説明

エザチオスタットによって骨髄異形成症候群を治療する方法

【課題】患者の骨髄異形成症候群を治療する方法の提供。
【解決手段】特定の遺伝子の低発現ならびに/または過剰発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量を該患者に投与する。低発現遺伝子がmiR−129であるか、または過剰発現遺伝子がmiR−155である。低発現遺伝子が、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの1つ以上の遺伝子、またはmTOR、JAK2またはJNK経路の1つ以上の遺伝子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、エザチオスタットまたはその塩による治療のための、骨髄異形成症候群を有する患者を同定するための方法、アッセイ、装置およびシステム、ならびに骨髄異形成症候群を有すると同定された患者をエザチオスタットまたはその塩によって治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の現状
骨髄異形成症候群(MDS)は、1つ以上の細胞系統(赤血球、白血球または血小板)を含む無効造血(血球生成)および急性骨髄性白血病(AML)に変換する可変性のリスクによって特徴付けられるクローン性造血幹細胞疾患の不均質なグループを指す。この症候群は、年齢と共に多く見られるようになる。世界中でおよそ300,000人がMDSを発症していると推定されている。米国癌協会によると、米国単独で毎年10,000〜20,000件のMDSの新たな症例が診断されている。現在の治療法を使用する場合の生存率は6ヶ月〜6年に及び、患者は疾患の管理にしばしば輸血を要する。
【0003】
エザチオスタット(Ezatiostat)およびその塩は、米国特許第5,763,570号に開示されている。エザチオスタットは、IUPAC化学名、エチル(2S)−2−アミノ−5−[[(2R)−3−ベンジルスルファニル−1−[[(1R)−2−エトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル]アミノ]−1−オキソプロパン−2−イル]アミノ]−5−オキソペンタノエートを有する。
【0004】
エザチオスタットの塩の1つの例は塩酸塩、すなわちエザチオスタット塩酸塩(米国一般名)であり、分子量566.1、登録商標テリントラ(Telintra(登録商標))、およびCAS登録番号286942−97−0を有する。2011年3月4日に出願された米国特許出願公開第2011/0301088号は、エザチオスタット塩酸塩の非溶媒和物(ansolvate)および多形を記載している(その全体において参照することによって援用される)。
【0005】
エザチオスタットは、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、すなわち、多くの癌において過剰発現しており、かつ、インビトロで造血前駆細胞の増殖および分化を刺激し、白血病細胞においてアポトーシスを誘導することが示されている酵素の阻害剤である。エザチオスタットは、順にjunキナーゼの抑制解除、およびそれに続くc−Junの活性化をもたらすGST P1−1を阻害する。c−Junの活性化は、正常な造血前駆細胞増殖および分化、ならびに白血病細胞のアポトーシスをもたらす。Raza et al. in Journal of Hematology & Oncology, 2:20(2009年5月13日にオンライン上で公開)で報告されているように、この薬物は、例えば、リポソーム製剤を用いる第I〜IIa相研究にてMDSの治療について評価されており(米国特許第7,029,695号);Raza et al. in Blood, 113:6533-6540(2009年4月27日にオンライン上で事前公開)によって報告されているように、錠剤製剤を用いる第I相研究にて評価されており、単独の患者症例の場合はQuddus et al. in Journal of Hematology & Oncology, 3:16(2010年4月23日にオンライン上で公開)によって報告されている。Raza A., et al., Phase 2 Randomized Multicenter Study of Extended Dosing Schedules of Oral Ezatiostat HCl (Telintra), a Glutathione Analog Prodrug GSTP1-1 Inhibitor, in Low to Intermediate-1 Risk Myelodysplastic Syndrome (MDS), Proceedings of the American Society of Hematology Annual Meeting, December 4-7, 2010, Orlando, FL, Abstract #2910;およびRaza A., et al., Phase 2 Randomized Multicenter Study of Two Extended Dosing Schedules of Oral Ezatiostat in Low to Intermediate-1 Risk Myelodysplastic Syndrome, Cancer(最初に2011年9月1日にオンライン上で公開)も参照のこと。
【0006】
本出願において言及している特許、特許出願、および出版物のそれぞれの全体の開示は、参照することによって本出願に援用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概略
本研究では、エザチオスタット塩酸塩がMDSの治療において様々な成功をもたらしたことを示している。本発明は、エザチオスタット塩酸塩による治療に応答したMDS患者の遺伝子発現特性の驚くべき発見に基づいている。遺伝子発現とエザチオスタットによるMDSの治療との相関は、既知ではなく、ありふれたものでもなく、また、通常のものでもない。悪性クローンを含む細胞系統の不均質性のため、それは特に驚くべきである。本発明は、疾患の治療における遺伝子による本人性識別を先取りすること意図しているのではなく、エザチオスタットの特定の薬物による治療の利益を享受しそうなMDS患者の亜集団の発見に基づいている。
【0008】
表1および2は、治療に応答した患者(応答者)と治療に応答しなかった患者(非応答者)の間で見られた、上位100種の異なって発現した遺伝子を提供している。表3は、その遺伝子が応答者と非応答者の間で異なって発現しているのが見られた経路を提供している。本明細書で用いられている表3の遺伝子は、表3中の経路のいずれかの遺伝子を指す。表4は、応答者と非応答者の間で異なって発現しているのが見られたJNK/JUN経路内の遺伝子を提供している。表5および6は、より小規模な患者集団の試料を検査した場合に応答者と非応答者の間で見られた、上位100種の異なって発現した遺伝子を提供している。
【0009】
したがって、1つの態様では、本発明は、患者の骨髄異形成症候群を治療する方法であり、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量を投与することを含む方法であって、患者が表1、3、4および5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現を有している方法に向けられている。
【0010】
いくつかの実施態様では、本発明は、エザチオスタットまたはその塩の有効量で患者の骨髄異形成症候群を治療する方法であり、表1〜6から選択される遺伝子の存在について該患者からの試料をアッセイし、かつ、発現レベルを決定し、表1、3、4および5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が患者の試料に検出されている場合に、エザチオスタットを患者に投与することを含む方法に向けられている。
別の態様では、本発明は、患者の骨髄異形成症候群を治療する方法であり、該患者からの試料をアッセイして表1〜6から選択される遺伝子の存在および/または発現レベルを測定し、表1、3、4および5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が患者の試料に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量を患者に投与することを含む方法に向けられている。いくつかの実施態様では、遺伝子はmiR−129またはmiR−155である。いくつかの実施態様では、miR−129の低発現、および/またはmiR−155の過剰発現が試料に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される。いくつかの実施態様では、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの1つ以上の遺伝子、例えば全ての遺伝子の低発現が試料に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される。
【0011】
いくつかの実施態様では、該方法は、患者の遺伝子の発現レベルであって、遺伝子がmiR−129またはmiR−155である発現レベルを測定すること、ならびに、miR−129の低発現、および/またはmiR−155の過剰発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩を患者に投与することを含む。いくつかの実施態様では、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの遺伝子の低発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩が患者に投与される。いくつかの実施態様では、mTOR、JAK2またはJNK経路の1つ以上の遺伝子の低発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される。
【0012】
別の態様では、本発明は、骨髄異形成症候群の治療にエザチオスタットまたはその塩が予想外の成功をもたらす、骨髄異形成症候群を患っている患者集団の治療の改善であって、
a)患者から生体試料を得ること;
b)試料をアッセイし、表1〜6から選択される遺伝子の存在および/または発現に関連するデータを得ること;
c)上記b)から得たデータを関連付け、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子が低発現しているかどうか、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子が過剰発現しているかどうかを決定すること;
e)表1、3、4および5の1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6の1つ以上の遺伝子の過剰発現が決定された場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量による患者の治療を開始すること;
f)エザチオスタットまたはその塩による治療に対する患者の耐性を確認すること;ならびに
g)患者が許容できる耐性レベルを有している場合にのみ、エザチオスタットまたはその塩による治療を継続すること、
を含む改善に向けられている。
【0013】
いくつかの実施態様では、本明細書で記載されているように、低発現または過剰発現している1つ以上の遺伝子が決定される。
