説明

エスカレータ踏段用清掃装置

【課題】エスカレ−タ踏段のクリート溝内の塵埃や油等を、簡易な装置により効果的に吸引清掃するエスカレータ踏段用清掃装置を提供する。
【解決手段】クリート溝9の内部を吸引清掃する掃除機ノズル用接続口7を有し、クリート溝9に向けられる側に開口部8を有してエスカレータ踏段の一部の領域を覆う箱状の筐体2と、筐体2上部に設置され、洗浄液9を筐体2内部に滴下する洗浄液収容部3と、滴下された洗浄液9を受け取り、踏段のクリート溝9の内部を洗浄する回転ブラシ4と、弾性体から成り、踏段のクリート溝9と嵌合する凹凸部によりクリート溝9の内部を拭取り、回転ブラシ4の軸方向に沿ってその前後にそれぞれ並置される第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6と、を備え、回転ブラシ4と、第1棒状拭取具5と、第2棒状拭取具6とにより踏段のクリート溝9の内部を清掃する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ踏段用清掃装置に係り、特に、エスカレータ踏段のクリート溝の内部を清掃するエスカレータ踏段用清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータの踏段は、乗客が立つ水平のステップ面と、ステップ面から下方に円弧を描きながら傾斜するライザー面とを有する。これらのステップ面及びライザー面には多数のクリート溝が設けられる。このクリート溝の内部は、塵埃や油が付着して汚れるため清掃装置により清掃されるのが一般的である。この清掃装置には、洗浄液を使用しない乾式の清掃装置、及び洗浄液を使用する湿式の清掃装置がある。
【0003】
特許文献1には、エスカレータのステップ面とライザー面の清掃に適用されるエスカレータ用掃除機の吸引ヘッドが開示されている。ここでは、吸引ヘッドは、略矩形の天板と側壁とを具備するケース、及び掃除機本体に接続される継ぎ手管を具備する。ケースは、前後の側壁に沿い、各クリート溝に進入するように列をなして植設された第1及び第2のブラシ列を有する。この清掃装置は、洗浄液を使用しないことから乾式の清掃装置である。
【0004】
特許文献2には、エスカレータの踏段面のクリート溝をブラッシングするエスカレータ踏段用清掃装置が開示されている。ここでは、踏段面の一部領域を覆うカバーと、踏段面に接触するようカバー内に配設されて回転駆動される回転ブラシと、回転ブラシによって踏段面から巻き上げられたり剥がされたりした塵埃をカバー内のエアと共に装置本体内の集塵部へ吸引するエア吸引システムを備える。また、回転ブラシは、回転軸と、回転軸に配設された複数の輪状ブラシ毛群と、少なくとも1つのクリート溝に沿って移動可能なガイド部材を備え、各輪状ブラシ群は、ガイド部材とクリート溝との嵌合によって定まる他のクリート溝に嵌合する位置に配設される。この清掃装置は、洗浄液を使用しないことから乾式の清掃装置である。
【0005】
特許文献3には、乗客コンベアの踏段面とライザー面とを洗浄可能な乗客コンベア踏段洗浄装置が開示されている。この清掃装置は、洗浄液を使用することから湿式の清掃装置である。ここでは、回転ブラシの回転と洗浄噴出ノズルから転出する洗浄液の相乗作用による洗浄を行う。また、駆動体を駆動し回転ブラシを回転させ、ポンプ用駆動体を駆動してポンプを動作させることで、タンク内に貯えられた洗浄液をノズルから噴出させる。また、羽体を駆動体で駆動するとタンク内の圧力が吸込み口の内部より下がり、使用され汚濁した洗浄液は、吸込み口からタンクに回収される。さらに、洗浄面外への洗浄液の流出を防ぐため、弾性体で構成され当接する洗浄面と同形状に形成されたシールを有する。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3116033号公報
【特許文献2】特開2002−46971号公報
【特許文献3】特開平9−259786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された吸引ヘッドを用いたエスカレータ用掃除機は、洗浄液を用いない乾式の清掃装置である。このため、エスカレータ踏段のクリート内部に堆積した塵埃は吸引されるが油汚れを吸引することは難しい。その上、この油によりブラシが油まみれとなるため頻繁に交換しなければならない。また、この吸引ヘッドは、ブラシによりクリート溝を清掃する方式である。このブラシ同士の間には隙間が存在するため吸引効率が低く、クリート溝に沿って頻繁に吸引ヘッドを操作しなければならない。
【0008】
特許文献2に開示されたエスカレータ踏段用清掃装置は、特許文献1の吸引ヘッドと同様に、洗浄液を用いない乾式の清掃装置である。このため、上記と同様な問題がある。
【0009】
