エスカレータ用帰路側案内レール要素
【課題】第2案内レール要素において、手すり帰路部分の取り外しを容易にかつ短時間で行えるようにすることである。
【解決手段】第2案内レール要素48は、帰路側案内レール21の長さ方向一部を構成するもので、レール基部60と、一対の手すり案内部62とを備える。レール基部60は、上方に突出するネジ部を有するボルト56を固定するとともに、取り付け部44に支持する。各手すり案内部62は、レール基部60の下部に長さ方向に対し直交する幅方向両側に伸びるように支持し、手すり帰路部分19を上側で案内するとともに、それぞれに加わる下側への所定以上の大きさの荷重により、下側への揺動を可能とする。
【解決手段】第2案内レール要素48は、帰路側案内レール21の長さ方向一部を構成するもので、レール基部60と、一対の手すり案内部62とを備える。レール基部60は、上方に突出するネジ部を有するボルト56を固定するとともに、取り付け部44に支持する。各手すり案内部62は、レール基部60の下部に長さ方向に対し直交する幅方向両側に伸びるように支持し、手すり帰路部分19を上側で案内するとともに、それぞれに加わる下側への所定以上の大きさの荷重により、下側への揺動を可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータの移動手すりの下側である手すり帰路部分を案内する帰路側案内レールの長さ方向一部を構成するエスカレータ用帰路側案内レール要素に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアの一種であるエスカレータは、トラスに設けられた移送手段により複数の踏段が移動可能に支持されており、踏段の両側には欄干が設けられている。また、欄干の上面等、表面には、踏段の移動に伴って循環移動する移動手すりが設けられている。移動手すりは、下側部分を構成する手すり帰路部分が欄干内側に案内されている。移動手すりは、ゴム等の材料により構成されている。また、移動手すりの上側部分を含む手すり往路部分は、欄干上側に固定され、鉄等の金属等により構成された往路側案内レールにより移動が案内されている。
【0003】
また、移動手すりの手すり帰路部分は、欄干下側で、駆動ローラと押圧ローラとにより厚さ方向に押圧され、駆動ローラが、スプロケット、チェーン等を介して駆動装置により駆動されている。また、手すり帰路部分は、トラスに固定され、鉄等の金属等により構成された帰路側案内レールにより移動が案内されている。なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−291567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように移動手すりの手すり帰路部分は帰路側案内レールにより案内されているが、帰路側案内レール及び手すり帰路部分は、トラスに設けられたデッキボード内の狭い空間で奥側が暗くなった場所に配置されており、配置場所が見えにくい状況となっている。一方、エスカレータの使用後は、定期点検または不調時の確認等のために、帰路側案内レールの表面の摩耗や劣化等を点検確認する場合がある。ただし、使用時には帰路側案内レールには手すり帰路部分が覆いかぶさっており、手すり帰路部分を帰路側案内レールから取り外す必要がある。この場合、従来は、踏段を取り外したり、デッキボードの一部を取り外し、その後、手すり帰路部分と帰路側案内レールとの係合部の間に特殊な冶具を挿入する等により、手すり帰路部分を帰路側案内レールから取り外すことが行われている。ただし、手すり帰路部分を取り外す作業は、上記のように見えにくい状況で行われ、かつ、冶具を挿入しにくい狭い部分で行われるため、冶具を使って手すり帰路部分を取り外す作業は容易ではなく、かつ、取り外し作業に長時間が必要となる可能性がある。
【0006】
このため、帰路側案内レールに対して手すり帰路部分の取り外しを容易にかつ短時間で行える手段の実現が望まれている。
【0007】
これに対して、特許文献1には、一対のレールフレームのそれぞれの上部の踏段の移動方向と直交する方向の片側に取り付けられた固定側レールと、他側に固定側レールと相対して、かつ、固定側レールの方向に移動可能に取り付けられた移動側レールとによりガイドレールを構成する移動手すりが記載されている。また、移動側レールを固定側レールの方向に移動させて、ガイドレールと移動手すりとの係合を解除して移動手すりの取り外しを可能とするとされている。ただし、この移動手すりを構成するガイドレールの構成は、移動手すりの上側の往路側部分の取り外しを容易に行えるようにするために考えられたもので、手すり帰路部分の取り外しを容易に行えるようにする面からは改良の余地がある。また、特許文献1の構成では、固定側レールに移動側レールを結合するためのボルトを緩めて移動側レールを固定側レールに対し移動させる必要があり、移動側レールの重量が大きくなると、その移動に力を要し、かつ、広い範囲を手で持って横方向に動かす必要があるので、手すり帰路部分の取り外しの容易化を図る面からは改良の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、エスカレータ用帰路側案内レール要素において、手すり帰路部分の取り外しを容易にかつ短時間で行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素は、エスカレータの移動手すりの下側を構成する手すり帰路部分を案内する帰路側案内レールの長さ方向一部を構成するエスカレータ用帰路側案内レール要素であって、上方に突出するネジ部を有するボルトが固定されるとともに、固定部に支持されるレール基部と、レール基部の下部に長さ方向に対し直交する横方向両側に伸びるように支持され、手すり帰路部分を上側で案内する一対の手すり案内部であって、それぞれに加わる下側への所定以上の大きさの荷重により、下側への揺動が可能となる一対の手すり案内部とを備えることを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素である。
【0010】
また、本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素において、好ましくは、ボルトは、固定部にネジ部を貫通させ、固定部の上側に突出したネジ部にナットを結合することにより、レール基部を固定部に支持しており、ボルトに対しナットがレール基部に近づく方向に締め付けられた場合に、レール基部が固定部に対し持ち上げられ、一対の手すり案内部が手すり帰路部分の下側に押し付けられることで、一対の手すり案内部が下側へ揺動する。
【0011】
また、本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素において、好ましくは、ボルトのネジ部が挿通され、固定部の上側に支持される規制用アダプタであって、横方向両端部からそれぞれ下側に延びる一対の下側腕部を含む規制用アダプタを備える。
【0012】
また、本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素において、好ましくは、ボルトのネジ部が挿通された挿通板部と、挿通板部の横方向両端部からそれぞれ下側に延びる一対の押圧腕部とを含む押し付け用アダプタを備え、ボルトのネジ部で挿通板部の上側に結合したナットが基部に近づく方向に締め付けられた場合に、各押圧腕部の先端部が一対の手すり案内部の上側に押し付けられることで、一対の手すり案内部が下側へ揺動する。
【0013】
また、本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素において、好ましくは、レール基部の下端部の横方向両端部に長さ方向に伸びるように支持された一対の支持軸と、各支持軸の少なくとも一部に設けられた基部側歯車と、各手すり案内部の基部側端部に設けられ、対応する基部側歯車と係合する揺動側歯車とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素によれば、手すり帰路部分の取り外し作業時に、ボルトに結合させたナットを回すことで手すり案内部を下側へ揺動させることができ、手すり案内部と手すり帰路部分との係合状態を解除できるので、手すり帰路部分の取り外しを容易にかつ短時間で行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の帰路側案内レール要素を備えるエスカレータの外観を示す略図である。
【図2】図1のエスカレータの上部を、一部断面にして示す拡大図である。
【図3】図2の断面で示した部分の拡大図である。