【0014】
別の態様では、本発明は、エザチオスタットまたはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を有する患者の応答確率を評価する方法であり、患者から生体試料を得ること、ならびに表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定することを含む方法に向けられている。いくつかの実施態様では、表1、3、4および5から選択される遺伝子の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。いくつかの実施態様では、遺伝子はc−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの1つ以上の遺伝子である。いくつかの実施態様では、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの1つ以上の遺伝子の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。いくつかの実施態様では、mTOR、JAK2またはJNK経路の1つ以上の遺伝子の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。特定の実施態様では、表2および6から選択される遺伝子の過剰発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。
【0015】
いくつかの実施態様では、遺伝子はmiR−129またはmiR−155である。いくつかの実施態様では、miR−129の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。特定の実施態様では、miR−155の過剰発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。
【0016】
別の態様では、本発明は、エザチオスタットまたはその塩による治療のための、骨髄異形成症候群を有する患者を同定する方法であり、患者から生体試料を得ること、ならびに表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定することを含む方法であって、表1、3、4および5から選択される遺伝子の低発現が検出されている場合、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される方法に向けられている。いくつかの実施態様では、遺伝子はmiR−129である。いくつかの実施態様では、遺伝子はmiR−155である。
【0017】
いくつかの実施態様では、表1、4および5、好ましくは表1および4から選択される遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。別の実施態様では、表1、3および4から選択される遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、miR−129の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。
【0018】
特定の実施態様では、表2から選択される遺伝子の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。特定の実施態様では、表6から選択される遺伝子の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。特定の実施態様では、miR−155の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。
【0019】
いくつかの実施態様では、生体試料は骨髄である。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】

【0020】
本発明の別の態様は、エザチオスタットまたはその塩による治療のための、骨髄異形成症候群を有する患者を同定するための、表1〜6から選択される遺伝子の使用であり、患者から生体試料を得ること、ならびに生体試料を検査して、表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定することを含む使用に向けられている。表1および3〜5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。
【0021】
本発明の別の態様は、エザチオスタットまたはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を有する患者の応答確率を評価するための、表1〜6から選択される遺伝子の使用であり、患者から生体試料を得ること、ならびに生体試料を検査して、該遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定することを含む使用に向けられている。表1および3〜5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。
【0022】
本発明の別の態様は、患者の骨髄異形成症候群を治療するための、表1〜6から選択される遺伝子の使用であり、患者の遺伝子の発現レベルを測定することを含む使用であって、表1および3〜5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される使用に向けられている。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、エザチオスタットもしくはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を有する患者を同定するための、および/またはエザチオスタットもしくはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を有する患者の応答確率を評価するためのアッセイであり、患者の生体試料を検査すること、ならびに試料中の表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定することを含むアッセイである。表1および3〜5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が検出されている場合に、患者は治療のために同定され、または治療に応答する可能性があるとみなされる。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、エザチオスタットまたはその塩による治療に対する応答率が向上している、骨髄異形成症候群を患っている患者を同定するためのアッセイであり、
患者の生体試料を検査すること、ならびに試料中の表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定すること、
該遺伝子の発現レベルを決定すること、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現の存在を確認すること、
治療に対する患者の応答率を関連付けることであり、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現の検出が、患者がエザチオスタットまたはその塩による治療に対する向上した応答率を有していることを示すこと、
を含むアッセイである。
本発明のさらに別の態様は、エザチオスタットまたはその塩による治療に対する応答確率が向上している、骨髄異形成症候群を患っている患者を同定するためのアッセイであり、
試料中の表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定すること、
該遺伝子の発現レベルを同定すること、
表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現の存在を確認すること、
表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現の存在と、治療に対する患者の応答確率を関連付けることであり、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現のいずれかの検出が、患者がエザチオスタットまたはその塩による治療に対する向上した応答の可能性を有していることを示すこと、
を含むアッセイである。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、エザチオスタットもしくはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を患っている患者の応答率をアッセイするための、および/またはエザチオスタットもしくはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を有する患者の応答確率を評価するためのアッセイであり、表1および3〜5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現の検出のための手段を含むアッセイである。
【0026】
本発明のさらに別の態様は、エザチオスタットまたはその塩による治療に対する応答確率が向上している、骨髄異形成症候群を患っている患者を同定するための装置であり、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が患者にあるかどうかを示す出力媒体を含む装置である。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer-readable medium)であって、実行された場合に、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が、骨髄異形成症候群を有する患者から得られた試料に存在しているかどうかを決定するコードを含む非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。いくつかの実施態様では、該コードはさらに、エザチオスタットもしくはその塩による治療に対する患者の応答確率を決定し、および/またはエザチオスタットもしくはその塩による治療のための患者を同定する。
【0028】
本発明のさらに別の態様は、コンピュータシステムであって、プロセッサ、メモリ、ならびに実行された場合に、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が、骨髄異形成症候群を有する患者から得られた試料に存在しているかどうかを決定するコードを含むコンピュータシステムを提供する。いくつかの実施態様では、該システムはさらに、エザチオスタットもしくはその塩による治療に対する患者の応答確率を決定し、および/またはエザチオスタットもしくはその塩による治療のための患者を同定する。
【0029】
いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、2011年5月16日に出願された米国特許出願公開第2011/0301102号、タイトル「COMPOSITIONS AND METHODS FOR TREATING MYELODYSPLASTIC SYNDROME(骨髄異形成症候群を治療するための組成物および方法)」(その全体において参照することによって援用される)に記載されている投与計画によって投与される。例えば、エザチオスタット塩酸塩は、2グラム/日で3週間経口投与し/1週間休薬する周期、または3グラム/日で2週間経口投与し/1週間休薬する周期で投与されてよい。等価なエザチオスタット用量のエザチオスタット自体もしくは他のエザチオスタット塩、または他の投与経路も用いられてよい。
