッサ302を含む。記載される態様では、モニタプロセッサ302はFreescale MX1である。各種スクリーンディスプレイの例は、以下でOCS 1000の使用モードとの関連で説明する。OCSモニタ300はユーザー用の4つの制御ボタンを含む: メニューボタン306は構成メニューを立ち上げ、アラームボタン308はスピーカーを消し、ポンプボタン310は循環ポンプを制御し、かつ動作ボタン312は、換気装置制御などのある種の臓器特異的動作、または外部メモリカードに対するセッションファイルの保存などのシステム動作へのアクセスを与える。値を制御するかまたは項目を選択するためのノブなどの、他の制御も含まれ得る。
【0032】
OCS肺コンソール101は、本明細書では灌流流体および灌流液とも呼ばれる循環灌流媒体250の特性を測定するプローブを含む。流量プローブ114は、システムを通じた灌流流体250の流量を測定する。記載される態様では、流量プローブ114は、肺動脈に通じる灌流液ライン上に配置される。圧力センサ115は、肺への灌流流体250の流入地点での肺動脈圧を測定する。2つの酸素飽和度センサ116および118は、回路の動脈側、すなわち酸素化側、および回路の静脈側、すなわち脱酸素化側の灌流流体250の酸素の量を検知する。
【0033】
肺灌流モジュール400は、肺404を流れるガス回路および流体回路と直接接触している。したがって、臓器と接触する組織または流体がOCS肺コンソール101と接触しないように、OCS 1000の残りからそれを隔離することが必要である。一方向ガスラインのみを経由して、または空気圧制御用の隔離された制御ガスを経由して、または機械的アクチュエータ(ベローズ用)によって、OCS肺コンソール101にそれを接続することで、このことは実現する。システム全体のすべての組織および血液に接触する表面を含む、肺灌流モジュール400全体は、使い捨てであり、OCS 1000に配置される新しい肺ごとに置き換えられる。すべての組織および血液に接触する表面は、使い捨て肺灌流モジュール400の一部であり、このモジュールは、容易に滅菌可能である安価な生体適合性材料を使用して射出成形構成要素から製造される。肺灌流モジュール400は、OCSコンソール100との結合用に形作られかつサイズ決めされる。肺灌流モジュールとOCSコンソールとの間の結合は、インターロック機構、または、灌流モジュールをOCSコンソールに固定するか、そうでなければOCSコンソールに対して所望の位置に灌流モジュールを維持する他の機構を含み得る。記載される態様では、以下で図22との関連で説明する機械的ヒンジおよび留め金機構によって、肺灌流モジュールはOCSコンソール100に容易に取り付けられ、かつそれから容易に取り外される。それはプラグイン電気接続および光学接続によっても接続される。
【0034】
肺灌流モジュール400は、換気装置214により作動するベローズ418を含む。換気装置214は、ベローズ418を圧縮および開放する機械的アクチュエータアームを使用する。ベローズを圧縮することで、肺404はガスを吸い込み、ベローズを開放することで、それは拡張され、肺はガスを吐き出す。ベローズ418を圧縮する際に機械的アクチュエータが移動する距離は、一回換気量(tidal volume)、すなわち肺404が吸入するガスの量を決定する。肺に流れ込みかつ肺から流れ出るガスはガスフィルター410を通過し、このフィルターは、肺が生成する任意の流体がガスループに入ることを防止する。
【0035】
肺灌流モジュール400の換気ループ中でのガスの隔離を確実にするために、肺灌流モジュール400とOCS肺コンソール101との間のすべての肺ガス接続は、ガスがOCS肺モジュール101に流れて戻ることを防ぐ膜を含む。例えばリリーフバルブアクチュエータ207およびベローズバルブアクチュエータからの空気圧制御ガス接続には隔離膜は必要ではない。これは、このガスが臓器と接触しないためである。肺灌流モジュールへの流れのみを可能にする一方向ガス流バルブは、換気ループ中のガスから自動で隔離される。そのようなバルブとしてはトリクルバルブ212および血液ガスソレノイドバルブ204が挙げられる。気道圧センサ206は、後方向にOCS肺コンソール101に向かう任意のガス交換を防ぐ隔離膜408を経由してガスライン圧をサンプリングする。
【0036】
灌流モジュール400は血液ガス交換器402を含み、この交換器は、灌流液流へのガスの注入を可能にする灌流液/ガス交換膜を含む。灌流液は、肺404とガス交換器402との間の回路406および407を循環する。臓器チャンバは肺404を支え、また、動脈中酸素含有量レベルの正確な測定を容易にするように、肺から出て左心房より来る灌流液をチャネル輸送する。灌流回路および臓器チャンバの詳細な説明を以下に示す。
【0037】
灌流モジュール400はリリーフバルブ412を含み、このバルブは外へ吐き出されるガスの制御放出を与えることで、換気装置ガスループ内のガス圧の減少に役立つ。ベローズバルブ414は、肺へのまたは肺からのガス流を制御する。チェックバルブ416は、外部空気を換気システムに引き込むことを可能にする一方向バルブである。ベローズ418は拡張および収縮される。換気システムを再呼吸モードで使用する場合、ベローズは、それが拡張および収縮されるに従って、実質的に決まった量のガスを肺と交換する。
【0038】
図2は肺灌流回路を示す。回路は肺灌流モジュール内に完全に収納されており、すべてのその構成要素は使い捨てである。灌流流体250は灌流回路内を循環し、肺灌流モジュールの各種構成要素を通過した後、肺404の血管系を通過する。ポンプ226は、灌流流体250が肺灌流回路全体を流れるようにする。それはリザーバ224から灌流流体250を受け取り、コンプライアンスチャンバ228を通じてヒーター230に溶液をポンプ輸送する。コンプライアンスチャンバ228は、ポンプ226の拍動性の緩和に役立つ、チューブの可撓部である。ヒーター230は、灌流流体250が環境に対して流体の循環中に失った熱を置き換える。記載される態様では、ヒーターは、30〜37℃、好ましくは約34℃の生理的温度またはその近くに灌流流体250を維持する。ヒーター230を通過した後、灌流流体250はガス交換器402に流れる。肺と同様に、ガス交換器402は、ガス透過性の中空繊維膜を通って、ガスと灌流流体250との間でガスを交換することを可能にする。しかし、ガス交換器は約1平方メートルの有効ガス交換表面積を有しているが、これは肺の50〜100平方メートルの有効交換面積のわずか一部にすぎない。したがって、ガス交換器402は、肺と比較して限られたガス交換能力しか有さない。血液ガスソレノイドバルブ204は、ガス交換器402へのガスの供給を調整する。ガス交換器に供給されるガスの組成は、以下で詳細に説明するどのモードにOCSがあるかにより決定される。例えば、OCS 1000が逐次評価モードにある場合、脱酸素化ガス500は、逐次評価サイクルの脱酸素化相の間にガス交換器に供給される。ガス交換器402を通過した後、灌流流体250は流量プローブ114、圧力プローブ115および灌流液中酸素プローブ116を通過する。本発明者らは、酸素プローブ116からの読み取りをSvO2と呼ぶ。これは、静脈血中酸素と類似した形で、それが灌流流体250中の酸素を、灌流流体が肺に入る直前に測定するためである。サンプリング/注入ポート236は、灌流流体250が肺に到達する直前の、試料の除去または化学物質の注入を容易にする。次に、灌流溶液はカニューレ挿入した肺動脈232を通じて肺404に入る。
【0039】
肺動脈(PA)カニューレは、灌流回路を肺404の血管系と接続する。肺動脈(PA)カニューレのいくつかの代表的態様を図8A〜8Fに示す。図8Aを参照すると、単一のPAカニューレ802は、単一のPAへの挿入用の単一の挿入管804を有しており、PAが2つの肺に分岐する前の地点でPAにカニューレ挿入するために使用される。カニューレを肺動脈に接続するには、挿入管804をPAに挿入し、PAを縫合により管上に固定する。カニューレ802の挿入管804はコネクタ部805に接続され、コネクタ部は、肺404の肺動脈への歪みのない接続に好適な角度および位置に挿入管804を位置づけるために役立つ。接続部805は主管部808に接続され、主管部は灌流流体回路に取り付けられる。図9Aは、挿入管804と接続部805との間の角度を示す、PAカニューレ802の側面図であり、記載される態様では、角度は約15°〜30°、好ましくは約22.5°である。
【0040】
図8B〜8Fを参照すると、二重PAカニューレ810、820、830、840および850は、各々2つの挿入管812、814、822、824、832、834、842、844、および852、854を有し、管の各対は、カニューレ810、820、830、840および850においてそれぞれカニューレの主軸から30°、45°、60°、75°および90°隔てられた角をなす。各管は、リブにおいて約0.5〜0.72インチの直径を有し、挿入管の本体上で約0.4〜0.62インチの直径を有する。多様な角度は、外科医に、ドナーの肺の解剖に最も適合するカニューレの選択を与える。図8Bを参照すると、一対の挿入管812および814が接続部815にY字状に接合している。図9Bで最も明らかに示すように、接続部815は主管818に対して角をなし、角度は、肺404の肺動脈への挿入管812および814の挿入を容易にするように選ばれる。記載される態様では、角度は15〜30°、好ましくは約22.5°である。図9C〜9Fを参照すると、接続部825、835、845、855とその対応する主管828、838、848および858との間の15〜30°、好ましくは約22.5°という同様の角度が示される。各種の事前設定した角度で隔てられた角をなす分岐した末端を有するPAカニューレを有することに対する代替案は、ドナーの肺血管の角度に適合するように曲げることが可能である展性のPAカニューレを有することである。
【0041】
PAカニューレの製造の材料をここで説明する。単一のPAカニューレ802の例示的態様では、挿入部804はポリカーボネートチップを有しており、コネクタ部805および主管部808はウレタンチューブで作製されている。代替的な態様では、挿入管804、コネクタ部805および主管部808は、すべて単一片の50ショアA〜90ショアAの硬度シリコーン、好ましくは80ショアA硬度のシリコーンで作製される。同様に、二重PAカニューレでは、二重PAカニューレ810、820、830、840および850の主管818、828、838、848、858およびコネクタ部815、825、835、845、855はそれぞれウレタンで作製することができ、挿入管812、814、822、824、832、834、842、844、852および854はポリカーボネートで作製することができる。代替的な態様では、二重管PAカニューレ全体、すなわち二重挿入管、コネクタ部および主管はすべて単一片の80ショアAのシリコーンで作製される。シリコーンでの構築の利点は、縫合によりカニューレコネクタ上に結ばれる肺血管に対して良好な足掛かりを与える上でそれが十分に軟らかいということである。さらに、肺PAに対する取り付けの時点で、シリコーンを所要の長さに容易に切断することができる。さらに、シリコーンは、複雑な形状に成形可能であるため、カニューレ全体を単一片で製作することを可能にする。カニューレの一体的構築は別個のカニューレの部品間のつなぎ目を排除する。つなぎ目は、灌流流体250中で望まない乱流を生成するか、不純物を導入するか、または別個の部品間の継手において漏出を引き起こすことがある。さらに、一体的構築は、単一片の成形のみを必要とし、これはコストを減少させ、カニューレの信頼性を増加させる。
【0042】
各PAカニューレの接続部は、灌流液圧力トランスデューサ115を接続するためのコネクタも含む。図8A〜8Fおよび9A〜9Fを再度参照すると、PAカニューレ802、810、820、830、840および850は圧力トランスデューサコネクタ806、816、826、836、846および856をそれぞれ含む。コネクタは、灌流液流が遅くなるまさに肺への流入地点である正確な位置に灌流液圧センサを配置することに役立ち、圧力の読み取りは、ベルヌーイの流れ圧力により歪曲されることはない。圧力トランスデューサコネクタは、圧力センサ115において遠隔通気させるためのチャネルも与え、これは圧力読み取りの正確さを確実にするために役立つ。
【0043】
肺を通過した後、灌流液は左心房から肺を出て、その一部はドナーからの肺の外移植中に肺と共に除去される。レシピエントへの肺の移植中に、左心房組織は取り付けゾーンとして役立つため、できるだけそれを原状のままでかつ健康にしておくことが重要である。したがって、記載される態様では、左心房カフはカニューレ挿入されておらず、これにより、循環する灌流液を開放状の左心房および左心房カフから排出することが可能になる。
【0044】
代替的な態様では、左心房カフは、図10に示すケージ状カニューレ1002によりカニューレ挿入される。この態様では、すべてのLA血管がカニューレ内部に配置され、次に過剰のLA組織がカニューレの周りに巻きつけられる。LAカニューレ1002のケージ状構造1004は、任意の肺静脈を閉塞させることなく左心房を開放状に保持するように設計されており、したがって組織の健康を損なう危険性を減少させるために役立つ。カニューレの内部で、肺静脈から流れる灌流液は管1006に収集され、灌流液リザーバに供給される。コネクタ1008は圧力トランスデューサに接続点を与え、圧力トランスデューサはカニューレ1002内部に配置されかつ灌流液圧を測定することが可能である。
【0045】
新たに排出される流体のサンプリングを、それがリザーバ内で他の灌流液と混ざる前に可能にする「溢流カップ」技術を使用して、肺から出る灌流液は二重ドレインシステム内に収集される。肺からのすべての流れは、測定ドレインに対して供給を行う小さいカップへ方向づけられる。このドレインの容量は小直径チューブの使用により制限される。肺からの灌流液は、測定ドレインの容量を超える流量で出る。過剰な血液はこの小さいカップを溢流し、主ドレインに、したがってリザーバプールに方向づけられる。測定ドレインは、新たに排出される灌流液の無気泡の流動を第2の酸素プローブ118に向けることで、SaO2と呼ばれる動脈内酸素レベルの正確な読み取りを得る。第2のサンプリング/注入ポート234を通過した後、灌流溶液はそのサイクルを完了してリザーバ224に戻る。左心房カフがカニューレ挿入されていない構成においてのみ、二重ドレインシステムが必要である。しかし、例えば以下に記載のケージカニューレにより左心房カフがカニューレ挿入されている場合は二重ドレインシステムの必要性はない。これは、新たに排出される無気泡の灌流液の中実カラムが、カニューレ挿入された左心房カフから出るためである。
【0046】
記載される態様では、灌流流体250は、ヘパリン、インスリン、ビタミンおよび抗生物質を加えたドナー血液で組成される。デキストランは膠質浸透圧、ヘマトクリットレベルおよびpHを調整するために役立つ。
【0047】
以下の節では、肺を保存および評価するためにどのようにしてOCS 1000を使用するかを説明する。器具取り付け前(preinstrumentation)の節では、肺をOCSに接続する前にOCS 1000および肺を準備する際の初期段階を説明する。維持モードの節では、肺を保存するためにどのようにしてOCSを使用するかを説明する。評価モードの節では、肺の状態を評価する2つの方法、すなわち連続モードおよび逐次モードを説明する。
【0048】
器具取り付け前
ドナーから肺を除去した後、気管カニューレを気管に挿入して、肺灌流モジュール400のガス回路と肺との間の接続手段を与える。図7A〜7Eは一連の代表的気管カニューレを示す。図7Aを参照すると、カニューレ700は気管挿入部704を含み、気管挿入部には気管がケーブルタイまたは他の手段により固定される。記載される態様では、挿入部704は約0.8インチの長さである。カニューレ700の基材は、ポリカーボネート、または、アクリル、ポリエステル、K樹脂、ナイロン、ポリエチレンもしくはポリプロピレンなどの別の硬質で射出成形可能な生体適合性プラスチックで組成されることが好ましい。挿入部704の上の上層は軟質シリコーンゴムで組成されることが好ましく、上層用の代替的な材料は、ポリウレタン、熱可塑性エラストマーおよび他のゴム材料などの他の軟質で生体適合性の押出材料または成形用材料である。気管取り付け部704に隣接しているのは可撓部706であり、これはポリウレタン、または、挿入部の上層に好適であるとして先に列挙した他の生体適合性材料のうち1つで組成されることが好ましい。挿入部704およびその上層、ならびに可撓部706は射出成形可能であり、シリコーン上層は基材部上に重ね成形される。代替的な態様では、シリコーン上層は別個に成形されるか、または基材上に押出および延伸される。
【0049】
気管に挿入される挿入部704の末端にはリブ703があり、リブは、気管内の挿入位置で挿入部704を固定するために役立ち、気管の周りに配置されるケーブルタイにより固定される。挿入部704の反対側の末端では、挿入部704の基材部直径よりも約0.2インチ大きい直径を有する第2のリブ705が、シリコーン上層用のストップおよび気管用のストップとして働く。後方リブ705は、約0.5インチ長であり、かつ0.5インチ直径の管を保持するための角をなすバーブを有する、チューブ用バーブフィッティングである。肺OCS肺チャンバコネクタ710に向かう基材部上には、約0.5インチ長であり、0.5インチ直径の管を保持するための角をなすバーブを有する、第2のチューブ用バーブフィッティングが存在する。
【0050】
可撓部706をクランプすることで、肺404へのおよび肺404からの気流を封鎖することができる。例えば、外移植後およびOCSのガス回路への接続前に肺404の静的膨張を維持するために、部分706のクランピングを使用する。静的膨張は、肺の虚脱、および肺胞に対する結果的なダメージを防止するために役立つ。静的膨張では、肺は約20センチメートルの水の圧力まで膨張する。次に、可撓部706において気管カニューレのクランプを外す。
【0051】
気管挿入部から最も遠い可撓部706の末端の近くに、カニューレ700は、肺チャンバにカニューレを固定するためのロックナット708を含む。ロックナット708はカニューレ管の階段状部分上に装着される。ロックナット708に隣接する0.7インチ長の15mmコネクタ710は、カニューレを標準的換気装置コネクタに接続するために役立ち、標準的換気装置コネクタは、肺をOCSのガス回路に接続する。気管カニューレは、ドナーのサイズに従って変動する気管径を有するドナーの肺に適合するように設計されている。図7Aは、0.9インチの挿入部先端径702を有する気管カニューレ700を示す。図7B、7C、7Dおよび7Eでは、挿入部724、744、764および784の0.85、0.80、0.75および0.70インチの挿入部先端径722、742、762、782を有するカニューレをそれぞれ示す。0.7インチより小さいかまたは0.9インチより大きい挿入部径を有するカニューレが、ある種のドナーからの肺に適合するために必要になることがある。
【0052】
肺を受け入れる前に、OCS灌流回路をドナー血液、プライミング液および薬物によりプライミングする。次にこの灌流液を循環および加温する。この相の間に、ガス交換器402は、維持モードに対応する血液ガスを確立する。これは、維持ガスがガス交換器に流れることを可能にするようにガスセレクタスイッチ216を設定すること、およびガス交換器を通じる低平均流量の維持ガスを与えるようにガス交換器バルブ204を負荷サイクルが調節することにより実現する。ガス交換器内でのガスの交換は、循環する灌流液を維持ガスとの平衡に到達させて、O2およびCO2の所望の維持灌流液ガスレベルを確立する。灌流液のpHをCO2レベルにより制御する。これらの準備段階は、肺をOCS上に取り付ける際に、灌流液が維持ガスレベルに既に到達したことを確実にし、このことは維持モードへの肺の移行を加速するために役立つ。
【0053】
維持モード
維持モードは、肺を安全で安定した条件に配置することで、それらを長期間保存することを可能にする。肺の代謝上の需要を満たすための酸素と、血中pHを制御するための二酸化炭素とを含有するガスにより平衡状態で肺を配置することで、維持ガスは肺の細胞の要求を満たす。肺の酸素消費量は少ないため、各呼吸を実質的に再利用することができ、これは新鮮なガスの消費量を劇的に減少させる。供与された臓器は、レシピエントが所在する異なる場所に輸送することが通常は必要であるため、肺を支援するために必要なガスの量を減少させ、それによりシステムの携帯性を増加させることは、著しい利益となる。
【0054】
肺を臓器チャンバ内に配置する場合、休止モードにあるシステムガスラインに気管カニューレを接続する。休止モードでは、ベローズ418は完全拡張状態にあり、すなわち、最初の肺吸入を行うように準備されている。気管カニューレ上のクランプを除去し、肺およびガスライン内の圧力を同等にする。次に吸入を開始する。
【0055】
図3は、維持モードにあるOCSの機能の図である。維持モードでは、換気装置システムは、肺とベローズとの間で捕集量のガスを行ったり来たり動かして、ガスを肺に再呼吸させる。さらに、バルブ212を通じる各呼吸中に、少量の維持ガス220を換気回路に少しずつ流す。過剰のガスをリリーフバルブ412を通じて回路から排気することで、圧力の増大を防止しかつシステム内の所望の最小ガス圧を維持する。記載される態様では、維持ガス220は、約9〜15%の酸素、好ましくは約12%の酸素、約4〜7%の二酸化炭素、好ましくは約5.5%の二酸化炭素、および残りは窒素で組成される。
【0056】
維持ガス220の組成は、空気のそれの約半分の量の酸素、および、灌流流体250中で近生理的pHレベルを維持する量の二酸化炭素を含む。維持モードでは、維持ガス220と灌流液ガスレベルとの間で平衡が実現する。この平衡において、肺404に入る灌流流体250中の酸素レベル、すなわち静脈中レベルPvO2と、肺404から出るレベル、すなわち動脈中レベルPaO2との間には小さな差しか存在しない。維持ガス220の組成は、生理的血液中ガスレベルからできるだけ逸脱していない灌流液中酸素レベルを実現するように選ばれる。酸素含有量が高すぎると、生理的レベルを大きく上回る静脈中酸素レベルという結果になり、逆に、酸素レベルが低すぎると、生理的レベルを大きく下回る動脈中酸素レベルという結果になる。好ましい維持ガスの組成は、これらのレベルの間の折衷であって、生理的な静脈中レベルと動脈中レベルとの間のほぼ中間である灌流流体250中の平衡の動脈中および静脈中酸素レベルを実現する折衷である。約12%という好ましい酸素成分は、肺の代謝上の必要を満たすために十分過ぎるほどの酸素も与える。さらに、12%という酸素レベルは、空気を呼吸する健康な肺の肺胞中の酸素レベルに近い。これは、気管中の酸素レベルと、肺に対する気道通路に沿ったガス交換が引き起こす肺胞中のレベルとの間に勾配が存在するためである。維持モードにある肺404の場合、維持ガスが再呼吸される際に、この勾配は存在せず、酸素レベルは肺全体で約12%である。
【0057】
最初に、肺を第一にOCSガスラインに接続する場合、ガスループを維持ガスではなく空気で満たす。したがって、肺の換気は最初に空気により行う。換気ガスを少しずつ流し、過剰なガスを放出すると、ガスループ中のガスの組成がまもなく維持ガスのそれに変化する。
【0058】
維持モードでは、維持ガスタンク221を選択するようにガスセレクタバルブ216(図1)を設定する。ガス交換器バルブ204は維持モードでは常に閉鎖されている。これはガス交換器402を使用しないためである。ベローズと肺との間のガス交換を維持するために、ベローズバルブ414は常に開放されている。図3を参照すると、受動チェックバルブ416は、吸引条件下で回路に空気をもたらすが、維持モード中は、換気回路が常に陽圧を有するため、閉鎖されたままである。
【0059】
各維持モードサイクルの開始時に、ベローズ418は完全に開放された位置にあり、肺はそれらの最低容量である。このサイクル中に、ベローズ418が圧縮されることで、ガスは肺に動かされる。肺は拡張されてこのガス量を受け入れ、圧力を上昇させる。指定量のガスを送達した際、ベローズ418は指定のプラトー時間休止した後、サイクルの呼出部を開始する。呼出中、ベローズ418はその当初の完全拡張状態に戻り、肺は弛緩する。次の換気サイクルは、指定の呼吸速度による間隔セットの後で始まる。各サイクルの吸入相の間にベローズ418が圧縮される程度は、典型的には400〜1200mLである、ユーザー指定の一回換気量により決定される。
【0060】
図6は、各換気サイクルにおける典型的な呼吸圧波形650を示す。サイクルの開始時に、圧力は、H2O約5cmである呼気終末陽圧(PEEP)値652に設定される。ベローズがサイクルの吸入部654において圧縮されると、圧力はピーク圧656に増加し、サイクルのプラトー部658においてピーク圧のままにとどまる。記載される態様では、ピーク圧はH2O約20cmである。サイクルの呼出部660では、圧力は、サイクルの終わりに所望のPEEPレベルに到達するまで低下する。完全な換気サイクルの持続時間662は、ユーザーが選択する呼吸速度により設定され、典型的には約6秒である。
【0061】
各維持モード換気サイクルにおいて2つの他の事象が生じる。吸入相654中に、トリクルバルブ212は短時間開いて、指定量の較正維持ガスを回路にもたらす。その後、呼出相660の終わりに、リリーフバルブ412は短時間開いて、所望のPEEPに到達するまで過剰のガスを外気に対して排気する。トリクルバルブ212およびリリーフバルブ412の開口は、図6においてトレース664および666によりそれぞれ示す。
【0062】
換気ループへの維持ガスの平均流量はユーザーが指定し、典型的には500ml/分である。1分当たり10呼吸の換気速度で、トリクルバルブ212は各サイクルで維持ガス50mlを回路にもたらす。600mlという典型的な一回換気量で換気する場合、各サイクルでの維持ガスの注入は、一回換気量の約10%の量に過ぎず、したがって任意の所与の換気サイクルに対して小さい影響しか有さない。酸素レベルを低下させかつCO2レベルを増加させるという肺の代謝の傾向にもかかわらずガスループ中のガス組成を維持ガスレベルに近く保つために必要な最小レベルに、維持ガスの流量を通常は設定する。維持ガスの注入は、システム中で所望のPEEPレベルを維持するためにも使用される。肺および呼吸フィッティングからのガス漏出量も維持ガスの注入量に影響を与える。
【0063】
肺の代謝活性は低いため、肺は支援用の酸素をほとんど必要とせず、少量の二酸化炭素しか生成しない。したがって、肺自体の代謝は、換気ガスおよび灌流液ガスの組成に小さな影響しか有さない。維持ガスは各換気サイクル中にガスラインに注入されるため、換気ガスおよび灌流液ガスの組成は速やかに同一組成、すなわち維持ガスのそれに到達する。この状況が生じた時点で、肺は維持ガスとの平衡状態になる。平衡状態では、灌流液中酸素レベルは定常状態の値を実現する。SaO2の定常状態レベルは約93〜95%の範囲であり、生理的レベルよりはわずかに低い。対応する定常状態SvO2レベルは約90〜91%の範囲であり、生理的レベルより高い。したがって、維持モードでは、肺全体での灌流流体250中の飽和度レベル間の差は、生理的な差より小さい。より高いこのSvO2は、部分的には、生理的な場合には存在する身体組織の脱酸素化効果の不在による。より低いこのSaO2レベルは、部分的には、空気の酸素含有量の約半分しか有さない維持ガスにより肺を換気することで引き起こされる。
【0064】
維持モード換気の改良においては、システムは、トリクルバルブ212が寄与するガスの量に相当するベローズの圧縮ストロークを短縮することで、肺への正確かつ一定の一回換気量の送達を維持する。
【0065】
評価モード−連続
図4は、肺の評価の実行に関与する各種構成要素を示す模式図である。連続モードの評価では、システムは、空気を肺に吸入した後、灌流流体が肺に戻る前に灌流液酸素を除去することで、身体のプロセスを模倣する。身体において、酸素の除去は組織により達成され、OCSにおいて、それはガス交換器を流れる脱酸素化ガスにより達成される。連続モードの評価は、肺がどれほど血液を脱酸素化できるかを測定することで、肺のガス交換能力を試験する。この測定は、静脈血および動脈血中酸素レベルを測定することで行われる。連続評価モードでの肺の性能のスコアリングを以下でさらに論じる。
【0066】
図34は、肺の連続評価の実行に関与する主要な段階を示す流れ図である。段階3402では、脱酸素化ガスはガス交換器402に流れる。脱酸素化ガス500を選択するよう設定したガスセレクタスイッチ216を使用し、かつガス交換器バルブ204を開放してガス交換器402を脱酸素化ガス供給源に接続することにより、これは達成される。記載される態様では、維持ガスは4〜7%のCO2、好ましくは6%のCO2、および残りは窒素で組成される。このモードでは、トリクルバルブ212は閉鎖されたまま保たれる。段階3404では、肺を空気または別の換気ガスにより、ベローズ418を使用して換気し、ベローズは、各サイクルの吸入相の間に空気または他の換気ガスの新鮮な呼吸を肺に送達する。
【0067】
図6は、連続モード換気サイクルにおけるガス圧プロファイルおよびバルブ設定を示す。サイクルの開始時に、ベローズ418は完全に開放された位置にあり、肺はそれらの最低容量であり、圧力はPEEPレベル652にある。ベローズバルブ414が開放668され、ベローズが圧縮されることで、ガスは吸入相654の間に肺に動かされる。肺は拡張されてガスを受け入れ、それに伴って圧力が上昇する。ベローズ418が指定量のガスを送達した場合、システムはユーザー指定のプラトー時間658(停滞時間とも呼ぶ)休止した後、サイクルの呼出相660を開始する。呼出中、ベローズバルブ414、670を閉鎖することで、ベローズと肺との接続を封鎖する。回路の肺側では、リリーフバルブ412を開放672して、PEEPレベルに到達するまで肺からガスを排気し、その時点でリリーフバルブ412を閉鎖674する。同時に、ベローズ418を完全伸展位置まで拡張する。これによりベローズ側での吸引を作り出し、吸引は受動チェックバルブ416により解放され、受動チェックバルブ416は次の吸入サイクルの準備において外気を入れてベローズを満たす。次の換気サイクルは、ユーザー指定の呼吸速度により決定された時間に始まる。このように、各サイクル中のベローズバルブ414およびリリーフバルブ412の協調的な作動は、新鮮な空気による肺の連続換気を引き起こす。
【0068】
代替的な態様では、ベローズバルブ414は、プラトー658の前の吸入相654の終わりに閉鎖される。これにより、吸入相の直後にベローズの拡張が始まることが可能になる。
【0069】
空気以外のガスをチェックバルブ416の入口に供給することができる。実際、任意の所望の組成のガスを与えることができる。例えば、病院で酸素濃縮を与える一般的なガスエントレインメント(entrainment)装置からガスを与えることができる。そのような装置は、標準的な50%または100%という酸素レベルで換気ガスを供給することができる。
【0070】
脱酸素化ガスはガス交換器402を流れ、肺は空気により換気されるが、図34、段階3406に示すように、灌流液は肺およびガス交換器を循環する。肺を連続モードで評価しながら生理的条件に近似させるには、身体のそれに類似した酸素レベルを有する静脈中灌流流体を肺に供給することが望ましい。ガス交換器402は限定されたガス交換能力を有しており、3〜4l/分という生理的血流量では、断続的に再酸素化が行われる肺に血液を循環させながら、血液から十分な酸素を除去することで飽和度レベルを身体に対応するレベルに減少させることは不可能である。したがって、ガス交換器402が静脈血中の酸素の生理的レベルを実現することを可能にするために、流量を約1.5l/分に減少させる。代替的な態様では、1.5l/分と生理的流量3〜4l/分との間の中間の流量を使用し、それ相応のより高い酸素レベルの静脈血が肺に入る。記載される態様では、一方で、血液が肺に入る際の生理的血中ガスレベルに近似させることと、もう一方で、生理的流量に近似させることとの間にはトレードオフが存在する。システムのガス交換能力を増加させることで、トレードオフを減少させるかまたは排除することができる。1つのアプローチでは、肺灌流回路内で複数のガス交換器を直列または並列で使用する。別のアプローチでは、ガス交換器のガス交換能力を、より大きいガス交換面をそれに備えさせることで増加させる。
【0071】
典型的には、連続モード評価を、肺を維持モードに保った直後に行う。以下の代替的な態様では、維持モードから連続モード評価への切り替えを迅速化する。最初に、維持モードにおいて、通常はいくつかの空気換気サイクル中に流されるであろう維持ガスの全量を、ベローズ418は含んでいる。その代わり、掃流操作を行って、ベローズ418の全内容物を空気で置き換える。この掃流中に、ベローズバルブ414は開放され、ベローズ418は遅い速度で完全に圧縮される。この圧縮中に、リリーフバルブ412は能動制御されて、圧力をPEEPレベルの近くに維持する。この圧縮サイクルの終わりに、ベローズバルブ414が閉鎖され、ベローズ418が完全に拡張されることで、その全容積がチェックバルブ416からの新鮮な空気で満たされる。1つまたは複数の掃流サイクルを行って、新たなガス組成を完全に確立することができる。
【0072】
システムが定常状態になった時点で、図34、段階3408に示すように、肺に入りかつ肺から出る灌流液中の酸素レベルの値を測定する。灌流液試料を取得して、酸素レベルを確認しかつ灌流流体の他の成分を決定することもできる。連続評価モードでは、各呼吸において肺がどれほど多くの酸素を灌流液に移動できるかを決定することで、ユーザーは肺のガス交換能力を評価する。この評価は、肺に入りかつ肺を離れる灌流液中の酸素レベルの測定値に基づいている(3410)。肺を換気するガス中の酸素画分などの各種パラメータを使用して、この評価を較正する。ガス交換能力の標準的な尺度は、水銀柱mm単位の血中酸素の分圧PaO2と、分画吸気酸素値FiO2との間の比である。正常な安静時の個人では、この比は100/.21 = 450である。300未満の比は損なわれた肺を示し、200未満の比は急性呼吸促迫症候群(ARDS)を示す。しかし、OCS内の評価ツールとしてこの尺度を有効化するには、いくつかの標準化調整が必要である。1つの重要な調整は、血液が肺に入る前の血液の脱酸素化レベルPvO2に関するものである。一般に、ガス交換器の限定された脱酸素化能力が理由で、OCS中のPvO2レベルはある個人中のそれより高い。したがって、肺の所与のガス交換能力について、インビボよりもOCSの連続評価モードの肺のほうがPaO2が高いことが予測される。
【0073】
肺のガス交換能力の別の尺度は、肺に入る血液の酸素レベルPvO2と、肺を離れる血液のそれPaO2との間の差である。正常な個人では、PvO2レベルは約40mmHgであり、PaO2は約100mmHgであり、流出酸素レベルと流入酸素レベルとの間の差は60mmHgである。OCSについては、PvO2レベルは60mmHgであり得るものであり、健康な肺は115mmHgのPaO2を実現可能であり、PaO2 - PvO2の値は55mmHgであり、これはインビボでの対応する値に近い。
【0074】
測定される連続モードパラメータを評価ツールとして有効化するには、いくつかの標準化調整が必要である。これらの調整は、換気パラメータ、ヘマトクリットレベル、血流量、肺気量、高度および温度などの因子に基づいている。
【0075】
逐次評価モード
逐次評価モードは、肺のガス交換能力を診断する第2の方法である。このモードでは、肺は深静脈灌流液中酸素レベルを課せられ、このレベルにより、肺は連続評価モードのそれとは異なる能力試験に供される。
【0076】
逐次評価は3つの相を含む: 脱酸素化、保持、および再酸素化。脱酸素化相は、システム中の全灌流液から酸素を除去する。保持相の後、肺は灌流液プールを再酸素化する。肺が再酸素化を実現する速度は、それらのガス交換能力を示すものである。図35は、肺の逐次評価の実行に関与する主要な段階を示す。
【0077】
脱酸素化相3502、3504を使用して、灌流流体250の酸素含有量を低下させる。これはガス交換器402と肺404との両方を使用することで実現する。ガス交換器402が血液を脱酸素化するようにするには、脱酸素化ガスを選択するようにガスセレクタバルブ216を設定し、かつガス交換器バルブ204を開放することで、脱酸素化ガス500をそれに供給する。ガス交換器はそれ自体で血液を脱酸素化できるが、肺および換気装置を使用してプロセスを促進する。これを達成するために、換気装置を維持モード(上記参照)と同様にリブリーザー(rebreather)として動くように構成し、トリクルバルブ212が脱酸素化ガス500をガス回路に注入する。いくつかの換気装置サイクル内で、ガス回路内の再呼吸されたガスは、脱酸素化ガス組成、すなわち約6%のCO2および94%のN2に一致し、肺は、それらを循環する灌流流体を脱酸素化するように働く。事実上、灌流液プールを脱酸素化するために役立つ非常に有効なガス交換器として、肺は使用されている。図35、段階3504に示すように、通常は約50〜70%の酸素、好ましくは約60%の酸素であるユーザー定義の閾値の範囲内に灌流液中酸素がなるまで、脱酸素化相は続く。
【0078】
保持相3506では、灌流液が灌流回路を流れ続けている間にガス交換器バルブ204およびトリクルバルブ212を閉鎖することで、脱酸素化プロセスが中断する。この相の間に、灌流液プールは均一な脱酸素化レベルに安定化される。均一性を実現するために必要な時間は灌流液の流量に依存し得る。代替的な態様では、動脈中および静脈中の酸素含有量レベルをモニタリングし、そのレベルが長時間同等かつ一定になるまで保持相を維持する。保持相の間は、換気を中断するか、あるいは、システムが1つまたは複数の掃流サイクル(先に連続評価の節において説明)を行うことで再酸素化相を準備する。掃流サイクルはここで有用な役割を果たすが、これはガス回路内のガスが脱酸素化ガスからその対極である空気に切り替えられるためであり、および、灌流流体の酸素化を直ちに開始するには、ガス回路を最初に空気で満たしておく必要があるためである。