【図4】トラスに固定された、折り畳み不能な第1案内レール要素と、移動手すりとを示す断面図である。
【図5】作業者が、手すり帰路部分を帰路側案内レールから取り外す作業を行っている様子を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の帰路側案内レール要素である第2案内レール要素を示す斜視図である。
【図7】第2案内レール要素に移動手すりの手すり帰路部分を支持した状態を示す、図5の矢印A方向に見た図である。
【図8】手すり帰路部分の取り外し時において、図7の帰路側案内レール要素の一対の手すり案内部を下方へ揺動させる様子を示す、図7に対応する図である。
【図9】帰路側案内レール要素に設けられた基部側歯車にラチェット機構を係合させた様子を示す、図7のB部拡大対応図である。
【図10】本発明に係る第2の実施の形態の帰路側案内レール要素を示す、図7に対応する図である。
【図11】本発明に係る第3の実施の形態の帰路側案内レール要素を示す、図7に対応する図である。
【図12】手すり帰路部分の取り外し時において、図11の帰路側案内レール要素の一対の手すり案内部を下方へ揺動させる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図9は、本発明の第1の実施の形態を示している。
【0017】
まず、図1から図4を用いて、本実施の形態のエスカレータ用帰路側案内レール要素を備えるエスカレータの基本的構成を説明する。図1に示すように、エスカレータは、建物内の上側階床と下側階床とにかけわたすようにトラス10を設けており、トラス10の上部に左右方向(図1の表裏方向)に離れた一対の欄干12を設けている。トラス10に、無端状のチェーン(図示せず)により連結された図示しない複数の踏段を移動自在に設けている。
【0018】
各欄干12の上面を含む表面に、鉄等の金属等により構成された往路側案内レール14が固定されており、往路側案内レール14により、無端状の移動手すり16のうち、欄干12下側のデッキボード18内から露出した手すり往路部分15の移動が案内されている。移動手すり16は、断面C字形状を有する。また、移動手すり16は、往路側案内レール14にしたがって、欄干12下側のデッキボード18内にも案内されている。すなわち、図2、図3に示すように、デッキボード18(図1)内では、移動手すり16の下側部分を構成する手すり帰路部分19が、デッキボード18内でトラス10に固定された帰路側案内レール21により移動を案内されている。
【0019】
また、手すり帰路部分19は、欄干12下側で駆動ローラと押圧ローラとにより厚さ方向に押圧され、駆動ローラが、駆動装置により、スプロケット、チェーン等により構成する駆動機構を介して駆動されている。すなわち、図2、図3に示すように、トラス10の上側階床側の端部に、駆動装置を構成するモータ20と、モータ20の駆動を制御する制御盤(図示せず)とが設けられている。モータ20の回転軸に駆動スプロケット22が固定され、駆動スプロケット22と中間スプロケット24とにチェーン26がかけ渡されている。また、中間スプロケット24に一対の第2中間スプロケット28が固定されており、一対の第2中間スプロケット28からトラス10の左右方向(図2、図3の表裏方向)両側に一対設けられた手すり駆動装置30を構成する複数の従動スプロケット32及びテンションスプロケット34にチェーン36がかけ渡されている。
【0020】
各従動スプロケット32と同軸に駆動ローラ38が設けられており、駆動ローラ38が移動手すり16の厚さ方向片側(図2、図3の上側)に配置されている。また、駆動ローラ38と移動手すり16を介して対向するように、押圧ローラ40が、移動手すり16の厚さ方向他側(図2、図3の下側)に配置されている。駆動ローラ38は、トラス10に回転可能に支持されており、押圧ローラ40は、トラス10に回転可能で、かつ、移動手すり16の厚さ方向に変位可能に、トラス10に支持されている。各押圧ローラ40は、図示しない板ばね等の弾性部材により移動手すり16側に押圧されている。このため、モータ20が駆動されることにより、駆動ローラ38は駆動され、移動手すり16が循環駆動される。各手すり駆動装置30は、複数の従動スプロケット32、テンションスプロケット34、チェーン36、駆動ローラ38、及び押圧ローラ40を備える。このような手すり駆動装置30は、移動手すり16の長さ方向複数個所に設けられる場合もある。
【0021】
帰路側案内レール21は、駆動ローラ38と押圧ローラ40との配置位置から移動手すり16の長さ方向に外れた部分に配置されている。また、帰路側案内レール21の端部と対向するように調整可能案内レール42が設けられている。調整可能案内レール42も帰路側案内レール21と同様にトラス10(図1、図2)に固定されている。具体的には、調整可能案内レール42は、トラス10に固定された取付板部等の固定部である取り付け部44(図3)に、ボルト、ナット等を含むボルト結合部を介して、幅方向(図3の表裏方向)の位置調整を可能に固定されている。
【0022】
また、帰路側案内レール21も、トラス10に固定された取付板部等の固定部である取り付け部44に、ボルト、ナット等を含むボルト結合部を介して結合固定されている。帰路側案内レール21は、折り畳み不能、すなわち可動式の帰路側案内レール要素である第1案内レール要素46(図4)と、折り畳み可能な本実施の形態の帰路側案内レール要素である第2案内レール要素48(図6)とを、長さ方向に連続して、または分離して配置することにより構成されている。
【0023】
まず、図4を用いて第1案内レール要素46を説明する。第1案内レール要素46は、従来から考えられている帰路側案内レールと同様の基本形状を有する。すなわち、第1案内レール要素46は、板状のレール基部50と、レール基部50の上面の幅方向(図4の左右方向)2個所位置から平行に上方に突出する突壁部52とを含む。また、レール基部50の長さ方向一部または複数個所にボルト54が固定されている。ボルト54のネジ部は、レール基部50の上面から上方に突出し、ネジ部の上部を図示しないナットにより上記の取り付け部44(図3)に結合固定している。レール基部50の幅方向両端部には、移動手すり16の手すり帰路部分19の両端部を係合させて、手すり帰路部分19の移動を案内している。
【0024】
一方、上記の[発明が解決しようとする課題]の欄で説明したように、エスカレータの使用後に、定期点検や不調時の確認等のために、帰路側案内レール21の表面の摩耗や劣化等を点検確認する必要が生じて、手すり帰路部分19を帰路側案内レール21から取り外す必要が生じる場合がある。この場合、図5に示すように、エスカレータの保守点検等を行う作業者が、デッキボード18の一部を外して、手すり帰路部分19の取り外しを行うが、デッキボード18の裏側は見えにくく、かつ狭い空間である。このため、従来から使用されているエスカレータの構造では、手すり帰路部分19の取り外し作業が手間を要し、かつ、作業時間に長時間が必要となる可能性がある。本実施の形態の帰路側案内レール要素である、第2案内レール要素48(図6)は、このような課題を解決すべく発明したものである。具体的には、帰路側案内レール21の長さ方向一部の構成要素として、一部が可動する、すなわち下方に揺動可能な一対の手すり案内部を有する第2案内レール要素48が設けられている。
【0025】
図6から図9を用いてこの第2案内レール要素48を説明する。第2案内レール要素48は、帰路側案内レール21の長さ方向一部を構成するものであり、トラス10(図1等)に固定された固定部である取り付け部44(図7、図8)の板状部分に、ボルト56及びナット58により下側に吊り下げ支持されている。
【0026】
図6、図7に示すように、第2案内レール要素48は、断面略U字形のレール基部60と、一対の手すり案内部62とを備える。レール基部60は、略長方形の板部63と、板部63の幅方向(図6の左右方向)両端部から上方に平行に突出するように一体成形または一体的に結合された一対の突壁部64とを含む。レール基部60の板部63の長さ方向一部または複数個所に、ボルト56のネジ部が下側から挿通され、ボルト56の下端部の頭部が板部63の下面に係合している。
【0027】