【0030】
1つの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、錠剤製剤として投与することができる。そのような錠剤製剤は、2011年3月29日に出願された米国特許出願公開第2011/0300215号、タイトル「TABLET FORMULATION OF EZATIOSTAT(エザチオスタットの錠剤製剤)」(その全体において参照することによって援用される)に開示されている。
【0031】
本発明のこれらの、および他の実施態様は、以下の文章にさらに記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な記載
本発明をより詳細に記載する前に、初めに以下の用語を定義する。
【0033】
本発明は、記載されている特定の実施態様に限定されるものではなく、もちろんそれ自体変化してよいと理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で用いられている専門用語は特定の実施態様を記載する目的のみを有し、限定すること意図していないことも理解されるべきである。
【0034】
文脈において明確に別段の指示がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられている単数形「a」、「an」、および「the」は、複数の指示対象を含むことに留意されなければならない。それゆえ、例えば、「遺伝子(a gene)」への言及は、複数の遺伝子を含む。
【0035】
1.定義
別段の定義がない限り、本明細書で用いられている全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同一の意味を有する。本明細書で用いられている以下の用語は、以下の意味を有する。
【0036】
用語「〜を含む(comprising)」または「〜を含む(comprises)」は、記載されている要素を含むが、他の要素を排除しない組成物および方法を意味する。「〜から本質的になる」は、組成物および方法を定義するために用いられている場合、記載された目的のための組み合わせに対してなんらかの本質的な意義を与える他の要素を排除することを意味するであろう。それゆえ、本明細書で定義された要素から本質的になる組成物は、請求項に記載の発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しない他の物質またはステップを排除しないであろう。「〜からなる」は、微量要素を超える他の成分および実質的な方法ステップを排除していることを意味する。これらの移行用語(transition terms)のそれぞれによって定義される実施態様は、本発明の範囲内に含まれる。
【0037】
用語「約」は、数字表示、例えば、温度、時間、量、および濃度(範囲を含む)の前に用いられている場合、(+)または(−)15%、10%、5%または1%の範囲で変化してよい近似を示す。
【0038】
本明細書で用いられている「発現」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセス、および/または転写されたmRNAがその後にペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は真核細胞内のmRNAのスプライシングを含んでよい。
【0039】
遺伝子に適用される「異なって発現した」は、該遺伝子から転写および/もしくは翻訳されたmRNA、または該遺伝子によってコードされたタンパク質産物の異なった産生を指す。異なって発現した遺伝子は、正常細胞もしくは対照細胞、または他の基準、例えば異なる遺伝子プロファイルもしくは病歴データを有する対象の発現レベルと比較して、過剰発現または低発現していてよい。用語「異なって発現した」は、細胞もしくは組織において発現しているが対照細胞においてサイレントであるヌクレオチド配列、または細胞もしくは組織において発現していないが対照細胞において発現しているヌクレオチド配列も指す。
【0040】
本明細書で用いられている「過剰発現」は、一般的に、正常もしくは健常な対応する細胞もしくは組織、または別の基準、例えば異なる遺伝子プロファイルもしくは病歴データを有する対象で検出される量と比較して、少なくとも1.25倍、あるいは、少なくとも1.5倍、あるいは、少なくとも2倍の発現量、あるいは、少なくとも4倍の発現量である。いくつかの実施態様では、「過剰発現している」は、治療に応答しない患者の発現レベルよりも高い発現レベルを指す。遺伝子の高発現レベルは、遺伝子の過剰発現または遺伝子コピー数の増加のために生じうる。遺伝子は、負の制御因子の脱制御ために、より多くのタンパク質に翻訳されていることもありうる。
【0041】
本明細書で用いられている「低発現」は、一般的に、正常もしくは健常な対応する細胞もしくは組織、または別の基準、例えば異なる遺伝子プロファイルもしくは病歴データを有する対象で検出される発現量よりも、少なくとも5%、あるいは、少なくとも10%、あるいは、少なくとも20%、あるいは、少なくとも50%少ない発現量である。いくつかの実施態様では、「低発現している」は、治療に応答しない患者の発現レベルよりも低い発現レベルを指す。
【0042】
本明細書で用いられている「遺伝子発現プロファイル」は、複数の試料で繰り返される一組の遺伝子の発現パターンを指し、それらの試料、例えば組織型に共有される性質、特定の治療に対する応答、または細胞内の特定の生物学的プロセスもしくは経路の活性化を反映する。遺伝子発現プロファイルは、未知の状態の試料がその共通の性質を共有しているか否かを予測するために用いられてよい。例えば、それは、患者が特定の疾病を有するかどうかを診断するために、または患者がカテゴリー、例えば特定の型の治療に応答する可能性が最も高い患者のカテゴリー内に入るかどうかをスクリーニングするために用いられてよい。該組の個々の遺伝子のレベルと典型的なプロファイルの間のいくつかのバリエーションが予想されるが、発現レベルと典型的なプロファイルの全体的な類似性があれば、発現プロファイルが反映する共通の性質を共有していない試料に、類似性が偶然に観察されるであろう可能性は統計学的に低い。
【0043】
用語「治療的有効量」は、該治療を必要としている対象に投与された場合に、本明細書で定義された治療を達成するために十分な量であるエザチオスタットまたはその塩の量を指す。1つの実施態様では、治療的有効量は、1日当たり投与されるエザチオスタットまたはその塩として最大3.5グラム(g)であろう。好ましくは、エザチオスタットまたはその塩は1日当たり2グラムの量で投与され、より好ましくは、等しい1グラム用量で1日2回投与される。該治療的有効量は、エザチオスタットまたはその塩を3週間投与し、続いて該薬物を1週間投与しない治療計画の場合に、特に関係がある。別の実施態様では、治療的有効量は、最大3グラムのエザチオスタットまたはその塩が1回用量で投与されるか、または最大1.5グラムの2回の等しい1日用量で投与されるであろう。該治療的有効量は、エザチオスタットまたはその塩を2週間投与し、続いて該薬物を1週間投与しない治療計画の場合に、特に関係がある。好ましくは、該投与計画は、1日2回の1グラム用量で投与される2グラムのエザチオスタットまたはその塩を利用し、継続投与するか、または3週間投与し、続いて1週間該薬物を投与しない。
【0044】
本明細書で用いられている用語「治療」または「〜を治療すること」は、以下の1つ以上を生じる患者のMDSのいずれかの治療を意味する:
・MDSを阻害すること、すなわち、症状(例えば、輸血の必要性、および異常な血球数など)の発生を停止もしくは抑制すること;および/または
・MDSを軽減すること、すなわち、症状の退行をもたらすこと。
【0045】
本明細書で用いられている用語「治療に対する応答」は、治療を受けた後、患者のMDSが阻害または軽減されることを意味する。応答は、一時的であっても持続的であってもよい。
【0046】
本明細書で用いられている用語「向上した治療に対する応答確率」または「向上した応答率」は、特定の治療に応答する特定のMDS患者の確率または比率が、一般的なMDS患者集団よりも高いことを意味する。用語「治療に応答する可能性がある」は、患者が治療に応答しない可能性よりも治療に応答する可能性の方が高いことを意味する。
【0047】
本明細書で用いられている用語「治療に対する患者の耐性」は、エザチオスタットによって引き起こされる副作用、例えば悪心、下痢、嘔吐、腹痛、便秘、食欲不振および胃腸障害のレベルに耐える患者の能力を指す。
【0048】
本明細書で用いられている用語「許容できる耐性レベル」は、エザチオスタットの副作用が、治療の中止をもたらすのに十分な程は重篤でないことを意味する。これは、副作用が最小であるか、もしくは患者が耐えられる状況、またはエザチオスタットの副作用が主治医によって決定される治療の利点を上回らない状況を含む。
【0049】
本明細書で用いられている用語「患者」は、哺乳類を指し、ヒトおよび非ヒト哺乳類を含む。いくつかの実施態様では、患者はヒト患者である。
【0050】
本明細書で用いられている用語「出力媒体」は、1つ以上の遺伝子の存在および/または発現レベルの決定のデータまたは結果を保存、表示および/または回収するために用いることができるいずれかの媒体を指す。該出力媒体は、限定されるものではないが、コンピュータ画面、メモリ、フラッシュドライブ、コンパクトディスク、および印刷された文書などを含む。いくつかの実施態様では、出力媒体は回収可能な形態にある。データの回収可能性は、患者の遺伝子プロファイルの記録の保存、治療歴、さらなる治療の決定、患者の実際の応答と遺伝子プロファイルの関連付けに重要であり、潜在的に改善されたエザチオスタットによる治療のための患者の同定および治療に対する患者の応答の予測などのための、エザチオスタットによる治療に適切なMDS患者の遺伝子プロファイルに関して、改善された情報を提供する。データまたは結果は、遺伝子分析から得られたデジタル形態にて生データとして、もしくはプロット、画像として保存および/もしくは表示することができ、またはコンピュータによって様々な程度まで処理した後に保存および/もしくは表示することができる。例えば、データは、正規化および/もしくはリスケーリング(rescaling)によって処理することができ、どの遺伝子が低発現または過剰発現しているかについての結果を表示するように処理することができ、または治療に対する患者の応答確率を表示するように処理することができる。データ/結果の保存および/または表示形態の例は、クラスタリング画像、ヒートマップ、主成分分析プロット、または試料(例えば、応答者または非応答者)の分類を示すいずれかのチャートなどを含むが、これらは当該技術分野で周知である。
【0051】
本明細書で用いられている用語「コンピュータ可読媒体」は、情報を記録するための装置を指す。コンピュータ可読媒体の例は、当該技術分野で周知である。1つの実施態様では、コンピュータ可読媒体はコンピュータハードドライブである。別の実施態様では、コンピュータ可読媒体はコンピュータメモリである。別の実施態様では、コンピュータ可読媒体はフラッシュドライブ、コンパクトディスク、または他の携帯装置である。さらに別の実施態様では、コンピュータ可読媒体はクラウドサーバーによって提供される。
【0052】
2.方法