【0079】
逐次評価モードの最終相では、肺を空気または別の換気ガスにより換気することで、酸素が枯渇した灌流液プールを再酸素化する(段階3508)。連続評価について先に記載のものと同一だが、ガス交換器バルブ204を閉鎖したまま保つという差異を伴う方法を使用して、換気を行う。したがって、逐次評価モードの再酸素化相では、肺が灌流回路内の唯一のガス交換源である(段階3510)。肺が灌流液プールを再酸素化するために要する時間は、肺のガス交換能力の主要な指標である。測定される再酸素化時間は、パルスオキシメータープローブ116および118の一方または両方により測定される、灌流流体250が脱酸素化状態から所定の酸素化レベルに至るための時間である(段階3512)。代替的な態様では、血液試料をサンプリングポート234、236のうち1つまたは複数から取得し、飽和度レベルを実験室血液ガス分析計により測定する。酸素化閾値レベルでの飽和度を90%〜100%の範囲内に設定し、好ましくは93%に設定する。
【0080】
空気換気される肺が脱酸素化閾値レベルから酸素化閾値レベルまで血液を再酸素化するために要する時間により測定される、肺のガス交換能力は、肺の状態の尺度を与える(段階3514)。一般に、健康な肺は灌流液プールを4〜5呼吸で再酸素化することができ、これは45〜90秒の範囲、典型的には約1分の逐次評価モード再酸素化時間に対応している。評価ツールとしての再酸素化時間の有効化には、換気パラメータ、ヘマトクリット、血流量、肺気量および高度に基づく標準化が必要になることがある。
【0081】
逐次モード評価の代替的な態様では、酸素化相の間に空気以外のガスをチェックバルブ416の入口に供給する。例えば、病院設定において50%または100%の酸素でガスを与える装置からのガスは、換気ガスを供給することができる。この場合、再酸素化時間は減少し、また、肺のガス交換能力を決定するには、再酸素化時間の測定を適切に較正する必要がある。
【0082】
逐次評価モード中に肺のガス交換能力を評価する別の方法は、肺が脱酸素化相の間に灌流流体250を脱酸素化する速度を測定することである。脱酸素化ガス500により換気されている間に灌流流体250を脱酸素化する上での肺の有効性は、肺のガス交換能力の指標を与える。
【0083】
逐次評価モードの利点は、再酸素化中にガス交換が肺によってのみ行われるため、3〜4l/分という生理的血流量が使用可能であるということである。ガス交換器が関与しないため、血流を限定する必要はない。
【0084】
肺換気装置空気圧回路
肺換気装置空気圧回路は、各種換気モードを制御するためにベローズバルブ414およびリリーフバルブ412を制御する手段を与える。それは血液ガス交換器402および肺へのガス流も制御する。空気圧制御は、異なる速度でバルブを開放および閉鎖する能力、安価で使い捨てのパイロットバルブを利用可能であること、肺に対して露出するガスを運搬するバルブから肺コンソールモジュール200を隔離する能力、ならびに、使い捨て肺灌流モジュール400をコンソールモジュール200に対して接続および断絶するための簡便でモジュール式の界面を与えることを含む、いくつかの利点を提供する。
【0085】
コンソールモジュールコントローラ202上で実行されるソフトウェアは空気圧制御モジュール208を制御し、それによりこのモジュールはリリーフバルブアクチュエータ207およびベローズバルブアクチュエータ210を制御する。図5aは、肺コンソールモジュール200内の空気圧回路の構成要素、および、回路がどのようにして肺灌流モジュール400に接続されるかを示す。図1に示す空気圧制御モジュール208に対応する構成要素は、図5aでは点線により同定される。表1は、記載される態様に係る空気圧回路部品のリストである。
【0086】
【表1】
【0087】
肺コンソールモジュール200の空気圧回路は、ガスコネクタ624、626を経由して肺灌流モジュール400に接続される。図5bは、6ルーメンコネクタを示すコネクタ624の正面図を示し、ガスライン630、632、634、636および638はガス交換器402、再呼吸ガス回路、ベローズバルブ414、リリーフバルブ412および気道圧への接続をそれぞれ与える。コネクタは、肺コンソールモジュール200に対する使い捨て肺灌流モジュール400の迅速な除去および接続を可能にする。
【0088】
維持ガス220および脱酸素化ガス500は、それぞれコネクタ604および602によりガスセレクタスイッチ216に接続される。ガスセレクタスイッチ216はどのガスをガス交換器バルブ204およびトリクルバルブ212に通過させるかを選択する。トリクルバルブ212の制御は換気サイクルと同期しており、このバルブは、先に図6について記載のように吸入相の間は開放され、かつ所望の平均ガス流量を得る上で十分に長い時間開放状に保たれる。ガス交換器402への流量は、バルブ216からの制御バルブ204のパルス幅調節により制御される。バルブ204および212は、オリフィス絞り205および213をそれぞれ使用してガス流量の制御を実行する。
【0089】
ベローズバルブ414およびリリーフバルブ412はいずれも1リットル/秒などの高流量が可能である。ベローズバルブ414の場合、高流量能力は、吸入および呼出中に肺とベローズとの間の非制限的で自由なガス流を可能にする。リリーフバルブ412の場合、高流量能力は、肺がPEEP値まで速やかに呼出することを可能にする。記載される態様では、ベローズバルブ414およびリリーフバルブ412は市販の高流量パイロットバルブである。パイロットバルブダイヤフラムに陽圧を適用することでバルブを閉鎖し、陰圧はバルブを完全に開放する。
【0090】
図5aの下部は、どのようにしてパイロットバルブ制御がベローズバルブ414およびリリーフバルブ412について実現されるかを示す。空気ポンプ612が一定に動くことで、空気ポンプを通じたほぼ一定の気流を与える。ポンプは入口フィルター606およびチェックバルブ608を通じて周囲空気を引き入れる。この流れは、約1 PSIまたはH2O 70cmのチェックバルブ608全体にわたる圧力差を作り出し、これにより周囲空気に対してH2O -70cmの入口リザーバ610内圧力が生じる。入口リザーバ610および出口リザーバ614は、往復運動ポンプ612からの不均一な圧力波動をフィルタリングするために役立つ。出口リザーバ614を通過した後、空気ポンプ612の流出物は第2の1 PSIチェックバルブ616を流れる。したがって、出口リザーバ614内の圧力は、リリーフバルブアクチュエータ207が周囲圧力に開放されていることを前提として、周囲圧力をH2O 70cm上回る。
【0091】
ベローズバルブ414は次のように制御される。ベローズバルブアクチュエータ210は入口リザーバ610または出口リザーバ614のいずれかに接続可能である。ベローズバルブ414を開放するには、H2O -70cmにある入口リザーバ610にアクチュエータ210を接続する。アクチュエータ210は、この陰圧を空気圧ライン634を経由してベローズバルブ414のダイヤフラムに移動させる。ダイヤフラム上の陰圧はバルブ414を開放させる。ベローズバルブ414を閉鎖するには、アクチュエータ210をH2O +70cmで出口リザーバ614に接続することでバルブダイヤフラムに陽圧を適用させてバルブを締め切る。
【0092】
リリーフバルブ412は、このバルブのダイヤフラムに陽圧を適用することで制御されるが、この場合は、灌流モジュールガス回路内のPEEPを設定するためにバルブの制御可能なパイロットガス圧を使用する。換気ループ内の圧力がバルブのダイヤフラム上のパイロット圧より大きい限り、リリーフバルブ412を開放状のままにし、換気ループ内のガスは外に通気される。換気ループ内の圧力がパイロット圧未満である場合、リリーフバルブ412は閉鎖する。したがって、パイロット圧を所望のPEEP値に設定することで、リリーフバルブは、圧力が所望のPEEPレベルになるまでガスループからガスを通気させることを可能にし、その後にそれは締め切られる。代替的な態様では、PEEPバルブをより高いかまたはより低いパイロット圧で作動させることで、バルブを通じてその呼出速度を生じさせる。
【0093】
リリーフバルブ412内のパイロット圧の可変制御は、リニアステッパモータ618をリリーフバルブアクチュエータ207内の可変オリフィスバルブとの組み合わせで使用することで実現する。ステッパモータ618は、可変オリフィスバルブの開口のサイズを制御する。オリフィスの開口が小さくなるほど、気流に対する抵抗が高くなり、周囲空気に逃れる空気ポンプ612からの気流が少なくなり、チェックバルブ616とリリーフバルブアクチュエータ207との間の圧力が大きくなる。この圧力は空気圧ライン636を経由してリリーフバルブ412に伝達される。これは、リリーフバルブパイロット圧とPEEPとの間の経験的に較正される関係をプロセッサが得ることを可能にする。実際のパイロット圧はリリーフパイロットバルブ圧センサ620により測定され、これは肺コンソールモジュールプロセッサ202によりモニタリングされ、このプロセッサは気道圧センサ206からの気道圧の測定値も受け取る。代替的な態様では、実際のパイロット圧を所望のパイロット圧と比較し、かつステッパモータの位置を変化させてそれらを同等化することでパイロット圧を制御するために、パイロット圧測定を使用する。
【0094】
システム情報表示およびシステムモニタリング
OCSモニタ300は、システムオペレータ用の主な入力および出力インターフェースである。LCD 304は、灌流溶液およびガスループに関する、対象となるリアルタイム測定値および導出値を表示する。それは電池レベルおよびガスタンクレベルなどの他のOCSサブシステムのステータスも表示する。OCS LCDディスプレイ402上に表示される情報の性質は次に説明する。これに続いて、維持モード、連続評価モードおよび逐次評価モードに対応するスクリーンショットを説明する。
【0095】
図11はLCD 304の代表的スクリーンショットであり、このスクリーンショットは維持モードに対応する。LCD 304は、気道圧センサ206により測定される肺への導入口における換気圧のリアルタイム追跡1104を示す、表示区域1102を含む。ディスプレイは換気圧読み取りの数値1106、1108も含み、分子1106は、換気サイクル全体にわたってサンプリングした最大圧力であるピーク圧値である。分母1108は最後の呼吸サイクルのPEEP値であり、PEEP値は、吐気時間の終わりに、すなわち、次のサイクルの吸入が始まる直前に気道圧をサンプリングすることで導出される。PEEPは呼吸サイクルのまさに終わりの圧力として定義されるため、サイクル中の最小圧力に対応する必要はない。例えば、システムがPEEP設定値に到達しようとする際に目標を超過するかまたは目標に達しない場合、より低い圧力がシステム内で生じることがある。さらなる数値1110、1112および1114は、登録セットポイント(sp)値、すなわちユーザーが選択する値を示す。これらの値の表示は、呼吸圧の表示される実測値と登録した所望の値とをユーザーが比較するために役立つ。値1110は、呼吸圧に関する絶対圧力上限またはクランプである、PAWPのセットポイント値を示す。一般に、換気圧波形は常にPAWPの限界未満である。先に記載のように、PEEPセットポイント1112は、呼吸サイクルの終わりの、呼出が完了した後でかつ次のサイクルの吸入圧ランプが開始する直前の、所望の呼吸圧に対応する。値1114は、吸気および呼出に関連する呼吸サイクル時間の比であるI:Eを示す。吸気期間は、肺にガスが流れることに対応する吸入時間、すなわち吸入ランプ654(図6)とプラトー時間658との両方を含む。したがって、I:E = (吸気時間 + プラトー時間) : 吐気時間である。システムは、登録した吸気時間、プラトー時間および呼吸速度からI:E値を導出する。
【0096】
LCD 304の表示区域1116は、圧力センサ115により測定される肺動脈圧(PAP)のリアルタイム追跡1118を示す。主要な値のスナップショットを示す以下のPAPの数値も示される: 肺の肺動脈供給におけるピークまたは収縮期圧1120、谷または拡張期圧1122、および平均灌流液圧1124。
【0097】
下部表示区域1126では、PAPの時間平均グラフ1128が、平均PAP値を表示する数値1130と共に表示される。LCD 304上に何を表示するかの選択はオペレーターの制御下にある。図12は構成メニュー1202を示し、維持タブ1204が選択されている。このモードでは、オペレーターは、中央グラフィック区域1116および下部グラフィック区域1126の各々にどの情報を表示するかを選択することができる。上部グラフィックフレーム1102も構成可能である(図示せず)。構成メニュー維持タブは、トリクルバルブ212を通じる維持ガス220の平均流量を設定しかつ灌流液温度を制御する能力も与える。肺換気装置の他のパラメータも維持タブメニューより制御することができる。
【0098】
LCD 304は、肺の状態およびOCSパラメータのスナップショットをシステムユーザーに与える、いくつかのさらなる数値を表示する。表示値1160は、流量センサ114により測定される、肺404への灌流液の肺流量(PF)を示す。表示値1162は、灌流液の流れに対して肺404が及ぼす抵抗の尺度である肺血管抵抗(PVR)を示す。一般に、より低いPVR値が好ましい。これは、それが肺404の脈管構造を通る灌流液のより制限の小さい流れを示すためである。記載される態様では、PVRの好都合な値は200〜400ダインの範囲である。表示値1164は、酸素センサ116により測定される灌流流体250の静脈中飽和ヘモグロビン含有量SvO2を示す。同様に、表示値1166は、酸素センサ118により測定される灌流流体250の動脈中飽和ヘモグロビン含有量SaO2を示す。ある種の態様では、SvO2およびSaO2アラームを示すアイコンが、それぞれ表示値1164および1166に隣接して、いずれかの飽和ヘモグロビン値がオペレーターが事前設定した閾値未満であるか否かをオペレーターに知らせるために表示される。そのようなアラームは任意の測定、計算または表示されるパラメータについて実行することができる。表示値1168は、灌流流体250のヘマトクリット(HCT)レベル、および任意的には、HCTレベル1168がオペレーターが事前設定した閾値未満であるか否かをオペレーターに知らせるためのHCTアラームインジケーターを示す。表示値1170は、灌流流体250がヒーターアセンブリ230から流れて離れる際の、灌流流体250の温度(Temp)1170を示す。表示値1170は、オペレーターが事前設定した範囲の外側にあるTemp 1170に応答して知らせるTempアラームインジケーターも含み得る。オペレーターが選択する温度セットポイント1171も示される。表示区域1172は、気管界面1024を経由して肺404に送達されるガスの1分当たりの呼吸(BPM)単位で測定される換気速度の数値読み取りを示す。BPM値は、気道圧センサ206からの読み取りを含む1つまたは複数の入力から導出される。さらに、オペレーターが選択するBPMセットポイント1173も表示される。表示値1174は一回換気量(TV)、すなわち各吸入中に肺404に入るガスの量を示す。
【0099】
LCD 304は、システムの循環ポンプのステータスを示す循環ポンプインジケーター1138をさらに含む。表示区域1176は、どの臓器を灌流しているかを示す臓器種類インジケーター1140、およびどの操作モードを使用しているかを示す臓器モードインジケーター1142を示す。例えば、維持モードを示すために「M」を使用する。SDカードインジケーター1144は、臓器灌流中に収集したデータを記憶するためにSDカードを使用しているか否かを示す。表示区域1146は、維持ガスの残存量を図画により示すガスタンク図1178を含む。表示区域1146は、ガス供給源中のガスの流量を示す1つまたは複数の表示数値1180も、灌流中にガスを肺404に送達する残り時間と共に含む。この残り時間は、ガス残存量およびガス流量に基づいて計算することができる。表示区域1148は、OCSコンソール100の電池の各々が充電されている程度についての図表的表現1182を示す。電池ステータス記号1184は、そのステータスが図表的表現1182で表される電池が、OCSコンソール100に電力供給するために使用されていることを示す。表示区域1150は、ユーザーインターフェースに電力供給する電池が充電されている程度についての図表的表現1186を示す。表示区域1188は、OCSモニタ300がワイヤレスで動作しているか否かを同定する。
【0100】
他の態様では、表示スクリーン304は、気管への流入口で測定される、それぞれ酸素および二酸化炭素の分画濃度(fractional concentration)であるFiO2濃度およびFiCO2濃度も示す。表示スクリーン406は、肺404の重量および弾性、肺1004を循環する灌流流体250のPH、灌流流体250中のガス成分の分圧、ならびにPEEPレベルの読み取りをさらに示すことができる。
【0101】
ここで、OCSモニタLCD 304上に表示される情報をOCS 1000の操作モードに関して説明する。先に述べたように、図11は維持モードにある肺を示し、図に表示される値は代表的なものと見なすべきである。左側のデータ列に沿って示すように、灌流液の流量は1.46l/分であり、これは生理的レベルより低いが肺を養うには十分な量である。図に示すように、SvO2値1164は92.4%であり、SaO2値1166は92.2%である。これらのレベルは、維持換気ガス220と灌流液ガスとの間の平衡に対応している。動脈中酸素レベルと静脈中酸素レベルとの差は、臓器チャンバに入る空気からの酸素化(SaO2を増加させる傾向がある)および肺による酸素の少量の消費(SaO2を低下させる傾向がある)により引き起こされる。これらの因子間のバランスは、SaO2をSvO2より高くまたは低くすることがある。一般に、維持モードを完全に確立した時点で、灌流液が肺に入りかつ肺から出る際の灌流液の酸素飽和度値は安定しており、約+/-5%の範囲内で互いに等しい。酸素を肺が消費すると、各換気サイクル中にトリクルバルブ212を経由して維持ガス220を少しずつ流すことで酸素を断続的に置き換える。グラフ1104は経時的な換気圧を示し、この圧力は、ベローズが空気を肺に押し込む際に上昇し、呼出の終わりに所望のPEEP値まで低減される。グラフは、直近の換気サイクルにわたる圧力プロファイルを示し、表示区域1172は、1分当たり呼吸数10の速度で肺が換気されることを示す。グラフ1118は、直近の換気サイクルに対応するリアルタイムPAPを示す。曲線は循環ポンプ226のパルスに対応する周期的ピークを示す。グラフ1128はPAPトレンドを示す。数値1170は、灌流液温度が摂氏35.0度であると測定され、また表示数値1171において示されるセットポイント値と等しいことを示す。保存中の肺404の代謝速度を減少させるために、そのような準生理的温度レベルを選択する。より低い代謝速度の1つの利点は、肺404の維持ガス必要量を低下させ、それにより有限量の維持ガス220によって肺をより長い時間保存することを可能にする能力である。
【0102】
図13は、システムが連続評価モードにある場合の、OCSモニタLCD 304の代表的スクリーンショットである。呼吸グラフ1302および数値1304は、維持モードについて図11に示したものと同様である。しかし、PAPグラフ1306および数値1308は13mmHgという平均圧力を示し、これは維持モード中の対応する10mmHgという圧力より相当に高い。肺のガス交換能力の試験を可能にするために、肺を通じる灌流流体のより大きい流量を実現するには、より大きい圧力が必要である。スクリーンは2.93リットル/分という流量1310を示す。このモードでは、ガス交換器402は灌流流体250を82.3%というSvO2レベル1312に脱酸素化する。肺が空気換気を使用して血液を再酸素化することで、96.1%というSaO2レベル1314を実現する。ヘマトクリットレベル1316は30%であり、灌流液温度1318は生理的値である約37.1℃に維持される。呼吸速度表示値1320は1分当たり12呼吸の速度を示し、これは安静時の個人のそれに対応している。一回換気量表示値1322は700mlという値を示し、これは十分に生理的範囲内である。OCSステータスディスプレイ1324は、OCS 1000が肺を保存していることを示す肺のグラフィック、ならびに、システムが連続評価モードにあることを示す文字AおよびCのグラフィックを示す。
【0103】
維持モードおよび連続評価モードに対応するシステムディスプレイを説明してきたが、本発明者らはここで、逐次評価モードの脱酸素化相、保持相および酸素化相をどのようにしてLCD 304上に表示するかを説明する。図14は、システムが脱酸素化相にある場合の、LCD 304の代表的スクリーンショットである。この相では、脱酸素化ガス500はガス交換器402を通過し、肺404への換気ループに入る。灌流流体250中の酸素レベルは速やかに下落する。これは、肺404とガス交換器402との両方におけるガス交換により酸素が除去されるためである。グラフ1406および1408は、脱酸素化相の開始から約1分間にわたるSaO2およびSvO2の値をそれぞれ示す。グラフ1406および1408の右端ならびに表示数値1412および1410にそれぞれ示すように、この時間中に、値は90%台前半からSaO2値64.9%およびSvO2値59.9%に下降する。したがって、生理的範囲をかなり下回る灌流液飽和度レベルは、特に肺404がガス交換器402のガス交換能力を補完する場合に、速やかに実現することができる。換気圧グラフ1402およびPAPレベルは、連続評価モードのそれと同様のものにとどまる。システムステータスディスプレイ1414は肺評価 - 脱酸素化相を文字A、Dにより表示する。脱酸素化終了閾値1416、酸素化相下限閾値1418および酸素化相上限閾値1420に関するユーザー決定値も表示される。
【0104】
図15は、逐次評価パラメータを設定するための代表的ユーザーインターフェースを示す。OCSモニタ300上のメニューボタン306を押すことで構成モード1502を選択する。ユーザーは、逐次サブモード設定メニュー1504において設定を入力および適用する。脱酸素化相の終わりと酸素化相の開始との間の時間である保持相1506、および、灌流流体250中の酸素含有量の目標最低レベルであり、すなわち、このレベルに到達する場合/際にシステムが脱酸素化を中止する脱酸素化終了閾値1508に関する、ユーザー設定可能な値が列挙される。ユーザーは、酸素化相中の灌流液SvO2の目標値である酸素化下限閾値1510、および酸素化相中の灌流液SaO2の目標値である酸素化上限閾値1512に関する値も設定する。
【0105】
脱酸素化モードの後、システムは保持相に入る。図16は、保持相に対応する代表的スクリーンショットである。保持相の目的は、灌流流体250中の酸素レベルが均一になることを可能にすることである。これが実現される程度は、灌流流体250中のSaO2およびSvO2の経時変化する値を示すグラフ1602および1604に示すことができる。両曲線の平らな部分は、飽和度レベルが一定であることを示しており、SaO2およびSvO2に関するグラフの近さは、肺404の両側での飽和度レベルの均一性を示している。表示数値1608および1606はSaO2およびSvO2の値をそれぞれ示す。図16に示すように、保持相に入って約1分のSaO2およびSvO2の測定値はそれぞれ58.9%および58.0%であり、すなわち、互いに非常に近い。
【0106】
逐次評価モードの第3相では、空気で換気している間、灌流流体250が肺404により再酸素化される。肺のガス交換能力は、灌流液プールを完全に再酸素化するために要する時間に関係している。図17は、再酸素化モードにあるシステムの代表的スクリーンショットである。グラフ1702および1704は、灌流流体250中のSaO2およびSvO2の経時変化する値を示す。左側に向かって、グラフは、先に記載の脱酸素化相の間の酸素レベルの初期低下を示す。グラフ中央の曲線の平らな部分は、約1分間続く保持相に対応している。グラフの保持相の平らな部分の右端で酸素化モードが始まる。酸素化モードへの切り替え後まもなく、グラフは上昇を開始し、これは肺を経由した灌流流体250への酸素ガス交換を示している。グラフ1702および1704ならびに表示数値1708および1706は、酸素化相に入って約80秒で、SaO2およびSvO2のレベルがそれぞれ94.6%および85.2%に上昇したことを示している。灌流流体250中のユーザーが選択する閾値酸素化レベルに到達するために要する時間は、表示値1710で示される。
【0107】
ここで、OCS 1000を構成するためのさらなるスクリーンを説明する。図18は、構成メニュー1202の評価タブ1802を示す。このスクリーンは、ユーザーが、中央グラフィックフレーム1116、下部グラフィックフレーム1126に何の情報を表示すべきかを決定すること、温度セットポイント1171を設定すること、かつ逐次または連続のどの評価モードを行うかを選ぶこと、を可能にする。タブ1802は、換気装置設定メニューおよび逐次評価サブモード設定をユーザーが選択することも可能にする。
【0108】
図19は換気装置設定メニュー1902を示す。呼吸速度1904は1分当たりの換気サイクルの数を選択する。一回換気量1906は、各呼吸において肺が吸入するガスの量を決定する。吸気時間1908は吸入相の持続時間である。ピーク気道圧(PAWP)1912は、呼吸サイクル中の最大許容ガス圧であり、ガスがベローズ418によりガスが肺404に押し込まれる間にそれは生じる。PEEP 1914は、呼出が完了した際の肺の圧力を制御する。
【0109】
図20は肺タブ2002を示し、このタブはユーザーが肺モード2004を維持または評価に設定することを可能にし、換気装置制御2006のスイッチを入れるかまたは切ることを可能にし、かつ肺設定サブメニューに対するリンク2008を与える。図21はシステムタブ2102を示し、このタブはユーザーが時間および日付、言語を設定し、かつ他のシステム動作を行うことを可能にする。他の構成タブおよび関連メニューを、ユーザーの必要に基づいて加えることができる。
【0110】
臓器ケアシステムコンソールモジュール
図22は、半据付位置(semi-installed position)にある単一用途使い捨て肺灌流モジュールを示すOCSコンソール100の全体図である。図22に大まかに示すように、単一用途使い捨て肺灌流モジュールは、OCSコンソール100に嵌合しかつそれと結合するようにサイズ決めされかつ形作られる。全体として、このユニットは米国特許出願第11/788,865号に記載の臓器ケアシステムと同様の形態を有する。着脱式肺灌流モジュール400は、回転機構によってOCSコンソール100に挿入可能であり、回転機構は、モジュール400が、図22に示すように前方から肺コンソールモジュール内に滑動した後、ユニットの後方に向けて回転することを可能にする。留め金機構2202は肺灌流モジュール400を所定の位置に固定する。代替的な態様では、モジュールをOCS 100に結合するために肺灌流モジュール400の別の構造および界面を使用する。所定の位置に固定する場合、電気接続および光学接続(図示せず)は、電力、およびOCSコンソール100と肺灌流モジュール400との間の連通を与える。電気接続および光学接続の詳細は2005年10月7日出願の米国特許出願第11/246,013号に記載されており、その明細書はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。肺灌流モジュール400の主要構成要素は、以下で詳細に説明する臓器チャンバ2204である。電池区画2206および維持ガスシリンダー220(図示せず)は、OCSコンソール100の基部に位置している。OCSコンソール100は、フロントパネル2208などの着脱式パネルにより保護されている。肺灌流モジュールの真下には灌流液サンプリングポート234および236がある。OCSコンソール100の上にはOCSモニタ300が装着されている。
【0111】
図23はOCSコンソール100の側面図である。LAサンプリングポート234およびPAサンプリングポート236は、灌流液試料を除去するための、または灌流流体250に化学薬品を注入するための手段を与える。OCSコンソール100の基部には維持ガスタンク調整器222およびゲージ2304が見える。リザーバに取り付けられかつ灌流液ポンプのドームに接続される一方向流入バルブ2306も見える。
【0112】
正面図である図24にはさらなるシステム構成要素が見える。ベローズ418は、OCSコンソールモジュール基部の真上に位置しており、肺コンソールモジュール200内の換気装置ユニット214に接続される機械的アクチュエータアーム2402により駆動される。アクチュエータアーム2402の機械的動作はベローズ418を圧縮および拡張し、これにより呼吸サイクル中に、肺404へのおよび肺404からのガス流を動かす。ガス交換器402はベローズ418の上に位置している。記載される態様では、ガス交換器402はNovalung酸素付加器である。灌流液流体ライン2404は流体ポンプ226(図示せず)とヒーター230(図示せず)とを接続する。臓器チャンバ2204の真下で、リザーバ224は灌流流体を収集し、システムを通る再循環のためにドレイン2408を経由してポンプ226に接続する。
【0113】
図25では、システムのさらなる内部構成要素を明らかにするために、OCSコンソール100の壁面が省略されている。維持ガス220は水平に配設されたシリンダー内に貯蔵されており、このシリンダーは必要な際に調整器222を経由してシステムに維持ガス220を供給する。肺灌流モジュール400を垂直な据付位置で示す。リニアアクチュエーター2402(図示せず)の末端の平らな円板と対になるベローズ駆動プレート2502がベローズ418に隣接している。
【0114】
図26は、使い捨て肺灌流モジュール400を有さないOCSコンソール100の図である。換気装置モジュール214および機械的アクチュエータアーム2402が見える。肺コンソールモジュール200の他の構成要素(図示せず)は、OCSコンソール100の左側壁に沿って装着されるモジュール内に収納されている。これらの構成要素は、図1において肺コンソールモジュール200内に示されており、コンソールモジュールコントローラ202、ガス交換器バルブ204、気道圧センサ206、リリーフバルブアクチュエータ207、空気圧制御モジュール208、ベローズバルブアクチュエータ210、トリクルバルブ212、換気装置214、ガスセレクタスイッチ216および電力変換器218を含む。空気圧コネクタ624は、対応する肺灌流モジュールコネクタ626への速やかな接続を供する。この簡便な接続は、ガス交換器402への、さらには肺404とベローズ418との間のガスループへのガス接続を与える。コネクタ624および626は、ベローズバルブ414、リリーフバルブ412を制御しかつ空気センサ206の圧力データを受け取るための、肺コンソールモジュール200と肺灌流モジュール400との間の空気圧制御接続も与える。
【0115】
図27は肺灌流モジュール400の正面図である。臓器チャンバ2204は着脱式蓋2820およびハウジング2802を含む。LAサンプリングポート234およびPAサンプリングポート236を含むサンプリングポートが臓器チャンバ2802の下に見える。ガス交換器402、ベローズ418およびベローズプレート2502も図内に見える。
【0116】
肺灌流モジュール400の構成要素について図2との関連で最初に説明した、灌流液の循環経路を、本発明者らはここで説明する。灌流液250を貯蔵する灌流液リザーバ224が臓器チャンバ2204の下に装着されている。灌流液は一方向流入バルブ2306、ライン2702およびポンプドーム2704を通じてポンプ226(図示せず)に出る。灌流液は、灌流液流体ライン2404を通じ、コンプライアンスチャンバ228を通じた後で灌流液ヒーター230にポンプ輸送される。ヒーター230を通過した後、灌流液は接続ライン2706を通過してガス交換器402に至る。灌流液はガス交換器402を出て、接続ライン2708を通じて肺動脈との界面に至る。肺静脈および左心房を経由して出た後、灌流液は以下に記載の臓器チャンバ2204の基部から排出される。これらのドレインは灌流液をリザーバ224に供給し、そこでサイクルが再度始まる。
【0117】
OCSコンソール100および肺灌流モジュール400を説明してきたが、本発明者らはここで臓器チャンバ2204を説明する。図28は臓器チャンバ2204の構成要素の分解図を示す。チャンバ2204の基部2802は、灌流流体のドレナージを容易にするように肺灌流モジュール400内に形作られかつ位置づけられる。臓器チャンバ2204は2つのドレイン、すなわち測定ドレイン2804と、測定ドレインからの溢流を受け取る主ドレイン2806とを有する。測定ドレイン2804は約0.5l/分の速度で灌流液を排出するが、この速度は1.5l/分〜4l/分という肺404を通じる灌流流体250の流量より相当に小さい。測定ドレインは、SaO2値を測定する酸素プローブ118に通じた後、リザーバ224に通じる。主ドレイン2806は酸素測定なしでリザーバ224に直接通じる。記載される態様ではパルスオキシメーターである酸素プローブ118は、灌流流体250が気泡を実質的に含まないということがなければ、灌流液中酸素レベルの正確な測定値を得ることができない。無気泡の灌流液のカラムを実現するには、肺404から排出される灌流流体250を収集して、上記ドレイン2804を収集するプールに入れるように、基部2802を形作る。灌流液プールは、灌流液がドレイン2804に入る前に気泡が消散することを可能にする。ドレイン2804の上でのプールの形成は壁面2808により促進され、この壁面は、測定ドレイン2804から主ドレイン2806への灌流液の流れを、灌流液プールがこの流れからの気泡の消散を確実にする上で十分に大きくなるまで、部分的に遮断する。主ドレイン2806は測定ドレイン2804より低い位置にあり、したがって、ドレイン2804を取り囲む陥凹を灌流液が溢流した時点で、それは壁面2808の周りを流れて主ドレイン2806から排出される。二重ドレインシステムの代替的な態様では、灌流流体を収集して、測定ドレインに対して供給を行うプールに入れるために、他のシステムを使用する。いくつかの態様では、肺からの流れは、測定ドレインに対して供給を行う小さいカップなどの容器へ方向づけられる。カップは灌流流体で満たされ、過剰な血液はカップを溢流し、主ドレインに、したがってリザーバプールに方向づけられる。この態様では、灌流液が酸素センサに向かう途中で測定ドレインに流れる前に、気泡がそこから消散可能な灌流流体の小さいプールを形成することで、カップは、先に記載の態様における壁面2808のそれと同様の機能を果たす。
【0118】
肺404は支持面2810により支持される。この表面は、肺404が下葉に対してわずかに下向きに角をなすようにして灌流液の容易なドレナージを促進しながら、過度な圧力をかけることなく肺404を支持するように設計されている。支持面は、肺404から発する灌流液を収集およびチャネル輸送するための、ならびに、測定ドレイン2804用の血液プールに灌流液を直接供給するドレイン2814に向けて灌流液を導くための、ドレナージチャネル2812を含む。肺にさらなる支持を与えるには、支持面2810上に配置する際に、肺404をポリウレタンラップ(図示せず)により包む。ポリウレタンラップは、肺404をアンカーし、肺を生理的構成に保持することに役立ち、また気管支が捻れかつ合計の膨張容積を限定することを防止する。ラップは、肺の外面用の平滑な表面を臓器チャンバ2204との界面に与えることで、望ましくない大量出血を引き起こす可能性がある、肺404の任意の部分に対する過剰な圧力を、チャンバがかけるという危険性を減少させる。ポリウレタンラップは、どれほどの容積が包まれているかを示す一連の線で印づけられている。包まれる肺の所望の容積は、肺のサイズとドナーの体重との間の経験的な関係により決定することができる。ポリウレタンラップは、肺404の周りに集まる灌流液を排出するための一連の小さな孔を有する。灌流液は支持面2810内のドレナージチャネル2812により収集され、それは灌流液をドレイン2814にチャネル輸送する。
【0119】
臓器チャンバ2204の上部は封止可能な蓋で覆われており、この蓋は正面部2816、上部2820、滅菌ドレープを有する内蓋(図示せず)、および正面部2816から上部2820までを封止する封止部2818を含む。代替的な態様では、臓器チャンバは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第11/245,957号に記載の心臓保存チャンバとの関連で開示されているものと類似している、二重蓋システムを含む。二重蓋システムは、外蓋、中間蓋、可撓膜、および蓋と臓器チャンバ壁面との間の封止枠を含む。膜は透明であることが好ましく、また医療オペレーターが、チャンバの滅菌性を維持しながら、膜を通じて肺を間接的に触り/検査するか、または膜を通じて肺に超音波プローブを適用することを可能にする。外蓋は中間蓋とは無関係に中間蓋の上で開閉する。外蓋は、間接または直接の物理的接触から肺404を保護する上で十分に強固であることが好ましい。外蓋およびチャンバは任意の好適なポリマープラスチック、例えばポリカーボネートから作製することができる。
【0120】
