説明

エコロジーな味噌の製造方法

【課題】醤油粕を減塩処理することなく食品原料の1つとして用いて、醤油粕が有する旨味を活かし、風味に優れ、食感が良好なエコロジー(環境に優しく、かつ経済的)な味噌を製造する方法であって、安価に製造することができるとともに、廃棄物の減量化、醤油粕等廃棄物処理中の炭酸ガスやダイオキシン等の排気ガスの減量化に寄与し得ること。
【解決手段】醤油粕を水分含量20質量%以下に乾燥した醤油粕乾燥物と、大豆又はおからとの混合物を主原料として用いるエコロジーな味噌の製造方法、前記味噌に糖類加えたものをベースにし、醤油、ニンニクルー、香辛料を適宜量加え、撹拌・混合工程と、加熱工程と、濃縮工程と、食用油を添加して混練する混練工程とを順次備えたエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩分濃度が非常に高く、再利用率が非常に少ない、醤油を製造する最終工程で副生される醤油の絞り粕(以下、醤油粕という)を、原料の一部として用いる味噌の製造方法に関し、より詳しくは、醤油粕乾燥物と、大豆又はおからとの混合物を主原料として用いるエコロジーな味噌の製造方法、エコロジーな味噌を用いる万能味噌ルー、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の味噌は、大豆を蒸煮して一夜おき、これを平たい容器(半切おけ)に移して味噌つきを行って割砕し、この割砕した蒸煮大豆に対し、塩と味噌麹とを混ぜた塩切麹と大豆量の10%程度の種水とを加えてよく混ぜ合せ後、容器に仕込んで熟成することにより製造されている。
【0003】
ところで、醤油や味噌等の食品製造時に派生する副産物、例えば、醤油工場では、醤油を製造する最終工程で副生される醤油粕や、豆腐工場では、豆乳を搾り取った残りとして副生されるおからがある。前記醤油粕は、全国で年間十数万トンにもなり、大部分は焼却、埋立処分されており、その一部が飼料、肥料に利用されているに過ぎず、そこに含まれる高い塩分濃度や独特の臭気に起因している。しかし、醤油粕には、粗蛋白、粗繊維等豊富に含んでおり、醤油粕の利用が大いに期待されるところである。また、豆腐製造に伴い発生するおからの排出量も、年間80〜100万トンと大量で、傷みが早いこともあり、大部分は廃棄されている状況である。おからも、栄養学的にみて、炭水化物、蛋白質、油脂等を含有し、且つ炭水化物中の9割以上が食物繊維であるため、生理機能面で優れている。
【0004】
前記醤油粕やおからの廃棄処理には、多大のエネルギーを要し、コストがかかり、しかも燃焼処理を行うと、炭酸ガスを排出し、ダイオキシンを排出する可能性もあるといわれており、環境保護の面からみて問題がある。そこで、醤油粕、おからを100%食用に転化し、醤油、おからの残渣を出さず、炭酸ガス、ダイオキシンを出さず、また、もともと味噌は大豆か麦で作るものであれば、成分は同じであり、醤油粕には、もろみ成分、旨味成分、様々な栄養成分を数多く含んでおり、飼料や、肥料にするより、人間が食べられるロスのない方向に転換し、引いては限られた大豆の使用量を大幅に軽減できることが期待される。
【0005】
醤油粕は、塩分が高く、独特の臭気を有することから、塩分を除く処理技術として、醤油粕の脱塩方法(例えば、特許文献1及び2参照)や、臭気を除く技術(例えば、特許文献3及び4参照)があり、これらは、飼料や肥料に用いられている。また、醤油粕を150℃未満で加熱加圧処理して得られた固形分に調味料を配合する加工食品の製造方法(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0006】
また、おからを利用する食品は、お菓子、飲料、調味料と多岐にわたり種々知られているが、例えば、味噌の製造方法に、大豆に代えておからを用いる技術(例えば、特許文献6及び7参照)が知られている。
【0007】
さらに、おからや醤油粕等を含んだ食品素材(例えば、特許文献8参照)や、おからや醤油粕等を含む混合物を発酵させてなる健康食品及び漬け床(例えば、特許文献参照9)が知られている。
【0008】