1つの態様では、本発明は、エザチオスタットまたはその塩による治療のための、骨髄異形成症候群を有する患者を同定する方法であり、患者から生体試料を得ること、ならびに試料中の表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定することを含む方法に向けられている。いくつかの実施態様では、表1および/または表2、ならびにc−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの遺伝子から選択される1つまたは複数の遺伝子の存在および/または発現レベルが測定される。いくつかの実施態様では、表1、および3〜5から選択される遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。特定の実施態様では、表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、表3から選択される特定の経路の1つ以上の遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、経路はmTOR、JAK2(チロシンヤヌスキナーゼ−2)またはJNK経路である。mTORは、セリン/スレオニンキナーゼAkt、PI3K(ホスホイノシチド−3キナーゼ)、受容体チロシンキナーゼ(RTKs)、例えば上皮増殖因子受容体(EGFR)、インスリン様増殖因子−1受容体(IGF−1R)、およびGタンパク質共役受容体(GPCRs)に関する。いくつかの実施態様では、経路はJNK/JUN経路である。いくつかの実施態様では、表4から選択される遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、患者がJNK阻害ケラチノサイト(JNK-inhibited keratinocytes)の遺伝子セットプロファイルを有している場合に、治療のための患者が同定される。
【0053】
いくつかの実施態様では、遺伝子はmiR−129および/またはmiR−155である。いくつかの実施態様では、miR−129の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、miR−129、miR−802およびmiR−548eの全ての低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。特定の実施態様では、miR−155の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、低発現遺伝子はmiR−129であり、または過剰発現遺伝子はmiR−155である。いくつかの実施態様では、OR10A4、RUNDC3B、C8ORF48、HS.539400、LOC100133511、HS.153034、miR−129、LOC401629、およびLOC641860の1つ以上もしくは全ての低発現、ならびに/またはLOC442245、FRMD3、IFNE1、MUC19、LOC643345、C15ORF5、LOC644280、およびmiR−155の1つ以上もしくは全ての過剰発現が患者に検出されている場合に、治療のための患者が選択される。
【0054】
いくつかの実施態様では、jun−N末端キナーゼ/c−Jun分子経路の遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、表3および4から選択される遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの1つ以上の遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子の全ての低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。
【0055】
いくつかの実施態様では、表1および3〜5のいずれか1つの表の遺伝子の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40もしくは45個、またはc−Jun N末端キナーゼ遺伝子の遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、表2または6の遺伝子の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40または45個の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される。いくつかの実施態様では、複数の遺伝子、例えば、表1、3、4、および/もしくは5の遺伝子の少なくとも10%、20%、50%もしくは75%、ならびに/もしくはc−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの低発現、ならびに/または表2および/もしくは6から選択される複数の遺伝子、例えば、表2および/もしくは6の遺伝子の少なくとも10%、20%、50%もしくは75%の過剰発現が観察されている場合に、治療のための患者が同定される。
【0056】
別の態様では、本発明は、エザチオスタットまたはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を有する患者の応答確率を評価する方法であり、患者から生体試料を得ること、ならびに試料中の表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定することを含む方法に向けられている。いくつかの実施態様では、表1および/または表2、ならびにc−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットから選択される1つまたは複数の遺伝子の存在および/または発現レベルが測定される。いくつかの実施態様では、表1および3〜5から選択される遺伝子の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。特定の実施態様では、表2および6から選択される遺伝子の過剰発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。
【0057】
いくつかの実施態様では、表3から選択される経路の遺伝子の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。いくつかの実施態様では、経路はmTOR、JAK2またはJNK経路である。いくつかの実施態様では、経路はJNK/JUN経路である。いくつかの実施態様では、表4から選択される遺伝子の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。いくつかの実施態様では、患者がJNK阻害ケラチノサイト(JNK-inhibited keratinocytes)の遺伝子セットプロファイルを有している場合、患者は治療に応答する可能性がある。
【0058】
いくつかの実施態様では、OR10A4、RUNDC3B、C8ORF48、HS.539400、LOC100133511、HS.153034、miR−129、LOC401629、およびLOC641860の1つ以上もしくは全ての低発現、ならびに/またはLOC442245、FRMD3、IFNE1、MUC19、LOC643345、C15ORF5、LOC644280、およびmiR−155の1つ以上もしくは全ての過剰発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。
【0059】
いくつかの実施態様では、遺伝子はmiR−129、miR−802、miR−548eおよびmiR−155からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、miR−129、miR−802、およびmiR−548eからなる群から選択される遺伝子の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。いくつかの実施態様では、miR−129の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。特定の実施態様では、miR−155の過剰発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。いくつかの実施態様では、miR−129およびmiR−155の発現が測定される。
【0060】
いくつかの実施態様では、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの遺伝子の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。いくつかの実施態様では、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子の全ての低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。
【0061】
いくつかの実施態様では、表1および3〜5のいずれか1つの表の遺伝子の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40もしくは45個、またはc−Jun N末端キナーゼ遺伝子の遺伝子の低発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。いくつかの実施態様では、表2または6の遺伝子の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40または45個の過剰発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。いくつかの実施態様では、複数の遺伝子、例えば、表1、3、4、および/もしくは5の遺伝子の少なくとも10%、20%、50%もしくは75%、ならびに/もしくはc−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの低発現、ならびに/または表2および/もしくは6から選択される複数の遺伝子、例えば、表2および/もしくは6の遺伝子の少なくとも10%、20%、50%もしくは75%の過剰発現の検出は、患者が治療に応答する可能性があることを示す。
【0062】
本発明の別の態様は、患者の骨髄異形成症候群を治療する方法であり、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量を投与することを含む方法であって、表1、3、4および5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が患者に検出されている、方法である。いくつかの実施態様では、本明細書で記載されているように、低発現または過剰発現している1つ以上の遺伝子が患者に検出されている。
【0063】
本発明の別の態様は、患者の骨髄異形成症候群を治療する方法であり、患者の生体試料を検査することによって、患者の遺伝子であって、表1〜6から選択される遺伝子の発現レベルを測定すること、ならびに表1、3、4、および5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量を患者に投与することを含む方法である。
【0064】
いくつかの実施態様では、2つ以上の遺伝子の発現が測定される。
【0065】