臓器チャンバを覆うことは、灌流流体250と周囲空気との間のガスの交換を最小化することに役立ち、また、酸素プローブが所望の酸素値、すなわちLAを経由して肺から出る灌流液に対応する値(SaO2)およびPAを経由して肺に入る灌流液に対応する値(SvO2)を測定することを確実にするために役立つ。臓器チャンバ2204の閉鎖は、肺404からの熱損失を減少させることにも役立つ。肺の大きい表面積が理由で、熱損失は相当なものとなり得る。OCS 1000を比較的低温の環境、例えば車両、またはOCS 1000を車両内におよび車両から動かす際の屋外に配置することがある場合、熱損失は肺の輸送中の重要な問題となり得る。さらに、移植前に、いずれも典型的には15〜22℃の範囲の温度を有する病院内保管区域または手術室にOCS 1000を配置することがある。そのような周囲温度では、ヒーター230が35〜37℃という所望の灌流液(および肺)温度を維持することを可能にするには、臓器チャンバ2204からの熱損失を減少させることが重要である。臓器チャンバ2204中に肺を封止することは、肺404を通じた温度の均一性を維持することにも役立つ。
【0121】
図29は、支持面2810を示すためにカバーが取り外された臓器チャンバ2204の右側面図である。灌流液ドレナージチャネル2812およびドレイン2814は灌流液をハウジング2802に運搬する。気管カニューレ700、およびOCS 1000ガスループへの接続のための気管カニューレコネクタ710も示す。図8に示すように、90°をなす二重接続管852および854を有するPAカニューレ850が気管カニューレ700の上にある。遠隔通気圧力センサ115(図示せず)が、灌流液流に、PAカニューレから肺404への流入地点で、コネクタ806、圧力トランスデューサ導管2902および圧力トランスデューサケーブル2904によって接続されている。臓器チャンバ2804の左側面図である図30では、気管カニューレ700が明らかに表示されている。気管カニューレ700は、ロックナット708によってハウジング2802の壁面に固定されている。ロックナット708に隣接して、可撓ウレタンチューブ706が臓器チャンバ2204のハウジング2802に突出しており、気管に接続されるシリコーン被覆コネクタ704に通じている。
【0122】
使用モデル
次に、肺移植のために先に記載の臓器ケアシステムを使用するための代表的モデルを、図31および32を参照して説明する。
【0123】
カニューレ挿入および輸送のために肺404を入手および準備するプロセスは、段階3100で好適な臓器ドナーを供することで始まる。臓器ドナーは供与場所に運ばれ、そこでカニューレ挿入および輸送のためにドナーの肺404を受け取りかつ準備するプロセスが、2つの交差する経路を下って進行する。経路は、ドナーの肺404を受け取るOCS 1000を準備する段階、および次にOCS 1000により肺404をレシピエント場所に輸送する段階を主に含む。特に、経路3102は、ドナーを放血させる段階、ドナーの心臓を停止させる段階、およびOCS 1000へのカニューレ挿入のために肺404を準備する段階を含む。特に、放血段階3104では、ドナーの血液を除去して取っておくことで、肺404をOCS 1000上でのそれらの維持中に灌流するためにそれを使用できるようにする。ドナーの血液が放血された後、段階3106においてドナーの心臓に心停止液を注入してその拍動を一時的に停止させ、肺404を回収するための準備をする。
【0124】
ドナーの心臓が停止した後、段階3108で肺停止液を肺に投与し、その後、段階3110で肺404をドナーから外移植し、段階3112でOCS 1000へ載せるために準備する。
【0125】
図31を引き続き参照すると、肺404をドナーの身体から外移植した後、段階3124で、肺チャンバ2204への挿入、ならびに先に記載の適切な灌流流体およびガスループ界面でのカニューレ挿入により、それらをOCS 1000上に取り付ける。
【0126】
他の例示的な態様によれば、心停止法を使用せずに肺404をドナーから直接OCS 1000に移動させることができる。特定の一実施形態では、ドナーの肺404を、ドナーの心臓を停止させることなく除去し、続いて維持のためにOCS 1000に取り付ける。
【0127】
経路3102による肺1004の準備中、OCS 1000を経路3114の段階を通じて準備することにより、それはプライミングされ、肺404の準備ができるとすぐにカニューレ挿入および輸送のために肺404を受け取るように待機する。特に、OCS 1000は経路3114において、単一用途肺灌流モジュール400を与える段階(段階3116)、維持液によりOCS 1000をプライミングする段階(段階3118)、ドナーからの血液を濾過しかつそれをリザーバ224に加える段階(段階3120)、およびOCS 1000内で灌流液を循環させかつ加温する段階(段階3122)を含む一連の段階を通じて準備される。ある種の態様では、灌流流体250は全血を含む。ある種の態様では、灌流流体250は白血球が部分的または完全に枯渇している。ある種の態様では、灌流流体250は血小板が部分的または完全に枯渇しているか、または代用血漿を含みかつ赤血球が充填されている。ある種の態様では、灌流流体添加剤としては、エピネフリンを除去している間に加えられるプロスタグランジンE、プロスタサイクリン、デキストラン、イスプレル(isuprel)、フローランおよび一酸化窒素供与体が挙げられる。一般に、添加剤は抗菌薬、血管拡張薬および抗炎症薬より選択することができる。添加剤は、リザーバ224に結合したポート234、236を経由して、または、気管カニューレ700内の界面を経由して噴霧器または気管支鏡を通じて、システム1000に送達することができる。
【0128】
段階3126では、OCS 1000は維持モードで機能するように選択される。維持モードは先に詳細に説明している。段階3126において維持モードで平衡に到達した後でかつドナー場所への輸送を承認する前に、取り付けられた肺404を段階3128において評価する。OCSユーザーは、いずれも先に記載した連続評価および/または逐次評価を選択することができる。
【0129】
段階3128で行った評価の結果に基づいて、またいくつかの場合では肺404の他のモニタリングしたパラメータに基づいて、肺404に治療および補充を与えることが望ましい(段階3130)。ドナーの肺において最も頻繁に生じる病理は虚脱または無気肺である。OCS 1000の使用は無気肺管理のいくつかの方法を与える。第一に、ため息呼吸(sign breathing)を使用して、すなわち多様な一回換気量の呼吸を肺404に取り込ませることで、肺404を再膨張させることができる。例えば、1つの技術では、最大約1000mlの一回換気量を有する第1の呼吸、続いて約100mlという低さの一回換気量を有する2回以上のより小さい呼吸を、肺404に吸入させる。第2の方法は、H2O約2cm〜H2O 15cmの範囲の値の間にPEEPレベルを調整することを含む。第3の方法では、支持面2810上に配置する際に肺404に支持を与えるために使用するポリウレタンラップにより、肺404の過度に膨張した領域を拘束する。そのような拘束は、肺の虚脱した領域を再膨張させるためのガスループ圧の賢明な適用を可能にする。第4の補充アプローチでは、I:E比を操作して、圧力プラトー658(図6)で費やす時間の量を増加させることで、ピーク圧656およびPEEPレベル652を超過することなく肺の再膨張を助ける。第五に、肺の位置を変化させるための支持面2810上での肺404の単純な操作が、有効な補充方法となり得る。第六に、肺分泌物、および気管内の肺胞デブリを、気管支鏡を使用する吸引により除去する。気管支鏡は、気管カニューレ700と肺灌流モジュール400のガス回路チューブとの間のコネクタ内のポートを経由して肺404に挿入する。第七に、呼吸サイクルの吸入相の間に、好ましくはエアロゾル形態であるサーファクタントをガスラインに注入することで、サーファクタント吸入療法を行う。
【0130】
ドナーの肺においてしばしば見られる別の病理は、単一または複数の葉において生じ得る限局性浮腫である。浮腫はPEEPレベルの操作、限外濾過による膠質浸透圧の増加、ならびに、血管拡張薬および/またはポンプ226の流量による灌流流体圧の操作により、OCS 1000上で治療することができる。
【0131】
肺炎は、ドナーの肺の別の一般的な病理であり、灌流流体250への抗菌薬の直接注入、および/または肺灌流モジュール400の換気装置システムを通じたこの薬剤の吸入により対処することができる。肺炎における別の補充技術は気管支肺胞洗浄である。
【0132】
先に論じた病理ほど頻繁には生じない気管支痙攣は、OCS 1000上で、吸入した気管支拡張薬により管理する。肺の気道に気管支拡張薬を注入するために役立つ気管支鏡を任意的に使用する。別の病理は高PAPであり、これは灌流流体250に血管拡張薬を加えることで管理する。
【0133】
いくつかの場合では、オペレーターは、肺404に対して手術を行うか、または免疫抑制処置、化学療法、遺伝子検査もしくは放射線療法などの治療的処置もしくは他の処置を与えることがある。
【0134】
一般に、補充を行っている間は肺404を維持モードに置く。評価段階3128および補充段階3130は、数回繰り返すことができ、また必要であれば最大数時間続くことがある。目標は、肺がレシピエント場所への輸送について承認されるために十分に健康であることを示す、肺404の評価を得ることである。この条件が満たされた時点で、OCS 1000は、その取り付けられた肺404と共に、レシピエント場所への輸送用の車両に荷積みされる。
【0135】
図32は、ドナー場所からレシピエント場所への輸送中のOCS 1000の代表的使用モードを示す。輸送車両に配置する前に、OCS 1000を維持モードに置く(段階3202)。次にOCS 1000を車両に配置し、行程を開始する(段階3204)。ある時間間隔の後で肺を評価する(段階3206)。第1の評価前の時間間隔は、ドナー場所で決定される肺404の状態、肺404のモニタリングされるパラメータ、および予測される行程の期間に依存する。一般に、肺404の状態が悪いほど、評価が早く行われる。肺404が悪い状態にあることを評価3206が発見する場合、治療および補充を行う(段階3210)。補充期間の後、別の評価(段階3206)を行う。肺404がある種の健康閾値を上回ることを評価段階3206が示すまで評価および補充のサイクルが続き、その後に肺404を維持モード3208に戻す。いくつかの態様では、輸送中にはさらなる評価または補充は行われない。他の態様では、さらなる評価段階、および必要であれば補充段階を輸送中に間隔を空けて行う。さらなる評価を行うか否かに関する決定は、肺404の健康についてのオペレーターの全体的評価、およびOCS 1000での評価ガスの利用可能性により左右される。レシピエント場所への到着(段階3212)により行程が完了する。
【0136】
どの形態の評価を行うかの選択は、臨床的考慮事項と技術的考慮事項との両方により決定される。臨床的観点から見れば、灌流流体250の飽和度レベルは、逐次評価よりも連続評価においての方が、生理的血中飽和度レベルに近い。他方で、灌流流体の流量は、連続評価における生理的レベルの約3分の1でしかなく、逐次評価における生理的レベルに近い。技術的な観点からは、評価方法の選択は、OCSにおいて利用可能なガスの量により制約されることがある。ドナー場所からレシピエント場所への肺404の輸送中、OCS 1000は自給式で機能する。特に、それは維持ガスおよび脱酸素化ガスのそれ自体の内部供給源に依存する。例示的な構成では、OCS 1000は脱酸素化ガス500の200リットル供給源を有する。肺の単一の逐次評価を行うには、約40リットルの脱酸素化ガスが必要である。しかし、肺の健康が悪く、ガス交換能力が損なわれている場合、逐次評価には40リットルを超える脱酸素化ガスが必要である。これは、脱酸素化相の間に灌流液中酸素レベルが目標レベルになるためにより長い時間を要するためである。したがって、脱酸素化タンクの容量により、行程中の逐次評価の回数が、肺404の状態に応じて最大5、より一般的には4以下に限定される。他方で、連続評価を行う上で、灌流流体250中の任意の目標脱酸素化レベルの実現は必要ではない。その代わり、評価は決まった時間間隔で実行され、その間、脱酸素化ガス500はガス交換器402を約10リットル/分の平均速度で流れる。例示的な例では、連続評価は2分間実施され、合計約20リットルの脱酸素化ガス500、すなわち逐次評価において消費する量の約半分を消費する。したがって、技術的立脚点から見れば、連続評価が逐次評価より好ましいことがある。所与の行程では、OCS 1000は、最大5回の逐次評価もしくは10回の連続評価、または下記式40s + 20c = 200に係る組み合わせを可能にするために十分なガスを有し、式中、sは逐次評価の回数であり、cは連続評価の回数である。
【0137】
灌流液中酸素レベルの正確な読み取りを得るには、パルスオキシメータ116および118により測定される灌流液のカラムはガス気泡を含まないべきである。先に記載のように、二重ドレインシステム2804および2806ならびにドレイン2804の上の灌流液プールは、気泡が灌流液ラインに入らないことを確実にするために役立つ。しかし OCS 1000を輸送する車両の動きは、灌流液カラムにいくつかの気泡を排出させるために十分な攪拌を引き起こすことがある。したがって、記載される態様では、評価を行っている間、車両を水平な区域に駐車する。他の態様では、血液プールをよりしっかりと制限するか、または灌流液を管に直接排出することなどにより、肺チャンバ2204、肺ハウジング2802および二重ドレインシステムを修正して、動きに対するシステムの耐性をより高くする。そのような修正は、輸送車両が動いている間であっても正確な肺評価を行うことを可能にし得る。
【0138】
図33は、OCS 1000がレシピエント場所にある間に肺404に対してさらなる試験を行うための代表的プロセスを示す。OCS 1000は肺404の別の評価(段階3302)を行う。脱酸素化ガスのさらなる供給源がレシピエント場所において利用可能なことがあり、これはドナー場所からの運送中に枯渇した可能性がある脱酸素化ガス500のOCSの供給源を補完することができる。肺404の状態が悪い場合は、治療および補充(段階3304)を行う。最終評価段階の後で、肺404が移植に好適な状態にあると評価される場合、肺404をレシピエントへの移植のために準備する。これは、ポンプ226を休止させて灌流流体250の流れを停止させることにより肺除去用にOCS 1000を構成する段階(段階3306)、および任意的に、肺停止液を肺404に投与する段階を含む。次に段階3308で、肺404からカニューレを外し、肺を肺チャンバアセンブリ2204から除去する。段階3310では、肺404のレシピエント患者への移植を、それらをレシピエントの胸部空洞に挿入し、各種の肺接続をレシピエント内のそれらの適切な対になる接続に縫合することにより行う。ある種の態様では、レシピエントの左心房の一部を切除して、ドナーの肺静脈が取り付けられているドナーの左心房カフの1つまたは複数により置き換えることができる。他の態様では、2つの肺のうち1つのみを除去する一方で、残りの肺をOCS上で灌流および換気し続ける。
【0139】
本発明を各種の例示的態様と関連させて説明してきたが、前述の説明が、添付の特許請求の範囲の範囲により定義される本発明の範囲を例示することを意図しており、それを制限することを意図しているわけではないことを理解すべきである。例えば、種々のシステムおよび/または方法を本開示に基づいて実施可能であり、それらは依然として本発明の範囲内である。他の局面、利点および修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。本明細書において引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み入れられ、本出願の一部をなす。
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2008年1月31日出願の米国仮出願第61/024,976号; 2008年4月8日出願の米国本出願第12/099687号; 2008年4月8日出願の米国本出願第12/099715号; 2008年4月8日出願の米国本出願第12/099717号; 2008年4月8日出願の米国本出願第12/099725号; 2008年4月8日出願の米国本出願第12/099,728号の優先権および恩典を主張するものであり、これらの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、エクスビボ臓器ケアのためのシステム、方法および装置に関する。より詳しくは、各種態様において、本発明は、生理的または近生理的条件においてエクスビボで片肺または一対の肺をケアし、評価しかつそれに治療的対策を適用するための携帯型装置に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
現行の臓器保存技術は、氷上の化学保存液中の臓器の低温貯蔵を典型的に包含する。これらの技術は種々の溶液を利用するが、そのいずれも、虚血によるダメージから臓器を十分に保護しない。臓器をドナーからレシピエントに移植することを意図する場合、そのような損傷は特に望ましくない。
【0004】
エクスビボ臓器の有効な生理的保存は、慣行的なアプローチに比較して重要な利益を与える可能性がある。例えば、生理的エクスビボ保存は、回収した臓器のより注意深いモニタリング、機能検査、評価および治療を可能にする可能性がある。これにより、回収した臓器の欠損のより早期の検出および潜在的修復を可能にして、移植後の臓器不全の可能性をさらに減少させる可能性がある。臓器に対する単純な修復を実行および評価する能力も、微小な欠損を有する多くの臓器を保存することを可能にする可能性がある一方で、現行の移植技術ではそれらを廃棄することが必要になる。肺を回収する場合にこのことは決定的に重要である。これは、ドナーの体内で回収する前であっても、肺は容易に損なわれるためである。
【0005】
さらに、臓器と特定のレシピエントとの間のより有効なマッチングを実現させて、最終的な臓器拒絶の可能性をさらに減少させることができる。現行の移植技術はドナーおよび受容体の血液型のマッチングに主に依存しているが、このマッチングはそれ自体、臓器をレシピエントが拒絶するか否かの指標としては比較的信頼性がない。臓器適合性のより好ましい試験はヒト白血球抗原(HLA)マッチング試験であるが、現行の冷虚血臓器保存アプローチは、完了に12時間以上をしばしば要することがあるこの試験の使用を妨げている。
【0006】
慣行的なアプローチを使用する場合、虚血が引き起こす損傷は、臓器をエクスビボで維持する時間の長さの関数として増加する。例えば、典型的には、肺はわずか約6時間〜約8時間しかエクスビボで保存できず、その後移植には使用不能になる。典型的には、心臓はわずか約4時間〜約6時間しかエクスビボで保存できず、その後移植には使用不能になる。これらの比較的短い期間により、所与のドナー場所から到達可能なレシピエントの数が限定され、それにより、回収した臓器のためのレシピエントプールが制限される。期限内であっても、臓器はやはり著しくダメージを受けることがある。重大な問題は、ダメージの任意の観察可能な徴候がないことがあるということである。このため、最適未満の臓器を移植することで、移植後の臓器障害または他の損傷が生じることがある。したがって、エクスビボで健康状態で臓器を保存可能な時間を延長できる技術を開発することが望ましい可能性がある。そのような技術は移植後の臓器不全の危険性を減少させ、潜在的なドナーおよびレシピエントのプールを拡大する可能性がある。
【0007】
長期のかつ信頼できるエクスビボ臓器ケアは、臓器移植の文脈外の利益を与える可能性もある。例えば、典型的には、患者の身体は全体として、多くの特定の臓器よりもはるかに低いレベルの化学療法、生物療法および放射線療法にしか耐容性を示さないことがある。エクスビボ臓器ケアシステムは、臓器を身体から除去しかつ隔離下で処置することを可能にして、身体の他の部分に対するダメージの危険性を減少させる可能性がある。
【0008】
上記に鑑み、エクスビボで臓器をケアするための改善されたシステム、方法および装置が求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、携帯型エクスビボ臓器ケアに関する改善されたシステム、方法、解決策および装置を各種態様において提供することで、当技術分野の現状における欠陥に対処する。
【0010】
一般に、一局面では、本発明は携帯型シャーシを含む携帯型多用途モジュールと、単一用途使い捨てモジュールであって、多用途モジュールとの電気機械的相互操作のために単一用途使い捨てモジュールと多用途モジュールとを結合させるように適応した界面; および、肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面と、肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面とを有する肺チャンバアセンブリであって、肺から離れる灌流流体の流れを運搬するための二重ドレインシステムであって、灌流流体ガス含有量のセンサへ灌流流体流の一部を方向づけるための測定ドレインと、灌流流体流の残りの部分を受けるための主ドレインとを含む二重ドレインシステムを含む、肺チャンバアセンブリを含む、単一用途使い捨てモジュールとを含む、肺ケアシステムを特徴とする。一態様では、肺ケアシステムは、肺チャンバアセンブリから灌流流体を排出するためのドレナージシステムであって、ドレインシステムが測定導管および主ドレイン導管を含み、測定導管が灌流流体ガス含有量を測定するように適応したセンサへ灌流流体の流れをさらに方向づけるドレナージシステムを含む。
【0011】
他の態様は以下の特徴のうち1つまたは複数を含む。二重ドレインは灌流流体流を受け取るための容器を含み、容器からの溢流は主ドレインに流れる。システムは、灌流流体を循環させるためのポンプと、所定の組成を有するガスにより肺を換気するための換気システムとを含む。ガスは酸素、二酸化炭素を含む。携帯型多用途モジュールは使い捨てモジュールの電気制御、空気圧制御および機械制御のうち少なくとも1つを与えるための肺コンソールを含み、肺コンソールは、肺の換気を制御するための換気コントローラを含み、肺へのガスの流れを引き起こすベローズを作動させるための機械的アクチュエータを含む。肺コンソール空気圧制御システムは、使い捨てモジュールにおける肺に接続された換気ガス回路内の1つまたは複数のバルブを制御する。空気圧制御システムは、肺とベローズとの間の流れを遮るためのベローズバルブ、換気ガスを通気するためのリリーフバルブ、および換気ガス回路にガスを導入するためのトリクルバルブのうち少なくとも1つを制御する。換気コントローラは、酸素化ガス、脱酸素化ガスおよび維持ガスのうち1つより、肺の換気に使用するガスを選択する。酸素化ガスは空気、または25%〜100%の酸素を含有するガスである。脱酸素化ガスは二酸化炭素および窒素で組成され、維持ガスは酸素、二酸化炭素および窒素で組成される。一態様では、脱酸素化ガスは約6%の二酸化炭素および約94%の窒素であり、維持ガスは約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素である。多用途モジュールは、灌流流体中の酸素などのガス含有量のレベルを制御可能な灌流流体コントローラを含む。灌流流体コントローラは、ガスの流れと灌流流体との間でガスを交換するガス交換器へのガスの流れを例えば制御することで、灌流流体ガス成分を制御する。ガス交換器に流れるガスは、灌流流体から酸素を除去する脱酸素化ガスである。多用途モニタは、肺ケアシステムのステータスを表示するためのモニタを含み、ステータスは、肺に入りかつ肺から出る灌流流体の酸素含有量に関する情報を含む。それは換気ガス圧および肺動脈圧のリアルタイム追跡も表示する。
【0012】
一般に、別の局面では、本発明は単一用途使い捨てモジュールであって、多用途モジュールへの取り付けに適応した界面、および肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面とを有する肺チャンバアセンブリを含む、単一用途使い捨てモジュールと; 肺チャンバアセンブリから灌流流体の流れを排出するためのドレインシステムであって、測定導管および主ドレイン導管を含み、測定導管が灌流流体ガス含有量を測定するように適応したセンサに対して灌流流体の流れをさらに方向づけるドレインシステムとを含む、肺ケアモジュールを特徴とする。
【0013】
他の態様は以下の特徴のうち1つまたは複数を含む。モジュールは、維持ガス、評価ガス、および空気などの酸素化ガスのうち1つにより肺を換気するためのシステムを含む。システムは、ある量のガスを肺に再呼吸させるように構成され得る。換気システムは、約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素の組成を有する維持ガスにより肺を換気する。機械的に作動するベローズを使用して肺を換気する。換気システムは、維持ガスの流れを導入するためのトリクルバルブと、過剰のガスを通気するためのリリーフバルブとをさらに含む。肺に対する第2の界面は、気管に挿入するための挿入部と、換気ガス回路に接続するためのコネクタ部とを有する気管カニューレを含む。肺に対する第1の界面は、肺動脈に挿入するための挿入部と、灌流流体回路に接続するためのコネクタ部とを含む肺動脈カニューレを含む。それは、肺への灌流流体の流入地点の近くに圧力トランスデューサを位置づけるために、挿入管の近くにコネクタ部のルーメンへの開口を画定する圧力トランスデューサコネクタも含む。圧力トランスデューサコネクタは、圧力トランスデューサにおいて遠隔通気させるためのチャネルをさらに与える。
【0014】
一般に、さらに別の局面では、本発明は少なくとも1つのハウジングドレインを含む底面、および壁面を有するハウジングと; 肺を支持するための支持面であって、肺から出る灌流流体を排出するためのドレイン、およびドレインに通じるドレナージチャネルを画定する支持面と; ハウジングの壁面への封止可能な接続を与える開閉式蓋と; 肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と; 肺の換気を可能にするための第2の界面と; 肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面とを含む、肺チャンバアセンブリを特徴とする。
【0015】
他の態様は以下の特徴のうち1つまたは複数を含む。ハウジングは、肺から離れる灌流流体の流れを運搬するためのドレインシステムであって、灌流流体ガス含有量のセンサへ灌流流体流の一部を方向づけるための測定ドレインと、灌流流体流の残りの部分を受けるための主ドレインとを含むドレインシステムを含む。ドレインシステムは、肺から離れる灌流流体の流れを、測定ドレインに供給を行うプールに収集するための領域を有し、測定ドレインは、肺から離れる灌流流体の流量未満のドレナージ容量を有する。領域から溢流する灌流流体の流れは主ドレインに流れる。いくつかの態様では、ドレインシステムは、測定ドレインを部分的に取り囲む壁面であって、測定ドレインから主ドレインへの灌流流体の流れを部分的に遮断し、測定ドレインの上側での灌流流体のプールの形成を促進する壁面をさらに含む。肺チャンバのハウジングは、肺動脈カニューレ、肺動脈圧トランスデューサ導管および気管カニューレのハウジングを通じる封止された通路を与える開口を画定する。いくつかの態様では、灌流流体は、露出した左心房カフを通じて肺から出て、ドレナージシステムに流れる。他の態様では、肺から出る灌流流体の流れは、左心房カフへの封止された接続を通過し、左心房カフは、肺から離れる灌流流体を運搬する導管に接続されている。灌流流体流の一部は酸素含有量センサを通過し、残りはリザーバに流れる。
【0016】
一般に、さらなる局面では、本発明はエクスビボ灌流回路内に肺を位置づける段階; 肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階; 気管界面を通じて換気ガスを流すことで肺を換気する段階; 灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化する段階; 灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値に到達するまで酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化する段階; および灌流流体中の酸素含有量レベルを酸素含有量の第1の値から酸素含有量の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断する段階を含む、肺を診断する方法を特徴とする。
【0017】
他の態様は以下の特徴のうち1つまたは複数を含む。灌流流体は、二酸化炭素および窒素、例えば約5.5%の二酸化炭素および約94.5%の窒素を含む換気ガスにより肺を換気することで脱酸素化される。灌流流体は、ガス交換装置に灌流流体を循環させることで脱酸素化され、ガス交換装置は、二酸化炭素および窒素を含む脱酸素化ガスと流体連通しており、ガス交換装置は、換気ガスと灌流流体との間のガス交換により灌流流体中の酸素の組成を改変する。酸素含有量の所定の第1の値は約73%の赤血球飽和度に対応する。酸素化ガスは空気、または約25%〜約100%の酸素を含むガスである。酸素含有量の所定の第2の値は約93%の赤血球飽和度に対応する。灌流流体は、1分当たり約1.5リットルの速度で流れ、ヒーターで近生理的温度レベルに加温される。灌流流体は全血、または、白血球が部分的に枯渇しているかもしくは血小板が部分的に枯渇している血液などの血液製剤で組成される。各種治療薬は、灌流中に灌流流体を経由して、または、気管界面を通じて噴霧器もしくは気管支鏡を使用して、肺に送達される。灌流流体中の酸素レベルは、流体中の赤血球飽和度を決定するパルスオキシメーターを使用して測定される。
【0018】
一般に、さらなる局面では、本発明は肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階; 肺と可変量チャンバとの間で捕集量(captive volume)の換気ガスを行ったり来たり流すことで気管界面を通じて肺を換気する段階; およびさらなる量の換気ガスを捕集量に導入しかつ捕集量から過剰の換気ガスを通気させることで、換気ガスの所定の組成を維持しかつ捕集量の最小ガス圧を維持する段階を含む、エクスビボで肺を保存する方法を特徴とする。
【0019】
他の態様は以下の特徴のうち1つまたは複数を含む。換気ガスは酸素、二酸化炭素、および窒素などの不活性ガスの組成を含む。灌流流体は、換気ガスの所定の組成に対応する平衡レベルに到達する。換気ガスの所定の組成は約5〜20%の酸素および約2〜10%の二酸化炭素を含む。灌流流体のガス含有量は、約88%〜98%のヘモグロビン飽和度レベルを有する平衡レベルに到達する。
【0020】
換気ガスの所定の組成は約12%の酸素および約5.5%の二酸化炭素を含む。肺に入る灌流流体のヘモグロビン飽和度レベルは約90〜95%の平衡レベルに到達し、肺を離れる灌流流体のヘモグロビン飽和度レベルは約90〜95%の平衡レベルに到達する。肺に入る灌流流体の酸素含有量は生理的レベルよりも低く、肺を離れる灌流流体の酸素含有量は生理的レベルよりも高い。以下のパラメータがある種の態様において使用される: 換気ガスのさらなる流れは1分当たり約400〜600mLであり、捕集量は約400〜1200mLであり、捕集量の最小ガス圧はH2O約4〜8cmであり、換気ガスの最大圧力はH2O約12〜22cmである。過剰の換気ガスは、捕集量と連通するリリーフバルブを通じて通気される。可変量チャンバはベローズであり、ベローズを圧縮することは肺への換気ガスの流れを引き起こす。肺動脈界面は肺動脈カニューレを含み、肺動脈カニューレの一部は肺の肺動脈に挿入される。灌流流体は、肺の露出した左心房カフを通じて、または左心房カフと左心房カニューレとの間の封止または半封止された接続を通じて、肺から離れるよう流れる。気管界面は気管カニューレを含み、気管カニューレの一部は肺の気管に挿入される。本方法は、肺に流れる灌流流体中の酸素含有量の第1のレベルおよび肺から流れる灌流流体中の酸素含有量の第2のレベルを測定する段階を含む。酸素測定段階は、灌流流体中のヘモグロビンの酸素飽和度のレベル、および肺に流れかつ肺から流れる灌流流体中の酸素の分圧のうち少なくとも1つを測定する段階を含む。灌流流体は血液製剤を含み、治療薬を肺に送達することができる。換気ガスと灌流流体との間の肺内でのガス交換は、灌流流体中の酸素および二酸化炭素などの1つまたは複数のガスのレベルを平衡値に到達させる。肺は、平衡レベルのガスにより維持する場合、約3〜24時間保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下の図面は、本発明の例示的態様を図示するものであり、ここで同様の参照番号は同様の要素を意味する。これらの図示された態様は原寸通りに描かれないことがあり、本発明を例示するものであって限定するものではないと理解すべきである。
【0022】
【図1A】携帯型臓器ケアシステムの記載される態様の模式図である。
【図1B】携帯型臓器ケアシステムの記載される態様の模式図である。肺灌流モジュールのガス関連構成要素を示す。
【図2】記載される態様の肺灌流回路の模式図である。
【図3】記載される態様に係る、維持モードでの臓器ケアシステムのガスループの模式図である。
【図4】記載される態様に係る、評価モードでの臓器ケアシステムのガスループの模式図である。
【図5】図5A〜5Bは、記載される態様に係る肺換気装置空気圧回路の模式図である。
【図6】記載される態様に係る、呼吸サイクルにわたる肺における典型的な圧力波形を示す図である。
【図7】図7A〜7Eは、記載される態様に係る気管カニューレの例を示す。
【図8】図8A〜8Fは、記載される態様に係る肺動脈カニューレの例を示す。
【図9】図9A〜9Fは、図8A〜8Fに例示される肺動脈カニューレの側面図を示す。
【図10】左心房カニューレの図である。
【図11】記載される態様に係る、維持モードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図12】記載される態様に係る、構成メニュー維持タブを示す、維持モードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図13】記載される態様に係る、連続評価モードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図14】記載される態様に係る、逐次評価モード、脱酸素化サブモードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図15】記載される態様に係る、逐次評価サブモード設定に関する構成メニューを示す、臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図16】記載される態様に係る、逐次評価モード、保持サブモードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図17】記載される態様に係る、逐次評価モード、酸素化サブモードでの臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図18】記載される態様に係る、評価タブに関する構成メニューを示す、臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図19】記載される態様に係る、換気装置設定に関する構成メニューを示す、臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図20】記載される態様に係る、肺タブに関する構成メニューを示す、臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図21】記載される態様に係る、システムタブに関する構成メニューを示す、臓器ケアシステムのモニタのスクリーンショットである。
【図22】記載される態様に係る、正面図から45°より描いた、臓器ケアシステムの図である。
【図23】記載される態様に係る、臓器ケアシステムの側面図である。
【図24】記載される態様に係る、臓器ケアシステムの正面図である。
【図25】記載される態様に係る、サイドパネルが除去された臓器ケアシステムの図である。
【図26】記載される態様に係る、肺灌流モジュールが除去された臓器ケアシステムの図である。
【図27】記載される態様に係る、肺灌流モジュールの図である。
【図28】記載される態様に係る、肺チャンバの分解図である。
【図29】記載される態様に係る、肺チャンバの肺支持面、ハウジングおよび正面部の図である。
【図30】記載される態様に係る、気管カニューレおよびPAカニューレを示す、肺チャンバの肺支持面、ハウジングおよび正面部の図である。
【図31】記載される態様に係る、臓器ケアシステムに肺を配置する前に肺ドナー場所で行われる段階を示す流れ図である。
【図32】記載される態様に係る、ドナー場所からレシピエント場所への肺の輸送中に行われる段階を示す流れ図である。
【図33】記載される態様に係る、臓器ケアシステムから肺を除去しかつそれらをレシピエントに移植するために肺レシピエント場所で行われる段階を示す流れ図である。
【図34】エクスビボでの肺の連続評価中に行われる段階を示す流れ図である。
【図35】エクスビボでの肺の逐次評価中に行われる段階を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
