説明

エスシタロプラムの製造に使用することができる中間体の分離方法

【課題】エスシタロプラムの製造に有用な光学活性な中間体の分離方法を提供する。
【解決手段】下式(II)で示されるジオールのS-対掌体並びにそのアシル化誘導体を含む混合物を、水及び有機溶媒の混合物中で酸の存在下に処理し、液−液分配する該ジオールのS-対掌体並びにそのアシル化誘導体の単離・精製方法。


[式中、Rはシアノ基等、点線は二重結合又は単結合、Halはハロゲン原子、Zはジメチルアミノ基等を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的酵素アシル化又は脱アシル化によるエスシタロプラムの製造に有用な光学活性な中間体の新規製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シタロプラムは、ここ数年市場に出回っている、よく知られた抗うつ薬である。
【0003】
これは選択的に、中枢に作用するセロトニン (5-ヒドロキシトリプタミン; 5-HT) 再取り込み阻害剤であり, それゆえにこれは抗うつ活性を有する。
【0004】
シタロプラムは最初に特許文献2に対応する特許文献1に記載された。すなわち、この特許文献には、対応する5-ブロモ-誘導体から適当な溶剤中でのシアン化第一銅との反応によって及び 5-ブロモ-フタランのアルキル化によって、シタロプラムを製造する方法が概説されている。
【0005】
特許文献4に対応する特許文献3に、エスシタロプラム (シタロプラムのS-対掌体)の2つの製造方法が記載されている。
【0006】
この2つの方法は、出発化合物として式
【0007】
【化1】

【0008】
で表わされるラセミ性ジオールを使用する。
【0009】
第一の方法によれば, 式(I)で表わされるジオールを鏡像異性的に純粋な酸誘導体, たとえば(+) 又は (-)-a-メトキシ-a-トリフルオロメチル-フェニルアセチルクロライドと反応させて、ジアステレオマー エステルの混合物を生じさせて、 この混合物をHPLC 又は 分別結晶によって分離して, その後正しい立体化学を有するこのエステルをエナンチオ選択的にエスシタロプラムに変換する。第二の方法によれば,式 (II)で表わされるジオールを鏡像異性的に純粋な酸、たとえば(+)-ジ-p-トルオイル酒石酸を用いて立体選択的結晶化によって対掌体に分離し, その後式 (A)で表わされるジオールのS-対掌体をエナンチオ選択的にエスシタロプラムに変換する。
【0010】
エスシタロプラムは、現在抗うつ剤として開発された。したがってエスシタロプラムの改良製造方法に対する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】ドイツ特許第2,657,013号明細書
【特許文献2】米国特許第4,136,193号明細書
【特許文献3】米国特許第4,943,590 号明細書
【特許文献4】欧州特許(B1)第347 066 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、上記式(I)で表わされるジオールのS-対掌体並びにそのアシル化誘導体が、ラセミ性ジオール中の第一ヒドロキシル基を選択的酵素アシル化して、高い光学純度を有するS-ジオール又はそのアシル化誘導体を得ることによって製造されること、及びさらに得られた対掌体を一連の単離及び精製操作によって分離することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明
したがって, 本発明は
【化2】

【0014】
{式中、Rはシアノ又はシアノ基に変換することができる基であり,
Z は基 -CH2-N(R´R´´)
(式中、 R´及び R´´ は C1-6-アルキルであるか, 又は R´及び R´´ は相互に結合して、これらが結合するN-原子を含む環構造を形成する。)
であるか, 又は
Zはジメチルアミノメチル基に変換することができる基であり、
点線は二重結合又は単結合であり、
Halはハロゲンである。}
で表わされるジオール又はその塩の S- 又はR-対掌体, 及び(又は) 式
【0015】
【化3】

【0016】
{式中、R, Z, 点線及びHalは上記に定義された通りであり, W はO 又は Sであり, R3 は-Y-R1
(式中、R1 はC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル又はC2-10-アルキニルであり、これらのすべては場合によりC1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ, ジ-(C1-10-アルキル)アミノ, アリール, アリールオキシ, アリールチオ及びヘテロアリールから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか、
又は R1 はアリールであり, この際アリール基及びヘテロアリール基のいずれも場合によりC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル, C2-10-アルキニル, C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく、
Y は結合、 O, S又はNHである。)
である。}
で表わされるアシル化されたジオール又はその塩の逆対掌体の製造方法であって、
・ 式
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、R, Z, 点線及びHalは上記に定義された通りである。)
で表わされるラセミ化合物を、式
【0019】
【化5】