いくつかの実施態様では、該方法は、患者の遺伝子であって、miR−129、miR−802、miR−548eおよびmiR−155からなる群から選択される遺伝子の発現レベルを測定すること、ならびにmiR−129、miR−802およびmiR−548eから選択される遺伝子の低発現、ならびに/またはmiR−155の過剰発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量を患者に投与することを含む。いくつかの実施態様では、miR−129および/またはmiR−155の発現が測定される。いくつかの実施態様では、miR−129の低発現および/またはmiR−155の過剰発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される。
【0066】
いくつかの実施態様では、該方法は、患者から得られた試料を検査することによって、患者における表1、2および4から選択される遺伝子の発現レベルを測定すること、ならびに表1および4から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2から選択される遺伝子の過剰発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットもしくはその塩を患者に投与することを含む。いくつかの実施態様では、該方法は、患者における表3から選択される経路の遺伝子の発現レベルを測定すること、および遺伝子の低発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩を患者に投与することを含む。いくつかの実施態様では、該経路はmTOR、JAK2またはJNK経路である。いくつかの実施態様では、該経路はJNK/JUN経路である。
【0067】
いくつかの実施態様では、miR−129の低発現およびmiR−155の過剰発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される。いくつかの実施態様では、OR10A4、RUNDC3B、C8ORF48、HS.539400、LOC100133511、HS.153034、miR−129、LOC401629およびLOC641860の1つ以上または全ての低発現、ならびに/またはLOC442245、FRMD3、IFNE1、MUC19、LOC643345、C15ORF5、MIR155HG、LOC644280およびmiR−155の1つ以上または全ての過剰発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される。
【0068】
いくつかの実施態様では、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの遺伝子の低発現が検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される。いくつかの実施態様では、c−Jun N末端キナーゼ遺伝子の全ての低発現が検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される。
【0069】
いくつかの実施態様では、表1および3〜5のいずれか1つの表の遺伝子の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40もしくは45個、またはc−Jun N末端キナーゼ遺伝子の遺伝子の低発現が検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩が患者に投与される。いくつかの実施態様では、表2または6の遺伝子の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40または45個の過剰発現が検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩が患者に投与される。いくつかの実施態様では、表1、3、4、および/もしくは5から選択される複数の遺伝子、例えば、表1、3、4、および/もしくは5の遺伝子の少なくとも10%、20%、50%もしくは75%、ならびに/もしくはc−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの低発現、ならびに/または表2および/もしくは6から選択される複数の遺伝子、例えば、表2および/もしくは6の遺伝子の少なくとも10%、20%、50%もしくは75%の過剰発現が検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩が患者に投与される。
【0070】
いくつかの実施態様では、表1および5の遺伝子は、表1Aに記載されているEntrez Gene IDsまたはUGIDsを有する遺伝子であるか、またはその他は当該技術分野で周知である。いくつかの実施態様では、表2および6の遺伝子は、表2Aに記載されているEntrez Gene IDsまたはUGIDsを有する遺伝子であるか、またはその他は当該技術分野で周知である。いくつかの実施態様では、表4の遺伝子は、表4Aに記載されているEntrez Gene IDsまたはUGIDsを有する遺伝子であるか、またはその他は当該技術分野で周知である。いくつかの実施態様では、遺伝子はヒト遺伝子であり、患者はヒトである。
【表7−1】

【表7−2】

【表7−3】


【表8−1】

【表8−2】

【表8−3】

【表8−4】


【表9−1】

【表9−2】

【0071】
c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの遺伝子は、JNK1(4つのアイソフォーム)、JNK2(4つのアイソフォーム)およびJNK3(2つのアイソフォーム)を含む。
【0072】
いくつかの実施態様では、生体試料は骨髄である。いくつかの実施態様では、生体試料は不純物から単離される。
【0073】
本発明の方法では、遺伝子発現の存在を決定することは、遺伝子の遺伝子発現の存在または不存在を検出すること、および遺伝子の遺伝子発現のレベルを決定することを包含し、通常は、患者の生体試料を検査することによって実施される。いくつかの実施態様では、遺伝子発現の決定または生体試料の検査は、インビトロで実施される。
【0074】
いくつかの実施態様では、遺伝子の存在および/または発現レベルを決定する、またはデータを関連付ける1つ以上のステップは、適切な通常のソフトウェアを備えたコンピュータによって実施される。
【0075】
遺伝子の発現レベルは、ベースライン遺伝子発現レベルと比較されてよい。ベースラインレベルは、いくつかの方法で確立されてよい。例えば、ベースラインは、健常な個体のプール、治療に応答するMDSを有する患者、または治療に応答しない患者、さらには、適切な細胞培養液から採取した遺伝子発現レベルの情報を整理統合するガイドの作成を通じて確立されてよい。さらに、特定の遺伝子の遺伝子発現のベースラインレベルの情報は、公開されている情報源または遺伝子データベースから集められてよい。それゆえ、ベースラインは、類似の患者集団の遺伝子発現レベル情報から得ることができ、または確立することができる。ベースラインは、標準試料の遺伝子発現レベルによって表すこともできる。
【0076】
生体試料の抽出方法、ならびに遺伝子の存在および発現を測定する方法は、一般に当該技術分野で周知である。検出は、いずれかの適切な方法、例えば、遺伝子から転写されたmRNAの量、遺伝子から転写されたmRNAの逆転写から生じたcDNAの量、または遺伝子によってコードされたポリペプチドもしくはタンパク質の量を検出することによってすることができる。遺伝子は、通常の方法によって細胞または組織試料から単離されてよい。例えば、mRNAは、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition (1989)に記載されている手順に従って、様々な溶菌酵素もしくは化学溶液を用いて単離することができ、または製造者によって提供される添付の説明書に従って核酸結合樹脂によって抽出することができる。単離された試料中に含有されている遺伝子のmRNAは、ハイブリダイゼーション(例えばノーザンブロット分析)および/または増幅手順、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、当該技術分野で周知の方法に従って検出することができる。
【0077】
これらの方法は、試料毎に実施することができ、またはハイスループット分析用に修正することができる。例えば、遺伝子の転写活性は、遺伝子チップ、例えばAffymetrix HG−U133−Plus−2 GeneChipsを用いてメッセンジャーRNAのレベルを測定することによって評価されてよい。チップアッセイの結果は、当該技術分野で周知のコンピュータソフトウェアプログラムを用いて分析することができる。
【0078】
遺伝子の発現レベルは、タンパク質産物を調べることによって決定することもできる。タンパク質レベルを決定することは、(a)遺伝子の発現産物を含有する生体試料を提供すること;および(b)試料中の遺伝子の発現産物を選択的に認識および結合する抗体との間で生じるいずれかの免疫特異的結合の量を測定すること(免疫特異的結合の量が遺伝子発現のレベルを示す)、または(c)遺伝子を正または負に調節するタンパク質の結合をモニターすることを含んでよい。この情報を所定のベースラインと比較し、分析し、治療に適した患者を同定することができる。
【0079】
タンパク質または遺伝子分析のために、当該技術分野で様々な技術を利用することができ、例えば限定されるものではないが、放射性免疫測定法、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」免疫測定法、免疫放射定量測定法、インサイツ免疫測定法(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位元素標識を用いる)、ノーザンブロット分析、ウエスタンブロット分析、免疫沈降アッセイ、免疫蛍光アッセイ、フローサイトメトリー、免疫組織化学、共焦点顕微鏡、酵素アッセイ、タイリングアレイ、DNAマイクロアレイおよびPAGE−SDSなどである。
【0080】
エザチオスタットまたはその塩による治療に応答する可能性がある患者の同定に有用なデータベースであって、遺伝子発現プロファイルデータ、例えば、治療に応答した患者の遺伝子発現プロファイル、および/または治療に応答しなかった患者の遺伝子発現プロファイルを含有するデータベースも、本出願の範囲内に含まれる。患者の試料の検査結果は、当該技術分野で周知のバイオインフォマティクス技術を用いてデータベースと比較することができ、患者がエザチオスタットまたはその塩による治療に応答する可能性があるかどうかを決定することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩、例えば、エザチオスタット塩酸塩は、2011年5月16日に出願された米国特許出願公開第2011/0301102号、タイトル「COMPOSITIONS AND METHODS FOR TREATING MYELODYSPLASTIC SYNDROME(骨髄異形成症候群を治療するための組成物および方法)」(その全体において参照することによって援用される)に記載されている投与計画によって投与される。
【0082】
典型的には、エザチオスタットまたはその塩は、治療的有効量にて投与される。本発明のいくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、1日当たり最大約3.5グラムのエザチオスタット塩酸塩で投与され、または等量(エザチオスタット含有量に関して)のエザチオスタット自体もしくはエザチオスタットの別の塩で投与される。好ましい実施態様では、エザチオスタットまたはその塩の投薬は、最大約1.5グラムの治療的有効量の1日2回(b.i.d.)投与である。