概要において先に記載のように、記載される態様は、特にエクスビボ携帯型環境におけるエクスビボ肺ケアに対する改善されたアプローチを一般に提供する。肺ケアシステムは、空気の約半分の酸素を有する特別に調合されたガスを肺に再呼吸させながら、肺の血管系に灌流流体を循環させることで肺を平衡状態に維持する。灌流流体は肺動脈(PA)に、PAに挿入されるカニューレを経由して入ることで循環する。肺を通過した後、灌流流体は開放状のカニューレ挿入していない左心房(LA)から肺を出て、そこでそれはリザーバに排出される。ポンプは、流体をリザーバから取り出し、それをヒーターおよびガス交換器に通過させ、カニューレ挿入したPAに戻す。記載される態様では、灌流流体はドナーの血液に由来する。代替の態様では、灌流流体は血液製剤に基づくか、合成代用血液に基づくか、血液製剤と代用血液との混合物であるか、または血液バンクからの血液に由来する。
【0024】
記載される態様は、例えば3〜24時間またはそれ以上などの長期間、エクスビボで肺を維持することを可能にする。そのような長期的なエクスビボ維持時間は、ドナーの肺の潜在的なレシピエントのプールを拡張して、ドナーとレシピエントとの間の地理的距離の重要性を低下させる。また、長期的なエクスビボ維持時間は、ドナー臓器と臓器レシピエントとの間のよりよい遺伝子およびHLAマッチングに必要な時間を与えて、好ましい予後の可能性を増加させる。近生理的機能条件に臓器を維持する能力により、臨床医は、臓器の機能をエクスビボで診断し、かつダメージを受けた臓器を同定することも可能になる。このことは肺の場合に特に有用である。これは、ドナーの死の原因の直接的または間接的な結果として、肺がしばしば損なわれるためである。したがって、新たに回収した肺であってもダメージを受けていることがある。回収した臓器の速やかな評価を行う能力により、外科医は、肺の質を決定し、ダメージがある場合には問題の性質の決定を行うことが可能になる。次に外科医は、肺を廃棄するか否か、または肺に治療を適用するか否かに関する決定を行う。治療としては、補充(recruitment)プロセス、肺のダメージを受けた区域の除去またはステープリング、分泌物の吸引、出血する血管の焼灼、および放射線処置の供与を挙げることができる。回収から移植までのいくつかの段階において肺を評価しかつ必要であれば肺に治療を与えることができることにより、肺移植成功の全体的可能性が大きく改善される。いくつかの場合では、改善した評価能力および長期的な維持時間により、医学的手術者は、微小な欠損を有するドナーの臓器に対する物理的修復を行うことが可能になる。増加したエクスビボ臓器維持時間により、臓器を患者から除去し、エクスビボで隔離下で処置した後、患者の身体に戻すことを可能にすることもできる。そのような処置としては、薬学的処置、ガス処置、外科的処置、化学療法、生物療法、遺伝子療法および/または放射線療法を挙げることができるがそれに限定されない。
【0025】
以下、肺ケアシステムを下記の順序で説明する。第一に、例示的臓器ケアシステムの構成要素の概観を示す。第二に、肺の準備およびそのシステムへの取り付けをはじめとする、システムの例示的操作を論じる。第三に、肺を維持するためのシステムの使用を説明する。次に、肺を評価する2つの方法、すなわち連続評価モードおよび逐次評価モードを第4節および第5節で説明する。第六に、肺換気装置空気圧回路の機能を説明する。第七に、肺の維持および評価中の代表的な臓器ケアシステムのユーザーインターフェースおよびシステムディスプレイを示す。第八に、臓器ケアシステムおよび選択される構成要素の例示的な実施を説明する。第9節では、臓器ケアシステムを使用するための例示的モデルを説明する。
【0026】
臓器ケアシステムの概観
図1は、肺の保存および処置に適応した臓器ケアシステム(OCS)1000の主要構成成分を示すブロック図である。臓器ケアシステムは、恒久的な多用途の非使い捨て部分であるOCS肺コンソール101と、物理的な肺ならびにそれを通過するガスおよび流体と直接接触する、単一用途使い捨て部分である肺灌流モジュール400とを含む。多用途OCS肺コンソール101は4つの構成成分を含む: OCSコンソール100; 肺コンソールモジュール200; OCSモニタ300; ならびに流れを測定するためのプローブ(114)ならびに灌流流体中の酸素レベルおよびヘマトクリットレベルを測定するためのプローブ(116, 118)。記載される態様では、OCS 1000は自給式の可搬および携帯型ユニットであり、ホイールを使用して平面での輸送用に1人で容易に取り扱うか、または、例えば車両に荷積みする際に2人で容易に持ち上げることができる。臓器および灌流流体と共に荷積みする場合、OCS 1000の重量は約75〜100ポンド、好ましくは約80ポンドである。
【0027】
OCSコンソール100は、システムに対して処理、温度、および電力の制御サービスを与える。製造プロセス中に、OCSコンソール100を、OCS肺コンソールモジュール200との使用に適応させる。あるいは、OCSコンソール100を、肺以外の臓器、例えば心臓、肝臓、または腎臓を保存するように適応したモジュールとの使用に適応させることもできる。OCSコンソール100は、システムコントロールおよびプロセスデータを与える、記載される態様ではFreescale MX1である主プロセッサ102を含む。主プロセッサ102は、肺コンソールモジュールコントローラ202、ヒーターコントローラ104、OCSモニタプロセッサ302およびポンプコントローラ(図示せず)を含む、システム内の他のプロセッサにソフトウェアを分配する。それは、流れセンサ114、圧力センサ115および酸素センサ116、118から受け取るデータなどのデータも管理する。
【0028】
記載される態様ではPICマイクロコントローラであるヒーターコントローラ104は、灌流流体の加熱を制御する。圧力トランスデューサ223は、タンク221中の内部維持ガスの圧力を測定し、それにより残存ガスの量を決定することができる。調整器222は、システム内での使用のためにガスタンク圧を25mmHgに変換する。内部維持ガスタンク221は、以下に記載の維持モード中に肺組織を維持するために十分な酸素を与えるように設計される混合物を含む。記載される態様では、維持ガスは12%の酸素、5.5%の二酸化炭素および82.5%の窒素で組成される。いくつかの態様では、OCSコンソール100は、肺の評価中に使用する内部脱酸素化ガスタンク、調整器および圧力トランスデューサ(図示せず)も含む。評価モードは後の節で説明する。
【0029】
(他の臓器ではなく)肺の保存に特異的な機能は、肺コンソールモジュール200により制御される。肺コンソールモジュール200は、データ接続、電力接続およびガス接続によりOCSコンソール100に接続される。データ接続は、OCSコンソール100上の主プロセッサ102を、記載される態様ではPICマイクロコントローラ上に組み込まれる肺コンソールモジュールコントローラ202にリンクさせる。電力接続は、OCSコンソールの電力制御モジュール106を電力変換器218にリンクさせ、これにより電力変換器218は、肺コンソールモジュール200内の電力式構成要素に適切な電圧で電力を供給する。ガス接続は維持ガス調整器222からガスセレクタスイッチ216に伸びており、このスイッチは、維持ガスまたは脱酸素化ガスのいずれが肺に流れるかを選択する。記載される態様では、脱酸素化ガスタンク501はOCS 100の外側であり、維持ガスタンク221はOCSコンソール100の内側に位置する。代替的な態様では、OCSコンソール100は内部脱酸素化ガスタンクも含む。別の代替的な態様では、さらなる外部維持ガスタンク221が、OCSコンソールの内側の維持ガスタンクを補完する。外部ガスタンクは、ドナー場所、レシピエント場所で供給を行うことができるか、または肺を輸送する車両に積み込むことができる。外部タンクは、制約された容積のOCS肺コンソール101内に入れる必要がないため、より大きくすることができ、OCS 1000のより小さい内部ガスタンクの限定されたガス供給源を補完することができる。
【0030】
コントローラ202は、バルブ、ガスセレクタスイッチ216および換気装置214を制御することで維持ガスおよび評価ガスの放出を管理し、それにより、維持モードで肺の保存を、または評価モードの1つで肺の評価を実施する。血液ガスソレノイドバルブ204は、血液ガス交換器402に流れるガスの量を制御する。気道圧センサ206は、隔離膜408を通じて検知される肺404の気道の圧力をサンプリングする。リリーフバルブアクチュエータ207は空気圧制御され、リリーフバルブ412を制御する。空気圧制御は、制御される空気通路を遮断または遮断解除するオリフィス絞りを膨張または緊縮させることで行われる。この制御方法は、肺コンソールモジュール200内の制御システムと肺灌流モジュール400内の換気ガスループとの間の完全な隔離を可能にする。空気圧制御208はリリーフバルブ207およびベローズバルブアクチュエータ210を制御する。肺コンソールモジュール200の空気圧制御回路は以下で詳細に説明する。トリクルバルブ212は、肺404の気道へのガスの送達を制御する。換気装置214は、ベローズ418を収縮および拡張するアクチュエータアームを有する機械的装置であり、これは肺404へのおよび肺404からのガスの吸入および呼出を引き起こす。
【0031】
OCSモニタ300は、ボタンによるOCS 1000のユーザー制御を与え、かつ、肺の状態およびOCS 1000内の各種サブシステムの状態を示すシステムのセンサからのデータを表示する。モニタ300は汎用であり、すなわち、任意の臓器に使用可能である。それはモニタ300を制御するソフトウェアを実行しかつLCD 304上にデータを表示するモニタプロセッサ302を含む。記載される態様では、モニタプロセッサ302はFreescale MX1である。各種スクリーンディスプレイの例は、以下でOCS 1000の使用モードとの関連で説明する。OCSモニタ300はユーザー用の4つの制御ボタンを含む: メニューボタン306は構成メニューを立ち上げ、アラームボタン308はスピーカーを消し、ポンプボタン310は循環ポンプを制御し、かつ動作ボタン312は、換気装置制御などのある種の臓器特異的動作、または外部メモリカードに対するセッションファイルの保存などのシステム動作へのアクセスを与える。値を制御するかまたは項目を選択するためのノブなどの、他の制御も含まれ得る。
【0032】
OCS肺コンソール101は、本明細書では灌流流体および灌流液とも呼ばれる循環灌流媒体250の特性を測定するプローブを含む。流量プローブ114は、システムを通じた灌流流体250の流量を測定する。記載される態様では、流量プローブ114は、肺動脈に通じる灌流液ライン上に配置される。圧力センサ115は、肺への灌流流体250の流入地点での肺動脈圧を測定する。2つの酸素飽和度センサ116および118は、回路の動脈側、すなわち酸素化側、および回路の静脈側、すなわち脱酸素化側の灌流流体250の酸素の量を検知する。
【0033】
肺灌流モジュール400は、肺404を流れるガス回路および流体回路と直接接触している。したがって、臓器と接触する組織または流体がOCS肺コンソール101と接触しないように、OCS 1000の残りからそれを隔離することが必要である。一方向ガスラインのみを経由して、または空気圧制御用の隔離された制御ガスを経由して、または機械的アクチュエータ(ベローズ用)によって、OCS肺コンソール101にそれを接続することで、このことは実現する。システム全体のすべての組織および血液に接触する表面を含む、肺灌流モジュール400全体は、使い捨てであり、OCS 1000に配置される新しい肺ごとに置き換えられる。すべての組織および血液に接触する表面は、使い捨て肺灌流モジュール400の一部であり、このモジュールは、容易に滅菌可能である安価な生体適合性材料を使用して射出成形構成要素から製造される。肺灌流モジュール400は、OCSコンソール100との結合用に形作られかつサイズ決めされる。肺灌流モジュールとOCSコンソールとの間の結合は、インターロック機構、または、灌流モジュールをOCSコンソールに固定するか、そうでなければOCSコンソールに対して所望の位置に灌流モジュールを維持する他の機構を含み得る。記載される態様では、以下で図22との関連で説明する機械的ヒンジおよび留め金機構によって、肺灌流モジュールはOCSコンソール100に容易に取り付けられ、かつそれから容易に取り外される。それはプラグイン電気接続および光学接続によっても接続される。
【0034】
肺灌流モジュール400は、換気装置214により作動するベローズ418を含む。換気装置214は、ベローズ418を圧縮および開放する機械的アクチュエータアームを使用する。ベローズを圧縮することで、肺404はガスを吸い込み、ベローズを開放することで、それは拡張され、肺はガスを吐き出す。ベローズ418を圧縮する際に機械的アクチュエータが移動する距離は、一回換気量(tidal volume)、すなわち肺404が吸入するガスの量を決定する。肺に流れ込みかつ肺から流れ出るガスはガスフィルター410を通過し、このフィルターは、肺が生成する任意の流体がガスループに入ることを防止する。
【0035】
肺灌流モジュール400の換気ループ中でのガスの隔離を確実にするために、肺灌流モジュール400とOCS肺コンソール101との間のすべての肺ガス接続は、ガスがOCS肺モジュール101に流れて戻ることを防ぐ膜を含む。例えばリリーフバルブアクチュエータ207およびベローズバルブアクチュエータからの空気圧制御ガス接続には隔離膜は必要ではない。これは、このガスが臓器と接触しないためである。肺灌流モジュールへの流れのみを可能にする一方向ガス流バルブは、換気ループ中のガスから自動で隔離される。そのようなバルブとしてはトリクルバルブ212および血液ガスソレノイドバルブ204が挙げられる。気道圧センサ206は、後方向にOCS肺コンソール101に向かう任意のガス交換を防ぐ隔離膜408を経由してガスライン圧をサンプリングする。
【0036】
灌流モジュール400は血液ガス交換器402を含み、この交換器は、灌流液流へのガスの注入を可能にする灌流液/ガス交換膜を含む。灌流液は、肺404とガス交換器402との間の回路406および407を循環する。臓器チャンバは肺404を支え、また、動脈中酸素含有量レベルの正確な測定を容易にするように、肺から出て左心房より来る灌流液をチャネル輸送する。灌流回路および臓器チャンバの詳細な説明を以下に示す。
【0037】
灌流モジュール400はリリーフバルブ412を含み、このバルブは外へ吐き出されるガスの制御放出を与えることで、換気装置ガスループ内のガス圧の減少に役立つ。ベローズバルブ414は、肺へのまたは肺からのガス流を制御する。チェックバルブ416は、外部空気を換気システムに引き込むことを可能にする一方向バルブである。ベローズ418は拡張および収縮される。換気システムを再呼吸モードで使用する場合、ベローズは、それが拡張および収縮されるに従って、実質的に決まった量のガスを肺と交換する。
【0038】
図2は肺灌流回路を示す。回路は肺灌流モジュール内に完全に収納されており、すべてのその構成要素は使い捨てである。灌流流体250は灌流回路内を循環し、肺灌流モジュールの各種構成要素を通過した後、肺404の血管系を通過する。ポンプ226は、灌流流体250が肺灌流回路全体を流れるようにする。それはリザーバ224から灌流流体250を受け取り、コンプライアンスチャンバ228を通じてヒーター230に溶液をポンプ輸送する。コンプライアンスチャンバ228は、ポンプ226の拍動性の緩和に役立つ、チューブの可撓部である。ヒーター230は、灌流流体250が環境に対して流体の循環中に失った熱を置き換える。記載される態様では、ヒーターは、30〜37℃、好ましくは約34℃の生理的温度またはその近くに灌流流体250を維持する。ヒーター230を通過した後、灌流流体250はガス交換器402に流れる。肺と同様に、ガス交換器402は、ガス透過性の中空繊維膜を通って、ガスと灌流流体250との間でガスを交換することを可能にする。しかし、ガス交換器は約1平方メートルの有効ガス交換表面積を有しているが、これは肺の50〜100平方メートルの有効交換面積のわずか一部にすぎない。したがって、ガス交換器402は、肺と比較して限られたガス交換能力しか有さない。血液ガスソレノイドバルブ204は、ガス交換器402へのガスの供給を調整する。ガス交換器に供給されるガスの組成は、以下で詳細に説明するどのモードにOCSがあるかにより決定される。例えば、OCS 1000が逐次評価モードにある場合、脱酸素化ガス500は、逐次評価サイクルの脱酸素化相の間にガス交換器に供給される。ガス交換器402を通過した後、灌流流体250は流量プローブ114、圧力プローブ115および灌流液中酸素プローブ116を通過する。本発明者らは、酸素プローブ116からの読み取りをSvO2と呼ぶ。これは、静脈血中酸素と類似した形で、それが灌流流体250中の酸素を、灌流流体が肺に入る直前に測定するためである。サンプリング/注入ポート236は、灌流流体250が肺に到達する直前の、試料の除去または化学物質の注入を容易にする。次に、灌流溶液はカニューレ挿入した肺動脈232を通じて肺404に入る。
【0039】
肺動脈(PA)カニューレは、灌流回路を肺404の血管系と接続する。肺動脈(PA)カニューレのいくつかの代表的態様を図8A〜8Fに示す。図8Aを参照すると、単一のPAカニューレ802は、単一のPAへの挿入用の単一の挿入管804を有しており、PAが2つの肺に分岐する前の地点でPAにカニューレ挿入するために使用される。カニューレを肺動脈に接続するには、挿入管804をPAに挿入し、PAを縫合により管上に固定する。カニューレ802の挿入管804はコネクタ部805に接続され、コネクタ部は、肺404の肺動脈への歪みのない接続に好適な角度および位置に挿入管804を位置づけるために役立つ。接続部805は主管部808に接続され、主管部は灌流流体回路に取り付けられる。図9Aは、挿入管804と接続部805との間の角度を示す、PAカニューレ802の側面図であり、記載される態様では、角度は約15°〜30°、好ましくは約22.5°である。
【0040】
図8B〜8Fを参照すると、二重PAカニューレ810、820、830、840および850は、各々2つの挿入管812、814、822、824、832、834、842、844、および852、854を有し、管の各対は、カニューレ810、820、830、840および850においてそれぞれカニューレの主軸から30°、45°、60°、75°および90°隔てられた角をなす。各管は、リブにおいて約0.5〜0.72インチの直径を有し、挿入管の本体上で約0.4〜0.62インチの直径を有する。多様な角度は、外科医に、ドナーの肺の解剖に最も適合するカニューレの選択を与える。図8Bを参照すると、一対の挿入管812および814が接続部815にY字状に接合している。図9Bで最も明らかに示すように、接続部815は主管818に対して角をなし、角度は、肺404の肺動脈への挿入管812および814の挿入を容易にするように選ばれる。記載される態様では、角度は15〜30°、好ましくは約22.5°である。図9C〜9Fを参照すると、接続部825、835、845、855とその対応する主管828、838、848および858との間の15〜30°、好ましくは約22.5°という同様の角度が示される。各種の事前設定した角度で隔てられた角をなす分岐した末端を有するPAカニューレを有することに対する代替案は、ドナーの肺血管の角度に適合するように曲げることが可能である展性のPAカニューレを有することである。
【0041】
PAカニューレの製造の材料をここで説明する。単一のPAカニューレ802の例示的態様では、挿入部804はポリカーボネートチップを有しており、コネクタ部805および主管部808はウレタンチューブで作製されている。代替的な態様では、挿入管804、コネクタ部805および主管部808は、すべて単一片の50ショアA〜90ショアAの硬度シリコーン、好ましくは80ショアA硬度のシリコーンで作製される。同様に、二重PAカニューレでは、二重PAカニューレ810、820、830、840および850の主管818、828、838、848、858およびコネクタ部815、825、835、845、855はそれぞれウレタンで作製することができ、挿入管812、814、822、824、832、834、842、844、852および854はポリカーボネートで作製することができる。代替的な態様では、二重管PAカニューレ全体、すなわち二重挿入管、コネクタ部および主管はすべて単一片の80ショアAのシリコーンで作製される。シリコーンでの構築の利点は、縫合によりカニューレコネクタ上に結ばれる肺血管に対して良好な足掛かりを与える上でそれが十分に軟らかいということである。さらに、肺PAに対する取り付けの時点で、シリコーンを所要の長さに容易に切断することができる。さらに、シリコーンは、複雑な形状に成形可能であるため、カニューレ全体を単一片で製作することを可能にする。カニューレの一体的構築は別個のカニューレの部品間のつなぎ目を排除する。つなぎ目は、灌流流体250中で望まない乱流を生成するか、不純物を導入するか、または別個の部品間の継手において漏出を引き起こすことがある。さらに、一体的構築は、単一片の成形のみを必要とし、これはコストを減少させ、カニューレの信頼性を増加させる。
【0042】
各PAカニューレの接続部は、灌流液圧力トランスデューサ115を接続するためのコネクタも含む。図8A〜8Fおよび9A〜9Fを再度参照すると、PAカニューレ802、810、820、830、840および850は圧力トランスデューサコネクタ806、816、826、836、846および856をそれぞれ含む。コネクタは、灌流液流が遅くなるまさに肺への流入地点である正確な位置に灌流液圧センサを配置することに役立ち、圧力の読み取りは、ベルヌーイの流れ圧力により歪曲されることはない。圧力トランスデューサコネクタは、圧力センサ115において遠隔通気させるためのチャネルも与え、これは圧力読み取りの正確さを確実にするために役立つ。
【0043】
肺を通過した後、灌流液は左心房から肺を出て、その一部はドナーからの肺の外移植中に肺と共に除去される。レシピエントへの肺の移植中に、左心房組織は取り付けゾーンとして役立つため、できるだけそれを原状のままでかつ健康にしておくことが重要である。したがって、記載される態様では、左心房カフはカニューレ挿入されておらず、これにより、循環する灌流液を開放状の左心房および左心房カフから排出することが可能になる。
【0044】
代替的な態様では、左心房カフは、図10に示すケージ状カニューレ1002によりカニューレ挿入される。この態様では、すべてのLA血管がカニューレ内部に配置され、次に過剰のLA組織がカニューレの周りに巻きつけられる。LAカニューレ1002のケージ状構造1004は、任意の肺静脈を閉塞させることなく左心房を開放状に保持するように設計されており、したがって組織の健康を損なう危険性を減少させるために役立つ。カニューレの内部で、肺静脈から流れる灌流液は管1006に収集され、灌流液リザーバに供給される。コネクタ1008は圧力トランスデューサに接続点を与え、圧力トランスデューサはカニューレ1002内部に配置されかつ灌流液圧を測定することが可能である。
【0045】
新たに排出される流体のサンプリングを、それがリザーバ内で他の灌流液と混ざる前に可能にする「溢流カップ」技術を使用して、肺から出る灌流液は二重ドレインシステム内に収集される。肺からのすべての流れは、測定ドレインに対して供給を行う小さいカップへ方向づけられる。このドレインの容量は小直径チューブの使用により制限される。肺からの灌流液は、測定ドレインの容量を超える流量で出る。過剰な血液はこの小さいカップを溢流し、主ドレインに、したがってリザーバプールに方向づけられる。測定ドレインは、新たに排出される灌流液の無気泡の流動を第2の酸素プローブ118に向けることで、SaO2と呼ばれる動脈内酸素レベルの正確な読み取りを得る。第2のサンプリング/注入ポート234を通過した後、灌流溶液はそのサイクルを完了してリザーバ224に戻る。左心房カフがカニューレ挿入されていない構成においてのみ、二重ドレインシステムが必要である。しかし、例えば以下に記載のケージカニューレにより左心房カフがカニューレ挿入されている場合は二重ドレインシステムの必要性はない。これは、新たに排出される無気泡の灌流液の中実カラムが、カニューレ挿入された左心房カフから出るためである。
【0046】
記載される態様では、灌流流体250は、ヘパリン、インスリン、ビタミンおよび抗生物質を加えたドナー血液で組成される。デキストランは膠質浸透圧、ヘマトクリットレベルおよびpHを調整するために役立つ。
【0047】
以下の節では、肺を保存および評価するためにどのようにしてOCS 1000を使用するかを説明する。器具取り付け前(preinstrumentation)の節では、肺をOCSに接続する前にOCS 1000および肺を準備する際の初期段階を説明する。維持モードの節では、肺を保存するためにどのようにしてOCSを使用するかを説明する。評価モードの節では、肺の状態を評価する2つの方法、すなわち連続モードおよび逐次モードを説明する。
【0048】
器具取り付け前
ドナーから肺を除去した後、気管カニューレを気管に挿入して、肺灌流モジュール400のガス回路と肺との間の接続手段を与える。図7A〜7Eは一連の代表的気管カニューレを示す。図7Aを参照すると、カニューレ700は気管挿入部704を含み、気管挿入部には気管がケーブルタイまたは他の手段により固定される。記載される態様では、挿入部704は約0.8インチの長さである。カニューレ700の基材は、ポリカーボネート、または、アクリル、ポリエステル、K樹脂、ナイロン、ポリエチレンもしくはポリプロピレンなどの別の硬質で射出成形可能な生体適合性プラスチックで組成されることが好ましい。挿入部704の上の上層は軟質シリコーンゴムで組成されることが好ましく、上層用の代替的な材料は、ポリウレタン、熱可塑性エラストマーおよび他のゴム材料などの他の軟質で生体適合性の押出材料または成形用材料である。気管取り付け部704に隣接しているのは可撓部706であり、これはポリウレタン、または、挿入部の上層に好適であるとして先に列挙した他の生体適合性材料のうち1つで組成されることが好ましい。挿入部704およびその上層、ならびに可撓部706は射出成形可能であり、シリコーン上層は基材部上に重ね成形される。代替的な態様では、シリコーン上層は別個に成形されるか、または基材上に押出および延伸される。
【0049】
気管に挿入される挿入部704の末端にはリブ703があり、リブは、気管内の挿入位置で挿入部704を固定するために役立ち、気管の周りに配置されるケーブルタイにより固定される。挿入部704の反対側の末端では、挿入部704の基材部直径よりも約0.2インチ大きい直径を有する第2のリブ705が、シリコーン上層用のストップおよび気管用のストップとして働く。後方リブ705は、約0.5インチ長であり、かつ0.5インチ直径の管を保持するための角をなすバーブを有する、チューブ用バーブフィッティングである。肺OCS肺チャンバコネクタ710に向かう基材部上には、約0.5インチ長であり、0.5インチ直径の管を保持するための角をなすバーブを有する、第2のチューブ用バーブフィッティングが存在する。
【0050】
可撓部706をクランプすることで、肺404へのおよび肺404からの気流を封鎖することができる。例えば、外移植後およびOCSのガス回路への接続前に肺404の静的膨張を維持するために、部分706のクランピングを使用する。静的膨張は、肺の虚脱、および肺胞に対する結果的なダメージを防止するために役立つ。静的膨張では、肺は約20センチメートルの水の圧力まで膨張する。次に、可撓部706において気管カニューレのクランプを外す。
【0051】
気管挿入部から最も遠い可撓部706の末端の近くに、カニューレ700は、肺チャンバにカニューレを固定するためのロックナット708を含む。ロックナット708はカニューレ管の階段状部分上に装着される。ロックナット708に隣接する0.7インチ長の15mmコネクタ710は、カニューレを標準的換気装置コネクタに接続するために役立ち、標準的換気装置コネクタは、肺をOCSのガス回路に接続する。気管カニューレは、ドナーのサイズに従って変動する気管径を有するドナーの肺に適合するように設計されている。図7Aは、0.9インチの挿入部先端径702を有する気管カニューレ700を示す。図7B、7C、7Dおよび7Eでは、挿入部724、744、764および784の0.85、0.80、0.75および0.70インチの挿入部先端径722、742、762、782を有するカニューレをそれぞれ示す。0.7インチより小さいかまたは0.9インチより大きい挿入部径を有するカニューレが、ある種のドナーからの肺に適合するために必要になることがある。
【0052】
肺を受け入れる前に、OCS灌流回路をドナー血液、プライミング液および薬物によりプライミングする。次にこの灌流液を循環および加温する。この相の間に、ガス交換器402は、維持モードに対応する血液ガスを確立する。これは、維持ガスがガス交換器に流れることを可能にするようにガスセレクタスイッチ216を設定すること、およびガス交換器を通じる低平均流量の維持ガスを与えるようにガス交換器バルブ204を負荷サイクルが調節することにより実現する。ガス交換器内でのガスの交換は、循環する灌流液を維持ガスとの平衡に到達させて、O2およびCO2の所望の維持灌流液ガスレベルを確立する。灌流液のpHをCO2レベルにより制御する。これらの準備段階は、肺をOCS上に取り付ける際に、灌流液が維持ガスレベルに既に到達したことを確実にし、このことは維持モードへの肺の移行を加速するために役立つ。
【0053】
維持モード
維持モードは、肺を安全で安定した条件に配置することで、それらを長期間保存することを可能にする。肺の代謝上の需要を満たすための酸素と、血中pHを制御するための二酸化炭素とを含有するガスにより平衡状態で肺を配置することで、維持ガスは肺の細胞の要求を満たす。肺の酸素消費量は少ないため、各呼吸を実質的に再利用することができ、これは新鮮なガスの消費量を劇的に減少させる。供与された臓器は、レシピエントが所在する異なる場所に輸送することが通常は必要であるため、肺を支援するために必要なガスの量を減少させ、それによりシステムの携帯性を増加させることは、著しい利益となる。
【0054】
肺を臓器チャンバ内に配置する場合、休止モードにあるシステムガスラインに気管カニューレを接続する。休止モードでは、ベローズ418は完全拡張状態にあり、すなわち、最初の肺吸入を行うように準備されている。気管カニューレ上のクランプを除去し、肺およびガスライン内の圧力を同等にする。次に吸入を開始する。
【0055】
図3は、維持モードにあるOCSの機能の図である。維持モードでは、換気装置システムは、肺とベローズとの間で捕集量のガスを行ったり来たり動かして、ガスを肺に再呼吸させる。さらに、バルブ212を通じる各呼吸中に、少量の維持ガス220を換気回路に少しずつ流す。過剰のガスをリリーフバルブ412を通じて回路から排気することで、圧力の増大を防止しかつシステム内の所望の最小ガス圧を維持する。記載される態様では、維持ガス220は、約9〜15%の酸素、好ましくは約12%の酸素、約4〜7%の二酸化炭素、好ましくは約5.5%の二酸化炭素、および残りは窒素で組成される。
【0056】
維持ガス220の組成は、空気のそれの約半分の量の酸素、および、灌流流体250中で近生理的pHレベルを維持する量の二酸化炭素を含む。維持モードでは、維持ガス220と灌流液ガスレベルとの間で平衡が実現する。この平衡において、肺404に入る灌流流体250中の酸素レベル、すなわち静脈中レベルPvO2と、肺404から出るレベル、すなわち動脈中レベルPaO2との間には小さな差しか存在しない。維持ガス220の組成は、生理的血液中ガスレベルからできるだけ逸脱していない灌流液中酸素レベルを実現するように選ばれる。酸素含有量が高すぎると、生理的レベルを大きく上回る静脈中酸素レベルという結果になり、逆に、酸素レベルが低すぎると、生理的レベルを大きく下回る動脈中酸素レベルという結果になる。好ましい維持ガスの組成は、これらのレベルの間の折衷であって、生理的な静脈中レベルと動脈中レベルとの間のほぼ中間である灌流流体250中の平衡の動脈中および静脈中酸素レベルを実現する折衷である。約12%という好ましい酸素成分は、肺の代謝上の必要を満たすために十分過ぎるほどの酸素も与える。さらに、12%という酸素レベルは、空気を呼吸する健康な肺の肺胞中の酸素レベルに近い。これは、気管中の酸素レベルと、肺に対する気道通路に沿ったガス交換が引き起こす肺胞中のレベルとの間に勾配が存在するためである。維持モードにある肺404の場合、維持ガスが再呼吸される際に、この勾配は存在せず、酸素レベルは肺全体で約12%である。
【0057】
最初に、肺を第一にOCSガスラインに接続する場合、ガスループを維持ガスではなく空気で満たす。したがって、肺の換気は最初に空気により行う。換気ガスを少しずつ流し、過剰なガスを放出すると、ガスループ中のガスの組成がまもなく維持ガスのそれに変化する。
【0058】
維持モードでは、維持ガスタンク221を選択するようにガスセレクタバルブ216(図1)を設定する。ガス交換器バルブ204は維持モードでは常に閉鎖されている。これはガス交換器402を使用しないためである。ベローズと肺との間のガス交換を維持するために、ベローズバルブ414は常に開放されている。図3を参照すると、受動チェックバルブ416は、吸引条件下で回路に空気をもたらすが、維持モード中は、換気回路が常に陽圧を有するため、閉鎖されたままである。
【0059】
各維持モードサイクルの開始時に、ベローズ418は完全に開放された位置にあり、肺はそれらの最低容量である。このサイクル中に、ベローズ418が圧縮されることで、ガスは肺に動かされる。肺は拡張されてこのガス量を受け入れ、圧力を上昇させる。指定量のガスを送達した際、ベローズ418は指定のプラトー時間休止した後、サイクルの呼出部を開始する。呼出中、ベローズ418はその当初の完全拡張状態に戻り、肺は弛緩する。次の換気サイクルは、指定の呼吸速度による間隔セットの後で始まる。各サイクルの吸入相の間にベローズ418が圧縮される程度は、典型的には400〜1200mLである、ユーザー指定の一回換気量により決定される。
【0060】
図6は、各換気サイクルにおける典型的な呼吸圧波形650を示す。サイクルの開始時に、圧力は、H2O約5cmである呼気終末陽圧(PEEP)値652に設定される。ベローズがサイクルの吸入部654において圧縮されると、圧力はピーク圧656に増加し、サイクルのプラトー部658においてピーク圧のままにとどまる。記載される態様では、ピーク圧はH2O約20cmである。サイクルの呼出部660では、圧力は、サイクルの終わりに所望のPEEPレベルに到達するまで低下する。完全な換気サイクルの持続時間662は、ユーザーが選択する呼吸速度により設定され、典型的には約6秒である。
【0061】
各維持モード換気サイクルにおいて2つの他の事象が生じる。吸入相654中に、トリクルバルブ212は短時間開いて、指定量の較正維持ガスを回路にもたらす。その後、呼出相660の終わりに、リリーフバルブ412は短時間開いて、所望のPEEPに到達するまで過剰のガスを外気に対して排気する。トリクルバルブ212およびリリーフバルブ412の開口は、図6においてトレース664および666によりそれぞれ示す。
【0062】
換気ループへの維持ガスの平均流量はユーザーが指定し、典型的には500ml/分である。1分当たり10呼吸の換気速度で、トリクルバルブ212は各サイクルで維持ガス50mlを回路にもたらす。600mlという典型的な一回換気量で換気する場合、各サイクルでの維持ガスの注入は、一回換気量の約10%の量に過ぎず、したがって任意の所与の換気サイクルに対して小さい影響しか有さない。酸素レベルを低下させかつCO2レベルを増加させるという肺の代謝の傾向にもかかわらずガスループ中のガス組成を維持ガスレベルに近く保つために必要な最小レベルに、維持ガスの流量を通常は設定する。維持ガスの注入は、システム中で所望のPEEPレベルを維持するためにも使用される。肺および呼吸フィッティングからのガス漏出量も維持ガスの注入量に影響を与える。
【0063】
肺の代謝活性は低いため、肺は支援用の酸素をほとんど必要とせず、少量の二酸化炭素しか生成しない。したがって、肺自体の代謝は、換気ガスおよび灌流液ガスの組成に小さな影響しか有さない。維持ガスは各換気サイクル中にガスラインに注入されるため、換気ガスおよび灌流液ガスの組成は速やかに同一組成、すなわち維持ガスのそれに到達する。この状況が生じた時点で、肺は維持ガスとの平衡状態になる。平衡状態では、灌流液中酸素レベルは定常状態の値を実現する。SaO2の定常状態レベルは約93〜95%の範囲であり、生理的レベルよりはわずかに低い。対応する定常状態SvO2レベルは約90〜91%の範囲であり、生理的レベルより高い。したがって、維持モードでは、肺全体での灌流流体250中の飽和度レベル間の差は、生理的な差より小さい。より高いこのSvO2は、部分的には、生理的な場合には存在する身体組織の脱酸素化効果の不在による。より低いこのSaO2レベルは、部分的には、空気の酸素含有量の約半分しか有さない維持ガスにより肺を換気することで引き起こされる。
【0064】
維持モード換気の改良においては、システムは、トリクルバルブ212が寄与するガスの量に相当するベローズの圧縮ストロークを短縮することで、肺への正確かつ一定の一回換気量の送達を維持する。
【0065】
評価モード−連続
図4は、肺の評価の実行に関与する各種構成要素を示す模式図である。連続モードの評価では、システムは、空気を肺に吸入した後、灌流流体が肺に戻る前に灌流液酸素を除去することで、身体のプロセスを模倣する。身体において、酸素の除去は組織により達成され、OCSにおいて、それはガス交換器を流れる脱酸素化ガスにより達成される。連続モードの評価は、肺がどれほど血液を脱酸素化できるかを測定することで、肺のガス交換能力を試験する。この測定は、静脈血および動脈血中酸素レベルを測定することで行われる。連続評価モードでの肺の性能のスコアリングを以下でさらに論じる。
【0066】