ボルト56のネジ部は、上記の取り付け部44(図7、図8)の板状部分を厚さ方向に挿通し、ボルト56の上部の取り付け部44上面から突出した部分に規制用アダプタ66を挿通し、規制用アダプタ66の上側に突出したネジ部にナット58を結合している。なお、図6では、取り付け部44の図示を省略している。レール基部60は、このように構成されるため、上方に突出するネジ部を有するボルト56が固定されるとともに、ボルト56を介して取り付け部44に支持されている。すなわち、ボルト56は、取り付け部44に貫通するネジ部を有し、取り付け部44の上側に突出したネジ部にナット58が結合されることにより、レール基部60が取り付け部44に支持されている。なお、ボルト56のネジ部でレール基部60の上側に図示しないナットを結合し、このナットとボルト56の頭部との間でレール基部を挟むことでボルト56をレール基部60に固定することもできる。
【0028】
また、一対の手すり案内部62は、レール基部60の下部に長さ方向に対し直交する横方向である幅方向(図6の左右方向)両側に伸びるように支持された略翼状であり、手すり帰路部分19を上側で案内する機能を有する。また、一対の手すり案内部62は、それぞれの先端部に加わる下側への所定以上の大きさの荷重により、下側への揺動が可能となる。このように構成するために、レール基部60の下部の少なくとも長さ方向中間部で幅方向両端部を含む部分に一対の軸支持部68を一体的に設けるとともに、一対の軸支持部68に長さ方向に貫通する孔に、一対の平行な軸70の中間部を締まり嵌めにより挿入支持している。各軸70の両端寄り部分に長さ方向に長い基部側歯車72を設けるとともに、各手すり案内部62の基部側端部に長さ方向に挿通するように設けられた断面歯車形の孔である揺動側歯車74を設けている。そして揺動側歯車74の内側に、基部側歯車72の外周を噛合させている。軸70(図6)の中間部は軸支持部68に対しきつく挿入されているので、図6、図7に示すように、自由状態で各手すり案内部62は幅方向両側に向いて伸びたままの状態となっている。
【0029】
また、規制用アダプタ66は、ボルト56のネジ部が挿通され、取り付け部44の上側に支持されるもので、平板状のアダプタ基部76の横方向である幅方向両端部からそれぞれ下側に平行に延びる一対の下側腕部78を含む。一対の下側腕部78の内側面同士の間隔は、レール基部60の一対の突壁部64の外側面同士の間隔よりも大きくしている。したがって、一対の下側腕部78の内側に一対の突壁部64が挿入可能である。なお、一対の突壁部64の内側に一対の下側腕部78が挿入可能となるように、各部の寸法を規制することもできる。
【0030】
このように取り付け部44に支持された第2案内レール要素48の使用時には、図7に示すように、各手すり案内部62の上側に係合するように手すり帰路部分19が支持され、その移動が案内される。また、第2案内レール要素48の長さ方向の片側または両側に、上記の図4に示した第1案内レール要素46が配置されている。手すり帰路部分19の第2案内レール要素48から外れた部分の少なくとも一部は、第1案内レール要素46によって支持され、その移動が案内されている。この状態で、図7に示す第2案内レール要素48の各手すり案内部62には手すり帰路部分19から過度に大きな荷重、すなわち、所定以上の大きさの加重が加わることがなく、各手すり案内部62は横方向に伸びた状態となる。
【0031】
これに対して、作業者が第2案内レール要素48から手すり帰路部分19を取り外す場合、図8に示すように、図示しない六角レンチ等の工具を用いて、ボルト56のネジ部に対しナット58をレール基部60に近づく方向に締め付ける。これにより、レール基部60はボルト56とともに、ナット58側、すなわち取り付け部44側へ持ち上げられ、一対の手すり案内部62が手すり帰路部分19の幅方向両端部の内面下側に押し付けられる。そしてこれにより、一対の手すり案内部62の先端部に下側への所定以上の大きさの荷重が加わって、各手すり案内部62が下側(図8の矢印α方向)に揺動する。この状態で、図8に示すように、各手すり案内部62の先端部が下側に向くので、各手すり案内部62と、手すり帰路部分19との係合が外れて、作業者が手すり帰路部分19を第2案内レール要素48から容易に取り外すことができる。
【0032】
なお、上記では、各手すり案内部62と係合する軸70(図6)の中間部を軸支持部68の孔に締まり嵌めにより摩擦係合させることで、通常時に各手すり案内部62が手すり帰路部分19を支持できるようにしている。ただし、図9に示すように、軸70(図6)に設けられた基部側歯車72で手すり案内部62(図6等)から長さ方向に外れた部分に、取り付け部44(図7、図8)に固定の部分にその軸部80が固定された、ラチェット機構82の爪部83を係合させることもできる。この場合、各手すり案内部62の先端部が下側に揺動するのを、より有効に阻止できる。例えば、図9のように、ボルト56の頭部の下側に係合部84を固定して、ボルト56の上側への変位に応じて、爪部83と反対側の第2爪部86に係合部84を係合可能とする。そして、ボルト56がナット58(図7)の締め付けに応じて上側に持ち上げられた場合に、基部側歯車72と爪部83との係合を解除して、各手すり案内部62の下側への揺動を可能とする。爪部83及び第2爪部86は一体に設けられており、軸部80に対し弾性的に変位可能である。爪部83と基部側歯車72とが係合している状態では、図9の破線矢印β方向の基部側歯車72の回転は阻止される。
【0033】
このような第2案内レール要素48によれば、手すり帰路部分19の取り外し作業時に、図8に示したように、ボルト56に結合させたナット58を回すことで手すり案内部62を下側へ揺動させることができ、手すり案内部62と手すり帰路部分19との係合状態を解除できる。すなわち、ボルト56に対しナット58をレール基部60に近づく方向に締め付けることで、レール基部60が持ち上げられて、一対の手すり案内部62が下側に揺動することで、手すり案内部62と手すり帰路部分19との係合状態を解除できる。このため、図4に示したような可動しない第1案内レール要素46から手すり帰路部分19を取り外す場合に比べて、手すり帰路部分19の取り外しを容易にかつ短時間で行える。第2案内レール要素48から手すり帰路部分19を取り外せれば、手すり帰路部分19のその取り外し部分を引っ張る等により手すり帰路部分19の他の部分も第1案内レール要素46等から容易に取り外すことが可能になる。
【0034】
また、第2案内レール要素48は、ボルト56のネジ部が挿通され、取り付け部44の上側に支持される規制用アダプタ66であって、横方向両端部からそれぞれ下側に延びる一対の下側腕部78を含む規制用アダプタ66を備える。このため、規制用アダプタ66の各下側腕部78と取り付け部44の板状部分及びレール基部60の突壁部64とが対向することで、規制用アダプタ66及びレール基部60の回転がそれぞれ規制される。このため、ナット58の締め付けに応じて、より円滑にレール基部60を持ち上げることができる。なお、規制用アダプタ66の各下側腕部78は、図7の状態から、レール基部60の各突壁部64と横方向(図7の左右方向)に対向可能となるように、上下方向に長くすることもできる。
【0035】
なお、上記では、レール基部60の幅方向両端部の長さ方向中間部の下側に、軸70を支持するとともに、軸70の両端寄り部分に設けた基部側歯車72と手すり案内部62の揺動側歯車74とを係合させている。ただし、レール基部60の幅方向両端部の長さ方向両端寄り部分の下側に軸を支持するとともに、この軸の長さ方向中央部等の中間部に設けた基部側歯車と手すり案内部62の揺動側歯車とを係合させることもできる。
【0036】
また、規制用アダプタ66は、通常の使用状態でボルト56に取り付けている構成に限定するものではなく、手すり帰路部分19の取り外し時にのみ、ボルト56のネジ部を挿通させるようにボルト56に規制用アダプタ66を一時的に取り付けることもできる。
【0037】
[第2の発明の実施の形態]
図10は、本発明に係る第2の実施の形態の第2案内レール要素48を示す、図7に対応する図である。本実施の形態では、上記の第1の実施の形態において、レール基部60の幅方向(図10の左右方向)両端部の下側に、固定の軸部等を介して基部側歯車88を固定するとともに、各基部側歯車88に対応する手すり案内部62の基部側端部に固定した揺動側歯車90を噛合、すなわち係合させている。各手すり案内部62は、長さ方向中間部等でレール基部60に対し、軸とその軸を挿入支持する軸支持部等により、揺動可能に支持されている。このような構成では、各歯車88,90の係合部の弾性変形により、各手すり案内部62の先端部に所定以上の荷重が加わった場合に、各手すり案内部62を下側へ、大きな抵抗を持たせつつ揺動させることができる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様である。
【0038】
[第3の発明の実施の形態]