【0020】
{式中、X はO 又はSであり、W はO 又はSであり、 U はO 又はSであり、V はハロゲンであり、
R0はC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル又はC2-10-アルキニルであり、これらのすべては場合によりC1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ, ジ-(C1-10-アルキル)アミノ, アリール, アリールオキシ, アリールチオ及びヘテロアリールから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか, 又はR0 はアリールであり, この際アリール基及びヘテロアリール基のいずれも場合によりC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル, C2-10-アルキニル, C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノより成る群から選ばれた置換基によって1回以上置換されていてよい;
R1はR0に関して上記に定義した通りであり;
R2はR0に関して上記に定義した通りであるか, 又はR2 は適当な離脱基であり;
あるいは
R0及び R1 は一緒になって炭素原子3〜5個を有する鎖を形成し;
但し、この際X がSである場合、W 及びUはSでない。}
で表わされるアシル化剤又は式R1-N=C=O(式中、R1は上記上記に定義した通りである。)で表わされるイソシアネート 又は式R1-N=C=S(式中、R1は上記上記に定義した通りである。)で表わされるイソチオシアネートを用いて選択的酵素アシル化させて、R- 又はS-形のいずれかの形の式(II)で表わされる出発化合物及び式
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、R, W, Hal, R3, 点線及びZは上記に定義した通りである。)
で表わされる化合物の逆対掌体の混合物を生じさせるか、
あるいは
・ 式
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、R, Z, W, Hal, 点線及びR3 は上記に定義した通りである。)
で表わされるラセミ化合物を選択的酵素脱アシル化させて、式
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、R, Hal, 点線 及びZ は上記に定義した通りである。)
で表わされる、R- 又はS-形のいずれかの形の脱アシル化された化合物及び逆対掌体の形の、式 (IV)で表わされるアシル化された出発化合物の混合物を生じさせ、場合により引き続き任意の順序で, 式(II)で表わされる化合物のS- 又はR-対掌体及び(又は) 式 (IV) で表わされる化合物又はその塩の逆対掌体を単離することを特徴とする、前記製造方法に関する。
【0027】
本発明は、また式(IV)で表わされる対掌体の混合物を式 (II)で表わされる逆対掌体から分離し、ついで上記式(IV)で表わされる化合物のR- 及びS-対掌体となす方法に関する。
【0028】
最後に, 本発明はエスシタロプラム 及び ラセミ性シタロプラムを、本発明による選択的酵素アシル化又は脱アシル化によって得られる式 (II)で表わされる化合物の対掌体から, 又は本発明による選択的酵素アシル化又は脱アシル化によって得られる式 (IV)で表わされる光学活性なアシル誘導体の対掌体から製造する方法に関する。
【0029】
発明の詳細な説明
式 (II), (IV) 及び (V)で表わされる化合物に関連して使用される場合, 用語 “対掌体”, “R-対掌体”, “S-対掌体”, “R-形”, “S-形”, “R-ジオール” 及び “S-ジオール” は、4-Hal-フェニル基が結合する炭素原子の周囲の基の配向を意味する。
【0030】
したがって、本発明は、一方の実施態様で上述のような選択的酵素アシル化、もう一方の実施態様で上述のような選択的酵素脱アシル化 に関する。
【0031】
選択的酵素アシル化とは、酵素アシル化が式(II)で表わされる化合物の対掌体うちの一方を優先的に効果的に変換させ、反応混合物中で変換されなかった式(II)で表わされる化合物の他方の対掌体を優先的に遊離させることを意味する。
【0032】
選択的酵素脱アシル化とは、酵素脱アシル化が式(IV)で表わされる化合物の対掌体うちの一方を優先的に効果的に変換させ、反応混合物中で変換されなかった式(IV)で表わされる化合物の他方の対掌体を優先的に遊離させることを意味する。
【0033】
したがって、本発明の選択的アシル化は優先的にS-形の式(II)で表わされる化合物及びR-形の式 (IV)で表わされる化合物を含む混合物を生じさせるか, 又は優先的にR-形の式(II)で表わされる化合物及びS-形の式 (IV)で表わされる化合物を含む混合物を生じさせることができる。
【0034】
同様に, 選択的酵素脱アシル化は優先的にS-形の式 (IV)で表わされる化合物及びR-形の式(II)で表わされる化合物を含む混合物を生じさせるか, 又は優先的にR-形の式 (IV)で表わされる化合物 及びS-形の式(II)で表わされる化合物を含む混合物を生じさせることができる。
【0035】
本発明のアシル化又は脱アシル化後に得られる配合混合物(composition mixture)は、使用される特定のヒドロラーゼ及び反応が行われる条件に依存する。本発明の酵素アシル化/脱アシル化の特徴は、一方の対掌体が他方の割合よりもかなり大きい割合で変換されることである。式 (II)で表わされるジオール 及び(又は)本発明の光学分割法 によって得られた式(IV)で表わされるアシル化された化合物 の光学純度は、通常少なくとも90% ee, 好ましくは 少なくとも95% ee, より好ましくは 少なくとも 97% ee、そして最も好ましくは 少なくとも98% eeである。しかし、光学純度のより低い値も容認される。
【0036】
本発明の酵素方法のための出発化合物は、式 (II)で表わされるラセミ性ジオール又は 式 (IV)で表わされるラセミ性アシル誘導体 である。
【0037】
本発明の好ましい実施態様において、R はハロゲン又は シアノ, 最も好ましくは シアノである。
【0038】
本発明のさらに好ましい実施態様において、Halはフッ素である。
【0039】
本発明のさらに好ましい実施態様において、式 (II) 及び (IV) 中の点線は単結合である。
【0040】
ある実施態様において、Zはジメチルアミノメチルであるか又はジメチルアミノメチルに変換することができる基である。適する実施態様において、Zはジメチルアミノメチルである。
【0041】
Halはフッ素であり、そしてRはシアノであり、 点線は単結合であり、そしてZはジメチルアミノメチルであるのが最も好ましい。
【0042】
本発明の酵素アシル化に使用されるアシル化剤は、式 (IIIa), (IIIb) 及び(IIIc)で表わされる化合物のうちのいずれか1つである。
【0043】
別の実施態様において、本発明にしたがって使用されるアシル化剤は、式 (IIIa) 及び (IIIb)で表わされる化合物のいずれかである。
【0044】
本発明の別の実施態様によれば, 使用されるアシル化剤は 式(IIIa)で表わされる化合物である。
【0045】
また本発明の別の実施態様によれば, 使用されるアシル化剤は 式(IIIb) で表わされる化合物である。
【0046】
本発明の別の実施態様によれば, 使用されるアシル化剤は 式(IIIc) で表わされる化合物である。
【0047】
アシル化剤 が式(IIIa)で表わされる化合物の場合, U はOが適する。
【0048】
アシル化剤が上記のいずれかである場合, Wは Oが適する。
【0049】
アシル化剤が上記のいずれかである場合, Xは Oが適する。
【0050】
上記実施態様のいずれかに定義されたアシル化剤 (IIIa), (IIIb) 及び (IIIc)のいずれか中の置換基は、次のものが好ましい:
R0, R1及びR2は独立して C1-6-アルキル, C2-6-アルケニル 及び C2-6-アルキニルから選ばれ、 これらのすべては場合によりC1-6-アルコキシ, C1-6-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-6-アルキルアミノ及びジ-(C1-6-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか又は R2 は適当な離脱基, たとえばスクシンイミジル, HOBt又は pfpであるか, 又は R0 及び R1は一緒になって炭素原子3-5個を有する鎖を形成し、 より好ましいR0, R1及び R2は独立してC1-4-アルキル, C2-4-アルケニル 及び C2-4-アルキニルから選ばれ、これらのすべては場合によりC1-4-アルコキシ, C1-4-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-4-アルキルアミノ及びジ-(C1-4-アルキル)アミノから選ばれる置換基によってによって1回以上置換されていてよいか又は R2 は適当な離脱基, たとえばスクシンイミジル, HOBt 及び pfp 又は R0 及び R1は一緒になって炭素原子3-5個を有する鎖を形成し、より好ましくは R0, R1 及び R2 は独立してC1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 及び C2-3-アルキニルから選ばれ、 これらのすべては場合により C1-3-アルコキシ, C1-3-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-3-アルキルアミノ及びジ-(C1-3-アルキル)アミノから選ばれる置換基によってによって1回以上置換されていてよく, さらにより好ましくは R0 及び R1はC1-3-アルキル, 特に非分枝状 C1-3-アルキルであり、R2 はハロゲンによって1回以上置換されたC1-3-アルキルであるか又は R2 はC2-3-アルケニルである。
【0051】
上記実施態様のいずれかに定義された式 (IIIa) で表わされるアシル化剤中の置換基R0 及びR1 は、つぎのものが好ましい:
R0及びR1 は独立して C1-6-アルキル, C2-6-アルケニル 及び C2-6-アルキニルから選ばれ、 これらのすべては場合によりC1-6-アルコキシ, C1-6-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-6-アルキルアミノ及びジ-(C1-6-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましい R0 及び R1 は独立して C1-4-アルキル, C2-4-アルケニル 及び C2-4-アルキニルから選ばれ、 これらのすべては場合によりC1-4-アルコキシ, C1-4-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-4-アルキルアミノ及びジ-(C1-4-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, 好ましくは R0 及び R1 は独立してC1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 及び C2-3-アルキニルから選ばれ、 これらのすべては場合によりC1-3-アルコキシ, C1-3-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-3-アルキルアミノ及びジ-(C1-3-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R0 及び R1 は独立して C1-4-アルキルであり、最も好ましくは R0及び R1はC1-3-アルキルであり, 特に非分枝状 C1-3-アルキルであり, プロピルが適当である。
【0052】
上記実施態様のいずれかに定義された式(IIIb) で表わされるアシル化剤中の置換基R1 及び R2 は、つぎのものが好ましい:
R1及び R2は独立して C1-6-アルキル, C2-6-アルケニル 及び C2-6-アルキニルから選ばれ、 これらのすべては場合によりC1-6-アルコキシ, C1-6-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-6-アルキルアミノ及びジ-(C1-6-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか 又は R2 は別の離脱基, たとえば スクシンイミジル, HOBt 及び pfpであり, より好ましいR1及び R2は独立して C1-4-アルキル, C2-4-アルケニル 及び C2-4-アルキニルから選ばれ、 これらのすべては場合によりC1-4-アルコキシ, C1-4-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-4-アルキルアミノ及びジ-(C1-4-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか又は R2は別の離脱基, たとえば スクシンイミジル, HOBt 及び pfpであり, 好ましくは R1 はC1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 及び C2-3-アルキニルから選ばれ、 これらのすべては場合によりC1-3-アルコキシ, C1-3-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-3-アルキルアミノ及びジ-(C1-3-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく、そして R2 はハロゲンによって1回以上置換されたC1-4-アルキルであり、R2 はC2-4-アルケニルであるか 又は R2 は別の離脱基, たとえば スクシンイミジル, HOBt 及び pfpであり, より好ましくは R1 は C1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 又は C2-3-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-3-アルコキシ, C1-3-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-3-アルキルアミノ及びジ-(C1-3-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく、そして R2 はハロゲンによって1回以上置換されたC1-3-アルキルであるか又は R2 はC2-3-アルケニルであり, さらにより好ましくは R1 はC1-3-アルキルであり、そしてR2 は ハロゲンによって1回以上置換されたC1-3-アルキルであるか又は R2はC2-3-アルケニルであり, そしてより好ましくはR1 はC1-3-アルキル, 特に非分枝状 C1-3-アルキル, たとえばメチル, エチル又はプロピルである。であり、そしてR2はC2-3-アルケニルである。
【0053】
ハロゲンによって1回以上置換されたC1-3-アルキルを意味するR2 は基、たとえば2,2,2-トリクロロエチル 及び 2,2,2-トリフルオロエチル, 特に2,2,2-トリフルオロエチルを含む適当な離脱基である。
【0054】
本発明の具体的実施態様において、上述のような式 (IIIb)で表わされるアシル化剤は、式中、でR2 がビニルである化合物である。
【0055】
本発明の別の具体的実施態様において、上述のような式(IIIb)で表わされるアシル化剤は、式中、でR1 がプロピルである化合物である。この具体的実施態様は本発明の好ましくいアシル化剤、すなわちビニル ブチラートを含む。
【0056】
本発明の別の実施態様によれば、アシル化剤は式 (IIIc)で表わされる化合物である。
【0057】
上記実施態様のいずれかに定義された式 (IIIc)で表わされる化合物中の置換基R1 は次のものが好ましい:
R1 はC1-6-アルキル, C2-6-アルケニル 及び C2-6-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-6-アルコキシ, C1-6-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-4-アルキルアミノ及びジ-(C1-6-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 はC1-4-アルキル, C2-4-アルケニル 及び C2-4-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-4-アルコキシ, C1-4-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-4-アルキルアミノ及びジ-(C1-4-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, 好ましくは R1 は C1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 及び C2-3-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-3-アルコキシ, C1-3-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-3-アルキルアミノ及びジ-(C1-3-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 は C1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 又は C2-3-アルキニルであり, そしてより好ましくは R1 はC1-3-アルキル, 特に非分枝状 C1-3-アルキル, たとえばメチル, エチル又はプロピルである。
Vは塩素であるのが好ましい。
【0058】
本発明にしたがって使用されるアシル化剤 は式 R1-N=C=Oで表わされるイソシアネート又は式 R1-N=C=S で表わされるイソチオシアネートであることもできる。
【0059】
したがって, 本発明の別の実施態様において, アシル化剤は式 R1-N=C=Oで表わされるイソチオシアネートである。
【0060】
本発明の別の実施態様によれば, アシル化剤は式 R1-N=C=Sで表わされるイソシアネートである。
【0061】
上記実施態様のいずれかに定義されたイソシアネート 及びイソチオシアネート中の置換基 R1 は次のものが好ましい:
R1 はC1-6-アルキル, C2-6-アルケニル又はC2-6-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-6-アルコキシ, C1-6-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-4-アルキルアミノ及びジ-(C1-6-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 is C1-4-アルキル, C2-4-アルケニル 又は C2-4-アルキニルであり、 これらのすべては場合により C1-4-アルコキシ, C1-4-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-4-アルキルアミノ及びジ-(C1-4-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, 好ましくは R1 は C1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 又は C2-3-アルキニルであり、 これらのすべては場合により C1-3-アルコキシ, C1-3-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-3-アルキルアミノ及びジ-(C1-3-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 は C1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 又は C2-3-アルキニルであり, そしてより好ましくは R1 は C1-3-アルキル, 特に非分枝状 C1-3-アルキル, たとえばメチル, エチル又はプロピルである。
【0062】
本発明はまた上記に定義された式 (IV)で表わされるラセミ化合物の選択的酵素脱アシル化方法を含む。
【0063】
使用される式 (IV)で表わされるラセミ化合物は、式中、で、YがO, 又はSである化合物であるのが好ましい。
【0064】
別の実施態様において、使用される式 (IV)で表わされるラセミ化合物は、式中、で、 Y がOである化合物である。
【0065】
また別の実施態様において、使用される式 (IV)で表わされるラセミ化合物は、式中、で、YがSである化合物である。
【0066】
本発明の実施態様において、使用される式 (IV)で表わされるラセミ化合物は、式中、で、Y が結合である化合物である。
【0067】
上記実施態様のいずれかに定義された式 (IV)で表わされるラセミ化合物中の置換基R1 は次のものが好ましい: C1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 は C1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ 及び シアノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, 好ましくは R1は C1-10-アルキル, 好ましくは 非分枝状 C1-10-アルキル 及び より好ましくは R1は非分枝状 C4-10-アルキルである。
【0068】
本発明によれば、選択的酵素アシル化を、実質的に加水分解を抑制する条件下で実施する。水 が反応系に存在する場合、 アシル化反応の逆反応である加水分解を実施する。
【0069】
したがって, 選択的酵素アシル化を好ましくは無水有機溶剤又はほとんど無水の有機溶剤 (酵素は活性であるために少量の水の存在を一般に必要とする)中で実施する。下記実施例に、水の添加がどのように変換に影響するかを説明する。 特定の反応系中に許容し得る水の百分率を、当業者によって決定することができる。
【0070】
アシル化反応に使用することができる有機溶剤は、使用される酵素を非活性化しない場合に限りあまり重要でない。 適当な溶剤は、炭化水素、 たとえばヘキサン, ヘプタン, ベンゼン及びトルエン; エーテル類、 たとえばジエチルエーテル, ジイソプロピルエーテル, テトラヒドロフラン, 1,4-ジオキサン, tert-ブチルメチルエーテル 及び ジメトキシエタン; ケトン類、 たとえばアセトン, ジエチル ケトン, ブタノン, 及び メチル エチル ケトン; エステル類、 たとえば酢酸メチル, 酢酸エチル, エチル ブチラート, ビニル ブチラート 及び 安息香酸エチル; ハロゲン化炭化水素、 たとえばメチレンクロライド, クロロホルム 及び1,1,1-トリクロロエタン; 第二及び第三 アルコール, たとえばtert-ブタノール; 窒素含有溶剤、たとえばジメチルホルムアミド, アセトアミド, ホルムアミド, アセトニトリル 及び プロピオニトリル; 及び非プロトン性極性溶剤、たとえばジメチルスルホキシド, N-メチルピロリドン 及び ヘキサメチルホスホラストリアミドを含む。
【0071】
これらのうち, 炭化水素、 たとえばヘキサン, ヘプタン, ベンゼン及びトルエン, エーテル類、 たとえばジエチルエーテル, ジイソプロピルエーテル, 1,4-ジオキサン 及び tert-ブチルメチルエーテル 及び エステル類、たとえばビニルブチラートが 好ましい。一方の酵素に関して、最も好ましい溶剤は、芳香族 炭化水素、 たとえばベンゼン 又は トルエン 及び エーテル類, 最も好ましくはトルエン及び他方の酵素に関して、最も好ましい 溶剤はエーテル類、たとえば1,4-ジオキサン (下記例参照)であることができる。 前記溶剤は単独で又は2個以上の溶剤の混合物で使用することができる。
【0072】
式 (II)で表わされるラセミ性ジオール及びアシル化剤の濃度は、あまり高くなってはならない。というのは溶剤中の試薬の高い濃度が、ラセミ性ジオールの非選択的アシル化を導くことができるからである。 ラセミ性ジオール及びアシル化剤の濃度はそれぞれ1,0 M未満, より好ましくは 0,5 M未満, さらにより好ましくは0,2 M未満又は さらにより好ましくは0,1 M未満であるのが好ましい。当業者はラセミ性ジオール及びアシル化剤の最適濃度を決定することができる。
【0073】
選択的酵素脱アシル化を、水又は水と有機溶剤の混合物中で、好ましくは緩衝液の存在下に実施するのが好ましい。 反応で使用することができる有機溶剤は、使用される酵素を不活性化しない場合にかぎりあまり重要でない。好ましい有機溶剤は、水と混和しうる溶剤、たとえばアルコール, アセトニトリル, DMF, DMSO, ジオキサン, DME 及びジグリメである。当業者は、別の好ましい溶剤を特定することができる。当業者は、反応で使用される式 (IV)で表わされるラセミ化合物の最適濃度を決定することができる。
【0074】
使用される酵素の立体選択性を、有機酸 及び(又は)有機塩基の存在下でアシル化又は脱アシル化を実施することによって増加させることができる。
【0075】
したがって, 本発明は酵素アシル化 又は酵素 脱アシル化を有機塩基又は有機酸、 又はその混合物の存在下に行う方法にも関する。
【0076】
具体的な実施態様において、本発明は、酵素アシル化又は酵素脱アシル化を有機酸, 好ましくは有機カルボン酸の存在下に行う方法に関する。
【0077】
別の実施態様において、 酵素アシル化を有機酸, 好ましくは有機カルボン酸の存在下に行う。
【0078】
上記有機酸は芳香族 カルボン酸 又は脂肪族 カルボン酸であるのが好ましい。
【0079】
反応に使用することができる有機酸として, アルキルカルボン酸, シクロアルキルカルボン酸, シクロアルキルアルキルカルボン酸, 場合により置換されたフェニル-アルキルカルボン酸及び場合により置換されたフェニルカルボン酸が挙げられる。好ましい脂肪族カルボン酸は、カルボン酸類、たとえばギ酸, 酢酸, プロピオン酸, n-酪酸, イソ-酪酸, 2-エチル酪酸, n-吉草酸, イソ-吉草酸, ピバル酸, n-カプロン酸, イソ-カプロン酸, デカン酸, クロトン酸, パルミチン酸, シクロペンタンカルボン酸, シクロヘキサンカルボン酸, フェニル-C1-4-アルキルカルボン酸、たとえば3-フェニルプロピオン酸, 4-フェニル酪酸, シュウ酸, マロン酸 及び 酒石酸である。好ましい芳香族 カルボン酸は、酸、たとえば安息香酸, p-クロロ安息香酸, p-ニトロ安息香酸, p-メトキシ安息香酸, p-トルイル酸, o-トルイル酸, m-トルイル酸, ナフトエ酸, フタル酸及びテレフタル酸, サリチル酸, ヒドロケイ皮酸を例として含む。
【0080】
したがって, 本発明の1つの実施態様によれば, 酵素の立体選択性を改善するために使用される有機酸は、n-プロピオン酸, イソ-プロピオン酸, n-酪酸, イソ-酪酸, イソ-吉草酸, 2-エチル酪酸, クロトン酸, パルミチン酸, シクロヘキサンカルボン酸, ピバル酸, 安息香酸及びp-トルイル酸, サリチル酸及び 3-フェニルプロピオン酸から選ばれる。 本発明の別の実施態様によれば、使用されるカルボン酸はピバル酸である。
【0081】
使用される有機酸の量はあまり制限されないが, 基質(substrate)に対するモル割合は通常0.1 〜10, 好ましくは 1.0 〜3.0, 及び より好ましくは 1.0 〜 2.0である。
【0082】
あるいは, 第三アミンを酵素の選択性の改善のために、単独で又は上記有機酸のいずれかと一緒に使用することができる。適当な有機塩基として、トリメチルアミン, ピリジン, 4-ジメチルアミノピリジンか挙げれ、ピリジンが好ましい。有機酸及び(又は)有機塩基の好ましい組み合わせは、安息香酸とピリジンが例として挙げられる。
【0083】
使用される第三アミンの量は、あまり制限されないが、基質に対するモル割合は通常0.5〜3.0, 好ましくは 0.5 〜2.0である。
【0084】
本発明の酵素アシル化又は脱アシル化を、ヒドロラーゼ, たとえばリパーゼ, エステラーゼ, アシラーゼ 又は プロテアーゼを用いて行う。
【0085】
したがって, 本発明の1つの実施態様によれば, 酵素アシル化をヒドロラーゼ, たとえばリパーゼ, エステラーゼ, アシラーゼ 又は プロテアーゼを用いて実施する。本発明の有用な酵素は、式 (II)で表わされるラセミ化合物中の第一ヒドロキシ基のR-選択的アシル化又はS-選択的アシル化を行うことができるような酵素である。
【0086】
本発明の別の実施態様によれば、酵素脱アシル化をヒドロラーゼ, たとえばリパーゼ, エステラーゼ, アシラーゼ 又はプロテアーゼを用いて行う。本発明の有用な酵素は、式 (IV) 表わされるラセミ化合物中のアシル基のR-選択的脱アシル化又はS-選択的脱アシル化を行うことができるような酵素である。
【0087】
ここで使用されるように、 “ヒドロラーゼ” も 、“酵素” も一般に又は特定の酵素に関連して, 酵素それ自体を意味するだけでなく, 酵素を含有する培養生成物, たとえば細胞体を含有する培養液体、又は 培養細胞体, 及び培養生成物の加工された生成物 (たとえば粗抽出物, 凍結乾燥された微生物又は細胞, アセトン 乾燥された微生物又は細胞, このような微生物又は細胞の基本生成物(a ground product), 又はその同種物)を意味する。
【0088】
さらに, “酵素” 又は “ヒドロラーゼ” を、公知技術によって酵素それぞれ自体として又は細胞体として固定することができ、そして固定された形で使用することができる。固定化を、当業者にとって周知の方法で行うことができ、このような方法はたとえばキャリヤー結合, 架橋, カプセル内包等々を含む。

したがって, 本発明の1つの実施態様において、ヒドロラーゼを固定化酵素又は架橋された酵素結晶 (Cross-Linked Enzyme Crystal (CLEC)) 酵素に形で使用する。
【0089】
本発明者は、本発明の酵素アシル化をカンジダ アンタルチカ(Candida antartica)に由来するノボザイム(Novozyme) 435, テルモマイセス ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus )に由来するリポザイム(LipoZyme) TL IM又はリポ蛋白質リパーゼ シュードモナス(Pseudomonas) sp. [シュードモナス セパシア(Pseudomonas Cepacia)から単離され、そしてフルカ(Fluka)から得られる]を用いて行うことができ, 特に良好な結果がカンジダ アンタルチカに由来するNovozyme 435又はリポ蛋白質リパーゼシュードモナス sp.を用いた場合, 得られることを見出した。
【0090】
したがって, 本発明の1つの実施態様によれば, 使用される酵素はシュードモナス sp. リポ蛋白質リパーゼ, カンジダ アンタルチカ リパーゼ B 又はテルモマイセス ラヌギノスス リパーゼである。
【0091】
本発明の別の実施態様によれば, 使用される酵素は、シュードモナス sp. リポ蛋白質リパーゼ 又はカンジダ アンタルチカ リパーゼ Bである。
【0092】
上述のように, 本発明の上記酵素のうちの1つの使用は、また酵素を含有する培養生成物, たとえば細胞体を含有する培養液体, 又は 培養された細胞体, 培養生成物の加工生成物及びこれらの酵素/培養生成物のあらゆる固定形の使用を含む。
【0093】
本発明の上記に具体的に挙げられた酵素のいずれかを使用することは、また上記に具体的に挙げられた、本発明の選択的アシル化又は脱アシル化を行うことができる酵素の突然変異、変種又はあらゆる同等物を使用することも含まれる。その変種 又は同等物は、シュードモナス, カンジダ又はテルモマイセス, 又はあらゆるその他の起源の種々の菌株から単離することができるか, 又は これらは酵素のアミノ酸調合物中での変化を導く上記酵素をコードするDNAの突然変異によって産生することができる。上記酵素の突然変異又は変種は、 単一アミノ酸が除かれているか又は別のアミノ酸で置き換えられている変種及び突然変異であるのが好ましく、そして変種又は突然変異のアミノ酸配列は上記酵素に、より多く60 % より多く同一, 好ましくは 80 % より多く又は 最も好ましくは 90 %より多く同一であるのが好ましい。
【0094】
したがって, 本発明の1つの実施態様において、使用される酵素はシュードモナス sp. リポ蛋白質リパーゼ 又は その突然変異又は変種である。シュードモナス sp. リポ蛋白質リパーゼ を使用するのが好ましい。
【0095】
本発明の別の実施態様によれば, 使用される酵素 はカンジダ アンタルチカ リパーゼ B 又はその 突然変異又は変種である。使用される酵素はカンジダ アンタルチカ リパーゼ Bであるのが好ましい。
【0096】
本発明の別の実施態様によれば、酵素は NovozymeO435 (Novozymes A/S社から入手される、アクリル樹脂上に固定されたカンジダ アンタルチカ リパーゼ B)である。
【0097】
本発明の別の実施態様によれば, 使用される酵素は、テルモマイセイス ラヌギノスス リパーゼ 又はその突然変異又は変種である。使用される酵素はテルモマイセイス ラヌギノスス リパーゼであるのが好ましい。
【0098】
本発明の別の実施態様によれば, 使用される酵素は、またNovozymes A/S社から入手されるLipozymeTM TL IMである。
【0099】
酵素アシル化/脱アシル化に対する好ましい反応条件は、使用される特定の酵素に従い、これが固定されているかいないか等々で異なる。
【0100】
反応に対する適する温度は、0-80 °C, より好ましくは20-60 °C, 又はより好ましくは30-50 °Cである。
【0101】
使用される酵素の量は、あまり制限されないが、基質に対する重量割合として通常0.01-1.0, 好ましくは 0.02-0.5及びより好ましくは 0.02-0.3である。
【0102】
反応をバッチ法として実施することができるか又は連続法として実施することができる。 酵素をバッチの大多数を繰り返し又は連続的に使用することができる。反応時間はあまり制限されないが, 使用される酵素 及び 規模及び産生方法の種類 (バッチ又は連続)に従う。
【0103】
本発明はまた式(IV)
【0104】
【化9】