一方、特許文献3に開示された乗客コンベア踏段洗浄装置は、洗浄液を用いる湿式の清掃装置である。しかし、洗浄液を噴出させて汚濁した洗浄液をさらに回収するために複雑な機構を要する。また、ノズルから洗浄面に向かって洗浄液を噴出して洗浄効果を上げるには容量の大きなポンプを要する。従って、洗浄装置の操作性や運搬に問題が生じる。
【0010】
本願の目的は、かかる課題を解決し、エスカレ−タ踏段のクリート溝内の塵埃や油等を簡易な装置により効果的に吸引清掃するエスカレータ踏段用清掃装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るエスカレータ踏段用清掃装置は、エスカレータ踏段のクリート溝の内部を清掃するエスカレータ踏段用清掃装置であって、クリート溝の内部を吸引清掃する掃除機のノズル用の接続口を有し、クリート溝に向けられる側に開口部を有してエスカレータ踏段の一部の領域を覆う箱状の筐体と、筐体上部に設置され、洗浄液を筐体内部に滴下する洗浄液収容部と、滴下された洗浄液を受け取り、踏段のクリート溝の内部を洗浄する回転ブラシと、弾性体から成り、踏段のクリート溝と嵌合する凹凸部によりクリート溝の内部を拭取り、回転ブラシの軸方向に沿ってその前後にそれぞれ並置される第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具と、を備え、回転ブラシと、第1棒状拭取具と、第2棒状拭取具とにより踏段のクリート溝の内部を清掃することを特徴とする。
【0012】
また、エスカレータ踏段用清掃装置は、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具が、それぞれ筐体から突出して取付けられ、筐体の進行方向の前面及び後面は、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具によりクリート溝の内部を含めて閉鎖されることが好ましい。
【0013】
また、エスカレータ踏段用清掃装置は、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具が、それぞれ開口部側から筐体に交換可能に接続されることが好ましい。
【0014】
また、エスカレータ踏段用清掃装置は、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具が、エスカレータ踏段の形状に合わせて回転可能であることが好ましい。
【0015】
また、エスカレータ踏段用清掃装置は、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具が、その軸に沿って筒状の凹部を有し、対向する筐体に設けられた筒状の凸部に嵌合することで、筐体に対して回転可能に接続されることが好ましい。
【0016】
また、エスカレータ踏段用清掃装置は、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具が、その軸に沿って筒状の凸部を有し、対向する筐体に設けられた筒状の凹部に嵌合することで、筐体に対して回転可能に接続されることが好ましい。
【0017】
また、エスカレータ踏段用清掃装置は、回転ブラシが、開口部側から筐体に交換可能に取り付けられることが好ましい。
【0018】
また、エスカレータ踏段用清掃装置は、回転ブラシが、筐体に設けられた取付孔を貫通する棒状の軸部を有し、回転ブラシは、取付孔周囲の筐体の板のばね作用により筐体への取付け及び筐体からの取り外しが可能であることが好ましい。
【0019】
また、エスカレータ踏段用清掃装置は、回転ブラシの両端部に突出した軸部のいずれかがフレキシブルシャフトを介して電動ドリルに接続され、回転ブラシが、電動ドリルの動力により回転することが好ましい。
【0020】
さらに、エスカレータ踏段用清掃装置は、エスカレータ踏段のライザー面の吸引清掃に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
上記構成により、エスカレータ踏段用清掃装置は、滴下された洗浄液を受けて踏段のクリート溝の内部を洗浄する回転ブラシと、クリート溝の内部を拭取する第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具とによりクリート溝の内部を吸引清掃する。すなわち、清掃装置の進行方向に向かって前面側の棒状拭取具は、回転ブラシによる洗浄の前に乾燥した塵埃を拭取り、回転ブラシは、洗浄液により洗浄を行い、さらに、清掃装置の進行方向に向かって後面側の棒状拭取具は、油や塵埃が混ざり合った洗浄液を拭取る。
【0022】