図11は、本発明に係る第3の実施の形態の第2案内レール要素48aを示す、図7に対応する図である。図12は、手すり帰路部分19の取り外し時において、図11の第2案内レール要素48aの一対の手すり案内部62を下方へ揺動させる様子を示す図である。
【0039】
上記の図6等に示した各実施の形態では、ボルト56に対しナット58を締め付けることでレール基部60を持ち上げて各手すり案内部62を下側へ揺動させる構成としていた。これに対して本実施の形態では、ボルト56に対しナット58を締め付けることで、アダプタに設けられた押圧部を各手すり案内部62に押し付けることで、各手すり案内部62を下側へ揺動可能としている。
【0040】
このために、第2案内レール要素48aは、図11,12で図示しない長さ方向の別の部分で、取り付け部44(図7参照)に対しボルト及びナットにより吊り下げ支持されている。また、取り付け部44から長さ方向(図11,12の表裏方向)に外れた部分で、図11のようにレール基部60に下側から上側にボルト56のネジ部を挿通させ、ボルト56の頭部をレール基部60の下面に係合させている。また、ボルト56のネジ部を、断面略U字形の押し付け用アダプタ92に下側から上側に挿通させ、ボルト56のネジ部の上部で押し付け用アダプタ92の上側に突出した部分にナット58を結合している。すなわち、第2案内レール要素48aは、押し付け用アダプタ92とナット58とを備える。
【0041】
押し付け用アダプタ92は、ボルト56のネジ部が挿通された挿通板部94と、挿通板部94の横方向である幅方向(図11の左右方向)両端部からそれぞれ下側に平行に延びる一対の押圧腕部96とを含む。一対の押圧腕部96の内側面同士の間隔は、レール基部60の一対の突壁部64の外側面同士の間隔よりも大きくしている。したがって、一対の押圧腕部96の内側に一対の突壁部64が挿入可能である。なお、一対の突壁部64の内側に一対の押圧腕部96が挿入可能となるように、各部の寸法を規制することもできる。
【0042】
また、ボルト56のネジ部で挿通板部94の上側に結合したナット58がレール基部60に近づく方向に締め付けられた場合に、各押圧腕部96の先端部が、一対の手すり案内部62の基部側端部から外れた中間部の上側に押し付けられることで、一対の手すり案内部62が下側へ揺動することを可能としている。
【0043】
このような構成で、作業者が第2案内レール要素48aから手すり帰路部分19を取り外す場合、図12に示すように、図示しない六角レンチ等の工具を用いて、ボルト56のネジ部に対しナット58をレール基部60に近づく方向に締め付ける。これにより、押し付け用アダプタ92は、ナット58により、レール基部60に近づくように押し下げられ、押し付け用アダプタ92の一対の押圧腕部96の先端部が、一対の手すり案内部62の中間部の上側に押し付けられる。そしてこれにより、一対の手すり案内部62に下側への所定以上の大きさの荷重が加わって、各手すり案内部62が下側(図12の矢印γ方向)に揺動する。この状態で、図12に示すように、各手すり案内部62の先端部が下側に向くので、各手すり案内部62と、手すり帰路部分19との係合が外れて、作業者が手すり帰路部分19を第2案内レール要素48aから容易に取り外すことができる。
【0044】
このような構成の場合も、手すり帰路部分19の取り外し作業時に、ボルト56に結合させたナット58を回すことで手すり案内部62を下側へ揺動させることができ、手すり案内部62と手すり帰路部分19との係合状態を解除できる。すなわち、ボルト56に対しナット58をレール基部60に近づく方向に締め付けることで、押し付け用アダプタ92が押し下げられ、一対の手すり案内部62が下側に揺動することで、手すり案内部62と手すり帰路部分19との係合状態を解除できる。このため、上記の図4に示したような可動しない第1案内レール要素46から手すり帰路部分19を取り外す場合に比べて、手すり帰路部分19の取り外しを容易にかつ短時間で行える。その他の構成及び作用は、上記の図1から図9に示した第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態と、上記の図10に示した第2の実施の形態とを組み合わせた構成を採用することもできる。
【0045】
なお、押し付け用アダプタ92及びこれを押圧するためのナット58は、通常の使用状態でボルト56に取り付けている構成に限定するものではなく、手すり帰路部分19の取り外し時にのみ、ボルト56のネジ部に一時的に取り付けることもできる。
【0046】
なお、上記の各実施の形態において、第2案内レール要素48,48aは、エスカレータの帰路側案内レール21の長さ方向一部にのみ設けてもよいが、長さ方向複数個所に設けることもできる。また、帰路側案内レール21を構成するために、第1案内レール要素46及び第2案内レール要素48は、長さ方向に互いに隣接して設けてもよいが、互いに空間をあけて配置することもできる。また、第2案内レール要素48,48aの長さは、帰路側案内レール21全体の長さに対して任意に設定することができる。例えば、第2案内レール要素48,48aのそれぞれの長さ方向寸法は、300mmから500mm等とすることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 トラス、12 欄干、14 往路側案内レール、15 手すり往路部分、16 移動手すり、18 デッキボード、19 手すり帰路部分、20 モータ、21 帰路側案内レール、22 駆動スプロケット、24 中間スプロケット、26 チェーン、28 第2中間スプロケット、30 手すり駆動装置、32 従動スプロケット、34 テンションスプロケット、36 チェーン、38 駆動ローラ、40 押圧ローラ、42 調整可能案内レール、44 取り付け部、46 第1案内レール要素、48,48a 第2案内レール要素、50 レール基部、52 突壁部、54,56 ボルト、58 ナット、60 レール基部、62 手すり案内部、63 板部、64 突壁部、66 規制用アダプタ、68 軸支持部、70 軸、72 基部側歯車、74 揺動側歯車、76 アダプタ基部、78 下側腕部、80 軸部、82 ラチェット機構、83 爪部、84 係合部、86 第2爪部、88 基部側歯車、90 揺動側歯車、92 押し付け用アダプタ、94 挿通板部、96 押圧腕部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータの移動手すりの下側である手すり帰路部分を案内する帰路側案内レールの長さ方向一部を構成するエスカレータ用帰路側案内レール要素に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアの一種であるエスカレータは、トラスに設けられた移送手段により複数の踏段が移動可能に支持されており、踏段の両側には欄干が設けられている。また、欄干の上面等、表面には、踏段の移動に伴って循環移動する移動手すりが設けられている。移動手すりは、下側部分を構成する手すり帰路部分が欄干内側に案内されている。移動手すりは、ゴム等の材料により構成されている。また、移動手すりの上側部分を含む手すり往路部分は、欄干上側に固定され、鉄等の金属等により構成された往路側案内レールにより移動が案内されている。
【0003】
また、移動手すりの手すり帰路部分は、欄干下側で、駆動ローラと押圧ローラとにより厚さ方向に押圧され、駆動ローラが、スプロケット、チェーン等を介して駆動装置により駆動されている。また、手すり帰路部分は、トラスに固定され、鉄等の金属等により構成された帰路側案内レールにより移動が案内されている。なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−291567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように移動手すりの手すり帰路部分は帰路側案内レールにより案内されているが、帰路側案内レール及び手すり帰路部分は、トラスに設けられたデッキボード内の狭い空間で奥側が暗くなった場所に配置されており、配置場所が見えにくい状況となっている。一方、エスカレータの使用後は、定期点検または不調時の確認等のために、帰路側案内レールの表面の摩耗や劣化等を点検確認する場合がある。ただし、使用時には帰路側案内レールには手すり帰路部分が覆いかぶさっており、手すり帰路部分を帰路側案内レールから取り外す必要がある。この場合、従来は、踏段を取り外したり、デッキボードの一部を取り外し、その後、手すり帰路部分と帰路側案内レールとの係合部の間に特殊な冶具を挿入する等により、手すり帰路部分を帰路側案内レールから取り外すことが行われている。ただし、手すり帰路部分を取り外す作業は、上記のように見えにくい状況で行われ、かつ、冶具を挿入しにくい狭い部分で行われるため、冶具を使って手すり帰路部分を取り外す作業は容易ではなく、かつ、取り外し作業に長時間が必要となる可能性がある。