また、味噌を用いた味噌調味料として、白味噌を主体とするたれ成分に調味料、香辛料、糖類及び果実を添加して得た配合成分に対して少量のエチルアルコールを加えてなる、例えば、焼肉、焼き鳥のたれとして用いる味噌だれ(例えば、特許文献10参照)や、麹化した大豆と、味醂と、酒類と、糖分と、生姜の絞り汁とを混合撹拌して加熱し、アルコール分と所定量の水分を蒸発させて生成する、種々の食品に好ましい香りと風味を付加することができる味噌調味料(例えば、特許文献11参照)が知られている。
【0009】
一方、醤油粕と大豆又はおからを含む原料を用いて味噌を製造する環境に優しく、かつ経済的なエコロジーな味噌の製造方法、前記エコロジーな味噌を含む万能味噌ルーの製造方法、及びその製造方法により製造される万能味噌ルー又はその加工品は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭55−33625号公報
【特許文献2】特開平7−67572号公報
【特許文献3】特許第2668183号公報
【特許文献4】特開2003−230370号公報
【特許文献5】特開2008−301781号公報
【特許文献6】特開平6−105664号公報
【特許文献7】特開2006−345730号公報
【特許文献8】特開平8−33457号公報
【特許文献9】特開2003−38124号公報
【特許文献10】特開平9−313127号公報
【特許文献11】特開平9−327274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、醤油製造時に派生する副産物である醤油粕を、減塩処理することなく醤油粕と大豆又はおからとを味噌の主原料として用いて、醤油粕が有する旨味を活かし、風味に優れ、食感が良好な味噌、とりわけエコロジー(環境に優しく、かつ経済的)な味噌を製造する方法、前記エコロジーな味噌を加工処理した万能味噌ルー、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、食用油脂に関連した種々の問題点の改善、或いは植物の成分に関する研究に従事し、葉緑素入りラー油(特許第3924000号)や、植物、きのこの有効成分の抽出方法(特許第3638594号)についての発明をし、これらの特許を得た。本発明者は、薬草研究家であり、プロの料理人であり、この立場からみて、人間を取巻く環境の悪化を食生活と結び付けて少しでも改善するべく、食品工場等から派生する大量の副産物である醤油粕やおから(これらは殆どが廃棄、焼却されている)に有用な多種の成分を含むことに着目し、単に廃棄せず種々の食品等に利用するべく鋭意検討した結果、醤油粕は、原料(大豆)、製造方法(発酵)等からみて味噌と近縁であり、味噌原料の一部に適用できるのではないかと予測し、通常水分含量が約30質量%である醤油粕の水分含量を20質量%以下にまず乾燥し、該醤油粕乾燥物を、大豆の加熱、磨砕等の処理物、大豆の煮汁、麹、塩と共に混合するか、又は大豆処理物の代わりにおからを用いて、所定の製造工程を経て製造したところ、風味に優れ、食感が良好なエコロジーな味噌を得ることができ、前記味噌をさらに加工して味噌ルーとしたり、あるいは顆粒やフリーズドライに加工して万能味噌を得ることができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、(1)醤油を製造する最終工程で副生される醤油の絞り粕(以下、醤油粕という)を水分含量20質量%以下に乾燥した醤油粕乾燥物と、大豆又はおからとの混合物を主原料として用いることを特徴とするエコロジーな味噌の製造方法や、(2)大豆として、次のa)大豆を水洗いする工程;b)水洗いした大豆を一晩水に浸し水分を含ませる工程;c)水を含んだ大豆を加圧加熱する工程;d)加圧加熱した大豆を、大豆とゆで汁に分離する工程;e)ゆで汁と分離した大豆を磨砕する工程;の工程により順次処理して得られる大豆磨砕物及び大豆の煮汁と、
麹と、塩と、醤油粕乾燥物との混合物を用いることを特徴とする前記(1)記載のエコロジーな味噌の製造方法や、(3)おからと、麹と、豆乳と、塩と、醤油粕乾燥物との混合物を用いることを特徴とする前記(1)記載のエコロジーな味噌の製造方法や、(4)醤油粕乾燥物として、ミルサー又は破砕機にかけて微粉末されたものを用いることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のエコロジーな味噌の製造方法や、(5)醤油粕微粉末を5〜95質量%を含み、耳たぶよりやや固めに均一に練り合わせて味噌の素を製造し、次いで、前記味噌の素を隙間なく樽に詰め、発酵、熟成することを特徴とする前記(4)記載のエコロジーな味噌の製造方法に関する。