また、2つの棒状拭取具を回転ブラシの軸方向に沿ってその前後にそれぞれ並置することにより、筐体の進行方向の前面及び後面からクリート溝の内部を含めて閉鎖することができる。このことで、エスカレータ踏段用清掃装置の吸引効率が向上し、また洗浄液等がエスカレータ内部へ落下することを防止できる。さらに、2つの棒状拭取具をそれぞれ洗浄面にあてがい、それらを押し付けながら清掃を行うことから、安定したエスカレータ踏段面の清掃ができる。
【0023】
以上のように、本発明に係るエスカレータ踏段用清掃装置によれば、エスカレ−タ踏段のクリート溝内の塵埃や油等を簡易な装置により効果的に吸引清掃することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、図面を用いて本発明に係るエスカレータ踏段用清掃装置の概略構成につき、詳細に説明する。
【0025】
図1に、エスカレータ踏段面を清掃しているエスカレータ踏段用清掃装置を斜視図により示す。エスカレータ踏段30の表面は、ステップ面31及びライザー面32により構成される。本実施形態では、そのうちのライザー面32をエスカレータ踏段用清掃装置1により清掃する場合について説明する。エスカレータ踏段30のステップ面31及びライザー面32にはクリート溝9が図1に示す方向に設けられている。本エスカレータ踏段用清掃装置1は、図1中のXで示す、ライザー面32のクリート溝9の方向に沿って上下方向に移動しながらエスカレータ踏段30を清掃する。また、エスカレータ踏段30のライザー面32は円弧を描くような曲面をしている。本エスカレータ踏段用清掃装置1は、ライザー面32のこの曲面に合わせてその向きを変化させながら移動する。
【0026】
図2に、エスカレータ踏段用清掃装置1の1つの実施形態の概略構成を断面で示す。また、図3に図2のA−A断面を示す。さらに、図4に図3のB‐B断面、及びC−C断面を示す。図4(a)は、クリート溝9内の第1棒状拭取具5、又は第2棒状拭取具6を示し、図4(b)は、クリート溝9内の回転ブラシ4を示す。エスカレータ踏段用清掃装置1は、筐体2、洗浄液収容部3、回転ブラシ4、第1棒状拭取具5、及び第2棒状拭取具6から構成される。図2では、エスカレータ踏段用清掃装置1の回転ブラシ4、第1棒状拭取具5、及び第2棒状拭取具6が、ライザー面32のクリート溝9内部に挿入された状態を図示する。また、図2ではライザー面32の曲面については簡略化して平板面として図示する。
【0027】
筐体2は、クリート溝9に向けられる側に開口部8を有し、その内部に回転ブラシ4を収納する箱状の形状であり、ライザー面32の一部の領域を覆うように設置される。また、図2に示すように、その上部に洗浄液収容部3が設けられる。また、筐体2の洗浄液収容部3に対向する部分には、洗浄液の導入口10が設けられ、この導入口10から回転ブラシ4に向かって洗浄液が滴下される。さらに、筐体2は、掃除機(図示せず)ノズル用接続口7を有し、掃除機によりクリート溝9の内部の塵埃や油などが吸引清掃される。この筐体2の形状は、回転ブラシ4を収納し、第1棒状拭取具5、及び第2棒状拭取具6が取り付く形状であれば図1、2に示すような略直方体の形状に限らず略球体、略楕円体などであっても良い。
【0028】
洗浄液収容部3には、エスカレータ踏段30の洗浄に用いられる洗浄液が収納される。本実施形態では、この洗浄液収容部3には、上方に開閉する蓋15が取り付けられ、エスカレータ踏段30の清掃前或いは清掃時には、この蓋15から洗浄液が注入される。この洗浄液収容部3には、筐体2と対向する側に洗浄液の滴下口14が設けられる。この滴下口14と筐体2の導入口10とは、相互の孔位置が合わされて洗浄液を流通させる。本実施形態では、この滴下口14と導入口10との孔径は略同径とし、その孔径は、滴下する洗浄液の好適な滴下量が保たれるように決定される。また、洗浄液収容部3を筐体2に対してスライド可能なように取付け、導入口10に対して滴下口14をスライドさせることで滴下する洗浄液の量を調節しても良い。
【0029】
回転ブラシ4は、図3に示すように、回転ブラシ軸11に円盤状の回転ブラシ蓋16を2枚取り付け、その2枚の回転ブラシ蓋16の間に板状の筒材17を円筒状に巻き、さらに、その筒材17にブラシ束13を植設したものである。このブラシ束13は、多数のブラシが束になったものである。そして、ブラシ束13は、図3に示すようにクリート溝9の位置に合わせて間隔を置き、図2に示すように、筒体17の外周に沿って略均等な角度で植設される。また、このブラシ束13の長さは、図4(b)に示すように、ブラシ束13の先端がクリート溝9の底面に十分に達するように設定される。各エスカレータ踏段30の清掃の際には、この回転ブラシ4は回転ブラシ軸11を中心に回転する。この構成により、ブラシ束13は、洗浄液収容部3から滴下された洗浄液を受け取り、エスカレータ踏段30のクリート溝9の内部を洗浄する。
【0030】