【0006】
このため、帰路側案内レールに対して手すり帰路部分の取り外しを容易にかつ短時間で行える手段の実現が望まれている。
【0007】
これに対して、特許文献1には、一対のレールフレームのそれぞれの上部の踏段の移動方向と直交する方向の片側に取り付けられた固定側レールと、他側に固定側レールと相対して、かつ、固定側レールの方向に移動可能に取り付けられた移動側レールとによりガイドレールを構成する移動手すりが記載されている。また、移動側レールを固定側レールの方向に移動させて、ガイドレールと移動手すりとの係合を解除して移動手すりの取り外しを可能とするとされている。ただし、この移動手すりを構成するガイドレールの構成は、移動手すりの上側の往路側部分の取り外しを容易に行えるようにするために考えられたもので、手すり帰路部分の取り外しを容易に行えるようにする面からは改良の余地がある。また、特許文献1の構成では、固定側レールに移動側レールを結合するためのボルトを緩めて移動側レールを固定側レールに対し移動させる必要があり、移動側レールの重量が大きくなると、その移動に力を要し、かつ、広い範囲を手で持って横方向に動かす必要があるので、手すり帰路部分の取り外しの容易化を図る面からは改良の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、エスカレータ用帰路側案内レール要素において、手すり帰路部分の取り外しを容易にかつ短時間で行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素は、エスカレータの移動手すりの下側を構成する手すり帰路部分を案内する帰路側案内レールの長さ方向一部を構成するエスカレータ用帰路側案内レール要素であって、上方に突出するネジ部を有するボルトが固定されるとともに、固定部に支持されるレール基部と、レール基部の下部に長さ方向に対し直交する横方向両側に伸びるように支持され、手すり帰路部分を上側で案内する一対の手すり案内部であって、それぞれに加わる下側への所定以上の大きさの荷重により、下側への揺動が可能となる一対の手すり案内部とを備えることを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素である。
【0010】
また、本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素において、好ましくは、ボルトは、固定部にネジ部を貫通させ、固定部の上側に突出したネジ部にナットを結合することにより、レール基部を固定部に支持しており、ボルトに対しナットがレール基部に近づく方向に締め付けられた場合に、レール基部が固定部に対し持ち上げられ、一対の手すり案内部が手すり帰路部分の下側に押し付けられることで、一対の手すり案内部が下側へ揺動する。
【0011】
また、本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素において、好ましくは、ボルトのネジ部が挿通され、固定部の上側に支持される規制用アダプタであって、横方向両端部からそれぞれ下側に延びる一対の下側腕部を含む規制用アダプタを備える。
【0012】
また、本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素において、好ましくは、ボルトのネジ部が挿通された挿通板部と、挿通板部の横方向両端部からそれぞれ下側に延びる一対の押圧腕部とを含む押し付け用アダプタを備え、ボルトのネジ部で挿通板部の上側に結合したナットが基部に近づく方向に締め付けられた場合に、各押圧腕部の先端部が一対の手すり案内部の上側に押し付けられることで、一対の手すり案内部が下側へ揺動する。
【0013】
また、本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素において、好ましくは、レール基部の下端部の横方向両端部に長さ方向に伸びるように支持された一対の支持軸と、各支持軸の少なくとも一部に設けられた基部側歯車と、各手すり案内部の基部側端部に設けられ、対応する基部側歯車と係合する揺動側歯車とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るエスカレータ用帰路側案内レール要素によれば、手すり帰路部分の取り外し作業時に、ボルトに結合させたナットを回すことで手すり案内部を下側へ揺動させることができ、手すり案内部と手すり帰路部分との係合状態を解除できるので、手すり帰路部分の取り外しを容易にかつ短時間で行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の帰路側案内レール要素を備えるエスカレータの外観を示す略図である。
【図2】図1のエスカレータの上部を、一部断面にして示す拡大図である。
【図3】図2の断面で示した部分の拡大図である。
【図4】トラスに固定された、折り畳み不能な第1案内レール要素と、移動手すりとを示す断面図である。
【図5】作業者が、手すり帰路部分を帰路側案内レールから取り外す作業を行っている様子を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の帰路側案内レール要素である第2案内レール要素を示す斜視図である。
【図7】第2案内レール要素に移動手すりの手すり帰路部分を支持した状態を示す、図5の矢印A方向に見た図である。
【図8】手すり帰路部分の取り外し時において、図7の帰路側案内レール要素の一対の手すり案内部を下方へ揺動させる様子を示す、図7に対応する図である。
【図9】帰路側案内レール要素に設けられた基部側歯車にラチェット機構を係合させた様子を示す、図7のB部拡大対応図である。
【図10】本発明に係る第2の実施の形態の帰路側案内レール要素を示す、図7に対応する図である。
【図11】本発明に係る第3の実施の形態の帰路側案内レール要素を示す、図7に対応する図である。
【図12】手すり帰路部分の取り外し時において、図11の帰路側案内レール要素の一対の手すり案内部を下方へ揺動させる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図9は、本発明の第1の実施の形態を示している。
【0017】
まず、図1から図4を用いて、本実施の形態のエスカレータ用帰路側案内レール要素を備えるエスカレータの基本的構成を説明する。図1に示すように、エスカレータは、建物内の上側階床と下側階床とにかけわたすようにトラス10を設けており、トラス10の上部に左右方向(図1の表裏方向)に離れた一対の欄干12を設けている。トラス10に、無端状のチェーン(図示せず)により連結された図示しない複数の踏段を移動自在に設けている。
【0018】
各欄干12の上面を含む表面に、鉄等の金属等により構成された往路側案内レール14が固定されており、往路側案内レール14により、無端状の移動手すり16のうち、欄干12下側のデッキボード18内から露出した手すり往路部分15の移動が案内されている。移動手すり16は、断面C字形状を有する。また、移動手すり16は、往路側案内レール14にしたがって、欄干12下側のデッキボード18内にも案内されている。すなわち、図2、図3に示すように、デッキボード18(図1)内では、移動手すり16の下側部分を構成する手すり帰路部分19が、デッキボード18内でトラス10に固定された帰路側案内レール21により移動を案内されている。
【0019】
また、手すり帰路部分19は、欄干12下側で駆動ローラと押圧ローラとにより厚さ方向に押圧され、駆動ローラが、駆動装置により、スプロケット、チェーン等により構成する駆動機構を介して駆動されている。すなわち、図2、図3に示すように、トラス10の上側階床側の端部に、駆動装置を構成するモータ20と、モータ20の駆動を制御する制御盤(図示せず)とが設けられている。モータ20の回転軸に駆動スプロケット22が固定され、駆動スプロケット22と中間スプロケット24とにチェーン26がかけ渡されている。また、中間スプロケット24に一対の第2中間スプロケット28が固定されており、一対の第2中間スプロケット28からトラス10の左右方向(図2、図3の表裏方向)両側に一対設けられた手すり駆動装置30を構成する複数の従動スプロケット32及びテンションスプロケット34にチェーン36がかけ渡されている。
【0020】