【0105】
(式中、R, Hal, R3, W, 点線 及び Z は上記に定義された通りである。)
で表わされる化合物又はその塩のS- 又は R-対掌体に関する。
【0106】
本発明の1つの実施態様において、上記光学活性なアシル誘導体はS-対掌体である。本発明の別の実施態様によれば、上記光学活性なアシル誘導体はR-対掌体である。
【0107】
本発明の1つの実施態様において、上記R- 又は S-対掌体は、R がハロゲン又は シアノであり, 好ましくは Rがシアノである化合物である。
【0108】
本発明の別つの実施態様において、上記 R- 又は S-対掌体は、Halがフッ素である化合物である。
【0109】
本発明の別の実施態様において、上記R- 又は S-対掌体は、点線が単結合示す化合物である。
【0110】
本発明のその他の実施態様において、上記R- 又は S-対掌体は、Z がジメチルアミノメチルでるか又はジメチルアミノメチルに変換することができる基であり, より好ましくは Zがはジメチルアミノメチルであり, そしてその他の置換基が上記に定義された通りである化合物である。
【0111】
本発明の別の実施態様において、上記R- 又は S-対掌体は、Zがジメチルアミノメチルであり, Halがフッ素であり、そして 点線が単結合示し, そしてR がシアノ 又はハロゲン, 好ましくはシアノである化合物である。
【0112】
本発明の別の実施態様において、上記R- 又は S-対掌体は、Y がO又は S, 好ましくは YがOであり、その他の置換基が上記に定義された通りである化合物である。本発明の別の実施態様において、上記R- 又は S-対掌体は、YがSであり、そしてその他の置換基が上記に定義された通りである化合物である。
【0113】
本発明の別の実施態様において, 上記R- 又は S-対掌体は、Yが結合であり、そしてその他の置換基が上記に定義された通りである化合物である。
【0114】
本発明のその他の実施態様において、上記R- 又は S-対掌体は、 YがNHであり、そしてその他の置換基が上記に定義された通りである化合物である。
【0115】
上記実施態様のいずれかに記載されたR- 又は S-対掌体は、
R1 がC1-6-アルキル, C2-6-アルケニル 又は C2-6-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-6-アルコキシ, C1-6-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-6-アルキルアミノ及びジ-(C1-6-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 が C1-4-アルキル, C2-4-アルケニル 又は C2-4-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-4-アルコキシ, C1-4-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-4-アルキルアミノ及びジ-(C1-4-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, 好ましくは R1 がC1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 又は C2-3-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-3-アルコキシ, C1-3-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-3-アルキルアミノ及びジ-(C1-3-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく、そして 最も好ましい R1 が C1-3-アルキル, 特に非分枝状 C1-3-アルキルである、
化合物であるのが好ましい。
【0116】
本発明の別の好ましい実施態様において、上記実施態様のいずれかに記載されたR- 又は S-対掌体は、
R1が次の意味を有する: C1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合により C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-6-アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 は C1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ 及び シアノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, 好ましくは R1はC1-10-アルキル, 好ましくは 非分枝状C1-10-アルキル 及び より好ましくは R1は非分枝状C4-10である、
化合物である。
【0117】
アシル化反応又は脱アシル化反応の終了後, 式 (II) で表わされるジオールの対掌体は、 式 (IV) で表わされる化合物の逆対掌体との混合物として得られる。ついで 場合により、この反応混合物を酵素から分離する。
【0118】
高い化学純度を有する式(II) 及び(又は) (IV)で表わされる所望の対掌体を得るために、有効な方法で、式 (IV) 及び (II)で表わされる逆対掌体それぞれから上記対掌体を分離しなければならない。しかし, 通常公知の方法によって有効に対掌体を分離するのは困難である。というのは式 (IV) で表わされるアシル誘導体の構造は、式 (II)で表わされるジオールの構造に極めて類似するからである。
【0119】
本発明者は集中研究を行い、反応混合物を酸の存在下に有機溶剤及び水を含有する混合溶剤で処理した場合、酸との塩の形の式 (II)で表わされる化合物の対掌体が水層に有効に分配され、そして酸との塩の形の式(IV)で表わされる逆対掌体の有機層に有効に分配されることを見出した。
【0120】
したがって, 別の本発明の実施態様によれば、本発明は式
【0121】
【化10】

【0122】
{式中、R はシアノ又はシアノ基に変換することができる基であり, 点線は 二重結合又は単結合を示し, Hal はハロゲンであり,
Z は基 -CH2-N(R´R´´)
(式中、R´及び R´´ はC1-6-アルキルであるか, 又は R´及び R´´ は相互に結合して、これらが結合するN-原子を含む環構造を形成する。)
であるか, 又は
Zはジメチルアミノメチル基に変換することができる基であり、
WはO 又は Sであり、
R3は-Y-R1
(式中、Yは結合, O, S 又はNHであり、R1 はC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ, ジ-(C1-10-アルキル)アミノ, アリール, アリールオキシ, アリールチオ 及び ヘテロアリールから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか, 又は R1 はアリールであり, この際このアリール基及びヘテロアリール基のいずれも場合によりC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル, C2-10-アルキニル, C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよい。)
である。}
で表わされる化合物又はその塩 及び(又は) 式
【0123】
【化11】

【0124】
(式中、R, Z, Hal 及び 点線は上記に定義された通りである。)
で表わされるジオール又はその塩を、式 (IV)で表わされる化合物 及び式 (II)で表わされるジオールを含む混合物から単離及び精製する方法において,
a) 式(IV) で表わされる化合物及び式 (II)で表わされるジオールを含む混合物を、水及び有機溶剤の混合物中で酸の存在下に処理し、
b) 式 (II)で表わされるジオールを上記酸の塩として含む水相を分離して,式 (IV)で表わされる化合物を上記酸の塩として含む有機相を得、ついで
場合により式(II)で表わされる化合物をその塩基又は その塩として単離し、そして場合により式 (IV)で表わされる化合物 をその塩基又はその塩として単離する
ことを特徴とする、上記単離及び精製する方法に関する。
【0125】
本発明の1つの実施態様によれば、上記単離及び精製方法でR はハロゲン 又は シアノ, 好ましくは シアノである。
【0126】
本発明の別の実施態様にれば、上記単離及び精製方法でHalはフッ素である。
【0127】
好ましくは実施態様によれば, 点線は単結合示す。
【0128】
本発明の別の実施態様において、Zはジメチルアミノメチルであるか又はジメチルアミノメチル基に変換することができる基である。Z はジメチルアミノメチルであるのが好ましい。
【0129】
本発明の好ましい実施態様によれば、Halはフッ素であり、Zはジメチルアミノメチルであり, 点線は単結合であり、R はシアノ又はハロゲン, 好ましくは シアノである。
【0130】
本発明の別の実施態様において、上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、Y がO 又は S, 好ましくは Yが Oである化合物であり、そしてその他の置換基は上記に定義された通りである化合物である。
本発明の別の実施態様において、上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、Y がSである化合物である。
【0131】
本発明の別の実施態様において、上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、Yが結合であり、 そしてその他の置換基は上記に定義された通りである化合物である。
【0132】
本発明の別の実施態様において、上記単離及び精製方法で式(IV)で表わされる化合物は、YがNHであり、 そしてその他の置換基は上記に定義された通りである化合物である。
【0133】
本発明の好ましい実施態様において, 上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、
R1 が C1-6-アルキル, C2-6-アルケニル 又は C2-6-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-6-アルコキシ, C1-6-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-6-アルキルアミノ及びジ-(C1-6-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 は C1-4-アルキル, C2-4-アルケニル 又は C2-4-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-4-アルコキシ, C1-4-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-4-アルキルアミノ及びジ-(C1-4-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, 好ましくは R1 は C1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 及び C2-3-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-3-アルコキシ, C1-3-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-3-アルキルアミノ及びジ-(C1-3-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく、そして 最も好ましい R1 は C1-3-アルキル, 特に非分枝状 C1-3-アルキルである
化合物である。
【0134】
本発明の別の 好ましい実施態様において, 上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、R1が次の意味を有する: C1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合により C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-6-アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 は C1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ 及び シアノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, 好ましくは R1は C1-10-アルキル, 好ましくは 非分枝状 C1-10-アルキル、より好ましくは R1は非分枝状 C4-10-アルキルである化合物である。
【0135】
上記単離及び精製方法によれば, 酸の存在下で, 式 (II)で表わされる対掌体 及び式 (IV)で表わされる逆対掌体, 反応溶剤等々からなる混合物を有機溶剤及び水を用いて及び酸の存在下で処理することによって、式 (II)で表わされる化合物の R- 又は S-対掌体と酸の塩は、選択的に水層中に抽出され、そして式 (IV)で表わされる化合物の逆対掌体と酸の塩は選択的に有機層に分離される。 この場合, 式 (IV)で表わされる対掌体の塩及び式 (II)で表わされる対掌体の塩を、所望の対掌体のほとんど損失なく分離することができる。
【0136】
上記単離及び精製方法の1つの実施態様によれば, 式 (IV)で表わされる化合物のS-対掌体は、式(II)で表わされる化合物のR-対掌体から単離される。
【0137】
上記単離及び精製方法の別の実施態様によれば,式 (II)で表わされるジオールのS-対掌体は式 (IV)で表わされるアシル誘導体のR-対掌体から単離される。
【0138】
使用される水の量は、式(II)で表わされる化合物と水との比として1:2〜1:100, 好ましくは 1:5 〜1:50である。 さらに, 水を用いて抽出する前に, 反応溶剤を蒸発させ、その量を減少させるか又は別の有機溶剤で置き換えることができる。
【0139】
上記単離及び精製方法で使用される酸はあまり制限されないが, たとえば 鉱酸、たとえば塩酸, 硫酸及びリン酸; 有機酸, 特にカルボン酸類, すなわち脂肪族カルボン酸、 たとえばギ酸, 酢酸, プロピオン酸, n-酪酸, イソ-酪酸, n-吉草酸, イソ-吉草酸, ピバル酸, n-カプロン酸, イソ-カプロン酸, シクロペンタンカルボン酸, シクロヘキサンカルボン酸, シュウ酸, マロン酸 及び 酒石酸; 又は 芳香族 カルボン酸、たとえば安息香酸, p-クロロ安息香酸, p-ニトロ安息香酸, p-メトキシ安息香酸, p-トルイル酸, o-トルイル酸, m-トルイル酸, ナフトエ酸, フタル酸 及びテレフタル酸によって表わされるカルボン酸が挙げられる。
【0140】
これらのうち, 有機酸は, 特にカルボン酸類、たとえばn-ブチラート, イソ-バレアート, シクロヘキサンカルボン酸, ピバル酸, 安息香酸 及び o-トルイル酸, 及び特に好ましくはピバル酸であるのが好ましい。言うまでもなく, 上記酸を単独で又は 2種以上の酸の組み合わせで使用することができる。使用される酸の量はあまり制限されないが, 式 (IV) 及び (II)で表わされる化合物の合計のモル比は通常1:1 〜1:5, 好ましくは 1:1 〜1:3である。
【0141】
本発明の単離及び精製工程で使用される酸は、本発明のアシル化 又は 脱アシル化 反応で使用される有機酸と同一であるか又は異なる酸であることができる。
【0142】
単離及び精製工程で使用することができる有機溶剤として , たとえば, 炭化水素 たとえばヘキサン, ヘプタン, ベンゼン及びトルエン; エーテル類、 たとえばジエチルエーテル, テトラヒドロフラン, 1,4-ジオキサン, tert-ブチルメチルエーテル 及び ジメトキシエタン; ケトン類、 たとえばアセトン, ジエチル ケトン 及びメチル エチルケトン; エステル類、 たとえば酢酸メチル, 酢酸エチル, エチル ブチラート 及び 安息香酸エチル; ハロゲン化炭化水素、たとえばメチレンクロライド, クロロホルム 及び1,1,1-トリクロロエタンが挙げられる。
【0143】
これらのうち, 脂肪族 炭化水素, たとえばヘキサン及びヘプタン及び芳香族 炭化水素, たとえばベンゼン 及び トルエンが 好ましい。 最も好ましくは芳香族 炭化水素であり、最も好ましくはトルエンである。上記溶剤を単独で又は2種以上の溶剤の組み合わせで使用することができる。
【0144】
単離及び精製工程の温度は、好ましくは0 〜80 °Cで, より好ましくは 10 〜40 °C、最も好ましくは 20 〜30 °Cである。
【0145】
上記単離及び精製方法による式 (II) 及び (IV)で表わされる化合物の塩の分離の後に, 式(II)で表わされる化合物と酸の塩等々を有する水層中で一部混合される式 (IV)で表わされる化合物の少量を、水層を有機溶剤を用いて洗浄することによって有効に除去することができる。
【0146】
式 (II)で表わされるジオールの塩を、塩の水溶液として使用することができ, 必要ならば、 別の溶剤中の溶液として又は濃縮, 溶剤代替又は同様な操作によって得られる濃縮物として使用することができる。さらに, これを結晶化又は同様な操作によって得られる結晶として使用することができる。 しかし式 (II)で表わされるジオールを、次の操作によって得られる遊離ジオール形として使用することは通常のことである: 式 (II)で表わされるジオール 及び有機溶剤 及び(又は)その濃縮物を含む混合物は水層を一般的塩基、たとえば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いて処理して、少なくとも 9, 好ましくは 少なくとも 11であるように水層のpHを調整し, ついで式 (II)で表わされるジオール の遊離アミン形を有機溶剤を用いて抽出し, ついで抽出物を洗浄し、濃縮することによって得られる。 一連の単離及び精製方法によって得られる式 (II)で表わされるジオール の化学純度は、通常少なくとも 95%, 好ましくは 少なくとも 97%, より好ましくは 少なくとも 99% 及び 最も好ましくは 少なくとも99.5%.である。
【0147】
一方、上記操作で得られる式 (IV)で表わされる化合物を、生成物の化学純度の改善のために水層で洗浄することができる。式 (IV)で表わされる化合物を、上記操作で得られる式 (IV)で表わされる化合物のアンモニウム塩を塩基で処理して遊離アミン形として得ることができる。一連の単離及び精製方法によって得られる式 (IV)で表わされるジオールの化学純度は、通常少なくとも 95%, 好ましくは 少なくとも 97%, より好ましくは 少なくとも 99% 及び 最も好ましくは少なくとも 99.5%である。
【0148】
上述のように式(II) 及び (IV)で表わされる対掌体の分離後に得られる生成物の光学純度は、次の処理前に改善することができる。 光学純度の改善は、 国際特許出願(WO)第03/011278号明細書に記載されているクロマトグラフィー分離によって又は 米国特許第4,943,590号明細書に記載されているように光学活性を有するジアステレオマー エステル又は塩の結晶化によって得ることができる。
【0149】
本発明の別の実施態様によれば,上記単離及び精製方法によって分離された式 (II)で表わされる化合物と式 (IV)で表わされる化合物の混合物を選択的アシル化によって、もう一方の実施態様においては本発明の選択的 脱アシル化によって製造する。
【0150】
本発明はまた式(II)で表わされるR- 又は S-ジオールを他方の対掌体の式(IV)で表わされるアシル誘導体から分離するもう1つの新規方法であって、これによって所望の化合物を単離して、精製することができる。
【0151】
この別の単離及び精製方法によれば、 式
【0152】
【化12】