図34は、肺の連続評価の実行に関与する主要な段階を示す流れ図である。段階3402では、脱酸素化ガスはガス交換器402に流れる。脱酸素化ガス500を選択するよう設定したガスセレクタスイッチ216を使用し、かつガス交換器バルブ204を開放してガス交換器402を脱酸素化ガス供給源に接続することにより、これは達成される。記載される態様では、維持ガスは4〜7%のCO2、好ましくは6%のCO2、および残りは窒素で組成される。このモードでは、トリクルバルブ212は閉鎖されたまま保たれる。段階3404では、肺を空気または別の換気ガスにより、ベローズ418を使用して換気し、ベローズは、各サイクルの吸入相の間に空気または他の換気ガスの新鮮な呼吸を肺に送達する。
【0067】
図6は、連続モード換気サイクルにおけるガス圧プロファイルおよびバルブ設定を示す。サイクルの開始時に、ベローズ418は完全に開放された位置にあり、肺はそれらの最低容量であり、圧力はPEEPレベル652にある。ベローズバルブ414が開放668され、ベローズが圧縮されることで、ガスは吸入相654の間に肺に動かされる。肺は拡張されてガスを受け入れ、それに伴って圧力が上昇する。ベローズ418が指定量のガスを送達した場合、システムはユーザー指定のプラトー時間658(停滞時間とも呼ぶ)休止した後、サイクルの呼出相660を開始する。呼出中、ベローズバルブ414、670を閉鎖することで、ベローズと肺との接続を封鎖する。回路の肺側では、リリーフバルブ412を開放672して、PEEPレベルに到達するまで肺からガスを排気し、その時点でリリーフバルブ412を閉鎖674する。同時に、ベローズ418を完全伸展位置まで拡張する。これによりベローズ側での吸引を作り出し、吸引は受動チェックバルブ416により解放され、受動チェックバルブ416は次の吸入サイクルの準備において外気を入れてベローズを満たす。次の換気サイクルは、ユーザー指定の呼吸速度により決定された時間に始まる。このように、各サイクル中のベローズバルブ414およびリリーフバルブ412の協調的な作動は、新鮮な空気による肺の連続換気を引き起こす。
【0068】
代替的な態様では、ベローズバルブ414は、プラトー658の前の吸入相654の終わりに閉鎖される。これにより、吸入相の直後にベローズの拡張が始まることが可能になる。
【0069】
空気以外のガスをチェックバルブ416の入口に供給することができる。実際、任意の所望の組成のガスを与えることができる。例えば、病院で酸素濃縮を与える一般的なガスエントレインメント(entrainment)装置からガスを与えることができる。そのような装置は、標準的な50%または100%という酸素レベルで換気ガスを供給することができる。
【0070】
脱酸素化ガスはガス交換器402を流れ、肺は空気により換気されるが、図34、段階3406に示すように、灌流液は肺およびガス交換器を循環する。肺を連続モードで評価しながら生理的条件に近似させるには、身体のそれに類似した酸素レベルを有する静脈中灌流流体を肺に供給することが望ましい。ガス交換器402は限定されたガス交換能力を有しており、3〜4l/分という生理的血流量では、断続的に再酸素化が行われる肺に血液を循環させながら、血液から十分な酸素を除去することで飽和度レベルを身体に対応するレベルに減少させることは不可能である。したがって、ガス交換器402が静脈血中の酸素の生理的レベルを実現することを可能にするために、流量を約1.5l/分に減少させる。代替的な態様では、1.5l/分と生理的流量3〜4l/分との間の中間の流量を使用し、それ相応のより高い酸素レベルの静脈血が肺に入る。記載される態様では、一方で、血液が肺に入る際の生理的血中ガスレベルに近似させることと、もう一方で、生理的流量に近似させることとの間にはトレードオフが存在する。システムのガス交換能力を増加させることで、トレードオフを減少させるかまたは排除することができる。1つのアプローチでは、肺灌流回路内で複数のガス交換器を直列または並列で使用する。別のアプローチでは、ガス交換器のガス交換能力を、より大きいガス交換面をそれに備えさせることで増加させる。
【0071】
典型的には、連続モード評価を、肺を維持モードに保った直後に行う。以下の代替的な態様では、維持モードから連続モード評価への切り替えを迅速化する。最初に、維持モードにおいて、通常はいくつかの空気換気サイクル中に流されるであろう維持ガスの全量を、ベローズ418は含んでいる。その代わり、掃流操作を行って、ベローズ418の全内容物を空気で置き換える。この掃流中に、ベローズバルブ414は開放され、ベローズ418は遅い速度で完全に圧縮される。この圧縮中に、リリーフバルブ412は能動制御されて、圧力をPEEPレベルの近くに維持する。この圧縮サイクルの終わりに、ベローズバルブ414が閉鎖され、ベローズ418が完全に拡張されることで、その全容積がチェックバルブ416からの新鮮な空気で満たされる。1つまたは複数の掃流サイクルを行って、新たなガス組成を完全に確立することができる。
【0072】
システムが定常状態になった時点で、図34、段階3408に示すように、肺に入りかつ肺から出る灌流液中の酸素レベルの値を測定する。灌流液試料を取得して、酸素レベルを確認しかつ灌流流体の他の成分を決定することもできる。連続評価モードでは、各呼吸において肺がどれほど多くの酸素を灌流液に移動できるかを決定することで、ユーザーは肺のガス交換能力を評価する。この評価は、肺に入りかつ肺を離れる灌流液中の酸素レベルの測定値に基づいている(3410)。肺を換気するガス中の酸素画分などの各種パラメータを使用して、この評価を較正する。ガス交換能力の標準的な尺度は、水銀柱mm単位の血中酸素の分圧PaO2と、分画吸気酸素値FiO2との間の比である。正常な安静時の個人では、この比は100/.21 = 450である。300未満の比は損なわれた肺を示し、200未満の比は急性呼吸促迫症候群(ARDS)を示す。しかし、OCS内の評価ツールとしてこの尺度を有効化するには、いくつかの標準化調整が必要である。1つの重要な調整は、血液が肺に入る前の血液の脱酸素化レベルPvO2に関するものである。一般に、ガス交換器の限定された脱酸素化能力が理由で、OCS中のPvO2レベルはある個人中のそれより高い。したがって、肺の所与のガス交換能力について、インビボよりもOCSの連続評価モードの肺のほうがPaO2が高いことが予測される。
【0073】
肺のガス交換能力の別の尺度は、肺に入る血液の酸素レベルPvO2と、肺を離れる血液のそれPaO2との間の差である。正常な個人では、PvO2レベルは約40mmHgであり、PaO2は約100mmHgであり、流出酸素レベルと流入酸素レベルとの間の差は60mmHgである。OCSについては、PvO2レベルは60mmHgであり得るものであり、健康な肺は115mmHgのPaO2を実現可能であり、PaO2 - PvO2の値は55mmHgであり、これはインビボでの対応する値に近い。
【0074】
測定される連続モードパラメータを評価ツールとして有効化するには、いくつかの標準化調整が必要である。これらの調整は、換気パラメータ、ヘマトクリットレベル、血流量、肺気量、高度および温度などの因子に基づいている。
【0075】
逐次評価モード
逐次評価モードは、肺のガス交換能力を診断する第2の方法である。このモードでは、肺は深静脈灌流液中酸素レベルを課せられ、このレベルにより、肺は連続評価モードのそれとは異なる能力試験に供される。
【0076】
逐次評価は3つの相を含む: 脱酸素化、保持、および再酸素化。脱酸素化相は、システム中の全灌流液から酸素を除去する。保持相の後、肺は灌流液プールを再酸素化する。肺が再酸素化を実現する速度は、それらのガス交換能力を示すものである。図35は、肺の逐次評価の実行に関与する主要な段階を示す。
【0077】
脱酸素化相3502、3504を使用して、灌流流体250の酸素含有量を低下させる。これはガス交換器402と肺404との両方を使用することで実現する。ガス交換器402が血液を脱酸素化するようにするには、脱酸素化ガスを選択するようにガスセレクタバルブ216を設定し、かつガス交換器バルブ204を開放することで、脱酸素化ガス500をそれに供給する。ガス交換器はそれ自体で血液を脱酸素化できるが、肺および換気装置を使用してプロセスを促進する。これを達成するために、換気装置を維持モード(上記参照)と同様にリブリーザー(rebreather)として動くように構成し、トリクルバルブ212が脱酸素化ガス500をガス回路に注入する。いくつかの換気装置サイクル内で、ガス回路内の再呼吸されたガスは、脱酸素化ガス組成、すなわち約6%のCO2および94%のN2に一致し、肺は、それらを循環する灌流流体を脱酸素化するように働く。事実上、灌流液プールを脱酸素化するために役立つ非常に有効なガス交換器として、肺は使用されている。図35、段階3504に示すように、通常は約50〜70%の酸素、好ましくは約60%の酸素であるユーザー定義の閾値の範囲内に灌流液中酸素がなるまで、脱酸素化相は続く。
【0078】
保持相3506では、灌流液が灌流回路を流れ続けている間にガス交換器バルブ204およびトリクルバルブ212を閉鎖することで、脱酸素化プロセスが中断する。この相の間に、灌流液プールは均一な脱酸素化レベルに安定化される。均一性を実現するために必要な時間は灌流液の流量に依存し得る。代替的な態様では、動脈中および静脈中の酸素含有量レベルをモニタリングし、そのレベルが長時間同等かつ一定になるまで保持相を維持する。保持相の間は、換気を中断するか、あるいは、システムが1つまたは複数の掃流サイクル(先に連続評価の節において説明)を行うことで再酸素化相を準備する。掃流サイクルはここで有用な役割を果たすが、これはガス回路内のガスが脱酸素化ガスからその対極である空気に切り替えられるためであり、および、灌流流体の酸素化を直ちに開始するには、ガス回路を最初に空気で満たしておく必要があるためである。
【0079】
逐次評価モードの最終相では、肺を空気または別の換気ガスにより換気することで、酸素が枯渇した灌流液プールを再酸素化する(段階3508)。連続評価について先に記載のものと同一だが、ガス交換器バルブ204を閉鎖したまま保つという差異を伴う方法を使用して、換気を行う。したがって、逐次評価モードの再酸素化相では、肺が灌流回路内の唯一のガス交換源である(段階3510)。肺が灌流液プールを再酸素化するために要する時間は、肺のガス交換能力の主要な指標である。測定される再酸素化時間は、パルスオキシメータープローブ116および118の一方または両方により測定される、灌流流体250が脱酸素化状態から所定の酸素化レベルに至るための時間である(段階3512)。代替的な態様では、血液試料をサンプリングポート234、236のうち1つまたは複数から取得し、飽和度レベルを実験室血液ガス分析計により測定する。酸素化閾値レベルでの飽和度を90%〜100%の範囲内に設定し、好ましくは93%に設定する。
【0080】
空気換気される肺が脱酸素化閾値レベルから酸素化閾値レベルまで血液を再酸素化するために要する時間により測定される、肺のガス交換能力は、肺の状態の尺度を与える(段階3514)。一般に、健康な肺は灌流液プールを4〜5呼吸で再酸素化することができ、これは45〜90秒の範囲、典型的には約1分の逐次評価モード再酸素化時間に対応している。評価ツールとしての再酸素化時間の有効化には、換気パラメータ、ヘマトクリット、血流量、肺気量および高度に基づく標準化が必要になることがある。
【0081】
逐次モード評価の代替的な態様では、酸素化相の間に空気以外のガスをチェックバルブ416の入口に供給する。例えば、病院設定において50%または100%の酸素でガスを与える装置からのガスは、換気ガスを供給することができる。この場合、再酸素化時間は減少し、また、肺のガス交換能力を決定するには、再酸素化時間の測定を適切に較正する必要がある。
【0082】
逐次評価モード中に肺のガス交換能力を評価する別の方法は、肺が脱酸素化相の間に灌流流体250を脱酸素化する速度を測定することである。脱酸素化ガス500により換気されている間に灌流流体250を脱酸素化する上での肺の有効性は、肺のガス交換能力の指標を与える。
【0083】
逐次評価モードの利点は、再酸素化中にガス交換が肺によってのみ行われるため、3〜4l/分という生理的血流量が使用可能であるということである。ガス交換器が関与しないため、血流を限定する必要はない。
【0084】
肺換気装置空気圧回路
肺換気装置空気圧回路は、各種換気モードを制御するためにベローズバルブ414およびリリーフバルブ412を制御する手段を与える。それは血液ガス交換器402および肺へのガス流も制御する。空気圧制御は、異なる速度でバルブを開放および閉鎖する能力、安価で使い捨てのパイロットバルブを利用可能であること、肺に対して露出するガスを運搬するバルブから肺コンソールモジュール200を隔離する能力、ならびに、使い捨て肺灌流モジュール400をコンソールモジュール200に対して接続および断絶するための簡便でモジュール式の界面を与えることを含む、いくつかの利点を提供する。
【0085】
コンソールモジュールコントローラ202上で実行されるソフトウェアは空気圧制御モジュール208を制御し、それによりこのモジュールはリリーフバルブアクチュエータ207およびベローズバルブアクチュエータ210を制御する。図5aは、肺コンソールモジュール200内の空気圧回路の構成要素、および、回路がどのようにして肺灌流モジュール400に接続されるかを示す。図1に示す空気圧制御モジュール208に対応する構成要素は、図5aでは点線により同定される。表1は、記載される態様に係る空気圧回路部品のリストである。
【0086】
【表1】
【0087】
肺コンソールモジュール200の空気圧回路は、ガスコネクタ624、626を経由して肺灌流モジュール400に接続される。図5bは、6ルーメンコネクタを示すコネクタ624の正面図を示し、ガスライン630、632、634、636および638はガス交換器402、再呼吸ガス回路、ベローズバルブ414、リリーフバルブ412および気道圧への接続をそれぞれ与える。コネクタは、肺コンソールモジュール200に対する使い捨て肺灌流モジュール400の迅速な除去および接続を可能にする。
【0088】
維持ガス220および脱酸素化ガス500は、それぞれコネクタ604および602によりガスセレクタスイッチ216に接続される。ガスセレクタスイッチ216はどのガスをガス交換器バルブ204およびトリクルバルブ212に通過させるかを選択する。トリクルバルブ212の制御は換気サイクルと同期しており、このバルブは、先に図6について記載のように吸入相の間は開放され、かつ所望の平均ガス流量を得る上で十分に長い時間開放状に保たれる。ガス交換器402への流量は、バルブ216からの制御バルブ204のパルス幅調節により制御される。バルブ204および212は、オリフィス絞り205および213をそれぞれ使用してガス流量の制御を実行する。
【0089】
ベローズバルブ414およびリリーフバルブ412はいずれも1リットル/秒などの高流量が可能である。ベローズバルブ414の場合、高流量能力は、吸入および呼出中に肺とベローズとの間の非制限的で自由なガス流を可能にする。リリーフバルブ412の場合、高流量能力は、肺がPEEP値まで速やかに呼出することを可能にする。記載される態様では、ベローズバルブ414およびリリーフバルブ412は市販の高流量パイロットバルブである。パイロットバルブダイヤフラムに陽圧を適用することでバルブを閉鎖し、陰圧はバルブを完全に開放する。
【0090】
図5aの下部は、どのようにしてパイロットバルブ制御がベローズバルブ414およびリリーフバルブ412について実現されるかを示す。空気ポンプ612が一定に動くことで、空気ポンプを通じたほぼ一定の気流を与える。ポンプは入口フィルター606およびチェックバルブ608を通じて周囲空気を引き入れる。この流れは、約1 PSIまたはH2O 70cmのチェックバルブ608全体にわたる圧力差を作り出し、これにより周囲空気に対してH2O -70cmの入口リザーバ610内圧力が生じる。入口リザーバ610および出口リザーバ614は、往復運動ポンプ612からの不均一な圧力波動をフィルタリングするために役立つ。出口リザーバ614を通過した後、空気ポンプ612の流出物は第2の1 PSIチェックバルブ616を流れる。したがって、出口リザーバ614内の圧力は、リリーフバルブアクチュエータ207が周囲圧力に開放されていることを前提として、周囲圧力をH2O 70cm上回る。
【0091】
ベローズバルブ414は次のように制御される。ベローズバルブアクチュエータ210は入口リザーバ610または出口リザーバ614のいずれかに接続可能である。ベローズバルブ414を開放するには、H2O -70cmにある入口リザーバ610にアクチュエータ210を接続する。アクチュエータ210は、この陰圧を空気圧ライン634を経由してベローズバルブ414のダイヤフラムに移動させる。ダイヤフラム上の陰圧はバルブ414を開放させる。ベローズバルブ414を閉鎖するには、アクチュエータ210をH2O +70cmで出口リザーバ614に接続することでバルブダイヤフラムに陽圧を適用させてバルブを締め切る。
【0092】
リリーフバルブ412は、このバルブのダイヤフラムに陽圧を適用することで制御されるが、この場合は、灌流モジュールガス回路内のPEEPを設定するためにバルブの制御可能なパイロットガス圧を使用する。換気ループ内の圧力がバルブのダイヤフラム上のパイロット圧より大きい限り、リリーフバルブ412を開放状のままにし、換気ループ内のガスは外に通気される。換気ループ内の圧力がパイロット圧未満である場合、リリーフバルブ412は閉鎖する。したがって、パイロット圧を所望のPEEP値に設定することで、リリーフバルブは、圧力が所望のPEEPレベルになるまでガスループからガスを通気させることを可能にし、その後にそれは締め切られる。代替的な態様では、PEEPバルブをより高いかまたはより低いパイロット圧で作動させることで、バルブを通じてその呼出速度を生じさせる。
【0093】
リリーフバルブ412内のパイロット圧の可変制御は、リニアステッパモータ618をリリーフバルブアクチュエータ207内の可変オリフィスバルブとの組み合わせで使用することで実現する。ステッパモータ618は、可変オリフィスバルブの開口のサイズを制御する。オリフィスの開口が小さくなるほど、気流に対する抵抗が高くなり、周囲空気に逃れる空気ポンプ612からの気流が少なくなり、チェックバルブ616とリリーフバルブアクチュエータ207との間の圧力が大きくなる。この圧力は空気圧ライン636を経由してリリーフバルブ412に伝達される。これは、リリーフバルブパイロット圧とPEEPとの間の経験的に較正される関係をプロセッサが得ることを可能にする。実際のパイロット圧はリリーフパイロットバルブ圧センサ620により測定され、これは肺コンソールモジュールプロセッサ202によりモニタリングされ、このプロセッサは気道圧センサ206からの気道圧の測定値も受け取る。代替的な態様では、実際のパイロット圧を所望のパイロット圧と比較し、かつステッパモータの位置を変化させてそれらを同等化することでパイロット圧を制御するために、パイロット圧測定を使用する。
【0094】
システム情報表示およびシステムモニタリング
OCSモニタ300は、システムオペレータ用の主な入力および出力インターフェースである。LCD 304は、灌流溶液およびガスループに関する、対象となるリアルタイム測定値および導出値を表示する。それは電池レベルおよびガスタンクレベルなどの他のOCSサブシステムのステータスも表示する。OCS LCDディスプレイ402上に表示される情報の性質は次に説明する。これに続いて、維持モード、連続評価モードおよび逐次評価モードに対応するスクリーンショットを説明する。
【0095】
図11はLCD 304の代表的スクリーンショットであり、このスクリーンショットは維持モードに対応する。LCD 304は、気道圧センサ206により測定される肺への導入口における換気圧のリアルタイム追跡1104を示す、表示区域1102を含む。ディスプレイは換気圧読み取りの数値1106、1108も含み、分子1106は、換気サイクル全体にわたってサンプリングした最大圧力であるピーク圧値である。分母1108は最後の呼吸サイクルのPEEP値であり、PEEP値は、吐気時間の終わりに、すなわち、次のサイクルの吸入が始まる直前に気道圧をサンプリングすることで導出される。PEEPは呼吸サイクルのまさに終わりの圧力として定義されるため、サイクル中の最小圧力に対応する必要はない。例えば、システムがPEEP設定値に到達しようとする際に目標を超過するかまたは目標に達しない場合、より低い圧力がシステム内で生じることがある。さらなる数値1110、1112および1114は、登録セットポイント(sp)値、すなわちユーザーが選択する値を示す。これらの値の表示は、呼吸圧の表示される実測値と登録した所望の値とをユーザーが比較するために役立つ。値1110は、呼吸圧に関する絶対圧力上限またはクランプである、PAWPのセットポイント値を示す。一般に、換気圧波形は常にPAWPの限界未満である。先に記載のように、PEEPセットポイント1112は、呼吸サイクルの終わりの、呼出が完了した後でかつ次のサイクルの吸入圧ランプが開始する直前の、所望の呼吸圧に対応する。値1114は、吸気および呼出に関連する呼吸サイクル時間の比であるI:Eを示す。吸気期間は、肺にガスが流れることに対応する吸入時間、すなわち吸入ランプ654(図6)とプラトー時間658との両方を含む。したがって、I:E = (吸気時間 + プラトー時間) : 吐気時間である。システムは、登録した吸気時間、プラトー時間および呼吸速度からI:E値を導出する。
【0096】
LCD 304の表示区域1116は、圧力センサ115により測定される肺動脈圧(PAP)のリアルタイム追跡1118を示す。主要な値のスナップショットを示す以下のPAPの数値も示される: 肺の肺動脈供給におけるピークまたは収縮期圧1120、谷または拡張期圧1122、および平均灌流液圧1124。
【0097】
下部表示区域1126では、PAPの時間平均グラフ1128が、平均PAP値を表示する数値1130と共に表示される。LCD 304上に何を表示するかの選択はオペレーターの制御下にある。図12は構成メニュー1202を示し、維持タブ1204が選択されている。このモードでは、オペレーターは、中央グラフィック区域1116および下部グラフィック区域1126の各々にどの情報を表示するかを選択することができる。上部グラフィックフレーム1102も構成可能である(図示せず)。構成メニュー維持タブは、トリクルバルブ212を通じる維持ガス220の平均流量を設定しかつ灌流液温度を制御する能力も与える。肺換気装置の他のパラメータも維持タブメニューより制御することができる。
【0098】
LCD 304は、肺の状態およびOCSパラメータのスナップショットをシステムユーザーに与える、いくつかのさらなる数値を表示する。表示値1160は、流量センサ114により測定される、肺404への灌流液の肺流量(PF)を示す。表示値1162は、灌流液の流れに対して肺404が及ぼす抵抗の尺度である肺血管抵抗(PVR)を示す。一般に、より低いPVR値が好ましい。これは、それが肺404の脈管構造を通る灌流液のより制限の小さい流れを示すためである。記載される態様では、PVRの好都合な値は200〜400ダインの範囲である。表示値1164は、酸素センサ116により測定される灌流流体250の静脈中飽和ヘモグロビン含有量SvO2を示す。同様に、表示値1166は、酸素センサ118により測定される灌流流体250の動脈中飽和ヘモグロビン含有量SaO2を示す。ある種の態様では、SvO2およびSaO2アラームを示すアイコンが、それぞれ表示値1164および1166に隣接して、いずれかの飽和ヘモグロビン値がオペレーターが事前設定した閾値未満であるか否かをオペレーターに知らせるために表示される。そのようなアラームは任意の測定、計算または表示されるパラメータについて実行することができる。表示値1168は、灌流流体250のヘマトクリット(HCT)レベル、および任意的には、HCTレベル1168がオペレーターが事前設定した閾値未満であるか否かをオペレーターに知らせるためのHCTアラームインジケーターを示す。表示値1170は、灌流流体250がヒーターアセンブリ230から流れて離れる際の、灌流流体250の温度(Temp)1170を示す。表示値1170は、オペレーターが事前設定した範囲の外側にあるTemp 1170に応答して知らせるTempアラームインジケーターも含み得る。オペレーターが選択する温度セットポイント1171も示される。表示区域1172は、気管界面1024を経由して肺404に送達されるガスの1分当たりの呼吸(BPM)単位で測定される換気速度の数値読み取りを示す。BPM値は、気道圧センサ206からの読み取りを含む1つまたは複数の入力から導出される。さらに、オペレーターが選択するBPMセットポイント1173も表示される。表示値1174は一回換気量(TV)、すなわち各吸入中に肺404に入るガスの量を示す。
【0099】
LCD 304は、システムの循環ポンプのステータスを示す循環ポンプインジケーター1138をさらに含む。表示区域1176は、どの臓器を灌流しているかを示す臓器種類インジケーター1140、およびどの操作モードを使用しているかを示す臓器モードインジケーター1142を示す。例えば、維持モードを示すために「M」を使用する。SDカードインジケーター1144は、臓器灌流中に収集したデータを記憶するためにSDカードを使用しているか否かを示す。表示区域1146は、維持ガスの残存量を図画により示すガスタンク図1178を含む。表示区域1146は、ガス供給源中のガスの流量を示す1つまたは複数の表示数値1180も、灌流中にガスを肺404に送達する残り時間と共に含む。この残り時間は、ガス残存量およびガス流量に基づいて計算することができる。表示区域1148は、OCSコンソール100の電池の各々が充電されている程度についての図表的表現1182を示す。電池ステータス記号1184は、そのステータスが図表的表現1182で表される電池が、OCSコンソール100に電力供給するために使用されていることを示す。表示区域1150は、ユーザーインターフェースに電力供給する電池が充電されている程度についての図表的表現1186を示す。表示区域1188は、OCSモニタ300がワイヤレスで動作しているか否かを同定する。
【0100】
他の態様では、表示スクリーン304は、気管への流入口で測定される、それぞれ酸素および二酸化炭素の分画濃度(fractional concentration)であるFiO2濃度およびFiCO2濃度も示す。表示スクリーン406は、肺404の重量および弾性、肺1004を循環する灌流流体250のPH、灌流流体250中のガス成分の分圧、ならびにPEEPレベルの読み取りをさらに示すことができる。
【0101】
ここで、OCSモニタLCD 304上に表示される情報をOCS 1000の操作モードに関して説明する。先に述べたように、図11は維持モードにある肺を示し、図に表示される値は代表的なものと見なすべきである。左側のデータ列に沿って示すように、灌流液の流量は1.46l/分であり、これは生理的レベルより低いが肺を養うには十分な量である。図に示すように、SvO2値1164は92.4%であり、SaO2値1166は92.2%である。これらのレベルは、維持換気ガス220と灌流液ガスとの間の平衡に対応している。動脈中酸素レベルと静脈中酸素レベルとの差は、臓器チャンバに入る空気からの酸素化(SaO2を増加させる傾向がある)および肺による酸素の少量の消費(SaO2を低下させる傾向がある)により引き起こされる。これらの因子間のバランスは、SaO2をSvO2より高くまたは低くすることがある。一般に、維持モードを完全に確立した時点で、灌流液が肺に入りかつ肺から出る際の灌流液の酸素飽和度値は安定しており、約+/-5%の範囲内で互いに等しい。酸素を肺が消費すると、各換気サイクル中にトリクルバルブ212を経由して維持ガス220を少しずつ流すことで酸素を断続的に置き換える。グラフ1104は経時的な換気圧を示し、この圧力は、ベローズが空気を肺に押し込む際に上昇し、呼出の終わりに所望のPEEP値まで低減される。グラフは、直近の換気サイクルにわたる圧力プロファイルを示し、表示区域1172は、1分当たり呼吸数10の速度で肺が換気されることを示す。グラフ1118は、直近の換気サイクルに対応するリアルタイムPAPを示す。曲線は循環ポンプ226のパルスに対応する周期的ピークを示す。グラフ1128はPAPトレンドを示す。数値1170は、灌流液温度が摂氏35.0度であると測定され、また表示数値1171において示されるセットポイント値と等しいことを示す。保存中の肺404の代謝速度を減少させるために、そのような準生理的温度レベルを選択する。より低い代謝速度の1つの利点は、肺404の維持ガス必要量を低下させ、それにより有限量の維持ガス220によって肺をより長い時間保存することを可能にする能力である。
【0102】
図13は、システムが連続評価モードにある場合の、OCSモニタLCD 304の代表的スクリーンショットである。呼吸グラフ1302および数値1304は、維持モードについて図11に示したものと同様である。しかし、PAPグラフ1306および数値1308は13mmHgという平均圧力を示し、これは維持モード中の対応する10mmHgという圧力より相当に高い。肺のガス交換能力の試験を可能にするために、肺を通じる灌流流体のより大きい流量を実現するには、より大きい圧力が必要である。スクリーンは2.93リットル/分という流量1310を示す。このモードでは、ガス交換器402は灌流流体250を82.3%というSvO2レベル1312に脱酸素化する。肺が空気換気を使用して血液を再酸素化することで、96.1%というSaO2レベル1314を実現する。ヘマトクリットレベル1316は30%であり、灌流液温度1318は生理的値である約37.1℃に維持される。呼吸速度表示値1320は1分当たり12呼吸の速度を示し、これは安静時の個人のそれに対応している。一回換気量表示値1322は700mlという値を示し、これは十分に生理的範囲内である。OCSステータスディスプレイ1324は、OCS 1000が肺を保存していることを示す肺のグラフィック、ならびに、システムが連続評価モードにあることを示す文字AおよびCのグラフィックを示す。
【0103】
維持モードおよび連続評価モードに対応するシステムディスプレイを説明してきたが、本発明者らはここで、逐次評価モードの脱酸素化相、保持相および酸素化相をどのようにしてLCD 304上に表示するかを説明する。図14は、システムが脱酸素化相にある場合の、LCD 304の代表的スクリーンショットである。この相では、脱酸素化ガス500はガス交換器402を通過し、肺404への換気ループに入る。灌流流体250中の酸素レベルは速やかに下落する。これは、肺404とガス交換器402との両方におけるガス交換により酸素が除去されるためである。グラフ1406および1408は、脱酸素化相の開始から約1分間にわたるSaO2およびSvO2の値をそれぞれ示す。グラフ1406および1408の右端ならびに表示数値1412および1410にそれぞれ示すように、この時間中に、値は90%台前半からSaO2値64.9%およびSvO2値59.9%に下降する。したがって、生理的範囲をかなり下回る灌流液飽和度レベルは、特に肺404がガス交換器402のガス交換能力を補完する場合に、速やかに実現することができる。換気圧グラフ1402およびPAPレベルは、連続評価モードのそれと同様のものにとどまる。システムステータスディスプレイ1414は肺評価 - 脱酸素化相を文字A、Dにより表示する。脱酸素化終了閾値1416、酸素化相下限閾値1418および酸素化相上限閾値1420に関するユーザー決定値も表示される。
【0104】
図15は、逐次評価パラメータを設定するための代表的ユーザーインターフェースを示す。OCSモニタ300上のメニューボタン306を押すことで構成モード1502を選択する。ユーザーは、逐次サブモード設定メニュー1504において設定を入力および適用する。脱酸素化相の終わりと酸素化相の開始との間の時間である保持相1506、および、灌流流体250中の酸素含有量の目標最低レベルであり、すなわち、このレベルに到達する場合/際にシステムが脱酸素化を中止する脱酸素化終了閾値1508に関する、ユーザー設定可能な値が列挙される。ユーザーは、酸素化相中の灌流液SvO2の目標値である酸素化下限閾値1510、および酸素化相中の灌流液SaO2の目標値である酸素化上限閾値1512に関する値も設定する。
【0105】
脱酸素化モードの後、システムは保持相に入る。図16は、保持相に対応する代表的スクリーンショットである。保持相の目的は、灌流流体250中の酸素レベルが均一になることを可能にすることである。これが実現される程度は、灌流流体250中のSaO2およびSvO2の経時変化する値を示すグラフ1602および1604に示すことができる。両曲線の平らな部分は、飽和度レベルが一定であることを示しており、SaO2およびSvO2に関するグラフの近さは、肺404の両側での飽和度レベルの均一性を示している。表示数値1608および1606はSaO2およびSvO2の値をそれぞれ示す。図16に示すように、保持相に入って約1分のSaO2およびSvO2の測定値はそれぞれ58.9%および58.0%であり、すなわち、互いに非常に近い。
【0106】
逐次評価モードの第3相では、空気で換気している間、灌流流体250が肺404により再酸素化される。肺のガス交換能力は、灌流液プールを完全に再酸素化するために要する時間に関係している。図17は、再酸素化モードにあるシステムの代表的スクリーンショットである。グラフ1702および1704は、灌流流体250中のSaO2およびSvO2の経時変化する値を示す。左側に向かって、グラフは、先に記載の脱酸素化相の間の酸素レベルの初期低下を示す。グラフ中央の曲線の平らな部分は、約1分間続く保持相に対応している。グラフの保持相の平らな部分の右端で酸素化モードが始まる。酸素化モードへの切り替え後まもなく、グラフは上昇を開始し、これは肺を経由した灌流流体250への酸素ガス交換を示している。グラフ1702および1704ならびに表示数値1708および1706は、酸素化相に入って約80秒で、SaO2およびSvO2のレベルがそれぞれ94.6%および85.2%に上昇したことを示している。灌流流体250中のユーザーが選択する閾値酸素化レベルに到達するために要する時間は、表示値1710で示される。
【0107】
ここで、OCS 1000を構成するためのさらなるスクリーンを説明する。図18は、構成メニュー1202の評価タブ1802を示す。このスクリーンは、ユーザーが、中央グラフィックフレーム1116、下部グラフィックフレーム1126に何の情報を表示すべきかを決定すること、温度セットポイント1171を設定すること、かつ逐次または連続のどの評価モードを行うかを選ぶこと、を可能にする。タブ1802は、換気装置設定メニューおよび逐次評価サブモード設定をユーザーが選択することも可能にする。
【0108】
図19は換気装置設定メニュー1902を示す。呼吸速度1904は1分当たりの換気サイクルの数を選択する。一回換気量1906は、各呼吸において肺が吸入するガスの量を決定する。吸気時間1908は吸入相の持続時間である。ピーク気道圧(PAWP)1912は、呼吸サイクル中の最大許容ガス圧であり、ガスがベローズ418によりガスが肺404に押し込まれる間にそれは生じる。PEEP 1914は、呼出が完了した際の肺の圧力を制御する。
【0109】
図20は肺タブ2002を示し、このタブはユーザーが肺モード2004を維持または評価に設定することを可能にし、換気装置制御2006のスイッチを入れるかまたは切ることを可能にし、かつ肺設定サブメニューに対するリンク2008を与える。図21はシステムタブ2102を示し、このタブはユーザーが時間および日付、言語を設定し、かつ他のシステム動作を行うことを可能にする。他の構成タブおよび関連メニューを、ユーザーの必要に基づいて加えることができる。
【0110】
臓器ケアシステムコンソールモジュール
図22は、半据付位置(semi-installed position)にある単一用途使い捨て肺灌流モジュールを示すOCSコンソール100の全体図である。図22に大まかに示すように、単一用途使い捨て肺灌流モジュールは、OCSコンソール100に嵌合しかつそれと結合するようにサイズ決めされかつ形作られる。全体として、このユニットは米国特許出願第11/788,865号に記載の臓器ケアシステムと同様の形態を有する。着脱式肺灌流モジュール400は、回転機構によってOCSコンソール100に挿入可能であり、回転機構は、モジュール400が、図22に示すように前方から肺コンソールモジュール内に滑動した後、ユニットの後方に向けて回転することを可能にする。留め金機構2202は肺灌流モジュール400を所定の位置に固定する。代替的な態様では、モジュールをOCS 100に結合するために肺灌流モジュール400の別の構造および界面を使用する。所定の位置に固定する場合、電気接続および光学接続(図示せず)は、電力、およびOCSコンソール100と肺灌流モジュール400との間の連通を与える。電気接続および光学接続の詳細は2005年10月7日出願の米国特許出願第11/246,013号に記載されており、その明細書はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。肺灌流モジュール400の主要構成要素は、以下で詳細に説明する臓器チャンバ2204である。電池区画2206および維持ガスシリンダー220(図示せず)は、OCSコンソール100の基部に位置している。OCSコンソール100は、フロントパネル2208などの着脱式パネルにより保護されている。肺灌流モジュールの真下には灌流液サンプリングポート234および236がある。OCSコンソール100の上にはOCSモニタ300が装着されている。
【0111】
図23はOCSコンソール100の側面図である。LAサンプリングポート234およびPAサンプリングポート236は、灌流液試料を除去するための、または灌流流体250に化学薬品を注入するための手段を与える。OCSコンソール100の基部には維持ガスタンク調整器222およびゲージ2304が見える。リザーバに取り付けられかつ灌流液ポンプのドームに接続される一方向流入バルブ2306も見える。