【0083】
いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、少なくとも2週間毎日投与される。いくつかの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、少なくとも3週間毎日投与される。
【0084】
本発明の1つの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、1グラム投与量にて1日2回、3週間投与され、続いてエザチオスタットまたはその塩が投与されない1週間の中断がある。中断後、必要であれば投与計画を繰り返してもよい。この投与計画は、「3週間投与計画」と呼んでよい。
【0085】
本発明の別の実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、1.5グラム投与量にて1日2回、2週間投与され、続いてエザチオスタットまたはその塩が投与されない1週間の中断がある。中断後、必要であれば投与計画を繰り返してもよい。この投与計画は、「2週間投与計画」と呼んでよい。
【0086】
本発明の別の実施態様では、患者は、好ましくは最大1.5グラム投与量にて1日2回投与される、1日当たり最大3グラムのエザチオスタットまたはその塩の治療的有効量で持続的に治療される。この実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、患者が必要とし、かつ、該治療に耐えることができる限り投与することができる。この実施態様では、治療計画に中断がある場合、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量はそれより少なくても多くてもよいと考えられる。この投与計画は、「持続的投与計画」と呼んでよい。
【0087】
1日2回投与が好ましい一方、1日1回投与または1日3回投与を利用することもできると考えられる。前者の場合、1日1回投与は患者の服薬遵守を援助するであろう;一方後者の場合、より大型の錠剤の嚥下が困難な患者のために、より小型の錠剤を用いることができる。投与される薬物の量は、1日当たり投与される総薬物が治療的有効量になるように調節されるであろう。
【0088】
エザチオスタットまたはその塩による治療は、本明細書に記載されている投与計画の1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでよい。以下は、エザチオスタット塩酸塩の投薬スケジュールを例証するものである:
・1.5グラムのエザチオスタット塩酸塩について、1日2回、2週間、総投薬量42グラムを投与し、続いて1週間エザチオスタットまたは塩を投与しない;
・1グラムのエザチオスタット塩酸塩について、1日2回、3週間、総投薬量42グラムを投与し、続いて1週間エザチオスタットまたは塩を投与しない;
・1グラムのエザチオスタット塩酸塩を、投与を中止することが患者にとって適切であると主治医が見なすまで1日2回持続的に投与する;
・1日当たり最大3グラムのエザチオスタット塩酸塩の治療的有効量を、1、2、または3回の分割用量にて2週間投与し、続いて1週間エザチオスタットまたは塩を投与しない;
・1日当たり最大2グラムのエザチオスタット塩酸塩の治療的有効量を、1、2、または3回の分割用量にて3週間投与し、続いて1週間エザチオスタットまたは塩を投与しない;ならびに/または
・1日当たり最大2グラムのエザチオスタット塩酸塩の治療的有効量を、投与を中止することが患者にとって適切であると主治医が見なすまで、1、2、または3回の分割用量にて持続的に投与する。
【0089】
等量のエザチオスタットまたはその別の塩(エザチオスタット含有量に関して)を、上記投薬におけるエザチオスタット塩酸塩と交換してよい。
【0090】
エザチオスタットまたはその塩の投与が1日2回である場合、第一投与と第二投与の間隔は約6〜14時間であることが好ましく、好ましくは約8〜14時間である。
【0091】
1つの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩、例えば、エザチオスタット塩酸塩は、例えば米国特許第7,029,695号(その全体において参照することによって援用される)に記載されている脂質製剤として、静脈内投与することができる。
【0092】
1つの実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、経口投与することができる。別の実施態様では、エザチオスタットまたはその塩は、錠剤製剤として投与することができる。そのような錠剤製剤は、2011年3月29日に出願された米国特許出願公開第2011/0300215号、タイトル「TABLET FORMULATION OF EZATIOSTAT(エザチオスタットの錠剤製剤)」(その全体において参照することによって援用される)に開示されている。
【0093】
いくつかの実施態様では、エザチオスタット塩酸塩は、2011年3月4日に出願された米国特許出願公開第2011/0301088号(その全体において参照することによって援用される)に記載されているその非溶媒和物(ansolvate)または多形である。いくつかの実施態様では、エザチオスタットは、2011年12月2日に出願された米国仮特許出願第61/566,454号、および2012年4月2日に出願された米国仮特許出願第61/619,286号、いずれもタイトル「Amorphous Ezatiostat Ansolvate(非晶質エザチオスタット非溶媒和物)」(それらの全体において参照することによって援用される)に記載されているような、エザチオスタットの医薬的に許容される塩の非晶質形態である。
【0094】
3.アッセイおよび装置
本発明のさらに別の態様は、エザチオスタットもしくはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を有する患者を同定するための、および/またはエザチオスタットもしくはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を有する患者の応答確率を評価するためのアッセイであり、患者の生体試料を検査すること、ならびに試料中の表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定することを含むアッセイである。表1および3〜5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が検出されている場合に、患者は治療のために同定され、または治療に応答する可能性があるとみなされる。
【0095】
本発明のさらに別の態様は、エザチオスタットまたはその塩による治療に適切な骨髄異形成症候群を有する患者を同定するためのアッセイであり、患者の生体試料を検査すること、試料中の表1〜6から選択される1つ以上の遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定すること、該遺伝子の発現レベルを同定すること、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現の存在を確認すること、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現の存在と、治療に対する患者の応答確率を関連付けることであり、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現の検出が、患者がエザチオスタットまたはその塩による治療に適切であることを示すこと、を含むアッセイである。
【0096】
本発明のさらに別の態様は、エザチオスタットまたはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を有する患者の応答率をアッセイするためのアッセイであり、表1および3〜5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現を検出するための手段を含むアッセイである。検出するための手段は、本明細書に記載されている遺伝子に適用するために当該技術分野で周知の手段を含み、例えば、本明細書に記載されている遺伝子およびタンパク質分析方法を含む、遺伝子の発現レベルを決定する方法である。
【0097】
本発明のさらに別の態様は、エザチオスタットまたはその塩による治療に適切な骨髄異形成症候群を有する患者を同定するための装置であり、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現を示す出力媒体を含む装置を提供する。
【0098】
いくつかの実施態様では、該装置はさらに、表1〜6から選択される1つ以上の遺伝子の存在および/または発現レベルを検出することができる遺伝子チップを含む。
【0099】
本発明のさらに別の態様は、コンピュータ可読媒体であって、実行された場合に、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が、骨髄異形成症候群を有する患者から得られた試料に存在しているかどうかを決定するコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。いくつかの実施態様では、該コードはさらに、エザチオスタットもしくはその塩による治療に対する患者の応答確率を決定し、ならびに/または表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が存在していることが決定された場合、エザチオスタットまたはその塩による治療のための患者を同定する。
【0100】
本発明のさらに別の態様は、コンピュータ可読媒体であって、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が、患者から得られた試料に存在しているかどうかを入力し、実行された場合に、エザチオスタットもしくはその塩による治療に対する患者の応答確率、および/または患者がエザチオスタットもしくはその塩による治療に適しているかどうかを決定するコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。
【0101】
いくつかの実施態様では、該コンピュータ可読媒体は、回収可能な形態、例えばハードドライブ、コンピュータ画面、メモリ、フラッシュドライブ、コンパクトディスク、クラウドサーバーなどの形態を有する。
【0102】
本発明のさらに別の態様は、コンピュータシステムであって、プロセッサ、メモリ、ならびに実行された場合に、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が骨髄異形成症候群を有する患者から得られた試料に存在しているかどうかを決定するコードを含むコンピュータシステムを提供する。いくつかの実施態様では、該システムはさらに、エザチオスタットもしくはその塩による治療に対する患者の応答確率を決定し、ならびに/または表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が存在していることが決定された場合に、エザチオスタットもしくはその塩による治療のための患者を同定する。いくつかの実施態様では、本発明は、コンピュータシステムであって、プロセッサ、メモリ、ならびに、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が、患者から得られた試料に存在しているかどうかを入力し、実行された場合に、エザチオスタットもしくはその塩による治療に対する患者の応答確率、および/または患者がエザチオスタットもしくはその塩による治療に適しているかどうかを決定するコードを含むコンピュータシステムを提供する。いくつかの実施態様では、該コンピュータシステムは、回収可能な形態を有する決定、例えばメモリ、フラッシュドライブ、コンパクトディスク、クラウドサーバー、印刷された文書などに保存された情報を提供する。