【0153】
{式中、R はシアノ又はシアノ基に変換することができる基であり、Halは ハロゲンであり, 点線は二重結合又は単結合を示し,
Z は基 -CH2-N(R´R´´)
(式中、R´及び R´´ はC1-6-アルキルであるか, 又は R´及び R´´ は相互に結合して、これらが結合するN-原子を含む環構造を形成する。)
であるか, 又は
Zはジメチルアミノメチル基に変換することができる基であり,
W はO 又は Sであり、
R3は -Y-R1
(式中、Y は結合、 O, S又はNHであり、R1 はC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又はC2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合により C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ, ジ-(C1-10-アルキル)アミノ, アリール, アリールオキシ, アリールチオ 及び ヘテロアリールから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか, 又は R1 はアリールであり, この際このアリール基及びヘテロアリール基のいずれも場合によりC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル, C2-10-アルキニル, C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ 及び ジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよい。)
である。}
で表わされるアシル誘導体又はその塩
及び(又は) 式
【0154】
【化13】

【0155】
(式中、R, Hal, Z 及び点線 は上記に定義された通りである。)
で表わされるジオールを、式 (IV)で表わされるアシル誘導体及び式 (II)で表わされるジオールを含む混合物から単離する方法において,
a) 式 (IV)で表わされるアシル誘導体及び式 (II)で表わされるジオールを含む上記混合物を水 ,プロトン性有機溶剤 及び無極性有機溶剤の混合物中で処理し、
b) 式 (II)で表わされるジオールを含む水相を有機相から分離して,式 (IV)で表わされるアシル誘導体を含む有機相を得、ついで
場合により塩基として式(II) 及び(又は)式 (IV)で表わされるジオールを単離し、ついて場合により式(II)及び(又は)(IV)で表わされる化合物をその塩に変換する
ことを特徴とする、上記単離する方法である。

上記の単離された相 (水相 及び有機相)のいずれかを、 さらに有機又は水性溶剤それぞれを用いて1回以上洗浄して、生成物の化学純度を改善することができる。
【0156】
上記単離及び精製方法の1つの実施態様によれば, 式 (II)で表わされる化合物のS-ジオールを、式 (IV)で表わされる化合物のR-対掌体から分離する。
【0157】
上記単離及び精製方法の別の実施態様によれば,式(IV)で表わされる化合物のS-対掌体を、式(II)で表わされる化合物のR-対掌体から分離する。
【0158】
本発明の1つの実施態様によれば、上記単離及び精製方法で Rはハロゲン又は シアノ, 好ましくは シアノである。
【0159】
本発明の別の実施態様によれば、上記単離及び精製方法でHalはフッ素である。
【0160】
好ましい実施態様によれば, 点線 が単結合示す.
本発明の別の実施態様において、Zはジメチルアミノメチルであるか又は ジメチルアミノメチル基に変換することができる基である。 Zはジメチルアミノメチルであるのが好ましい。
【0161】
本発明の好ましい実施態様によれば、Halはフッ素であり、Zはジメチルアミノメチルであり, 点線は単結合であり、R はシアノ又はハロゲン, 好ましくは シアノである。
【0162】
本発明の別の実施態様において、上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、Y がO 又は S, 好ましくは Yが Oである化合物であり、そしてその他の置換基は上記に定義された通りである化合物である。
本発明の別の実施態様において、上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、Y がSである化合物である。
【0163】
本発明の別の実施態様において、上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、Yが結合であり、 そしてその他の置換基は上記に定義された通りである化合物である。
【0164】
本発明の別の実施態様において、上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、YがNHであり、 そしてその他の置換基は上記に定義された通りである化合物である。
【0165】
本発明の好ましい実施態様において, 上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、
R1 が C1-6-アルキル, C2-6-アルケニル 又は C2-6-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-6-アルコキシ, C1-6-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-6-アルキルアミノ及びジ-(C1-6-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 は C1-4-アルキル, C2-4-アルケニル 又は C2-4-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-4-アルコキシ, C1-4-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-4-アルキルアミノ及びジ-(C1-4-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, 好ましくは R1 は C1-3-アルキル, C2-3-アルケニル 及び C2-3-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-3-アルコキシ, C1-3-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-3-アルキルアミノ及びジ-(C1-3-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく、そして 最も好ましい R1 は C1-3-アルキル, 特に非分枝状 C1-3-アルキルである
化合物である。
【0166】
本発明の別の 好ましい実施態様において, 上記単離及び精製方法で式 (IV)で表わされる化合物は、R1が次の意味を有する: C1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合により C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-6-アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, より好ましくは R1 は C1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ 及び シアノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく, 好ましくは R1は C1-10-アルキル, 好ましくは 非分枝状 C1-10-アルキル、より好ましくは R1は非分枝状 C4-10-アルキルである化合物である。
【0167】
単離及び精製工程で使用することができるプロトン性有機溶剤として, たとえばアルコール類、 たとえばメタノール , エタノール, 1-プロパノール, 2-プロパノール, 1-ブタノール, 2-ブタノール 及び tert-ブタノールが挙げられる。上記溶剤を単独で又は2種以上の溶剤の組み合わせで使用することができる。
【0168】
単離及び精製工程で使用することができる無極性有機溶剤として, たとえば炭化水素、 たとえばヘキサン, ヘプタン, ベンゼン及びトルエン; エーテル類、たとえばジエチルエーテル, tert-ブチルメチルエーテル 及び ジメトキシエタン; ハロゲン化炭化水素 たとえばメチレンクロライド, クロロホルム 及び1,1,1-トリクロロエタンが挙げられる。 これらのうち, 炭化水素、 たとえばヘキサン, ヘプタン, ベンゼン及びトルエンが好ましく, そしてヘプタンがより好ましい。 上記溶剤を単独で又は2種以上の溶剤の組み合わせで使用することができる。
【0169】
本発明の具体的実施態様によれば、上記単離及び精製方法で使用される式 (IV)で表わされる化合物と式 (II)で表わされるジオールを、本発明の酵素アシル化によって、そして別の実施態様において本発明の酵素脱アシル化によって製造する。
【0170】
上述のように式(II) 及び (IV)で表わされる対掌体の分離後に得られる生成物の光学純度は、次の処理前に改善することができる。 光学純度の改善は、 国際特許出願(WO)第03/011278号明細書に記載されているクロマトグラフィー分離によって又は米国特許第4,943,590号明細書に記載されているように光学活性を有するジアステレオマーエステル又は塩の結晶化によって得ることができる。
【0171】
本発明はまた式
【0172】
【化14】

【0173】
で表わされるエスシタロプラム又はその薬学的に許容し得る塩の製造方法において、式
【0174】
【化15】

【0175】
(式中、R はシアノ又はシアノ基に変換することができる基であり、点線は二重結合又は単結合を示し, Zはジメチルアミノメチル基又はジメチルアミノメチル基に変換することができる基であり、Halはハロゲンである。)
で表わされるジオール又はその塩のS-対掌体
又は式
【0176】
【化16】

【0177】
{式中、R, Z, 点線及びHalは上記に定義された通りであり,
W はO又はSであり,
R3 は-Y-R1
(式中、R1 はC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ, ジ-(C1-10-アルキル)アミノ, アリール, アリールオキシ, アリールチオ 及び ヘテロアリールから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか, 又は R1 はアリールであり, この際アリール基及びヘテロアリール基のいずれも場合によりC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル, C2-10-アルキニル, C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく、
Y は結合、O、S又はNHである。)
である。}
で表わされるアシル化されたジオール又はその塩のS-対掌体を、一方の実施態様において上記実施態様のいずれかに定義された本発明の選択的酵素アシル化法によって及びもう一方の実施態様において上記実施態様のいずれかに定義された本発明の選択的酵素脱アシル化法によって製造し, 場合により引き続き任意の順序で, 基Rをシアノ基に変換させ, 基Zをジメチルアミノメチル基に変換させ, 点線で表わされる二重結合を単結合に還元するか及び(又は) 基Halをフッ素基に変換させ、ついで塩基性条件下で式 (IIs) 又は (IVs) 又はその不安定なエステル誘導体のS-対掌体を閉環して、 式
【0178】
【化17】

【0179】
で表わされる化合物を生じさせ、ついで任意の順序で、 Rがシアノ基でない場合、Rをシアノ基に変換させ, Zがジメチルアミノメチル基でない場合、Zをジメチルアミノメチル基に変換させ, 点線が二重結合を示す場合、これを単結合に還元し、そしてHalがフッ素でない場合, Halをフッ素基に変換させ, ついでエスシタロプラム又はその薬学的に許容し得る塩を単離することを特徴とする、上記エスシタロプラム又はその薬学的に許容し得る塩の製造方法に関する。
【0180】
本発明の1つの実施態様によれば、エスシタロプラムの製造に使用される上記式 (IIs)で表わされるS-対掌体又は式 (IVs)で表わされるS-対掌体を、閉環の前に、式 (IV) 及び (II)それぞれのR-対掌体から分離する。
【0181】
本発明の上記エスシタロプラム製造方法の1つの実施態様によれば、
式 (II) で表わされる化合物のR- 又は S-対掌体及び酵素アシル化によって得られた式 (IV) で表わされる化合物の逆対掌体は、上記新規の単離及び精製方法の1つにしたがって単離及び精製処理によって相互に分離される。別の実施態様によれば、この混合物は上記新規の単離及び精製方法のもう一方によって分離される。
【0182】
本発明の上記エスシタロプラム製造方法のまた別の実施態様によれば、
式 (II) で表わされる化合物のR- 又は S-対掌体及び酵素アシル化によって得られた式 (IV) で表わされる化合物の逆対掌体は、上記新規の単離及び精製方法の1つにしたがって単離及び精製処理によって相互に分離される。別の実施態様によれば、この混合物は上記新規の単離及び精製方法のもう一方によって分離される。
【0183】
本発明の別の実施態様によれば、エスシタロプラムの製造に使用される上記式 (IIs)で表わされるS-対掌体又は式 (IVs)で表わされるS-対掌体を、閉環の前に、式 (IV) 及び (II)それぞれのR-対掌体から分離しない。
【0184】
上述のように, 基Rはシアノであるか又はシアノ基に変換することができるあらゆるその他の基を意味する。
【0185】
シアノ基に変換することができる基は、ハロゲン、 たとえば塩素, 臭素, ヨウ素又はフッ素, 好ましくは塩素又は臭素を含む。
【0186】
シアノ基に変換することができるその他の基は、CF3-(CF2)n-SO2-O-
(n は0-8), -OH, -CHO, -CH2OH, -CH2NH2, -CH2NO2, -CH2Cl, -CH2Br, -CH3, -NHR5, -CHNOH, -COOR6, -CONR6R7 (式中、R5 は水素又は C1-6 アルキルカルボニルであり、R6 及び R7 は水素, 場合により置換された C1-6アルキル, アリール-C1-6 アルキル 又は アリールから選ばれる。) 及び 式
【0187】
【化18】