各従動スプロケット32と同軸に駆動ローラ38が設けられており、駆動ローラ38が移動手すり16の厚さ方向片側(図2、図3の上側)に配置されている。また、駆動ローラ38と移動手すり16を介して対向するように、押圧ローラ40が、移動手すり16の厚さ方向他側(図2、図3の下側)に配置されている。駆動ローラ38は、トラス10に回転可能に支持されており、押圧ローラ40は、トラス10に回転可能で、かつ、移動手すり16の厚さ方向に変位可能に、トラス10に支持されている。各押圧ローラ40は、図示しない板ばね等の弾性部材により移動手すり16側に押圧されている。このため、モータ20が駆動されることにより、駆動ローラ38は駆動され、移動手すり16が循環駆動される。各手すり駆動装置30は、複数の従動スプロケット32、テンションスプロケット34、チェーン36、駆動ローラ38、及び押圧ローラ40を備える。このような手すり駆動装置30は、移動手すり16の長さ方向複数個所に設けられる場合もある。
【0021】
帰路側案内レール21は、駆動ローラ38と押圧ローラ40との配置位置から移動手すり16の長さ方向に外れた部分に配置されている。また、帰路側案内レール21の端部と対向するように調整可能案内レール42が設けられている。調整可能案内レール42も帰路側案内レール21と同様にトラス10(図1、図2)に固定されている。具体的には、調整可能案内レール42は、トラス10に固定された取付板部等の固定部である取り付け部44(図3)に、ボルト、ナット等を含むボルト結合部を介して、幅方向(図3の表裏方向)の位置調整を可能に固定されている。
【0022】
また、帰路側案内レール21も、トラス10に固定された取付板部等の固定部である取り付け部44に、ボルト、ナット等を含むボルト結合部を介して結合固定されている。帰路側案内レール21は、折り畳み不能、すなわち可動式の帰路側案内レール要素である第1案内レール要素46(図4)と、折り畳み可能な本実施の形態の帰路側案内レール要素である第2案内レール要素48(図6)とを、長さ方向に連続して、または分離して配置することにより構成されている。
【0023】
まず、図4を用いて第1案内レール要素46を説明する。第1案内レール要素46は、従来から考えられている帰路側案内レールと同様の基本形状を有する。すなわち、第1案内レール要素46は、板状のレール基部50と、レール基部50の上面の幅方向(図4の左右方向)2個所位置から平行に上方に突出する突壁部52とを含む。また、レール基部50の長さ方向一部または複数個所にボルト54が固定されている。ボルト54のネジ部は、レール基部50の上面から上方に突出し、ネジ部の上部を図示しないナットにより上記の取り付け部44(図3)に結合固定している。レール基部50の幅方向両端部には、移動手すり16の手すり帰路部分19の両端部を係合させて、手すり帰路部分19の移動を案内している。
【0024】
一方、上記の[発明が解決しようとする課題]の欄で説明したように、エスカレータの使用後に、定期点検や不調時の確認等のために、帰路側案内レール21の表面の摩耗や劣化等を点検確認する必要が生じて、手すり帰路部分19を帰路側案内レール21から取り外す必要が生じる場合がある。この場合、図5に示すように、エスカレータの保守点検等を行う作業者が、デッキボード18の一部を外して、手すり帰路部分19の取り外しを行うが、デッキボード18の裏側は見えにくく、かつ狭い空間である。このため、従来から使用されているエスカレータの構造では、手すり帰路部分19の取り外し作業が手間を要し、かつ、作業時間に長時間が必要となる可能性がある。本実施の形態の帰路側案内レール要素である、第2案内レール要素48(図6)は、このような課題を解決すべく発明したものである。具体的には、帰路側案内レール21の長さ方向一部の構成要素として、一部が可動する、すなわち下方に揺動可能な一対の手すり案内部を有する第2案内レール要素48が設けられている。
【0025】
図6から図9を用いてこの第2案内レール要素48を説明する。第2案内レール要素48は、帰路側案内レール21の長さ方向一部を構成するものであり、トラス10(図1等)に固定された固定部である取り付け部44(図7、図8)の板状部分に、ボルト56及びナット58により下側に吊り下げ支持されている。
【0026】
図6、図7に示すように、第2案内レール要素48は、断面略U字形のレール基部60と、一対の手すり案内部62とを備える。レール基部60は、略長方形の板部63と、板部63の幅方向(図6の左右方向)両端部から上方に平行に突出するように一体成形または一体的に結合された一対の突壁部64とを含む。レール基部60の板部63の長さ方向一部または複数個所に、ボルト56のネジ部が下側から挿通され、ボルト56の下端部の頭部が板部63の下面に係合している。
【0027】
ボルト56のネジ部は、上記の取り付け部44(図7、図8)の板状部分を厚さ方向に挿通し、ボルト56の上部の取り付け部44上面から突出した部分に規制用アダプタ66を挿通し、規制用アダプタ66の上側に突出したネジ部にナット58を結合している。なお、図6では、取り付け部44の図示を省略している。レール基部60は、このように構成されるため、上方に突出するネジ部を有するボルト56が固定されるとともに、ボルト56を介して取り付け部44に支持されている。すなわち、ボルト56は、取り付け部44に貫通するネジ部を有し、取り付け部44の上側に突出したネジ部にナット58が結合されることにより、レール基部60が取り付け部44に支持されている。なお、ボルト56のネジ部でレール基部60の上側に図示しないナットを結合し、このナットとボルト56の頭部との間でレール基部を挟むことでボルト56をレール基部60に固定することもできる。
【0028】
また、一対の手すり案内部62は、レール基部60の下部に長さ方向に対し直交する横方向である幅方向(図6の左右方向)両側に伸びるように支持された略翼状であり、手すり帰路部分19を上側で案内する機能を有する。また、一対の手すり案内部62は、それぞれの先端部に加わる下側への所定以上の大きさの荷重により、下側への揺動が可能となる。このように構成するために、レール基部60の下部の少なくとも長さ方向中間部で幅方向両端部を含む部分に一対の軸支持部68を一体的に設けるとともに、一対の軸支持部68に長さ方向に貫通する孔に、一対の平行な軸70の中間部を締まり嵌めにより挿入支持している。各軸70の両端寄り部分に長さ方向に長い基部側歯車72を設けるとともに、各手すり案内部62の基部側端部に長さ方向に挿通するように設けられた断面歯車形の孔である揺動側歯車74を設けている。そして揺動側歯車74の内側に、基部側歯車72の外周を噛合させている。軸70(図6)の中間部は軸支持部68に対しきつく挿入されているので、図6、図7に示すように、自由状態で各手すり案内部62は幅方向両側に向いて伸びたままの状態となっている。
【0029】
また、規制用アダプタ66は、ボルト56のネジ部が挿通され、取り付け部44の上側に支持されるもので、平板状のアダプタ基部76の横方向である幅方向両端部からそれぞれ下側に平行に延びる一対の下側腕部78を含む。一対の下側腕部78の内側面同士の間隔は、レール基部60の一対の突壁部64の外側面同士の間隔よりも大きくしている。したがって、一対の下側腕部78の内側に一対の突壁部64が挿入可能である。なお、一対の突壁部64の内側に一対の下側腕部78が挿入可能となるように、各部の寸法を規制することもできる。
【0030】
このように取り付け部44に支持された第2案内レール要素48の使用時には、図7に示すように、各手すり案内部62の上側に係合するように手すり帰路部分19が支持され、その移動が案内される。また、第2案内レール要素48の長さ方向の片側または両側に、上記の図4に示した第1案内レール要素46が配置されている。手すり帰路部分19の第2案内レール要素48から外れた部分の少なくとも一部は、第1案内レール要素46によって支持され、その移動が案内されている。この状態で、図7に示す第2案内レール要素48の各手すり案内部62には手すり帰路部分19から過度に大きな荷重、すなわち、所定以上の大きさの加重が加わることがなく、各手すり案内部62は横方向に伸びた状態となる。
【0031】
これに対して、作業者が第2案内レール要素48から手すり帰路部分19を取り外す場合、図8に示すように、図示しない六角レンチ等の工具を用いて、ボルト56のネジ部に対しナット58をレール基部60に近づく方向に締め付ける。これにより、レール基部60はボルト56とともに、ナット58側、すなわち取り付け部44側へ持ち上げられ、一対の手すり案内部62が手すり帰路部分19の幅方向両端部の内面下側に押し付けられる。そしてこれにより、一対の手すり案内部62の先端部に下側への所定以上の大きさの荷重が加わって、各手すり案内部62が下側(図8の矢印α方向)に揺動する。この状態で、図8に示すように、各手すり案内部62の先端部が下側に向くので、各手すり案内部62と、手すり帰路部分19との係合が外れて、作業者が手すり帰路部分19を第2案内レール要素48から容易に取り外すことができる。