【0112】
正面図である図24にはさらなるシステム構成要素が見える。ベローズ418は、OCSコンソールモジュール基部の真上に位置しており、肺コンソールモジュール200内の換気装置ユニット214に接続される機械的アクチュエータアーム2402により駆動される。アクチュエータアーム2402の機械的動作はベローズ418を圧縮および拡張し、これにより呼吸サイクル中に、肺404へのおよび肺404からのガス流を動かす。ガス交換器402はベローズ418の上に位置している。記載される態様では、ガス交換器402はNovalung酸素付加器である。灌流液流体ライン2404は流体ポンプ226(図示せず)とヒーター230(図示せず)とを接続する。臓器チャンバ2204の真下で、リザーバ224は灌流流体を収集し、システムを通る再循環のためにドレイン2408を経由してポンプ226に接続する。
【0113】
図25では、システムのさらなる内部構成要素を明らかにするために、OCSコンソール100の壁面が省略されている。維持ガス220は水平に配設されたシリンダー内に貯蔵されており、このシリンダーは必要な際に調整器222を経由してシステムに維持ガス220を供給する。肺灌流モジュール400を垂直な据付位置で示す。リニアアクチュエーター2402(図示せず)の末端の平らな円板と対になるベローズ駆動プレート2502がベローズ418に隣接している。
【0114】
図26は、使い捨て肺灌流モジュール400を有さないOCSコンソール100の図である。換気装置モジュール214および機械的アクチュエータアーム2402が見える。肺コンソールモジュール200の他の構成要素(図示せず)は、OCSコンソール100の左側壁に沿って装着されるモジュール内に収納されている。これらの構成要素は、図1において肺コンソールモジュール200内に示されており、コンソールモジュールコントローラ202、ガス交換器バルブ204、気道圧センサ206、リリーフバルブアクチュエータ207、空気圧制御モジュール208、ベローズバルブアクチュエータ210、トリクルバルブ212、換気装置214、ガスセレクタスイッチ216および電力変換器218を含む。空気圧コネクタ624は、対応する肺灌流モジュールコネクタ626への速やかな接続を供する。この簡便な接続は、ガス交換器402への、さらには肺404とベローズ418との間のガスループへのガス接続を与える。コネクタ624および626は、ベローズバルブ414、リリーフバルブ412を制御しかつ空気センサ206の圧力データを受け取るための、肺コンソールモジュール200と肺灌流モジュール400との間の空気圧制御接続も与える。
【0115】
図27は肺灌流モジュール400の正面図である。臓器チャンバ2204は着脱式蓋2820およびハウジング2802を含む。LAサンプリングポート234およびPAサンプリングポート236を含むサンプリングポートが臓器チャンバ2802の下に見える。ガス交換器402、ベローズ418およびベローズプレート2502も図内に見える。
【0116】
肺灌流モジュール400の構成要素について図2との関連で最初に説明した、灌流液の循環経路を、本発明者らはここで説明する。灌流液250を貯蔵する灌流液リザーバ224が臓器チャンバ2204の下に装着されている。灌流液は一方向流入バルブ2306、ライン2702およびポンプドーム2704を通じてポンプ226(図示せず)に出る。灌流液は、灌流液流体ライン2404を通じ、コンプライアンスチャンバ228を通じた後で灌流液ヒーター230にポンプ輸送される。ヒーター230を通過した後、灌流液は接続ライン2706を通過してガス交換器402に至る。灌流液はガス交換器402を出て、接続ライン2708を通じて肺動脈との界面に至る。肺静脈および左心房を経由して出た後、灌流液は以下に記載の臓器チャンバ2204の基部から排出される。これらのドレインは灌流液をリザーバ224に供給し、そこでサイクルが再度始まる。
【0117】
OCSコンソール100および肺灌流モジュール400を説明してきたが、本発明者らはここで臓器チャンバ2204を説明する。図28は臓器チャンバ2204の構成要素の分解図を示す。チャンバ2204の基部2802は、灌流流体のドレナージを容易にするように肺灌流モジュール400内に形作られかつ位置づけられる。臓器チャンバ2204は2つのドレイン、すなわち測定ドレイン2804と、測定ドレインからの溢流を受け取る主ドレイン2806とを有する。測定ドレイン2804は約0.5l/分の速度で灌流液を排出するが、この速度は1.5l/分〜4l/分という肺404を通じる灌流流体250の流量より相当に小さい。測定ドレインは、SaO2値を測定する酸素プローブ118に通じた後、リザーバ224に通じる。主ドレイン2806は酸素測定なしでリザーバ224に直接通じる。記載される態様ではパルスオキシメーターである酸素プローブ118は、灌流流体250が気泡を実質的に含まないということがなければ、灌流液中酸素レベルの正確な測定値を得ることができない。無気泡の灌流液のカラムを実現するには、肺404から排出される灌流流体250を収集して、上記ドレイン2804を収集するプールに入れるように、基部2802を形作る。灌流液プールは、灌流液がドレイン2804に入る前に気泡が消散することを可能にする。ドレイン2804の上でのプールの形成は壁面2808により促進され、この壁面は、測定ドレイン2804から主ドレイン2806への灌流液の流れを、灌流液プールがこの流れからの気泡の消散を確実にする上で十分に大きくなるまで、部分的に遮断する。主ドレイン2806は測定ドレイン2804より低い位置にあり、したがって、ドレイン2804を取り囲む陥凹を灌流液が溢流した時点で、それは壁面2808の周りを流れて主ドレイン2806から排出される。二重ドレインシステムの代替的な態様では、灌流流体を収集して、測定ドレインに対して供給を行うプールに入れるために、他のシステムを使用する。いくつかの態様では、肺からの流れは、測定ドレインに対して供給を行う小さいカップなどの容器へ方向づけられる。カップは灌流流体で満たされ、過剰な血液はカップを溢流し、主ドレインに、したがってリザーバプールに方向づけられる。この態様では、灌流液が酸素センサに向かう途中で測定ドレインに流れる前に、気泡がそこから消散可能な灌流流体の小さいプールを形成することで、カップは、先に記載の態様における壁面2808のそれと同様の機能を果たす。
【0118】
肺404は支持面2810により支持される。この表面は、肺404が下葉に対してわずかに下向きに角をなすようにして灌流液の容易なドレナージを促進しながら、過度な圧力をかけることなく肺404を支持するように設計されている。支持面は、肺404から発する灌流液を収集およびチャネル輸送するための、ならびに、測定ドレイン2804用の血液プールに灌流液を直接供給するドレイン2814に向けて灌流液を導くための、ドレナージチャネル2812を含む。肺にさらなる支持を与えるには、支持面2810上に配置する際に、肺404をポリウレタンラップ(図示せず)により包む。ポリウレタンラップは、肺404をアンカーし、肺を生理的構成に保持することに役立ち、また気管支が捻れかつ合計の膨張容積を限定することを防止する。ラップは、肺の外面用の平滑な表面を臓器チャンバ2204との界面に与えることで、望ましくない大量出血を引き起こす可能性がある、肺404の任意の部分に対する過剰な圧力を、チャンバがかけるという危険性を減少させる。ポリウレタンラップは、どれほどの容積が包まれているかを示す一連の線で印づけられている。包まれる肺の所望の容積は、肺のサイズとドナーの体重との間の経験的な関係により決定することができる。ポリウレタンラップは、肺404の周りに集まる灌流液を排出するための一連の小さな孔を有する。灌流液は支持面2810内のドレナージチャネル2812により収集され、それは灌流液をドレイン2814にチャネル輸送する。
【0119】
臓器チャンバ2204の上部は封止可能な蓋で覆われており、この蓋は正面部2816、上部2820、滅菌ドレープを有する内蓋(図示せず)、および正面部2816から上部2820までを封止する封止部2818を含む。代替的な態様では、臓器チャンバは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第11/245,957号に記載の心臓保存チャンバとの関連で開示されているものと類似している、二重蓋システムを含む。二重蓋システムは、外蓋、中間蓋、可撓膜、および蓋と臓器チャンバ壁面との間の封止枠を含む。膜は透明であることが好ましく、また医療オペレーターが、チャンバの滅菌性を維持しながら、膜を通じて肺を間接的に触り/検査するか、または膜を通じて肺に超音波プローブを適用することを可能にする。外蓋は中間蓋とは無関係に中間蓋の上で開閉する。外蓋は、間接または直接の物理的接触から肺404を保護する上で十分に強固であることが好ましい。外蓋およびチャンバは任意の好適なポリマープラスチック、例えばポリカーボネートから作製することができる。
【0120】
臓器チャンバを覆うことは、灌流流体250と周囲空気との間のガスの交換を最小化することに役立ち、また、酸素プローブが所望の酸素値、すなわちLAを経由して肺から出る灌流液に対応する値(SaO2)およびPAを経由して肺に入る灌流液に対応する値(SvO2)を測定することを確実にするために役立つ。臓器チャンバ2204の閉鎖は、肺404からの熱損失を減少させることにも役立つ。肺の大きい表面積が理由で、熱損失は相当なものとなり得る。OCS 1000を比較的低温の環境、例えば車両、またはOCS 1000を車両内におよび車両から動かす際の屋外に配置することがある場合、熱損失は肺の輸送中の重要な問題となり得る。さらに、移植前に、いずれも典型的には15〜22℃の範囲の温度を有する病院内保管区域または手術室にOCS 1000を配置することがある。そのような周囲温度では、ヒーター230が35〜37℃という所望の灌流液(および肺)温度を維持することを可能にするには、臓器チャンバ2204からの熱損失を減少させることが重要である。臓器チャンバ2204中に肺を封止することは、肺404を通じた温度の均一性を維持することにも役立つ。
【0121】
図29は、支持面2810を示すためにカバーが取り外された臓器チャンバ2204の右側面図である。灌流液ドレナージチャネル2812およびドレイン2814は灌流液をハウジング2802に運搬する。気管カニューレ700、およびOCS 1000ガスループへの接続のための気管カニューレコネクタ710も示す。図8に示すように、90°をなす二重接続管852および854を有するPAカニューレ850が気管カニューレ700の上にある。遠隔通気圧力センサ115(図示せず)が、灌流液流に、PAカニューレから肺404への流入地点で、コネクタ806、圧力トランスデューサ導管2902および圧力トランスデューサケーブル2904によって接続されている。臓器チャンバ2804の左側面図である図30では、気管カニューレ700が明らかに表示されている。気管カニューレ700は、ロックナット708によってハウジング2802の壁面に固定されている。ロックナット708に隣接して、可撓ウレタンチューブ706が臓器チャンバ2204のハウジング2802に突出しており、気管に接続されるシリコーン被覆コネクタ704に通じている。
【0122】
使用モデル
次に、肺移植のために先に記載の臓器ケアシステムを使用するための代表的モデルを、図31および32を参照して説明する。
【0123】
カニューレ挿入および輸送のために肺404を入手および準備するプロセスは、段階3100で好適な臓器ドナーを供することで始まる。臓器ドナーは供与場所に運ばれ、そこでカニューレ挿入および輸送のためにドナーの肺404を受け取りかつ準備するプロセスが、2つの交差する経路を下って進行する。経路は、ドナーの肺404を受け取るOCS 1000を準備する段階、および次にOCS 1000により肺404をレシピエント場所に輸送する段階を主に含む。特に、経路3102は、ドナーを放血させる段階、ドナーの心臓を停止させる段階、およびOCS 1000へのカニューレ挿入のために肺404を準備する段階を含む。特に、放血段階3104では、ドナーの血液を除去して取っておくことで、肺404をOCS 1000上でのそれらの維持中に灌流するためにそれを使用できるようにする。ドナーの血液が放血された後、段階3106においてドナーの心臓に心停止液を注入してその拍動を一時的に停止させ、肺404を回収するための準備をする。
【0124】
ドナーの心臓が停止した後、段階3108で肺停止液を肺に投与し、その後、段階3110で肺404をドナーから外移植し、段階3112でOCS 1000へ載せるために準備する。
【0125】
図31を引き続き参照すると、肺404をドナーの身体から外移植した後、段階3124で、肺チャンバ2204への挿入、ならびに先に記載の適切な灌流流体およびガスループ界面でのカニューレ挿入により、それらをOCS 1000上に取り付ける。
【0126】
他の例示的な態様によれば、心停止法を使用せずに肺404をドナーから直接OCS 1000に移動させることができる。特定の一実施形態では、ドナーの肺404を、ドナーの心臓を停止させることなく除去し、続いて維持のためにOCS 1000に取り付ける。
【0127】
経路3102による肺1004の準備中、OCS 1000を経路3114の段階を通じて準備することにより、それはプライミングされ、肺404の準備ができるとすぐにカニューレ挿入および輸送のために肺404を受け取るように待機する。特に、OCS 1000は経路3114において、単一用途肺灌流モジュール400を与える段階(段階3116)、維持液によりOCS 1000をプライミングする段階(段階3118)、ドナーからの血液を濾過しかつそれをリザーバ224に加える段階(段階3120)、およびOCS 1000内で灌流液を循環させかつ加温する段階(段階3122)を含む一連の段階を通じて準備される。ある種の態様では、灌流流体250は全血を含む。ある種の態様では、灌流流体250は白血球が部分的または完全に枯渇している。ある種の態様では、灌流流体250は血小板が部分的または完全に枯渇しているか、または代用血漿を含みかつ赤血球が充填されている。ある種の態様では、灌流流体添加剤としては、エピネフリンを除去している間に加えられるプロスタグランジンE、プロスタサイクリン、デキストラン、イスプレル(isuprel)、フローランおよび一酸化窒素供与体が挙げられる。一般に、添加剤は抗菌薬、血管拡張薬および抗炎症薬より選択することができる。添加剤は、リザーバ224に結合したポート234、236を経由して、または、気管カニューレ700内の界面を経由して噴霧器または気管支鏡を通じて、システム1000に送達することができる。
【0128】
段階3126では、OCS 1000は維持モードで機能するように選択される。維持モードは先に詳細に説明している。段階3126において維持モードで平衡に到達した後でかつドナー場所への輸送を承認する前に、取り付けられた肺404を段階3128において評価する。OCSユーザーは、いずれも先に記載した連続評価および/または逐次評価を選択することができる。
【0129】
段階3128で行った評価の結果に基づいて、またいくつかの場合では肺404の他のモニタリングしたパラメータに基づいて、肺404に治療および補充を与えることが望ましい(段階3130)。ドナーの肺において最も頻繁に生じる病理は虚脱または無気肺である。OCS 1000の使用は無気肺管理のいくつかの方法を与える。第一に、ため息呼吸(sign breathing)を使用して、すなわち多様な一回換気量の呼吸を肺404に取り込ませることで、肺404を再膨張させることができる。例えば、1つの技術では、最大約1000mlの一回換気量を有する第1の呼吸、続いて約100mlという低さの一回換気量を有する2回以上のより小さい呼吸を、肺404に吸入させる。第2の方法は、H2O約2cm〜H2O 15cmの範囲の値の間にPEEPレベルを調整することを含む。第3の方法では、支持面2810上に配置する際に肺404に支持を与えるために使用するポリウレタンラップにより、肺404の過度に膨張した領域を拘束する。そのような拘束は、肺の虚脱した領域を再膨張させるためのガスループ圧の賢明な適用を可能にする。第4の補充アプローチでは、I:E比を操作して、圧力プラトー658(図6)で費やす時間の量を増加させることで、ピーク圧656およびPEEPレベル652を超過することなく肺の再膨張を助ける。第五に、肺の位置を変化させるための支持面2810上での肺404の単純な操作が、有効な補充方法となり得る。第六に、肺分泌物、および気管内の肺胞デブリを、気管支鏡を使用する吸引により除去する。気管支鏡は、気管カニューレ700と肺灌流モジュール400のガス回路チューブとの間のコネクタ内のポートを経由して肺404に挿入する。第七に、呼吸サイクルの吸入相の間に、好ましくはエアロゾル形態であるサーファクタントをガスラインに注入することで、サーファクタント吸入療法を行う。
【0130】
ドナーの肺においてしばしば見られる別の病理は、単一または複数の葉において生じ得る限局性浮腫である。浮腫はPEEPレベルの操作、限外濾過による膠質浸透圧の増加、ならびに、血管拡張薬および/またはポンプ226の流量による灌流流体圧の操作により、OCS 1000上で治療することができる。
【0131】
肺炎は、ドナーの肺の別の一般的な病理であり、灌流流体250への抗菌薬の直接注入、および/または肺灌流モジュール400の換気装置システムを通じたこの薬剤の吸入により対処することができる。肺炎における別の補充技術は気管支肺胞洗浄である。
【0132】
先に論じた病理ほど頻繁には生じない気管支痙攣は、OCS 1000上で、吸入した気管支拡張薬により管理する。肺の気道に気管支拡張薬を注入するために役立つ気管支鏡を任意的に使用する。別の病理は高PAPであり、これは灌流流体250に血管拡張薬を加えることで管理する。
【0133】
いくつかの場合では、オペレーターは、肺404に対して手術を行うか、または免疫抑制処置、化学療法、遺伝子検査もしくは放射線療法などの治療的処置もしくは他の処置を与えることがある。
【0134】
一般に、補充を行っている間は肺404を維持モードに置く。評価段階3128および補充段階3130は、数回繰り返すことができ、また必要であれば最大数時間続くことがある。目標は、肺がレシピエント場所への輸送について承認されるために十分に健康であることを示す、肺404の評価を得ることである。この条件が満たされた時点で、OCS 1000は、その取り付けられた肺404と共に、レシピエント場所への輸送用の車両に荷積みされる。
【0135】
図32は、ドナー場所からレシピエント場所への輸送中のOCS 1000の代表的使用モードを示す。輸送車両に配置する前に、OCS 1000を維持モードに置く(段階3202)。次にOCS 1000を車両に配置し、行程を開始する(段階3204)。ある時間間隔の後で肺を評価する(段階3206)。第1の評価前の時間間隔は、ドナー場所で決定される肺404の状態、肺404のモニタリングされるパラメータ、および予測される行程の期間に依存する。一般に、肺404の状態が悪いほど、評価が早く行われる。肺404が悪い状態にあることを評価3206が発見する場合、治療および補充を行う(段階3210)。補充期間の後、別の評価(段階3206)を行う。肺404がある種の健康閾値を上回ることを評価段階3206が示すまで評価および補充のサイクルが続き、その後に肺404を維持モード3208に戻す。いくつかの態様では、輸送中にはさらなる評価または補充は行われない。他の態様では、さらなる評価段階、および必要であれば補充段階を輸送中に間隔を空けて行う。さらなる評価を行うか否かに関する決定は、肺404の健康についてのオペレーターの全体的評価、およびOCS 1000での評価ガスの利用可能性により左右される。レシピエント場所への到着(段階3212)により行程が完了する。
【0136】
どの形態の評価を行うかの選択は、臨床的考慮事項と技術的考慮事項との両方により決定される。臨床的観点から見れば、灌流流体250の飽和度レベルは、逐次評価よりも連続評価においての方が、生理的血中飽和度レベルに近い。他方で、灌流流体の流量は、連続評価における生理的レベルの約3分の1でしかなく、逐次評価における生理的レベルに近い。技術的な観点からは、評価方法の選択は、OCSにおいて利用可能なガスの量により制約されることがある。ドナー場所からレシピエント場所への肺404の輸送中、OCS 1000は自給式で機能する。特に、それは維持ガスおよび脱酸素化ガスのそれ自体の内部供給源に依存する。例示的な構成では、OCS 1000は脱酸素化ガス500の200リットル供給源を有する。肺の単一の逐次評価を行うには、約40リットルの脱酸素化ガスが必要である。しかし、肺の健康が悪く、ガス交換能力が損なわれている場合、逐次評価には40リットルを超える脱酸素化ガスが必要である。これは、脱酸素化相の間に灌流液中酸素レベルが目標レベルになるためにより長い時間を要するためである。したがって、脱酸素化タンクの容量により、行程中の逐次評価の回数が、肺404の状態に応じて最大5、より一般的には4以下に限定される。他方で、連続評価を行う上で、灌流流体250中の任意の目標脱酸素化レベルの実現は必要ではない。その代わり、評価は決まった時間間隔で実行され、その間、脱酸素化ガス500はガス交換器402を約10リットル/分の平均速度で流れる。例示的な例では、連続評価は2分間実施され、合計約20リットルの脱酸素化ガス500、すなわち逐次評価において消費する量の約半分を消費する。したがって、技術的立脚点から見れば、連続評価が逐次評価より好ましいことがある。所与の行程では、OCS 1000は、最大5回の逐次評価もしくは10回の連続評価、または下記式40s + 20c = 200に係る組み合わせを可能にするために十分なガスを有し、式中、sは逐次評価の回数であり、cは連続評価の回数である。
【0137】
灌流液中酸素レベルの正確な読み取りを得るには、パルスオキシメータ116および118により測定される灌流液のカラムはガス気泡を含まないべきである。先に記載のように、二重ドレインシステム2804および2806ならびにドレイン2804の上の灌流液プールは、気泡が灌流液ラインに入らないことを確実にするために役立つ。しかし OCS 1000を輸送する車両の動きは、灌流液カラムにいくつかの気泡を排出させるために十分な攪拌を引き起こすことがある。したがって、記載される態様では、評価を行っている間、車両を水平な区域に駐車する。他の態様では、血液プールをよりしっかりと制限するか、または灌流液を管に直接排出することなどにより、肺チャンバ2204、肺ハウジング2802および二重ドレインシステムを修正して、動きに対するシステムの耐性をより高くする。そのような修正は、輸送車両が動いている間であっても正確な肺評価を行うことを可能にし得る。
【0138】
図33は、OCS 1000がレシピエント場所にある間に肺404に対してさらなる試験を行うための代表的プロセスを示す。OCS 1000は肺404の別の評価(段階3302)を行う。脱酸素化ガスのさらなる供給源がレシピエント場所において利用可能なことがあり、これはドナー場所からの運送中に枯渇した可能性がある脱酸素化ガス500のOCSの供給源を補完することができる。肺404の状態が悪い場合は、治療および補充(段階3304)を行う。最終評価段階の後で、肺404が移植に好適な状態にあると評価される場合、肺404をレシピエントへの移植のために準備する。これは、ポンプ226を休止させて灌流流体250の流れを停止させることにより肺除去用にOCS 1000を構成する段階(段階3306)、および任意的に、肺停止液を肺404に投与する段階を含む。次に段階3308で、肺404からカニューレを外し、肺を肺チャンバアセンブリ2204から除去する。段階3310では、肺404のレシピエント患者への移植を、それらをレシピエントの胸部空洞に挿入し、各種の肺接続をレシピエント内のそれらの適切な対になる接続に縫合することにより行う。ある種の態様では、レシピエントの左心房の一部を切除して、ドナーの肺静脈が取り付けられているドナーの左心房カフの1つまたは複数により置き換えることができる。他の態様では、2つの肺のうち1つのみを除去する一方で、残りの肺をOCS上で灌流および換気し続ける。
【0139】
本発明を各種の例示的態様と関連させて説明してきたが、前述の説明が、添付の特許請求の範囲の範囲により定義される本発明の範囲を例示することを意図しており、それを制限することを意図しているわけではないことを理解すべきである。例えば、種々のシステムおよび/または方法を本開示に基づいて実施可能であり、それらは依然として本発明の範囲内である。他の局面、利点および修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。本明細書において引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み入れられ、本出願の一部をなす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型シャーシを含む携帯型多用途モジュールと;
多用途モジュールとの電気機械的相互操作のために単一用途使い捨てモジュールと多用途モジュールとを結合させるように適応した界面; および
肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面と、肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面とを有する肺チャンバアセンブリであって、灌流流体流の一部を灌流流体ガス含有量のセンサへ方向づけるための測定ドレインと、灌流流体流の残りの部分を受け取るための主ドレインとを含む、肺から離れる灌流流体の流れを運搬するための二重ドレインシステムを含む肺チャンバアセンブリを含む、
単一用途使い捨てモジュールと
を含む、肺ケアシステム。
【請求項2】
二重ドレインが、肺から離れる灌流流体の流れを、測定ドレインに供給するプールに収集するための容器をさらに含み、該測定ドレインのドレナージ容量が肺から離れる灌流流体の流量未満であり、容器から溢流する過剰の灌流流体が主ドレインに流れる、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
使い捨てモジュールが、灌流流体を肺に循環させるように適応したポンプをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
所定の組成を有するガスにより肺を換気するための、第2の界面に接続された換気システムをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
所定の組成が約12%の酸素を含む、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
所定の組成が約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素である、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
主ドレインと灌流流体用リザーバとの間の流体連通を与える導管をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
携帯型多用途モジュールが、使い捨てモジュールの電気制御、空気圧制御および機械制御のうち少なくとも1つを与えるための肺コンソールを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
肺コンソールが、肺の換気を制御するための換気コントローラを含む、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
換気コントローラが、肺への換気ガスの流れを引き起こすためのベローズを作動させるための機械的アクチュエータを含む、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
肺コンソールモジュールが、使い捨てモジュールにおける、肺に接続された換気ガス回路内の少なくとも1つのバルブを制御するための空気圧制御システムを含む、請求項9記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも1つのバルブが、肺とベローズとの間の換気ガス回路、すなわち肺とベローズとの間のガス接続を閉鎖するバルブのオフ位置に配設されている、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
少なくとも1つのバルブが、肺換気回路から換気ガスを通気させるためのリリーフバルブを含む、請求項11記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも1つのバルブが、換気ガス回路に換気ガスを導入するためのトリクルバルブを含む、請求項11記載のシステム。
【請求項15】
換気コントローラが、肺を換気するための複数のガスのうち1つを選択可能である、請求項9記載のシステム。
【請求項16】
複数のガスが、酸素化ガス、脱酸素化ガスおよび維持ガスを含む、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
酸素化ガスが、空気、および25%〜100%の酸素を含有するガスからなるセットより選択される、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
脱酸素化ガスが、二酸化炭素および窒素を含む、請求項16記載のシステム。
【請求項19】
脱酸素化ガスが、約6%の二酸化炭素および約94%の窒素で組成される、請求項16記載のシステム。
【請求項20】
維持ガスが、酸素、二酸化炭素および窒素を含む、請求項16記載のシステム。
【請求項21】
維持ガスが、約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素で組成される、請求項16記載のシステム。
【請求項22】
維持ガスが、多用途モジュール内に収納されたタンクから供給される、請求項16記載のシステム。
【請求項23】
携帯型多用途モジュールが、灌流流体ガス成分を制御するための灌流流体コントローラを含む、請求項8記載のシステム。
【請求項24】
灌流流体コントローラが、使い捨てモジュール内のガス交換器へのガスの流れを制御するための空気圧バルブコントローラを含み、該ガス交換器が、該ガス交換器へのガスの流れと灌流流体との間でガスを交換するように構成されている、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
ガス交換器へのガスの流れが、灌流流体から酸素を除去するための脱酸素化ガスを含む、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
脱酸素化ガスが、二酸化炭素および窒素を含む、請求項25記載のシステム。
【請求項27】
脱酸素化ガスが、約6%の二酸化炭素および約94%の窒素で組成される、請求項25記載のシステム。
【請求項28】
多用途モジュールが、肺ケアシステムのステータスを表示するためのモニタと、肺ケアシステムの操作を制御するためのユーザーインターフェースとを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項29】
表示されるステータスが、肺に入る灌流流体の酸素含有量および肺から出る灌流流体の酸素含有量のうち少なくとも1つを含む、請求項28記載のシステム。
【請求項30】
モニタが、ガスが肺に入る地点の換気ガス圧のリアルタイム追跡、灌流流体が肺動脈に入る地点に位置する圧力センサにより測定される肺の肺動脈圧のリアルタイム追跡、および肺動脈圧の時間平均グラフを表示する、請求項28記載のシステム。
【請求項31】
多用途モジュールが、肺の評価中に肺ケアシステムのステータスを表示するためのモニタと、肺ケアシステムの操作を制御するためのユーザーインターフェースとを含み、該モニタが、肺に入る灌流流体の酸素含有量のリアルタイム追跡および肺を離れる灌流流体の酸素含有量のリアルタイム追跡を表示する、請求項1記載のシステム。
【請求項32】
携帯型シャーシおよび肺コンソールを含む携帯型多用途モジュールと;
多用途モジュールとの電気機械的相互操作のために単一用途使い捨てモジュールと多用途モジュールとを結合させるように適応した界面; および
肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面と、肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面とを有する肺チャンバアセンブリを含む、
単一用途使い捨てモジュールとを含み、
該肺コンソールが、該使い捨てモジュールの灌流流体および換気ガスの、電気制御、空気圧制御および機械制御のうち少なくとも1つを与える、
肺ケアシステム。
【請求項33】
肺チャンバアセンブリが、肺から離れる灌流流体の流れを運搬するための二重ドレインシステムであって、灌流流体流の一部を灌流流体ガス含有量のセンサへ方向づけるための測定ドレインと、灌流流体流の残りの部分を受けるための主ドレインとを含む二重ドレインシステムを含む、請求項32記載のシステム。
【請求項34】
二重ドレインが、肺から離れる灌流流体の流れを、測定ドレインに供給を行うプールに収集するための容器をさらに含み、該測定ドレインのドレナージ容量が肺から離れる灌流流体の流量未満であり、容器から溢流する過剰の灌流流体が主ドレインに流れる、請求項33記載のシステム。
【請求項35】
使い捨てモジュールが、灌流流体を肺に循環させるように適応したポンプをさらに含む、請求項32記載のシステム。
【請求項36】
使い捨てモジュールが、所定の組成を有するガスにより肺を換気するための、第2の界面に接続された換気システムをさらに含む、請求項32記載のシステム。
【請求項37】
所定の組成が、約12%の酸素を含む、請求項36記載のシステム。
【請求項38】
所定の組成が、約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素である、請求項36記載のシステム。
【請求項39】
主ドレインが、灌流流体の残りの部分をリザーバへ方向づける、請求項33記載のシステム。
【請求項40】
肺コンソールが、肺の換気を制御するための換気コントローラを含む、請求項32記載のシステム。
【請求項41】
換気コントローラが、肺への換気ガスの流れを引き起こすためのベローズを作動させるための機械的アクチュエータを含む、請求項40記載のシステム。
【請求項42】
肺コンソールモジュールが、使い捨てモジュールにおける、肺に接続された換気ガス回路内の少なくとも1つのバルブを制御するための空気圧制御システムを含む、請求項40記載のシステム。
【請求項43】
少なくとも1つのバルブが、肺とベローズとの間の換気ガス回路、すなわち肺とベローズとの間の流体接続を閉鎖するバルブのオフ位置に配設されている、請求項42記載のシステム。
【請求項44】
少なくとも1つのバルブが、肺換気回路から換気ガスを通気させるためのリリーフバルブを含む、請求項42記載のシステム。
【請求項45】
少なくとも1つのバルブが、換気ガス回路に換気ガスを送達するためのトリクルバルブを含む、請求項42記載のシステム。
【請求項46】
換気コントローラが、肺を換気するための複数のガスのうち1つを選択するように構成されている、請求項40記載のシステム。
【請求項47】
複数のガスが、酸素化ガス、脱酸素化ガスおよび維持ガスを含む、請求項46記載のシステム。
【請求項48】
酸素化ガスが、空気、および25%〜100%の酸素を含有するガスからなるセットより選択される、請求項47記載のシステム。
【請求項49】
脱酸素化ガスが、二酸化炭素および窒素を含む、請求項47記載のシステム。
【請求項50】
脱酸素化ガスが、約6%の二酸化炭素および約94%の窒素で組成される、請求項47記載のシステム。
【請求項51】
維持ガスが、酸素、二酸化炭素および窒素を含む、請求項47記載のシステム。
【請求項52】
維持ガスが、約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素で組成される、請求項47記載のシステム。
【請求項53】
維持ガスが、多用途モジュール内に収納されたタンクから供給される、請求項47記載のシステム。
【請求項54】
肺コンソールが、灌流流体ガス成分を制御するための灌流流体コントローラを含む、請求項32記載のシステム。
【請求項55】
灌流流体コントローラが、使い捨てモジュール内のガス交換器へのガスの流れを制御するための空気圧バルブコントローラを含み、該ガス交換器が、該ガス交換器へのガスの流れと灌流流体との間でガスを交換するように構成されている、請求項54記載のシステム。
【請求項56】
ガス交換器へのガスの流れが、灌流流体から酸素を除去するための脱酸素化ガスを含む、請求項55記載のシステム。
【請求項57】
脱酸素化ガスが、二酸化炭素および窒素を含む、請求項56記載のシステム。
【請求項58】
脱酸素化ガスが、約6%の二酸化炭素および約94%の窒素で組成される、請求項56記載のシステム。
【請求項59】
多用途モジュールが、肺ケアシステムのステータスを表示するためのモニタと、肺ケアシステムの操作を制御するためのユーザーインターフェースとを含む、請求項32記載のシステム。
【請求項60】
表示されるステータスが、肺に入る灌流流体の酸素含有量および肺から出る灌流流体の酸素含有量のうち少なくとも1つを含む、請求項59記載のシステム。
【請求項61】
モニタが、ガスが肺に入る地点の換気ガス圧のリアルタイム追跡、灌流流体が肺動脈に入る地点に位置する圧力センサにより測定される肺の肺動脈圧のリアルタイム追跡、および肺動脈圧の時間平均グラフを表示する、請求項59記載のシステム。
【請求項62】