【0188】
(式中、Z はO 又は Sであり、
R8- R9 は相互に独立して水素 及び C1-6 アルキルから選ばれるか 又は R8 及び R9は一緒になって C2-5 アルレン鎖 を形成し、それによってスピロ環を形成し、R10 は水素 及び C1-6アルキルから選ばれ, R11 は水素, C1-6 アルキル, カルボキシ基又は そのための前駆体から選ばれるか, 又は R10 及び R11 は一緒になって C2-5 アルキル鎖を形成し、それによってスピロ環を形成する。)
で表わされる基を含む。
【0189】
R がハロゲン、特に臭素又は塩素である場合、シアノへの変換は米国特許第4,136,193号明細書、国際特許出願(WO)第00/13648号明細書、国際特許出願(WO)第00/11926号明細書 及び国際特許出願(WO)第01/02383号明細書に記載されているように実施することができる。
【0190】
米国特許第4,136,193号明細書によれば、臭素基のシアノ基への変換はCuCNとの反応によって実施される。
【0191】
国際特許出願(WO)第00/13648号明細書及び国際特許出願(WO)第00/11926号明細書に、Pd 又は Ni 触媒の存在下にシアニド源でシアン化することによって、ハロゲン又はトリフラート基をシアノ基に変換することが記載されている。
【0192】
対応するシアノ誘導体に臭素化合物を変換するその他の方法は、臭素化合物とマグネシウム化合物を反応させて、グリニャール試薬を生じさせ, ついでホルムアミドと反応させて、アルデヒドを形成させることを含む。アルデヒドをオキシム又はヒドラゾンに変換させ、これを脱水及び酸化それぞれによってシアノ基に変換させる。
【0193】
あるいは, 臭素化合物をマグネシウムと反応させてグリニャール試薬を形成させ、ついで離脱基に結合するCN 基を含む化合物と反応させる。
【0194】
上記2つの処理の詳細な説明は、国際特許出願(WO)第01/02383号明細書中に見出すことができる。
【0195】
基R が-CHOである化合物は, 国際特許出願(WO)第99/00210号明細書に記載された方法に類似する方法によって、R がシアノである対応する化合物に変換することができる。
【0196】
R がNHR12(式中、R12 が水素又はである。)である化合物は、国際特許出願(WO)第98/19512号明細書に記載された方法に類似する方法によって、R がシアノである対応する化合物に変換することができる。
【0197】
R が-COOR6基である化合物は, 対応する 酸クロライド又はそのエステルを経てアミドに変換し、ついてこのアミドを脱水することによってR がシアノである対応する化合物に変換することができる( 国際特許出願(WO)第01/68632号明細)。
【0198】
あるいは, R が -COOHである化合物を、国際特許出願(WO)第00/44738号明細書に記載されているように、そのニトリルを形成させるためにクロロスルホニルイソシアネートと反応させるか, 又は脱水剤 及び スルホンアミドで処理することができる。
【0199】
基R が-CONR13R14(式中、R13及び R14 は水素、 場合により置換されたアルキル, アラルキル又は アリールから選ばれる。)である化合物は、国際特許出願(WO)第98/00081号明細書及び国際特許出願(WO)第98/19511号明細書に記載された方法に類似する方法によって、対応するシアノ化合物に変換することができる。
【0200】
基R が 式 (VII)で表わされる基である化合物 は、国際特許出願(WO)第00/23431号明細書に記載された方法に類似する方法によって、対応するシアノ化合物に変換することができる。
【0201】
R がOH, -CH2OH, -CH2NH2, -CH2NO2, -CH2Cl, -CH2Br, -CH3 又は前記基のいずれかである化合物は、国際特許出願(WO)第01/68632号明細書に記載された方法に類似する方法によって、対応するシアノ化合物に変換することができる。
【0202】
式 (II)で表わされるラセミ化合物は、上記特許明細書に記載された方法によって又は米国特許第4.136.193号明細書に記載されたアルキル化法によって又は欧州特許第171 943号明細書に記載された二重グリニャール反応によって又は 類似の方法によって製造することができる。 式 (IV)で表わされるラセミ化合物は、 式 (II)で表わされるラセミ化合物から 上記式(IIIa), (IIIb), (IIIc), R1-N=C=O 及び R1-N=C=Sによって定義された通りの無水物, エステル類, 炭酸類, イソシアネート類又は イソチオシアネート類を用いて非-選択的アシル化することによって製造することができる。
【0203】
ある場合には 式(II)で表わされるラセミ化合物は、酸付加塩, たとえば硫酸塩の形で得ることができ, そしてこの場合式(II)で表わされる化合物の遊離塩基は、水及び有機溶剤の混合物中でこの塩を塩基で処理して, 式(II)で表わされる化合物を有機相に移行させることによって得ることができる。
【0204】
式 (II), (IIs), (IIr), (IV) (IVs) (IVr) 及び (V)で表わされる化合物において、 R はシアノであるのが好ましい。R がシアノでない場合, 閉環して 式 (V)で表わされる化合物を生じさせた後、基Rをシアノ基に変換を行うのが好ましい。
【0205】
式 (II), (IIs), (IIr), (IV) (IVs) (IVr) 及び (V)で表わされる化合物において、Halはフッ素であるのが好ましい。Hal がフッ素でない場合, 閉環して 式 (V)で表わされる化合物を生じさせた後、基Hal のフッ素への変換を行うのが好ましい。この変換を実施する処理は、 Speciality Chemicals Magazine, 4月 2003年, 第36-38頁に記載されている。
【0206】
ジメチルアミノメチルに変換することができるZ 基は、たとえば
-CH2-L, -CH2-NO2, -MgHal, シアノ, アルデヒド, -CH2-O-Pg, -CH2-NPg1Pg2 , -CH2-NMePg1, -CH2-NHCH3, -CH2-NH2, -CO-N(CH3)2, -CH(A1R12)(A1R13),
-(A1R14)(A2R15)(A3R16), -COOR17, -CH2-CO-NH2, -CH=CH-R18又は -CONHR19 で表わされる基であって、これらの式中、Pg はアルコール基の保護基であり, Pg1 及び Pg2 はアミノ基の保護基であり、 R12 及び R13 は独立して C1-6アルキル, C2-6 アルケニル, C2-6 アルキニル及び場合によりアルキル置換されたアリール 又は アラルキル基から選ばれるか 又は R12 及び R13 は一緒になって 炭素原子2 〜4個を有する鎖を形成し, R14 - R18のそれぞれは 独立してC1-6 アルキル, C2-6 アルケニル, C1-6アルキニル 及び 場合により C1-6 アルキル置換されたアリール 又は アリール-C1-6 アルキルから選ばれ, R19 は水素 又は メチルであり、A1, A2 及び A3はO 及び Sから選ばれ; L は離脱基, たとえばハロゲン又は -O-SO2-A (式中、A は C1-6 アルキル, C2-6 アルケニル, C2-6 アルキニル又は場合により C1-6 アルキル置換されたアリール 又は アリール-C1-6 アルキルである。)である。
【0207】
本発明の1つの実施態様において、式 (II), (IIs), (IIr), (IV) (IVs) (IVr) 及び (V)で表わされる化合物中で、Z はジメチルアミノメチル, -CH2-L, -CH2-NPg1Pg2 , -CH2-NMePg1, -CH2-NHCH3, -CH2-NH2, -CO-N(CH3)2, アルデヒド又は -COOR17である。
【0208】
Z が -CH2-O-Pg である化合物は、国際特許出願(WO)第01/43525号明細書、国際特許出願(WO)第01/51478号明細書 又は国際特許出願(WO)第01/68631号明細書に記載された方法のように又は類似の方法によって、保護基を除き、対応する アルコールを形成させ、その後アルコール基を適する離脱基に変換させ 、得られた化合物を
a) ジメチルアミン 又はその塩と反応させ,
・ メチルアミンと反応させ、ついで メチル化 又は還元アミノ化するか, 又は・ アジドと反応させ、ついで還元させて 対応するアミンを形成させ、その後メチル化 又は還元アミノ化する
ことによって対応する 化合物(式中、Zはジメチルアミノメチルである。)に変換させることができる。
【0209】
Z が -CH2-L(式中、L は 離脱基である。)である化合物は、同一方法でジメチルアミノメチル基に変換することができる。
【0210】
Z が-CO-N(CH3)2及び -CO-NHR19 (式中、R19 は水素又はメチルである。)である化合物は、国際特許出願(WO)第01/43525号明細書又は国際特許出願(WO)第01/68631号明細書に記載されたように又は 類似の方法によって、アミドを還元し、第一又は 第二アミンが形成される場合, ついでメチル化 又は 還元アミノ化して、ジメチルアミノメチル基を形成させることによって、対応する化合物(式中、Z はジメチルアミノメチルである。)に変換することができる。
【0211】
Z が-CH2-NMe(Pg1) 又は -CH2-N(Pg1)(Pg2) である化合物は、国際特許出願(WO)第01/43525号明細書又は国際特許出願(WO)第01/68631号明細書に記載されたように又は 類似の方法によって、保護基を除き, すなわち Z が -CH2-NH2又は -CH2-NMe である化合物を得るために保護基を除き、その後アミノ基をメチル化するか又は還元アミノ化して、ジメチルアミノメチル基を生じさせることによってZがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0212】
Z が-CH(A1R12)(A2R13) である化合物は、国際特許出願(WO)第01/43525号明細書又は国際特許出願(WO)第01/68631号明細書に記載されたように又は 類似の方法によって、脱保護して、アルデヒド (Z が -CH2-CA1Hである化合物) を形成させ、ジメチルアミンを用いて還元アミノ化してジメチルアミノメチル基を生じさせることによって、Z がジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0213】
Z が -C(A1R14)(A2R15)(A3R16) である化合物は、 Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に次のようにして変換することができる:
i) 上述のように、加水分解して、そのカルボン酸又はそのエステルを形成させ、その後還元して、アルコールを形成させ、その後アルコール基を適当な離脱基に変換させ, ついで離脱基をジメチルアミノ基で置き換え ることによって, 又は
ii) 国際特許出願(WO)第01/68631号明細書に記載されたように又は 類似の方法によって、NH(Me)2, NH2Me, NH3 で表わされるアミン又はその塩と反応させることによってカルボン酸 又は そのエステルをアミドに変換させ、ついで任意の順序で, アミドを還元して、 必要ならばメチル化 又は 還元アミノ化して、ジメチルアミノ基を生じさせる。
【0214】
Z が-COOR17である化合物は、Z がジメチルアミノメチルである対応する 化合物に上述のようにそのカルボン酸エステルを用いて出発して、変換することができる。
【0215】
Z が-CH2-CONH2である化合物は、国際特許出願(WO)第01/43525号明細書又は国際特許出願(WO)第01/68631号明細書に記載されたように又は 類似の方法によって、ハイポハライドで処理して、第一アミンを形成させ、ついで遊離アミノ基をメチル化するか又は還元アミノ化して、ジメチルアミノメチル基を生じさせることによって、Z がジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換させることができる。
【0216】
Z が -CH=CHR18である化合物は、国際特許出願(WO)第01/43525号明細書又は国際特許出願(WO)第01/68631号明細書に記載されたように又は 類似の方法によって、酸化してアルデヒドを生じさせ、これを還元アミノ化によってジメチルアミノメチルに変換させることによって、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換させることができる。
【0217】
Z がシアノ 又は -CH2-NO2である化合物は、国際特許出願(WO)第01/68631号明細書に記載されたように又は 類似の方法によって、還元し、ついで遊離アミノ基をメチル化するか又は還元アミノ化して、ジメチルアミノメチルを生じさせることによって、 Z がジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0218】
Z が-MgHalである化合物は、国際特許出願(WO)第01/68629号明細書に記載されたように又は 類似の方法によって、式 (CH3)2NCH2O-アルキルで表わされるジメチルアミノメチル アルキルエーテルと反応させることによってZ がジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換させることができる。
【0219】
Z がジメチルアミノメチルであるのが好ましい。 Z がジメチルアミノメチルでない場合, Zのジメチルアミノメチル基への変換を閉環の後に行うのが好ましい。
【0220】
点線が結合を示す場合、Z はジメチルアミノメチル, -CH2-L, -CH2-NPg1Pg2 , -CH2-NMePg1, -CH2-NHCH3, -CH2-NH2, アルデヒド, -CO-N(CH3)2, -COOR17 であるのが好ましい。
【0221】
式 (II) 又は (IV)で表わされる化合物(式中、Z はジメチルアミノメチル, CH2-NPg1Pg2 ,-CH2-NMePg1, -CH2-NHCH3, 又は -CH2-NH2である。)、特にZがジメチルアミノメチル, -CH2-NHCH3, 又は -CH2-NH2 である化合物は、式 (II) 及び (IV) で表わされる化合物が分離される、本発明の精製単離方法に特に最適である。
【0222】
式(II), (IIs), (IIr), (IV) (IVs) (IVr) 及び (V)で表わされる化合物において, 点線 は好ましくは単結合である。点線が二重結合である化合物は、国際特許出願(WO)第01/68630号明細書に記載された方法によって、点線 が単結合である対応する化合物に変換させることができる。 好ましくは 還元を閉環の後に行う。
【0223】
式 (IVs) 又は (IIs)で表わされる化合物のエナンチオ選択的閉環して 、式 (V)で表わされる化合物を生じさることは、化合物の不安定なエステル誘導体を塩基、たとえばKOC(CH3)3 及び その他のアルコキシド, NaH 及びその他のヒドリド, トリメチルアミン, エチルジイソプロピルアミン又はピリジンで, 低い温度で不活性有機溶剤, たとえばテトラヒドロフラン, トルエン, DMSO, DMF, t-ブチルメチルエーテル, ジメトキシエタン, ジメトキシメタン, ジオキサン, アセトニトリル又はジクロロメタン中で処理して有利に行うことができる。この処理は、米国特許第 4,943,590号明細書に記載されている。
【0224】
式 (IIs)で表わされる化合物の閉環は, ジオールの第一アルコールと不安定な基、たとえば メタンスルホニルオキシ, p-トルエンスルホニルオキシ, 10-カンファースルホニルオキシ, トリフルオロアセチルオキシ 及び トリフルオロメタンスルホニルオキシ及びハロゲンを形成することができる試剤の存在下で上述のように塩基で処理して行われるのが好ましい。
【0225】
ある場合には, 閉環を行う前に式 (IVs)で表わされる化合物中の-W-R3 基をより不安定な基に交換させるのが有利である。 このような不安定な基 (離脱基) は、典型的にはメタンスルホニルオキシ, p-トルエンスルホニルオキシ, 10-カンファースルホニルオキシ, トリフルオロアセチルオキシ 及び トリフルオロメタンスルホニルオキシ又はハロゲンから選ばれる基であることができる。
【0226】
典型的に, 式 (IVs)で表わされる化合物を、水性塩基, たとえば水又はアルコール又はその混合物中のNaOH, KOH 又は LiOHを用いて加水分解して、式 (IIs) で表わされる化合物を生じさせ、ついで 活性化された離脱基, たとえばメシルクロライド 又はトシルクロライドと有機溶剤中で有機塩基の存在下に反応させる。
【0227】
エスシタロプラム生成物の光学純度は、閉環後に改善すべきである。光学純度の改善は、国際特許出願(WO)第03/000672号明細書に記載された方法にしたがって、光学活性固定相でのクロマトグラフィー分離によって又はラセミ性シタロプラム塩基又はその塩の結晶化によって得ることができる。
【0228】
本発明によって得られる式 (II) 及び (IV)で表わされる化合物のR-対掌体は、国際特許出願(WO)第03/000672号明細書に記載された方法にしたがって酸性環境で閉環することによってラセミ性シタロプラム 及び エスシタロプラムを製造することに使用することができる。酸性閉環を実施するための好ましい酸は、鉱酸, カルボン酸, スルホン酸又はスルホン酸誘導体, より好ましくは H2SO4 又は H3PO4である。
【0229】
したがって、別の実施態様において、本発明は、
ラセミ性シタロプラム及び(又は) エスシタロプラム又はその薬学的に許容し得る塩の製造方法において、式
【0230】
【化19】

【0231】
(式中、Rはシアノ又はシアノ基に変換することができる基であり, 点線は 二重結合又は単結合を示し、Zはジメチルアミノメチル基 又はジメチルアミノメチル基に変換することができる基であり、Halはハロゲンである。)
で表わされるジオール 又はその塩のR-対掌体,
又は 式
【0232】
【化20】

【0233】
{式中、R, Z, 点線 Hal は上記に定義された通りであり、
W はO又はSであり,
R3 は-Y-R1
( 式中、R1 はC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ, ジ-(C1-10-アルキル)アミノ, アリール, アリールオキシ, アリールチオ 及び ヘテロアリールから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか、又は
R1はアリールであり, この際アリール基及びヘテロアリール基のいずれも場合によりC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル, C2-10-アルキニル, C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよく、そして Y は結合、 O, S又はNHである。)
である。}
で表わされるアシル化されたジオール又はその塩のR-対掌体を, 一方の実施態様において上記実施態様のいずれかに定義された本発明の選択的酵素アシル化法によって及びもう一方の実施態様において上記実施態様のいずれかに定義された本発明の選択的酵素脱アシル化法によって製造し, 場合により引き続き任意の順序で, 基Rをシアノ基に変換させ, 点線で表わされる二重結合を単結合に還元し, 基Zをジメチルアミノメチル基に変換させ 及び(又は) 基Halをフッ素基に変換させ、 ついで酸性条件下で式 (IIr) 又は (IVs) で表わされるR-対掌体を閉環して、式
【0234】
【化21】