【0014】
また本発明は、(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法により得られたエコロジーな味噌20質量部に対し、水17〜23質量部、糖類7〜13質量部を加えたものをベースにし、醤油、ニンニクルー、香辛料を適宜量加え、滑らかになるまで撹拌・混合する撹拌・混合工程と、前記味噌混合物を沸騰するまで加熱する加熱工程と、沸騰した味噌混合物を煮詰める濃縮工程と、濃縮された味噌混合物に食用油2.7〜3.3質量部を添加して混練する混練工程とを順次備えたことを特徴とするエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルーの製造方法や、(7)ニンニクルーが、加熱したフライパンに食用油を入れ、小麦粉と下ろしニンニクを入れ焦がさないように中火から弱火で小麦粉がほんのり色付くまで炒めることを特徴とする前記(6)記載のエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルーの製造方法や、(8)糖類として、砂糖及び水あめを用いることを特徴とする前記(6)又は(7)記載のエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルーの製造方法や、(9)微塵切りしたニンニクを食用油で弱火で炒め水分を完全に飛ばしたニンニクを混練工程の後で添加することを添加することを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか記載のエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルーの製造方法に関する。
【0015】
さらに本発明は、(10)前記(6)〜(9)のいずれか記載の製造方法で得られる、万能味噌ルーをそのまま、もしくは顆粒状又は粉末状に加工することを特徴とするエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルー又はその加工品に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、その殆どが廃棄されている醤油粕やおからを有効利用し、経済的に安価に味噌を製造でき、また、大豆を由来とするため、配合する味噌とは成分的に同種であるため、違和感がなく醤油粕が有する旨味を活かし、風味に優れ、食感が良好な環境に優しい味噌や、このようなエコロジーな味噌を加工処理した万能味噌ルーを得ることができる。他方、廃棄物の減量化、廃棄物処理中の炭酸ガスやダイオキシン等の排気ガスの減量化に寄与し、また、醤油粕、おからを使用することにより、この使用量が、通常の味噌製造における大豆原料の減少化につながり、経済効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のエコロジーな味噌の製造方法としては、醤油粕を水分含量20質量%以下に乾燥した醤油粕乾燥物と、大豆又はおからとの混合物を主原料として用いる方法であれば特に制限されるものではないが、醤油粕には、約30質量%の水分が含まれており、20質量%以下、好ましくは15質量%、より好ましくは10質量%以下に乾燥した醤油粕乾燥物を用いる。醤油粕を乾燥することなくそのまま、味噌原料の磨砕大豆、大豆の煮汁、麹、及び塩を混合すると、混合物の水分が結果的に多くなりすぎ、軟らかすぎ、また、その後の味噌とするための発酵条件、製品形態として適切ではない。醤油粕を20質量%以下まで乾燥して用いると、味噌原料の磨砕大豆、大豆の煮汁、麹、及び塩と均一に混合することができ、発酵が通常の味噌の発酵条件と同様に行うことができ、最終の形態も製品として適度の保形性を有する。また、醤油粕乾燥物は、醤油粕を乾燥後、さらにミルサー、破砕機等にかけて微粉末状、ペレット状、フレーク状等の適宜形状で用いることができるが、微粉末状にして用いることが最も好ましい。醤油粕乾燥物の使用割合は原料の5〜95質量%とし、大豆やおから等の他の原料の使用割合を95〜5質量%とすることが好ましい。醤油粕乾燥物が5質量%より少ないと醤油粕を消費するエコロジー効果が少なく、また、95質量%を超える量で含有すると最終味噌製品の風味に影響する場合がある。