【0103】
アッセイおよび装置の態様のいくつかの実施態様では、1つ以上の遺伝子は本明細書に記載されている遺伝子である。
【0104】
別の態様では、本発明は、エザチオスタットもしくはその塩による治療に対する患者の応答確率を決定し、および/またはエザチオスタットもしくはその塩による治療のための患者を同定するための、アッセイ、装置またはシステムを用いる方法を提供する。
【実施例】
【0105】
本発明は、以下の実施例への言及によってさらに定義される。物質および方法の両方に対する多くの修正が、本発明の範囲から逸脱することなく実行されてよいことは、当業者には明らかであろう。
【0106】
エザチオスタット塩酸塩による治療に応答する可能性がある骨髄異形成症候群患者を同定するための遺伝子発現研究
エザチオスタット塩酸塩による治療に応答した患者を特徴付ける予備的プロファイルを作成するために、臨床現場で明らかにされた問題を基礎研究によって探求する手法(bedside to bench approach)を用いた。経口エザチオスタット塩酸塩の第II相研究における低リスクおよび中間−1リスク(low−Int1)のMDS患者の多系列応答(multilineage responses)に基づいて、low−Int1のMDS患者について多施設での第II相研究を実施した。全患者は、国際予後判定システム(International Prognostic Scoring System (IPSS))によって決定した場合に、低リスクまたは中間−1リスクのMDSを有し、研究参加(study enrollment)前の4週間、増殖因子を摂取しなかった。応答は、国際ワーキンググループ(IWG2006)基準(Greenberg P, et al., International scoring system for evaluating prognosis in myelodysplastic syndromes. Blood 1997;89(6):2079-88;およびCheson BD, et al., Clinical application and proposal for modification of the International Working Group (IWG) response criteria in myelodysplasia. Blood 2006;108:419-25)によって評価した。エザチオスタット塩酸塩で治療された患者の治療前骨髄単核細胞を、トリゾール(Trizol(登録商標))(インビトロゲン社、カールズバッド、カリフォルニア州)中、−80℃で保存した。実験は、治験審査委員会(Institutional Review Board(IRB))の承認を得て実施した。
【0107】
マイクロアレイ
トリゾール(Trizol(登録商標))を用いて5〜10×10個の単核細胞から全RNAを精製し、製造者のプロトコールに従ってイルミナ社製HT12v4全ゲノムアレイ(Illumina HT12v4 whole genome array)で遺伝子発現を分析した。骨髄単核細胞から単離されたRNAは、9人の応答者および21人の非応答者について入手することができた。9人の応答者のうち、1人はベースラインの単一赤血球減少を有し、1人は単一血小板減少を有し、1人は赤血球−好中球減少を有し、2人は赤血球−血小板減少を有し、2人は好中球−血小板減少を有し、2人は三系統の血球減少(trilineage cytopenia)を有していた。非応答者のうち、11人の患者は単一赤血球減少を有し、1人は単一血小板減少を有し、1人は単一好中球減少を有し、2人は赤血球−血小板減少を有し、2人は赤血球−好中球減少を有し、1人は三系統の血球減少(trilineage cytopenia)を有していた。18人の患者が不応性貧血(RA)を有し;8人が環状鉄芽球を伴うRA(RARS)を有し;3人が芽球増加を伴うRA−1(RAEB−1)を有し;1人がRAEB−2を有していた。患者試料は、応答者群および非応答者群の両方で類似の表示を有していた。
【0108】
5人の応答者および13人の非応答者をランダムに選択して訓練集合を作成し、残りの試料はモデルの検証のために後に使用することとした。上位100種の異なって発現した遺伝子は、正規化およびリスケールした(rescaled)相互情報量に基づいた高感度計量を用いて同定した。単一試料遺伝子セット濃縮解析(Single-sample Gene Set Enrichment Analysis)も実施し、応答者と非応答者の間で経路および生物学的プロセスに関して最も顕著な相違を見出した。
【0109】
遺伝子マーカー分析
応答者(R)対非応答者(NR)表現型に関連する遺伝子の選択は、正規化およびリスケールした(rescaled)相互情報量スコア(NMI)を用いて得られた。この量は、表現型と各遺伝子プロファイルの間の同時確率分布および相互情報量のカーネル密度ベースの推定を用いて得られた。次いで、得られた相互情報量(Cover T and Thomas J, Elements of Information Theory, 2nd. Ed. Wiley Series in Telecommunications and Signal Processing (2006))を結合エントロピーによって正規化してより普遍的な計量を提供し(Li M, et al., The similarity metric. IEEE Trans. on Inf. Theory 2004; 50(12): 3250-3264)、間隔[0,1]にリスケールし(rescaled)、表現型と遺伝子プロファイルの間のピアソン相関の記号に従って定義される「方向性(directionality)」記号を割り当てた。このNMIスコアを用いる完全な遺伝子−表現型マッチ(アンチマッチ(anti-match))は+1(−1)値に相当し、ランダムマッチはおよそ0に達する。特定のNMIスコアの有意性は、典型的には並べ替え検定によって推定され、表現型の値が何度もランダムに並べ替えられ、ランダム置換のマッチングスコアが実際のスコアよりも極端な値(extreme)になったことが何度あるかに従って名目上のp値が計算される。並べ替え検定は実施されなかった。最高(50)および最低(50)NMIスコアを有する100種の遺伝子を分析した。
【0110】
遺伝子セット/経路分析
上記遺伝子マーカー分析と独立して、単一試料遺伝子セット濃縮解析(single-sample Gene Set Enrichment Analysis (ssGSEA))を用いて、経路のスペースに遺伝子プロファイルを計画した(Barbie DA, et al. Systematic RNA interference reveals that oncogenic KRAS-driven cancers require TBK1. Nature 2009;462(7269): 108-12; Subramanian A, et al. Gene set enrichment analysis: a knowledge-based approach for interpreting genome-wide expression profiles. Proc Natl Acad Sci U S A. 2005;102(43):15545-50; Jagani Z, et al. Loss of the tumor suppressor Snf5 leads to aberrant activation of the Hedgehog-Gli pathway. Nat Med. 2010;16:1429-1433; Wolfer A, et al. MYC regulation of a "poor-prognosis" metastatic cancer cell state. Proc Natl Acad Sci U S A. 2010;107(8):3698-703; Cho YJ, et al. Integrative Genomic Analysis of Medulloblastoma Identifies a Molecular Subgroup That Drives Poor Clinical Outcome. J Clin Oncol. 2011;29(11):1424-30; Tamayo P, et al. Predicting relapse in patients with medulloblastoma by integrating evidence from clinical and genomic features. J. Clin Oncol. 2011; 29(11):1415-23.)。
【0111】
遺伝子発現値を最初にランク正規化(rank-normalized)し、試料毎に独立に分類した。次いで、i)遺伝子セット中の遺伝子対ii)セット中にない遺伝子の経験的累積分布関数(CDF)の間の総加重差に基づいて、各遺伝子セット/経路についての遺伝子毎の濃縮スコアを計算した。この手順は標準的な遺伝子セット濃縮解析(standard Gene Set Enrichment Analysis)の計算と類似しているが(Subramanian A, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2005;102(43):15545-50)、発現差異よりむしろ絶対発現に基づいており、CDFのゼロからの最大偏差よりむしろ全体の差異に基づいている。
【0112】
応答者対非応答者の表現型とより関連する遺伝子セット/経路の選択は、遺伝子プロファイルで行ったように(上記参照)、正規化およびリスケールした(rescaled)相互情報量スコア(NMI)を用いて得られた。遺伝子セット/経路の出所は以下の通りである:i)モレキュラー・シグネチャーズ・データベース(Molecular Signatures Database(MSigDB))リリース2.5(www.broadinstitute.org/msigdb)由来の精選された機能性遺伝子セットのC2サブコレクション;ii)我々の研究室で作成されたデータから、GEOデータセットから、および生物医学文献から定義された300種以上の遺伝子セットを含有する癌遺伝子活性化のサイン(signatures)の内部のデータベース;ならびにiii)造血細胞集団を表す遺伝子セット(Novershtern N, et al. Densely interconnected transcriptional circuits control cell states in human hematopoiesis. Cell 2011;144(2):296-309)。全2,776種の遺伝子セットを検討した。選択分析は、30種の最高および30種の最低NMIスコアを有する60種の遺伝子セット/経路に限定した。
【0113】