多用途モジュールが、肺の評価中に肺ケアシステムのステータスを表示するためのモニタと、肺ケアシステムの操作を制御するためのユーザーインターフェースとを含み、該モニタが、肺に入る灌流流体の酸素含有量のリアルタイム追跡および肺を離れる灌流流体の酸素含有量のリアルタイム追跡を表示する、請求項32記載のシステム。
【請求項63】
シャーシを含む多用途モジュールと;
多用途モジュールへの取り付けに適応した界面;
肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面と、肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面とを有する肺チャンバアセンブリ; ならびに
肺チャンバアセンブリから灌流流体を排出するためのドレインシステムであって、測定導管および主ドレイン導管を含み、該測定導管が灌流流体ガス含有量を測定するように適応したセンサへ灌流流体の流れをさらに方向づけるドレインシステムを含む、
単一用途使い捨てモジュールと
を含む、肺ケアシステム。
【請求項64】
測定導管が、センサによるガス含有量測定に好適な条件に灌流流体を配置するように適応している、請求項63記載のシステム。
【請求項65】
灌流流体ガス含有量が酸素含有量である、請求項63記載のシステム。
【請求項66】
センサがパルスオキシメータである、請求項63記載のシステム。
【請求項67】
多用途モジュールへの取り付けに適応した界面、および
肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面とを有する肺チャンバアセンブリを含む、
単一用途使い捨てモジュールと;
肺チャンバアセンブリから灌流流体の流れを排出するためのドレインシステムであって、測定導管および主ドレイン導管を含み、該測定導管が灌流流体ガス含有量を測定するように適応したセンサへ灌流流体の流れをさらに方向づけるドレインシステムと
を含む、肺ケアモジュール。
【請求項68】
ガスにより肺を換気するための、第2の界面に接続された換気システムをさらに含む、請求項67記載のモジュール。
【請求項69】
ガスが各々所定の組成を有する複数のガスより選択可能である、請求項68記載のモジュール。
【請求項70】
複数のガスが、維持ガス、評価ガスおよび空気を含む、請求項69記載のモジュール。
【請求項71】
維持ガスの所定の組成が、約12%の酸素を含む、請求項70記載のモジュール。
【請求項72】
維持ガスの所定の組成が、約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素である、請求項70記載のモジュール。
【請求項73】
換気システムが、ある量の維持ガスを肺に再呼吸させるように構成され得る、請求項68記載のモジュール。
【請求項74】
換気システムが隔離量区画を含み、かつ前記量の維持ガスが肺と隔離量区画との間でサイクルされる、請求項73記載のモジュール。
【請求項75】
換気システムがベローズを含み、かつ該ベローズを作動させることで前記量の維持ガスが肺とベローズとの間でサイクルされる、請求項73記載のモジュール。
【請求項76】
換気システムが、トリクルバルブを経由する維持ガスの外部供給源への接続を含み、該トリクルバルブが、換気システム内にガスを放出することで換気システム内の維持ガスの所定の組成を維持する、請求項73記載のモジュール。
【請求項77】
換気システムが、肺中の最小ガス圧を維持するリリーフバルブをさらに含む、請求項68記載のモジュール。
【請求項78】
評価ガスの所定の組成が、約6%の二酸化炭素を含む、請求項70記載のモジュール。
【請求項79】
評価ガスの所定の組成が、約4〜7%の二酸化炭素および約93〜97%の窒素を含む、請求項70記載のモジュール。
【請求項80】
第2の界面が気管カニューレを含む、請求項67記載のモジュール。
【請求項81】
気管カニューレが、気管に挿入するための気管挿入部と、可撓部と、肺チャンバアセンブリに気管カニューレを固定するためのロック機構と、換気装置コネクタ部とを含む、請求項80記載のモジュール。
【請求項82】
気管挿入部が約0.65インチ〜0.95インチの直径を有する、請求項81記載のモジュール。
【請求項83】
可撓部をクランプすることで、肺へのおよび肺からのガス流を封鎖することができる、請求項81記載のモジュール。
【請求項84】
灌流流体を肺へおよび肺から離れるよう流すように適応したポンプをさらに含む、請求項67記載のモジュール。
【請求項85】
灌流流体の温度を生理的レベル近くに維持するために灌流流体と熱接触するヒーターをさらに含む、請求項84記載のモジュール。
【請求項86】
前記温度が約30℃〜37℃である、請求項85記載のモジュール。
【請求項87】
前記温度が約34℃〜37℃である、請求項85記載のモジュール。
【請求項88】
少なくとも1つのガス供給源および灌流流体と流体連通するガス交換装置であって、灌流流体中の第1のガス成分の組成を制御可能に調節するように適応したガス交換装置をさらに含む、請求項84記載のモジュール。
【請求項89】
灌流流体中のガス成分の組成を調節するために複数のガス供給源より選択するためのガス選択スイッチをさらに含む、請求項88記載のモジュール。
【請求項90】
第1の界面が肺動脈カニューレを含む、請求項84記載のモジュール。
【請求項91】
肺動脈カニューレが、肺動脈への挿入のための挿入管と、挿入管に接続したコネクタ部と、肺への灌流流体の流れを運搬する回路への接続のためにコネクタ部に接続した主管部とを含む、請求項90記載のモジュール。
【請求項92】
肺動脈カニューレが、肺への灌流流体の流入地点の近くに圧力トランスデューサを位置づけるために、挿入管の近くにコネクタ部のルーメンへの開口を画定する圧力トランスデューサコネクタをさらに含む、請求項91記載のモジュール。
【請求項93】
圧力トランスデューサコネクタが、圧力トランスデューサが遠隔通気されるように、チャネルをさらに与える、請求項92記載のモジュール。
【請求項94】
肺動脈カニューレが2つの挿入管を含む、請求項92記載のモジュール。
【請求項95】
挿入管が、肺動脈カニューレの主軸から約15°〜90°の角度で隔てられている、請求項92記載のモジュール。
【請求項96】
灌流流体が肺からドレインシステムに流れることを可能にするために、肺の左心房カフが肺チャンバアセンブリに露出される、請求項67記載のモジュール。
【請求項97】
使い捨てモジュールが、左心房カフと、肺からドレインシステムへ灌流流体を方向づけるカニューレとの間の接続をさらに含む、請求項67記載のモジュール。
【請求項98】
肺チャンバアセンブリが、ハウジング、支持面および開閉式蓋を含む、請求項67記載のモジュール。
【請求項99】
前記支持面が、肺から流れる灌流流体を排出するためのドレインおよびドレナージチャネルを画定する、請求項98記載のモジュール。
【請求項100】
前記支持面が、肺に支持を供しかつ肺をアンカーするために可撓ラップを固定するように構成されている、請求項98記載のモジュール。
【請求項101】
可撓ラップがポリウレタンを含む、請求項98記載のモジュール。
【請求項102】
少なくとも1つのハウジングドレインを含む底面、および壁面を有するハウジングと;
肺を支持するための支持面であって、肺から出る灌流流体を排出するためのドレイン、およびドレインに通じるドレナージチャネルを画定する支持面と;
ハウジングの壁面への封止可能な接続を与える開閉式蓋と;
肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と;
肺の換気を可能にするための第2の界面と;
肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面と
を含む、肺チャンバアセンブリ。
【請求項103】
ハウジングが、肺から離れる灌流流体の流れを運搬するためのドレインシステムであって、灌流流体流の一部を灌流流体ガス含有量のセンサへ方向づけるための測定ドレインと、灌流流体流の残りの部分を受けるための主ドレインとを含むドレインシステムを含む、請求項102記載のアセンブリ。
【請求項104】
ドレインシステムが、肺から離れる灌流流体の流れを、測定ドレインに供給するプールに収集するための領域をさらに含み、該測定ドレインが、肺から離れる灌流流体の流量未満のドレナージ容量を有する、請求項103記載のアセンブリ。
【請求項105】
前記領域から溢流する灌流流体の流れが主ドレインに流れる、請求項104記載のアセンブリ。
【請求項106】
ドレインシステムが、測定ドレインを部分的に取り囲む壁面であって、測定ドレインから主ドレインへの灌流流体の流れを部分的に遮断し、測定ドレインの上側での灌流流体のプールの形成を促進する壁面をさらに含む、請求項103記載のアセンブリ。
【請求項107】
第1の界面が肺動脈カニューレを含み、該カニューレの近位部が灌流流体回路に接続され、かつ該カニューレの遠位部が肺の肺動脈に接続される、請求項102記載のアセンブリ。
【請求項108】
ハウジングの壁面が、肺カニューレの外面をハウジングに封止可能に係合するための開口を画定する、請求項107記載のアセンブリ。
【請求項109】
肺動脈カニューレが、該カニューレの遠位端の近くに該カニューレのルーメンへの開口を画定する圧力トランスデューサコネクタをさらに含む、請求項107記載のアセンブリ。
【請求項110】
圧力トランスデューサコネクタが、カニューレ内の圧力トランスデューサが遠隔通気されるように、チャネルを与える、請求項109記載のアセンブリ。
【請求項111】
肺動脈への灌流流体の流入地点の近くに位置づけられる圧力トランスデューサであって、圧力トランスデューサコネクタおよび圧力トランスデューサ導管を通過する圧力トランスデューサケーブルにより外部コントローラに接続される圧力トランスデューサをさらに含む、請求項109記載のアセンブリ。
【請求項112】
ハウジングの壁面が、圧力トランスデューサ導管の外面を封止可能に係合するための開口を画定する、請求項111記載のアセンブリ。
【請求項113】
第2の界面が、気管への挿入のための遠位挿入部と、肺を換気するためにガス回路に接続するための近位コネクタ部と、コネクタ部に隣接するロック機構とを有する気管カニューレを含む、請求項102記載のアセンブリ。
【請求項114】
ハウジングの壁面が、気管カニューレロック機構をハウジングに封止可能に係合するための開口を画定する、請求項113記載のアセンブリ。
【請求項115】
気管挿入部が、約0.65インチ〜0.95インチの直径を有する、請求項113記載のアセンブリ。
【請求項116】
挿入部が、遠位端および近位端に、挿入部の直径より約0.2大きい直径を有するリブによって連結している、請求項113記載のアセンブリ。
【請求項117】
第3の界面が、灌流流体が肺から支持面ドレインに流れることを可能にするために肺チャンバアセンブリに露出される左心房カフを含む、請求項102記載のアセンブリ。
【請求項118】
第3の界面が、左心房カフとカニューレとの間の接続を含む、請求項102記載のアセンブリ。
【請求項119】
カニューレが、灌流流体を灌流ガス含有量センサへおよびリザーバへ方向づける導管と流体連通している、請求項118記載のアセンブリ。
【請求項120】
カニューレが、灌流流体を支持面ドレインへ方向づける、請求項118記載のアセンブリ。
【請求項121】
カニューレが、カニューレと左心房カフとの間の小さい接触面積を実現するためのケージ状構造を有する、請求項118記載のアセンブリ。
【請求項122】
カニューレが、左心房カフを開放状に保持するように構成されている、請求項17記載のアセンブリ。
【請求項123】
カニューレが、カニューレ内に位置づけられる圧力トランスデューサに接続するためのルーメンおよびコネクタをさらに含む、請求項17記載のアセンブリ。
【請求項124】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階;
肺と可変量チャンバとの間で捕集量(captive volume)の換気ガスを行ったり来たり流すことで気管界面を通じて肺を換気する段階; および
換気ガスのさらなる流れを捕集量に導入しかつ捕集量から過剰の換気ガスを通気させることで、換気ガスの所定の組成を維持しかつ捕集量の最小ガス圧を維持する段階
を含む、エクスビボで肺を保存する方法。
【請求項125】
換気ガスが、酸素、二酸化炭素および不活性ガスの組成物を含む、請求項124記載の方法。
【請求項126】
不活性ガスが窒素である、請求項125記載の方法。
【請求項127】
灌流流体のガス含有量が、換気ガスの所定の組成に対応する平衡レベルに到達する、請求項124記載の方法。
【請求項128】
換気ガスの所定の組成が、約5〜20%の酸素および約2〜10%の二酸化炭素を含む、請求項124記載の方法。
【請求項129】
灌流流体のガス含有量が、約88%〜98%のヘモグロビン飽和度レベルを有する平衡レベルに到達する、請求項128記載の方法。
【請求項130】
換気ガスの所定の組成が、約12%の酸素および約5.5%の二酸化炭素を含む、請求項124記載の方法。
【請求項131】
肺に入る灌流流体のヘモグロビン飽和度レベルが約90〜95%の平衡レベルに到達し、かつ肺を離れる灌流流体のヘモグロビン飽和度レベルが約90〜95%の平衡レベルに到達する、請求項127記載の方法。
【請求項132】
肺に入る灌流流体の酸素含有量が生理的レベルよりも低く、かつ肺を離れる灌流流体の酸素含有量が生理的レベルよりも高い、請求項124記載の方法。
【請求項133】
換気ガスのさらなる流れが1分当たり約400〜600mLである、請求項124記載の方法。
【請求項134】
捕集量が約400〜1200mLである、請求項124記載の方法。
【請求項135】
捕集量の最小ガス圧が、H2O約4〜8cmである、請求項124記載の方法。
【請求項136】
換気ガスの最大圧が、H2O約12〜22cmである、請求項124記載の方法。
【請求項137】
過剰の換気ガスが、捕集量と連通するリリーフバルブを通じて通気される、請求項124記載の方法。
【請求項138】
可変量チャンバがベローズを含む、請求項124記載の方法。
【請求項139】
ベローズを圧縮することで肺への換気ガスの流れを引き起こす段階をさらに含む、請求項138記載の方法。
【請求項140】
ベローズと肺との間を流れる換気ガスの量が、ベローズの圧縮ストロークの大きさにより決定される、請求項139記載の方法。
【請求項141】
肺からの換気ガスの流れが肺の収縮により引き起こされる、請求項124記載の方法。
【請求項142】
肺動脈界面が肺動脈カニューレを含み、該肺動脈カニューレの一部が肺の肺動脈に挿入される、請求項124記載の方法。
【請求項143】
灌流流体が、露出した左心房カフを通じて肺から離れるよう流れる、請求項124記載の方法。
【請求項144】
左心房界面が肺の左心房と左心房カニューレとの間の封止された接続を含む、請求項124記載の方法。
【請求項145】
気管界面が気管カニューレを含み、該気管カニューレの一部が肺の気管に挿入される、請求項124記載の方法。
【請求項146】
灌流流体が生理的温度近くに維持される、請求項124記載の方法。
【請求項147】
肺に流れる灌流流体中の酸素含有量の第1のレベルおよび肺から流れ出す灌流流体中の酸素含有量の第2のレベルを測定する段階をさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項148】
灌流流体中のヘモグロビンの酸素飽和度のレベルおよび肺に流れる灌流流体中の酸素の分圧のうち少なくとも1つを測定する段階をさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項149】
灌流流体中のヘモグロビンの酸素飽和度のレベルおよび肺から流れ出す灌流流体中の酸素の分圧のうち少なくとも1つを測定する段階をさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項150】
灌流流体が血液製剤を含む、請求項124記載の方法。
【請求項151】
灌流流体において白血球が少なくとも部分的に枯渇している、請求項150記載の方法。
【請求項152】
灌流流体において血小板が少なくとも部分的に枯渇している、請求項151記載の方法。
【請求項153】
灌流流体が全血を含む、請求項124記載の方法。
【請求項154】
灌流中に肺に1つまたは複数の治療薬を送達する段階をさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項155】
1つまたは複数の治療薬が、抗菌薬、血管拡張薬および抗炎症薬より選択される、請求項154記載の方法。
【請求項156】
1つまたは複数の治療薬が、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、デキストラン、イスプレル(isuprel)、フローランおよび一酸化窒素供与体からなる群より選択される、請求項154記載の方法。
【請求項157】
1つまたは複数の治療薬が、気管界面を通じ、噴霧器および気管支鏡のうち1つを通じて送達される、請求項154記載の方法。
【請求項158】
肺の灌流を開始する前に、灌流流体中の酸素含有量の所望のレベルを確立する段階をさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項159】
灌流流体中の酸素含有量の所望のレベルが、約88%〜98%のヘモグロビン飽和度レベルに対応する、請求項158記載の方法。
【請求項160】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階;
肺と可変量チャンバとの間で捕集量の換気ガスを行ったり来たり流すことで気管界面を通じて肺を換気する段階;
さらなる量の換気ガスを捕集量に導入しかつ捕集量から過剰の換気ガスを通気させることで、換気ガスの所定の組成を維持しかつ捕集量の最小ガス圧を維持する段階を含み、
該換気ガスの成分と該灌流流体との間の肺内でのガス交換が、該灌流流体中の対応するガス成分を平衡値に到達させる、
エクスビボで肺を保存する方法。
【請求項161】
換気ガスの成分が、酸素および二酸化炭素のうち少なくとも1つである、請求項160記載の方法。
【請求項162】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させるための灌流流体回路と;
気管界面を通じて肺を換気するための換気回路であって、肺と可変量チャンバとの間で捕集量の換気ガスを行ったり来たり流すように適応した換気回路と;
さらなる量の換気ガスを捕集量に導入するための、換気回路と流体連通したトリクルバルブと;
捕集量から過剰の換気ガスを通気させかつ捕集量の最小ガス圧を維持するための、換気回路と流体連通したリリーフバルブとを含み、
換気ガスの成分と灌流流体との間の肺内でのガス交換が、灌流流体中の対応するガス成分を平衡値に到達させる、
エクスビボで肺を保存するためのシステム。
【請求項163】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させるための手段と;
気管界面を通じて肺を換気するための手段であって、換気回路が肺と可変量チャンバとの間で捕集量の換気ガスを行ったり来たり流すように適応した手段と;
さらなる量の換気ガスを捕集量に導入するための手段と;
捕集量から過剰の換気ガスを通気させかつ捕集量の最小ガス圧を維持するための手段とを含み、
換気ガスの成分と灌流流体との間の肺内でのガス交換が、灌流流体中の対応するガス成分を平衡値に到達させる、
エクスビボで肺を保存するためのシステム。
【請求項164】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階;
気管界面を通じて換気ガスを流すことで肺を換気する段階;
灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化する段階; および
灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値に到達するまで酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化する段階を含み、
灌流流体中の酸素含有量を酸素含有量の第1の値から酸素含有量の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断することができる、
肺を診断する方法。
【請求項165】
灌流流体が、CO2を含む脱酸素化ガスにより肺を換気することで脱酸素化される、請求項164記載の方法。
【請求項166】
脱酸素化ガスが約6%のCO2を含む、請求項165記載の方法。
【請求項167】
灌流流体が、ガス交換装置に灌流流体を循環させることで脱酸素化され、該ガス交換装置は、CO2およびN2を含む脱酸素化ガスと流体連通しており、脱酸素化ガスと灌流流体との間のガス交換により灌流流体から酸素を除去する、請求項164記載の方法。
【請求項168】
脱酸素化ガスが、約6%のCO2および約94%のN2を含む、請求項167記載の方法。
【請求項169】
灌流流体が、CO2およびN2を含む脱酸素化ガスにより肺を換気することで脱酸素化される、請求項164記載の方法。
【請求項170】
灌流流体が赤血球を含有し、かつ灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値が赤血球の約73%飽和度に対応する、請求項164記載の方法。
【請求項171】
灌流流体が赤血球を含有し、かつ灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値が赤血球の約93%飽和度に対応する、請求項164記載の方法。
【請求項172】
酸素化ガスが、空気である、請求項164記載の方法。
【請求項173】
酸素化ガスが、約25%〜100%の酸素を含有する、請求項164記載の方法。
【請求項174】
灌流流体が、1分当たり約1.5リットルの速度で灌流回路を流れる、請求項164記載の方法。
【請求項175】
肺を輸送している間に肺を診断する、請求項164記載の方法。
【請求項176】
灌流流体が、生理的温度近くに維持される、請求項164記載の方法。
【請求項177】
灌流流体が、血液製剤を含む、請求項164記載の方法。
【請求項178】
灌流流体において、白血球が少なくとも部分的に枯渇している、請求項177記載の方法。
【請求項179】
灌流流体において、血小板が少なくとも部分的に枯渇している、請求項177記載の方法。
【請求項180】
灌流流体が全血を含む、請求項164記載の方法。
【請求項181】
灌流中に肺に1つまたは複数の治療薬を送達する段階をさらに含む、請求項164記載の方法。
【請求項182】
1つまたは複数の治療薬が抗菌薬、血管拡張薬および抗炎症薬より選択される、請求項181記載の方法。
【請求項183】
1つまたは複数の治療薬が、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、デキストラン、イスプレル、フローランおよび一酸化窒素供与体からなる群より選択される、請求項181記載の方法。
【請求項184】
1つまたは複数の治療薬が、気管界面を通じ、噴霧器および気管支鏡のうち1つを通じて送達される、請求項181記載の方法。
【請求項185】
灌流流体の酸素含有量を測定することで、灌流流体中の酸素含有量の第1および第2の所定の値に到達する時間を決定する段階をさらに含む、請求項164記載の方法。
【請求項186】
パルスオキシメータを使用して灌流流体中の赤血球の飽和度レベルを決定することで、灌流流体の酸素含有量を測定する、請求項185記載の方法。
【請求項187】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させるためのエクスビボ灌流回路と;
気管界面を通じて肺にかつ肺から換気ガスを流すための換気回路とを含み、
灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化し、かつ灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値に到達するまで酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化するように構成されており、かつ灌流流体中の酸素含有量を酸素含有量の第1の値から酸素含有量の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断するようにさらに構成されている、
肺を診断するためのシステム。
【請求項188】
CO2およびN2を含む脱酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を脱酸素化するように構成されている、請求項187記載のシステム。
【請求項188】
換気回路がガス交換装置をさらに含み、かつシステムが、CO2およびN2を含む脱酸素化ガスをガス交換装置に通過させている間に灌流流体をガス交換装置に循環させることで灌流流体を脱酸素化するように構成されており、ガス交換装置が、脱酸素化ガスと灌流流体との間のガス交換により灌流流体から酸素を除去するように適応している、請求項187記載のシステム。
【請求項189】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させるための手段と;
気管界面を通じて肺にかつ肺から換気ガスを流すための手段とを含み、
灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化し、かつ灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値に到達するまで酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化するように構成されており、かつ灌流流体中の酸素含有量を酸素含有量の第1の値から酸素含有量の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断するようにさらに構成されている、
肺を診断するためのシステム。
【請求項190】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させるためのエクスビボ灌流回路と;
気管界面を通じて肺にかつ肺から換気ガスを流すための換気回路と
を含む、肺ケアシステムであって、
肺維持モードおよび肺診断モードを含み、
肺維持モードが、肺と可変量チャンバとの間で捕集量の換気ガスを行ったり来たり流すことで気管界面を通じて肺を換気するように構成されており、かつ
診断モードが:
灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化し;
灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値に到達するまで酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化し; かつ
灌流流体中の酸素含有量を酸素含有量の第1の値から酸素含有量の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断するように構成されている、
肺ケアシステム。
【請求項191】
エクスビボ灌流回路内に肺を位置づける段階;
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ肺静脈を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階;
灌流流体から酸素を除去するガス交換器に灌流流体を循環させる段階;
気管界面を通じて換気ガスを流すことで肺を換気する段階;
灌流流体が肺を離れた後、灌流回路内のある地点で灌流流体中の酸素飽和度の第1の値を測定する段階; および
酸素飽和度の第1の値に基づいて肺の状態を判断する段階
を含む、肺を診断する方法。
【請求項192】
肺の状態を判断する段階が、酸素飽和度の第1の値と換気ガス中の吸気酸素の画分との間の比を決定することを含む、請求項191記載の方法。
【請求項193】
肺動脈界面の近くの灌流回路内のある地点で灌流流体中の酸素飽和度の第2の値を測定する段階; および
酸素飽和度の第1の値と第2の値との間の差に基づいて肺の状態を判断する段階
をさらに含む、請求項191記載の方法。
【請求項194】
換気ガスが空気である、請求項191記載の方法。
【請求項195】
換気ガスが25%〜100%の酸素を含有する、請求項191記載の方法。
【請求項196】
灌流流体が、1分当たり約1.5リットルの速度で灌流回路を流れる、請求項191記載の方法。
【請求項197】
エクスビボ灌流回路内に肺を位置づける段階;
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ肺静脈を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階;
気管界面を通じて換気ガスを流すことで肺を換気する段階;
灌流流体中の酸素飽和度の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化する段階;
灌流流体中の酸素飽和度の所定の第2の値に到達するまで空気により肺を換気することで灌流流体を再酸素化する段階; および
灌流流体中の酸素飽和度レベルを酸素飽和度の第1の値から酸素飽和度の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断する段階
を含む、肺を診断する方法。
【請求項198】
灌流流体が、CO2およびN2を含む換気ガスにより肺を換気することで脱酸素化される、請求項197記載の方法。
【請求項199】
換気ガスが、約5.5%のCO2および94.5%のN2を含む、請求項198記載の方法。
【請求項200】
灌流流体が、ガス交換装置に灌流流体を循環させることで脱酸素化され、該ガス交換装置は、CO2およびN2を含む換気ガスと流体連通しており、換気ガスと灌流流体との間のガス交換により灌流流体中の酸素の組成を調節する、請求項197記載の方法。
【請求項201】
換気ガスが、約5.5%のCO2および94.5%のN2を含む、請求項200記載の方法。
【請求項202】
酸素飽和度の所定の第1の値が約77%の酸素である、請求項200記載の方法。
【請求項203】
酸素飽和度の所定の第2の値が約97%である、請求項200記載の方法。
【請求項204】
エクスビボで肺を保存または診断するための、請求項1、32、63、162、163、187、189または190記載の肺ケアシステムの使用。
【請求項205】
エクスビボで肺を保存または診断するための、請求項67記載のモジュールの使用。
【請求項206】
エクスビボで肺を保存または診断するための、請求項102記載のアセンブリの使用。
【請求項1】
携帯型シャーシを含む携帯型多用途モジュールと;
多用途モジュールとの電気機械的相互操作のために単一用途使い捨てモジュールと多用途モジュールとを結合させるように適応した界面; および
肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面と、肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面とを有する肺チャンバアセンブリであって、灌流流体流の一部を灌流流体ガス含有量のセンサへ方向づけるための測定ドレインと、灌流流体流の残りの部分を受け取るための主ドレインとを含む、肺から離れる灌流流体の流れを運搬するための二重ドレインシステムを含む肺チャンバアセンブリを含む、
単一用途使い捨てモジュールと
を含む、肺ケアシステム。
【請求項2】
二重ドレインが、肺から離れる灌流流体の流れを、測定ドレインに供給するプールに収集するための容器をさらに含み、該測定ドレインのドレナージ容量が肺から離れる灌流流体の流量未満であり、容器から溢流する過剰の灌流流体が主ドレインに流れる、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
使い捨てモジュールが、灌流流体を肺に循環させるように適応したポンプをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
所定の組成を有するガスにより肺を換気するための、第2の界面に接続された換気システムをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
所定の組成が約12%の酸素を含む、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
所定の組成が約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素である、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
主ドレインと灌流流体用リザーバとの間の流体連通を与える導管をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
携帯型多用途モジュールが、使い捨てモジュールの電気制御、空気圧制御および機械制御のうち少なくとも1つを与えるための肺コンソールを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
肺コンソールが、肺の換気を制御するための換気コントローラを含む、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
換気コントローラが、肺への換気ガスの流れを引き起こすためのベローズを作動させるための機械的アクチュエータを含む、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
肺コンソールモジュールが、使い捨てモジュールにおける、肺に接続された換気ガス回路内の少なくとも1つのバルブを制御するための空気圧制御システムを含む、請求項9記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも1つのバルブが、肺とベローズとの間の換気ガス回路、すなわち肺とベローズとの間のガス接続を閉鎖するバルブのオフ位置に配設されている、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
少なくとも1つのバルブが、肺換気回路から換気ガスを通気させるためのリリーフバルブを含む、請求項11記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも1つのバルブが、換気ガス回路に換気ガスを導入するためのトリクルバルブを含む、請求項11記載のシステム。
【請求項15】
換気コントローラが、肺を換気するための複数のガスのうち1つを選択可能である、請求項9記載のシステム。
【請求項16】
複数のガスが、酸素化ガス、脱酸素化ガスおよび維持ガスを含む、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
酸素化ガスが、空気、および25%〜100%の酸素を含有するガスからなるセットより選択される、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
脱酸素化ガスが、二酸化炭素および窒素を含む、請求項16記載のシステム。
【請求項19】
脱酸素化ガスが、約6%の二酸化炭素および約94%の窒素で組成される、請求項16記載のシステム。
【請求項20】
維持ガスが、酸素、二酸化炭素および窒素を含む、請求項16記載のシステム。
【請求項21】
維持ガスが、約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素で組成される、請求項16記載のシステム。
【請求項22】
維持ガスが、多用途モジュール内に収納されたタンクから供給される、請求項16記載のシステム。
【請求項23】
携帯型多用途モジュールが、灌流流体ガス成分を制御するための灌流流体コントローラを含む、請求項8記載のシステム。
【請求項24】
灌流流体コントローラが、使い捨てモジュール内のガス交換器へのガスの流れを制御するための空気圧バルブコントローラを含み、該ガス交換器が、該ガス交換器へのガスの流れと灌流流体との間でガスを交換するように構成されている、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
ガス交換器へのガスの流れが、灌流流体から酸素を除去するための脱酸素化ガスを含む、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
脱酸素化ガスが、二酸化炭素および窒素を含む、請求項25記載のシステム。
【請求項27】
脱酸素化ガスが、約6%の二酸化炭素および約94%の窒素で組成される、請求項25記載のシステム。
【請求項28】
多用途モジュールが、肺ケアシステムのステータスを表示するためのモニタと、肺ケアシステムの操作を制御するためのユーザーインターフェースとを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項29】
表示されるステータスが、肺に入る灌流流体の酸素含有量および肺から出る灌流流体の酸素含有量のうち少なくとも1つを含む、請求項28記載のシステム。
【請求項30】
モニタが、ガスが肺に入る地点の換気ガス圧のリアルタイム追跡、灌流流体が肺動脈に入る地点に位置する圧力センサにより測定される肺の肺動脈圧のリアルタイム追跡、および肺動脈圧の時間平均グラフを表示する、請求項28記載のシステム。
【請求項31】
多用途モジュールが、肺の評価中に肺ケアシステムのステータスを表示するためのモニタと、肺ケアシステムの操作を制御するためのユーザーインターフェースとを含み、該モニタが、肺に入る灌流流体の酸素含有量のリアルタイム追跡および肺を離れる灌流流体の酸素含有量のリアルタイム追跡を表示する、請求項1記載のシステム。