【0235】
(式中、Hal, Z, R及び点線は上記に定義された通りである。)
で表わされる化合物のS-対掌体及び対応するR-対掌体の少量の混合物を生じさせ, ついで任意の順序で、Rがシアノ基でない場合、Rをシアノ基に変換させ 、Zがジメチルアミノメチル基でない場合、Zをジメチルアミノメチル基に変換させ, 点線が 二重結合を示す場合、これを還元して単結合を生じさせ、 Halがフッ素でない場合, Halをフッ素基に変換させ, ついでエスシタロプラム 及び(又は)ラセミ性シタロプラム 又は その薬学的に許容し得る塩を単離し、ラセミ性シタロプラム遊離塩基又はその塩を沈殿させ、沈殿の母液からエスシタロプラムを回収することを特徴とする、上記ラセミ性シタロプラム及び(又は) エスシタロプラム又はその薬学的に許容し得る塩の製造方法に関する。
【0236】
R-ジオールのエスシタロプラムへの上記変換方法は, エスシタロプラムの製造に使用されるのが好ましい。
【0237】
基Rのシアノ基への変換, 点線で表わされる二重結合の単結合への還元, 基Zのジメチルアミノメチル基への変換及びHalのフッ素基への変換は、上述のように行うことができる。
【発明の効果】
【0238】
エスシタロプラムの上記製造方法の1つの実施態様によれば、式 (II)で表わされる化合物のR- 又は S-対掌体及び酵素アシル化によって得られた式 (IV) で表わされる化合物の逆対掌体の混合物は、上記単離及び精製方法の1つにしたがう単離及び精製方法によって相互に分離されている。別の実施態様によれば、この混合物は上記単離及び精製方法のもう一方によって分離される。
【0239】
エスシタロプラムの上記製造方法のまた別の実施態様によれば、式 (II)で表わされる化合物のR- 又は S-対掌体及び酵素脱アシル化によって得られた式 (IV) で表わされる化合物の逆対掌体の混合物を、上記単離及び精製方法の1つにしたがう単離及び精製方法によって相互に分離されている。別の実施態様によれば、混合物を上記単離及び精製方法のもう一方によって分離される。
【0240】
本発明の別の実施態様によれば、 エスシタロプラムの製造に使用される上記式 (IIr)のS-対掌体又は式 (IVr) のS-対掌体は、閉環前に式 (IV) 及び (II) のR-対掌体それぞれから分離されない。
【0241】
エスシタロプラム生成物の光学純度は、閉環後に改善すべきである。光学純度の改善は、国際特許出願(WO)第03/000672号明細書に記載された方法にしたがって、光学活性固定相でのクロマトグラフィー分離によって又はラセミ性シタロプラム塩基又はその塩の結晶化によって得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0242】
ここに使用されるように, 用語“C1-10-アルキル”は、炭素原子1〜10個を有する分枝状又は直鎖状アルキル基, たとえばメチル, エチル, 1-プロピル, 2-プロピル, 1-ブチル, 2-ブチル, 2-メチル-2-プロピル, 2-メチル-1-プロピル, ペンチル, ヘキシル 及び ヘプチルを示す。C1-6-アルキルは、炭素原子1〜6個を有する分枝状又は直鎖状アルキル基, たとえばメチル, エチル, 1-プロピル, 2-プロピル, 1-ブチル, 2-ブチル, 2-メチル-2-プロピル, 2-メチル-1-プロピル, ペンチル 及び ヘキシルを示す。C1-4-アルキルは、炭素原子1〜4個を有する分枝状又は直鎖状アルキル基, たとえばメチル, エチル, 1-プロピル, 2-プロピル, 1-ブチル, 2-ブチル, 2-メチル-2-プロピル及び2-メチル-1-プロピルを示す。 C1-3-アルキルは、炭素原子1〜3個を有する分枝状又は直鎖状アルキル基, たとえばメチル, エチル, 1-プロピル, 2-プロピルを示す。
【0243】
同様に, C2-10-アルケニル及びC2-10-アルキニルは、それぞれ炭素原子2〜10個を有し, それぞれ1個の二重結合及び1個の三重結合を含む分枝状又は直鎖状アルケニル及びアルキニル基, たとえばエテニル, プロペニル, ブテニル, エチニル, プロピニル及びブチニルを示す。 C2-6-アルケニル 及び C2-6-アルキニルは、それぞれ炭素原子2〜6個を有し, それぞれ1個の二重結合及び1個の三重結合を含む分枝状又は直鎖状アルケニル 及び アルキニル基, たとえばエテニル, プロペニル, ブテニル, エチニル, プロピニル及びブチニルを示す。C2-4-アルケニル及びC2-4-アルキニルは、それぞれ炭素原子2〜4個を有し, それぞれ1個の二重結合及び1個の三重結合を含む分枝状又は直鎖状アルケニル 及び アルキニル基, たとえばエテニル, プロペニル, ブテニル, エチニル, プロピニル及びブチニルを示す。C2-3-アルケニル 及び C2-3-アルキニルは、 それぞれ炭素原子2〜3個を有し, それぞれ1個の二重結合及び1個の三重結合を含む分枝状又は直鎖状アルケニル 及び アルキニル基, たとえばエテニル, プロペニル, エチニル及び プロピニルを示す。
【0244】
用語“ C1-10アルコキシ, C1-10アルキルチオ, C1-10アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノ等”は、アルキル基が上記に定義された通りのC1-10アルキルである基を示す。 用語“ C1-6 アルコキシ, C1-6 アルキルチオ, C1-6アルキルアミノ及びジ-(C1-6-アルキル)アミノ等”は、アルキル基が上記に定義された通りのC1-6 アルキルである基を示す。 用語“ C1-4 アルコキシ, C1-4 アルキルチオ, C1-4 アルキルアミノ及びジ-(C1-4-アルキル)アミノ等”は、アルキル基が上記に定義された通りのC1-4アルキルである基を示す。 用語“C1-3 アルコキシ, C1-3 アルキルチオ, C1-3 アルキルアミノ及びジ-(C1-3-アルキル)アミノ 等”は、アルキル基が上記に定義された通りの C1-3 アルキルである基を示す。
【0245】
ハロゲンはフッ素, 塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
【0246】
用語“ アリール”は、モノ又はビシクロ炭素環状芳香族基 , たとえばフェニル, 又はナフチル, 特にフェニルを示す。
【0247】
アリールオキシ, アリールチオは、アリールが上記に定義された通りである基を示す。
【0248】
用語“ヘテロアリール”は、5 又は 6員の単環状ヘテロ芳香族 基又は二環状ヘテロ芳香族基を示す。 ヘテロアリール基はO, S 及び Nから選ばれるヘテロ原子1-3個を有するのが好ましい。
【0249】
R0及び R1 は一緒になって炭素原子3〜5個を有する鎖を形成し, 無水物を形成することができる。
【0250】
Z が-CH2-N(R´R´´) (式中、 R´及び R´´ が相互に結合して、これらが結合するN-原子を含む環構造を形成する。)である場合, 環構造は基, たとえば ピペリジン, ピロリジン, モルホリニル及び ピペラジニルを含む基を形成する。
【0251】
HOBtはヒドロキシベンゾトリアゾールを意味し、そしてpfp はペンタフルオロフェノールを意味する。
【0252】
実験

下記例中、% 変換率及び光学純度を測定し、下記のように算出する:
例1-28に対して使用されるHPLC分析条件 ( 変換率に関して):
カラム: YMC-Pack ODS-A 0.46 cm I.D. x 25 cm (YMC 社製)
溶離剤: 25 mM リン酸緩衝液 / アセトニトリル = 60 / 40
流速: 1.0ml/分
温度: 40°C
検出器波長: 237 nm
例 29-42に対して使用されるHPLC分析条件 ( 変換率に関して):
カラム: A Lichrospher RP-8 カラム, 250 x 4 mm (5 mm の粒子サイズ)
溶離剤: 以下のように調製された、緩衝 MeOH/水: 150 ml の水に添加された 1,1 ml のEt3N, 10% H3PO4(aq) を添加して pH=7とし、 水を添加して全量200 mlとする。混合物を1,8 L のMeOHに添加する。
温度: 35oC
流速: 1 ml/分
圧力: 16,0 MPa
検出: UV 254 nm
注入容量: 10 マイクロL
変換率(%) = P/(S+P) x 100, (P: 生成物の量, S: 残存基質の量)。
【0253】
例1-28に対して使用されるHPLC分析条件 ( 変換率に関して):
カラム: Chiralpak AD 0.46 cm I.D. x 25 cm (DAICEL CHEMICAL INDUSTRIES社製)
溶離剤: ヘプタン / メタノール / エタノール / ジエチルアミン = 85 / 7.5 / 7.5 / 0.1
流速: 1.0ml/分
温度: 30°C
検出器波長: 240 nm
変換率(%) = P/(S+P) x 100, (P: 生成物の量, S: 残存基質の量)
超臨界流体クロマトグラフィー。例 29-42に対して使用されるHPLC分析条件(光学純度に関して):

カラム: 面積250 x 4,6 mm (5 mm 粒子サイズ)のDaicel AD カラム
移動相: 二酸化炭素
修飾剤: ジエチルアミン (0.5%) 及び トリフルオロ酢酸 (0.5%)を含むメタノール。
修飾剤勾配: 4 分で1-2%
4 分で2-4%
4 分で4-8%
4 分で8-16%
4 分で16-32%
1,62 分で32-45%
温度: 環境温度
流速: 2 ml/分
圧力: 20 mPa
検出: UV 230 nm 及び 254 nm
注入容量: 10 マイクロL
光学純度 (% ee) = (A-B) / (A+B) x 100, (A 及び Bは対応する立体異性体, A>B) E-値 = ln ((1-c/100) x (1-Es/100)) / ln ((1-c/100) x (1+Es/100))
(c: 変換割合, Es: 残存基質の光学純度)
【実施例】
【0254】
例1
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル
水 (200.7 g) 及びトルエン (440.8 g)を、(±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル、1/2 硫酸塩(100.4 g, 0.257 モル)に添加し, ついで 15 分間攪拌し、その温度を最高60℃に上げる。ついで, 水層のpH が11.4に到達するまで、30% NaOH (34.5 g, 0.259 モル)を5 分かけて滴加し、30分間攪拌する。攪拌後、混合物を5 分間放置させ, ついで分離する。 水層を廃棄し, このようにして得られた有機層を220.0 g の水で洗浄し、さらに減圧下に60℃で濃縮し、 残存する水分を除く。濃縮物をトルエンの添加によって調整し, それによってトルエン中に 4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを有する溶液583.1 g ( 純粋な 4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルの含量: 87.6 g, 収率: 99.7%, 0.256 モル)が得られる。 ついで、52.5 gのトルエンを17.5 g の固定化酵素(Novozym 435)上に注ぎ, ついでトルエン中に4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを有する溶液583.1 g を添加し、混合物の温度を40℃に調節する。ついでピバル酸 (28.7 g, 0.281 モル), ビニル ブチラート (29.2 gm 0,256 モル) 及び トルエン (28.8 g) を含有する混合溶液を20 分かけて上記混合物に添加し, 混合物を40℃ で12 時間、窒素の僅かな流れ下に攪拌する。混合物を2時間かけて20℃になるように冷却後, 混合物を1 時間同一温度で攪拌し, 攪拌を停止する。 酵素をろ過し、ついで酵素を105 g のトルエンで2回洗浄し, このトルエン層を一緒にする。トルエン中に4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル を有する溶液583.1 gを含有するトルエン層(純粋な (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルの含量: 36.0 g, 酵素分解法による収率: 41.1%, 0.105 モル)。
【0255】
上澄み及び洗浄液体を含有する混合溶液を水 (438 g, 263 g x 2)を用いて3回抽出し, 1005.4 g の得られた水相を79 g のトルエンで5回洗浄する。結果として, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸塩の水溶液985.2 g {純粋な (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルの含量: 32.6 g, 収量 (水 での抽出からトルエンでの洗浄までの工程を通して): 90.6 %, 0.0952 モル} が得られる。このようにして得られた(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸塩の水溶液985.2 g に、218.2 g のトルエンを添加する。ついで 30% NaOH (13.3 g, 0.0998 モル) を、水相 のpHが 11.9に到達するまで攪拌しながら混合物に徐々に添加し、混合物 30 分間攪拌して保つ。攪拌後に混合物を30 分放置させ、トルエン層を分離し、残存する水層を142.5 g のトルエンを用いて再抽出する。一緒にされたトルエン層を169.0 g の水を用いて2回洗浄し, 60℃で減圧下に濃縮し、それによってトルエン中に(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを有する溶液64.0 g が得られる。このトルエン溶液は、32.0 g (0.0935 モル) の (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを含有する。全収率は36.4%である。HPLCによって測定された光学純度は98.7 % ee, そして化学純度は99.9 area %, {(R)-5-シアノ-2- [ジメチルアミノ- (4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル] ベンジル ブチラート: 0.04 area %.}。
【0256】
前記系で、上記"化学純度" は、次の方程式によって表わされる。
(化学純度) = [4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルのArea 値 (Area value)] / [(すべての検出された化合物のArea値) - (トルエンのArea値) - (系に由来するArea値)] x 100 (area %)
例2
ストッパーを備えた試験管に、50 mg ( 0.146 mmol ) の (±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, 25 mg の種々のリパーゼ, 33 mg ( 0.29 mmol ) のビニルブチラート及び1 ml のトルエンを充填させ, ついで40℃で16時間攪拌する。光学純度少なくとも 50% eeを有する基質に関して, E-値を算出する。その結果を表 1中に示す。
表1
【0257】
【表1】

【0258】
例 3
ストッパーを備えた試験管に、10 〜100 mg ( 0.029 to 0.29 mmol ) の(±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, 10 〜100 mg のNovozym 435 (Novozymes社の製品, E/S 割合 = 1.0), 33 〜333 mg ( 10 eq. ) のビニル ブチラート 及び 1 ml のトルエンを充填させ, ついで30℃で16 時間攪拌する。 その結果を表2に示す。
表2
【0259】
【表2】

【0260】
例 4
ストッパーを備えた試験管に、100 mg ( 0.292 mmol ) の (±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル, 50 mg の Novozym 435 (Novozymes社の製品), 333 mg ( 2.92 mmol ) のビニル ブチラート, 0.292 mmol の種々の添加物及び 1 mlのトルエンで充填させ、温度 40℃ で16時間攪拌する。その結果を表3に示す。
表3
【0261】
【表3】

【0262】
例 5
攪拌器及び温度形を備えた200-ml の4首フラスコ中で, 1.5 g ( 4.38 mmol ) の (±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを30 ml のトルエンに溶解させ, ついで 0.45 g のNovozym 435 (Novozymes社の製品), 0.347 g ( 4.38 mmol ) の ピリジン, 4.38 mmol の種々の酸及び 1.00 g ( 8.76 mmol ) のビニル ブチラートを添加し, ついで40℃で16 〜21.5 時間攪拌する。 その結果を表4に示す。
表4
【0263】
【表4】

【0264】
例 6
攪拌器及び温度形を備えた200-ml の4首フラスコ中で, 3.0 g ( 8.76 mmol ) の (±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを30 ml のトルエンに溶解させ, ついで 0.9 g のNovozym 435 (Novozymes社の製品), 0.693 g ( 8.76 mmol ) の ピリジン, 8.76 mmol の 種々の酸及び 2.00 g ( 17.52 mmol ) の ビニル ブチラートを添加し, ついで40℃で15.5 〜16.5 時間攪拌する。 その結果を表5に示す。
表5
【0265】
【表5】

【0266】
例7
攪拌器及び温度形を備えた200-ml の4首フラスコ中で、4.5 g ( 13.1 mmol ) の (±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを30 ml のトルエンに溶解させ, ついで 0.90 g の Novozym 435 (Novozymes社の製品), 2.68 g ( 26.2 mmol ) の ピバル酸 及び 0.900 〜1.500 g ( 0.6 to 1.0 eq.) の ビニル ブチラート を添加し、40℃で24時間攪拌する。その結果を表6に示す。
表6
【0267】
【表6】

【0268】
例 8
攪拌器及び温度形を備えた 500-mlの 分離可能なフラスコ中で, 20.0 g (58.4 mmol) の (±)-4-(4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル)-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル を144 ml の トルエンに溶解させ, ついで ピバル酸 (1.1 to 3 eq.), 4.0 g の Novozym 435 (Novozymes社の製品) 及び 6.67 g (58.4 mmol ) の ビニル ブチラート を添加し, ついで 40℃ で 20〜24 時間後時間 、窒素流 (5 ml/分)中で攪拌する。その結果を表7に示す。
表7
【0269】
【表7】

【0270】
例 9
ストッパーを備えた試験管に、 10 mg ( 0.029 mmol ) の (±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, 10 mg の Novozym 435 (Novozymes社の製品), 0.29 mmol の 種々のアシルドナー 及び 1 ml の ジイソプロピルエーテルを充填させ, 30℃で16 時間攪拌する。少なくとも 30% eeの光学純度 有する基質に関してE-値を算出する。 その結果を表8に示す。
表8
【0271】
【表8】

【0272】
例 10
ストッパーを備えた試験管に、10 mg ( 0.029 mmol ) の (±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, 10 mg の Novozym 435 (Novozymes社の製品), 33 mg ( 0.29 mmol ) の ビニル ブチラート 及び 1 ml の 種々の 溶剤を充填させ, ついで 30℃で16 時間攪拌する。 反応の後, 変換割合及び 光学純度を分析し、E-値を算出する。その結果を表 9に示す。
表9
【0273】
【表9】

【0274】
例 11
攪拌器及び温度形を備えた200-ml の4首フラスコ中に、0.9 〜1.35 g (E/S 比は0.2 〜0.3である。) の Novozym 435 (product の Novozym)を充填させる。 30 ml の トルエン中に4.5 g (13.1 mmol) の (±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを有する溶液, 2.01 g の ピバル酸 ( 19.7 mmol ) 及び 1.50 g ( 13.1 mmol ) の ビニル ブチラートをこのフラスコに添加し, ついで35〜 45℃で21 時間攪拌する。 反応後, 反応液体をデカンテーションによって分離し、残存する酵素を30 ml の トルエンで洗浄し、回収する。回収された酵素を用いる他は、上述と同一の操作を、4時間繰り返し、循環反応を実施する。酵素活性を次の方程式にしたがって算出する。その結果を表10に示す。
酵素活性 (U/g) = (1分あたりに製造される生成物量(μmol/分)) / (酵素重量 (g))
表10
【0275】
【表10】