図5に、回転ブラシ4を筐体2へ接続する方法を示す。図5(a)は、筐体2の側面に接続される前の回転ブラシ4を示し、図5(b)は、筐体2の側面に接続された後の回転ブラシ4を示す。回転ブラシ4の両端部には筒材17に取り付けられた回転ブラシ蓋16から回転ブラシ軸11が突出している。一方、筐体2の側面には、溝23、菱形孔22及び板バネ部21からなる筐体側接続部20が設けられている。回転ブラシ4の回転ブラシ軸11を、溝23を経由して菱形孔22に差し込むことで回転ブラシ4は筐体2に接続される。図4(b)に示すように、円形の断面を有する回転ブラシ軸11は、菱形の形状である菱形孔22内に納まる。このとき、回転ブラシ軸11は、菱形孔22の縁に対して点接触するため、その回転を拘束されない。ここで、板バネ部21とは、溝23と菱形孔22との境目に生じる筐体2の測板が狭まった部分である。この板バネ部21に発生する開口の幅寸法を、回転ブラシ軸11の直径よりもやや小さくしておく。これにより、回転ブラシ軸11は、回転する際に菱形孔22内から脱落しない。また、この板バネ部21は、回転ブラシ軸11を菱形孔22に挿入する際に、側板の面外方向に倒れて回転ブラシ軸11を通過させるバネの役割を果たす。
【0031】
このように、回転ブラシ4は、筐体2に対してワンタッチで着脱可能なように接続される。従って、回転ブラシ4は、エスカレータ踏段30の清掃によりブラシが磨耗などにより寿命となったときには、簡易に交換することができる。また、エスカレータ踏段30の清掃の際に汚れた回転ブラシ4を適宜新しい回転ブラシ4と交換し、汚れの再付着を防止することができる。
【0032】
図6に、回転ブラシ4の回転手段を示す。回転ブラシ4の両端のいずれかの回転ブラシ軸11には、フレキシブルシャフト26を介して既製品である電動ドリル27が接続される。そして、この電動ドリル27の動力により回転ブラシ4を回転させる。この電動ドリル27は、ワンタッチでエスカレータ踏段用清掃装置1に着脱可能である。また、作業性の上からコードレスの電動ドリル27が好ましい。このように、エスカレータ踏段用清掃装置1の回転ブラシ4の回転手段に既製品である電動ドリル27をワンタッチでエスカレータ踏段用清掃装置1に着脱可能とすることで、エスカレータ踏段用清掃装置1の重量が軽減される。また、エスカレータ踏段用清掃装置1と電動ドリル27との接続にフレキシブルシャフト26を用いることで、任意の角度から電動ドリル27を動作させることができ良好な作業性が得られる。さらに、回転ブラシ4の両端の回転ブラシ軸11のうち、いずれかの回転ブラシ軸11を選択することができ、ライザー面32の両端部の清掃の際に作業性の良い取付け位置に切り換えることができる。
【0033】
図7に、棒状拭取具5、6を示す。棒状拭取具5、6は、略長方形の断面を有する棒状の拭取具本体19、拭取具本体19のクリート溝9側に設けられる凹凸部18、及び拭取具本体19の筐体2側に設けられる拭取具接続部12から構成される。図7(a)は、筒状の凹部となった拭取具接続部12aの場合であり、図7(b)は、筒状の凸部となった拭取具接続部12bの場合である。この棒状拭取具5、6は、ライザー面32の凹凸形状に嵌合される形状である。図4(a)に示すように、棒状拭取具5、6は、この凹凸部18によりエレベータ踏段20のクリート溝9と嵌合し、クリート溝9内部の塵埃や油を拭取る。これらの棒状拭取具5、6は、回転ブラシ4の回転ブラシ軸11の方向に沿ってその前後にそれぞれ並置される。この第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6は、図2及び図3の矢印Yの方向に示すように、エスカレータ踏段用清掃装置1の進行方向の前面に設置されるものを第1棒状拭取具5とし、エスカレータ踏段用清掃装置1の進行方向の後面に設置されるものを第2棒状拭取具6とする。また、本実施形態では棒状拭取具5、6の材料はゴムであるが、クリート溝9との嵌合に適した材料であれば、例えば、樹脂や清掃用スポンジであっても良い。
【0034】
この構成により、エレベータ踏段20は、そのクリート溝9と略直交する一定の幅に亘り清掃される。まず、第1棒状拭取具5により、回転ブラシ4による洗浄の前にクリート溝9内部に堆積した乾燥した塵埃が拭取られる。次に、洗浄液のついた回転ブラシ4によりクリート溝9内部の塵埃や油が洗浄され、さらに、第2棒状拭取具6により、油や塵埃が混ざり合った洗浄液が拭取られる。このように、第1棒状拭取具5、回転ブラシ4、及び第2棒状拭取具6は、それぞれ役割を分担しながらエレベータ踏段20のクリート溝9内部を清掃する。また、第1棒状拭取具5により、回転ブラシ4による洗浄前に比較的大きな塵埃を除去することができ、回転ブラシ4による洗浄効率を高めることができる。さらに、第2棒状拭取具6により、クリート溝9内の洗浄に使用された洗浄液の液垂れを防止し、洗浄液等がエスカレータ内部へ落下することを防止できる。