【0018】
本発明で用いる原料大豆は、通常、味噌の製造に用いる大豆でよく、醤油粕と混合する時は、後述の水洗い、水に浸す、加圧加熱、分離、磨砕等の工程を経て処理された大豆を用いることが好ましい。大豆の代わりにおからを用いることも本発明の重要な実施形態であり、排出直後の湿潤状態のおからや、乾燥して得られる乾燥おからを用いることができるが、通常のおからは水分80%以上を含み、嵩高く、菌が繁殖し易いため、排出後早いうちに乾燥するのが好ましい。おからの乾燥方法として、熱風乾燥法、ドラム乾燥法、遠赤外線乾燥法、これらの組み合わせによる乾燥法などあり、いずれの乾燥方法でもよく、焦げない程度に含水率10%程度まで乾燥することが好ましい。
【0019】
本発明の原料大豆の処理として、先ず、a)水洗いする工程に付す。これにより、大豆に付着している埃、異物等を除去する。次にb)水洗いした大豆を一晩水に浸し水分を含ませる工程に付す。大豆の吸水によりもとの大豆の2倍以上の容積、重量となり、次の加圧加熱工程の準備段階とする。さらにc)水を含んだ大豆を加圧加熱する工程に付す。例えば、圧力鍋を用いてひたひたより少し多めの水で沸騰後15分〜60分加熱する。大豆原料によって異なるが、0.5〜0.7kg/cm加圧下で加熱する。次いでd)加圧加熱した大豆を、大豆とゆで汁に分離する工程に付す。分離しうる適宜の装置を用いることができる。最後にe)ゆで汁と分離した大豆を磨砕工程に付す。例えば、ポテトマッシャー、チョッパー等にかけて磨砕する。
【0020】
本発明のエコロジーな味噌の製造方法において、醤油粕微粉末と前記磨砕大豆を主原料とする場合、醤油粕微粉末5〜95質量%を含み、磨砕大豆、大豆ゆで汁、麹、及び塩については醤油粕微粉末の使用量に応じて加減し、通常の味噌の製造方法に即して製造する。醤油粕微粉末が5質量%より少ないと醤油粕を消費するエコロジー効果が少なく、また、95質量%を超える量で含有すると最終味噌製品の風味に影響する場合がある。好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%である。醤油粕微粉末を所定量含み耳たぶよりやや固めに均一に練り合わせて味噌の素を製造後、次いで、前記味噌の素を隙間なく樽に詰め、発酵、熟成するが、これらの処理は、通常の味噌の製造と同様であり、熟成期間も同様に3〜6ヶ月程度である。
【0021】
本発明において、醤油粕微粉末とおからを用いる場合のエコロジーな味噌の製造方法としては、おからと、麹と、豆乳と、塩と、醤油粕との混合物を用いるのがよく、豆乳を使用することにより、旨味が増し、栄養の点でも向上することができる。用いるおからは、水分約10質量%の粉末おからが好ましく、具体的な製造方法は、醤油粕微粉末を味噌原料の5〜95質量%を含み、粉末おから、豆乳、麹、及び塩については醤油粕微粉末の使用量に応じて加減し、通常の味噌の製造方法に即して製造する。
【0022】
本発明の具体的なエコロジーな味噌の製造方法は、醤油粕微粉末を5〜95質量%含み、おから粉末と、麹と、豆乳と、塩と、醤油粕との混合物を耳たぶよりやや固めに均一に練り合わせて味噌の素を製造するが、醤油粕微粉末の前記含有量の技術的意義は、前述の茹でた大豆処理物を用いるエコロジーな味噌の製造方法と同様である。即ち5質量%より少ないと醤油粕を消費するエコロジー効果が少なく、また、95質量%を超える量で含有すると最終味噌製品の風味に影響する場合がある。好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%である。醤油粕微粉末を所定量含み耳たぶよりやや固めに均一に練り合わせて味噌の素を製造後、次いで、前記味噌の素を隙間なく樽に詰め、発酵、熟成するが、これらの処理は、通常の味噌の製造と同様であり、熟成期間も同様に3〜6ヶ月程度である。