【0276】
例 12
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
攪拌器及び温度計を備えた4首フラスコに 、トルエン中に10.0 g (0.029 モル) の(±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを有する溶液66.6 gを充填させ, その温度を40℃になるように調節する。 ついで, 2.27 g (0.029 モル) の ピリジン, 2.98 g (0.029 モル) の ピバル酸, 3.35 g (0.029 モル) の ビニル ブチラート, 及び 2.0 g の 固定化酵素 (Novozym 435)を上記混合物に添加する。反応混合物を40℃で15 時間窒素の僅かな流れ下で攪拌し、攪拌を停止する。酵素を反応混合物からKiriyama漏斗を用いてろ過し, 酵素を21.6 g のトルエンで洗浄する。 結果として, (S)- 4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (3.6 g, 0.011 モル, 収率: 36.0%, 光学純度: 98.5 %ee), ピバル酸塩が得られる。
【0277】
一緒にされたトルエン層を3回、水 (50 ml, 30 ml, 30 ml)で20℃で洗浄し, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (3.5 g, 0.011 モル, 抽出物収率: 95%), ピバル酸塩を含有する水層が得られる。
【0278】
例 13
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
攪拌器及び温度計を備えた4首フラスコに、トルエン中に20.0 g (0.058 モル) の(±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル を有する溶液66.7 g を充填させ, その温度を40℃なるように調節する。 ついで, 5.93 g (0.058 モル) のピバル酸, 6.62 g (0.058 モル) の ビニル ブチラート, 及び 4.1 g の 固定化酵素 (Novozym 435)を上記混合物に添加する。 反応混合物を40℃で18時間、窒素の僅かな流れ下で攪拌し、攪拌を停止する。酵素を反応混合物からKiriyama漏斗を用いてろ過し, 酵素を41.3 g のトルエンで洗浄する。結果として, 6.7 g (0.020 モル) の (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸塩が 収率33.5% 及び 光学純度99.7 %eeで、トルエン溶液中に得られる。
【0279】
例 14
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル シクロヘキサンカルボン酸塩
攪拌器及び温度計を備えた4首フラスコに、トルエン中に25.0 g (0.073 モル) の(±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを有する溶液250.0 g を充填させ、その温度を40℃になるように調節する。 ついで, 5.77 g (0.073 モル) の ピリジン, 8.33 g (0.073 モル) の ビニルブチラート, 9.52 g (0.073 モル) の シクロヘキサンカルボン酸, 及び 5.0 g の 固定化酵素 (Novozym 435)を、上記混合物に添加する。 反応混合物を40℃で17.5 時間 窒素の僅かな流れ下で攪拌し、 攪拌を停止する。 酵素をろ過し, 54.1 g のトルエンで洗浄する。結果として、 (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (8.6 g, 0.025 モル, 収率: 34.4%, 光学純度: 98.7% ee), シクロヘキサンカルボン酸塩を含有するトルエン層が得られる。
【0280】
一緒にされたルエン層を5回、水 (187.5 ml x 5)で20℃で洗浄し, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (7.6 g, 0.0221 モル, 抽出収率: 89%), シクロヘキサンカルボン酸 塩を含有する水層が得られる。
【0281】
例 15
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル o-トルイル酸塩
攪拌器及び温度計を備えた4首フラスコに、 トルエン中に25.0 g (0.073 モル) の(±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを有する溶液250.0 gに充填し、ついでその温度を40℃になるように調節する。 ついで, 5.77 g (0.073 モル) の ピリジン, 8.33 g (0.073 モル) の ビニル ブチラート, 9.93 g (0.073 モル) の o-トルイル酸及び 5.0 g の 固定化酵素 (Novozym 435) 上記混合物に添加する。反応混合物を40℃で21時間、 窒素の僅かな流れ下で攪拌し、ついで 攪拌を停止する。酵素を反応混合物からKiriyama漏斗を用いてろ過し, 54.1 g のルエンで洗浄する。 結果として, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (9.7 g, 0.028 モル, 収率: 38.8%, 光学純度: 97.8% ee), o-トルイル酸塩を含有するトルエン層が得られる。
【0282】
一緒にされたトルエン層を、3回 水 (250 ml, 63 ml, 63 ml)で60℃で洗浄し, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (7.8 g, 0.0228 モル, 抽出収率: 80%), o-トルイル酸塩を含有する水層が得られる。
【0283】
例 16
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル イソ酪酸塩
攪拌器及び温度計を備えた4首フラスコに、トルエン中に10.0 g (0.029 モル) の(±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを有する溶液33.3 gを充填し, その温度を40℃になるように調節する。ついで, 2.29 g (0.029 モル) の ピリジン, 2.57 g (0.029 モル) の イソ-酪酸, 3.33 g (0.029 モル) の ビニル ブチラート, 及び 2.0 g の 固定化酵素 (Novozym 435) 上記混合物に添加する。反応混合物を40℃で24時間、 窒素の僅かな流れ下で攪拌し、ついで攪拌を停止する。 酵素を反応混合物からKiriyama 漏斗を用いてろ過し、ついで21.6 g の トルエンで洗浄する。 結果として, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (3.8 g, 0.011 モル, 収率: 38.0%, 光学純度: 95.9% ee), イソ酪酸塩を含有するトルエン層が得られる。
【0284】
例 17
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル 安息香酸塩
攪拌器及び温度計を備えた4首フラスコに、トルエン中に 50.0 g (0.146 モル) の(±)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル を有する溶液250.0 g を充填し、その温度を40℃になるように調節する。ついで, 11.5 g (0.146 モル) の ピリジン, 33.2 g (0.291 モル) の ビニル ブチラート, 17.8 g (0.146 モル) の 安息香酸, 及び 10.0 g の 固定化酵素 (Novozym 435) 上記混合物に添加する。 反応混合物を40℃で20時間、窒素の僅かな流れ下で 攪拌し, ついで 攪拌を停止する。 酵素を反応混合物からKiriyama漏斗を用いてろ過し, 108 g のトルエンで洗浄する。結果として, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (22.0 g, 0.064 モル, 収率: 44.0%, 光学純度: 99.0% ee), 安息香酸塩を有するトルエン層が得られる。
【0285】
一緒にされたトルエン層を 3回、 水 (500 ml x 3)で60℃で洗浄し, ついで(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (21.0 g, 0.0614 モル, 抽出収率: 96%), 安息香酸塩を含有する水層が得られる。
【0286】
つぎの例18 〜28に反応混合物からの S-ジオールの分離を説明する。
【0287】
例 18
ストッパーを備えた試験管に、 4.3 mg (0.0126 mmol) の (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (化合物 A), 6.8 mg (0.0165 mmol) の (R)-5-シアノ-2-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-ベンジル ブチラート (化合物 B), 1 ml の トルエン, 1 ml の 水及び 0.291 mmol の 種々の 酸 (二塩基酸の場合, 0.146 mmolを使用する。)を充填し, 40℃ で1 時間攪拌する。このようにして得られた混合溶剤を水層 及び トルエン層に分離し, ついでそれぞれの層の化合物 A 及びBの濃縮物を測定する。分配係数 Ka 又は Kb を次の方程式にしたがって算出する。その結果を表 11に示す。
Ka = (水層中の化合物 Aの濃度) / (トルエン層中の化合物 Aの濃度)
Kb = (水層中の化合物 B の濃度) / (トルエン層中の化合物 Bの濃度)
表11
【0288】
【表11】

【0289】
例 19
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
酵素を、例 1よる方法によって得られた酵素反応混合物からろ過し,トルエンで2回洗浄する。 このようにして得られた(S)- 4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (44.8 g, 0.131 モル), ピバル酸塩を有するトルエン 溶液1174.3 gを600.3 g の 水 に添加し、抽出する。 359.7 g の 水でさらに2回抽出して、(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸塩の水溶液1375.9 gを生じさせる。この水溶液は、43.8 g (0.128 モル, 収率: 97.8%) の (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルを含有する。 光学純度: 98.4%ee, (R)-5-シアノ-2-[ジメチルアミノ-(4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル]ベンジル ブチラート: 10.7 area%。
【0290】
例 20
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル ピバル酸塩の水溶液 12.6 g { (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルの含量: 0.4 g, 1.168 mmol}( これは例 19よる方法によって別々に得られる)に、酢酸アンモニウム1.4 g (0.018 モル)を添加する。 ついで 1.0 g の トルエンをこれに添加し、混合物を10 分間攪拌する。 30 分間放置した後, 有機相を混合物溶液を分離して廃棄し、(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル(0.389 g, 1.136 mmol, 収率: 97.3%), ピバル酸塩を含有する水層が得られる。 HPLC分析によって, 化学純度は97.3 area%であり、(R)-5-シアノ-2-[ジメチルアミノ- (4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル] ベンジル ブチラート: 1.5 area% を有することが分かった。
【0291】
例 21
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル ピバル酸塩の水溶液12.6 g { (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルの含量: 0.4 g, 1.168 mmol}, (これは例 19の方法にしたがって別々に得られる。)に1.4 g (0.013 モル) の 硫酸リチウムを添加する。 ついで 1.0 g の トルエンをこれに添加し、 混合物を10 分間攪拌する。 30分間放置した後, 有機層を混合物溶液の分離によって廃棄し, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸 塩(0.394 g, 1.151 mmol, 収率: 98.5%)を含有する水層 が得られる。 HPLC分析によって, 化学純度 が93.7 area%であり、(R)-5-シアノ-2- [ジメチルアミノ- (4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル] ベンジル ブチラート: 5.5 area% が得られることが分かった。
【0292】
例 22
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル ピバル酸塩の水溶液12.6 g { (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルの含量: 0.4 g, 1.168 mmol}(これは例19の方法にしたがって別々に得られる。)に1.4 g (0.011 モル) の 硫酸アンモニウムを添加する。 ついで 1.0 g の トルエンをこれに添加し、混合物を10 分間攪拌する。 30分間放置した後, 有機層を混合物溶液の分離によって廃棄し, そして(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸 塩(0.397 g, 1.159 mmol, 収率: 99.3%)を含有する水層が得られる。 HPLC分析によって,化学純度が94.7 area%であり、 (R)-5-シアノ-2- [ジメチルアミノ- (4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル] ベンジル ブチラート: 4.5area% が得られることが分かった。
【0293】
例 23
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル ピバル酸塩の水溶液12.6 g { (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルの含量: 0.4 g, 1.168 mmol}(これは例19の方法にしたがって別々に得られる。) に、4 g (0.0099 モル) の 硫酸ナトリウム を添加する。 ついで 1.0 g のトルエンをこれに添加し、混合物を10 分間攪拌する。30分間放置した後, 有機層を混合物溶液の分離によって廃棄し, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルのピバル酸塩(0.391 g, 1.142 mmol, 収率: 97.8%) を含有する水層が得られる。 HPLC分析によって,化学純度 が94.5 area% であり、 (R)-5-シアノ-2- [ジメチルアミノ- (4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル] ベンジル ブチラート: 4.7 area%が得られることが分かった。
【0294】
例 24
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル ピバル酸塩の水溶液12.6 g { (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルの含量: 0.4 g, 1.168 mmol}, (これは例19の方法にしたがって別々に得られる。)に、0.7 g (0.012 モル)の 塩化ナトリウムを添加する。 ついで 1.0 g のトルエンをこれに添加し、混合物を10 分間攪拌する。 30分間放置した後, 有機層を混合物溶液の分離によって廃棄し, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルのピバル酸塩(0.397 g, 1.159 mmol, 収率 99.3%)を含有する 水層が得られる。 HPLC分析によって, 化学純度が93.3 area%であり、 (R)-5-シアノ-2- [ジメチルアミノ- (4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル] ベンジル ブチラート: 5.8 area% が得られることが分かった。
【0295】
例 19に比べて例 20-24に、分離が塩の添加によって改善されることを示す。
【0296】
例 25
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
酵素を例1にしたがって得られた酵素反応混合物からろ過し、2回トルエンで洗浄する。このようにして得られた (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸 1.0 g (2.92 mmol) を含有するのトルエン溶液19.4 gを 40 °Cになるように調整し、13 mLの水を溶液に添加し、抽出する。溶液をさらに2回7.5 mL の 水 で洗浄し, (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸塩の溶液が得られる。 上記水溶液中に, 0.886 g (2.588 mmol, 収率: 88.6%) の (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルが含有される。
【0297】
例 26
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
酵素を例1にしたがって得られた酵素反応混合物からろ過し、2回トルエンで洗浄する。 このようにして得られた(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸1.0 g (2.920 mmol)を含有するトルエン溶液 19.4 g を40°Cになるように調整し、及び 11.6 mL の 水 を溶液に添加し、抽出する。溶液をさらに3回 5.8 mL の 水で抽出して、 (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸塩の溶液が得られる。上記水溶液中に, 0.879 g (2.567 mmol, 収率 87.9%) の (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルが得られる。
【0298】
例 27
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
酵素を例1にしたがって得られた酵素反応混合物からろ過し、2回トルエンで洗浄する。このようにして得られた (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸1.0 g (2.92 mmol) を含有するトルエン溶液10.4 g を添加し、 13.0 mL の 水 で抽出する。溶液をさらに2回7.5 mL の 水で抽出し、(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンゾニトリル, ピバル酸 塩の水溶液が得られる。 上記水溶液中に, 0.954 g (2.786 mmol, 収率 95.4%) の (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルが得られる。
【0299】
例 28
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチル-ベンゾニトリル ピバル酸塩
酵素を例1にしたがって得られた酵素反応混合物からろ過し、2回トルエンで洗浄する。このようにして得られた (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸塩1.0 g (2.90 mmol)を含有するトルエン溶液19.4 gに、0.43 g (4.210 mmol) の ピバル酸を添加し、混合物を13.0 mL の 水で抽出する。さらに溶液を2回7.5 mL の 水で抽出し、(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル, ピバル酸塩の水溶液が得られる。上記水溶液中に, 0.947 g (2.766 mmol, 収率: 94.7%) の (S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルが得られる。
【0300】
例 25, 26, 27 及び 28の比較は、改善された分離がピバル酸の添加によって得られる一方で、更なる洗浄及び温度の調節が分離に大きな影響を与えないことを示す。
【0301】
例 29
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル
無水1,4-ジオキサン (2,5 ml)中にラセミ性4-[4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル(0,29 mmol, 100 mg) 及びビニルブチラート (3,9 mmol, 0,5 ml)を有する攪拌溶液に、リポ蛋白質リパーゼ シュードモナス sp. (160 U, 5 mg)を添加する。反応を37 °Cに加熱し、ついでHPLCを行う。
【0302】
162時間後( 変換率33,9%で)、 酵素を ろ過し、少量の1,4-ジオキサンで洗浄する。一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで超臨界流体クロマトグラフィーで分析して、72% eeの(R)-ブチラート エステル 及び28% eeの (S)-ジオールを生じさせる。
【0303】
例 30
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル
無水1,4-ジオキサン (3,0 ml)中にラセミ性4-[4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル(0,29 mmol, 100 mg) 及び ビニルブチラート (0,58 mmol, 73,6 μl) を有する攪拌溶液に、リポ蛋白質リパーゼ シュードモナス sp. (160 U, 4 mg)を添加する。 反応を37 °Cに加熱し、ついでHPLCを行う。変換率18,7 %で194時間後, 酵素を ろ過し、少量の1,4-ジオキサンで洗浄する。一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで超臨界液体クロマトグラフィーで分析して、92% eeの(R)-ブチラート エステル及び14% eeの (S)-ジオールを生じさせる。反応をさらに表12に示すように1, 4 及び 8 当量(eq.)のビニルブチラートを用いて監視する。
表12(括弧内の数は酵素不在での変換率である。)
【0304】
【表12】