【請求項32】
携帯型シャーシおよび肺コンソールを含む携帯型多用途モジュールと;
多用途モジュールとの電気機械的相互操作のために単一用途使い捨てモジュールと多用途モジュールとを結合させるように適応した界面; および
肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面と、肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面とを有する肺チャンバアセンブリを含む、
単一用途使い捨てモジュールとを含み、
該肺コンソールが、該使い捨てモジュールの灌流流体および換気ガスの、電気制御、空気圧制御および機械制御のうち少なくとも1つを与える、
肺ケアシステム。
【請求項33】
肺チャンバアセンブリが、肺から離れる灌流流体の流れを運搬するための二重ドレインシステムであって、灌流流体流の一部を灌流流体ガス含有量のセンサへ方向づけるための測定ドレインと、灌流流体流の残りの部分を受けるための主ドレインとを含む二重ドレインシステムを含む、請求項32記載のシステム。
【請求項34】
二重ドレインが、肺から離れる灌流流体の流れを、測定ドレインに供給を行うプールに収集するための容器をさらに含み、該測定ドレインのドレナージ容量が肺から離れる灌流流体の流量未満であり、容器から溢流する過剰の灌流流体が主ドレインに流れる、請求項33記載のシステム。
【請求項35】
使い捨てモジュールが、灌流流体を肺に循環させるように適応したポンプをさらに含む、請求項32記載のシステム。
【請求項36】
使い捨てモジュールが、所定の組成を有するガスにより肺を換気するための、第2の界面に接続された換気システムをさらに含む、請求項32記載のシステム。
【請求項37】
所定の組成が、約12%の酸素を含む、請求項36記載のシステム。
【請求項38】
所定の組成が、約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素である、請求項36記載のシステム。
【請求項39】
主ドレインが、灌流流体の残りの部分をリザーバへ方向づける、請求項33記載のシステム。
【請求項40】
肺コンソールが、肺の換気を制御するための換気コントローラを含む、請求項32記載のシステム。
【請求項41】
換気コントローラが、肺への換気ガスの流れを引き起こすためのベローズを作動させるための機械的アクチュエータを含む、請求項40記載のシステム。
【請求項42】
肺コンソールモジュールが、使い捨てモジュールにおける、肺に接続された換気ガス回路内の少なくとも1つのバルブを制御するための空気圧制御システムを含む、請求項40記載のシステム。
【請求項43】
少なくとも1つのバルブが、肺とベローズとの間の換気ガス回路、すなわち肺とベローズとの間の流体接続を閉鎖するバルブのオフ位置に配設されている、請求項42記載のシステム。
【請求項44】
少なくとも1つのバルブが、肺換気回路から換気ガスを通気させるためのリリーフバルブを含む、請求項42記載のシステム。
【請求項45】
少なくとも1つのバルブが、換気ガス回路に換気ガスを送達するためのトリクルバルブを含む、請求項42記載のシステム。
【請求項46】
換気コントローラが、肺を換気するための複数のガスのうち1つを選択するように構成されている、請求項40記載のシステム。
【請求項47】
複数のガスが、酸素化ガス、脱酸素化ガスおよび維持ガスを含む、請求項46記載のシステム。
【請求項48】
酸素化ガスが、空気、および25%〜100%の酸素を含有するガスからなるセットより選択される、請求項47記載のシステム。
【請求項49】
脱酸素化ガスが、二酸化炭素および窒素を含む、請求項47記載のシステム。
【請求項50】
脱酸素化ガスが、約6%の二酸化炭素および約94%の窒素で組成される、請求項47記載のシステム。
【請求項51】
維持ガスが、酸素、二酸化炭素および窒素を含む、請求項47記載のシステム。
【請求項52】
維持ガスが、約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素で組成される、請求項47記載のシステム。
【請求項53】
維持ガスが、多用途モジュール内に収納されたタンクから供給される、請求項47記載のシステム。
【請求項54】
肺コンソールが、灌流流体ガス成分を制御するための灌流流体コントローラを含む、請求項32記載のシステム。
【請求項55】
灌流流体コントローラが、使い捨てモジュール内のガス交換器へのガスの流れを制御するための空気圧バルブコントローラを含み、該ガス交換器が、該ガス交換器へのガスの流れと灌流流体との間でガスを交換するように構成されている、請求項54記載のシステム。
【請求項56】
ガス交換器へのガスの流れが、灌流流体から酸素を除去するための脱酸素化ガスを含む、請求項55記載のシステム。
【請求項57】
脱酸素化ガスが、二酸化炭素および窒素を含む、請求項56記載のシステム。
【請求項58】
脱酸素化ガスが、約6%の二酸化炭素および約94%の窒素で組成される、請求項56記載のシステム。
【請求項59】
多用途モジュールが、肺ケアシステムのステータスを表示するためのモニタと、肺ケアシステムの操作を制御するためのユーザーインターフェースとを含む、請求項32記載のシステム。
【請求項60】
表示されるステータスが、肺に入る灌流流体の酸素含有量および肺から出る灌流流体の酸素含有量のうち少なくとも1つを含む、請求項59記載のシステム。
【請求項61】
モニタが、ガスが肺に入る地点の換気ガス圧のリアルタイム追跡、灌流流体が肺動脈に入る地点に位置する圧力センサにより測定される肺の肺動脈圧のリアルタイム追跡、および肺動脈圧の時間平均グラフを表示する、請求項59記載のシステム。
【請求項62】
多用途モジュールが、肺の評価中に肺ケアシステムのステータスを表示するためのモニタと、肺ケアシステムの操作を制御するためのユーザーインターフェースとを含み、該モニタが、肺に入る灌流流体の酸素含有量のリアルタイム追跡および肺を離れる灌流流体の酸素含有量のリアルタイム追跡を表示する、請求項32記載のシステム。
【請求項63】
シャーシを含む多用途モジュールと;
多用途モジュールへの取り付けに適応した界面;
肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面と、肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面とを有する肺チャンバアセンブリ; ならびに
肺チャンバアセンブリから灌流流体を排出するためのドレインシステムであって、測定導管および主ドレイン導管を含み、該測定導管が灌流流体ガス含有量を測定するように適応したセンサへ灌流流体の流れをさらに方向づけるドレインシステムを含む、
単一用途使い捨てモジュールと
を含む、肺ケアシステム。
【請求項64】
測定導管が、センサによるガス含有量測定に好適な条件に灌流流体を配置するように適応している、請求項63記載のシステム。
【請求項65】
灌流流体ガス含有量が酸素含有量である、請求項63記載のシステム。
【請求項66】
センサがパルスオキシメータである、請求項63記載のシステム。
【請求項67】
多用途モジュールへの取り付けに適応した界面、および
肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と、換気ガスによる肺の換気を可能にするための第2の界面とを有する肺チャンバアセンブリを含む、
単一用途使い捨てモジュールと;
肺チャンバアセンブリから灌流流体の流れを排出するためのドレインシステムであって、測定導管および主ドレイン導管を含み、該測定導管が灌流流体ガス含有量を測定するように適応したセンサへ灌流流体の流れをさらに方向づけるドレインシステムと
を含む、肺ケアモジュール。
【請求項68】
ガスにより肺を換気するための、第2の界面に接続された換気システムをさらに含む、請求項67記載のモジュール。
【請求項69】
ガスが各々所定の組成を有する複数のガスより選択可能である、請求項68記載のモジュール。
【請求項70】
複数のガスが、維持ガス、評価ガスおよび空気を含む、請求項69記載のモジュール。
【請求項71】
維持ガスの所定の組成が、約12%の酸素を含む、請求項70記載のモジュール。
【請求項72】
維持ガスの所定の組成が、約12%の酸素、約5.5%の二酸化炭素および約82.5%の窒素である、請求項70記載のモジュール。
【請求項73】
換気システムが、ある量の維持ガスを肺に再呼吸させるように構成され得る、請求項68記載のモジュール。
【請求項74】
換気システムが隔離量区画を含み、かつ前記量の維持ガスが肺と隔離量区画との間でサイクルされる、請求項73記載のモジュール。
【請求項75】
換気システムがベローズを含み、かつ該ベローズを作動させることで前記量の維持ガスが肺とベローズとの間でサイクルされる、請求項73記載のモジュール。
【請求項76】
換気システムが、トリクルバルブを経由する維持ガスの外部供給源への接続を含み、該トリクルバルブが、換気システム内にガスを放出することで換気システム内の維持ガスの所定の組成を維持する、請求項73記載のモジュール。
【請求項77】
換気システムが、肺中の最小ガス圧を維持するリリーフバルブをさらに含む、請求項68記載のモジュール。
【請求項78】
評価ガスの所定の組成が、約6%の二酸化炭素を含む、請求項70記載のモジュール。
【請求項79】
評価ガスの所定の組成が、約4〜7%の二酸化炭素および約93〜97%の窒素を含む、請求項70記載のモジュール。
【請求項80】
第2の界面が気管カニューレを含む、請求項67記載のモジュール。
【請求項81】
気管カニューレが、気管に挿入するための気管挿入部と、可撓部と、肺チャンバアセンブリに気管カニューレを固定するためのロック機構と、換気装置コネクタ部とを含む、請求項80記載のモジュール。
【請求項82】
気管挿入部が約0.65インチ〜0.95インチの直径を有する、請求項81記載のモジュール。
【請求項83】
可撓部をクランプすることで、肺へのおよび肺からのガス流を封鎖することができる、請求項81記載のモジュール。
【請求項84】
灌流流体を肺へおよび肺から離れるよう流すように適応したポンプをさらに含む、請求項67記載のモジュール。
【請求項85】
灌流流体の温度を生理的レベル近くに維持するために灌流流体と熱接触するヒーターをさらに含む、請求項84記載のモジュール。
【請求項86】
前記温度が約30℃〜37℃である、請求項85記載のモジュール。
【請求項87】
前記温度が約34℃〜37℃である、請求項85記載のモジュール。
【請求項88】
少なくとも1つのガス供給源および灌流流体と流体連通するガス交換装置であって、灌流流体中の第1のガス成分の組成を制御可能に調節するように適応したガス交換装置をさらに含む、請求項84記載のモジュール。
【請求項89】
灌流流体中のガス成分の組成を調節するために複数のガス供給源より選択するためのガス選択スイッチをさらに含む、請求項88記載のモジュール。
【請求項90】
第1の界面が肺動脈カニューレを含む、請求項84記載のモジュール。
【請求項91】
肺動脈カニューレが、肺動脈への挿入のための挿入管と、挿入管に接続したコネクタ部と、肺への灌流流体の流れを運搬する回路への接続のためにコネクタ部に接続した主管部とを含む、請求項90記載のモジュール。
【請求項92】
肺動脈カニューレが、肺への灌流流体の流入地点の近くに圧力トランスデューサを位置づけるために、挿入管の近くにコネクタ部のルーメンへの開口を画定する圧力トランスデューサコネクタをさらに含む、請求項91記載のモジュール。
【請求項93】
圧力トランスデューサコネクタが、圧力トランスデューサが遠隔通気されるように、チャネルをさらに与える、請求項92記載のモジュール。
【請求項94】
肺動脈カニューレが2つの挿入管を含む、請求項92記載のモジュール。
【請求項95】
挿入管が、肺動脈カニューレの主軸から約15°〜90°の角度で隔てられている、請求項92記載のモジュール。
【請求項96】
灌流流体が肺からドレインシステムに流れることを可能にするために、肺の左心房カフが肺チャンバアセンブリに露出される、請求項67記載のモジュール。
【請求項97】
使い捨てモジュールが、左心房カフと、肺からドレインシステムへ灌流流体を方向づけるカニューレとの間の接続をさらに含む、請求項67記載のモジュール。
【請求項98】
肺チャンバアセンブリが、ハウジング、支持面および開閉式蓋を含む、請求項67記載のモジュール。
【請求項99】
前記支持面が、肺から流れる灌流流体を排出するためのドレインおよびドレナージチャネルを画定する、請求項98記載のモジュール。
【請求項100】
前記支持面が、肺に支持を供しかつ肺をアンカーするために可撓ラップを固定するように構成されている、請求項98記載のモジュール。
【請求項101】
可撓ラップがポリウレタンを含む、請求項98記載のモジュール。
【請求項102】
少なくとも1つのハウジングドレインを含む底面、および壁面を有するハウジングと;
肺を支持するための支持面であって、肺から出る灌流流体を排出するためのドレイン、およびドレインに通じるドレナージチャネルを画定する支持面と;
ハウジングの壁面への封止可能な接続を与える開閉式蓋と;
肺への灌流流体の流れを可能にするための第1の界面と;
肺の換気を可能にするための第2の界面と;
肺から離れる灌流流体の流れを可能にするための第3の界面と
を含む、肺チャンバアセンブリ。
【請求項103】
ハウジングが、肺から離れる灌流流体の流れを運搬するためのドレインシステムであって、灌流流体流の一部を灌流流体ガス含有量のセンサへ方向づけるための測定ドレインと、灌流流体流の残りの部分を受けるための主ドレインとを含むドレインシステムを含む、請求項102記載のアセンブリ。
【請求項104】
ドレインシステムが、肺から離れる灌流流体の流れを、測定ドレインに供給するプールに収集するための領域をさらに含み、該測定ドレインが、肺から離れる灌流流体の流量未満のドレナージ容量を有する、請求項103記載のアセンブリ。
【請求項105】
前記領域から溢流する灌流流体の流れが主ドレインに流れる、請求項104記載のアセンブリ。
【請求項106】
ドレインシステムが、測定ドレインを部分的に取り囲む壁面であって、測定ドレインから主ドレインへの灌流流体の流れを部分的に遮断し、測定ドレインの上側での灌流流体のプールの形成を促進する壁面をさらに含む、請求項103記載のアセンブリ。
【請求項107】
第1の界面が肺動脈カニューレを含み、該カニューレの近位部が灌流流体回路に接続され、かつ該カニューレの遠位部が肺の肺動脈に接続される、請求項102記載のアセンブリ。
【請求項108】
ハウジングの壁面が、肺カニューレの外面をハウジングに封止可能に係合するための開口を画定する、請求項107記載のアセンブリ。
【請求項109】
肺動脈カニューレが、該カニューレの遠位端の近くに該カニューレのルーメンへの開口を画定する圧力トランスデューサコネクタをさらに含む、請求項107記載のアセンブリ。
【請求項110】
圧力トランスデューサコネクタが、カニューレ内の圧力トランスデューサが遠隔通気されるように、チャネルを与える、請求項109記載のアセンブリ。
【請求項111】
肺動脈への灌流流体の流入地点の近くに位置づけられる圧力トランスデューサであって、圧力トランスデューサコネクタおよび圧力トランスデューサ導管を通過する圧力トランスデューサケーブルにより外部コントローラに接続される圧力トランスデューサをさらに含む、請求項109記載のアセンブリ。
【請求項112】
ハウジングの壁面が、圧力トランスデューサ導管の外面を封止可能に係合するための開口を画定する、請求項111記載のアセンブリ。
【請求項113】
第2の界面が、気管への挿入のための遠位挿入部と、肺を換気するためにガス回路に接続するための近位コネクタ部と、コネクタ部に隣接するロック機構とを有する気管カニューレを含む、請求項102記載のアセンブリ。
【請求項114】
ハウジングの壁面が、気管カニューレロック機構をハウジングに封止可能に係合するための開口を画定する、請求項113記載のアセンブリ。
【請求項115】
気管挿入部が、約0.65インチ〜0.95インチの直径を有する、請求項113記載のアセンブリ。
【請求項116】
挿入部が、遠位端および近位端に、挿入部の直径より約0.2大きい直径を有するリブによって連結している、請求項113記載のアセンブリ。
【請求項117】
第3の界面が、灌流流体が肺から支持面ドレインに流れることを可能にするために肺チャンバアセンブリに露出される左心房カフを含む、請求項102記載のアセンブリ。
【請求項118】
第3の界面が、左心房カフとカニューレとの間の接続を含む、請求項102記載のアセンブリ。
【請求項119】
カニューレが、灌流流体を灌流ガス含有量センサへおよびリザーバへ方向づける導管と流体連通している、請求項118記載のアセンブリ。
【請求項120】
カニューレが、灌流流体を支持面ドレインへ方向づける、請求項118記載のアセンブリ。
【請求項121】
カニューレが、カニューレと左心房カフとの間の小さい接触面積を実現するためのケージ状構造を有する、請求項118記載のアセンブリ。
【請求項122】
カニューレが、左心房カフを開放状に保持するように構成されている、請求項17記載のアセンブリ。
【請求項123】
カニューレが、カニューレ内に位置づけられる圧力トランスデューサに接続するためのルーメンおよびコネクタをさらに含む、請求項17記載のアセンブリ。
【請求項124】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階;
肺と可変量チャンバとの間で捕集量(captive volume)の換気ガスを行ったり来たり流すことで気管界面を通じて肺を換気する段階; および
換気ガスのさらなる流れを捕集量に導入しかつ捕集量から過剰の換気ガスを通気させることで、換気ガスの所定の組成を維持しかつ捕集量の最小ガス圧を維持する段階
を含む、エクスビボで肺を保存する方法。
【請求項125】
換気ガスが、酸素、二酸化炭素および不活性ガスの組成物を含む、請求項124記載の方法。
【請求項126】
不活性ガスが窒素である、請求項125記載の方法。
【請求項127】
灌流流体のガス含有量が、換気ガスの所定の組成に対応する平衡レベルに到達する、請求項124記載の方法。
【請求項128】
換気ガスの所定の組成が、約5〜20%の酸素および約2〜10%の二酸化炭素を含む、請求項124記載の方法。
【請求項129】
灌流流体のガス含有量が、約88%〜98%のヘモグロビン飽和度レベルを有する平衡レベルに到達する、請求項128記載の方法。
【請求項130】
換気ガスの所定の組成が、約12%の酸素および約5.5%の二酸化炭素を含む、請求項124記載の方法。
【請求項131】
肺に入る灌流流体のヘモグロビン飽和度レベルが約90〜95%の平衡レベルに到達し、かつ肺を離れる灌流流体のヘモグロビン飽和度レベルが約90〜95%の平衡レベルに到達する、請求項127記載の方法。
【請求項132】
肺に入る灌流流体の酸素含有量が生理的レベルよりも低く、かつ肺を離れる灌流流体の酸素含有量が生理的レベルよりも高い、請求項124記載の方法。
【請求項133】
換気ガスのさらなる流れが1分当たり約400〜600mLである、請求項124記載の方法。
【請求項134】
捕集量が約400〜1200mLである、請求項124記載の方法。
【請求項135】
捕集量の最小ガス圧が、H2O約4〜8cmである、請求項124記載の方法。
【請求項136】
換気ガスの最大圧が、H2O約12〜22cmである、請求項124記載の方法。
【請求項137】
過剰の換気ガスが、捕集量と連通するリリーフバルブを通じて通気される、請求項124記載の方法。
【請求項138】
可変量チャンバがベローズを含む、請求項124記載の方法。
【請求項139】
ベローズを圧縮することで肺への換気ガスの流れを引き起こす段階をさらに含む、請求項138記載の方法。
【請求項140】
ベローズと肺との間を流れる換気ガスの量が、ベローズの圧縮ストロークの大きさにより決定される、請求項139記載の方法。
【請求項141】
肺からの換気ガスの流れが肺の収縮により引き起こされる、請求項124記載の方法。
【請求項142】
肺動脈界面が肺動脈カニューレを含み、該肺動脈カニューレの一部が肺の肺動脈に挿入される、請求項124記載の方法。
【請求項143】
灌流流体が、露出した左心房カフを通じて肺から離れるよう流れる、請求項124記載の方法。
【請求項144】
左心房界面が肺の左心房と左心房カニューレとの間の封止された接続を含む、請求項124記載の方法。
【請求項145】
気管界面が気管カニューレを含み、該気管カニューレの一部が肺の気管に挿入される、請求項124記載の方法。
【請求項146】
灌流流体が生理的温度近くに維持される、請求項124記載の方法。
【請求項147】
肺に流れる灌流流体中の酸素含有量の第1のレベルおよび肺から流れ出す灌流流体中の酸素含有量の第2のレベルを測定する段階をさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項148】
灌流流体中のヘモグロビンの酸素飽和度のレベルおよび肺に流れる灌流流体中の酸素の分圧のうち少なくとも1つを測定する段階をさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項149】
灌流流体中のヘモグロビンの酸素飽和度のレベルおよび肺から流れ出す灌流流体中の酸素の分圧のうち少なくとも1つを測定する段階をさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項150】
灌流流体が血液製剤を含む、請求項124記載の方法。
【請求項151】
灌流流体において白血球が少なくとも部分的に枯渇している、請求項150記載の方法。
【請求項152】
灌流流体において血小板が少なくとも部分的に枯渇している、請求項151記載の方法。
【請求項153】
灌流流体が全血を含む、請求項124記載の方法。
【請求項154】
灌流中に肺に1つまたは複数の治療薬を送達する段階をさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項155】
1つまたは複数の治療薬が、抗菌薬、血管拡張薬および抗炎症薬より選択される、請求項154記載の方法。
【請求項156】
1つまたは複数の治療薬が、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、デキストラン、イスプレル(isuprel)、フローランおよび一酸化窒素供与体からなる群より選択される、請求項154記載の方法。
【請求項157】
1つまたは複数の治療薬が、気管界面を通じ、噴霧器および気管支鏡のうち1つを通じて送達される、請求項154記載の方法。
【請求項158】
肺の灌流を開始する前に、灌流流体中の酸素含有量の所望のレベルを確立する段階をさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項159】
灌流流体中の酸素含有量の所望のレベルが、約88%〜98%のヘモグロビン飽和度レベルに対応する、請求項158記載の方法。
【請求項160】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階;
肺と可変量チャンバとの間で捕集量の換気ガスを行ったり来たり流すことで気管界面を通じて肺を換気する段階;
さらなる量の換気ガスを捕集量に導入しかつ捕集量から過剰の換気ガスを通気させることで、換気ガスの所定の組成を維持しかつ捕集量の最小ガス圧を維持する段階を含み、
該換気ガスの成分と該灌流流体との間の肺内でのガス交換が、該灌流流体中の対応するガス成分を平衡値に到達させる、
エクスビボで肺を保存する方法。
【請求項161】
換気ガスの成分が、酸素および二酸化炭素のうち少なくとも1つである、請求項160記載の方法。
【請求項162】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させるための灌流流体回路と;
気管界面を通じて肺を換気するための換気回路であって、肺と可変量チャンバとの間で捕集量の換気ガスを行ったり来たり流すように適応した換気回路と;
さらなる量の換気ガスを捕集量に導入するための、換気回路と流体連通したトリクルバルブと;
捕集量から過剰の換気ガスを通気させかつ捕集量の最小ガス圧を維持するための、換気回路と流体連通したリリーフバルブとを含み、
換気ガスの成分と灌流流体との間の肺内でのガス交換が、灌流流体中の対応するガス成分を平衡値に到達させる、
エクスビボで肺を保存するためのシステム。
【請求項163】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させるための手段と;
気管界面を通じて肺を換気するための手段であって、換気回路が肺と可変量チャンバとの間で捕集量の換気ガスを行ったり来たり流すように適応した手段と;
さらなる量の換気ガスを捕集量に導入するための手段と;
捕集量から過剰の換気ガスを通気させかつ捕集量の最小ガス圧を維持するための手段とを含み、
換気ガスの成分と灌流流体との間の肺内でのガス交換が、灌流流体中の対応するガス成分を平衡値に到達させる、
エクスビボで肺を保存するためのシステム。
【請求項164】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階;
気管界面を通じて換気ガスを流すことで肺を換気する段階;
灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化する段階; および
灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値に到達するまで酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化する段階を含み、
灌流流体中の酸素含有量を酸素含有量の第1の値から酸素含有量の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断することができる、
肺を診断する方法。
【請求項165】
灌流流体が、CO2を含む脱酸素化ガスにより肺を換気することで脱酸素化される、請求項164記載の方法。
【請求項166】
脱酸素化ガスが約6%のCO2を含む、請求項165記載の方法。
【請求項167】
灌流流体が、ガス交換装置に灌流流体を循環させることで脱酸素化され、該ガス交換装置は、CO2およびN2を含む脱酸素化ガスと流体連通しており、脱酸素化ガスと灌流流体との間のガス交換により灌流流体から酸素を除去する、請求項164記載の方法。
【請求項168】
脱酸素化ガスが、約6%のCO2および約94%のN2を含む、請求項167記載の方法。
【請求項169】
灌流流体が、CO2およびN2を含む脱酸素化ガスにより肺を換気することで脱酸素化される、請求項164記載の方法。
【請求項170】
灌流流体が赤血球を含有し、かつ灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値が赤血球の約73%飽和度に対応する、請求項164記載の方法。
【請求項171】
灌流流体が赤血球を含有し、かつ灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値が赤血球の約93%飽和度に対応する、請求項164記載の方法。
【請求項172】
酸素化ガスが、空気である、請求項164記載の方法。
【請求項173】
酸素化ガスが、約25%〜100%の酸素を含有する、請求項164記載の方法。
【請求項174】
灌流流体が、1分当たり約1.5リットルの速度で灌流回路を流れる、請求項164記載の方法。
【請求項175】
肺を輸送している間に肺を診断する、請求項164記載の方法。
【請求項176】
灌流流体が、生理的温度近くに維持される、請求項164記載の方法。
【請求項177】
灌流流体が、血液製剤を含む、請求項164記載の方法。
【請求項178】
灌流流体において、白血球が少なくとも部分的に枯渇している、請求項177記載の方法。
【請求項179】
灌流流体において、血小板が少なくとも部分的に枯渇している、請求項177記載の方法。
【請求項180】
灌流流体が全血を含む、請求項164記載の方法。
【請求項181】
灌流中に肺に1つまたは複数の治療薬を送達する段階をさらに含む、請求項164記載の方法。
【請求項182】
1つまたは複数の治療薬が抗菌薬、血管拡張薬および抗炎症薬より選択される、請求項181記載の方法。
【請求項183】
1つまたは複数の治療薬が、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、デキストラン、イスプレル、フローランおよび一酸化窒素供与体からなる群より選択される、請求項181記載の方法。
【請求項184】
1つまたは複数の治療薬が、気管界面を通じ、噴霧器および気管支鏡のうち1つを通じて送達される、請求項181記載の方法。
【請求項185】
灌流流体の酸素含有量を測定することで、灌流流体中の酸素含有量の第1および第2の所定の値に到達する時間を決定する段階をさらに含む、請求項164記載の方法。
【請求項186】
パルスオキシメータを使用して灌流流体中の赤血球の飽和度レベルを決定することで、灌流流体の酸素含有量を測定する、請求項185記載の方法。
【請求項187】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させるためのエクスビボ灌流回路と;
気管界面を通じて肺にかつ肺から換気ガスを流すための換気回路とを含み、
灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化し、かつ灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値に到達するまで酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化するように構成されており、かつ灌流流体中の酸素含有量を酸素含有量の第1の値から酸素含有量の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断するようにさらに構成されている、
肺を診断するためのシステム。
【請求項188】
CO2およびN2を含む脱酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を脱酸素化するように構成されている、請求項187記載のシステム。
【請求項188】
換気回路がガス交換装置をさらに含み、かつシステムが、CO2およびN2を含む脱酸素化ガスをガス交換装置に通過させている間に灌流流体をガス交換装置に循環させることで灌流流体を脱酸素化するように構成されており、ガス交換装置が、脱酸素化ガスと灌流流体との間のガス交換により灌流流体から酸素を除去するように適応している、請求項187記載のシステム。
【請求項189】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させるための手段と;
気管界面を通じて肺にかつ肺から換気ガスを流すための手段とを含み、
灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化し、かつ灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値に到達するまで酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化するように構成されており、かつ灌流流体中の酸素含有量を酸素含有量の第1の値から酸素含有量の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断するようにさらに構成されている、
肺を診断するためのシステム。
【請求項190】
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ左心房界面を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させるためのエクスビボ灌流回路と;
気管界面を通じて肺にかつ肺から換気ガスを流すための換気回路と
を含む、肺ケアシステムであって、
肺維持モードおよび肺診断モードを含み、
肺維持モードが、肺と可変量チャンバとの間で捕集量の換気ガスを行ったり来たり流すことで気管界面を通じて肺を換気するように構成されており、かつ
診断モードが:
灌流流体中の酸素含有量の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化し;
灌流流体中の酸素含有量の所定の第2の値に到達するまで酸素化ガスにより肺を換気することで灌流流体を再酸素化し; かつ
灌流流体中の酸素含有量を酸素含有量の第1の値から酸素含有量の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断するように構成されている、
肺ケアシステム。
【請求項191】
エクスビボ灌流回路内に肺を位置づける段階;
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ肺静脈を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階;
灌流流体から酸素を除去するガス交換器に灌流流体を循環させる段階;
気管界面を通じて換気ガスを流すことで肺を換気する段階;
灌流流体が肺を離れた後、灌流回路内のある地点で灌流流体中の酸素飽和度の第1の値を測定する段階; および
酸素飽和度の第1の値に基づいて肺の状態を判断する段階
を含む、肺を診断する方法。
【請求項192】
肺の状態を判断する段階が、酸素飽和度の第1の値と換気ガス中の吸気酸素の画分との間の比を決定することを含む、請求項191記載の方法。
【請求項193】
肺動脈界面の近くの灌流回路内のある地点で灌流流体中の酸素飽和度の第2の値を測定する段階; および
酸素飽和度の第1の値と第2の値との間の差に基づいて肺の状態を判断する段階
をさらに含む、請求項191記載の方法。
【請求項194】
換気ガスが空気である、請求項191記載の方法。
【請求項195】
換気ガスが25%〜100%の酸素を含有する、請求項191記載の方法。
【請求項196】
灌流流体が、1分当たり約1.5リットルの速度で灌流回路を流れる、請求項191記載の方法。
【請求項197】
エクスビボ灌流回路内に肺を位置づける段階;
肺動脈界面を通じて肺に入りかつ肺静脈を通じて肺を離れる灌流流体を肺に循環させる段階;
気管界面を通じて換気ガスを流すことで肺を換気する段階;
灌流流体中の酸素飽和度の所定の第1の値に到達するまで灌流流体を脱酸素化する段階;
灌流流体中の酸素飽和度の所定の第2の値に到達するまで空気により肺を換気することで灌流流体を再酸素化する段階; および
灌流流体中の酸素飽和度レベルを酸素飽和度の第1の値から酸素飽和度の第2の値に変化させるために肺が要する時間に基づいて肺の状態を判断する段階
を含む、肺を診断する方法。
【請求項198】
灌流流体が、CO2およびN2を含む換気ガスにより肺を換気することで脱酸素化される、請求項197記載の方法。
【請求項199】
換気ガスが、約5.5%のCO2および94.5%のN2を含む、請求項198記載の方法。
【請求項200】
灌流流体が、ガス交換装置に灌流流体を循環させることで脱酸素化され、該ガス交換装置は、CO2およびN2を含む換気ガスと流体連通しており、換気ガスと灌流流体との間のガス交換により灌流流体中の酸素の組成を調節する、請求項197記載の方法。
【請求項201】
換気ガスが、約5.5%のCO2および94.5%のN2を含む、請求項200記載の方法。
【請求項202】
酸素飽和度の所定の第1の値が約77%の酸素である、請求項200記載の方法。
【請求項203】
酸素飽和度の所定の第2の値が約97%である、請求項200記載の方法。
【請求項204】
エクスビボで肺を保存または診断するための、請求項1、32、63、162、163、187、189または190記載の肺ケアシステムの使用。
【請求項205】
エクスビボで肺を保存または診断するための、請求項67記載のモジュールの使用。
【請求項206】
エクスビボで肺を保存または診断するための、請求項102記載のアセンブリの使用。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図1B】
【図2】
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【図27】
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【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公表番号】特表2011−511000(P2011−511000A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545201(P2010−545201)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/032619
【国際公開番号】WO2009/099939
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(509294117)トランスメディックス インコーポレイティッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/032619
【国際公開番号】WO2009/099939
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(509294117)トランスメディックス インコーポレイティッド (2)
【Fターム(参考)】
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