【0032】
なお、上記では、各手すり案内部62と係合する軸70(図6)の中間部を軸支持部68の孔に締まり嵌めにより摩擦係合させることで、通常時に各手すり案内部62が手すり帰路部分19を支持できるようにしている。ただし、図9に示すように、軸70(図6)に設けられた基部側歯車72で手すり案内部62(図6等)から長さ方向に外れた部分に、取り付け部44(図7、図8)に固定の部分にその軸部80が固定された、ラチェット機構82の爪部83を係合させることもできる。この場合、各手すり案内部62の先端部が下側に揺動するのを、より有効に阻止できる。例えば、図9のように、ボルト56の頭部の下側に係合部84を固定して、ボルト56の上側への変位に応じて、爪部83と反対側の第2爪部86に係合部84を係合可能とする。そして、ボルト56がナット58(図7)の締め付けに応じて上側に持ち上げられた場合に、基部側歯車72と爪部83との係合を解除して、各手すり案内部62の下側への揺動を可能とする。爪部83及び第2爪部86は一体に設けられており、軸部80に対し弾性的に変位可能である。爪部83と基部側歯車72とが係合している状態では、図9の破線矢印β方向の基部側歯車72の回転は阻止される。
【0033】
このような第2案内レール要素48によれば、手すり帰路部分19の取り外し作業時に、図8に示したように、ボルト56に結合させたナット58を回すことで手すり案内部62を下側へ揺動させることができ、手すり案内部62と手すり帰路部分19との係合状態を解除できる。すなわち、ボルト56に対しナット58をレール基部60に近づく方向に締め付けることで、レール基部60が持ち上げられて、一対の手すり案内部62が下側に揺動することで、手すり案内部62と手すり帰路部分19との係合状態を解除できる。このため、図4に示したような可動しない第1案内レール要素46から手すり帰路部分19を取り外す場合に比べて、手すり帰路部分19の取り外しを容易にかつ短時間で行える。第2案内レール要素48から手すり帰路部分19を取り外せれば、手すり帰路部分19のその取り外し部分を引っ張る等により手すり帰路部分19の他の部分も第1案内レール要素46等から容易に取り外すことが可能になる。
【0034】
また、第2案内レール要素48は、ボルト56のネジ部が挿通され、取り付け部44の上側に支持される規制用アダプタ66であって、横方向両端部からそれぞれ下側に延びる一対の下側腕部78を含む規制用アダプタ66を備える。このため、規制用アダプタ66の各下側腕部78と取り付け部44の板状部分及びレール基部60の突壁部64とが対向することで、規制用アダプタ66及びレール基部60の回転がそれぞれ規制される。このため、ナット58の締め付けに応じて、より円滑にレール基部60を持ち上げることができる。なお、規制用アダプタ66の各下側腕部78は、図7の状態から、レール基部60の各突壁部64と横方向(図7の左右方向)に対向可能となるように、上下方向に長くすることもできる。
【0035】
なお、上記では、レール基部60の幅方向両端部の長さ方向中間部の下側に、軸70を支持するとともに、軸70の両端寄り部分に設けた基部側歯車72と手すり案内部62の揺動側歯車74とを係合させている。ただし、レール基部60の幅方向両端部の長さ方向両端寄り部分の下側に軸を支持するとともに、この軸の長さ方向中央部等の中間部に設けた基部側歯車と手すり案内部62の揺動側歯車とを係合させることもできる。
【0036】
また、規制用アダプタ66は、通常の使用状態でボルト56に取り付けている構成に限定するものではなく、手すり帰路部分19の取り外し時にのみ、ボルト56のネジ部を挿通させるようにボルト56に規制用アダプタ66を一時的に取り付けることもできる。
【0037】
[第2の発明の実施の形態]
図10は、本発明に係る第2の実施の形態の第2案内レール要素48を示す、図7に対応する図である。本実施の形態では、上記の第1の実施の形態において、レール基部60の幅方向(図10の左右方向)両端部の下側に、固定の軸部等を介して基部側歯車88を固定するとともに、各基部側歯車88に対応する手すり案内部62の基部側端部に固定した揺動側歯車90を噛合、すなわち係合させている。各手すり案内部62は、長さ方向中間部等でレール基部60に対し、軸とその軸を挿入支持する軸支持部等により、揺動可能に支持されている。このような構成では、各歯車88,90の係合部の弾性変形により、各手すり案内部62の先端部に所定以上の荷重が加わった場合に、各手すり案内部62を下側へ、大きな抵抗を持たせつつ揺動させることができる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様である。
【0038】
[第3の発明の実施の形態]
図11は、本発明に係る第3の実施の形態の第2案内レール要素48aを示す、図7に対応する図である。図12は、手すり帰路部分19の取り外し時において、図11の第2案内レール要素48aの一対の手すり案内部62を下方へ揺動させる様子を示す図である。
【0039】
上記の図6等に示した各実施の形態では、ボルト56に対しナット58を締め付けることでレール基部60を持ち上げて各手すり案内部62を下側へ揺動させる構成としていた。これに対して本実施の形態では、ボルト56に対しナット58を締め付けることで、アダプタに設けられた押圧部を各手すり案内部62に押し付けることで、各手すり案内部62を下側へ揺動可能としている。
【0040】
このために、第2案内レール要素48aは、図11,12で図示しない長さ方向の別の部分で、取り付け部44(図7参照)に対しボルト及びナットにより吊り下げ支持されている。また、取り付け部44から長さ方向(図11,12の表裏方向)に外れた部分で、図11のようにレール基部60に下側から上側にボルト56のネジ部を挿通させ、ボルト56の頭部をレール基部60の下面に係合させている。また、ボルト56のネジ部を、断面略U字形の押し付け用アダプタ92に下側から上側に挿通させ、ボルト56のネジ部の上部で押し付け用アダプタ92の上側に突出した部分にナット58を結合している。すなわち、第2案内レール要素48aは、押し付け用アダプタ92とナット58とを備える。
【0041】
押し付け用アダプタ92は、ボルト56のネジ部が挿通された挿通板部94と、挿通板部94の横方向である幅方向(図11の左右方向)両端部からそれぞれ下側に平行に延びる一対の押圧腕部96とを含む。一対の押圧腕部96の内側面同士の間隔は、レール基部60の一対の突壁部64の外側面同士の間隔よりも大きくしている。したがって、一対の押圧腕部96の内側に一対の突壁部64が挿入可能である。なお、一対の突壁部64の内側に一対の押圧腕部96が挿入可能となるように、各部の寸法を規制することもできる。
【0042】
また、ボルト56のネジ部で挿通板部94の上側に結合したナット58がレール基部60に近づく方向に締め付けられた場合に、各押圧腕部96の先端部が、一対の手すり案内部62の基部側端部から外れた中間部の上側に押し付けられることで、一対の手すり案内部62が下側へ揺動することを可能としている。
【0043】
このような構成で、作業者が第2案内レール要素48aから手すり帰路部分19を取り外す場合、図12に示すように、図示しない六角レンチ等の工具を用いて、ボルト56のネジ部に対しナット58をレール基部60に近づく方向に締め付ける。これにより、押し付け用アダプタ92は、ナット58により、レール基部60に近づくように押し下げられ、押し付け用アダプタ92の一対の押圧腕部96の先端部が、一対の手すり案内部62の中間部の上側に押し付けられる。そしてこれにより、一対の手すり案内部62に下側への所定以上の大きさの荷重が加わって、各手すり案内部62が下側(図12の矢印γ方向)に揺動する。この状態で、図12に示すように、各手すり案内部62の先端部が下側に向くので、各手すり案内部62と、手すり帰路部分19との係合が外れて、作業者が手すり帰路部分19を第2案内レール要素48aから容易に取り外すことができる。
【0044】