【0023】
本発明のエコロジーな味噌(以下、「エコ味噌」という場合がある)を含む万能味噌ルーの製造方法としては、前記の製造方法により得られたエコ味噌20質量部に対し、水17〜23質量部、糖類7〜13質量部を加えたものをベースにし、醤油、ニンニクルー、香辛料を適宜量加え、滑らかになるまで撹拌・混合する撹拌・混合工程と、前記味噌混合物を沸騰するまで加熱する加熱工程と、沸騰した味噌混合物を煮詰める濃縮工程と、濃縮された味噌混合物に食用油2.7〜3.3質量部を添加して混練する混練工程とを順次備えた方法であれば、特に制限されるものではない。
【0024】
本発明の万能味噌ルーとは、日本料理、西洋料理、中国料理と幅広く用いることができる味噌であり、特に麺類との相性が非常によく味噌焼きうどんや、味噌焼きそばなどの調味味噌として用いることができる。また、梅干を作る時の塩分として、本発明の万能味噌ルーを用いると味噌風味の新食味の梅干を作ることができる。
【0025】
本発明の万能味噌ルーの製造方法においては、先ず、本発明のエコ味噌20質量部に対し、水17〜23容量部、糖類7〜13質量部を加えるが、この割合で配合することにより、味噌の風味と糖類の甘味が融合し、また、水の量は、後の工程において濃縮され、より滑らかな状態とすることができる。好ましくは、エコ味噌20質量部に対し、水19〜21容量部、糖類9〜11質量部、より好ましくは、エコ味噌20質量部に対し、水約20容量部、糖類として砂糖を約10質量部用いる。
【0026】
本発明で用いる糖類としては、上白糖、中白糖、三温糖、グラニュー糖、白ザラ糖、中ザラ糖、粉砂糖、角砂糖などをはじめとする砂糖、無水結晶ぶどう糖、含水結晶ぶどう糖、精製ぶどう糖、普通ぶどう糖、液状ぶどう糖、水あめ、粉末水あめが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。このうち、砂糖を使用すると良好な甘味を得ることができ、砂糖と水あめを用いることが特に好ましい。香辛料として、おろしニンニク、胡椒、一味唐辛子等を用いることができるが、本発明の調味味噌を、食品によっては、香辛料の量を控え目にし、風呂吹き大根、さばの味噌煮等に応用することができる。
【0027】
本発明の撹拌・混合工程は、エコ味噌、水、糖類をベースとし、醤油、香辛料を加え、全体がよく混合しやすいようにするためであり、食品等に用いられている通常の撹拌・混合装置を用いることができる。この撹拌・混合工程において水を用いるのは、エコ味噌、糖類、醤油、香辛料、ニンニクルーを均一に混合するためであり、均一に混合した後、呈味を薄くする水は後工程である濃縮工程であらかた除去される。前記ニンニクルーは、加熱したフライパンに食用油を入れ、小麦粉と下ろしニンニクを入れ焦がさないように中火から弱火で小麦粉がほんのり色付くまで炒めることにより得られる。
【0028】
全体が滑らかになったら、加熱装置を備えた容器に移し、又は予め加熱装置を添えた撹拌・混合装置であればそのまま沸騰するまで加熱する(加熱工程)。その後、弱火で時々撹拌し、煮詰める濃縮工程に移る。濃縮工程では、最初の量の約1/2になるまで煮詰める。この水分存在下の加熱工程や濃縮工程においては、味噌や醤油中のアミノ酸と糖類とがメイラード反応を生起し、独特の風味が形成される。また、濃縮工程により当初の半分程度の量に煮詰めると、より滑らかで味噌と糖類及び醤油、香辛料が融和し、煮詰めた後の粘度は、その後食品に用いる際、食品とよく混合でき、また、舌ざわりも非常に良いものとなる。
【0029】
最後の撹拌工程で、食用油を添加して混練する。食用油は全体的に馴染むものの一部は表層として分離した状態となり、保存時における乾燥やカビの発生を防ぐことができるが、使用に際してはよく撹拌して用いることが好ましい。ここで用いる食用油は、市販のサラダオイルを用いることができるが、サラダオイルにビタミンA、E等に富む植物体を加えて加熱混合して得られるビタミンリッチオイルを用いることが好ましい。ビタミンリッチオイルの中でも、植物として、パセリ、バジル、緑茶、キャベツ、ほうれん草等の植物を用いて本発明者が開発したビタミンリッチオイル(特願2008−231197号)が好ましい。
【0030】