上位100種のマーカー遺伝子(応答者において50種の低発現および50種の過剰発現している遺伝子、それぞれ表1および2)を、正規化相互情報量(NMI)に基づいて高感度計量を用いて同定した。中でも注目すべきは、異なって発現している2つのマイクロRNA(miR)遺伝子である。応答者は、miR−129が低発現しており、miR−155が過剰発現している。miRNAsは、mRNAの3’UTRに結合する18〜25ヌクレオチドの低分子の非コードRNAsであり、抑制された翻訳またはmRNA分解をもたらす。
【0114】
単一試料遺伝子セット濃縮解析(Single-sample Gene Set Enrichment Analysis)を実施し、応答者と非応答者の間で経路および生物学的プロセスに関する最も顕著な相違を見出した。中でも注目すべきは、3つの経路、mTOR、JAK2およびJNKは、応答者において全て低発現しているのが見られた(表3)。
【0115】
最後に、そして最も顕著なのは、JNK/JUN経路も応答患者において低発現しているという発見であった。この遺伝子セットは、GEOデータセットGDS2081によって定義され、初代培養したヒト表皮ケラチノサイトにおける発現研究から得られ、活性化JNK/JUNをJNK阻害剤SP600125にさらし、Affymetrix HGU95Av2 arraysで分析した(Gazel A, et al. Inhibition of JNK promotes differentiation of epidermal keratinocytes, J Biol Chem. 2006; 281(29):20530-41)。応答者/非応答者のヒートマップは、上位/下位200種の遺伝子を組み合わせた濃縮スコア(combined enrichment score)から得られ、その上位の発現遺伝子は、表4に示している。中でも注目すべきは、JNK阻害ケラチノサイト(JNK-inhibited keratinocytes)の遺伝子セットプロファイルは、エザチオスタットに応答する患者の遺伝子セットプロファイルと高度に類似していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の骨髄異形成症候群を治療する方法であり、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量を該患者に投与することを含む方法であって、表1、3、4および5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が患者に検出されている、方法。
【請求項2】
低発現遺伝子がmiR−129であるか、または過剰発現遺伝子がmiR−155である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
miR−129の低発現および/またはmiR−155の過剰発現が患者に検出されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの1つ以上の遺伝子の低発現が患者に検出されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
mTOR、JAK2またはJNK経路の1つ以上の遺伝子の低発現が患者に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エザチオスタットまたはその塩による治療のための骨髄異形成症候群を有する患者を同定する方法であって、患者の生体試料を検査して表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定することを含む方法であって、表1、3、4および5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される、方法。
【請求項7】
表1、3および4から選択される遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
表2から選択される遺伝子の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
低発現遺伝子がmiR−129であるか、または過剰発現遺伝子がmiR−155である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
miR−129の低発現が検出されている場合、および/またはmiR−155の過剰発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
遺伝子がc−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの1つ以上の遺伝子である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
mTOR、JAK2またはJNK経路の1つ以上の遺伝子の低発現が検出されている場合に、治療のための患者が同定される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
生体試料が骨髄である、請求項6〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
エザチオスタットまたはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を有する患者の応答確率を評価する方法であって、患者の生体試料を検査すること、ならびに表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定することを含む方法。
【請求項15】
表1、3および4から選択される遺伝子の低発現の検出が、患者が治療に応答する可能性があることを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
表2から選択される遺伝子の過剰発現の検出が、患者が治療に応答する可能性があることを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
遺伝子がmiR−129またはmiR−155である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
miR−129の低発現の検出、および/またはmiR−155の過剰発現の検出が、患者が治療に応答する可能性があることを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
遺伝子がc−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの1つ以上の遺伝子である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
mTOR、JAK2またはJNK経路の1つ以上の遺伝子の低発現の検出が、患者が治療に応答する可能性があることを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
生体試料が骨髄である、請求項14〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
患者の骨髄異形成症候群を治療する方法であり、該患者からの試料をアッセイして表1〜6から選択される遺伝子の存在および/または発現レベルを測定すること、ならびに表1、3、4および5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現が患者の試料に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量を患者に投与することを含む方法。
【請求項23】
遺伝子がmiR−129またはmiR−155である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
miR−129の低発現および/またはmiR−155の過剰発現が試料に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
c−Jun N末端キナーゼ遺伝子セットの1つ以上の遺伝子の低発現が試料に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
c−Jun N末端キナーゼ遺伝子の全ての低発現が試料に検出されている場合に、エザチオスタットまたはその塩の治療的有効量が患者に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
エザチオスタットまたはその塩による治療に対する応答確率が向上している、骨髄異形成症候群を患っている患者を同定するためのアッセイであって、
試料中の表1〜6から選択される遺伝子の存在を検出すること、および/または発現レベルを測定すること、
該遺伝子の発現レベルを同定すること、
表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現の存在を確認すること、
表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現の存在と、治療に対する患者の応答確率を関連付けることであり、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現のいずれかの検出が、エザチオスタットまたはその塩による治療に対する患者の応答の可能性が向上していることを示すこと、
を含むアッセイ。
【請求項28】
エザチオスタットまたはその塩による治療に対する、骨髄異形成症候群を患う患者の応答率をアッセイするためのアッセイであって、表1および3〜5から選択される遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される遺伝子の過剰発現の検出のための手段を含む、アッセイ。
【請求項29】
エザチオスタットまたはその塩による治療に対する応答確率が向上している、骨髄異形成症候群を患っている患者を同定するための装置であって、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が患者にあるかどうかを示す出力媒体を含む、装置。
【請求項30】
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、実行された場合に、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が、骨髄異形成症候群を有する患者から得られた試料に存在しているかどうかを決定するコードを含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項31】
コンピュータシステムであって、プロセッサ、メモリ、ならびに実行された場合に、表1、3、4および5から選択される1つ以上の遺伝子の低発現、ならびに/または表2および6から選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現が、骨髄異形成症候群を有する患者から得られた試料に存在しているかどうかを決定するコードを含む、コンピュータシステム。

【公開番号】特開2013−63952(P2013−63952A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−172537(P2012−172537)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【出願人】(593182956)テリック,インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】