【0305】
例 31
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル
無水1,4-ジオキサン(2,925 ml)中にラセミ性4-[4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル(0,29 mmol, 100 mg) 及び ビニルブチラート (0,59 mmol, 75 μl) を有する攪拌溶液に、リポ蛋白質リパーゼ シュードモナス sp. (160 U, 5 mg)を添加する。
反応を50 °Cに加熱し、ついでHPLCを行う。変換率 30,4 %で165時間後, 酵素をろ過し、少量の1,4-ジオキサンで洗浄する。一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで超臨界液体クロマトグラフィーで分析して、 98,1% ee の (R)-ブチラート エステル及び30,3% eeの(S)-ジオールを生じさせる。反応をさらに表 13に示すように 25, 37 及び 65 °C で追跡する。
表13(括弧内の数は酵素不在での変換率である。)
【0306】
【表13】

【0307】
例 32
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル
無水1,4-ジオキサン (2,925 ml)中にラセミ性4-[4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル(0,29 mmol, 100 mg) 及び ビニルブチラート (0,59 mmol, 75μl, 2. eq.) を有する攪拌溶液に、リポ蛋白質リパーゼ シュードモナス sp. (160 U, 4,5 mg)を添加する。反応を50 °Cに加熱し、ついでHPLCを行う。209 時間後, 酵素をろ過し、少量の1,4-ジオキサンで洗浄する。一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで超臨界液体クロマトグラフィーで分析して、(R)-ブチラート エステル 及び (S)-ジオールを生じさせる。反応を表14に記載したように200 mg, 500 mg 及び 1000 mgのジオール及びそれぞれ150μl, 375μl 及び 750μlの ビニルブチラート 及び 2,85 ml, 2,625 ml 及び 2,25 ml の1,4-ジオキサンを用いて監視する。
表14
【0308】
【表14】

【0309】
例 33
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル

無水1,4-ジオキサン (2,925 ml)中にラセミ性4-[4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル(0,29 mmol, 100 mg) 及び ビニルブチラート (0,59 mmol, 75 μl) を有する攪拌溶液に、リポ蛋白質リパーゼ シュードモナス sp. (160 U, 4 mg)を添加する。 反応を50 °Cに加熱し、ついでHPLCを行う。473 時間後, 酵素をろ過し、少量の1,4-ジオキサンで洗浄する。一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで
HPLC分析を行う。その結果を表15に示す。
表15
【0310】
【表15】

【0311】
例 34
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル
無水 1,4-ジオキサン (14,25 ml)中にラセミ性4-[4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (2,9 mmol, 1000 mg) 及び ビニルブチラート (5,9 mmol, 750μl)を有する攪拌溶液に 、リポ蛋白質リパーゼ シュードモナス sp. (160 U, 20 mg)を添加する。 反応を50 °Cに加熱し、ついでHPLCを行う。139 時間後, さらに5 mgのリパーゼを添加する。155 時間後, さらに15 mg リパーゼを添加する。変換率55,7 %で399 時間後, サンプルを集める。酵素をろ過し、少量の1,4-ジオキサンで洗浄する。一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで超臨界液体クロマトグラフィーで分析して、変換率62,8 %で560 時間後, 反応を停止する。酵素をろ過し、少量の1,4-ジオキサンで洗浄する。一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで超臨界液体クロマトグラフィーで分析する。得られたee-値を表 16に示す。
表16
【0312】
【表16】

【0313】
例 35
(S)-シタロプラム ジオール 同族体
無水 1-4-ジオキサン (2,925 ml)中にラセミ性シタロプラム ジオール 同族体 (0,29 mmol, 100 mg) 及びビニルブチラート (0,29 mmol, 37μl)を有する 攪拌溶液に、4-10 mg のPspLLを添加する。反応を50℃に加熱して、ついでHPLCを行う。反応を停止した後、少量のトルエンで洗浄する。一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで超臨界液体クロマトグラフィーで分析する。 結果を表17に示す。
表17(括弧内の数は酵素不在での変換率である。)
【0314】
【表17】

【0315】
例 36
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル
無水1,4-ジオキサン (142,5 ml)中にラセミ性4-[4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (29 mmol, 10 g) 及び ビニルブチラート (58 mmol, 7,5 ml)を有する攪拌溶液に、 リポ蛋白質リパーゼ シュードモナス sp. (160 U, 250 mg)を添加する。反応を50 °Cに加熱し、ついでHPLCを行う。変換率41%で192 時間後, さらに250 mgのリパーゼを添加する。変換率63 % で504 時間後, 反応を停止する。酵素をろ過し、少量の1,4-ジオキサンで洗浄する。 一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで超臨界液体クロマトグラフィーで分析する。得られたEE-値 ((S-ジオール) = 95% (S-ジオール/R-ジオール = 40:1)。
【0316】
例 37
フラッシュクロマトグラフィーによって(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルの単離
372 mgのS-シタロプラム ジオール ( ee-値 94,5% )及び 628 mgのR-シタロプラム ジオール ブチラート エステル(ee-値 59,5% )の混合物を、最小量の酢酸エチル/ヘプタン 4:1 中に4% トリメチルアミンを用いて溶解させる。エスシタロプラム ジオールを、フラッシュクロマトグラフィーによって酢酸エチル/ヘプタン 4:1中で4% トリメチルアミンを用いて単離させ、120 mg S-シタロプラム ジオール (ee-値 94,5%)が得られる。
【0317】
例 38
S-ジオール塩基を含有する混合物の洗浄によって(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリルの単離
S-シタロプラム ジオール 及び R-シタロプラム ジオール ブチラート エステル (0,3g each) の混合物に、24 mlのヘプタン及び66 mlの水 /メタノール (2:1)を添加する。澄明な溶液を、分離漏斗に移行させ、有機相を集める。 さらに10 mlのヘプタンを水相に添加し、十分に混合する。有機相を集める。抽出をさらに4 時間繰り返す。一緒にされたヘプタン相を20 ml 水 /メタノール (2:1)で抽出し、ついで水相を一緒にし、蒸発させて半分の容量とし、3 時間10 mlの酢酸エチルで抽出する。一緒にされた酢酸エチル相をNa2SO4で乾燥させ、減圧でろ過し、減圧で乾燥させて、2% R-シタロプラム ジオール ブチラート エステルを含有するS-シタロプラム ジオール0,15 g が得られる。
【0318】
例 39
Novozymes 435 を用いる(S)-シタロプラム ジオール同族体
無水トルエン(2,925 ml)中にラセミ性シタロプラム ジオール 同族体 (0,29 mmol, 100 mg) 及び ビニルブチラート (0,29 mmol, 37 μl) を有する攪拌溶液に、 0,2 mg Novozymes 435 及び (0,32 mmol, 33 mg) ピバル酸を添加する。 反応を40℃に加熱し、ついでHPLCを行う。反応を停止した後、少量のトルエンで洗浄する。 一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで超臨界液体クロマトグラフィーで分析する。結果を 表18に示す。
表18
【0319】
【表18】

【0320】
例 40
Novozymes 435を用いて種々のカルボン酸の酵素アシル化への影響
無水トルエン(2,925 ml)中にラセミ性4-[4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (0,29 mmol, 100 mg) 及び ビニルブチラート (0,29 mmol, 37 μl)を有する攪拌溶液に Novozymes 435, (0,2 mg) 及び 1,1 eq. カルボン酸を添加する。反応を40 ℃に加熱し、ついでHPLCを行う。 酵素をろ過し、少量の トルエンで洗浄する。 一緒にされた有機相を減圧で蒸発させ、ついで超臨界液体クロマトグラフィーで分析する。結果を表19に示す。
表19
【0321】
【表19】

【0322】
例 41
(R)-5-シアノ-2- [ジメチルアミノ- (4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル] ベンジル ブチラート
攪拌器及び温度計を備えた4首フラスコに、トルエン中に(±)-4-[4-ジメチルアミノ-1- (4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル21.9 g (0.064 モル)を有する溶液 219 gを充填する。ついで, 14.6 g (0.128 mmol) の ビニル ブチラート, 5.07 g (0.128 モル) の ピリジン, 7.89 g (0.064 モル) の 安息香酸 及び 2.19 g の 固定化酵素 (Novozym 435) を上記混合物に添加する。 反応混合物を最高60 °Cに加温させ、 15 時間後 窒素の僅かな流れ下で 攪拌し、ついで 攪拌を停止する。 酵素を反応混合物からKiriyama漏斗を用いてろ過し,50 g の トルエンで洗浄する。一緒にされたトルエン層を2回水 (255 ml, 265 ml)で洗浄し、濃縮して、14.9 g の(R)-5-シアノ-2- [ジメチルアミノ- (4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル] ベンジル ブチラート 安息香酸塩を生じる。
【0323】
4.0 g の (R)-5-シアノ-2- [ジメチルアミノ- (4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル] ベンジル ブチラート 安息香酸塩 (7.48 mmol), 40 ml の 水 及び 40 ml の トルエンの混合物に、26 g の 30% 水酸化ナトリウム (9.45 モル)を攪拌しながら添加し、混合物を30 分間攪拌しながら保つ。攪拌後, 混合物を放置させ、トルエン層を分離する。トルエン層を40 ml の 水で洗浄し、 40 °C で減圧下に濃縮し、それによって2.7 g の(R)-5-シアノ-2- [ジメチルアミノ- (4’-フルオロフェニル)-ヒドロキシブチル] ベンジル ブチラートが得られる。
1H NMR (400 MHz. CDCl3) a(ppm) : 7.69 (1H, s), 7.68-7.56 (2H, m), 7.36-7.23 (2H, m), 7.02-6.90 (2H, m), 5.41 (1H, d, J = 14.9 Hz), 4.99 (1H, d, J = 14.6 Hz), 2.59-2.42 (1H, m), 2.40-2.30 (3H, m),2.26 (2H, dt, J= 7.3 Hz, 1.5 Hz), 2.18 (6H, s), 1.68-1.57 (2H, m), 1.67-1.46 (2H, m), 0.93 (3H, t, J = 7.6 Hz).
例 42
エスシタロプラム,シュウ酸塩
キラル超臨界液体クロマトグラフィーによって測定された99%の化学純度及び98.7%のeeを有する(S)-4-(4-ジメチルアミノ)-1-(4´-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル)-3-ヒドロキシメチルベンソニトリル (15.8 g, 46.2 mmol) をトルエン (100 mL)に溶解させる。トリメチルアミン (13.0 mL, 93.2 mmol)を添加し、ついで トルエン (100mL)中にトシルクロライド (9.4 g, 49.4 mmol) を有する溶液を徐々に添加する。得られた溶液を室温で20分間攪拌する。ついで水 (50 mL) 及び 濃アモニオア(25 mL)を添加する。 混合物 を45 °Cで 2分間攪拌し, 分離漏斗に移行させる。相を分離し、有機相を水 (50 mL)で洗浄し,MgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧で濃縮して 粗生成物(14.2 g)を95% 収率で生じさせる。
【0324】
粗生成物をエタノール(17 mL)に溶解させ、エタノール (27 mL)中にシュウ酸 (3.95 g, 43.9 mmol)を有する溶液を添加する。 沈殿をろ過して集め、エスシタロプラム, シュウ酸塩 (14.0 g)を生じさせ, これをエタノール (85 mL)から再結晶させて、最終生成物 (12.2 g)を生じさせる。純度をHPLCによって 測定して99.65%である。 ee はキラル超臨界液体クロマトグラフィーによって測定して98.5%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】


{式中、R はシアノ又はシアノ基に変換することができる基であり, 点線は 二重結合又は単結合を示し, Hal はハロゲンであり,
Z は基-CH2-N(R´R´´)
(式中、R´及びR´´ はC1-6-アルキルであるか, 又はR´及びR´´ は相互に結合して、これらが結合するN-原子を含む環構造を形成する。)
であるか, 又は
Zはジメチルアミノメチル基に変換することができる基であり、
WはO 又はSであり、
R3 は-Y-R1
(式中、Yは結合, O, S 又はNHであり、R1 はC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又は C2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ, ジ-(C1-10-アルキル)アミノ, アリール, アリールオキシ, アリールチオ 及び ヘテロアリールから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか, 又はR1 はアリールであり, この際このアリール基及びヘテロアリール基のいずれも場合によりC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル, C2-10-アルキニル, C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ及びジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよい。)
である。}
で表わされる化合物又はその塩 及び/又は 式
【化2】


(式中、R, Z, Hal 及び 点線は上記に定義された通りである。)
で表わされるジオール又はその塩を、式(IV)で表わされる化合物 及び式 (II)で表わされるジオールを含む混合物から単離及び精製する方法において,
a) 式(IV) で表わされる化合物及び式(II)で表わされるジオールを含む上記混合物を、水及び有機溶剤の混合物中で酸の存在下に処理し、
b) 式(II)で表わされるジオールを上記酸の塩として含む水相を分離して,式(IV)で表わされる化合物を上記酸の塩として含む有機相を得、ついで
場合により式(II)で表わされる化合物をその塩基又は その塩として単離し、そして場合により式(IV)で表わされる化合物 をその塩基又はその塩として単離する、上記単離及び精製する方法。
【請求項2】
式 (II)で表わされるジオールのS-対掌体が、式(IV)で表わされるアシル誘導体のR-対掌体から分離される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式 (IV)で表わされるアシル誘導体のS-対掌体が、式(II)で表わされるジオールのR-対掌体から分離される、 請求項1記載の方法。
【請求項4】

【化3】


{式中、R はシアノ又はシアノ基に変換することができる基であり、Halは ハロゲンであり, 点線は二重結合又は単結合を示し,
Z は基-CH2-N(R´R´´)
(式中、R´及びR´´ はC1-6-アルキルであるか, 又はR´及びR´´ は相互に結合して、これらが結合するN-原子を含む環構造を形成する。)
であるか, 又は
Zはジメチルアミノメチル基に変換することができる基であり,
W はO 又はSであり、
R3 は-Y-R1
(式中、Y は結合、O, S又はNHであり、R1 はC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル 又はC2-10-アルキニルであり、 これらのすべては場合によりC1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ, ジ-(C1-10-アルキル)アミノ, アリール, アリールオキシ, アリールチオ 及び ヘテロアリールから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよいか, 又はR1 はアリールであり, この際このアリール基及びヘテロアリール基のいずれも場合によりC1-10-アルキル, C2-10-アルケニル, C2-10-アルキニル, C1-10-アルコキシ, C1-10-アルキルチオ, ヒドロキシ, ハロゲン, アミノ, ニトロ, シアノ, C1-10-アルキルアミノ 及び ジ-(C1-10-アルキル)アミノから選ばれる置換基によって1回以上置換されていてよい。)
である。}
で表わされるアシル誘導体又はその塩
及び/又は 式
【化4】


(式中、R, Hal, Z 及び点線 は上記に定義された通りである。)
で表わされるジオールを、式(IV)で表わされるアシル誘導体及び式 (II)で表わされるジオールを含む混合物から単離及び精製する方法において,
a) 式(IV)で表わされるアシル誘導体及び式 (II)で表わされるジオールを含む上記混合物を水,プロトン性有機溶剤 及び無極性有機溶剤の混合物中で処理し、
b) 式(II)で表わされるジオールを含む水相を有機相から分離して,式(IV)で表わされるアシル誘導体を含む有機相を得、ついで
場合により式(II)で表わされるジオール及び/又は式(IV)で表わされる化合物を水/有機相から単離し、ついで場合により式(II)及び/又は(IV)で表わされる化合物をその塩に変換する、上記単離及び精製する方法。
【請求項5】
式 (II)で表わされるジオールのS-ジオールが式(IV)で表わされるアシル誘導体のR-対掌体 から分離される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
式 (IV)で表わされるアシル誘導体のS-対掌体が式(II)で表わされるジオールのR-対掌体から分離される、請求項4記載の方法。

【公開番号】特開2010−150270(P2010−150270A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32381(P2010−32381)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【分割の表示】特願2004−526641(P2004−526641)の分割
【原出願日】平成15年8月12日(2003.8.12)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】