本発明の製造方法において、多めの食用油で微塵切りしたニンニクを弱火で炒め、キツネ色になるまで水分を完全に飛ばしたニンニクを最後の工程である混練工程の後、表面に分離した食用油からなる油層に適宜量添加することが好ましく、これによって乾燥やカビの発生を防ぐことができ、製造された調味味噌の保存期間を延長することができる。また、多めの食用油で微塵切りしたニンニクを弱火で炒め、キツネ色になるまで水分を完全に飛ばしたニンニクを、あらかじめ前記食用油、好ましくビタミンリッチオイルに混合しておき、このニンニク混合食用油を混練工程で使用することもできる。
【0031】
本発明の製造方法で得られるエコ味噌は、万能味噌ルーをそのまま、もしくは顆粒状又は粉末状に加工し、インスタント調味料として応用することができる。顆粒状又は粉末状に加工する技術は、この種調味料における顆粒化技術又は粉末技術を採用して製造する。
本発明のエコ味噌を特に焼きソバ、焼きうどん、焼きスパゲッティの調味に用いられ、調理後の焼きソバ、焼きうどん、焼きスパゲッティを皿に移して、きゅうりと白髪葱を散らすと北京ダック風味焼きソバ、焼きうどん、焼きスパゲッティを得ることができる。
【0032】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
醤油粕5kgを乾燥機に入れ乾燥して醤油粕の水分量を15質量%程度にし、得られた4.25kgの乾燥後の醤油粕をミルサーにかけて微粉末とした。
一方、大豆を篩にかけて、ごみや、異物を取り除き水洗いし、水洗いした大豆を一晩水に浸し水分を含ませる。次に、水を含んだ大豆0.8kgを加圧鍋に入れひたひたより少し多めの水を入れ、40分間加圧加熱する。加圧加熱した大豆を、大豆とゆで汁とに分離する。ゆで汁と分離した大豆をポテトマッシャーで磨砕し、重さ1.76kgを得た。磨際した大豆1.76kg、麹1.60kg、大豆煮汁700cc及び塩200gに上記醤油粕微粉末4.25kgを混合する。耳たぶより、少し固めの状態となるように、大豆の煮汁などで加減する。これを隙間のないように樽に敷き詰め、4ヶ月間発酵、熟成し、本発明のエコ味噌約8.5kgを得た。
【実施例2】
【0034】
醤油粕5kgを乾燥機に入れ乾燥して醤油粕の水分量を15質量%程度にし、得られた4.25kgの乾燥後の醤油粕をミルサーにかけて微粉末とした。
一方、製造直後のおからを熱風乾燥機により乾燥し、水分約10質量%の乾燥おからを用意し、前記乾燥おから1kgと、水1kgと、麹1.6kgと、豆乳600gと、塩200g及び醤油粕微粉末4kgを混合する。耳たぶより、少し固めの状態となるように、豆乳等で加減する。これを隙間のないように樽に敷き詰め、3ヶ月間発酵、熟成し、本発明のエコ味噌約8.4kgを得た。
【実施例3】
【0035】
実施例1で得られたエコ味噌4kgに、水4リットル、砂糖1.4kg、水あめ0.6kgを加えたものをベースにし、醤油100cc、おろしニンニク100g、胡椒60gを加え、滑らかになるまで撹拌・混合する(撹拌・混合工程)。次に前記味噌混合物を沸騰するまで加熱し(加熱工程)、沸騰した味噌混合物を約1/2の量になるまでごく弱火で時々撹拌しながら煮詰める(濃縮工程)。煮詰めた味噌混合物にビタミンリッチオイル0.6リットルを添加し撹拌(撹拌工程)し、乾燥しないようにして加熱を止める。このようにして粘稠な万能味噌ルー約7kgを得た。
【実施例4】
【0036】
豚肉の細切れ50g、キャベツ2枚を適宜の大きさにザク切りにし、きゅうり2分の1は千切りにし、長葱は芯の部分を取り除いて白髪葱を作っておく。鍋を熱してから、大匙3杯の油を入れ、豚肉、キャベツ、余った葱の芯を入れ炒め、半分ほど火が通ったらうどん2玉を入れ、ほぐれるまで炒める。うどんがほぐれたら、実施例3で得られた万能味噌ルーを大匙3杯入れ1分ほど炒め、味がまんべんなく廻ったら皿に移して、きゅうりと白髪葱を散らして北京ダック風味焼きうどん(二人分)を得た。
【0037】
実施例4で得られた焼きうどんが、従来のどの部類にも属さないものであることは下記表1に示すことから明らかである。本発明の万能味噌ルーを、好みにより色々な肉類や野菜類は勿論のこと、香辛料を麺類等に加えることにより、様々なバリエーションができる。