【0035】
図8に、第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6を筐体2へ取付ける方法を示す。図8(a)は,図7(a)の棒状拭取具5,6の場合の取付け方法であり、図8(b)は,図7(b)の棒状拭取具5,6の場合の取付け方法である。何れの場合にも、断面が略円形をした凸部と、それを包む凹部とが嵌合することで第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6が筐体2に取り付けられる。そして、棒状拭取具5、6は、横方向へスライドさせるか、押し込んだり剥がしたりすることで筐体2への取り付けや取り外しが可能となる。
【0036】
このように、第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6は、筐体2に対してワンタッチで着脱可能なように取り付けられる。従って、第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6は、エスカレータ踏段30の清掃により表面が磨耗などにより寿命となったときには、簡易に交換することができる。また、エスカレータ踏段30の清掃の際に汚れた棒状拭取具5、6を適宜新しい棒状拭取具5、6と交換することができる。
【0037】
また、この取り付け方法により、第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6は、図8中の矢印で示すように、筐体2に対して回転可能となる。これにより、第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6は、円弧を描くような曲面をしているライザー面32にそれぞれ追従して接することが可能となる。
【0038】
また、第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6は、図2に示すように、それぞれ筐体2から突出して取り付けられ、そのままクリート溝9の内部に嵌合する。これにより、筐体2の進行方向の前面及び後面は、第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6によりクリート溝9の内部を含めて閉鎖される。つまり、エスカレータ踏段用清掃装置1の進行方向の前面と後面とはほとんど密封されたような状態になり、塵埃などを吸引する掃除機の吸引効率を高めることが可能となる。さらに、エスカレータ踏段用清掃装置1は、第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6により2点で支持されてライザー面32に接する。これにより、エスカレータ踏段用清掃装置1は、安定した支持状態でライザー面32の清掃を行うことができる。さらに、この第1棒状拭取具5及び第2棒状拭取具6をライザー面32に押さえつけて清掃することで、スカレータ踏段用清掃装置1の進行方向の前面と後面との密封の度合いが大きくなり、掃除機の吸引効率を高めながら安定した支持状態で清掃を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】エスカレータ踏段面を清掃しているエスカレータ踏段用清掃装置の斜視図である。
【図2】本発明に係るエスカレータ踏段用清掃装置の1つの実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3のB‐B断面図及びC−C断面図である。
【図5】回転ブラシを筐体へ接続する方法を示す説明図である。
【図6】回転ブラシの回転手段を示す説明図である。
【図7】第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具を示す斜視図である。
【図8】第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具を筐体へ取付ける方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 エスカレータ踏段用清掃装置、2 筐体、3 洗浄液収容部、4 回転ブラシ、5 第1棒状拭取具、6 第2棒状拭取具、7 掃除機ノズル用接続口、8 開口部、9 クリート溝、10 導入口、11 回転ブラシ軸、12,12a,12b 拭取具接続部、13 ブラシ束、14 滴下口、15 蓋、16 回転ブラシ蓋、17 筒材、18 凹凸部、19 拭取具本体、20 筐体側接続部、21 板バネ部、22 菱形孔、23 溝、24 拭取具側連結部、25 筐体側連結部、26 フレキシブルシャフト、27 電動ドリル、30 エスカレータ踏段、31 ステップ面、32 ライザー面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータ踏段のクリート溝の内部を清掃するエスカレータ踏段用清掃装置であって、