このような構成の場合も、手すり帰路部分19の取り外し作業時に、ボルト56に結合させたナット58を回すことで手すり案内部62を下側へ揺動させることができ、手すり案内部62と手すり帰路部分19との係合状態を解除できる。すなわち、ボルト56に対しナット58をレール基部60に近づく方向に締め付けることで、押し付け用アダプタ92が押し下げられ、一対の手すり案内部62が下側に揺動することで、手すり案内部62と手すり帰路部分19との係合状態を解除できる。このため、上記の図4に示したような可動しない第1案内レール要素46から手すり帰路部分19を取り外す場合に比べて、手すり帰路部分19の取り外しを容易にかつ短時間で行える。その他の構成及び作用は、上記の図1から図9に示した第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態と、上記の図10に示した第2の実施の形態とを組み合わせた構成を採用することもできる。
【0045】
なお、押し付け用アダプタ92及びこれを押圧するためのナット58は、通常の使用状態でボルト56に取り付けている構成に限定するものではなく、手すり帰路部分19の取り外し時にのみ、ボルト56のネジ部に一時的に取り付けることもできる。
【0046】
なお、上記の各実施の形態において、第2案内レール要素48,48aは、エスカレータの帰路側案内レール21の長さ方向一部にのみ設けてもよいが、長さ方向複数個所に設けることもできる。また、帰路側案内レール21を構成するために、第1案内レール要素46及び第2案内レール要素48は、長さ方向に互いに隣接して設けてもよいが、互いに空間をあけて配置することもできる。また、第2案内レール要素48,48aの長さは、帰路側案内レール21全体の長さに対して任意に設定することができる。例えば、第2案内レール要素48,48aのそれぞれの長さ方向寸法は、300mmから500mm等とすることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 トラス、12 欄干、14 往路側案内レール、15 手すり往路部分、16 移動手すり、18 デッキボード、19 手すり帰路部分、20 モータ、21 帰路側案内レール、22 駆動スプロケット、24 中間スプロケット、26 チェーン、28 第2中間スプロケット、30 手すり駆動装置、32 従動スプロケット、34 テンションスプロケット、36 チェーン、38 駆動ローラ、40 押圧ローラ、42 調整可能案内レール、44 取り付け部、46 第1案内レール要素、48,48a 第2案内レール要素、50 レール基部、52 突壁部、54,56 ボルト、58 ナット、60 レール基部、62 手すり案内部、63 板部、64 突壁部、66 規制用アダプタ、68 軸支持部、70 軸、72 基部側歯車、74 揺動側歯車、76 アダプタ基部、78 下側腕部、80 軸部、82 ラチェット機構、83 爪部、84 係合部、86 第2爪部、88 基部側歯車、90 揺動側歯車、92 押し付け用アダプタ、94 挿通板部、96 押圧腕部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータの移動手すりの下側を構成する手すり帰路部分を案内する帰路側案内レールの長さ方向一部を構成するエスカレータ用帰路側案内レール要素であって、
上方に突出するネジ部を有するボルトが固定されるとともに、固定部に支持されるレール基部と、
レール基部の下部に長さ方向に対し直交する横方向両側に伸びるように支持され、手すり帰路部分を上側で案内する一対の手すり案内部であって、それぞれに加わる下側への所定以上の大きさの荷重により、下側への揺動が可能となる一対の手すり案内部とを備えることを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータ用帰路側案内レール要素において、
ボルトは、固定部にネジ部を貫通させ、固定部の上側に突出したネジ部にナットを結合することにより、レール基部を固定部に支持しており、
ボルトに対しナットがレール基部に近づく方向に締め付けられた場合に、レール基部が固定部に対し持ち上げられ、一対の手すり案内部が手すり帰路部分の下側に押し付けられることで、一対の手すり案内部が下側へ揺動することを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素。
【請求項3】
請求項2に記載のエスカレータ用帰路側案内レール要素において、
ボルトのネジ部が挿通され、固定部の上側に支持される規制用アダプタであって、横方向両端部からそれぞれ下側に延びる一対の下側腕部を含む規制用アダプタを備えることを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素。
【請求項4】
請求項1に記載のエスカレータ用帰路側案内レール要素において、
ボルトのネジ部が挿通された挿通板部と、挿通板部の横方向両端部からそれぞれ下側に延びる一対の押圧腕部とを含む押し付け用アダプタを備え、
ボルトのネジ部で挿通板部の上側に結合したナットが基部に近づく方向に締め付けられた場合に、各押圧腕部の先端部が一対の手すり案内部の上側に押し付けられることで、一対の手すり案内部が下側へ揺動することを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載のエスカレータ用帰路側案内レール要素において、
レール基部の下端部の横方向両端部に長さ方向に伸びるように支持された一対の支持軸と、
各支持軸の少なくとも一部に設けられた基部側歯車と、
各手すり案内部の基部側端部に設けられ、対応する基部側歯車と係合する揺動側歯車とを備えることを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素。
【請求項1】
エスカレータの移動手すりの下側を構成する手すり帰路部分を案内する帰路側案内レールの長さ方向一部を構成するエスカレータ用帰路側案内レール要素であって、
上方に突出するネジ部を有するボルトが固定されるとともに、固定部に支持されるレール基部と、
レール基部の下部に長さ方向に対し直交する横方向両側に伸びるように支持され、手すり帰路部分を上側で案内する一対の手すり案内部であって、それぞれに加わる下側への所定以上の大きさの荷重により、下側への揺動が可能となる一対の手すり案内部とを備えることを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータ用帰路側案内レール要素において、
ボルトは、固定部にネジ部を貫通させ、固定部の上側に突出したネジ部にナットを結合することにより、レール基部を固定部に支持しており、
ボルトに対しナットがレール基部に近づく方向に締め付けられた場合に、レール基部が固定部に対し持ち上げられ、一対の手すり案内部が手すり帰路部分の下側に押し付けられることで、一対の手すり案内部が下側へ揺動することを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素。
【請求項3】
請求項2に記載のエスカレータ用帰路側案内レール要素において、
ボルトのネジ部が挿通され、固定部の上側に支持される規制用アダプタであって、横方向両端部からそれぞれ下側に延びる一対の下側腕部を含む規制用アダプタを備えることを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素。
【請求項4】
請求項1に記載のエスカレータ用帰路側案内レール要素において、
ボルトのネジ部が挿通された挿通板部と、挿通板部の横方向両端部からそれぞれ下側に延びる一対の押圧腕部とを含む押し付け用アダプタを備え、
ボルトのネジ部で挿通板部の上側に結合したナットが基部に近づく方向に締め付けられた場合に、各押圧腕部の先端部が一対の手すり案内部の上側に押し付けられることで、一対の手すり案内部が下側へ揺動することを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載のエスカレータ用帰路側案内レール要素において、
レール基部の下端部の横方向両端部に長さ方向に伸びるように支持された一対の支持軸と、
各支持軸の少なくとも一部に設けられた基部側歯車と、
各手すり案内部の基部側端部に設けられ、対応する基部側歯車と係合する揺動側歯車とを備えることを特徴とするエスカレータ用帰路側案内レール要素。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−171699(P2012−171699A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31816(P2011−31816)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
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