【0038】
【表1】

【実施例5】
【0039】
実施例3で調製した万能味噌ルーを瓶詰めした、常温で2ヶ月経過したものを用いた。スパゲッティ120gが茹で上がった後、細切りしたベーコン50gをオリーブオイルで炒めたフライパンに投入し、弱火で加熱した後に火を止めて皿に盛りつけた。瓶詰め万能味噌ルーをよく振ってから大匙3杯入れてよくまぶし、その上に、縦に千切りにしたきゅうりと白髪葱をのせ、北京ダック風味焼スパゲッティ(二人分)を得た。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油を製造する最終工程で副生される醤油の絞り粕(以下、醤油粕という)を水分含量20質量%以下に乾燥した醤油粕乾燥物と、大豆又はおからとの混合物を主原料として用いることを特徴とするエコロジーな味噌の製造方法。
【請求項2】
大豆として、次のa)〜e)の工程により順次処理して得られる大豆磨砕物及び大豆の煮汁と、
麹と、塩と、醤油粕乾燥物との混合物を用いることを特徴とする請求項1記載のエコロジーな味噌の製造方法。
a)大豆を水洗いする工程;
b)水洗いした大豆を一晩水に浸し水分を含ませる工程;
c)水を含んだ大豆を加圧加熱する工程;
d)加圧加熱した大豆を、大豆とゆで汁に分離する工程;
e)ゆで汁と分離した大豆を磨砕する工程;
【請求項3】
おからと、麹と、豆乳と、塩と、醤油粕乾燥物との混合物を用いることを特徴とする請求項1記載のエコロジーな味噌の製造方法。
【請求項4】
醤油粕乾燥物として、ミルサー又は破砕機にかけて微粉末にされたものを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のエコロジーな味噌の製造方法。
【請求項5】
醤油粕微粉末を5〜95質量%を含み、耳たぶよりやや固めに均一に練り合わせて味噌の素を製造し、次いで、前記味噌の素を隙間なく樽に詰め、発酵、熟成することを特徴とする請求項4記載のエコロジーな味噌の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られたエコロジーな味噌20質量部に対し、水17〜23質量部、糖類7〜13質量部を加えたものをベースにし、醤油、ニンニクルー、香辛料を適宜量加え、滑らかになるまで撹拌・混合する撹拌・混合工程と、前記味噌混合物を沸騰するまで加熱する加熱工程と、沸騰した味噌混合物を煮詰める濃縮工程と、濃縮された味噌混合物に食用油2.7〜3.3質量部を添加して混練する混練工程とを順次備えたことを特徴とするエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルーの製造方法。
【請求項7】
ニンニクルーが、加熱したフライパンに食用油を入れ、小麦粉と下ろしニンニクを入れ焦がさないように中火から弱火で小麦粉がほんのり色付くまで炒めることを特徴とする請求項6記載のエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルーの製造方法。
【請求項8】
糖類として、砂糖及び水あめを用いることを特徴とする請求項6又は7記載のエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルーの製造方法。
【請求項9】
微塵切りしたニンニクを食用油で弱火で炒め水分を完全に飛ばしたニンニクを混練工程の後で添加することを添加することを特徴とする請求項6〜8のいずれか記載のエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルーの製造方法。
【請求項10】
前記請求項6〜9のいずれか記載の製造方法で得られる、万能味噌ルーをそのまま、もしくは顆粒状又は粉末状に加工することを特徴とするエコロジーな味噌を用いる万能味噌ルー又はその加工品。

【公開番号】特開2011−53(P2011−53A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145631(P2009−145631)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(393009253)
【Fターム(参考)】