クリート溝の内部を吸引清掃する掃除機のノズル用の接続口を有し、クリート溝に向けられる側に開口部を有してエスカレータ踏段の一部の領域を覆う箱状の筐体と、
筐体上部に設置され、洗浄液を筐体内部に滴下する洗浄液収容部と、
滴下された洗浄液を受け取り、踏段のクリート溝の内部を洗浄する回転ブラシと、
弾性体から成り、踏段のクリート溝と嵌合する凹凸部によりクリート溝の内部を拭取り、回転ブラシの軸方向に沿ってその前後にそれぞれ並置される第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具と、を備え、
回転ブラシと、第1棒状拭取具と、第2棒状拭取具とにより踏段のクリート溝の内部を清掃することを特徴とするエスカレータ踏段用清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータ踏段用清掃装置において、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具は、それぞれ筐体から突出して取付けられ、筐体の進行方向の前面及び後面は、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具によりクリート溝の内部を含めて閉鎖されることを特徴とするエスカレータ踏段用清掃装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエスカレータ踏段用清掃装置において、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具は、それぞれ開口部側から筐体に交換可能に接続されることを特徴とするエスカレータ踏段用清掃装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載のエスカレータ踏段用清掃装置において、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具は、エスカレータ踏段の形状に合わせて回転可能であることを特徴とするエスカレータ踏段用清掃装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエスカレータ踏段用清掃装置において、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具は、その軸に沿って筒状の凹部を有し、対向する筐体に設けられた筒状の凸部に嵌合することで、筐体に対して回転可能に接続されることを特徴とするエスカレータ踏段用清掃装置。
【請求項6】
請求項4に記載のエスカレータ踏段用清掃装置において、第1棒状拭取具及び第2棒状拭取具は、その軸に沿って筒状の凸部を有し、対向する筐体に設けられた筒状の凹部に嵌合することで、筐体に対して回転可能に接続されることを特徴とするエスカレータ踏段用清掃装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1に記載のエスカレータ踏段用清掃装置において、回転ブラシは、開口部側から筐体に交換可能に取り付けられることを特徴とするエスカレータ踏段用清掃装置。
【請求項8】
請求項7に記載のエスカレータ踏段用清掃装置において、回転ブラシは、筐体に設けられた取付孔を貫通する棒状の軸部を有し、回転ブラシは、取付孔周囲の筐体の板のばね作用により筐体への取付け及び筐体からの取り外しが可能であることを特徴とするエスカレータ踏段用清掃装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1に記載のエスカレータ踏段用清掃装置において、回転ブラシの両端部に突出した軸部のいずれかがフレキシブルシャフトを介して電動ドリルに接続され、回転ブラシは、電動ドリルの動力により回転することを特徴とするエスカレータ踏段用清掃装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1に記載のエスカレータ踏段用清掃装置において、エスカレータ踏段のライザー面の吸引清掃に用いられることを特徴とするエスカレータ踏段用清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−285292(P2008−285292A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132269(P2007−132269)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】